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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1328360
審判番号 不服2016-1290  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-28 
確定日 2017-05-17 
事件の表示 特願2014-529707「インピーダンスおよび磁界の測定を使用するカテーテルのナビゲーション」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月21日国際公開、WO2013/039564、平成26年11月17日国内公表、特表2014-530030〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月28日(パリ条約による優先権主張 平成23年9月13日 米国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、平成27年3月11日付けで拒絶理由が通知され、同年6月17日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年9月18日付けで拒絶査定されたところ、平成28年1月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、同年4月25日付けで前置報告書が作成された。


第2 平成28年1月28日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項10及び14を補正するものである。また、該請求項10及び14の補正に伴い、補正後の請求項10、14を直接的、間接的に引用する請求項11ないし16も併せて補正されることになる。
これに対して、本件補正の前後において、特許請求の範囲の請求項1の記載は、何ら変更されていないから、当該請求項1に係る発明が特許を受けることができない場合には、本件補正の適否にかかわらず、本願は拒絶すべきものとなる。
このような事情に鑑み、本件補正の適否についての検討を差し措き、まず、請求項1に係る発明について検討することとする。


第3 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうちの本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
医療デバイスの位置を決定するためのシステムであって、
電子制御ユニット(ECU)と、
前記ECUに結合されたコンピュータ可読メモリと、
前記ECUによって実行されるように構成された前記メモリ内に格納されるロジックであって、前記ロジックは、補間関数を確立し、前記補間関数を第1の非正規直交座標系内の第1の座標に適用して、第2の正規直交座標系内の対応する第2の座標を決定するように構成される、ロジックと、を備え、
前記ロジックは、補間アルゴリズムを複数の基準対に適用して前記補間関数をもたらすことによって前記補間関数を決定するように構成され、それぞれの基準対は(1)第1の測位システムによって測定された前記第1の座標系内の第1の座標と、(2)第2の測位システムによって測定された前記第2の座標系内の第2の座標とを備え、それぞれの基準対は三次元(3D)空間内の物理的点に対応する、システム。」


第4 引用例及びその記載事項
1 本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由において主引用例として引用された特表2010-520784号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加したもの。)。

(1)「【請求項31】
カテーテル案内システムを心臓の少なくとも一部のイメージに統合するシステムであり、
心臓の少なくとも一部に挿入されるカテーテルと、
心臓の少なくとも一部の表面上に位置している位置Xにカテーテルを置き、心臓の少なくとも一部の表面上に位置している位置Xの位置情報を計測するカテーテル案内システムと、
心臓の少なくとも一部のイメージであり、心臓の少なくとも一部の表面上に位置している複数個所の位置情報を含んでいるイメージと、
心臓の少なくとも一部のイメージに接続されており、カテーテルが置かれた心臓の少なくとも一部の表面上の位置Xに対応するイメージ上の位置Yをユーザが選択することを許容する入力装置と、
カテーテルが置かれた心臓の少なくとも一部の表面上の位置Xの計測された位置情報と、選択された位置Yの位置情報を組み合わせて、基準ペア(X,Y)を作る組み合わせ処理装置と、
カテーテル案内システムのn次元空間内における位置を、イメージのn次元空間内における位置に変換するマッピング関数fであり、個々の基準ペアにおいてf(X)の値とYの値の差がほぼゼロとなるマッピング関数fを生成するようにプログラムされている変換処理装置
を備えるシステム。」

(2)「【請求項35】
カテーテル案内システムが、心臓の少なくとも一部に局所的電場を生成し、カテーテルが遭遇する局所的電場の特性値に基づいて、心臓の少なくとも一部の表面にある位置Xの位置情報を計測する、請求項31のシステム。
【請求項36】
カテーテル案内システムが、心臓の少なくとも一部に局所的磁場を生成し、カテーテルが遭遇する局所的磁場の特性値に基づいて、心臓の少なくとも一部の表面にある位置Xの位置情報を計測する、請求項31のシステム。」

(3)「【課題を解決するための手段】
【0009】
以下では、例えば、電場によるローカライゼーションシステム又は磁場によるローカライゼーションシステムといったカテーテル案内システムを、3次元イメージに統合する方法が開示される。その方法は下記のステップを備えている。
(a) 心臓の少なくとも一部の3次元イメージを取得する。その3次元イメージは、心臓の表面に位置している複数の参照点の位置情報を含んでいる。
(b) ツールを心臓の表面にある第1表面位置X_(1)に置く。
(c) 第1表面位置X_(1)の位置情報を測定する。
(d) 3次元イメージ上において対応する第1位置Y_(1)の位置情報を特定する。
(e) カテーテル案内システムで測定された第1表面位置の位置情報X_(1)と、3次元イメージ上の第1位置の位置情報Y_(1)を組み合わせて、基準ペア (X_(1),Y_(1))を作る。
(f) それぞれの基準ペア(X_(i),Y_(i))において、誤差関数がほぼゼロの位置ずれ誤差を計測するように、少なくとも一つの基準ペアを用いて、カテーテル案内システムにおける位置を3次元イメージにおける位置に変換するマッピング関数を作り出す。
3次元イメージは、CTイメージ、磁気共鳴イメージ、超音波イメージ、X線イメージ、透視イメージ、イメージテンプレート、ローカライゼーションシステムで作られたイメージ、前記のいずれかの分割されたモデル、あるいは前記のいずれかの組み合わせから選択されたものであってもよい。」

(4)「【0026】
本発明は、カテーテル案内システムを局所的に歪ませて外部モデルまたは外部イメージデータに統合する方法とシステムを提供する。すなわち、本発明は、カテーテル案内システムにおける座標系を、外部モデルまたは外部イメージデータの座標系に変換する方法とシステムを提供する。ここでいう「外部」とは、カテーテル案内システムとは異なる座標系を用いているモデルまたはイメージデータのことをいう。「外部イメージ」という用語は、本明細書では、カテーテル案内システムが統合される外部モデルまたは外部イメージデータのことを意味する。好ましくは、外部イメージが、複数個の参照点の位置情報を含んでいる。典型的には、位置情報は、外部イメージの座標系におけるカーテシアン座標で与えられている。その他の座標系、例えば極座標系、球座標系、円筒座標系等であってもよい。
【0027】
典型的な外部イメージは、それに限定されるものでないが、CTイメージ、磁気共鳴イメージ、超音波イメージ、X線イメージ、透視イメージ等である。外部イメージは、特定の患者のイメージでなく、イメージの標本(テンプレート)であってもよい。さらに、外部イメージがローカライゼ?ションシステムで取得された位置情報から生成されたイメージであってもよく、その場合も本発明の範疇である。当業者が理解するように、もしも異なる原点に対して計測されれば、本明細書の用法によると、そのデータも外部である。従って、外部イメージは、異なるローカライゼーションシステムから提供されることもあれば、参照点を異にする同じローカライゼーションシステムから提供されることもある(例えば、前に行った処置の間に収集されたローカライゼーションシステムのデータ、または、異なる電極に対して計測されたローカライゼーションシステムのデータが外部イメージであることもある)。外部イメージは、部分に分割されていてもよいし、分割されていなくてもよい。外部イメージは、他の適切な提供源から入手したものであってよい。」

(5)「【0048】
いくつかの実施例では、入力装置を利用して、ディスプレイ装置23に表示されている外部イメージの3次元形状の上で、第1位置Y_(1)を特定または指すことによって、第1位置Y_(1)が特定される。好ましい入力装置は、それに限定されないけれども、キーボード、キーパッド、マウスやトラックボールやトラックパッドといった位置を指すための装置、2次元または3次元のジョイスティック、能動型または受動型の接触検知型のディスプレイ装置である。好ましくは、第1位置Y_(1)は、3次元外部イメージに対して測定された座標値(x、y、z)で表現されている位置情報を備えている。」

(6)「【0053】
当業者であれば理解するように、複数個の基準ペアは、ローカライゼーションシステム8を3次元イメージに統合させるマッピング関数fを生成するのに利用される。すなわちマッピング関数fは、ローカライゼーションシステム8の座標系に従って記述されている位置情報を、3次元イメージの座標系に従って記述される位置情報に変換する。」

(7)「【0070】
上記の方法は、一つまたの複数個のコンピュータシステムで実行することができ、ソフトウエア(例えば一つまたの複数個のコンピュータシステムまたは演算処理装置で実行される一つまたは複数個のソフトウエアプログラム)に具現化されることがあり、ハードウエア(例えば一つまたの複数個の固体装置に記憶されている指示のシリーズ)に具現化されるとがあり、あるいは、それらのコンビネーションであってもよい。前記したように、コンピュータは、従来の汎用コンピュータでもよく、専用コンピュータでもよく、分散型のコンピュータでもよく、その他のタイプのコンピュータであってもよい。さらに、コンピュータは、単一の中央処理ユニット、あるいは通常は並列処理装置といわれる複数個の処理ユニットなどのように、一つまたは複数個の処理装置を備えていてもよい。
ここでいう演算装置とは、コンピュータのマイクロプロセッサーおよび/または一つまたは複数個のコンピュータシステムで動作している一つまたは複数個のマイクロプロセッサーで実行されるように設計されているソフトウエアプログラム(ソフトウエアモジュールまたは分離されたプログラム)のことをいう。さらに他の例としては、ここで開示された処理の各々が、一つまたは複数個のコンピュータシステムで動作している一つまたは複数個のコンピュータプロセッサーを利用して実行されることがある。そのようにしても、本発明のコンピュータ化されたシステムを構成し、本発明の方法を構成することができる。」

(8)「【0071】
本発明のいくつかの実施例をある程度の具体性を持って記載したが、当業者であれば発明の主旨又は範囲内で、開示された実施例を様々に変形させることができる。例えば、本発明の範囲内で、外部モデルの形状102の上に表示される誘導マークにあわせて、心臓の室の表面上における対応位置にカテーテル13を案内することによって、基準ペアを作り出すことができる。同様に、心臓の室の表面上における複数の位置のカテーテル13を置き、その複数個の位置が心臓の室の表面モデルを生成するために使用されてもよい。複数個の位置は「プレイバック」され、それぞれの位置がプレイバックするたびに、ユーザが外部イメージの上で対応する位置を選択するようにしてもよい。イメージの複数個が、ここで開示されるシステムと方法に従って、互いに統合されてもよい(例えば、CTイメージを磁気共鳴イメージに統合し、CTイメージをカテーテル案内システムで生成されたモデルに統合する)。
【0072】
上記説明に含まれるかまたは添付図面に示したすべての事項は、本発明を限定するものではなく単に例示するものであると解釈されることを意図している。添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の趣旨から逸脱することなく、詳細または構造に対する変更を行ってもよい。」

(9)図1


(10)図2



2 引用例1に記載された発明について
(1)上記1(1)【請求項31】の「心臓の少なくとも一部のイメージ」は、
上記1(4)【0026】、【0027】の「外部イメージ」に対応するものである。

(2)上記1(2)【請求項35】の「心臓の少なくとも一部に局所的電場を生成し、カテーテルが遭遇する局所的電場の特性値に基づいて、心臓の少なくとも一部の表面にある位置Xの位置情報を計測する」ものである、上記1(1)【請求項31】の「カテーテル案内システム」は、
上記1(3)の「電場によるローカライゼーションシステム」である、上記1(4)【0026】、【0027】の「カテーテル案内システム」に対応するものである。

(3)上記1(3)【0009】には、「電場によるローカライゼーションシステム」とは「異なるローカライゼーションシステム」として、「磁場によるローカライゼーションシステム」が例示されている。
ここで、上記1(4)【0027】に記載されるとおり、「外部イメージは、異なるローカライゼーションシステムから提供される」ものであるとともに、上記(1)の対応関係があるから、
上記1(1)【請求項31】における「心臓の少なくとも一部のイメージ」は、「電場によるローカライゼーションシステム」とは「異なるローカライゼーションシステム」である「磁場によるローカライゼーションシステム」から提供されるとの変形例も引用例1において想定されていたといえる。

(4)上記(3)に加えて、上記1(4)【0026】に記載されるとおり、「外部イメージ」は、「カテーテル案内システムとは異なる座標系を用いている」とともに、その座標系は、典型的には、「カーテシアン座標」であるから、
上記1(1)【請求項31】における「心臓の少なくとも一部のイメージ」を提供する「磁場によるローカライゼーションシステム」は、「電場によるローカライゼーションシステム」である「カテーテル案内システム」とは、「異なる座標系」である「カーテシアン座標」系を用いるとの変形例も引用例1において想定されていたといえる。

(5)上記1(7)【0070】の記載に鑑みると、上記1(1)【請求項31】の「カテーテルが置かれた心臓の少なくとも一部の表面上の位置Xの計測された位置情報と、選択された位置Yの位置情報を組み合わせて、基準ペア(X,Y)を作る組み合わせ処理装置」、及び、「カテーテル案内システムのn次元空間内における位置を、イメージのn次元空間内における位置に変換するマッピング関数fであり、個々の基準ペアにおいてf(X)の値とYの値の差がほぼゼロとなるマッピング関数fを生成するようにプログラムされている変換処理装置」を備える「カテーテル案内システムを心臓の少なくとも一部のイメージに統合するシステム」を、該「組み合わせ処理装置」と「変換処理装置」等のシステムの各構成の各種処理を各種「ソフトウエアプログラム」として統括的に「実行する」「演算処理装置」と、各種「ソフトウエアプログラム」を「記憶する」「固体装置」を備えるように構成するとの変形例も引用例1において想定されていたといえる。

(6)上記1(1)【請求項31】の「マッピング関数f」とは、「カテーテル案内システムのn次元空間内における位置を、イメージのn次元空間内における位置に変換する」ことを目的とするものであるから、上記1(1)【請求項31】の「システム」は、「マッピング関数fを生成」した後に、「マッピング関数f」を用いて上記のような「位置変換」を行うことは明らかである。

(7)上記(1)ないし(6)を踏まえつつ、上記1(1)ないし(10)の記載を総合すると、つぎの発明が記載されていると認められる。

「カテーテル案内システムを心臓の少なくとも一部のイメージに統合するシステムであり、
心臓の少なくとも一部に挿入されるカテーテルと、
心臓の少なくとも一部の表面上に位置している位置Xにカテーテルを置き、心臓の少なくとも一部の表面上に位置している位置Xの位置情報を計測するカテーテル案内システムと、
心臓の少なくとも一部のイメージであり、心臓の少なくとも一部の表面上に位置している複数個所の位置情報を含んでいるイメージと、
心臓の少なくとも一部のイメージに接続されており、カテーテルが置かれた心臓の少なくとも一部の表面上の位置Xに対応する前記イメージ上の位置Yをユーザが選択することを許容する入力装置と、
カテーテルが置かれた心臓の少なくとも一部の表面上の位置Xの計測されたn次元空間内における位置情報と、選択された位置Yに対応するn次元空間内における位置情報を組み合わせて、基準ペア(X,Y)を作る組み合わせ処理装置と、
カテーテル案内システムのn次元空間内における位置を、前記イメージのn次元空間内における位置に変換するマッピング関数fであり、個々の基準ペアにおいてf(X)の値とYの値の差がほぼゼロとなるマッピング関数fを生成するようにプログラムされている変換処理装置を備えるシステムであって、
前記システムは、前記各構成の各種処理を各種ソフトウェアプログラムとして統括的に実行する演算処理装置と、上記各種ソフトウェアプログラムを記憶する固体装置を備えており、
前記システムは、前記マッピング関数fを生成した後に、前記マッピング関数fを用いて、前記カテーテル案内システムのn次元空間内における位置を、前記イメージのn次元空間内における位置に変換する処理を実行するものであり、
前記カテーテル案内システムが、心臓の少なくとも一部に局所的電場を生成し、カテーテルが遭遇する局所的電場の特性値に基づいて、心臓の少なくとも一部の表面にある位置Xの位置情報を計測するものであり、
前記イメージは、磁場によるローカライゼーションシステムから提供され、
前記磁場によるローカライゼーションシステムは、心臓の少なくとも一部に局所的磁場を生成し、カテーテルが遭遇する局所的磁場の特性値に基づいて、心臓の少なくとも一部の表面上に位置している複数個所の位置情報を計測するものであり、その座標系は、前記カテーテル案内システムの座標系とは異なるカーテシアン座標系である、システム。」(以下、「引用発明1」という。)


3 本願の優先権主張日前に頒布され、原査定の拒絶の理由において別の主引用例として引用された特開2007-21218号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審により付加したもの。)。

(1)「【請求項13】
位置検出システムにおいて、
プローブであって、磁場トランスデューサと少なくとも1個のプローブ電極とを具備し、被験者の体腔の中に導入されるように構成されている、プローブと、
制御装置であって、前記磁場トランスデューサを用いて前記プローブの位置座標を測定し、前記少なくとも1個のプローブ電極と前記被験者の体表面上の1個以上の箇所との間のインピーダンスを測定し、さらに、測定した位置座標を用いて測定したインピーダンスを較正するように、構成されている、制御装置と、を備えている、位置検出システム。」

(2)「【請求項21】
請求項13に記載のシステムにおいて、
前記制御装置は、前記体腔の中の複数の場所において、前記磁場トランスデューサを用いて、位置座標を決定し、前記複数の場所における前記インピーダンスを決定し、さらに、前記複数の場所における前記インピーダンスを決定する較正マップを生成するように、構成されている、システム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムにおいて、
前記較正マップを生成するために用いられるプローブは、第1のプローブであり、
前記システムは、少なくとも1個の第2のプローブ電極を含み、前記体腔の中に導入されるように構成されている第2のプローブ、をさらに備えており、
前記制御装置は、前記少なくとも1個の第2のプローブ電極と前記体表面上の1個以上の箇所との間の前記インピーダンスを測定し、前記較正マップを用いて、前記第2のプローブ電極に関して測定されたインピーダンスを較正することにより、前記第2のプローブの第2の位置座標を決定するように、構成されている、システム。」

(3)「【0003】
また、インピーダンスに基く測定を利用している位置感知システムも開発されている。このようなシステムにおいては、インピーダンスは、体内の物体に固定されている電極と、その体の表面に配置されている電極との間において、測定される。その後、これらのシステムは、インピーダンスの測定値から、体内の物体の位置を導出する。このようなインピーダンスに基く位置検出のための方法は、例えば、ウイットカンプ(Wittkampf)に発行されている米国特許第5,983,126号、スワンソン(Swanson)に発行されている米国特許第6,456,864号、およびナルデラ(Nardella)に発行されている米国特許第5,944,022号、において開示されており、これらの開示の全ては参照により本明細書に組み入れられている。
【0004】
インピーダンスに基く位置検出は、一般に、磁場に基く位置検出よりも、実施するために費用がかからない。電気生理学的なマッピングおよびアブレーションにおいて用いられているカテーテル等のような、多くの標準的なカテーテルは、インピーダンス測定のために利用できる電極を既に組み込んでいる。しかしながら、部分的に、身体における非線形的なインピーダンスにより、インピーダンスに基く位置検出は、磁気に基く方法ほど、正確ではない。」

(4)「【0008】
〔発明の概要〕
本発明の実施形態はハイブリッドの位置検出のシステムおよび方法を提供しており、これらのシステムおよび方法は、磁気的および電気的な位置検出技法を組み合わせている。これらのシステムにおいて、磁気位置センサーは、正確さに劣る電気的なインピーダンスに基く測定値を較正するための、正確な位置基準、を与える。この目的のために、磁気位置センサーと1個以上の電極とを備えている、カテーテル等のような、ハイブリッド・プローブが、磁気の位置測定値をインピーダンスに基く測定値に関連づけるために、用いられている。この種のシステムは、多数の磁気位置センサーの必要性を軽減し、したがって、高精度の磁気位置検出と低コストのインピーダンスに基く検出との両方から恩恵を受ける。
【0009】
本発明の一部の実施形態において、上記のハイブリッド・カテーテルは、心臓の一室等のような、体腔の中に置かれる。さらに、外部から供給される磁場が磁場センサーにより測定され、カテーテルの正確な位置座標が導出される。さらに、体表面の電極からの電流または電圧も供給され、その体表面の電極とカテーテルの電極との間のインピーダンスが測定される。このような二重の位置測定は、較正マップを生成して、上記のインピーダンスの測定値を、磁場センサーにより確かめられた位置座標に関連づけるために、体腔内の多数の場所において繰り返される。」

(5)「【0032】
図2は、本発明の実施形態による、ハイブリッド・カテーテル20を使用している、位置検出システム36の概略的で絵画的な説明図である。このシステム36は、カテーテル20の位置および形状を決定するために用いることができ、以下において説明されているように、カテーテル20により行なわれた測定から、較正マップを生成するために用いることも可能である。この較正マップは、電極を有しているが磁場センサーを持っていなくてもよい追加の侵襲性の医療装置の、後続の位置検出のために、用いることができる。」

(6)「【0034】
制御装置44は、プロセッサ、一般的には、適当な信号処理回路を伴うコンピュータ、を含んでいる。このプロセッサはコンソール52を駆動するために連結されており、このコンソール52は、カテーテル20の場所の視覚表示装置54も備えていてよい。」

(7)「【0043】
一方、十分なデータが集められると、較正マップが、マッピング工程78において、生成される。一般的に、この較正マップは、磁気検出により決定された、座標の格子を含み、(体表面電極のそれぞれに対するか、体表面電極の各対に対する)一組のインピーダンスの測定値がこの格子の各点において記録されている。あるいは、インピーダンスの測定値のそれぞれの組に対応する実際の較正された位置座標を、上記のマップが示すように、上記の格子を逆にすることも可能である。
【0044】
較正マップが完成すると、カテーテル58および/または他の侵襲性の医療装置は、挿入工程80において、体腔の中に挿入される。この第2のカテーテルは、インピーダンスを測定するために使用できる電極を備えているが、このカテーテルは、一般的に、磁場センサーを有していない。次に、第2のインピーダンス測定工程82において、上記第2のカテーテルの電極と体表面電極との間のインピーダンスが測定される。その後、位置検出工程84において、較正マップに対して、測定したインピーダンスを比較することにより、上記のカテーテル電極の位置座標が決定される。さらに、これらの電極の位置に基いて、上記第2のカテーテルの他の要素の位置も決定できるようになる。」

(8)「【0052】
したがって、上述の実施形態は例としてあげられていること、および、本発明が、特定的に図示されていて上記において説明されているもの、に限定されないということ、が認められるであろう。むしろ、本発明の範囲は、上記において説明されている種々の特徴の組み合わせとその類似の組み合わせの両方、ならびに、上記の説明を読めば当業者には想到されると考えられ、先行技術には開示されていない、これらの変形例および変更例、を含む。」

(9)図1


(10)図2


(11)図3


(12)図5


4 引用例2に記載された発明について
(1)上記3(6)【0034】に記載されるとおり、「制御装置」は、コンピュータを含むものである。
また、一般に、コンピュータは、「プログラムを格納する記憶手段」、及び、「記憶手段からプログラムを読み出して実行する演算手段」を備えるものであることは、技術常識であるところ、引用例2に記載された「制御装置」が含む「コンピュータ」も、上記「記憶手段」及び「演算手段」を備えていると認められる。

(2)上記3(1)【請求項13】、上記3(2)【請求項21】、【請求項22】においては、「インピーダンス測定値に基づき位置検出した位置座標」を用いて較正マップを生成するのではなく、「インピーダンス測定値そのもの」を直接用いて較正マップを生成するものである。
これに対して、上記3(4)には、多数の場所において「二重の位置測定」を行うことによって較正マップを生成すること、すなわち、多数の場所において行われる、「磁場トランスデューサに基づく位置測定」と「プローブ電極を用いたインピーダンスに基づく位置測定」の両方から得られた位置座標を互いに関連付けることによって較正マップを生成することも別途示唆されている(そもそも、上記3(3)に記載されるように、プローブ電極を用いたインピーダンスに基づく測定は、本来、「位置検出」を行うためのものであって、「インピーダンスそのもの」を測定することを主たる目的とするものではないことからしても、上記示唆のような態様とすることが可能であるといえる。)。
さらに、引用例2は、上記3(8)に記載されるとおり、特定の実施態様に限定されるものではないから、上記3(4)で示唆されるような、多数の場所において行われる、「磁場トランスデューサに基づく位置測定」と「プローブ電極を用いたインピーダンスに基づく位置測定」の両方から得られた位置座標を互いに関連付けることによって較正マップを生成するとの変形例も引用例2において想定されていたといえる(なお、このことは、意見書、及び、審判請求書において、「引用文献4(※当審注:当審決の「引用例2」)でも、磁気センサーで測定された座標とカテーテル電極で測定された座標の基準対を形成しているものと思われます。」と記載されるように、審判請求人自身も認めていることである。)。

(3)上記(1)及び(2)を踏まえつつ、上記3(1)ないし(12)の記載を総合すると、つぎの発明が記載されていると認められる。

「プローブであって、磁場トランスデューサと少なくとも1個のプローブ電極とを具備し、被験者の体腔の中に導入されるように構成されている、プローブと、
制御装置であって、前記磁場トランスデューサを用いて前記プローブの位置座標を測定し、前記少なくとも1個のプローブ電極と前記被験者の体表面上の1個以上の箇所との間のインピーダンスを測定し、インピーダンス測定値に基づき前記プローブの位置座標を導出し、さらに、前記磁場トランスデューサを用いて測定した位置座標を用いてインピーダンス測定値から導出した位置座標を較正するように、構成されている、制御装置と、を備えている、位置検出システムにおいて、
前記制御装置は、コンピュータを含んでおり、
前記コンピュータは、制御装置が行う各処理に関するプログラムを格納する記憶手段、前記記憶手段からプログラムを読み出して実行する演算手段を備え、
前記制御装置は、多数の場所において、前記磁場トランスデューサを用いて測定した位置座標と、前記インピーダンス測定値から導出した位置座標とを、関連付けた較正マップを生成するように、構成されており、
前記較正マップを生成するために用いられるプローブは、第1のプローブであり、
前記システムは、少なくとも1個の第2のプローブ電極を含み、前記体腔の中に導入されるように構成されている第2のプローブ、をさらに備えており、
前記制御装置は、前記少なくとも1個の第2のプローブ電極と前記体表面上の1個以上の箇所との間の前記インピーダンスを測定し、インピーダンス測定値に基づき前記第2のプローブの位置座標を導出し、前記較正マップを用いて、前記第2のプローブ電極に関して導出された位置座標を較正することにより、前記第2のプローブの第2の位置座標を決定するように、構成されている、システム。」(以下、「引用発明2」という。)


第5 対比及び判断
1 引用発明1を主引用発明とする場合
(1)本願発明と引用発明1との対比
ア 引用発明1の「カテーテル」は、本願発明の「医療デバイス」に相当する。
また、引用発明1の「カテーテル案内システムを心臓の少なくとも一部のイメージに統合するシステム」は、「前記マッピング関数fを用いて、前記カテーテル案内システムのn次元空間内における位置」を、「前記イメージのn次元空間内における位置に変換する」ことにより、「カテーテル」の「位置」をイメージ上で決定するものであるから、
引用発明1の「カテーテル案内システムを心臓の少なくとも一部のイメージに統合するシステム」は、本願発明の「医療デバイスの位置を決定するためのシステム」に相当する。

イ 引用発明1の「演算処理装置」、「各種ソフトウェアプログラム」は、それぞれ、本願発明の「電子制御ユニット(ECU)」、「ロジック」に相当する。
また、引用発明1の「演算処理装置」は、「各種ソフトウェアプログラム」を実行するために、「固体装置」に記憶された「各種ソフトウェアプログラム」を、読み出す必要があるから、引用発明1の「固体装置」は、「演算処理装置」に結合されたものといえる。
してみると、引用発明1の「演算処理装置」に結合された「固体装置」は、本願発明の「前記ECUに結合されたコンピュータ可読メモリ」に相当する。
また、引用発明1の「演算処理装置」に「実行」される「各種ソフトウェアプログラム」であって、「固体装置」が「記憶する」「各種ソフトウェアプログラム」は、本願発明の「前記ECUによって実行されるように構成された前記メモリ内に格納されるロジック」に相当する。

ウ 引用発明1の「マッピング関数f」、「『個々の基準ペアにおいてf(X)の値とYの値の差がほぼゼロとなるマッピング関数fを生成する』『プログラム』」、「基準ペア(X,Y)」、「カテーテル案内システム」、「『前記磁場によるローカライゼーションシステム』の『カーテシアン座標系』『とは異なる』『前記カテーテル案内システムの座標系』」、「カテーテルが置かれた心臓の少なくとも一部の表面上の位置Xの計測されたn次元空間内における位置情報」、「磁場によるローカライゼーションシステム」、「カーテシアン座標系」、「選択された位置Yに対応するn次元空間内における位置情報」、「n次元空間」は、それぞれ、
本願発明の「補間関数」、「補間アルゴリズム」、「基準対」、「第1の測位システム」、「『第1の非正規直交座標系』、または、『第1の座標系』」、「第1の座標」、「第2の測位システム」、「『第2の正規直交座標系』、または、『第2の座標系』」、「第2の座標」、「三次元(3D)空間」に相当する。

エ 上記ウに鑑みると、引用発明1の「プログラム」によって、「個々の基準ペアにおいてf(X)の値とYの値の差がほぼゼロとなるマッピング関数fを生成する」ことは、
本願発明の「前記ロジックは、補間関数を確立し、」「前記ロジックは、補間アルゴリズムを複数の基準対に適用して前記補間関数をもたらすことによって前記補間関数を決定する」ことに相当する。

オ 上記ウに鑑みると、引用発明1の「前記システムは、前記マッピング関数fを生成した後に、前記マッピング関数fを用いて、前記カテーテル案内システムのn次元空間内における位置を、前記イメージのn次元空間内における位置に変換する処理を実行するものであ」ることは、「前記システム」が「前記各構成の各種処理を各種ソフトウェアプログラムとして統括的に実行する演算処理装置と、上記各種ソフトウェアプログラムを記憶する固体装置を備えて」いるものであることに鑑みると、実質的に「各種ソフトウェアプログラム」が、「前記マッピング関数fを生成した後に、前記マッピング関数fを用いて、前記カテーテル案内システムのn次元空間内における位置を、前記イメージのn次元空間内における位置に変換する処理を実行するものであ」ることであるといえる。
してみると、引用発明1の「前記システムは、前記マッピング関数fを生成した後に、前記マッピング関数fを用いて、前記カテーテル案内システムのn次元空間内における位置を、前記イメージのn次元空間内における位置に変換する処理を実行するものであ」ることは、
本願発明の「前記ロジック」が「前記補間関数を第1の非正規直交座標系内の第1の座標に適用して、第2の正規直交座標系内の対応する第2の座標を決定する」ものであることに相当する。

カ 上記ウに鑑みると、引用発明1の「基準ペア(X,Y)」が、「カテーテル案内システムが、」「計測する」「カテーテルが置かれた心臓の少なくとも一部の表面上の位置Xの計測されたn次元空間内における位置情報」と、「磁場によるローカライゼーションシステム」が「計測する」「選択された位置Yに対応するn次元空間内における位置情報」「を組み合わせ」たものであることは、
本願発明の「それぞれの基準対は(1)第1の測位システムによって測定された前記第1の座標系内の第1の座標と、(2)第2の測位システムによって測定された前記第2の座標系内の第2の座標とを備え」ることに相当する。

キ 上記ウに鑑みると、引用発明1の「基準ペア(X,Y)」を構成する「カテーテルが置かれた心臓の少なくとも一部の表面上の位置Xの計測された」「位置情報」と、「選択された位置Yに対応する」「位置情報」とが、それぞれ、「n次元空間内における」「位置情報」であることは、
本願発明1の「それぞれの基準対は三次元(3D)空間内の物理的点に対応する」ことと、
「それぞれの基準対は三次元(3D)空間内の点に対応する」ことという点で共通する。

ク 以上のとおりであるから、引用発明1と本願発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1aで相違する。

<一致点>
「医療デバイスの位置を決定するためのシステムであって、
電子制御ユニット(ECU)と、
前記ECUに結合されたコンピュータ可読メモリと、
前記ECUによって実行されるように構成された前記メモリ内に格納されるロジックであって、前記ロジックは、補間関数を確立し、前記補間関数を第1の非正規直交座標系内の第1の座標に適用して、第2の正規直交座標系内の対応する第2の座標を決定するように構成される、ロジックと、を備え、
前記ロジックは、補間アルゴリズムを複数の基準対に適用して前記補間関数をもたらすことによって前記補間関数を決定するように構成され、それぞれの基準対は(1)第1の測位システムによって測定された前記第1の座標系内の第1の座標と、(2)第2の測位システムによって測定された前記第2の座標系内の第2の座標とを備え、それぞれの基準対は三次元(3D)空間内の点に対応する、システム。」

<相違点1a>
基準対について、本願発明は、三次元(3D)空間内の「物理的点に対応するもの」であるのに対して、
引用発明1の、「基準ペア(X,Y)」を構成する「カテーテルが置かれた心臓の少なくとも一部の表面上の位置Xの計測されたn次元空間内における位置情報」と、「選択された位置Yに対応するn次元空間内における位置情報」とが、それぞれ、n次元空間内における「物理的点に対応するもの」であるのかが明らかでない点

(2)当審の判断
ア 相違点1aについての検討
(ア)引用例1の【0048】(上記第4の1(5)を参照。)に、「第1位置Y_(1)は、3次元外部イメージに対して測定された座標値(x、y、z)で表現されている位置情報を備えている。」と記載されている。
このことからすると、引用発明1の、「基準ペア(X,Y)」の一方を構成する「選択された位置Y(2次元イメージ上の座標)」に対応する「n次元空間内における位置情報」とは、「選択された位置Y」が備える、測定された「n次元空間内における位置情報」、すなわち、「磁場によるローカライゼーションシステム」によって、物理的に実在する「実空間」の座標として「計測」される「位置情報」であるから、引用発明1の、「基準ペア(X,Y)」の一方を構成する「選択された位置Yに対応するn次元空間内における位置情報」は、本願発明のような、三次元(3D)空間内の「物理的点に対応する」ものであるといえる。

(イ)引用発明1の「基準ペア(X,Y)」の他方を構成する「カテーテルが置かれた心臓の少なくとも一部の表面上の位置Xの計測されたn次元空間内における位置情報」は、「カテーテル案内システムが、」「計測する」ものであり、物理的に実在する「実空間」の座標として「計測」されるものであるから、本願発明のような、三次元(3D)空間内の「物理的点に対応する」ものであるといえる。

(ウ)以上のとおりであるから、上記相違点1aは、実質的な相違点とはいえないし、仮に相違点であるとしても、引用例1の【0048】を参考に、引用発明1の「選択された位置Yに対応するn次元空間内における位置情報」を、「磁場によるローカライゼーションシステム」によって、「計測」される「座標値」として、相違点1aに係る構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

イ 本願発明の効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明1及び引用例1に記載の事項から予測される範囲内であって、格別なものでない。

ウ 小活
上記のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用例1に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


2 引用発明2を主引用発明とする場合
(1) 本願発明と引用発明2との対比
ア 引用発明2の「被験者の体腔の中に導入されるように構成されている、」「『プローブ、または、第1のプローブ』及び『第2のプローブ』」は、本願発明の「医療デバイス」に相当する。
してみると、引用発明2の「前記磁場トランスデューサを用いて前記プローブの位置座標を測定し、」「前記第2のプローブの第2の位置座標を決定するように、構成されている」「位置検出システム」は、本願発明の「医療デバイスの位置を決定するためのシステム」に相当する。

イ 引用発明2の「演算手段」、「制御装置が行う各処理に関するプログラム」は、それぞれ、本願発明の「電子制御ユニット(ECU)」、「ロジック」に相当する。
また、引用発明2の「演算手段」は、「前記記憶手段からプログラムを読み出して実行する」ものであるから、引用発明2の「記憶手段」は、「演算手段」に結合されたものといえる。
してみると、引用発明2の「演算手段」に結合された「記憶手段」は、本願発明の「前記ECUに結合されたコンピュータ可読メモリ」に相当する。
また、引用発明2の「演算手段」に「実行」される「プログラム」であって、「記憶手段」が「格納する」「プログラム」は、本願発明の「前記ECUによって実行されるように構成された前記メモリ内に格納されるロジック」に相当する。

ウ 引用発明2の「『前記少なくとも1個のプローブ電極と前記被験者の体表面上の1個以上の箇所との間のインピーダンスを測定し、インピーダンス測定値に基づき前記プローブの位置座標を導出』するもの」、「『前記少なくとも1個のプローブ電極と前記被験者の体表面上の1個以上の箇所との間のインピーダンスを測定し、インピーダンス測定値に基づき』『導出』される『前記プローブの位置座標』」、「『前記磁場トランスデューサを用いて前記プローブの位置座標を測定』するもの」、「『磁場トランスデューサを用いて』『測定し』た『前記プローブの位置座標』」、は、それぞれ、
本願発明の「第1の測位システム」、「第1の座標」、「第2の測位システム」、「第2の座標」に相当する。
してみると、引用発明2の、「多数の場所」のうちのある1つの場所における、「『前記少なくとも1個のプローブ電極と前記被験者の体表面上の1個以上の箇所との間のインピーダンスを測定し、インピーダンス測定値に基づき』『導出』される『前記プローブの位置座標』」と、「『磁場トランスデューサを用いて』『測定し』た『前記プローブの位置座標』」とを、「関連付け」た1組が、
本願発明の「(1)第1の測位システムによって測定された前記第1の座標系内の第1の座標と、(2)第2の測位システムによって測定された前記第2の座標系内の第2の座標とを備え」る「基準対」に相当するといえる。

エ 上記ウに鑑みると、引用発明2の「前記第2のプローブ電極に関して導出された位置座標を較正する」ものであって、「多数の場所において、前記磁場トランスデューサを用いて測定した位置座標と、前記インピーダンス測定値から導出した位置座標とを、関連付けた較正マップ」と、
本願発明の「第1の非正規直交座標系内の第1の座標に適用して、第2の正規直交座標系内の対応する第2の座標を決定する」ものであって、「補間アルゴリズムを複数の基準対に適用して」「もたら」され、「確立」、「決定」される「補間関数」とは、
「第1の座標系内の第1の座標に適用して、第2の座標系内の対応する第2の座標を決定する」ものであって、「アルゴリズムを複数の基準対に適用して」「もたら」され、「確立」、「決定」される「関数」であるという点で共通するといえる。

オ 以上のとおりであるから、引用発明2と本願発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点2aないし2cで相違する。

<一致点>
「医療デバイスの位置を決定するためのシステムであって、
電子制御ユニット(ECU)と、
前記ECUに結合されたコンピュータ可読メモリと、
前記ECUによって実行されるように構成された前記メモリ内に格納されるロジックであって、前記ロジックは、関数を確立し、前記関数を第1の座標系内の第1の座標に適用して、第2の座標系内の対応する第2の座標を決定するように構成される、ロジックと、を備え、
前記ロジックは、アルゴリズムを複数の基準対に適用して前記関数をもたらすことによって前記関数を決定するように構成され、それぞれの基準対は(1)第1の測位システムによって測定された前記第1の座標系内の第1の座標と、(2)第2の測位システムによって測定された前記第2の座標系内の第2の座標とを備える、システム。」

<相違点2a>
座標系について、本願発明は、「第1の測位システムによって測定された前記第1の座標系」は、「非正規直交座標系」であり、「第2の測位システムによって測定された前記第2の座標系」は、「正規直交座標系」であるのに対して、
引用発明の、「インピーダンス測定値から導出した位置座標」と、「前記磁場トランスデューサを用いて測定した位置座標」のそれぞれの座標系が明らかでない点

<相違点2b>
基準対について、本願発明は、「三次元(3D)空間内の物理的点に対応する」ものであるのに対して、
引用発明の、「関連付け」られた「インピーダンス測定値から導出した位置座標」と、「前記磁場トランスデューサを用いて測定した位置座標」のそれぞれが、「三次元(3D)空間内の物理的点に対応する」ものであるのかが明らかでない点

<相違点2c>
関数について、本願発明は、「補間アルゴリズム」の適用によって、もたらされる「補間関数」であって、第1の座標系と第2の座標系の対応関係について、複数の「基準対」の各座標のみを「離散的」に規定するのではなく、複数の「基準対」の各座標の間の範囲も「補間」して「連続的」に両座標系の対応関係を規定した「補間関数」であるのに対して、
引用発明2には、「較正マップ」をもたらす「アルゴリズム」が「補間アルゴリズム」であるのか明らかでないとともに、「較正マップ」が、本願発明のように、第1の座標系と第2の座標系の対応関係を「補間」しつつ「連続的」に規定するものであるのか、あるいは、「補間」せずに「離散的」に規定するものであるのかが明らかでない点

(2)当審の判断
ア 相違点2aについての検討
(ア)引用発明2の「インピーダンス測定値から導出した位置座標」は、「プローブ電極と前記被験者の体表面上の1個以上の箇所との間のインピーダンスを測定」によるものである。
また、インピーダンス測定は、引用例2の【0004】(上記第4の3(3)を参照。)に、「部分的に、身体における非線形的なインピーダンスにより、インピーダンスに基く位置検出は、磁気に基く方法ほど、正確ではない。」と記載されるように、位置検出が不正確なものである。
インピーダンス測定の位置検出の不正確さは、完全な直交座標系ではないこと、すなわち、患者の体表面上のパッチ電極の配置(座標系の軸に関係)を正確に行うことは困難であり所定の誤差は不可避であることに起因するものであるといえる(例えば、引用例1の【0030】に「…。表面電極(パッチ電極)の3セットが患者11の表面に貼られている様子が示されており、X軸、Y軸、Z軸という、3つの概ね直交する3軸を定義している。X軸の表面電極12,14は、患者の胸部の側方(例えば患者の脇下の皮膚に貼られている)を向いている第1軸に沿って患者に貼られており、左電極と右電極といわれる。Y軸の表面電極18,19は、患者の内腿と首部を通る第2軸(X軸にほぼ直交している)に沿って患者に貼られており、左脚電極と首電極といわれる。Z軸の表面電極16,22は、患者の胸部の胸骨と脊柱を通る第3軸(X軸とY軸の両者にほぼ直交している)に沿って患者に貼られており、胸電極と背中電極といわれる。…。」等を参照。)。
その他にも、人体内には各種臓器等が存在するところ電気的特性(座標系の歪みに関係)が均一ではないことも、位置検出が不正確となることの要因の一つであるといえる(例えば、引用例2の【0004】の上記下線部に加え、引用例1の【0020】の「本発明の有利な他の点は、カテーテル案内システムを局所的に歪ませて外部モデルに統合することを許容することであり、カテーテル案内システムの非線形性と非均質性を補償することができることである。」の記載等から示唆される事項である。)。

上記のインピーダンス測定の技術的な性質を踏まえると、引用発明2の「インピーダンス測定値から導出した位置座標」の座標系は、不完全な「正規直交座標系」となることを避けられないから、「非正規直交座標系」に属するものと解するのが相当である。

(イ)磁場を用いた位置測定において「正規直交座標系」を採用することは周知技術に過ぎないところ、引用発明2の「前記磁場トランスデューサを用いて測定した位置座標」の座標系として、「正規直交座標系」を採用することは、当業者が適宜なし得ることである。

イ 相違点2bについての検討
引用発明2の互いに「関連付け」られた、「インピーダンス測定値から導出した位置座標」も、「前記磁場トランスデューサを用いて測定した位置座標」も、それぞれ、物理的に実在する「実空間」の座標として測定、導出されるものであるから、本願発明のような「三次元(3D)空間内の物理的点に対応する」ものであるといえる。
よって、上記相違点2bは、実質的な相違点ではない。

ウ 相違点2cについての検討
(ア)引用発明2の「較正マップ」とは、引用例2の【0032】(上記第4(5)を参照。)のとおり、「電極を有しているが磁場センサーを持っていなくてもよい追加の侵襲性の医療装置の、後続の位置検出のために、用いる」ものであって、かつ、引用例2の【0044】(上記第4(7)を参照)のとおり、「後続の位置検出を行う際の測定値」と「較正マップ」とを「比較」することによって、位置を較正するものである。

(イ)引用発明2においては、後続の位置検出を行う際に、「較正マップ」生成時と全く同じ位置にプローブが位置することは、理論上不可能ではないものの、現実には極めて困難であるとの事情が存在する。
そのような事情を踏まえると、引用発明2の「較正マップ」が「補間」せずに「離散的」に形成されているときには、「後続の位置検出を行う際の測定値の位置座標」と「較正マップを構成する離散的な座標」との「比較」を行う際に、ほとんどの場合において、「後続の位置検出を行う際の測定値の位置座標」に一致する座標が「較正マップを構成する離散的な座標」に存在せず、結果的に位置を較正できなくなることになる。
逆に、引用発明2の「較正マップ」が「補間」しつつ「連続的」に形成されているときには、「比較」を行う際に「後続の位置検出を行う際の測定値の位置座標」に一致する座標が「較正マップを構成する離散的な座標」に存在することになるから、上記のような技術的な問題は生じない。

(ウ)上記(イ)の検討を踏まえると、引用発明2の「較正マップ」は、「補間」せずに「離散的」に形成されているものというよりは、むしろ、第1の座標系と第2の座標系の対応関係を「補間」しつつ「連続的」に規定するものであるとするのが自然な解釈である。
そのような解釈に伴い、「較正マップ」をもたらす「アルゴリズム」も「補間アルゴリズム」であると解することになる。
よって、上記相違点2cは、実質的な相違点ではない。

(エ)仮に、相違点であるとしても、連続的な補間関数により位置較正を行うことは、例えば、引用例1に「マッピング関数fを用いて位置情報を変換すること」(請求項31、【0053】等を参照。)が記載されているように、通常行い得ることに過ぎない。
そして、引用発明2は、上記(ア)のような、「比較」による位置較正を行うものであり、上記(イ)のような「比較」に伴う問題を回避すべきことは明らかであるから、引用例1に代表される「連続的な補間関数により位置較正を行うこと」を参考に、引用発明2の「較正マップ」として、「補間」しつつ「連続的」に形成された「較正マップ」を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。また、その際の「較正マップ」をもたらす「アルゴリズム」は、「補間アルゴリズム」に相当することになる。

イ 本願発明の効果について
本願発明の奏する効果は、引用発明2及び引用例2に記載の事項、または、引用発明2及び引用例1、2に記載の事項から予測される範囲内であって、格別なものでない。

ウ 小活
上記のとおり、本願発明は、引用発明2及び引用例2に記載の事項、または、引用発明2及び引用例1、2に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


第6 むすび
上記第5の1及び2で検討したとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
そして、本願発明が特許を受けることができないものであると判断される以上、本件補正の適否にかかわらず、本願は拒絶すべきものと判断されることは、上記第2で説示したとおりである。
したがって、本件補正の適否や、その他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-13 
結審通知日 2016-12-20 
審決日 2017-01-05 
出願番号 特願2014-529707(P2014-529707)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門田 宏永田 浩司杉田 翠  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 小川 亮
▲高▼見 重雄
発明の名称 インピーダンスおよび磁界の測定を使用するカテーテルのナビゲーション  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  

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