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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1328439
審判番号 不服2016-1076  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-26 
確定日 2017-05-18 
事件の表示 特願2012- 69048「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日出願公開、特開2013-200460〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成24年3月26日に出願され、平成27年7月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月5日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月20日付けで拒絶の査定がなされ、これに対して平成28年1月26日付けで審判請求書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成27年10月5日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであって、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「電子写真方法にて記録媒体上にトナー画像を形成する画像形成装置において、
感光体と、
前記感光体を駆動するための感光体モータと、
前記感光体モータの駆動力を感光体に伝達する、弾性体を含む軸継手を有する駆動力伝達手段と、
無端状に張り渡された中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを駆動するためのベルトモータと、
前記感光体モータ及び前記ベルトモータを制御するための制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
画像形成終了後に、前記感光体モータ及び前記ベルトモータを停止させ、かつ、前記感光体モータ及び前記ベルトモータをそれぞれ所定回転量だけ逆回転駆動し、
画像形成開始前に、前記感光体モータ及び前記ベルトモータをそれぞれ前記所定回転量だけ正回転駆動した後に、前記感光体モータ及び前記ベルトモータを同期して駆動すること、
を特徴とする画像形成装置。」

第3 刊行物
1 特開2006-300230号公報(以下「引用文献1」という。)
本願出願前の平成18年11月2日に頒布された刊行物である引用文献1には、以下の記載がある。

(1)「【0028】
図1は、本発明が適用される画像形成装置を示す模式的な断面図である。この画像形成装置は、露光、現像、転写及び定着の各プロセスを経て記録紙に画像を形成する画像形成部1を備え、この画像形成部1には、給紙部2の給紙カセット3に収容された記録紙が給紙経路Aを経て逐次送り込まれ、画像形成部1にて所要の画像が形成された記録紙が排紙経路Bを経て排紙部4のトレー上に排出される。また、画像形成部1から送り出された記録紙を反転経路Cを経由して再度、画像形成部1に送り込むことで記録紙の両面に画像を形成することができる。」

(2)「【0033】
中間転写ベルト21は、一対の支持ローラ23・24に巻き掛けられており、一方の支持ローラ23に対向して2次転写ローラ25が配置され、この2次転写ローラ25と中間転写ベルト21との間に給紙部2からの記録紙が送り込まれることで、中間転写ベルト21上で重ね合わされたトナー像が記録紙に転写される。トナー像が転写された記録紙は、定着部26に搬送されて熱及び圧力により合成されたトナー像を記録紙に定着させる処理が行われる。」

(3)「【0041】
図4は、図2に示した感光体ドラムの駆動装置の要部を示す断面図である。ここでは、ブラックの感光体ドラム17dを駆動する第2の駆動機構32を示す。フライホイール41が外装される連結軸(弾性筒状部)43は、所要のばね剛性を有する合成樹脂材料により中空な筒状に形成され、その軸線方向中間位置にフライホイール41の取付部51が設けられている。この連結軸43を形成する合成樹脂材料はポリアセタールが好適である。
【0042】
連結軸43は、一端に、モータ38の出力軸と連動回転するギア35dが相対回転不能に連結される入力側継手部52を備え、他端に、感光体ドラム17dの支持軸42の端部に設けられた継手部材53が軸線方向に着脱可能に嵌合する出力側継手部54を備えている。」

(4)「【0051】
図5は、図4に示した感光体ドラムの駆動装置を模式的に示す斜視図である。前記のように、モータ38の駆動力が、ギア46、ギア35d、連結軸43、及び継手部材53を順次介して支持軸42に伝達されて感光体ドラム17dが回転し、このときモータ38からギア46及びギア35dを介して連結軸43に至る駆動系に生じるギアの噛み合いなどに起因する回転速度の変動が、フライホイール41の慣性力と、振動減衰能力に優れた合成樹脂製の連結軸43とにより抑制され、このフライホイール41と連結軸43とによる回転速度の変動抑制は、特に高周波成分の除去に有効である。」

(5)「【0055】
図7は、本発明による回転体の駆動装置の別の例を示す模式的な斜視図である。これは、中間転写ベルト21が巻き掛けられる一対の支持ローラ23・24のうちの駆動側の支持ローラ24を駆動するものであり、前記の連結軸43と同様に、所要のばね剛性を有する合成樹脂材料により中空な筒状に形成された連結軸101が設けられており、その軸線方向中間位置にフライホイール102が取り付けられている。
【0056】
連結軸101の入力側継手部103は、前記の例と同様に、モータ104の出力軸に設けられたギア105に噛み合うギア106に相対回転不能に連結され、モータ104の駆動力が入力される。他方、出力側継手部107は、支持ローラ24の支持軸108に設けられたギア109に噛み合うギア110が設けられた軸111に相対回転不能に連結され、連結軸101の回転力が支持ローラ24に伝達されて支持ローラ24が回転動作する。」

(6) 上記(1)の「画像形成装置」が、上記(4)の「モータ38」、及び上記(5)の「モータ104」を制御する制御手段を備えることは自明である。

上記(1)ないし(6)を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「露光、現像、トナー像の記録への転写及び定着の各プロセスを経て記録紙に画像を形成する画像形成装置であって、
モータ38の駆動力が、ギア46、ギア35d、連結軸、及び継手部材を順次介して支持軸に伝達されて感光体ドラムが回転し、
連結軸(弾性筒状部)は、所要のばね剛性を有する合成樹脂材料により中空な筒状に形成され、
連結軸は、一端に、ギア35dが相対回転不能に連結される入力側継手部を備え、他端に、継手部材が軸線方向に着脱可能に嵌合する出力側継手部を備えており、
中間転写ベルトが巻き掛けられる一対の支持ローラ23・24のうちの駆動側の支持ローラ24を駆動し、支持ローラ24にモータ104の駆動力が伝達されて支持ローラ24が回転動作し
モータ38及びモータ104を制御するための制御手段を備える、
画像形成装置。」

2 特開2002-119085号公報(以下「引用文献2」という。)
本願の出願前の平成14年4月19日に頒布された刊行物である引用文献2には、以下の記載がある。

(1)「【請求項3】請求項1または2記載の駆動装置において、
上記制御部は、上記モータの逆転量を上記正規の回転量以下に設定して駆動することを特徴とする駆動装置。」

(2)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】駆動源であるモータから駆動力が伝達される被駆動側部材の一つに、画像形成装置に用いられる感光体ドラムがある。感光体ドラムは、正逆転可能であり、正転時が正規回転に相当させてあり、この回転時に画像形成が行われ、画像形成によってドラム表面に堆積した現像粉などを除去するクリーニング時には逆転するようになっている。逆転は画像形成毎ではなく、次の画像形成が開始される前に実行され、画像形成時での不良画像の発生を防止するようになっている。」

(3)「【0020】制御部1は、現在行われていたジョブに相当する画像形成処理が終了すると、感光体駆動用モータMをそれまでの正規の回転である正転から逆転に変化させてクリーニングを実行させる。
【0021】次いで、次回のジョブに相当する画像形成処理を実行するための複写開始指令が操作部2から入力されると、その指令が入力されてから所定タイミング後に所定回転量により正転させる。このときの正転は、組立時に割り出されている歯車同士のバックラッシュの量を解消できる回転量に相当させてあり、この回転量は予め組立時などに測定されて割り出されている。制御部1では、バックラッシュを解消できる回転量に対応するパルス数を算出し、駆動部3に出力する。」

(4)「【0025】制御部1では、バックラッシュを解消する回転量により感光体駆動用モータMを正転させると、所定タイミングに基づき正転方向での回転数を画像形成に必要な回転数に設定する(図2参照)。」

上記(1)ないし(4)を総合すると、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「画像形成装置に用いられる感光体ドラムは、正逆転可能であり、正転時が正規回転に相当させてあり、この回転時に画像形成が行われ、画像形成によってドラム表面に堆積した現像粉などを除去するクリーニング時には逆転するようになっており、
制御部は、現在行われていたジョブに相当する画像形成処理が終了すると、感光体駆動用モータをそれまでの正規の回転である正転から逆転に変化させてクリーニングを実行させ、
次いで、次回のジョブに相当する画像形成処理を実行するための複写開始指令が入力されると、所定回転量により正転させ、このときの正転は、組立時に割り出されている歯車同士のバックラッシュの量を解消できる回転量に相当させてあり、
上記モータの逆転量は正規の回転量以下であり、
バックラッシュを解消する回転量により感光体駆動用モータを正転させると、所定タイミングに基づき正転方向での回転数を画像形成に必要な回転数に設定する、
画像形成装置。」

3 周知技術
画像形成装置の技術分野において、一般に、「感光体モータ及びベルトモータを同期して駆動すること」は周知技術である。
これについて、特開2006-154021号公報には、以下の記載がある。
「【0015】
この実施形態の画像形成装置は、転写駆動にステッピングモータ、感光体ドラム駆動にDCブラシレスモータを使用した際、立ち上げ、立ち下げを階段(ステップ)状に行い、転写ベルトと感光体ドラムの動作を同期させるとき、転写ベルトと感光体ドラムの立ち上がり、立ち下がり動作の安定性を確保するので、初期のステップの安定性を持たせることができ、転写ベルトのこすれを防止し、且つ、感光体ドラム駆動にDCブラシレスモータを使用することで騒音を低減することができる。
また、感光体ドラム及びその感光体ドラムを具備するプロセスカートリッジを着脱自在にしたので、操作性、サービスメンテナンス性を向上させることができる。
なお、上記実施形態ではプロセスカートリッジ、感光体ドラムをそれぞれ4つ設けた画像形成装置の場合を説明したが、この発明は、感光体ドラム、プロセスカートリッジを1つ備えたモノクロのプリンタ、複写機等の画像形成装置においても、同様に適用することができる。」
当該記載より、特開2006-154021号公報には「感光体モータ及び前記ベルトモータを同期して駆動すること」が記載されているといえる。

第4 対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明の「露光、現像、トナー像の記録への転写及び定着の各プロセスを経て記録紙に画像を形成する画像形成装置」は、本願発明の「電子写真方法により記録媒体にトナー画像を形成する画像形成装置」に相当する。
引用発明1において、「モータ38の駆動力」が「伝達」されて「感光体ドラムが回転」するから、「モータ38」は本願発明の「感光体を駆動するための感光体モータ」に相当する。
引用発明1の「所要のばね剛性」を有する「弾性筒状部」である「連結軸」は弾性体であるといえ、「一端」に「入力側継手部」、「他端」に「出力側継手部」を備えているから、引用発明1の「連結軸」は、本願発明の「弾性体を含む継手軸」に相当する。
引用発明1の「ギア46、ギア35d、連結軸、及び継手部材」、「支持軸」は、「モータ38の駆動力」を「感光体ドラム」に伝達するものであるから、本願発明の「感光体モータの駆動力を感光体に伝達する、弾性体を含む軸継手を有する駆動力伝達手段」に相当する。
引用発明1の「中間転写ベルト」は「一対の支持ローラ23・24」に「巻き掛けられる」ものであるから、無端状であるといえる。また、引用発明1の「巻き掛けられる」ことは、本願発明の「張り渡された」ことに相当する。したがって、引用発明1の「中間転写ベルト」は本願発明の「無端状に張り渡された中間転写ベルト」に相当する。
引用発明1の「モータ104」は、「中間転写ベルト21が巻き掛けられる一対の支持ローラ23・24のうちの駆動側の支持ローラ24」を「回転動作」させるものであるから、本願発明の「中間ベルトを駆動するためのベルトモータ」に相当する。
引用発明1の「モータ38及びモータ104を制御するための制御手段」は、本願発明の「感光体モータ及びベルトモータを制御するための制御手段」に相当する。
以上より、本願発明と引用発明1とは、
「電子写真方法にて記録媒体上にトナー画像を形成する画像形成装置において、
感光体と、
前記感光体を駆動するための感光体モータと、
前記感光体モータの駆動力を感光体に伝達する、弾性体を含む軸継手を有する駆動力伝達手段と、
無端状に張り渡された中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを駆動するためのベルトモータと、
前記感光体モータ及び前記ベルトモータを制御するための制御手段と、
を備える画像形成装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
本願発明は「画像形成終了後に、感光体モータ及びベルトモータを停止させ、かつ、前記感光体モータ及び前記ベルトモータをそれぞれ所定回転量だけ逆回転駆動し、画像形成開始前に、前記感光体モータ及び前記ベルトモータをそれぞれ前記所定回転量だけ正回転駆動した後に、ベルトモータを感光体モータと同期して駆動する」のに対し、引用発明1はこれについて明らかでない点。

第5 判断
上記相違点について検討する。
引用発明2の「現在行われていたジョブに相当する画像形成処理が終了する」ことは、本願発明の「画像形成終了」に相当する。
引用発明2の「感光体駆動用モータをそれまでの正規の回転である正転から逆転に変化させ」ることは、正転から逆転の間に必ず停止するから、本願発明の「感光体モータを停止させ、かつ、前記感光体モータを所定回転量だけ逆回転駆動」することに相当する。
引用発明2の「次回のジョブに相当する画像形成処理を実行するための複写開始指令が入力されると」、「感光体駆動用モータ」を「所定回転量により正転させ」ることは、本願発明の「画像形成開始前に、前記感光体モータを正回転駆動」させることに相当する。
引用発明2において、「モータの逆転量は正規の回転量以下」であるから、「モータの逆転量」と「正規の回転量」が同じであることを含むものである。
引用発明2の「バックラッシュを解消する回転量により感光体駆動用モータを正転させると、所定タイミングに基づき正転方向での回転数を画像形成に必要な回転数に設定する」ことは、本願発明の「所定回転量だけ正回転駆動した後に、感光体モータを駆動する」ことに相当する。
以上より、引用発明2は、「画像形成終了後に、感光体モータを停止させ、かつ、前記感光体モータを所定回転量だけ逆回転駆動し、画像形成開始前に、前記感光体モータを前記所定回転量だけ正回転駆動した後に、前記感光体モータを駆動する」という事項を備えている。
そして、「ドラム表面に堆積した現像粉などを除去する」、「バックラッシュを解消する」ことは、画像形成装置の技術分野において一般的な課題であって、引用発明1にもこれらの課題があることは自明であるから、引用発明1において、引用発明2に基づいて、画像形成処理の終了後にクリーニングを行うために、「画像形成終了後に、感光体モータを停止させ、かつ、前記感光体モータを所定回転量だけ逆回転駆動し」、バックラッシュ解消のために「画像形成開始前に、前記感光体モータを前記所定回転量だけ正回転駆動」し、「正回転駆動した後に、感光体モータを駆動する」ことは、当業者が容易に想到し得たものである。その際に、「感光体モータ及びベルトモータを同期して駆動すること」は、上記のとおり周知技術であるから、「感光体モータ」と同期して、「ベルトモータ」を「画像形成終了後に停止させ、かつ、所定回転量だけ逆回転駆動し、画像形成開始前に、それぞれ前記所定回転量だけ正回転駆動した後に、感光体モータと同期して駆動する」ことは、当然行われることになる。
したがって、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
また、本願発明全体が奏する効果について検討しても、引用発明1、引用発明2及び周知技術から予想できる程度のものである。
よって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、本願は特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-15 
結審通知日 2017-03-21 
審決日 2017-04-03 
出願番号 特願2012-69048(P2012-69048)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 卓司  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
植田 高盛
発明の名称 画像形成装置  
代理人 高田 健市  

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