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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1328406
審判番号 不服2016-5148  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-07 
確定日 2017-06-06 
事件の表示 特願2011-544480「反射防止物品及びこれを作製する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月 8日国際公開、WO2010/078071、平成24年 6月21日国内公表、特表2012-514238、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年12月18日(優先権主張外国庁受理 2008年12月30日 (US)アメリカ合衆国、2009年3月5日 (US)アメリカ合衆国、2009年8月18日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成24年12月18日及び平成26年1月9日に手続補正がなされ、同年1月31日付けで拒絶理由が通知され、同年7月29日に誤訳訂正がなされるとともに意見書が提出され、同年12月22日付けで拒絶理由が通知され、平成27年7月6日に誤訳訂正がなさるとともに意見書が提出されたが、同年12月18日付けで平成27年7月6日になされた誤訳訂正が却下されるともに拒絶査定がされ、これに対し、平成28年4月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正及び誤訳訂正がなされ、その後、当審において、平成29年2月7日付けで拒絶理由が通知され、同年4月18日に手続補正がなされるとともに意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成29年4月18日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1ないし6に係る発明は次のとおりである。

「 【請求項1】
複合体であって
(a)少なくとも90%の可視光線透過率及び5%未満のヘイズを有し、対向する第1表面及び第2表面を有する、基材と、
(b)前記基材の前記第1表面上に配置されたナノ構造化物品であって、マトリックス及び前記マトリックス内に分散されたナノスケールの分散相を含み、かつランダムなナノ構造化異方性表面を有し、前記ランダムなナノ構造化異方性表面が、幅に対する高さの比率であるアスペクト比が5以上である構造的凹凸を含み、前記ランダムなナノ構造化異方性表面がナノピラーを前記基材の前記第1表面に対して概して垂直方向に含み、前記ナノピラーの過半数が、前記マトリックス中の前記ナノスケールの分散相で末端保護されている、ナノ構造化物品と、
(c)前記基材の前記第2表面上に配置され、少なくとも90%の可視光線透過率及び5%未満のヘイズを有する、光学的に透明な接着剤と、を含む、複合体。
【請求項2】
電子用途のディスプレイであって、前記光学的に透明な接着剤がガラス基材又は偏光子に接触するように前記ガラス基材に積層された請求項1に記載の複合体を含み、液晶ディスプレイモジュールを有する積層体を組み立てた、電子用途のディスプレイ。
【請求項3】
前記ナノスケールの分散相が、SiO_(2)、ZrO_(2)またはこれらの組み合わせのナノ粒子を含み、前記マトリックスが、マルチ(メタ)アクリレート、ポリエステル、エポキシ、フルオロポリマー、ウレタン、シロキサン、又はこれらのブレンド若しくはこれらのコポリマーを含むポリマーを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記ナノスケールの分散相がSiO_(2)、ZrO_(2)、TiO_(2)、ZnO、Al_(2)O_(3)、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、ポリ(テトラフルオロエチレン)、カーボン、またはこれらの組み合わせのナノ粒子を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記マトリックス内の前記分散相の濃度が、5重量%?90重量%である、請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
前記ナノ構造化物品がマイクロ構造化表面を含み、前記ナノ構造化異方性表面が前記マイクロ構造化表面上に位置する、請求項1に記載の複合体。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

第3 原査定の理由の概要
原査定の理由2は、概ね、本件出願の請求項1ないし6に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
なお、原査定の理由1は、本件出願の特許請求の範囲の記載が不備であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものであるが、当該理由1は、平成28年4月7日になされた手続補正及び誤訳訂正により解消している。



1.特開平7-104103号公報
2.特表2006-512442号公報
3.特開2003-129008号公報
4.特開2002-261261号公報
5.特開2005-331910号公報

第4 原査定の理由についての当審の判断
1 刊行物の記載事項
(1)引用例1の記載事項
本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であって、原査定において引用文献1として引用された特開平7-104103号公報(以下「引用例1」という。)には、次のアないしクの事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。
ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ベース基材上に設けた超微粒子含有の硬化バインダ層をイオン又は/及び紫外線照射によるドライエッチング方式で超微粒子の背部を残して除去し、超微粒子を硬化バインダ層の残部で固着させた状態で露出させることを特徴とする反射防止部材の製造方法。
【請求項2】 超微粒子が平均粒径50?300nmのものを70重量%以上含有するシリカからなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】 硬化バインダ層のバインダ成分がメタクリル酸メチル、イソブチレン又は/及びα-メチルスチレンを主成分とするものである請求項1に記載の方法。
【請求項4】 ドライエッチング方式が真空グロー放電による希ガスイオンのスパッタエッチング方式又はエキシマレーザー照射方式である請求項1に記載の方法。
【請求項5】 ベース基材にプラスチックフィルムを用いて請求項1?4に記載の方法で得た反射防止部材の片面に接着剤層を有することを特徴とする反射防止部材。
【請求項6】 請求項5に記載の反射防止部材を偏光子の片側における保護フィルムとして有することを特徴とする偏光板。」

イ「【0008】ベース基材としては、光学材料として用いうる透明体であれば特に限定はない。一般には、ガラスや、ポリエステル、トリアセチルセルロースの如きプラスチックからなる板、フィルムないしシートなどが用いられる。また偏光板や位相差板等の光学機能素材なども用いうる。」

ウ「【0011】超微粒子としては、セラミック等の無機物やプラスチック等の有機物からなる種々のものを用いることができる。好ましく用いうる超微粒子は、硬質で可及的に球状であり、光透過率に優れるものである。その例としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどからなるものがあげられ、就中シリカが入手容易である。」

エ「【0013】超微粒子の平均粒径は、30?200nm、就中50?200nmが一般的である。その平均粒径が300nmを超えると視界障害となる干渉が現れやすくなる。かかる点より用いる超微粒子は、平均粒径が50?300nmのものを70重量%以上含有するものが好ましい。」

オ「【0016】硬化バインダ層の形成は、例えば適宜な溶媒を用いて超微粒子混入のバインダ成分の溶液を調製し、それをベース基材に塗工して形成した塗工層を加熱方式や紫外線ないし放射線照射方式等のバインダ成分に応じた方式で硬化処理する方式などにより行うことができる。
【0017】前記調製液の塗工は、例えばディッピング方式やスピンコート方式、グラビア方式やスプレー方式などの適宜な薄膜塗工方式で行うことができる。塗工厚は、混入させた超微粒子の平均粒径の約1?約2倍が好ましい。その厚さが薄すぎると超微粒子の高密度な分散状態を形成できない場合があり、厚すぎると超微粒子が多段に重なりあった分散状態が形成されて反射防止効果の低下を招く場合がある。
【0018】好ましい超微粒子の分散状態は、超微粒子の重なりが2段以下であり均等に分散した1層状態の面積が可及的に多く占めるものである。また超微粒子が平面面積に基づきベース基材面の65%以上、就中70?95%占めることが好ましい。かかる塗工層を形成する点より、バインダ成分100重量部あたり超微粒子を50?200重量部、就中70?150重量部含有する、固形分濃度0.1?30重量%、就中0.5?20重量%の塗工液を調製することが好ましい。」

カ「【0024】接着剤層の形成には、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤やホットメルト系接着剤などの適宜なものを用いうる。設ける接着剤層は、透明性や耐候性等に優れるものが好ましく、また透過率の低減防止等の点より屈折率差がベース基材の±5%以内のものが好ましい。接着剤層の付設は、塗工方式やセパレータ上に設けたものの移着方式など適宜な方式で行ってよい。なお接着剤層が粘着層の場合には、実用に供するまでの間その表面をセパレータ等で保護しておくことが好ましい。」

キ「【0029】実施例1
アクリルウレタン樹脂90部(重量部、以下同じ)、アクリル系樹脂10部、ポリイソシアネート1部、及び光重合開始剤5部からなる紫外線硬化型のバインダを、平均粒径100nmのシリカ(6重量%)分散メタノール液1600部に添加混合し、それを厚さ100μmのポリカーボネートフィルムにディッピング方式にてコーティングし100℃で3分間乾燥させて厚さ0.15μmの塗膜を形成後、高圧水銀ランプにて紫外線を50mj/cm^(2)照射し硬化させて超微粒子含有の硬化バインダ層を形成した。
【0030】次に前記の硬化バインダ層を、500eVのアルゴンイオンで60秒間スパッタエッチング処理した。これにより超微粒子の背部を残してバインダ成分が除去され、背部の硬化バインダ層残部で超微粒子が強固に固着された状態で露出した反射防止部材(図1B)を得た。この反射防止部材は、耐摩耗性に優れてその超微粒子が脱落しにくく、可視光の反射率が0.3%であった。」

ク 図1Bは次のとおりのものである。


ケ 上記アないしクの記載事項から、引用例1には、次の発明が記載されていると認められる。

「ベース基材上に設けた超微粒子含有の硬化バインダ層をイオンによるドライエッチング方式で超微粒子の背部を残して除去し、超微粒子を硬化バインダ層の残部で固着させた状態で露出させる反射防止部材の製造方法で得た反射防止部材の片面に接着剤層を有する反射防止部材であって、
前記ベース基材としては、ガラスや、ポリエステル、トリアセチルセルロースの如きプラスチックからなる板、フィルムないしシートなど光学材料として用いうる透明体が用いられ、
前記超微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどセラミック等の無機物やプラスチック等の有機物からなる、硬質で可及的に球状であり、好ましくは、平均粒径が50?300nmのものを70重量%以上含有し、光透過率に優れる種々のものを用いることができ、
前記硬化バインダ層は、適宜な溶媒を用いて超微粒子混入のバインダ成分の溶液を調製し、それをベース基材に塗工して形成した塗工層を加熱方式や紫外線ないし放射線照射方式等のバインダ成分に応じた方式で硬化処理する方式などにより形成することができ、
前記調製液の塗工は、ディッピング方式やスピンコート方式、グラビア方式やスプレー方式などの適宜な薄膜塗工方式で行うことができ、その際の塗工厚は、その厚さが薄すぎると超微粒子の高密度な分散状態を形成できない場合があり、厚すぎると超微粒子が多段に重なりあった分散状態が形成されて反射防止効果の低下を招く場合があるので、混入させた超微粒子の平均粒径の約1?約2倍が好ましく、
好ましい前記超微粒子の分散状態は、超微粒子の重なりが2段以下であり均等に分散した1層状態の面積が可及的に多く占めるものであり、超微粒子が平面面積に基づきベース基材面の65%以上占めることが好ましく、かかる塗工層を形成する点より、バインダ成分100重量部あたり超微粒子を50?200重量部含有する、固形分濃度0.1?30重量%の塗工液を調製することが好ましく、
前記接着剤層は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤やホットメルト系接着剤などの適宜なものを用いて形成し、設ける接着剤層は、透明性や耐候性等に優れるものが好ましいものである、
反射防止部材。」(以下「引用発明」という。)

(2)引用例2の記載事項
本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物であって、原査定において引用文献5として引用された特開2005-331910号公報(以下「引用例2」という。)には、その段落【0051】?【0066】、図1、3、4(いずれも摘記省略。)等に、コロイド粒子を複数層形成して、表面凹凸構造のアスペクト比を増加させる反射防止膜技術が記載されており、また、段落【0044】には、粒子の層数が多くなるほどアスペクト比が大きくなることが記載されている。よって、引用例2には、「反射防止膜において、コロイド粒子の層数を二層以上に調整することにより、アスペクト比を制御する技術」に関する事項が記載されていると認められる。

2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「ベース基材」、「バインダ成分」及び「接着剤層」は、本願発明の「基材」、「マトリックス」及び「接着剤」に相当する。

(2)引用発明の「反射防止部材」は、ガラスや、ポリエステル、トリアセチルセルロースの如きプラスチックからなる板、フィルムないしシートからなる「ベース基材」(本願発明の「基材」に相当。)上に硬化バインダ層とシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどセラミック等の無機物やプラスチック等の有機物からなる超微粒子を含むものであるから、複合体であるといえる。

(3)引用発明の「ベース基材」(基材)が対向する2つの表面を持つことは自明である。
また、引用発明では、適宜な溶媒を用いて超微粒子混入の「バインダ成分」(本願発明の「マトリックス」に相当。)の溶液を調製し、当該溶液を「ベース基材」(基材)に塗工して形成した塗工層を硬化処理することにより硬化バインダ層を形成するから、前記超微粒子は「バインダ成分」(マトリックス)内に分散されたものである。また、前記超微粒子は、好ましくは、平均粒径が50?300nmのものを70重量%以上含有するものであるから、ナノスケールのものである。

(4)引用発明では、超微粒子含有の硬化バインダ層をイオンによるドライエッチング方式で超微粒子の背部を残して除去し、超微粒子を硬化バインダ層の残部で固着させた状態で露出させているから、エッチング後の硬化バインダ層の表面がランダムなナノ構造化異方性表面を有し、構造的凹凸を含むことは自明である。
また、硬化バインダの残部で固着させた状態の超微粒子が「ベース基材」(基材)の表面から略垂直方向に延びる柱(ピラー)状となることも自明である(引用例1の図1Bからも見てとれる事項である。)。
さらに、超微粒子がナノスケールのものであるから、前記柱(ピラー)は、ナノピラーであり、また、前記柱(ピラー)は、超微粒子の背部にエッチングで除去されなかった硬化バインダ層が残っているものであるから、硬化バインダ層の末端が超微粒子で保護されているといえる。

(5)上記(1)ないし(4)からみて、本願発明と引用発明とは、
「複合体であって
(a)対向する第1表面及び第2表面を有する基材と、
(b)前記基材の前記第1表面上に配置されたナノ構造化物品であって、マトリックス及び前記マトリックス内に分散されたナノスケールの分散相を含み、かつランダムなナノ構造化異方性表面を有し、前記ランダムなナノ構造化異方性表面が、構造的凹凸を含み、前記ランダムなナノ構造化異方性表面がナノピラーを前記基材の前記第1表面に対して概して垂直方向に含み、前記ナノピラーの過半数が、前記マトリックス中の前記ナノスケールの分散相で末端保護されている、ナノ構造化物品と、
(c)前記基材の前記第2表面上に配置され、光学的に透明な接着剤と、を含む、複合体。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記「基板」が、
本願発明では、「少なくとも90%の可視光線透過率及び5%未満のヘイズを有」するのに対し、
引用発明では、光学材料として用いうる透明体であるが、その具体的な可視光線透過率やヘイズは不明である点。

相違点2:
前記「前記ランダムなナノ構造化異方性表面」含む「構造的凹凸」が、
本願発明では、「幅に対する高さの比率であるアスペクト比が5以上である」のに対し、
引用発明では、アスペクト比が特定されていない点。

相違点3:
前記「接着剤」が、
本願発明では、「少なくとも90%の可視光線透過率及び5%未満のヘイズを有する」のに対し、
引用発明では、好ましくは透明性に優れるものであるが、その具体的な可視光線透過率やヘイズは不明である点。

3 判断
(1)事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
引用例1には、構造的凹凸のアスペクト比は明示的に記載されていないが、引用発明は、硬化バインダ層を形成するための調製液を、好ましくは混入させた超微粒子の平均粒径の約1?約2倍の塗工厚で塗工し、塗工層を硬化処理することで硬化バインダ層を形成し、その後、当該硬化バインダ層をイオンによるドライエッチング方式で超微粒子の背部を残して除去し、その表面に構造的凹凸を形成するものであるから、そのアスペクト比が、好ましくは、2を超えないことが明らかである。
そして、前記塗工厚が混入させた超微粒子の平均粒径の約1?約2倍であることが好ましいとされる理由は、薄すぎると超微粒子の高密度な分散状態を形成できない場合があり、厚すぎると超微粒子が多段に重なりあった分散状態が形成されて反射防止効果の低下を招く場合があるためであり、また、好ましい前記超微粒子の分散状態は、超微粒子の重なりが2段以下であり均等に分散した1層状態の面積が可及的に多く占めるものである。また、引用例1に記載された実施例1(上記1(1)キ参照。)の反射防止部材でも、平均粒径100nmのシリカを含む塗工液を用い、厚さ0.15μm(=150nm)の塗膜を形成しているから、構造的凹凸のアスペクト比は150nm/100nm=1.5であって、2を超えていない。
以上のことからみて、引用発明には、構造的凹凸のアスペクト比が2を超えるようになすことについての阻害要因があることは明らかであるから、仮に、当業者が、引用発明に引用例2に記載された技術的事項を適用することを考えたとしても、上記アスペクト比が2を超えるようになすことはない。

(2)小括
上記(1)からみて、相違点1及び3について検討するまでもなく、当業者が、引用発明及び引用例2の記載に基づいて、本願発明を容易に発明することができたとはいえない。

(3)本願の請求項2ないし6に係る発明について
本願の請求項2ないし6に係る発明は、いずれも、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、当業者が引用発明及び引用例2の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 当審の拒絶理由の概要
当審が平成29年2月7日付けで通知した拒絶理由は、概ね、平成28年4月7日になされた手続補正後の請求項1の「前記ナノピラーの過半数が、前記マトリックス中の前記ナノスケールの分散相から露出したナノスケールの分散相で末端保護されている」という事項において、「ナノスケールの分散相から露出したナノスケールの分散相」が、単なる「ナノスケールの分散相」とどのように異なるのか(あるいは異ならないのか)が不明であるため、上記事項全体の意味が不明であり、その結果、請求項1に係る発明の構成の一部が不明であるから、請求項1に係る発明は明確でない、というものである。

第6 当審の拒絶理由についての当審の判断
(1)平成29年4月18日になされた手続補正後の請求項1(以下、単に「補正後の請求項1」という。)は、上記第2において請求項1として掲げたとおりのものである。

(2)補正後の請求項1では、補正前に存在した「ナノスケールの分散相から露出したナノスケールの分散相」という事項から、「ナノスケールの分散相から露出した」が削除され、上記事項は「ナノスケールの分散相」となっているから、当審が通知した拒絶理由に係る記載不備はもはや存在しない。

(3)以上のとおりであるから、当審の拒絶理由は解消している。

第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1ないし6に係る発明は、いずれも、当業者が引用発明及び引用例2の記載に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-22 
出願番号 特願2011-544480(P2011-544480)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G02B)
P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小西 隆  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 西村 仁志
鉄 豊郎
発明の名称 反射防止物品及びこれを作製する方法  
代理人 河原 肇  
代理人 高橋 正俊  
代理人 石田 敬  
代理人 出野 知  
代理人 胡田 尚則  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  
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