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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1328506
審判番号 不服2016-3211  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-02 
確定日 2017-05-15 
事件の表示 特願2012- 61354「オブジェクト共有システム及びオブジェクト管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月30日出願公開、特開2013-196233〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月19日の出願であって、平成27年6月15日付けで拒絶理由が通知され、同年8月5日付けで手続補正がなされ、同年12月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年3月2日に拒絶査定不服の審判が請求されたものである。
その後、当審において、平成28年11月14日付けで拒絶理由を通知し、応答期間内である平成29年1月16日に意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1?28に係る発明は、平成29年1月16日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?28の記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項15に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「個々のユーザが使用する複数の個人端末が通信ネットワークで接続されたオブジェクト利用システムにおいて、
前記複数の個人端末の内の第1の個人端末は、
1又は複数のオブジェクトを表示する表示部と、操作部と、前記1又は複数のオブジェクトを記憶する記憶部と、制御部と、を少なくとも備え、
前記第1の個人端末の制御部は、前記1又は複数のオブジェクトの少なくとも一部を1以上の他の個人端末に送信する際に、送信した前記オブジェクトと送信先の他の個人端末とを関連付けたリストを前記第1の個人端末の記憶部に記憶し、前記送信先の他の個人端末の内の第2の個人端末からオブジェクトの編集通知を受信したら、前記第1の個人端末の表示部に表示している編集対象のオブジェクトに対応付けて、当該オブジェクトが編集中であることを明示する編集通知情報を、前記第1の個人端末の表示部に表示し、
前記第2の個人端末は、
前記第1の個人端末から受信した1又は複数のオブジェクトを表示する表示部と、操作部と、制御部と、を少なくとも備え、
前記第2の個人端末の制御部は、前記第2の個人端末の表示部に表示しているいずれかのオブジェクトに対する編集操作が開始され、当該オブジェクトの編集を検知したら、前記第1の個人端末に当該オブジェクトの編集通知を送信する、
ことを特徴とするオブジェクト利用システム。」

第3 引用文献、引用発明
当審において、平成28年11月14日付けの拒絶の理由に引用した特表2011-503716号公報(以下、「引用文献」という。)には、次のア?エのとおりの記載がある。下線は、当審において、注目箇所に付した。

「【請求項1】
第1のコンピュータデバイス(110、810、910、1010)の第1のユーザと、少なくとも1人の他のユーザと、の間で文書(2010)の共同編集を容易にする方法であって、
前記第1のコンピュータデバイス(110、810、910、1010)において文書のユーザコピー(155)にアクセスするステップであって、文書のコンテンツ(152)にアクセスするステップと、文書に関連するメタデータ(154、1011)にアクセスするステップと、を含み、前記文書のコンテンツ(152)が、ユニットのデータ(410から450)に編成されるステップと、
メタデータ更新を記憶装置(120、820、1020)から周期的に受け取るステップであって、前記メタデータ更新が他のユーザに関連する前記文書のユニットのデータ(410から450)への任意のロックを含む、ステップと、
前記受け取られたメタデータ更新を自動的にインスタンス化するステップであって、前記文書のユニットのデータ(410から450)へのロックを、前記文書に関連するメタデータ(154、1011)と共に記憶するステップを含み、前記文書に関連するメタデータと共にロックを記憶するステップにより、前記第1のユーザが、他のユーザに関連するロックを有する任意のユニットのデータを編集することを防ぐ、ステップと、
コンテンツ更新を前記記憶装置(120、820、1020)から周期的に受け取るステップであって、前記コンテンツ更新が、他のユーザにより前記文書のコンテンツ(152)に対してなされた任意の修正を含む、ステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のコンピュータデバイスにおいて文書のユーザコピーにアクセスするステップが、
前記記憶装置から文書のマスタの状態を示す文書のダウンロードコピーを取得するステップと、
ダウンロードコピーに基づき、文書の基本コピーと、ユーザコピーとを生成するステップと、
前記記憶装置から文書に関連するメタデータをダウンロードするステップと、
前記第1のコンピュータデバイス上にメタデータを記憶するステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。」

「【0012】
本開示の実施形態は、多数のユーザが、共同して文書をオーサリングすることが可能な環境を提供する。図1は、本開示の発明の態様の例である特徴を有する一例のオーサリングシステム100を例示する。オーサリングシステム100は、文書150のマスタコピーを記憶する記憶装置120を含む。一実施形態において、記憶装置120は、コンピュータデバイスを含むことが可能である。別の実施形態において、記憶装置120は、1つまたは複数の記憶装置(例えば、コンピュータデバイスのネットワーク)を含むことが可能である。
【0013】
オーサリングシステム100はまた、記憶装置120に通信可能に連結される少なくとも1つのユーザコンピュータデバイス110を含む。各ユーザコンピュータデバイス110は、文書150のユーザコピー155を作成し、かつ、ユーザコピー155を編集することにより、文書150を編集することが可能である。ユーザコンピュータデバイス110が、記憶装置120に他のユーザコンピュータデバイスと共有されるべき更新を周期的に送信し、記憶装置120から、他のユーザコンピュータデバイスからの更新を周期的に取得するときに、文書150のユーザコピー155が同期化される。
【0014】
本明細書において使用されるとき、用語ユーザコンピュータデバイス110は、オーサリングする文書のユーザコピーをその文書のマスタコピーから取得する、任意のコンピュータデバイスを含む。ユーザコンピュータデバイス110は、記憶装置120とは異なるものとすることが可能であり、または、記憶装置120上に実装される異なるユーザアカウントを含むことが可能である。一実施形態において、ある文書の記憶装置120としての役割を果たすコンピュータデバイスが、異なる文書のユーザコンピュータデバイス110として役割を果たし得、その逆も同様である。
【0015】
図示の例において、4つのユーザコンピュータデバイス110A、110B、110C、および110Dが、通信可能に記憶装置120に連結される。しかし、他の実施形態において、任意の数のコンピュータデバイス110が、記憶装置120に連結され得る。図示の例において、各ユーザコンピュータデバイス110A、110B、110C、110Dは、ユーザコンピュータデバイスのユーザにより生成される更新を記憶装置120に送信することが可能であり、他のユーザコンピュータデバイスのユーザにより生成された更新を記憶装置120に要求することが可能である。一実施形態において、記憶装置120を、サーバコンピュータデバイスとすることが可能であり、ユーザコンピュータデバイス110A、110B、110C、110Dを、クライアントコンピュータデバイスとすることが可能である。
【0016】
図2に示すように、記憶装置120上に記憶される文書150には、コンテンツ152およびメタデータ154が含まれる。ユーザコンピュータデバイス110上のオーサリングアプリケーション130は、文書150のユーザコピー155のコンテンツおよびメタデータを処理および操作する。いくつかの実施形態において、メタデータ154は、コンテンツ152とは別個に記憶することが可能である。例えば、コンテンツ152は、文書150内に記憶することが可能であり、メタデータ154は、文書150とは別個にテーブル内に(図7参照)記憶することが可能である。しかし、他の実施形態において、メタデータ154は、文書150内に記憶することが可能である。
【0017】
一般に、ユーザコンピュータデバイス110は、コンテンツ152に対する更新を、メタデータ154に対する更新とは別個に同期させることが可能である。一般に、メタデータ更新154は、記憶装置120とユーザコンピュータデバイス110との間で自動的に同期され、一方、各ユーザコンピュータデバイス110からのコンテンツ更新152は、それぞれのユーザの要求時に同期される。
【0018】
図3は、オーサリングシステム100が、ユーザコンピュータデバイス110上に記憶される文書のコピー155を記憶装置120上に記憶されるその文書のマスタコピー150に同期させることが可能である、例示の同期化処理300を例示するフローチャートである。同期化処理300は、スタートモジュール302にて初期化および開始し、第1の更新操作304に進む。
【0019】
第1の更新操作304は、ユーザとの任意の相互作用を要求することなく、コピー155のメタデータを文書150のメタデータに同期させる。例えば、第1の更新操作304は、周期的な時間間隔で記憶装置120とユーザコンピュータデバイス110との間でメタデータの交換を提供することが可能である。一実施形態において、第1の更新操作304は、メタデータの交換を数秒ごとに提供する。しかし、他の実施形態において、第1の更新操作304は、メタデータの交換をより短いまたは長い時間間隔で起こるように提供することが可能である。
【0020】
要求モジュール306は、コンテンツを同期させよという要求が受け取られたかどうかを判定する。例えば、要求モジュール306は、ユーザコンピュータデバイス110のうちの1つのユーザが、コンテンツ変更を他のユーザと共有することを要求したかどうかを判定することが可能である。別の実施形態において、要求モジュール306は、ユーザコンピュータデバイス110のうちの1つのユーザが、他のユーザによりなされたコンテンツ変更を閲覧することを要求したかどうかを判定することが可能である。
【0021】
要求モジュール306が、コンテンツを同期させよという要求がなされていないと判定した場合は、同期化処理300は、第1の更新操作304に戻り、再度開始する。しかし、要求モジュール306が、コンテンツを同期させよという要求が受け取られたと判定した場合、同期化処理300は、第2の更新操作308に進み、そこでは、記憶装置120とユーザコンピュータデバイス110との間のコンテンツの交換が提供される。同期化処理300は、ストップモジュール310にて完了および終了する。
【0022】
本明細書において使用されるとき、用語コンテンツ更新152は、文書の実質的なコンテンツに対してなされる任意の追加、削除、および/または修正に言及する。例えば、ワープロ文書のコンテンツ更新には、追加の段落(すなわち、またはその章)、削除された段落(すなわち、またはその章)、および/または修正された段落(すなわち、またはその章)が含まれ得る。別の実施形態において、プレゼンテーション文書のコンテンツ更新には、追加、削除および/または修正された画像、テキスト、アニメーション、音声および他のそのようなデータオブジェクトが含まれ得る。
【0023】
本明細書において使用されるとき、用語メタデータ更新154は、文書のメタデータに対してなされる任意の追加、削除、および/または修正に言及する。文書メタデータの非限定例には、コンテンツロック、プレゼンス情報、および他のそのようなデータが含まれ得る。本明細書において検討されるように、コンテンツロックは、ロックを所有しないユーザが、ロック内のコンテンツを編集することを禁じる。プレゼンス情報は、本明細書においてより詳細に検討するように、どのユーザが文書を編集する意思を示したかを示す。
【0024】
図4から9を参照すると、コンテンツロックは、文書のどの部分が他のユーザにより請求されたかを示すことにより、編集の矛盾を阻止する。いくつかの実施形態において、コンテンツロックは、ユーザが他のユーザにより請求された文書の部分を編集することを防ぐ(すなわち、妨げる)ことが可能である。しかし、他の実施形態において、ユーザは、コンテンツロックを破りその文書の部分を編集する、という選択をすることが可能である。そのような場合、ロックは、ロックされた部分を編集する際に矛盾が生じるかもしれないことを、ユーザに警告することが可能である。
【0025】
例えば、図4は、5個のユニットのデータ410、420、430、440、450を有する文書400の概略ブロック図である。一実施形態において、文書400は、ワープロ文書であり、データのユニット410から450は、テキストの段落である。別の実施形態において、文書400は、プレゼンテーション文書であり、第1のユニットのデータ410は、表題または件名標目であり、第2のユニットのデータ420は、画像または他のデータオブジェクトであり、残りのユニットのデータ430、440、450は、テキストのブロックである。
【0026】
第1のユーザは、文書400の1つまたは複数のユニットのデータ410から450についてのロックを生成することが可能である。図4の図示の例において、第2のユニットのデータ420が、網掛けして示されるように、第1のユーザによりロックされている。コンテンツロックを生成することにより、第1のユーザは、第1のユーザがユニットのデータ420を編集する意思があることを示した。例えば、ユーザは、ユーザが、ユニットのデータ420を積極的に編集しているときに、ロックを生成することが可能である。別の実施形態において、ユーザは、ロックを生成してから、後の時間にユニットのデータ420を編集することが可能である。上記で触れたように、文書400を管理するオーサリングアプリケーションは、第1のユーザ以外のユーザがロックされたデータユニット420を編集することを防ぐことができる。
【0027】
一般に、第1のユーザにより生成されたコンテンツロックは、ロックされた期間中に文書にアクセスする全ての他のユーザに対して表示される。一実施形態において、第1のユーザはまた、コンテンツロックを閲覧することが可能である。ロックは、異なるタイプのインディシアを使用して表示することが可能である。例えば、一実施形態において、ロックされたユニットのデータの背景に、色をつける、影をつける、または模様をつける(例えば、図4のデータユニット420参照)ことができる。別の実施形態において、ロックされたユニットのコンテンツ(例えば、テキスト、画像、外形、または他のデータオブジェクト)に、色をつける、影をつける、または模様をつけることができる。さらに別の実施形態において、ロックされたユニットのデータに近接してボックス、ブラケット、またはシンボルを表示して、ロックを示すことが可能である。
【0028】
コンテンツロックは、文書内の1つまたは複数のユニットのデータ周辺に生成され得る。いくつかの実施形態において、コンテンツロックは、ユーザからの明示の命令がなくとも黙示的に生成することが可能である。例えば、オーサリングアプリケーションは、ユーザが、カーソルをデータユニットの中に位置付ける、データユニットを、ハイライトするまたは選択するときに、データユニットについてのコンテンツロックを生成し得る。別の実施形態において、オーサリングアプリケーションは、ユーザがデータユニットの編集を開始するときに、データユニットについてのコンテンツロックを生成し得る。別の実施形態において、オーサリングアプリケーションは、ユーザがデータユニットに対してなされた編集を保存するときに、データユニットについてのコンテンツロックを生成し得る。いくつかの実施形態において、オーサリングアプリケーションは、データユニットのうちの1つのみがユーザにより請求されても、文書内の多数の相互依存するデータユニットの周辺に、コンテンツロックを生成し得る。他の実施形態において、ユーザは、1つまたは複数のデータユニットについてのコンテンツロックを明示的に定義し得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、コンテンツロックは、拡大して文書内の追加のユニットのデータを含むこと、および/または、縮小して文書内の1つまたは複数のユニットのデータを解除することが可能である。一実施形態において、コンテンツロックは、増大して隣接するユニットのデータのみを含むことが可能である。例えば、図5に示すように、ユーザが第3のデータユニット430を選択または編集する場合、第2のデータユニット420の周辺のコンテンツロック(例えば、網掛け部分を参照)は、拡大して第3のデータユニット430を含むことが可能である。コンテンツロックまたはその部分は一般に、コンテンツロックを生成したユーザの裁量で排除することが可能である。いくつかの実施形態において、コンテンツロックを生成したユーザは、別のデータユニットを選択または編集することによりコンテンツロックを解除する。
【0030】
一実施形態において、ユーザは、オーサリングアプリケーションがロックを解除する前に、ユーザがデータユニットの編集を終了したことを示さなければならない。例えば、オーサリングアプリケーションは、ユーザが文書を保存する命令を与えたあとのみ、ロックを解除し得る。別の実施形態において、オーサリングアプリケーションは、ユーザが図6の第5のデータユニット450等の離れたデータユニットの編集を選択または開始した後に、ロックを解除し得る。別の実施形態において、オーサリングアプリケーションは、非隣接のデータユニットへの移動および終了動作(例えば、文書を保存する命令)の両方の後に、ロックの解除のみする。他の実施形態において、コンテンツロックを、管理者または別のユーザが明示的に解除することが可能である。
【0031】
図7を参照すると、ロックメタデータが、様々な異なるフォーマットで記憶され得る。例えば、図7のロックメタデータは、テーブルのフォーマット500で記憶される。図7のロックテーブル500は、ユーザのリストを含み、その各ユーザは、ユーザに一意的に割り当てられるユーザ識別子(例えば、識別番号)で識別される。ロックされるデータユニットは、文書内の各データユニットに一意的に割り当てられるユニット識別子(例えば、識別番号)で識別される。ロックテーブル500は、ロックされる1つまたは複数のデータユニットのユニット識別子を、ロックを所有するユーザのユーザ識別子と関連付ける。
【0032】
例えば、ロックテーブル500において、データユニット512および514は、第1のユーザ510と関連付けられる。従って他のユーザは、データユニット512および514を編集することが禁じられる。データユニット522は、ユーザ520と関連付けられる。従って、第1のユーザ510を含む他のユーザが、データユニット522を編集することが禁じられる。第4のユーザ540は、文書の任意の部分をロックしておらず、従って、任意のユニット識別子に関連付けされない。しかし、他の実施形態において、ロックメタデータを、異なるフォーマットで、または文書に、記憶することが可能である。例えば、ロックテーブル500を、ユーザ識別子の代わりにユニット識別子により配置することが可能である。
【0033】
プレゼンスメタデータはまた、様々なフォーマットで記憶することが可能である。例えば、プレゼンスメタデータは、図7のロックテーブル500内に記憶することが可能である。しかし、別の実施形態において、プレゼンスメタデータは、別個のテーブル内に、または異なるフォーマットで記憶することが可能である。プレゼンスメタデータは、現在文書にアクセスしている、または、文書のデータユニットに請求を主張した(例えば、コンテンツロックを生成した)、各ユーザのユーザ識別子を含む。例えば、ロックテーブル500等のメタデータテーブルは、文書の少なくとも1つのデータユニットに対して請求を有する各ユーザのユーザ識別子を記憶することが可能である。ロックメタデータのように、プレゼンスメタデータは、自動的に同期化され得る。
【0034】
図8および9は、コンテンツおよびロックが多数のコンピュータデバイス間で同期化が可能な、例示の同期化処理600、700を例示するフローチャートである。第1の同期化処理600は、オーサリングアプリケーションにより実装されて、第1のユーザによりオーサリングアプリケーションでなされる更新を他のユーザと共有する。第2の同期化処理700は、オーサリングアプリケーションにより実装されて、他のユーザによりなされる更新を、オーサリングアプリケーションで編集されている文書にインスタンス化する。
【0035】
図8の第1の同期化処理600は、スタートモジュール602にて初期化および開始し、受信操作604に進む。受信操作604は、第1のユーザから命令を受け取って、文書内の1つまたは複数のデータユニットに対して編集操作を実行する。編集操作の非制限例には、データユニット(例えば、テキスト、図面、画像、外形、見出し等)またはその部分の追加、編集、および/または削除、データユニットのフォーマット設定の追加および/または削除、データユニットの順番の再編成、および、他のそのような操作が含まれる。
【0036】
第1の判定モジュール606は、編集操作が実行されるべきデータユニットがロックされているかどうかをチェックする。例えば、第1の判定モジュール606が、図7のロックテーブル500等のロックテーブルにアクセスして、データユニットに割り当てられたユニット識別子が任意のユーザと関連するかどうかを判定することが可能である。別の実施形態において、第1の判定モジュール606は、別の方法でデータユニットがロックされているかどうかを判定することが可能である。
【0037】
第1の判定モジュール606が、データユニットがロックされていないと判定した場合、生成操作608が、データユニット上にコンテンツロックを作成する。例えば、一実施形態において、生成操作608は、データユニットのユニット識別子を第1のユーザのユーザ識別子に関連付ける図7のロックテーブル500に、エントリを追加することが可能である。伝送操作610は、新しく生成されたロックの存在を示すロックメタデータを、文書のマスタコピーを記憶するデバイスに送る。例えば、伝送操作610は、ロックメタデータを、図1のコンピュータデバイス110A等のユーザコンピュータデバイスから、記憶装置120等の記憶装置に送ることが可能である。一実施形態において、ロックメタデータには、ロックメタデータに対する増分の編集(例えば、微小な差分)を記載する命令を含まれる。実行操作614は、データユニットに対して編集操作を実行する。
【0038】
あるいは、第1の判定モジュール606が、データユニットがロックされていると判定した場合、第2の判定モジュール612が、ロックの所有権情報を取得する。一実施形態において、第2の判定モジュール612が、ロックが別のユーザにより所有されると判定した場合、同期化処理600は、編集操作を実行せずにストップモジュール620にて完了および終了する。別の実施形態(図示せず)において、同期化処理600は、第1のユーザがロックを破り生成操作608に進むことを選択することを、可能にし得る。しかし、第2の判定モジュール612が、ロックが第1のユーザにより所有されると判定した場合、同期化処理600は、上記で検討した実行操作614に進む。別の実施形態(図示せず)において、同期化処理600は、任意のデータユニット上のロックが解除されるべきかどうかを判定することが可能である。
【0039】
第3の判定操作616が、第1のユーザが、編集操作を実行することにより得られるデータユニットに、コンテンツ変更を共有せよという命令を(明示的または黙示的に)与えたかどうかを判定する。例えば、第3の判定操作616は、第1のユーザが、文書を記憶せよという命令を与えたかどうかを判定し得る。別の実施形態において、第3の判定操作616は、第1のユーザが、「変更共有」ボタンまたは他のそのようなインディシアを選択したかどうかを判定し得る。別の実施形態において、第3の判定操作616は、自動保存の機能がアプリケーションにより実行されたかどうかを判定し得る。第3の判定操作616が、共有の命令が与えられていないと判定した場合、同期化処理600は、受信操作604に戻り、再度開始する。
【0040】
しかし、判定操作616が、共有の命令が与えられたと判定した場合、同期化処理600は、伝送操作618に進み、そこでは、コンテンツ更新が文書のマスタコピーを記憶するデバイスに送られる。コンテンツ更新は、編集操作により文書のコンテンツに対してなされた変更を示す。例えば、伝送操作618は、コンテンツ更新を、図1のユーザコンピュータデバイス110Aから記憶装置120へ送ることが可能である。一実施形態において、コンテンツ更新には、文書の新しく生成されたバージョンが含まれる。別の実施形態において、コンテンツ更新は、文書の現在のユーザコピーと文書のマスタコピーとの間の、コンテンツに対する増分の編集(例えば、微小な差分)を示す。同期化処理600は、上記で検討したように、ストップモジュール620にて完了および終了する。
【0041】
図9の第2の同期化処理700は、スタートモジュール702にて初期化および開始し、受信操作704に進む。受信操作704は、他のユーザにより文書に対してなされた変更に基づく更新を受け取る。更新には、文書のコンテンツおよび/またはメタデータに対する変更が含まれ得る。一実施形態において、受信操作704は、文書のマスタコピーを記憶するデバイスをポーリングし、更新を要求することが可能である。別の実施形態において、マスタコピーを記憶するデバイスは、オーサリングアプリケーションに対して変更をプッシュ配信することが可能である。
【0042】
第1の判定モジュール706は、更新に、文書のメタデータに対する任意の変更が含まれるかどうかを判定する。例えば、第1の判定モジュール706は、任意の他のユーザが、新しいロックを確立したかどうか、またはデータユニット上のロックを解除したかどうかを判定することが可能である。別の実施形態において、第1の判定モジュール706は、別のユーザが文書にアクセスしたかどうかを判定することが可能である。
【0043】
第1の判定モジュール706が、メタデータの更新が受け取られたと判定した場合、実行操作708は、受け取られたメタデータの更新を、自動的にインスタンス化する。例えば、実行操作708は、オーサリングアプリケーションに、メタデータの更新に基づき図7のロックテーブル500等のロックテーブルを更新させることが可能である。しかし、第1の判定モジュール706が、メタデータの更新が受け取られなかったと判定した場合、第2の同期化処理700は、第2の判定モジュール710に進む。
【0044】
第2の判定モジュール710は、更新に、文書のコンテンツに対する任意の変更が含まれるかどうかを判定する。例えば、第2の判定モジュール710は、任意のデータユニットが、追加、削除、修正または移動されたかどうかを判定することが可能である。第2の判定モジュール710が、コンテンツ更新が受け取られなかったと判定した場合、第2の同期化処理700は、受信操作704に戻り、再度開始する。しかし、第2の判定モジュール710が、コンテンツ更新が受け取られたと判定した場合、第2の同期化処理700は、標示操作712に進む。
【0045】
標示操作712は、コンテンツ更新が閲覧可能であることを、第1のユーザに警告する。例えば、標示操作712は、グラフィック、テキストボックス、数値インディシア、またはコンテンツ更新の可用性を示す他のメッセージを表示することが可能である。一実施形態において、標示操作712は、いくつの更新が利用可能であるかを示す情報をユーザに与える。更新についての他の情報(例えば、更新したユーザ、タイムスタンプ等)もまた、示され得る。
【0046】
第3の判定モジュール714は、オーサリングアプリケーションが、コンテンツ更新を閲覧、および/またはインスタンス化するという命令を第1のユーザから(明示的または黙示的に)受け取ったかどうかを判定する。例えば、第3の判定モジュール714は、ユーザがオーサリングアプリケーションの閲覧オプションを(例えば、ボタン、メニュー、または他のインターフェースツールを介して)選択したかどうかを判定することが可能である。別の実施形態において、第3の判定モジュール714は、ユーザが自動インスタンス化オプションを選択したかどうかを選択し得る。第3の判定モジュール714が、オーサリングアプリケーションが第1のユーザからそのような命令を受け取らなかったと判定した場合、第2の同期化処理700は、受信操作704に戻り、再度開始する。
【0047】
第3の判定モジュール714が、オーサリングアプリケーションが第1のユーザから命令を受け取ったと判定した場合、インスタンス化操作716は、コンテンツ更新を第1のユーザに対して表示する。例えば、一実施形態において、インスタンス化操作716は、利用可能なコンテンツ更新をマージして、第1のユーザの文書のコピーとすることが可能である。別の実施形態において、インスタンス化操作716は、第1のユーザの文書のコピーに注釈を付けて、どのコンテンツが変更されたかを示すことが可能である。追加の注釈は、どのユーザがどの変更を行ったかを示すことが可能である。一実施形態において、インスタンス化操作716は、ユーザコピーと更新との間の矛盾解消を実行する。第2の同期化処理700は、ストップモジュール718にて完了し終了する。」

「【0051】
一般に、本開示の原理に従う発明の態様の例である特徴を有するオーサリング環境は、ユーザコンピュータデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、ノートブックコンピュータ、PDA、スマートフォン、または任意の他のそのようなコンピュータデバイス)上で実装され得る。オーサリング環境を実装するよう構成されるユーザコンピュータシステム900の非限定の実施形態は、図11を参照して本明細書において記載される。
【0052】
図11において、本開示の原理を実装する例示のコンピュータシステム900には、ユーザコンピュータデバイス910等のユーザコンピュータデバイスが含まれる。基本の構成において、ユーザコンピュータデバイス910は典型的には、システムメモリ920内に記憶されるアプリケーションおよびプログラムを実行するための、少なくとも1つのプロセシングユニット915が含まれる。的確な構成およびタイプのコンピュータデバイス910に依存して、システムメモリ920には、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、CD-ROM、DVD(digital versatile disk)もしくは他の光記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置、もしくは他の磁気記憶装置、または他のメモリ技術、が含まれ得るが、これに限定されない。
【0053】
システムメモリ920は典型的には、ワシントン州レドモンドのマイクロソフト社のウィンドウズ(登録商標)オペレーティングシステム等、コンピュータデバイス910の操作の制御に適した、オペレーティングシステム922を記憶する。システムメモリ920にはまた、文書のユーザコピー927を記憶することが可能である文書キャッシュ926が含まれ得る。文書のメタデータ929はまた、ユーザキャッシュ926内に記憶され得る。
【0054】
システムメモリ920はまた、文書を作成および編集するためのオーサリングアプリケーション924等の1つまたは複数のソフトウェアアプリケーションを記憶し得る。本開示の原理に従う文書のオーサリングに適したオーサリングアプリケーション924の1つの非限定例は、ワシントン州レドモンドのマイクロソフト社のマイクロソフト(登録商標)オフィスワードオーサリングソフトウェアである。オーサリングアプリケーションの他の非限定例には、パワーポイント(登録商標)プレゼンテーションソフトウェア、およびビジオ(登録商標)描画・作図ソフトウェアが含まれ、双方ともまた、ワシントン州レドモンドのマイクロソフト社のものである。
【0055】
コンピュータデバイス910はまた、データを入力および操作するためのキーボード、マウス、ペン、音声入力デバイス、タッチ入力デバイス等の入力デバイス(複数可)930を有する。ディスプレイスクリーン、スピーカ、プリンタ等の出力デバイス(複数可)935もまた、含まれ得る。これらの出力デバイス935は、従来技術において周知であり、本明細書において長々と検討する必要はない。
【0056】
コンピュータデバイス910はまた、デバイス910が、他のコンピュータデバイス、例えば、図10の記憶装置820と、分散コンピュータ環境におけるネットワーク(例えば、イントラネットまたはインターネット)上で通信することを可能にする、通信接続940を含有し得る。限定ではなく例として、通信デバイス媒体940には、有線ネットワークまたは直接の有線接続等の有線媒体、ならびに、音響、高周波、赤外線および他の無線媒体等の無線媒体が含まれる。
【0057】
図12は、ユーザコンピュータデバイス上のオーサリングアプリケーションにより実装される同期化サイクルを例示するオーサリングシステム1000の概略ブロック図である。オーサリングシステム1000には、オーサリングされるべき文書が記憶される記憶装置1020、およびユーザコンピュータデバイス1010が含まれる。ユーザコンピュータデバイス1010には、オーサリングアプリケーション1012、キャッシュ1014、レイヤオブジェクト1016、および同期化マネジャ1018が含まれる。ユーザコンピュータデバイス1010のキャッシュ1014は、オーサリングされるべき文書の基本コピー1013、作業用コピー1015、アップロードコピー1017,およびダウンロードコピー1019を記憶するよう構成される。キャッシュ1014はまた、文書のメタデータ1011を記憶するよう構成される。
【0058】
図13は、ユーザコンピュータデバイス1010等のユーザコンピュータシステムが、文書のオーサリング中に、更新を送信および受信することが可能である、例示の同期化処理1100の動作フローを例示するフローチャートである。同期化処理1100は、スタートモジュール1102にて初期化および開始し、取得操作1104に進む。取得操作1104は、ユーザコンピュータデバイス1010の同期化マネジャ1018に、オーサリングされるべき文書のダウンロードコピー1017を記憶装置1020から取得させる。文書のダウンロードコピー1017は、文書が記憶装置1020から取得されるときの、文書のマスタコピーの状態を反映する。例えば、取得操作1104は、同期化マネジャ1018に、文書のマスタコピーの最新のバージョンのコピーを記憶装置1020からプル配信させることが可能である。
【0059】
生成操作1106は、ダウンロードコピー1017に基づき、文書の基本コピー1013および作業用コピー1015を作成する。文書の作業用コピー1015は、オーサリングアプリケーション1012により操作され、ユーザが文書を編集することを可能にすることができる。従って、作業用コピー1015は、文書の現在の状態をオーサリングアプリケーション1012のユーザにより編集されるもののように反映する。基本のコピー1013は、ユーザが文書の編集を開始する直前の文書の状態を反映する。一実施形態において、レイヤオブジェクト1016は、文書の基本のコピー1013および作業用コピー1015を生成し、作業用コピー1015をオーサリングアプリケーション1012に提供する。
【0060】
他のユーザにより生成されたコンテンツ更新を取得するために、ポーリング操作1108は、同期化マネジャ1018に、記憶装置1020に周期的に接触してオーサリングされている文書の更新されたダウンロードコピー1017を取得する。ダウンロードコピー1017は、ダウンロード時の文書のマスタコピーの状態を反映する。基本コピー1013が生成されたため、マスタコピーは、記憶装置1020上に記憶され、他のユーザによりなされた変更を含み得る。同期化マネジャ1018は、文書の任意の更新されたダウンロードコピー1017をキャッシュ1014内に記憶する。
【0061】
編集操作1110は、ユーザによりオーサリングアプリケーション1012に与えられた任意の命令を受け取って、文書上で編集操作を実行する。アプリケーション1012は、文書1015の作業用コピーに対して編集を行う。オーサリングアプリケーション1012はまた、編集操作を実行するときに、必要に応じてメタデータの変更を行う。
【0062】
第1の判定モジュール1112にて、レイヤオブジェクト1016は、キャッシュ1014をチェックして、ポーリング操作1108中に任意の更新が受け取られたどうかを(すなわち、更新されたダウンロードコピー1017がキャッシュ1014において利用可能かどうかを)判定する。一実施形態において、ユーザが文書の作業用コピーを編集したかどうかにかかわらず、第1の判定モジュール1112が周期的時間間隔で実行される。異なる実施形態において、第1の判定モジュール1112が、例えば、数秒、数ミリ秒、または、数分ごとに実行され得る。
【0063】
レイヤオブジェクト1016が、新しいダウンロードコピー1017が利用可能でないと判定した場合、同期化処理1100は、第2の判定モジュール1116に進むが、これについては以下でより詳細に検討する。しかし、レイヤオブジェクト1016が、新しいダウンロードコピー1017が利用可能であると判定した場合、同期化処理1100は、同期化操作1114に進む。一実施形態において、同期化操作1114は、オーサリングアプリケーション1012のユーザとの任意の相互作用を要求することなく、ダウンロードコピー1017において見出される任意のメタデータの更新を自動的にインスタンス化する。例えば、レイヤオブジェクト1016は、ダウンロードコピー1017において反映される任意のロックメタデータを、文書の作業用コピー1015に自動的にインスタンス化し得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、同期化操作1114は、ダウンロードコピー1017からの任意のコンテンツ更新を作業用コピー1015に自動的にインスタンス化はしない。むしろ、同期化操作1114は、オーサリングアプリケーション1012のユーザが、コンテンツ更新を統合せよという命令を与えるときに、コンテンツ更新をインスタンス化するのみである。しかし、他の実施形態において、同期化操作1114は、コンテンツ更新を自動的にインスタンス化する。一実施形態において、同期化操作1114は、統合せよという命令が与えられるときに、レイヤオブジェクト1016に、更新されたダウンロードコピー1017を作業用コピー1015にマージさせる。一実施形態において、同期化操作1114は、図9に示す第2の同期化処理700と同じである。しかし、他の実施形態において、他の同期化処理を使用して、更新を文書の作業用コピー1015と統合することが可能である。同期化処理1100は、同期化操作1114から第2の判定モジュール1116へ進む。
【0065】
第2の判定モジュール1116は、ユーザが、編集操作1110中に、文書の作業用コピー1015または文書のメタデータ1011に対する任意の変更を行ったかどうかを判定する。第2の判定モジュール1116が、編集が行われなかった(すなわち、コンテンツもメタデータも編集されなかった)と判定した場合、同期化処理1100は、ポーリング操作1108に戻り、再度開始する。しかし、第2の判定モジュール1116が、ユーザがコンテンツの編集(例えば、文書のデータユニットの修正)および/またはメタデータの編集(例えば、文書のデータユニットのロック)を行ったと判定した場合、共有操作1118が、編集を記憶装置1020と同期させる。」

「【0088】
ここで図27から31を参照すると、共同オーサリングセッション中のユーザエクスペリエンスが、以下に詳細に記載される。図27から31は、第1のユーザおよび第2のユーザが文書2010を共同してオーサリングするため、第1のオーサリングアプリケーションの例示のユーザインターフェース2000に対する変更を例示する。第1のユーザJane Doeが、第1のオーサリングアプリケーションを使用して文書2010を編集し、第2のユーザJohn Doeが、異なるオーサリングアプリケーションを使用して文書2010を編集する。
【0089】
文書2010には、第1のデータユニット2012、第2のデータユニット2014、第3のデータユニット2016、および第4のデータユニット2018が含まれる。第1のユーザは、コンテンツロック2022を第1のデータユニット2012周辺に配置する。例えば、一実施形態において、第1のユーザは、自分のカーソル2015を第1のデータユニット2012に移動させ得る。別の実施形態において、第1のユーザは、1つまたは複数の編集操作を第1のデータユニット2012に対して実行せよという命令を与え得る。
【0090】
図28において、第1のユーザが、テキストを第1のデータユニット2012に追加した。第1のデータユニット上のロックが、第2のユーザが第1のデータユニット2012を編集することを禁じる。一実施形態において、第1のロック2022が、第2のユーザが第1のデータユニット2012を編集することを防ぐ。別の実施形態において、第1のロック2022が、第1のデータユニット2012を編集することに対して第2のユーザに警告するが、第2のユーザが編集するのを妨げない。さらに別の実施形態において、第1のロック2022は、第1のユーザが第1のデータユニット2012を編集する意思を示したことを、単に示す。
【0091】
図29において、第2のユーザが、第3のデータユニット2016についてコンテンツロック2024を配置した。第2のユーザが自分の変更を共有しないことを選択したため、第2のロックが、第1のオーサリングアプリケーションのユーザインターフェース2000上で見えるようにされ得るが、第2のユーザにより第3のデータユニット2016に対してなされた任意の変更は、まだ見えない。図示の例において、第2のロック2024が、第2のロック2024の範囲を示すブラケットを表示することにより、ユーザインターフェース2000によって示される。第2のロック2024はまた、第2のロック2024の所有者を示すネームタグを含むことが可能である。図29において、ネームタグには、第2のユーザを識別するテキストおよびアイコンが含まれる。アイコンは、色、シンボルまたは他のグラフィックによりユーザをさらに識別することが可能である。
【0092】
図30において、第1のオーサリングアプリケーションが、文書2010のコンテンツ更新を受け取る。第2のユーザが、コンテンツ変更を他のユーザと共有することを選択し、従って、コンテンツ更新を(例えば、上述の同期化処理のうちの1つを介して)文書2010のマスタコピーにマージした。第1のオーサリングアプリケーションの同期化マネジャが、マスタコピーを記憶するデバイスをポーリングすることにより、文書2010のマスタコピーから更新を取得した。
【0093】
第1のオーサリングアプリケーションのユーザインターフェース2000が、コンテンツ更新の可用性を示す第1のユーザに対して警告2030を表示する。図示の例において、テキストボックス2030が、ユーザインターフェース2000に現れる。別の実施形態において、第2のロックまたは第2のロック内のテキストは、色、模様、フォーマット設定を変更することが可能である。別の実施形態において、それぞれの新しい更新が利用可能にされるときに、更新カウンタがインクリメントされる。
【0094】
第1のユーザは、第2のユーザによりなされた変更を閲覧/インスタンス化すること、または、コンテンツ更新を無視することを選択することが可能である。第1のユーザは、コンテンツ更新を無視しつつ、文書2010内の任意のロックされていないデータユニットの編集を続けることが可能である。一実施形態において、第1のユーザは、自分の更新をマスタコピーにマージする前にコンテンツ更新をインスタンス化しなければならない。図31において、第1のユーザが、第1のオーサリングアプリケーションに命令して、コンテンツ更新を第1のオーサリングアプリケーションのユーザインターフェース2000により表示される文書2010にインスタンス化させる。第2のユーザによりなされたコンテンツ変更は、ここで第1のユーザに見えるようにされる。」

a.
上記段落【0016】の記載によれば、文書150には、コンテンツ152及びメタデータ154が含まれ、コンテンツ152は文書150内に記憶することが可能であり、メタデータ154は、文書150とは別個にテーブル内に記憶することが可能であるから、文書150は、コンテンツ152を含み、別個にメタデータを有してよいものであり、上記【請求項1】の記載によれば、「メタデータ154」は、「文書に関連する」ものである。
そして、上記段落【0012】,【0013】,【0015】,【0017】,図1,2の記載によれば、引用文献1には、
「記憶装置120と、記憶装置120に通信可能に連結された複数のユーザコンピュータデバイス110(110A,110B,110C,110D)とから構成され、
前記記憶装置120は、コンテンツ152を含む文書150のマスタコピーと、文書150とは別個に文書150に関連するメタデータ154とを記憶し、
各ユーザコンピュータデバイス110は、文書150のユーザコピー155を作成し、ユーザコピー155を編集することにより、文書150を編集することが可能であり、記憶装置120に他のコンピュータデバイスと共有されるべき更新を周期的に送信し、記憶装置120から、他のユーザコンピュータデバイスからの更新を周期的に取得することにより、文書150とユーザコピー155とを同期化する、
オーサリングシステム100。」が記載されている。
b.
上記【請求項1】に「文書のコンテンツ(152)が、ユニットのデータ(410から450)に編成される」、上記段落【0025】に「例えば、図4は、5個のユニットのデータ410,420,430、440、450を有する文書400の概略ブロック図である。」と記載されているように、「文書400」は、上記a.の「文書150」の一例を示したものであるから、上記段落【0022】,【0025】の記載によれば、上記a.の「文書150のコンテンツ152」は、「ワープロ文書におけるテキストの段落や、プレゼンテーション文書における、画像、テキスト、アニメーション、音声などのデータオブジェクトの、複数のデータユニット」で構成されている。
c.
上記【0031】?【0033】,図7の記載によれば、上記a.の「メタデータ154」は、「現在、文書にアクセスしている、または、文書のデータユニットに請求を主張した(例えば、コンテンツロックを生成した)、各ユーザのユーザ識別子を含むプレゼンスメタデータと、ロックを所有するユーザの識別子とロックされるデータユニットのユニット識別子とを関連付けたロックメタデータとを記憶したロックテーブル500の形式で記憶され」るものである。
d.
上記段落【0028】,【0035】?【0037】の記載によれば、上記c.の「ロック」は、「コンテンツロック」のことを意味し、「コンテンツロックは、ユーザが、データユニットに対して編集を開始すると、データユニットのユニット識別子を、編集を行うユーザのユーザ識別子に関連付けたエントリをロックテーブル500に追加する」ことによって、行われる。
e.
上記a.の「記憶装置120に他のコンピュータデバイスと共有されるべき更新を周期的に送信し、記憶装置120から、他のユーザコンピュータデバイスからの更新を周期的に取得することにより、文書150とユーザコピー155とを同期化する」ことは、段落【0017】,【0019】,【0065】の記載によれば、「メタデータ154」が、「ユーザコンピュータデバイス110と記憶装置120との間で、周期的な時間間隔で同期され」ることと、段落【0017】,【0018】,【0020】,【0021】,【0034】?【0045】,【0057】?【0065】の記載によれば、「ユーザコンピュータデバイス110上に記憶される文書150のユーザコピー155のコンテンツを変更したユーザが、コンテンツの変更を他のユーザと共有することを要求した場合に、ユーザコンピュータデバイス110上のユーザコピー155のコンテンツを記憶装置120の文書150のマスタコピーのコンテンツに同期し、ユーザコンピュータ110は、記憶装置120から周期的に他のユーザにより生成されたコンテンツ更新を取得して、ユーザコンピュータデバイス110上に記憶される文書150のユーザコピー155のコンテンツを記憶装置120上に記憶される文書150のマスタコピーのコンテンツと同期」することである。
f.
段落【0024】,【0026】,【0027】の記載によれば、「生成されたコンテンツロックは、ロックされた期間中に文書にアクセスする全てのユーザに対して、ロックされたデータユニットを異なるインディシアで表示」する。
g.
段落【0051】?【0056】,図11の記載によれば、上記a.の「ユーザコンピュータデバイス110」は、図11の構成をとることができ、「システムメモリ920、データを入力および操作するための入力デバイス、ディスプレイスクリーン、アプリケーションおよびプログラムを実行するためのプロセシングユニット915」を有し、「システムメモリ920」には、文書150の「ユーザコピー155」と「メタデータ154」が記憶される。
h.
段落【0088】?【0094】,図27?31の記載によれば、一例として、「第1のデータユニット、第2のデータユニット、第3のデータユニット、第4のデータユニットを含む文書を、第1のユーザが第1のオーサリングアプリケーションを使用し、第2のユーザが第2のオーサリングアプリケーションを使用して、共同で編集する際に、
第1のユーザがカーソルを第1のユニットに移動させると、コンテンツロックを第1のデータユニットに配置し(図27の2022)、第2のユーザの第2のオーサリングアプリケーションに対して、第1のデータユニットを編集禁止とし、
第2のユーザが、第3のデータユニットについてコンテンツロックを配置すると、第2のロックが、第1のオーサリングアプリケーションのユーザインターフェース上で、ブラケットの表示、ロック所有者を示すネームタグの表示により示される(図29の2016,2024)」ことが記載されている。

以上、a.?h.によれば、引用文献には、
「記憶装置120と、記憶装置120に通信可能に連結された複数のユーザコンピュータデバイス110(110A,110B,110C,110D)とから構成され、
ユーザコンピュータデバイス110は、システムメモリ920、データを入力および操作するための入力デバイス、ディスプレイスクリーン、アプリケーションおよびプログラムを実行するためのプロセシングユニット915を有し、
前記記憶装置120は、コンテンツ152を含む文書150のマスタコピーと、文書150とは別個に文書150に関連するメタデータ154を記憶し、
各ユーザコンピュータデバイス110は、システムメモリ920に文書150のユーザコピー155、メタデータ154を記憶し、ユーザコピー155を編集することにより、文書150を編集することが可能であり、
前記文書150のコンテンツ152は、ワープロ文書におけるテキストの段落や、プレゼンテーション文書における、画像、テキスト、アニメーション、音声などのデータオブジェクトの、複数のデータユニットで構成され、
前記メタデータ154は、現在、文書にアクセスしている、または、文書のデータユニットに請求を主張した(例えば、コンテンツロックを生成した)、各ユーザのユーザ識別子を含むプレゼンスメタデータと、ロックを所有するユーザの識別子とロックされるデータユニットのユニット識別子とを関連付けたロックメタデータとを記憶したロックテーブル500の形式で記憶され、
コンテンツロックは、ユーザが、データユニットに対して編集を開始すると、データユニットのユニット識別子を、編集を行うユーザのユーザ識別子に関連付けたエントリをロックテーブル500に追加することにより行われ、
メタデータ154は、ユーザコンピュータデバイス110と記憶装置120との間で、周期的な時間間隔で同期され、
生成されたコンテンツロックは、ロックされた期間中に文書にアクセスする全てのユーザに対して、ロックされたデータユニットを異なるインディシアで表示し、
ユーザコンピュータデバイス110上に記憶される文書150のユーザコピー155のコンテンツを変更したユーザが、コンテンツの変更を他のユーザと共有することを要求した場合に、ユーザコンピュータデバイス110上のユーザコピー155のコンテンツを記憶装置120の文書150のマスタコピーのコンテンツに同期し、ユーザコンピュータ110は、記憶装置120から周期的に他のユーザにより生成されたコンテンツ更新を取得して、ユーザコンピュータデバイス110上に記憶される文書150のユーザコピー155のコンテンツを記憶装置120上に記憶される文書150のマスタコピーのコンテンツと同期する、オーサリングシステム100において、
一例として、
第1のデータユニット、第2のデータユニット、第3のデータユニット、第4のデータユニットを含む文書を、第1のユーザが第1のオーサリングアプリケーションを使用し、第2のユーザが第2のオーサリングアプリケーションを使用して、共同で編集する際に、
第1のユーザがカーソルを第1のユニットに移動させると、コンテンツロックを第1のデータユニットに配置し、第2のユーザの第2のオーサリングアプリケーションに対して、第1のデータユニットを編集禁止とし、
第2のユーザが、第3のデータユニットについてコンテンツロックを配置すると、第2のロックが、第1のオーサリングアプリケーションのユーザインターフェース上で、ブラケットの表示、ロック所有者を示すネームタグの表示により示される、
オーサリングシステム100。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

第4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
a.
引用発明の「ユーザコンピュータデバイス110(110A,110B,110C,110D)」は、本願発明の「個々のユーザが使用する複数の個人端末」に相当する。
また、引用発明の「オーサリングシステム100」は、ワープロやプレゼンテーションの文書150を編集するものであり、文書150のコンテンツ152を構成する「データユニット」は、編集の単位となるものであるから、本願発明の「オブジェクト」に相当し、引用発明の「オーサリングシステム100」は、本願発明と同様の「オブジェクト利用システム」ということができる。
したがって、引用発明の「記憶装置120と、記憶装置120に通信可能に連結された複数のユーザコンピュータデバイス110(110A,110B,110C,110D)とから構成」された「オーサリングシステム100」と、本願発明の「個々のユーザが使用する複数の個人端末が通信ネットワークで接続されたオブジェクト利用システム」とは、いずれも、「個々のユーザが使用する複数の個人端末とを有するオブジェクト利用システム」である点で共通する。
b.
引用発明の「ユーザコンピュータデバイス110(110A,110B,110C,110D)」の各々は、「システムメモリ920、データを入力および操作するための入力デバイス、ディスプレイスクリーン、アプリケーションおよびプログラムを実行するためのプロセシングユニット915」を有し、引用発明の「入力デバイス」、「プロセシングユニット915」は、それぞれ、本願発明の「操作部」、「制御部」に相当することは明らかである。
また、引用発明の「ディスプレイスクリーン」には、編集されている文書が表示されることは明らかであるから、引用発明の「ディスプレイスクリーン」は、本願発明の「1又は複数のオブジェクトを表示する表示部」に相当する。
また、引用発明の「第1のコンピュータデバイス」、「第2のコンピュータデバイス」は、「ユーザコンピュータ110」のいずれかであり、引用発明の「第1のコンピュータデバイス」、「第2のコンピュータデバイス」は、それぞれ、本願発明の「第1の個人端末」、「第2の個人端末」に相当するといえる。
また、引用発明の「第1のコンピュータデバイス」は、「システムメモリ920に文書150のユーザコピー155」を記憶しているから、引用発明の「第1のコンピュータデバイス」は、「1又は複数のオブジェクトを記憶する記憶部」を有している。
よって、引用発明の「第1のユーザの第1のコンピュータデバイス」と「第2のユーザの第2のコンピュータデバイス」とが有する構成と、本願発明の「前記複数の個人端末の内の第1の個人端末は、1又は複数のオブジェクトを表示する表示部と、操作部と、前記1又は複数のオブジェクトを記憶する記憶部と、制御部と、を少なくとも備え」、「前記第2の個人端末は、前記第1の個人端末から受信した1又は複数のオブジェクトを表示する表示部と、操作部と、制御部と、を少なくとも備え」ることとは、「前記複数の個人端末の内の第1の個人端末は、1又は複数のオブジェクトを表示する表示部と、操作部と、前記1又は複数のオブジェクトを記憶する記憶部と、制御部とを、少なくとも備え、第2の個人端末は、1又は複数のオブジェクトを表示する表示部と、操作部と、制御部とを少なくとも備え」る点で共通する。
c.
引用発明において、「第1のデータユニット、第2のデータユニット、第3のデータユニット、第4のデータユニットを含む文書を、第1のユーザが第1のオーサリングアプリケーションを使用し、第2のユーザが第2のオーサリングアプリケーションを使用して、共同で編集する」場合の「第1のオーサリングアプリケーション」、「第2のオーサリングアプリケーション」は、それぞれ、「第1のコンピュータデバイス」、「第2のコンピュータデバイス」内にあることは明らかである。
また、「第1のコンピュータデバイス」、「第2のコンピュータデバイス」は、「システムメモリ920に文書150のユーザコピー155、メタデータ154を記憶し、ユーザコピー155を編集することにより、文書150を編集することが可能で」なものである。
また、文書のマスタコピーは、「記憶装置120」が有しているのであるから、文書の共同編集を行う「第1のコンピュータデバイス」、「第2のコンピュータデバイス」に対して、記憶装置120から文書150のマスタコピーが送信され、ユーザコピー155として保存されることは明らかである。
また、「文書にアクセス」するとは、引用文献の【請求項2】の記載によれば、コンピュータデバイスにおいて、記憶装置120の文書150のマスタコピーをダウンロードすることを含み、ダウンロードすることは、記憶装置120からユーザコンピュータデバイスに文書150のマスタコピーが送信されたということもできる。
そうすると、引用発明の記憶装置120が「ロックテーブル500の形式で記憶」している「メタデータ154」のうち、「現在、文書にアクセスしている、または、文書のデータユニットに請求を主張した(例えば、コンテンツロックを生成した)、各ユーザのユーザ識別子を含むプレゼンスメタデータ」は、記憶装置120の文書150のマスタコピーが送信されたユーザのユーザ識別子を記憶したものであるといえ、文書150のコンテンツは、複数のデータユニットから構成されるものであるから、複数のデータユニットから構成される文書150と、文書150のマスタコピーが送信されたユーザのユーザ識別子とを対応させたものであり、リストということもできる。
よって、引用発明の「第1のデータユニット、第2のデータユニット、第3のデータユニット、第4のデータユニットを含む文書を、第1のユーザが第1のオーサリングアプリケーションを使用し、第2のユーザが第2のオーサリングアプリケーションを使用して、共同で編集する」場合、第1のコンピュータデバイスと第2のコンピュータデバイスと、記憶装置120との間で、ロックテーブル500が同期され、「ロックテーブル500の形式で記憶」した「メタデータ154」のうち、「現在、文書にアクセスしている、または、文書のデータユニットに請求を主張した(例えば、コンテンツロックを生成した)、各ユーザのユーザ識別子を含むプレゼンスメタデータ」を記憶することと、本願発明の「前記1又は複数のオブジェクトの少なくとも一部を1以上の他の個人端末に送信する際に、送信した前記オブジェクトと送信先の他の個人端末とを関連付けたリストを前記第1の個人端末の記憶部に記憶」することとは、いずれも、「前記1又は複数のオブジェクトの少なくとも一部を1以上の個人端末に送信し、送信した前記オブジェクトと送信先の個人とを関連付けたリストを記憶手段に記憶」するという点で共通する。
d.
引用発明のコンテンツの「ロック」は、ユーザが、データユニットに対して編集操作を行っていることを示すものであり、引用発明の「第1のオーサリングアプリケーション」、「第2のオーサリングアプリケーション」は、それぞれ、「第1のコンピュータデバイス」、「第2のコンピュータデバイス」が有することは明らかであり、第1のオーサリングアプリケーションにおける、編集、表示、ロックの制御は、コンピュータデバイスの「アプリケーションおよびプログラムを実行するためのプロセシングユニット915」が行うことは明らかである。
引用発明において、「第1のコンピュータデバイス」の「プロセシングユニット915」が、「第2のユーザが、第3のデータユニットについてコンテンツロックを配置すると、第2のロックが、第1のオーサリングアプリケーションのユーザインターフェース上で、ブラケットの表示、ロック所有者を示すネームタグの表示により示され」ることと、本願発明の「第1の個人端末の制御部」は、「第2の個人端末からオブジェクトの編集通知を受信したら、前記第1の個人端末の表示部に表示している編集対象のオブジェクトに対応付けて、当該オブジェクトが編集中であることを明示する編集通知情報を、前記第1の個人端末の表示部に表示」する構成とは、いずれも、「第1の個人端末の制御部は、第2の個人端末でオブジェクトが編集されていることを検知したら、前記第1の個人端末の表示部に表示している編集対象のオブジェクトに対応付けて、当該オブジェクトが編集中であることを明示する情報を、前記第1の個人端末の表示部に表示」する点で共通する。
e.
引用発明において、「第1のデータユニット、第2のデータユニット、第3のデータユニット、第4のデータユニットを含む文書を、第1のユーザが第1のオーサリングアプリケーションを使用し、第2のユーザが第2のオーサリングアプリケーションを使用して、共同で編集する際に、」「第2のユーザが、第3のデータユニットについてコンテンツロックを配置すると、第2のロックが、第1のオーサリングアプリケーションのユーザインターフェース上で、ブラケットの表示、ロック所有者を示すネームタグの表示により示され」、「ロックの配置」は、「ユーザが、データユニットに対して編集を開始すると、データユニットのユニット識別子を編集を行うユーザのユーザ識別子に関連付けたエントリをロックテーブル500に追加することにより行われ」、当該「ロックテーブル500」を含む「メタデータ154」を「ユーザコンピュータデバイス110と記憶装置120との間で、周期的な時間間隔で同期」するものである。
そして、第2のコンピュータデバイスにおいて、「アプリケーションおよびプログラムを実行するためのプロセシングユニット915」が、これらの動作のうち、第2のコンピュータデバイスの動作を行うことは明らかである。
よって、引用発明における「第2のコンピュータデバイス」における「『第2のユーザが』、『データユニットに対して編集を開始すると』、『プロセシングユニット915』が、『データユニットのユニット識別子を、編集を行うユーザのユーザ識別子に関連付けたエントリをロックテーブル500に追加』し、当該『ロックテーブル500』を含む『メタデータ154』を『記憶装置120との間で、周期的な時間間隔で同期』する」構成と、本願発明の「前記第2の個人端末の制御部は、前記第2の個人端末の表示部に表示しているいずれかのオブジェクトに対する編集操作が開始され、当該オブジェクトの編集を検知したら、前記第1の個人端末に当該オブジェクトの編集通知を送信する」構成とは、いずれも、「前記第2の個人端末の制御部は、前記第2の個人端末の表示部に表示しているいずれかのオブジェクトに対する編集操作が開始され、当該オブジェクトの編集を検知する」点で共通する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「個々のユーザが使用する複数の個人端末を有するオブジェクト利用システムにおいて、
1又は複数のオブジェクトの少なくとも一部を1以上の個人端末に送信し、送信した前記オブジェクトと送信先の個人とを関連付けたリストを記憶手段に記憶し、
前記複数の個人端末の内の第1の個人端末は、
1又は複数のオブジェクトを表示する表示部と、操作部と、前記1又は複数のオブジェクトを記憶する記憶部と、制御部とを、少なくとも備え、
前記第1の個人端末の制御部は、
第2の個人端末でオブジェクトが編集されていることを検知したら、前記第1の個人端末の表示部に表示している編集対象のオブジェクトに対応付けて、当該オブジェクトが編集中であることを明示する情報を、前記第1の個人端末の表示部に表示し、
前記第2の個人端末は、
1又は複数のオブジェクトを表示する表示部と、操作部と、制御部とを少なくとも備え
前記第2の個人端末の制御部は、前記第2の個人端末の表示部に表示しているいずれかのオブジェクトに対する編集操作が開始され、当該オブジェクトの編集を検知する、
ことを特徴とするオブジェクト利用システム。」

[相違点1]
本願発明では、「複数の個人端末がネットワークで接続されている」のに対して、引用発明では、「複数の個人端末」が「記憶装置120」と「通信可能に連結され」ている点。
[相違点2]
「1又は複数のオブジェクトの少なくとも一部を1以上の個人端末に送信し、送信した前記オブジェクトと送信先の個人とを関連付けたリスト」を記憶する「記憶手段」が、本願発明では、「第1の個人端末」が備える「記憶部」であるのに対し、引用発明では、「第1のコンピュータデバイス」と通信可能に連結された「記憶装置120」である点。
[相違点3]
「1又は複数のオブジェクトの少なくとも一部」の個人端末への送信が、本願発明では、第1の個人端末以外の「他の個人端末」であるのに対し、引用発明では、「第1のコンピュータデバイス」を含んだコンピュータデバイスであり、第2の個人端末の表示部に表示される「1又は複数のオブジェクト」が、本願発明では、「第1の個人端末から受信した」ものであるのに対し、引用発明では、「記憶装置120」から受信したものである点。
[相違点4]
「送信した前記オブジェクトと送信先の個人とを関連付けたリスト」におけるオブジェクトと関連付けた「個人」が、本願発明では「個人端末」であるのに対し、引用発明では「ユーザ識別子」である点。
[相違点5]
「送信した前記オブジェクトと送信先の個人とを関連付けたリスト」の記憶が、本願発明では「1又は複数のオブジェクトの少なくとも一部を1以上の個人端末に送信した際に」記憶されるのに対し、引用発明では、「1又は複数のオブジェクトの少なくとも一部を1以上の個人端末に送信」することととリストの記憶とのタイミングが特定されていない点。
[相違点6]
「第1の個人端末の制御部」での「第2の個人端末でオブジェクトが編集されていること」の「検知」が、本願発明では、「第2の個人端末からオブジェクトの編集通知」の「受信」によるのに対し、引用発明では、「第2のコンピュータデバイス」と「記憶手段120」と「第1のコンピュータデバイス」との間の「ロックテーブル」の同期によるものである点。
[相違点7]
第1の端末における「オブジェクトが編集中であることを明示する情報」が、本願発明では「編集通知情報」であるのに対し、引用発明では「ブラケットの表示、ロック所有者を示すネームタグの表示」である点。
[相違点8]
「第2の個人端末でオブジェクトが編集されていること」が「検知」されると、本願発明では、「第1の個人端末」に「オブジェクトの編集通知を送信」するのに対して、引用発明では、第2のコンピュータデバイスにおいて、「データユニットのユニット識別子を、編集を行うユーザのユーザ識別子に関連付けたエントリをロックテーブルに追加」し、当該ロックテーブルを、「第2のコンピュータデバイス」と「記憶装置120」と「第1のコンピュータデバイス」との間で周期的な時間間隔で同期する点。

[相違点1]?[相違点8]について検討する。
(1)[相違点1],[相違点2],[相違点3]について
引用文献の段落【0014】には、「ユーザコンピュータデバイス110は、記憶装置120とは異なるものとすることが可能であり、または、記憶装置120上に実装される異なるユーザアカウントを含むことが可能である。一実施形態において、ある文書の記憶装置120としての役割を果たすコンピュータデバイスが、異なる文書のユーザコンピュータデバイス110として役割を果たし得、その逆も同様である。」と記載されていることから、引用発明において、「記憶装置120」としての役割を「第1のコンピュータデバイス」に担わせ、「第1のコンピュータデバイス」が記憶している「文書150」について、「第2のコンピュータデバイス」との間で共同編集を行うよう構成することは当業者が容易に想到し得た事項である。
このことは、引用発明において、「複数の個人端末がネットワークで接続され」る相違点1に係る構成、「1又は複数のオブジェクトの少なくとも一部を1以上の個人端末に送信する際に、送信した前記オブジェクトと送信先の個人とを関連付けたリスト」を第1のコンピュータデバイスの記憶部に記憶する相違点2に係る構成、「1又は複数のオブジェクトの少なくとも一部」の「個人端末への送信」を第1の個人端末以外の「他の個人端末」とし、第2の個人端末の表示部に表示される「1又は複数のオブジェクト」を、「第1の個人端末から受信した」ものとする相違点3に係る構成を、当業者が容易に想到し得たことを意味する。

(2)[相違点4]について
引用発明において、「第1のユーザ」と「第1のオーサリングアプリケーション」とが対応し、「第2のユーザ」と「第2のオーサリングアプリケーション」とが対応している。このことは、「第1のユーザ」と「第1のコンピュータデバイス」、「第2のユーザ」と「第2のコンピュータデバイス」とが1対1に対応していることを意味している。
引用文献の段落【0031】に「ロックテーブル500は、ユーザのリストを含み、その各ユーザは、ユーザに一意的に割り当てられるユーザ識別子(例えば、識別番号)で識別される。」と記載されているように、ユーザ識別子は、ユーザを一意的に特定するためのものであるから、ユーザ識別子と同様にユーザと1対1に対応しているコンピュータデバイス、すなわち、個人端末を、ユーザ識別子の代わりに「送信したオブジェクト」と「関連付け」ることは当業者が容易に想到し得た事項である。

(3)[相違点5]について
引用発明において、「ロックテーブル」の「プレゼンスメタデータ」は、「現在、文書にアクセスしている、または、文書のデータユニットに請求を主張した(例えば、コンテンツロックを生成した)、各ユーザのユーザ識別子」が記憶されるものであり、文書にアクセスしているユーザのユーザ識別子は、ユーザが文書のマスタコピーをダウンロードするときに取得すると考えるのが自然であるから、引用発明において、プレゼンスメタデータを、ユーザが文書にアクセスすると同時に記憶する構成とし、「送信した前記オブジェクトと送信先の個人とを関連付けたリスト」の記憶を「1又は複数のオブジェクトの少なくとも一部を1以上の個人端末に送信した際」とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

(4)[相違点6],[相違点8]について
上記(1)のとおり、引用文献の段落【0014】には、「ユーザコンピュータデバイス110は、記憶装置120とは異なるものとすることが可能であり、または、記憶装置120上に実装される異なるユーザアカウントを含むことが可能である。一実施形態において、ある文書の記憶装置120としての役割を果たすコンピュータデバイスが、異なる文書のユーザコンピュータデバイス110として役割を果たし得、その逆も同様である。」と記載されていることから、引用発明において、「記憶装置120」としての役割を「第1のコンピュータデバイス」に担わせ、「第1のコンピュータデバイス」と「第2のコンピュータデバイス」との間で直接通信を行うことは当業者が容易に想到し得た事項である。
そして、引用発明において、「ロックテーブル」のコンテンツロックは、データユニットに対しての編集の開始を検知し、他のユーザに対してデータユニットが編集によりロックされていることを表示するためのものであるから、「オブジェクト(データユニット)の編集通知」の役割を担うものであり、引用発明において、「ロックテーブル」、すなわち、「メタデータ」の周期的な時間間隔での同期は、更新されたロックテーブルを「記憶装置120」としての役割を担う「第1のコンピュータデバイス」と「第2のコンピュータデバイス」との間で送受信するものであり、周期的な時間間隔は、引用文献の段落【0019】に「メタデータの交換を数秒ごとに提供する。しかし、他の実施形態において、第1の更新操作304は、メタデータの交換をより短いまたはまたは長い時間間隔で起こるように提供することが可能である。」と記載されているように、短くてよいものであり、短いほど、他のユーザに編集状態を速く知らせることができ、重複編集の防止ができることは当然である。
そうすると、引用発明において、第2のコンピュータデバイスで、データユニットに対する編集を検知すると同時に、メタデータを第1のコンピュータデバイスに送信して同期するように構成することは当業者が容易に想到し得た事項である。
このことは、引用発明において、「第2の個人端末」でオブジェクトが編集されていることが検知されると、「第1の個人端末にオブジェクトの編集通知を送信する」ことを、当業者が容易に想到し得たことを意味する。

(5)[相違点7]について
引用発明において、データユニットが編集されていることを示すロックテーブルを同期することは、「オブジェクト(データユニット)の編集通知」の役割を担うものであるから、ロックテーブルの同期により、第1のコンピュータデバイスに表示される編集中のロックされたデータユニットに対して「ブラケットの表示、ロック所有者を示すネームタグの表示」することは、「オブジェクトが編集中であることを明示する編集通知情報」ともいい得るものである。
よって、相違点7は、実質的な相違点ではないか、当業者が容易になし得た事項である。

(6)以上判断したとおり、本願発明における上記相違点1?8に係る構成はいずれも当業者が容易に想到し得たものであり、また、各相違点を総合しても本願発明は当業者が想到することが困難なものとはいえない。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-22 
結審通知日 2017-03-24 
審決日 2017-04-04 
出願番号 特願2012-61354(P2012-61354)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 洋  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 高瀬 勤
土谷 慎吾
発明の名称 オブジェクト共有システム及びオブジェクト管理プログラム  
代理人 宮本 恵司  

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