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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B61L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B61L
管理番号 1328437
審判番号 不服2015-19422  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-28 
確定日 2017-05-18 
事件の表示 特願2011- 37665「車輪検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月10日出願公開、特開2012-171560〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年2月23日の出願であって、平成26年11月7日付けで拒絶の理由が通知され(発送日:平成26年11月18日)、これに対し、平成27年1月15日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年7月17日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成27年7月28日)、これに対し、平成27年10月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成28年10月7日付けで拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年10月11日)、これに対し、平成28年12月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年12月26日付けで最後の拒絶の理由が通知され(発送日:平成28年12月27日)、これに対し、平成29年2月21日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年2月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年2月21日にされた手続補正についての補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成29年2月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」と言う。)により、次のように補正された。
(1)本件補正前
「【請求項1】
レールを走行する列車の車輪を検出するための近接センサと、
列車が走行する際に発生する前記レールの振動により変位することで電圧を発生し前記近接センサに電力を供給する圧電素子と、
を備え、
前記近接センサが取り付けられるとともに前記圧電素子が内蔵された状態で前記レールに直付けされるケーシングを介して、前記圧電素子に前記レールの振動が伝達されていることを特徴とする車輪検出装置。
【請求項2】
前記圧電素子により発生した電圧を安定化させて電力を前記近接センサに供給する安定化回路をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の車輪検出装置。
【請求項3】
前記安定化回路は、電圧を発生させた前記圧電素子から送られる電力を一時的に蓄電するための蓄電部をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の車輪検出装置。
【請求項4】
前記近接センサは、金属センサであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車輪検出装置。
【請求項5】
前記圧電素子は、前記近接センサに近接するように前記近接センサと前記レールとの間に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車輪検出装置。
【請求項6】
前記ケーシングにより、装置全体が一体化されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車輪検出装置。」
(2)本件補正後
「【請求項1】
レールを走行する列車の車輪を検出するための近接センサと、
列車が走行する際に発生する前記レールの振動により変位することで電圧を発生し前記近接センサに電力を供給する圧電素子と、
を備え、
前記近接センサが取り付けられるとともに前記圧電素子が内蔵された状態で前記レールの一側に設置されるケーシングを介して、前記圧電素子に前記レールの振動が伝達されていることを特徴とする車輪検出装置。
【請求項2】
前記圧電素子により発生した電圧を安定化させて電力を前記近接センサに供給する安定化回路をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の車輪検出装置。
【請求項3】
前記安定化回路は、電圧を発生させた前記圧電素子から送られる電力を一時的に蓄電するための蓄電部をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の車輪検出装置。
【請求項4】
前記近接センサは、金属センサであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車輪検出装置。
【請求項5】
前記圧電素子は、前記近接センサに近接するように前記近接センサと前記レールとの間に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車輪検出装置。
【請求項6】
前記ケーシングにより、装置全体が一体化されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車輪検出装置。」
(下線部は、補正された箇所を示す。)

2.補正の目的要件について
本件補正が、特許法第17条の2第5項の補正の目的要件を満たすか否かについて検討する。
本件補正により、請求項1における「前記レールに直付けされるケーシング」との記載が、「前記レールの一側に設置されるケーシング」との記載に変更された。
したがって、本件補正により、請求項1に係る発明は、ケーシングが、レールに直付けされているものから、レールに直付けされているものだけでなく、レールの一側でレールから離れて設置されるものを含むこととなった。
そうすると、本件補正は、請求項1に係る発明の範囲を拡張するものであるから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは言えない。
また、本件補正前の「直付けされる」との記載を、本件補正後の「一側に設置される」との記載に変更したことは、本来その意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正したものであるとは認められず、また、本件補正前の「直付けされる」の記載と本件補正後の「一側に設置される」の記載が同一の意味を表示しているものとも認められないから、本件補正が、誤記の訂正を目的としたものであるとは言えない。
さらに、本件補正前の「直付けされる」との記載に不明りょうな点は無く、また、「直付けされる」との記載に関し拒絶の理由が通知されていたという事実も無いから、本件補正が、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明瞭な記載の釈明を目的としたものであるとも言えない。
また、本件補正の前後において、請求項数に変更は無く、また、請求項の引用関係にも変更は無いから、本件補正が、請求項の削除を目的としたものではないことは明らかである。

3.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年12月2日提出の手続補正書でした補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(「第2.1.(1)」参照。)。

2.当審が通知した最後の拒絶理由について
当審が通知した平成28年12月26日付けの最後の拒絶理由の概要は、平成28年12月2日提出の手続補正書でした補正は、「ケーシング」が「レールに直付けされる」とする補正事項を含むものであるが、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)を参照しても、ケーシング4がレール2に「直付け」されることが明らかであるとはいえず、また、当初明細書等の全ての記載を参照しても、上記補正事項に関する記載も示唆もないから、上記補正事項を含む補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものと認めることができず、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、というものである。

3.最後の拒絶理由に対する当審の判断
平成28年12月2日提出の手続補正書でした補正(以下、「本件補正2」と言う。)により、請求項1及び明細書の段落0009に「前記近接センサが取り付けられるとともに前記圧電素子が内蔵された状態で前記レールに直付けされるケーシングを介して、前記圧電素子に前記レールの振動が伝達されている」と記載された。
本件補正2は、「ケーシング」が「レールに直付けされる」とする補正事項を含むものである。この補正事項が、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものか否かを以下検討する。
当初明細書等において、「ケーシング」に関する記載事項は、以下のとおりである(なお、下線は当審で付与した。)。

・「【0019】
図1は本発明に係る車輪検出装置の実施形態における定常状態を示す概略図であり、図2は本発明に係る車輪検出装置の実施形態における車輪検出状態を示す概略図である。図1および図2に示すように、本実施形態の車輪検出装置1は、列車(図示せず)が走行するレール2の一側に設置されるようになっており、車輪検出装置1は、レール2を走行する列車の車輪3の邪魔にならない位置に設置されるようになっている。
【0020】
また、車輪検出装置1は、箱型のケーシング4を備えており、ケーシング4の上部には、近接センサ5が取付けられている。この近接センサ5は、例えば、金属を検出することができる金属センサにより構成されており、近接センサ5の検出部は、レール2を走行する列車の車輪3部分に指向するように付けられている。そして、図2に示すように、近接センサ5は、レール2上に車輪3が位置したことを検出することにより、列車が存在するか否かを検出することができるものである。」
・「【0022】
本実施形態においては、図3に示すように、ケーシング4の内部には、圧電素子6が内蔵されており、この圧電素子6は、列車がレール2を走行する際に発生する振動により変位することにより、一定の電圧を発生することができるように構成されている。一般に、列車が走行する際には、レール2に約100G程度の振動が発生することが確認されている。そのため、列車が走行する際に発生する振動により、圧電素子6により電圧を発生させて、これにより、発電が行われるものである。」
・「【0027】
そして、レール2上を列車が走行してくると、レール2が振動され、列車が近づくにつれてその振動は大きくなってくる。レール2が振動されると、ケーシング4を介して圧電素子6に振動が伝達され、この振動により圧電素子6が変位して所定の電圧が発生する。この電圧は、安定化回路7により安定化されて近接センサ5に供給され、近接センサ5が駆動される。
【0028】
そして、列車の車輪3が近接センサ5の上部に位置すると、近接センサ5により、車輪3が検出され、この検出信号が列車制御装置に送られる。
【0029】
以上述べたように、本実施形態においては、レール2を走行する列車の振動により、発電を行う圧電素子6を設け、この圧電素子6により発電された電力により近接センサ5を動作させるようにしているので、近接センサ5に電力を供給するための電源ケーブルが不要となり、その結果、車輪検出装置1の設置作業を極めて容易に行うことができる。しかも、電源ケーブルのトラブルを考慮する必要がないので、メンテナンスも容易に行うことができる。」
・図1,2の記載から、車輪検出装置1のケーシング4は、レール2の一側(図1,2において左側)に、レール2を走行する列車の車輪3の邪魔にならない位置に設置されていることが理解できる。

上記の摘記事項によれば、当初明細書等には、車輪検出装置1のケーシング4は、レール2の一側に、レール2を走行する列車の車輪3の邪魔にならない位置に設置されること、また、近接センサ5が取り付けられるとともに圧電素子6が内蔵されたケーシング4を介して、圧電素子6にレール2の振動が伝達されることが記載されている。
しかし、レール2の振動がケーシング4を介して圧電素子6に伝達される際に、レール2の振動がケーシング4に直接的に伝達されるとは必ずしもいえず(例えば、枕木等を介した間接的な伝達もあり得る。)、また、図1,2の記載では、ケーシング4はレール2から離れて設置されているので、上記の摘記事項によっても、ケーシング4がレール2に「直付け」されることが明らかであるとはいえない。さらに、当初明細書等の全ての記載を参照しても、上記補正事項に関する記載も示唆もない。
したがって、上記補正事項を含む本件補正2は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものと認めることができない。
よって、本件補正2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

4.むすび
したがって、平成28年12月2日提出の手続補正書でした補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-17 
結審通知日 2017-03-21 
審決日 2017-04-06 
出願番号 特願2011-37665(P2011-37665)
審決分類 P 1 8・ 572- WZ (B61L)
P 1 8・ 55- WZ (B61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 憲子近藤 利充  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 矢島 伸一
松永 謙一
発明の名称 車輪検出装置  
代理人 福田 充広  

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