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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1328446
審判番号 不服2016-7967  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-31 
確定日 2017-05-18 
事件の表示 特願2012- 69242「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日出願公開、特開2013-200758〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成24年3月26日を出願日とする出願であって、平成27年7月13日付けで拒絶理由が通知され、同年9月24日付けで手続補正がなされたが、平成28年2月24日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年5月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年9月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「接触を検出するタッチパネルと、
前記タッチパネルに対する押圧に基づくデータに基づき所定の処理を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記タッチパネルにより検出される接触の位置に応じて、当該制御部により処理可能な範囲を超えないように、前記押圧に基づくデータを増幅することを特徴とする電子機器。」

3.引用文献及び引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-14340号公報(以下、「引用文献」という。)には、ア?カのとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。
ア.
「【請求項1】
タッチ入力を検出するタッチセンサのタッチ面に対して、押圧対象が同一の力で押圧しても、押圧位置に応じて異なる押圧荷重を検出する荷重検出部を備える触感呈示装置であって、
前記タッチセンサのタッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示する触感呈示部と、
前記触感を呈示されるべき一律の力で、前記タッチ面の触感を呈示するどの位置を前記押圧対象が押圧しても、前記触感呈示部が前記押圧対象に対して前記触感を呈示するように、前記タッチ面上の位置に応じたサイズのエリア毎に設定された調整情報に基づき、前記タッチ面の押圧位置に応じた制御をする制御部と、
を備える触感呈示装置。
【請求項2】
前記調整情報が設定されるエリアは前記荷重検出部の位置に応じて分割されている、請求項1に記載の触感呈示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記荷重検出部により検出される押圧荷重を前記押圧位置に応じて調整し、該調整した押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、前記タッチ面を押圧している前記押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の触感呈示装置。」
イ.
「【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やゲーム機等の携帯端末、電卓、券売機等の情報機器、電子レンジ、テレビ、照明器具等の家電製品、産業用機器(FA機器)等には、ユーザによる入力操作を受け付ける操作部やスイッチ等の入力装置として、タッチパネルやタッチスイッチ等のタッチセンサを備える入力装置が広く使用されている。」
ウ.
「【0011】
このような不都合を解決するため、本出願人は、タッチセンサのタッチ面に対するタッチによる押圧荷重を検出し、その検出荷重が触感を呈示する所定の閾値に達した際に、タッチセンサのタッチ面を振動させて指等の押圧対象に触感を呈示するようにした触感呈示装置を開発している。
【0012】
この触感呈示装置によれば、操作者がタッチ面をプッシュし、その押圧荷重が所定の閾値に達すると触感が呈示されるので、上述した意図しないタッチによる誤操作を誘発したり、違和感を与えたりするのを確実に防止して、操作者に対して入力が受け付けられたのを触感として認識させることができる。
【0013】
また、上記特許文献3に開示の技術は、タッチセンサのタッチ面に対して、ユーザの指等の押圧対象が同一の力で押圧しても、触感呈示装置が検出する押圧荷重は、押圧位置に応じて異なる値になるということを考慮していない。本発明者は、ユーザからの押圧力と、触感呈示装置により検出される押圧荷重のタッチ面の位置による変化について鋭意検討を進めた結果、以下に説明する知見を見出した。図7及び図8は、ユーザがタッチセンサのタッチ面の各位置をそれぞれ一律の力で押圧した場合の、押圧荷重(電圧)の値の分布の一例を示す図である。図7及び図8を参照すると、ユーザがタッチ面の各位置を一律の力(例えば1.0N)で押圧しても、荷重検出部が検出する値(例えば荷重(N)に対応する電圧(V)。なお、本例においては4つの荷重検出部の合計値とする。)は、タッチ面上の押圧位置に応じて異なる値となる。図7の場合、タッチパネルを縦3分割横3分割した9個のエリア1?9に関し、エリア1、3、7および9を含むエリア群A、エリア2、4、6および8を含むエリア群B、並びに、エリア5を含むエリア群Cにおいて、荷重検出部が検出する値は、それぞれ、1.0V、1.5Vおよび2.0Vとなる。また、図8の場合、タッチパネルを縦4分割横3分割した12個のエリア1?12に関し、エリア2、7および9を含むエリア群A、エリア1、3、4、6および10?12を含むエリア群B、並びに、エリア5および8を含むエリア群Cにおいて、荷重検出部が検出する値は、それぞれ、1.0V、1.5Vおよび2.0Vとなる。タッチ面上の位置によって検出される押圧荷重の値が異なる原因としては、荷重検出部との距離や、タッチセンサを構成する部材の弾性率など様々な要因が考えられるが、このような検出される押圧荷重の値の違いは、触感呈示装置がユーザに触感を呈示するかどうかの判断に大きな影響を与える。仮に、触感呈示装置が、所定の荷重基準(例えば1.5V)によって触感を呈示するか否かを判断するものとする。この場合、ユーザが所定の押圧力(1N)で図7及び8の各エリアに入力を行うと、エリア群BおよびCにおいては触感呈示装置から触感が呈示されるが、エリアAからは触感が呈示されないという事態が起こり得る。換言すると、ユーザは、エリアAに対しては本来触感が呈示されるべき力に比べて強い力(例えば1.5N)で入力を行う必要がある反面、エリアCに対しては本来触感が呈示されるべき力に比べて弱い力(例えば0.75N)で入力を行った場合に触感が呈示されてしまうことになる。
【0014】
特許文献3に開示の技術は、上述の通りタッチセンサのタッチ面に対して、ユーザの指等の押圧対象が同一の力で押圧しても、触感呈示装置が受ける押圧荷重は、押圧位置に応じて異なる値になるということを考慮しない。このため、ユーザが触感を呈示されるべき一律の押圧力でタッチ面に入力を行っても、触感呈示装置が検出する押圧荷重の値はタッチ面の位置毎に異なる。そのため、触感呈示装置は、ある位置では触感を呈示する押圧荷重を下回る値を検出し、他の場所では触感を呈示する押圧荷重以上の値を検出することになる。このため、ユーザがタッチ面に対して触感を呈示されるべき一律の押圧力で入力を行っても、触感呈示装置から触感が呈示されるかどうかは入力位置毎に異なることになる。即ち、ユーザは、触感を呈示されるべき一律の押圧力で入力を行っても触感が呈示されない場合には、さらに強い押圧力で入力を行わなくてはならず、また、触感を呈示されるべき一律の押圧力より低い押圧力で入力を行った場合など意図しないタイミングで触感が呈示される場合があるなど、操作時の違和感が増大する。ユーザの操作感を向上させるためには、ユーザから触感を呈示されるべき一律の押圧力を受けた場合に、ユーザの入力の位置に係わらず、触感を呈示することが好ましい。
【0015】
本発明は、このような要望に応えるべくなされたもので、ユーザから触感を呈示されるべき一律の押圧力を受けた場合に、ユーザの入力の位置に係わらず、触感を呈示することが可能な触感呈示装置を提供することを目的とするものである。」
エ.
「【発明の効果】
【0028】
本発明に係る触感呈示装置によれば、ユーザから触感を呈示されるべき一律の押圧力を受けた場合に、ユーザの入力の位置に係わらず、触感を呈示することが可能となる。」
オ.
「【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る触感呈示装置の実施の形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、ユーザが触感呈示装置を押圧する力を「押圧力」、当該押圧力を触感呈示装置によって検出した値を「押圧荷重」、さらに、当該「押圧荷重」に対して触感呈示装置が触感を呈示するかどうかを判断する閾値を「荷重基準」と称するものとする。
【0031】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る触感呈示装置の機能ブロック図である。この触感呈示装置は、タッチセンサ11、荷重検出部12、触感呈示部13、表示部14、記憶部15、および、全体の動作を制御する制御部16を有する。
【0032】
タッチセンサ11は、そのタッチ面に対する指などのタッチ対象によるタッチ入力を検出するもので、抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等のタッチ位置(指等の押圧対象の押圧位置)の二次元の位置情報を出力する公知のもので構成して、表示部14上に配置する。荷重検出部12は、タッチセンサ11のタッチ面に対する指等の押圧対象の押圧荷重を検出するもので、例えば、歪みゲージセンサや圧電素子等の荷重に対してリニアに反応する素子を用いて構成する。触感呈示部13は、タッチセンサ11を振動させるもので、例えば、圧電素子を用いて構成する。
【0033】
表示部14は、押しボタンスイッチ(プッシュ式ボタンスイッチ)のような入力ボタン等の入力用オブジェクトを表示するもので、例えば、液晶表示パネルや有機EL表示パネル等を用いて構成する。この表示部14に表示された入力用オブジェクトに対するタッチ入力は、タッチセンサ11から出力される位置情報に基づいて制御部16により検出される。記憶部15は、触感呈示部13の駆動信号情報、および押圧対象の押圧位置に応じて触感呈示に関する調整を行うための荷重調整情報等の各種情報を記憶するもので、例えば、揮発性又は不揮発性メモリ等を用いて構成する。制御部16は、例えばCPU等からなり、タッチセンサ11からの押圧対象の押圧位置情報、荷重検出部12からの押圧荷重情報、並びに、記憶部15が記憶する荷重調整情報に基づいて、触感を呈示するかどうかを判断する。また、制御部15は、触感を呈示する場合には記憶部15が記憶する駆動信号情報に基づいて触感呈示部13の駆動を制御する。
【0034】
記憶部15が記憶する触感呈示部13の駆動信号情報は、ユーザに呈示する触感毎に、タッチ面を振動させる周波数および振動周期の数など種々の情報を含むものである。制御部16は、記憶部15の駆動信号情報に基づき、触感呈示部13の駆動を制御して、例えば、指等の押圧対象に対して、「ブル」と感じる触感や、「ブブ」と感じる触感や、「カツ」と感じる触感など、様々な触感を呈示することができる。ここで、触感呈示部13が圧電素子を用いて構成されている場合、制御部16は、「ブル」や「ブブ」と感じられる軟質的な触感を呈示する場合、200Hz?500Hz程度の三角波信号や正弦波信号を2?3周期分を駆動信号として圧電素子に印加する。また、「カツ」と感じられる硬質な触感を呈示する場合は、制御部16は、200Hz?500Hz程度の矩形波信号を2?3周期分を駆動信号として圧電素子に印加する。
【0035】
また、制御部16は、触感呈示部13の駆動を制御して、ユーザの操作感をさらに高めるため、指等の押圧対象に対して、「カチ」と感じるクリック触感を呈示することができる。制御部16は、硬い押しボタンスイッチを押したような「カチ」と感じられるクリック触感を呈示する場合は、駆動信号として、100Hz?200Hz程度の正弦波信号または矩形波信号を1周期分印加する。「カチ」と感じるクリック触感の場合、表示部14に表示されたソフトウェア的な入力用オブジェクトに対する入力でも、ユーザは、ハードウェア的なボタンスイッチを押したような触感を得ることができるため、ユーザが体感する操作感は向上することになる。
【0036】
記憶部15が記憶する押圧対象の押圧位置に応じて触感呈示に関する調整を行うための荷重調整情報は、荷重検出部12からの押圧荷重を調整する押圧荷重調整情報や、触感を呈示するかどうかの閾値である荷重基準を調整する荷重基準調整情報や、荷重基準自体の情報など、種々の情報を含むものである。
【0037】
(押圧荷重調整情報)
例えば、図7及び図8は、ユーザからの触感を呈示されるべき一律の押圧力に対して、タッチ面の各エリアにおいて荷重検出部が検出する押圧荷重の値(電圧)の例を示す図である。このように、タッチセンサ11のタッチ面上での位置と、荷重検出部12が検出する押圧荷重の値との関係を予め測定(キャリブレーション)しておき、製品出荷時などに、テーブルやリストとして記憶部15に記憶することが考えられる。例えば、タッチセンサ11のタッチ面を縦m分割、横n分割のm´n個のエリアに分割し、エリア毎にユーザからの押圧力と検出される押圧荷重の値との関係を記憶部15に記憶させることができる。より具体的には、第1のエリア(例えば図7及び8のエリア群B)への入力に対する押圧荷重の調整値として第1の値(例えば1.0倍)、第2のエリア(例えば図7及び8のエリア群C)への入力に対する押圧荷重の調整値として第2の閾値(例えば0.75倍)、第3のエリア(例えば図7及び8のエリア群A)への入力に対する押圧荷重の調整値として第3の閾値(例えば1.5倍)など、エリアごとに異なる押圧荷重の調整値を記憶部15に記憶させることができる。このような押圧荷重調整情報により、制御部16は、押圧対象(押圧物)の押圧位置に応じて、検出された押圧荷重の値を調整することができる。例えば、ユーザからの触感を呈示されるべき一律の押圧力が1Nであり、触感を呈示する荷重基準が1.5Vであるとする。制御部16は、第1のエリア(例えば図7及び8のエリア群B)への入力の押圧荷重はそのまま(1.0倍して)荷重基準と比較し、第2のエリア(例えば図7及び8のエリア群B(審決注:「エリア群B」は、「エリア群C」の誤記である。))への入力の押圧荷重は0.75倍して荷重基準と比較し、第3のエリア(例えば図7及び8のエリア群A)への入力の押圧荷重は1.5倍して荷重基準と比較するなど、エリアごとに異なる値で押圧荷重を調整することができる。これにより、ユーザから触感を呈示されるべき一律の押圧力(1N)があった場合に、タッチ面上の各位置における押圧荷重の値が調整されて同じ値となり、制御部16は、各位置に対して共通の1つの荷重基準(1.5V)によって触感を呈示するか否かを判断することができる。」
カ.
「【0050】
また、筐体21には、表示部14の表示領域から外れたタッチセンサ11の表面領域を覆うようにアッパカバー23を設け、このアッパカバー23とタッチセンサ11との間に、弾性部材からなるインシュレータ24を配設する。
【0051】
なお、図2に示すタッチセンサ11は、タッチ面11aを有する表面部材が、例えば透明フィルムやガラスで構成され、裏面部材がガラスやアクリルで構成されて、タッチ面11aが押圧されると、押圧部分が押圧力に応じて微少量撓む(歪む)、または構造体そのものが微少量撓む構造のものを用いる。
【0052】
タッチセンサ11の表面上には、アッパカバー23で覆われる各辺の近傍に、タッチセンサ11に加わる荷重(押圧力)を検出する歪みゲージセンサや圧電素子からなる荷重センサ31をそれぞれ接着等により設ける。また、タッチセンサ11の裏面上には、対向する2つの辺の近傍に、タッチセンサ11を振動させるための圧電素子32をそれぞれ接着等により設ける。すなわち、図2に示す触感呈示装置は、図1に示した荷重検出部12を4つの荷重センサ31を用いて構成し、触感呈示部13を2つの圧電素子32を用いて構成している。そして、触感呈示部13によりタッチセンサ11を振動させることにより、タッチ面11aを振動させて、タッチ面11a上のタッチ対象に触感を呈示するようにしている。なお、図2(b)においては、図2(a)に示した筐体21、アッパカバー23およびインシュレータ24の図示を省略している。
【0053】
本実施の形態に係る触感呈示装置においては、タッチセンサ11は、タッチ面11aへのタッチ操作を検出する。そして、制御部16は、押圧対象の押圧位置に応じて荷重調整処理を行い、荷重検出部12により検出される押圧荷重が触感を呈示する荷重基準を満たすかどうか判定する。そして、押圧荷重が触感を呈示する荷重基準を満たすと判定した場合は、制御部16は、タッチ面11aを押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように、触感呈示部13の駆動を制御する。
【0054】
以下、本実施の形態に係る触感呈示装置による通知情報の触感呈示動作について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0055】
先ず、制御部16は、タッチセンサ11からの位置情報(押圧対象の押圧位置)の入力を検出して(ステップS101)、タッチ面11aに指等の押圧対象が接触したのを検出する(ステップS102)。次に、制御部16は、記憶部15を参照して押圧対象の押圧位置に応じた荷重調整情報を取得し(ステップS103)、荷重検出部12から入力される押圧荷重が触感を呈示する荷重基準を満たすか否かを判定する(ステップS104)。例えば、制御部16は、荷重検出部12からの押圧荷重を調整する押圧荷重調整情報を用いて、押圧対象の押圧位置に応じて押圧荷重を調整し、該調整した押圧荷重が触感を呈示する荷重基準を満たすか否かを判定することができる。また、制御部16は、触感を呈示するかどうかの閾値である荷重基準を調整する荷重基準調整情報を用いて、押圧対象の押圧位置に応じて荷重基準を調整し、荷重検出部12から入力される押圧荷重が該調整した荷重基準を満たすか否かを判定することができる。さらに、制御部16は、触感を呈示するかどうかの閾値であって押圧位置に応じた調整がされている荷重基準の調整情報を押圧対象の押圧位置に応じて記憶部15から読み出して、荷重検出部12から入力される押圧荷重が該読み出した荷重基準を満たすか否かを判定することができる。ステップS104の結果、押圧荷重が荷重基準を満たすと判定した場合(Yesの場合)、制御部16は、記憶部15を参照し、触感を呈示する駆動信号の情報を取得して、当該駆動信号により触感呈示部13を駆動して、ユーザへ触感を呈示する(ステップS105)。なお、制御部16は、触感がクリック触感となるように、触感呈示部13の駆動を制御することができる。
【0056】
本実施の形態に係る触感呈示装置によれば、制御部16は、ユーザの指等の押圧対象の押圧位置に応じて、荷重検出部12が検出する押圧荷重と触感を呈示する荷重基準に対して調整を行い、ユーザから触感を呈示されるべき一律の押圧力があった場合に、押圧荷重が荷重基準を満たすように制御する。これにより、ユーザから触感を呈示されるべき一律の押圧力を受けた場合に、タッチ面のどの位置をユーザが押圧しているかに係わらず、触感を呈示することが可能となり、ユーザの操作感を向上させることができる。換言すると、ユーザは触感呈示装置から触感を受けるために、触感が呈示されるべき押圧力より強い力で入力を行う必要はなく、また、触感が呈示されるべき押圧力より弱い力の入力に対して誤って触感が呈示されることもないため、ユーザが操作感時に感じる違和感をなくすことができる。
【0057】
また、制御部16は、荷重検出部12により検出される押圧荷重を押圧対象の押圧位置に応じて調整することにより、ユーザから触感を呈示されるべき一律の押圧力を受けた場合に、タッチ面のどの位置をユーザが押圧しているかに係わらず、触感を呈示することが可能となり、ユーザの操作感を向上させることができる。
【0058】
また、制御部16は、触感を呈示する荷重基準を押圧対象の押圧位置に応じて調整することにより、ユーザから触感を呈示されるべき一律の押圧力を受けた場合に、タッチ面のどの位置をユーザが押圧しているかに係わらず、触感を呈示することが可能となり、ユーザの操作感を向上させることができる。
【0059】
また、制御部16は、押圧対象の押圧位置に応じて調整されている荷重基準を読み出して利用することにより、ユーザから触感を呈示されるべき一律の押圧力を受けた場合に、タッチ面のどの位置をユーザが押圧しているかに係わらず、触感を呈示することが可能と
なり、ユーザの操作感を向上させることができる。」

a.
上記【請求項1】,【請求項3】の記載によれば、引用文献には、
「タッチ入力を検出するタッチセンサのタッチ面に対して、押圧対象が同一の力で押圧しても、押圧位置に応じて異なる押圧荷重を検出する荷重検出部を備える触感呈示装置であって、
前記タッチセンサのタッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示する触感呈示部と、
前記触感を呈示されるべき一律の力で、前記タッチ面の触感を呈示するどの位置を前記押圧対象が押圧しても、前記触感呈示部が前記押圧対象に対して前記触感を呈示するように、前記タッチ面上の位置に応じたサイズのエリア毎に設定された調整情報に基づき、前記タッチ面の押圧位置に応じた制御をする制御部と、を備え、
前記制御部は、前記荷重検出部により検出される押圧荷重を前記押圧位置に応じて調整し、該調整した押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、前記タッチ面を押圧している前記押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御する、
触感呈示装置。」が記載されている。
b.
上記段落【0002】,【0015】の記載によれば、上記a.の「触感呈示装置」は、「タッチパネルやタッチスイッチ等のタッチセンサを備える入力装置を備えた、携帯電話やゲーム機等の携帯端末、電卓、券売機等の情報機器、電子レンジ、テレビ、照明器具等の家電製品、産業用機器(FA機器)」の「入力装置」に用いられるものである。
c.
上記a.の「タッチ面上の位置に応じたサイズのエリア毎に設定された調整情報」は、上記段落【0037】の記載によれば、「タッチセンサ11のタッチ面上での位置と、荷重検出部12が検出する押圧荷重の値との関係を予め測定」することにより得られる情報であり、具体的には、第1のエリアについては第1の値(1.0倍)、第2のエリアについては第2の値(0.75倍)、第3のエリアについては第3の値(1.5倍)のことであり、押圧荷重の値をそれぞれのタッチ面上でのエリアに応じて、第1の値(1.0倍)、第2の値(0.75倍)、第3の値(1.5倍)している。
また、上記a.の「押圧位置」は、上記段落【0053】,【0055】の記載によれば、「タッチセンサにより検出された押圧対象の押圧位置」のことである。
よって、上記a.の「前記荷重検出部により検出される押圧荷重を前記押圧位置に応じて調整」することは、「前記荷重検出部により検出された押圧荷重の値を、タッチセンサにより検出された押圧対象の押圧位置に応じたエリアに設定された調整情報に基づいて調整値倍することにより調整」することである。
d.
したがって、上記a?cによれば、引用文献には、
「タッチパネルやタッチスイッチ等のタッチセンサを備える入力装置を備えた、携帯電話やゲーム機等の携帯端末、電卓、券売機等の情報機器、電子レンジ、テレビ、照明器具等の家電製品、産業用機器(FA機器)であって、
前記入力装置には触感呈示装置を有し、
前記触感呈示装置は、
タッチ入力を検出するタッチセンサのタッチ面に対して、押圧対象が同一の力で押圧しても、押圧位置に応じて異なる押圧荷重を検出する荷重検出部と、
前記タッチセンサのタッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示する触感呈示部と、
前記触感を呈示されるべき一律の力で、前記タッチ面の触感を呈示するどの位置を前記押圧対象が押圧しても、前記触感呈示部が前記押圧対象に対して前記触感を呈示するように、前記タッチ面上の位置に応じたサイズのエリア毎に設定された調整情報に基づき、前記タッチ面の押圧位置に応じた制御をする制御部と、を備え、
前記制御部は、前記荷重検出部により検出された押圧荷重の値を、タッチセンサにより検出された押圧対象の押圧位置に応じたエリアに設定された調整情報に基づいて調整値倍することにより調整し、該調整した押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、前記タッチ面を押圧している前記押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御する、
携帯電話やゲーム機等の携帯端末、電卓、券売機等の情報機器、電子レンジ、テレビ、照明器具等の家電製品、産業用機器(FA機器)。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

4.対比

本願発明と引用発明とを対比する。
ア.
引用発明の「携帯電話やゲーム機等の携帯端末、電卓、券売機等の情報機器、電子レンジ、テレビ、照明器具等の家電製品、産業用機器(FA機器)」は、本願発明と同様の「電子機器」といい得るものである。
イ.
引用発明の「タッチ入力を検出する」、「タッチパネルやタッチスイッチ等のタッチセンサ」は、本願発明の「接触を検出するタッチパネル」に相当する。
ウ.
引用発明の「荷重検出部」が検出する「タッチセンサのタッチ面に対して、押圧対象」が「押圧」する「押圧荷重」は、本願発明の「タッチパネルに対する押圧に基づくデータ」に相当する。
また、引用発明において、「触感呈示部が前記押圧対象に対して前記触感を呈示するように」制御することは、「所定の処理」ということができる。
よって、引用発明の「押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、前記タッチ面を押圧している前記押圧対象に対して触感を呈示するように前記触感呈示部を制御する」制御部は、本願発明の「タッチパネルに対する押圧に基づくデータに基づき所定の処理を行う制御部」に相当する。
エ.
引用発明において、「押圧荷重の値を」「調整情報に基づいて調整値倍する」ことは、「押圧に基づくデータを増幅する」ともいうことができるから、引用発明の「前記制御部は、前記荷重検出部により検出された押圧荷重の値を、前記タッチセンサのタッチ面上での位置に応じたエリアに設定された調整情報に基づいて調整値倍することにより調整」することと、本願発明の「前記制御部は、前記タッチパネルにより検出される接触の位置に応じて、当該制御部により処理可能な範囲を超えないように、前記押圧に基づくデータを増幅すること」とは、いずれも、「前記制御部は、前記タッチパネルにより検出される接触の位置に応じて、前記押圧に基づくデータを増幅すること」である点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「接触を検出するタッチパネルと、
前記タッチパネルに対する押圧に基づくデータに基づき所定の処理を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記タッチパネルにより検出される接触の位置に応じて、前記押圧に基づくデータを増幅することを特徴とする電子機器。」
[相違点]
制御部による押圧に基づくデータの増幅が、本願発明では、「制御部により処理可能な範囲を超えないように」増幅するのに対し、引用発明では、そのような特定のない点。

5.当審の判断

(1)上記[相違点]について
引用発明は、「ユーザが所定の押圧力(1N)で図7及び8のエリアに入力を行うと、・・・(中略)・・・ユーザは、エリアAに対しては本来触感が呈示されるべき力に比べて強い力(例えば1.5N)で入力を行う必要がある反面、エリアCに対しては本来触感が呈示されるべき力に比べて弱い力(例えば0.75N)で入力を行った場合に触感が呈示されてしまう」(引用文献の段落【0013】)問題を解決するためのものであり、タッチセンサのタッチ面上のどの位置においても、ユーザからの触感を呈示されるべき一律の押圧力が1Nのとき、触感を呈示する荷重基準が1.5Vとなるように、タッチセンサのタッチ面上の位置と、荷重検出部が検出する押圧荷重の値との関係を予め測定(キャリブレーション)しておくことにより、タッチ面上で各位置における押圧荷重の値が調整されて同じ値となり、制御部は、各位置に対して共通の1つの荷重基準(1.5V)によって触感を呈示するか判断し(引用文献の段落【0037】)、「ユーザの入力位置に係わらず、触感を呈示することが可能」となる(引用文献の段落【0015】,【0028】)ものである。
つまり、引用発明は、タッチセンサのタッチ面上のどの位置においても、押圧力が1N以上となると「触感呈示部」が触感を呈示するように、押圧力が1Nのときの、荷重検出部が検出する押圧荷重の調整後の値(電圧)を1.5Vにするものであるから、引用発明の「制御部」は、触感呈示という処理を実行する際に、押圧荷重の値をタッチセンサ上の全エリアで共通の荷重基準(1.5)で判断可能な範囲に調整しているということができる。
そうすると、引用発明においても、「制御部による押圧に基づくデータ」は「制御部により処理可能な範囲を超えないように」増幅されているといえ、上記[相違点]は、実質的なものではない。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用文献の記載事項から当業者が予測し得る範囲を超えるものとはいえない。

6.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-15 
結審通知日 2017-03-21 
審決日 2017-04-03 
出願番号 特願2012-69242(P2012-69242)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩屋 雅弘松田 岳士  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 山澤 宏
高瀬 勤
発明の名称 電子機器  
代理人 杉村 憲司  
代理人 太田 昌宏  

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