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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G21K
管理番号 1328417
審判番号 不服2016-6008  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-22 
確定日 2017-05-19 
事件の表示 特願2012- 48551「電離性放射線照射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月19日出願公開、特開2013-185830〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成24年3月5日を出願日とする特許出願であって、平成27年8月7日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、同年10月15日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたが、平成28年1月29日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年2月8日に請求人に送達され、これに対して、同年4月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、当審において、同年11月30日付けで拒絶理由を通知し,応答期間内である平成29年1月18日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたところである。

2 本願発明
この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年1月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
側面もしくは上面に電離性放射線照射用の照射窓が設けられた筒状の耐熱炉と、前記耐熱炉の外側に配置された電離性放射線照射器とを備え、前記耐熱炉の照射部における雰囲気温度が100℃以上の温度条件下で使用される電離性放射線照射装置であって、
前記電離性放射線照射器が前記耐熱炉の照射窓から離間して配置され、
前記耐熱炉の照射窓に金属箔が設けられると共に、前記電離性放射線照射器の電離性放射線出射用の出射窓に金属箔が設けられ、
前記照射窓の金属箔と前記出射窓の金属箔とが対向して所定の間隔を設けて配置されて前記照射窓の金属箔と前記出射窓の金属箔とが外部空間に開放されており、
さらに、前記照射窓を前記耐熱炉の外部より冷却するための冷却手段が備えられており、
前記冷却手段が、前記照射窓に設けられた前記金属箔に向けて冷却用ガスを吹き付ける冷却手段であり、
前記耐熱炉の照射部における雰囲気温度が327℃以上の温度条件下でフッ素樹脂を連続的に架橋可能とされ、
前記筒状の耐熱炉の搬入口側から搬出口側に向かって、前記フッ素樹脂を加熱する加熱ゾーン、前記フッ素樹脂に電離性放射線を照射する照射ゾーン、前記フッ素樹脂を冷却する冷却ゾーンが順に設けられており、
前記耐熱炉が筒状のマッフルであり、前記マッフルの外側にヒーターが設置されて前記加熱ゾーンにおいて前記ヒーターによりマッフル炉内が加熱されるように構成されており、前記照射ゾーンに前記照射窓が設けられていることを特徴とする電離性放射線照射装置。」

3 引用文献
(1)引用文献1の記載事項、引用発明
当審において通知した拒絶の理由に引用された特開2002-337156号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、下線は当審で付与したものである。
ア 引用文献1には、以下の事項が記載されている。
「【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を達成するため、走行するフッ素樹脂等のシート状物に放射線を照射することによって前記シート状物の架橋を行うシート状物の架橋方法において、複数のシート状物を多段に配置した状態で走行させ、走行する前記複数のシート状物に一括して放射線を照射することによって前記複数のシート状物を同時に架橋することを特徴とするシート状物の架橋方法を提供するものである。
【0013】上記のシート状物としては、フッ素樹脂以外のポリエチレン等も構成材として適用可能であり、また、フッ素樹脂を適用するとき、その形態としては、ソリッドのシート状物、あるいは架橋後に粉砕されるシート状の粉末焼成体のいずれでもよい。放射線としては、電子線等の電離性放射線が扱いやすく好適である。
【0014】多段に配置された各シート状物の走行速度は、放射線の飛程に伴う減衰を考慮して、照射源より離れるにしたがって低速となるように設定することが好ましく、このようにするときには、各シート状物の照射量を同じにして、架橋度合の均質化を図ることが可能となる。
【0015】また、多段に配置されたシート状物の相互間には、窒素ガス等の不活性ガスを循環させ、これによって放射線の照射によるシート状物の昇温を防止するとともに、架橋雰囲気の無酸素化を図ることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】次に、本発明によるシート状物の架橋方法の実施の形態を説明する。図1において、21は電子線照射装置、22は天井に照射窓23を形成した照射室、24は照射室22の前に連結された加熱室、25は照射室22の後ろに連結された冷却室を示す。
【0017】26、27および28は、それぞれ照射室22、加熱室24および冷却室25内に多段に配置されたコンベアを示し、これらは、各段同士が同速で連動して走行するように構成されているとともに、その相互間には、加熱された窒素ガスが強制循環させられている。
【0018】29は加熱室24よりそれぞれ突出させられた各段のコンベア27の端部上に設置されたホッパ、30はホッパ29の内部に収容されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の粉末を示す。図示されてはいないが、ホッパ29には、PTFE粉末30の消失分を補うタンクが連結されている。
【0019】PTFE粉末30は、各ホッパ29より各コンベア27の端部上に平らになるように所定の量ずつ供給され、加熱室24内を通過する間に融点以上に加熱されて嵩密度の小さなシート状物31に固められる。固められたシート状物31は、照射室22において照射装置21より所定の線量の電子線を照射された後、照射による昇温を冷却室25で冷却され、外部に排出される。
【0020】以上のようにして遂行されるこの実施の形態によるシート状物31の架橋作業は、たとえば、以下の条件のもとに行われる。電子線照射装置21の加速電圧:3MV、照射窓23:40μm厚さのTi箔、コンベア26の構成材:同前、コンベア26の段数:5段、シート状物31の厚さ:3mm、シート状物31の嵩密度:0.63g/cm^(3)、シート状物31の相互間隔:100mm、循環窒素ガスの温度:340℃(PTFEの架橋温度)、窒素ガスの循環による熱伝達率:40?50W/m^(2)K。」

「【図1】本発明によるシート状物の架橋方法の実施の形態を示す説明図であり、(a)は使用される装置の平面図、(b)は正面図を示す。」

「【図1】


イ 引用発明
上記【図1】に、電子線照射装置21と照射室22の天井の照射窓23とは対向して離間して配置されていることが図示されていることを踏まえると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「走行するフッ素樹脂等のシート状物に放射線を照射することによって前記シート状物の架橋を行うシート状物の架橋に使用される装置であって、
電子線照射装置21と照射室22の天井の照射窓23とは対向して離間して配置され、照射室22の前に連結された加熱室24、照射室22の後ろに連結された冷却室25とがあり、
照射窓23は、Ti箔であり、
照射室22、加熱室24および冷却室25内に多段に配置されたコンベアが走行するように構成されているとともに、その相互間には、加熱された窒素ガスが強制循環させられ、
循環窒素ガスの温度は、340℃(PTFEの架橋温度)であり、
PTFE粉末30は、各ホッパ29より各コンベア27の端部上に平らになるように所定の量ずつ供給され、加熱室24内を通過する間に融点以上に加熱されて嵩密度の小さなシート状物31に固められ、固められたシート状物31は、照射室22において照射装置21より所定の線量の電子線を照射された後、照射による昇温を冷却室25で冷却され、外部に排出される
装置。」

(2)引用文献2の記載事項、技術事項
ア 当審において通知した拒絶の理由に引用された特開2006-282688号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、下線は当審で付与したものである。
「【0044】
図1、図2、図3を参照して本発明の含フッ素系高分子膜基材の放射線処理方法について説明する。これらの図において、同じ部分は同じ番号を付して表している。図1及び図2は、本発明に係わる含フッ素系高分子膜基材の高温電子線処理装置の例を示している。図1は縦断面図であり、図2は横断面図である。図1において、1は長尺で幅広に形成された含フッ素系高分子膜基材であり、本実施例では、厚さが100μmで幅が30cmで長さが10mのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を用いている。これは、リール2に巻き取られた状態からリール3に巻き取られるように移動する。含フッ素系高分子膜基材1はプーリー4によって位置決めされて高温電子線処理装置10内に導かれて、340℃程度に加熱された後に温度を340±5℃の範囲内に保った状態を維持しつつ電子線を照射される。高温電子線処理装置10の入口部分及び出口部分には冷却用プーリー5及び6が設けられており、これらは含フッ素系高分子膜基材1を機械的に保持してこの部分を常時常温に保つとともに含フッ素系高分子膜基材1の位置決め及び走行を促すように作動する。高温電子線処理装置10の出口部分にはプーリー7及び8が設けられている。プーリー7は位置が固定されており、含フッ素系高分子膜基材1の位置決めを行う。プーリー8には移動可能になっており、予め定められた力F1を常時含フッ素系高分子膜基材1に付与するようになっており、高温電子線処理装置10内の部分に適切な張力を与えるようになっている。プーリー8を通過した含フッ素系高分子膜基材1はリール3によって巻き取られる。
【0045】
高温電子線処理装置10には放射線防護機能と気体封じ込め機能を有する処理容器11が設けられており、内部はアルゴンや窒素等の不活性ガスで満たされている。高温電子線処理装置10には強度が面状に分布した電子線Eを照射する所謂面照射型の電子線照射装置12が設けられている。電子線照射装置12は例えば特開平11-19190号公報に開示された構造の装置で、電子線透過窓13を透過して平面状に分布した300keV程度のエネルギーと10mA程度の電流とを有する電子線を照射できるようになっている。高温電子線処理装置10内には含フッ素系高分子膜基材1が通過するようになっており、含フッ素系高分子膜基材1に対して電子線照射装置12と反対側に発熱体である加熱用ヒータ群30が設けられている。加熱用ヒータ群30と処理容器11の壁との間には熱遮蔽板14が設けられており、処理容器11の過熱を防止している。加熱用ヒータ群30は図示しない熱絶縁体を介して熱遮蔽板14に機械的に支持されている。熱遮蔽板14は必要により水冷等によって冷却されている。処理容器11内で含フッ素系高分子膜基材1と電子線透過窓13との間には第2の電子線透過窓15及びこれを冷却するとともに機械的に支持する隔壁16が設けられている。電子線透過窓13と第2の電子線透過窓15とは、ノズル17から導かれてノズル18から流出する不活性ガスがこれらの間を高速で流れることにより冷却される。」





イ 引用文献2には、以下の技術事項が記載されている。
「含フッ素系高分子膜基材1は高温電子線処理装置10内に導かれて、340℃程度に加熱された後に温度を340±5℃の範囲内に保った状態を維持しつつ電子線を照射され、
高温電子線処理装置10には放射線防護機能と気体封じ込め機能を有する処理容器11が設けられており、
電子線照射装置12は、電子線透過窓13を透過して電子線を照射できるようになっており、
処理容器11内で含フッ素系高分子膜基材1と電子線透過窓13との間には第2の電子線透過窓15及びこれを冷却するとともに機械的に支持する隔壁16が設けられ、
電子線透過窓13と第2の電子線透過窓15とは、ノズル17から導かれてノズル18から流出する不活性ガスがこれらの間を高速で流れることにより冷却される。」

4 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「電子線照射装置21」、「照射室22の天井の照射窓23」は、本願発明の「電離性放射線照射器」、「側面もしくは上面に電離性放射線照射用の照射窓」に相当する。

イ 引用発明の「天井」に「照射窓23」がある「照射室22」、「加熱室24」及び「冷却室25」は、連結され、その内に「加熱された窒素ガスが強制循環させられ」ているから、本願発明の「側面もしくは上面に電離性放射線照射用の照射窓が設けられた筒状の耐熱炉」に相当する。
そして、引用発明の「天井」に「照射窓23」がある「照射室22」、「加熱室24」及び「冷却室25」と、本願発明の「前記耐熱炉が筒状のマッフルであり、前記マッフルの前記照射ゾーンに前記照射窓が設けられていること」とは、共に、「前記耐熱炉が筒状であり、前記照射ゾーンに前記照射窓が設けられていること」で共通する。

ウ 引用発明の「照射窓23は、Ti箔」であることは、本願発明の「前記耐熱炉の照射窓に金属箔が設けられる」ことに相当する。また、「電子線照射装置21」が、電子線出射用の金属箔からなる出射窓を有することは明らかであるから、引用発明も、本願発明の「前記耐熱炉の照射窓に金属箔が設けられると共に、前記電離性放射線照射器の電離性放射線出射用の出射窓に金属箔が設けられ」ていることに相当する構成を備えているといえる。そして、引用発明の「電子線照射装置21と照射室22の天井の照射窓23とは対向して離間して配置され」ることは、本願発明の「前記耐熱炉の外側に配置された電離性放射線照射器とを備え」ていること、「前記電離性放射線照射器が前記耐熱炉の照射窓から離間して配置され」ること及び「前記照射窓の金属箔と前記出射窓の金属箔とが対向して所定の間隔を設けて配置されて前記照射窓の金属箔と前記出射窓の金属箔とが外部空間に開放されて」いることに相当する。

エ 引用発明の「照射室22、加熱室24および冷却室25内に多段に配置されたコンベアが走行するように構成されているとともに、その相互間には、加熱された窒素ガスが強制循環させられ、循環窒素ガスの温度は、340℃(PTFEの架橋温度)であ」ることは、PTFEがフッ素樹脂であることを踏まえると、本願発明の「前記耐熱炉の照射部における雰囲気温度が327℃以上の温度条件下でフッ素樹脂を連続的に架橋可能とされ」ることに相当する。
また、引用発明において、「照射室22」に「340℃」の「加熱された窒素ガスが強制循環させられ」ていることから、引用発明の「走行するフッ素樹脂等のシート状物に放射線を照射することによって前記シート状物の架橋を行うシート状物の架橋に使用される装置」は、本願発明の「前記耐熱炉の照射部における雰囲気温度が100℃以上の温度条件下で使用される電離性放射線照射装置」に相当する。

オ 引用発明の「PTFE粉末30は、各ホッパ29より各コンベア27の端部上に平らになるように所定の量ずつ供給され、加熱室24内を通過する間に融点以上に加熱されて嵩密度の小さなシート状物31に固められ、固められたシート状物31は、照射室22において照射装置21より所定の線量の電子線を照射された後、照射による昇温を冷却室25で冷却され、外部に排出される」ことは、本願発明の「前記筒状の耐熱炉の搬入口側から搬出口側に向かって、前記フッ素樹脂を加熱する加熱ゾーン、前記フッ素樹脂に電離性放射線を照射する照射ゾーン、前記フッ素樹脂を冷却する冷却ゾーンが順に設けられて」いることに相当する。

カ してみると、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。
「側面もしくは上面に電離性放射線照射用の照射窓が設けられた筒状の耐熱炉と、前記耐熱炉の外側に配置された電離性放射線照射器とを備え、前記耐熱炉の照射部における雰囲気温度が100℃以上の温度条件下で使用される電離性放射線照射装置であって、
前記電離性放射線照射器が前記耐熱炉の照射窓から離間して配置され、
前記耐熱炉の照射窓に金属箔が設けられると共に、前記電離性放射線照射器の電離性放射線出射用の出射窓に金属箔が設けられ、
前記照射窓の金属箔と前記出射窓の金属箔とが対向して所定の間隔を設けて配置されて前記照射窓の金属箔と前記出射窓の金属箔とが外部空間に開放されており、
前記耐熱炉の照射部における雰囲気温度が327℃以上の温度条件下でフッ素樹脂を連続的に架橋可能とされ、
前記筒状の耐熱炉の搬入口側から搬出口側に向かって、前記フッ素樹脂を加熱する加熱ゾーン、前記フッ素樹脂に電離性放射線を照射する照射ゾーン、前記フッ素樹脂を冷却する冷却ゾーンが順に設けられており、
前記耐熱炉が筒状であり、前記照射ゾーンに前記照射窓が設けられている電離性放射線照射装置。」

キ そして、本願発明と引用発明は、以下の点で相違する。
(ア)相違点1
筒状の耐熱炉が、本願発明では「マッフル」であり、その外側にヒーターが設置されて炉内が加熱されるように構成されているのに対し、引用発明では、「マッフル」であるとは特定されておらず、また、その外側のヒーターにより炉内が加熱されるように構成されているとは特定されていない点。

(イ)相違点2
本願発明は、「前記照射窓を前記耐熱炉の外部より冷却するための冷却手段が備えられており、前記冷却手段が、前記照射窓に設けられた前記金属箔に向けて冷却用ガスを吹き付ける冷却手段であ」るのに対し、引用発明は、そのような冷却手段について特定していない点。

5 判断
(1)相違点1について
高温の加熱処理を伴う処理炉において、マッフル炉を用いることは周知技術であり、また、特開2011-153733号公報の段落0002に、「マッフル炉は、前記マッフルと、前記マッフルの外部に配置され当該マッフル内の被処理物を間接的に加熱する加熱手段とを備えており」と、特開2002-130954号公報の段落0016に、「マッフル21を加熱手段としてのガスバーナ22,23によって外側から加熱させ、これにより、マッフル21内を間接的加熱雰囲気温度とするようにした」などと記載されているように、マッフルの外側の加熱手段によりマッフル炉内が加熱される構成は、マッフル炉の基本的構成である。
そして、引用発明において、「循環窒素ガスの温度は、340℃(PTFEの架橋温度)」と高温であるから、連結された「照射室22」、「加熱室24」及び「冷却室25」をマッフルで構成し、また、「加熱室24」をマッフルの外側の加熱手段によりマッフル内が加熱されるように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点2について
上記「3(2)イ」から、引用文献2には、「含フッ素系高分子膜基材1は高温電子線処理装置10内に導かれて、340℃程度に加熱された後に温度を340±5℃の範囲内に保った状態を維持しつつ電子線を照射」する際に、「電子線透過窓13」と「第2の電子線透過窓15」(本願発明の用語で言い換えると「出射窓」、「照射窓」といえる。)を、不活性ガスの流れによって冷却するとの技術事項が記載されているといえる。
そして、引用発明と引用文献2に記載された技術事項は、どちらも340℃の高温の雰囲気下にあるフッ素樹脂に対して電子線を照射する技術で共通しており、照射窓における環境も同じであり、引用発明の「照射窓23」においても[当然に冷却の必要性は想定されるので、引用文献2に記載された「電子線透過窓13」と「第2の電子線透過窓15」の冷却に関する技術事項を適用し、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)小括
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及


び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明において検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-21 
結審通知日 2017-03-27 
審決日 2017-04-07 
出願番号 特願2012-48551(P2012-48551)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G21K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 靖  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 森 竜介
森林 克郎
発明の名称 電離性放射線照射装置  
代理人 上代 哲司  
代理人 上代 哲司  

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