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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60C |
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管理番号 | 1328454 |
審判番号 | 不服2016-3435 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-04 |
確定日 | 2017-06-06 |
事件の表示 | 特願2011-241477号「乗用車用空気入りラジアルタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年5月20日出願公開、特開2013-95329号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年11月2日の出願であって、平成27年8月12日付けで拒絶理由通知がされ、平成27年10月16日に意見書及び手続補正書が提出され、平成27年11月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年3月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、平成29年2月6日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成29年4月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成27年11月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献A-Cに基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 A.特開昭62-283001号公報 B.特開2005-297859号公報 C.特開2000-190706号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献1-4に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.国際公開第2011/122170号 2.特開2000-190706号公報 3.特開平6-247106号公報 4.特開昭62-283001号公報 第4 本願発明 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年4月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりである。 「【請求項1】 一対のビード部間でトロイダル状に跨るラジアル配列のカーカスコードのプライからなるカーカスと、トレッドとを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤであって、 前記タイヤの断面幅SWが155mm以上であり、且つ、前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODが0.24以下であり、 前記トレッドは、ベースゴムと該ベースゴムのタイヤ径方向外側に配置したキャップゴムとからなり、 タイヤ幅方向断面において、前記ベースゴムの断面積は、前記トレッドの断面積の20%以上40%以下であり、 前記ベースゴムのタイヤ幅方向両端部から、前記ベースゴムのタイヤ幅方向幅の15%の領域に、発泡ゴムを用い、前記キャップゴムは非発泡ゴムからなり、 前記発泡ゴムの発泡率は、10?25%であり、 タイヤ赤道面に相当するタイヤ幅方向位置における、前記ベースゴムのタイヤ径方向厚さをaとし、タイヤ赤道面に相当するタイヤ幅方向位置における、前記キャップゴムのタイヤ径方向厚さをbとするとき、比a/(a+b)は、 1/8≦a/(a+b)≦1/2 を満たすことを特徴とする、乗用車用空気入りラジアルタイヤ。」 第5 引用文献、引用発明等 (1)引用文献1について 当審拒絶理由に引用された引用文献1(当審拒絶理由において新たに引用した文献)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与。) ア.「[0001] 本発明は、転がり抵抗の低減に貢献しうるタイヤに関する。」 イ.「[0004] 上述したような方法によれば、一般的なタイヤよりも転がり抵抗が低減し、自動車の省燃費に対して一定の貢献が見込まれる。しかしながら、近年、環境への配慮が高まるに連れて、自動車の省燃費に対する貢献度がより高いタイヤが求められていた。 [0005] そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、転がり抵抗の低いゴムを用いる方法や、トレッド幅方向断面の形状を特徴的な形状とする方法以外の方法によって転がり抵抗を低減できるタイヤの提供を目的とする。」 ウ.「[0006] 上述した課題を解決するため、本発明の特徴は、トレッドにタイヤ周方向に連続して形成された周方向溝部と、トレッド幅方向に延びる横溝部とが形成されたタイヤであって、前記タイヤの幅SW、前記タイヤの外径ODとが、SW≦175mm かつOD/SW≧3.6を満たし、前記タイヤの接地面積に対する前記周方向溝部と前記横溝部とを含む溝面積の比率である溝面積比率が25%以下であることを要旨とする。」 エ.「[0007] タイヤは、外径が大きいほど、トレッドの路面への入射角度が緩やかになるため、同じ荷重がかかったときの変形量が少なくなる。そのため、本発明の特徴によれば、ヒステリシスロスが低減し、転がり抵抗を低下させることができる。 [0008] また、タイヤの外径が大きいほど、接地面の形状は、回転方向に縦長になる。また、同じ接地面積であれば、タイヤの幅SWが狭い方が転がり抵抗は小さくなる。従って、本発明に係るタイヤによれば、転がり抵抗を低減させることができる。」 オ.「[0029] 空気入りタイヤ1は、路面と接するトレッド10を備える。空気入りタイヤ1の内部構成は、ビード部やカーカス、ベルトなどを備える一般的なタイヤと同じである。空気入りタイヤ1の断面において、空気入りタイヤ1の外縁は、トロイド状である。空気入りタイヤ1には、空気でなく、窒素ガスなどの不活性ガスが充填されてもよい。」 以上の記載事項から次の事項が認定できる。 (ア)記載事項オ.の記載内容と空気入りタイヤの技術常識から、一対のビード部間でトロイド状に跨るカーカスと、トレッド10とを備えた、自動車用空気入りタイヤが開示されているといえる。 (イ)記載事項ウ.の「OD/SW≧3.6を満たし」との記載から、式を変換すると、SW/ODが0.28以下であることがいえる。 これら記載事項、認定事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「一対のビード部間でトロイド状に跨るカーカスと、トレッド10とを備えた、自動車用空気入りタイヤであって、 前記タイヤの幅SWが175mm以下であり、且つ、前記タイヤの幅SWと外径ODとの比SW/ODが0.28以下である自動車用空気入りタイヤ。」 第6.対比・判断 1.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、 後者の「一対のビード部間でトロイド状に跨るカーカスと、トレッドとを備えた、自動車用空気入りタイヤ」と前者の「一対のビード部間でトロイダル状に跨るラジアル配列のカーカスコードのプライからなるカーカスと、トレッドとを備えた、乗用車用空気入りラジアルタイヤ」とは、「一対のビード部間でトロイダル状に跨るカーカスと、トレッドとを備えた、自動車用空気入りタイヤ」という限度で共通する。 そうすると、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。 [一致点] 「一対のビード部間でトロイダル状に跨るカーカスと、トレッドとを備えた、自動車用空気入りタイヤ。」 そして、両者は次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明は、「カーカス」が「ラジアル配列のカーカスコードのプライからな」り、「自動車用空気入りタイヤ」が「乗用車用空気入りラジアルタイヤ」であるのに対し、 引用発明は、「カーカス」の態様が特定されておらず、「自動車用空気入りタイヤ」である点。 [相違点2] 本願発明は、「前記タイヤの断面幅SWが155mm以上であり、且つ、前記タイヤの断面幅SWと外径ODとの比SW/ODが0.24以下であ」るのに対し、 引用発明は、「前記タイヤの幅SWが175mm以下であり、且つ、前記タイヤの幅SWと外径ODとの比SW/ODが0.28以下である」点。 [相違点3] 本願発明は、「前記トレッドは、ベースゴムと該ベースゴムのタイヤ径方向外側に配置したキャップゴムとからなり、タイヤ幅方向断面において、前記ベースゴムの断面積は、前記トレッドの断面積の20%以上40%以下であり、前記ベースゴムのタイヤ幅方向両端部から、前記ベースゴムのタイヤ幅方向幅の15%の領域に、発泡ゴムを用い、前記キャップゴムは非発泡ゴムからなり、前記発泡ゴムの発泡率は、10?25%であり、タイヤ赤道面に相当するタイヤ幅方向位置における、前記ベースゴムのタイヤ径方向厚さをaとし、タイヤ赤道面に相当するタイヤ幅方向位置における、前記キャップゴムのタイヤ径方向厚さをbとするとき、比a/(a+b)は、1/8≦a/(a+b)≦1/2を満たす」のに対し、 引用発明は、トレッド10において、かかる構造が特定されていない点。 2.判断 事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。 自動車用空気入りタイヤにおいて、タイヤからの騒音を低減することは一般的な課題であるところ、その具体的手段として、トレッドを、発泡ゴムを用いたベースゴムと、該ベースゴムのタイヤ径方向外側に配置した非発泡ゴムを用いたキャップゴムから形成することは、引用文献3(段落【0002】を参照。)及び引用文献4(7ページ左下欄9行?11行を参照。)に示されているように従来周知の技術である。 そして、引用発明のトレッド10において、上記周知技術を適用すると、トレッド10は、ベースゴムと該ベースゴムのタイヤ径方向外側に配置したキャップゴムとからなり、前記ベースゴムは発泡ゴムを用い、前記キャップゴムは非発泡ゴムからなる構造に至る。 しかしながら、上記相違点3に係る「前記ベースゴムのタイヤ幅方向両端部から、前記ベースゴムのタイヤ幅方向幅の15%の領域に、発泡ゴムを用い」るとの技術的事項(合議体は、審判請求人が平成29年4月10日に提出した意見書において上記特定事項を付加する際の補正の根拠としている段落【0039】【表1】に示された「発明例2」(当初の「発明例4」)及び当該意見書の主張内容に基づき、上記技術的事項は、「タイヤ幅方向幅の15%の領域にのみ、発泡ゴムを用い」ているものと解釈した。)に関し、上記引用文献3及び4には記載も示唆もなく、引用文献2には、トレッドのベースゴムに発泡ゴムを用いる態様は開示されていないから、当該技術的事項を導き出すことはできない。 したがって、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-4に示された周知技術に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 原査定についての判断 平成29年4月10日に提出された手続補正書の補正により、補正後の請求1は、「タイヤ幅方向断面において、前記ベースゴムの断面積は、前記トレッドの断面積の20%以上40%以下であり、前記ベースゴムのタイヤ幅方向両端部から、前記ベースゴムのタイヤ幅方向幅の15%の領域に、発泡ゴムを用い、」「前記発泡ゴムの発泡率は、10?25%であり、タイヤ赤道面に相当するタイヤ幅方向位置における、前記ベースゴムのタイヤ径方向厚さをaとし、タイヤ赤道面に相当するタイヤ幅方向位置における、前記キャップゴムのタイヤ径方向厚さをbとするとき、比a/(a+b)は、1/8≦a/(a+b)≦1/2を満たす」という技術的事項を有するものとなった。当該技術的事項は、原査定における引用文献A-Cには記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Cに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-05-22 |
出願番号 | 特願2011-241477(P2011-241477) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 森本 康正、梶本 直樹 |
特許庁審判長 |
和田 雄二 |
特許庁審判官 |
一ノ瀬 覚 島田 信一 |
発明の名称 | 乗用車用空気入りラジアルタイヤ |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 山口 雄輔 |