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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65G
管理番号 1328513
審判番号 不服2016-10526  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-12 
確定日 2017-06-06 
事件の表示 特願2012-103780「立体自動倉庫の既設のラックに用いるパレット落下防止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月14日出願公開、特開2013-230911、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年4月27日の出願であって、平成27年9月7日付けで拒絶理由が通知され、平成27年11月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年4月8日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年7月12日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、平成27年11月16日付けの手続補正により補正された明細書及び特許請求の範囲並びに出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。


「 【請求項1】
前後左右に立設される支柱と、
前後の前記支柱のそれぞれからラック内方に向けて突出する前後一対の水平材、および該一対の水平材の突出端同士を連結して前後方向に延在する受け材からなる腕木部と、
を備えた立体自動倉庫の既設のラックに用いられ、前記腕木部に対して後付けされるパレット落下防止装置であって、
前記一対の前側水平材および後側水平材に載置され、前後方向に延びるサイドストッパー面を有するストッパー本体と、
当接あるいは接触により前記ストッパー本体の後側を前記後側水平材に係止させるための係止支持部と、
前記ストッパー本体の前側を前記前側水平材に固定させるための固定支持部と、
を備えていることを特徴とする立体自動倉庫の既設のラックに用いるパレット落下防止装置。
【請求項2】
前記係止支持部は、前記ストッパー本体の前後方向、左右方向、および上下方向の3軸方向の移動を規制することを特徴とする請求項1に記載の立体自動倉庫の既設のラックに用いるパレット落下防止装置。
【請求項3】
前記固定支持部は、前記前側水平材と前記ストッパー本体とをボルト締結により固定する構成とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体自動倉庫の既設のラックに用いるパレット落下防止装置。
【請求項4】
前記固定支持部には、前記前側水平材に対して上下方向、前後方向の少なくとも一方向を挟持する押さえ板を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の立体自動倉庫の既設のラックに用いるパレット落下防止装置。
【請求項5】
前記ストッパー本体の前端部には、前記受け材の前側部分で上側に突出する前方ストッパーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の立体自動倉庫の既設のラックに用いるパレット落下防止装置。」


第3 原査定の理由の概要

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項 1-4
・引用文献等 1-4

(請求項1)
引用文献1には、前後左右に立設される支柱(トラス1)と、前後の前記支柱のそれぞれからラック内方に向けて突出する前後一対の水平材(突出部材2A、2B)、および該一対の水平材の突出端同士を連結して前後方向に延在する受け材(奥行部材C、連接部材2D)からなる腕木部(腕木2)と、前記一対の前側水平材(突出部材2A)および後側水平材(突出部材2B)に載置され、前後方向に延びるサイドストッパー面(傾斜面4a)を有するストッパー本体(受け材4)と、を備える立体自動倉庫のラック(自動倉庫用棚)が記載されている。
引用文献2には、前後左右に立設されるラック支柱3a、3bに、荷受台2a、2bを後付けするラック構造において、荷受台2a、2bの後端を後側支柱3bに係止させるための抜き曲げ舌片9と、荷受台2a、2bの前側を前側支柱3aに固定するためのリベット13或いはビスナット等の着脱自在な固定部とを備える構成が記載されている。
ここで、立体自動倉庫のラックに、物品の落下を防止するためのストッパーを「後付け」することは、例えば、引用文献3-4に記載されているように本願出願前に周知の技術であるから、引用文献1に記載された発明において、前側水平材及び後側水平材に対してストッパー本体を取り付けるための構成として、引用文献2に記載されたものを適用して、ストッパー本体を既設のラックに後付け可能なものとすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。
ストッパーを簡単に且つ効率よく取り付けることができるとの効果についても、引用文献2に記載された固定構造や、引用文献3の「積載棚への取付も迅速に行える」(段落0003)との記載より、予測し得る程度のものである。

(請求項2)
引用文献2に記載された発明は、抜き曲げ舌片9により、荷受台2a、2bの前後方向、左右方向、および上下方向の3軸方向の移動が規制されるものと認められる。

(請求項3)
引用文献2には、ビスナット等の着脱自在な固定部により荷受台2a、2bを固定することも記載されている。そして、着脱自在な固定部として、周知のボルト締結を採用することに、格別の困難性はない。

(請求項4)
一方の部材に設けた押さえ板により、他方の部材を挟持することにより、両部材を相互に位置決め固定する構造は、例示するまでもなく本願出願前に周知の技術である。

・請求項 5
・引用文献等 1-5
引用文献5(特に、段落0028-0030、図3を参照)には、ストッパー本体(側面4B)と前方ストッパー(係止部材)とを同じ部材に設けることが記載されている。
引用文献1に記載された発明に、引用文献5に記載された発明を適用して、ストッパー本体の前端部に前方ストッパーを設ける構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。


<引用文献等一覧>
1.実願昭61-099241号(実開昭63-004909号)のマイクロフィルム
2.実願昭61-077739号(実開昭62-188237号)のマイクロフィルム
3.特開2006-182470号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2004-359463号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2010-143719号公報


第4 当審の判断

1.刊行物1

(1)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭61-099241号(実開昭63-004909号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

1a)「考案が解決しようとする問題点
上記のような従来形式によると、通常のパレット(18)とは小さい巾小パレット(18A)を使用しようとしたとき、この巾小パレット(18A)の腕木(21)に対する載せ代が小さいことから、走行機体(22)の停止位置がずれたり、出し入れ具(25)によるパレット(18A)の支持位置がずれていたとき、区画収納空間(3)と出し入れ具(5)との間にセンターずれが生じ、したがって搬入(入庫)時に巾小パレット(18A)の片側が支持されなくて落下を招く恐れがある。
本考案の目的とするところは、巾大パレット、巾小パレットともに、落下させることなく常に確実に支持し得る自動倉庫用棚を提供する点にある。」(明細書第2ページ第18行ないし第3ページ第10行)

1b)「以下に本考案の一実施例を第1図、第2図に基づいて説明する。
(1)はトラスで、前後方向ならびに左右方向で所定間隔置きに立設される。これらのトラス(1)の左右の側面(1a)からは、左右方向で隣接するトラス(1)側に向いて突出する腕木(2)が連設され、以ってトラス(1)によって左右方向に区画され、かつ腕木(2)によって上下方向に区画されてそれぞれ複数の区画収納空間(3)を形成する。前記腕木(2)は、前後のトラス(1)の側面(1a)から連設した突出部材(2A)(2B)と、これら突出部材(2A)(2B)の遊端間を連結した奥行部材(2c)と、この奥行部材(2C)の内側面に当てがって一体化した連設部材(2D)とから構成される。各腕木(2)上には、腕木突出端(2E)よりも所定距離(l)だけ基端側の位置で、かつ奥行き部材(2C)と連設部材(2C)に亘って受け材(4)が配設される。この受け材(4)の突出端(2E)側の側面は、下位ほど突出端(2E)側となる傾斜面(4a)に形成され、また上面は偏平な上位支持面(4b)に形成される。そして腕木(2)の前述した所定距離(l)に相当する部分の上面は下位支持面(2a)に形成される。(5)は出し入れ装置の出し入れ具(フォーク)で、その上面には左右一対の支持部(6)が上方に突出させて形成してある。(7)は巾大パレット、(8)は巾小パレット、(9)は荷を示す。」(明細書第4ページ第7行ないし第5ページ第11行)

1c)「腕木(2)としては、第3図、第4図に示すように連設部材(2D)を使用しない形式も可能である。そして受け部材(4)は、第3図に示すように突出部(2A)(2B)間に配設したり、また第4図に示すように突出部(2A)(2B)の端から奥行き部材(2C)の一部に亘って配設される。」(明細書第6ページ第19行ないし第7ページ第4行)


(2)上記(1)及び図面の記載から分かること

上記(1)1a)ないし1c)並びに第1図及び第3図の記載から、以下のことが分かる。

1d)上記1b)並びに第1図及び第3図の記載から、刊行物1には、前後のトラス1の側面から左右方向で隣接するトラス1側に向いて突出する前後一対の突出部材2A、2Bが記載されていることが分かる。

1e)第1図及び第3図において、奥行部材2Cは前後方向に延在するものであることが分かる。

1f)上記1a)の記載から、刊行物1には、パレット落下防止装置の技術が記載されていることが分かる。

1g)上記1b)及び1c)並びに第3図の記載から、受け材4は、一対の突出部材2A、2B間に配設され、前後方向に延びる傾斜面4aを有するものであることが分かる。


(3)引用発明

上記(1)及び(2)並びに第1図ないし第6図の記載からみて、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「前後方向ならびに左右方向で立設されるトラス1と、
前後のトラス1の側面から左右方向で隣接するトラス1側に向いて突出する前後一対の突出部材2A、2B、および一対の突出部材2A、2Bの遊端間を連結して前後方向に延在する奥行部材2Cとからなる腕木2と、
を備えた自動倉庫用棚に用いられるパレット落下防止装置であって、
一対の突出部材2A、2B間に配設され、前後方向に延びる傾斜面4aを有する受け材4と、
を備えている自動倉庫用棚に用いるパレット落下防止装置。」


2.刊行物2

(1)刊行物2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭61-077739号(実開昭62-188237号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

2a)「2.実用新案登録請求の範囲
荷収納区画の底部に配置される左右一対の荷受台各々に垂直板部を設け、荷収納区画の左右両側に立設された前後一対のラック支柱の内、前後何れか一方の支柱の側壁には切り欠き孔を設け、この切り欠き孔に対して前後移動により嵌合する舌片を前記荷受台垂直板部の一端に設け、前記切り欠き孔を持たない方のラック支柱と前記荷受台垂直板部の他端とは、前記舌片を前記切り欠き孔に嵌合させた状態でリベット等の固定具により互いに固定して成るラック構造。」(実用新案登録請求の範囲)

2b)「(産業上の利用分野)
本考案は、倉庫等に於いて使用されるラック、特に軽量小型の物品を収納するラックの構造に関するものである。」(明細書第1ページ第16行ないし第19行)

2c)「以下に本考案の一実施例を添付の例示図に基づいて説明すると、第1図乃至第3図に於いて、1はラックに於ける一つの荷収納区画であって、その底部には左右一対の荷受台2a,2bが配置され、左右両側には前後一対のラック支柱3a,3bが立設されている。前記荷受台2a,2bは、水平の荷受板部4と当該荷受板部4の外側縁から上方に折曲連設された垂直板部5、及びこの垂直板部5の内側に付設された帯状案内板6から構成されている。前記荷受板部4には、その前端に斜め下方に傾斜するガイド部4aが連設され、後端には垂直に立ち上がるストッパー部4bが連設されている。又、垂直板部5の後端には、前記ストッパー部4bよりも後方に延出する取付部5aが連設され、帯状案内板6の前端には、前記垂直板部5よりも前方に延出し且つ斜め横外方に広がるガイド部6aが形成されている。前記ラック支柱3a,3bには、横断面形状がコの字形の軽量型鋼が使用されている。
次に前記荷受台2a,2bとラック支柱3a,3bとの結合構造を第4図及び第5図に基づいて説明すると、前記ラック支柱3a,3bの内、前側支柱3aには、その側板部7の後縁から矩形の切り欠き孔8が設けられ、前記荷受台2a,2bに於ける垂直板部5の前端近傍には、当該垂直板部5と前記支柱側板部7とが当接する状態で荷受台2a,2bを前方にスライドさせることにより前記切り欠き孔8に嵌合する抜き曲げ舌片9が形成されている。そしてこの抜き曲げ舌片9が前記切り欠き孔8に嵌合したときに互いに合致する位置に、後側支柱3bの側板部10とこれに当接する荷受台2a、2bの後端取付部5aとにリベット孔11,12が形成され、前記抜き曲げ舌片9を切り欠き孔8に嵌合させた状態で後側支柱3bと荷受台2a,2bの後端部とを、前記リベット孔11,12に貫通させたリベット13により結合している。」(明細書第3ページ第5行ないし第5ページ第1行)

2d)「しかも、前後一対の支柱の内の何れか一方の支柱と荷受台の前後両端の内の対応する端部とは、切り欠き孔と舌片とを嵌合させるだけで良く、前後両方の支柱と荷受台とをリベット等の固定具で結合させる場合と比較して組み立て作業が簡単である。」(明細書第6ページ第15ないし20行))


(2)刊行物2の技術

上記(1)及び第1図ないし第5図の記載からみて、刊行物2には以下の技術(以下、「刊行物2の技術」という。)が記載されていると認める。


「倉庫において使用される、左右両側に立設される前後一対のラック支柱3a、3bとラックの底部に配置される左右一対の荷受台2a、2bとを備えたラックに用いられるラック構造であって、ラック支柱3a,3bと荷受台2a,2bとの結合構造が、
前後のラック支柱3a、3bの内前後何れか一方の支柱3a、3bの側壁に設けられた切り欠き孔8と、荷受台2a、2bに設けられた前後方向に延びる垂直板部5の一端に設けられ、切り欠き孔8に対して前後移動により嵌合する舌片9とにより結合されるとともに、
前後のラック支柱3a、3bの内他方の支柱3a、3bと垂直板部5の他端とは舌片9を切り欠き孔8に嵌合させた状態でリベット等の固定具により互いに固定することで結合されるものであることにより、
組み立て作業が簡単である技術。」


3.刊行物3

(1)刊行物3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-182470号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

3a)「【0011】
積載棚本体1は、図1の右側の前後に位置する2本の縦部材6、6および左側の前後に位置する2本の縦部材7、7の4本の縦枠で縦方向の支柱を形成している。また右側の縦部材6、6と左側の縦部材7、7とは、その左右の幅方向に沿って水平に渡された前後4本の水平部材8、8、8、8とで連結している。
さらに、右側の縦部材6と縦部材6とは、奥行方向に沿って2本の水平部材9、9で、また左側の縦部材7と縦部材7とは奥行方向に沿って2本の水平部材9、9でお互いに連結している。
また、第1、第2、第3の各載置棚空間2、4、5に各々区画している前側の水平部材8、8と後側の水平部材8、8とは、物品を受けて載置するための載置枠10を奥行方向に沿って各4本ずつ連結している。この載置枠10は積載する物品の大きさ、重量に応じて適宜本数に設定する。そして、これらの各部材は溶接等の手段で互いに固定されている」(段落【0011】)

3b)「【0016】
このように構成するパレットのずれ防止装置14は、積載棚本体1の幅方向に沿って渡された前側の水平部材8に装着固定する。そして、装着状態を積載棚本体1の第2段目の載置棚空間4の部分をとりあげ説明する。つまり、パレット11は2個積載しているので、パレット11、11の端部が臨む縦部材6、7側の近傍の水平部材8に各パレット11、11と対向位置させて、ずれ防止装置14、14を、また、複数のパレット11と11の間に跨ってパレット11、11と対向する位置するように、1個のずれ防止放置14を設ける。図2によりさらに説明する。つまり、取付されたずれ防止装置14、14間の寸法Sが、パレット11の幅寸法Lより小さくなるように、ストッパ部材24、24の幅を設定してある。
【0017】
また、図8、9はパレット11のずれの状態を示すもので、パレット11は通常、実線で示す定位置に載置されている。そして、例えば、この載置されたパレット11の隣りのパレット11を載置棚本体1から移送のため下ろす場合、定位置に置かれたパレット11は、フォークリフトによる衝撃、振動の影響を受け、矢印の向きに移動する。
しかし、パレット11は、ずれ防止装置14のストッパ部材24によりずれを抑制されるため、鎖線で示す位置に保持される。このため積載棚本体1からのパレット11の落下防止を図れる。またパレット11が水平部材8から前方に突出することがないため、パレット11を整理整頓された状態で載置保管できる。」(段落【0016】ないし【0017】)


(2)刊行物3の技術

上記(1)及び図1ないし16の記載からみて、刊行物3には以下の技術(以下、「刊行物3の技術」という。)が記載されていると認める。


「前後左右に立設される縦部材6、7と、右側の縦部材6と左側の縦部材7とを左右の幅方向に沿って水平に渡された前後4本の水平部材8で連結し、右側の縦部材6と縦部材6とは奥行方向に沿って2本の水平部材9で、また、左側の縦部材7と縦部材7とは奥行方向に沿って2本の水平部材9で互いに連結され、さらに、前側の水平部材8と後側の水平部材8とは、物品を受けて載置するための載置枠10を奥行方向に沿って各4本ずつ連結してなる積載棚本体1に用いられるパレットのずれ防止装置14が、積載棚本体1の幅方向に沿って渡された前側の水平部材8に装着固定されており、積載棚本体1からパレット11が前方に落下するのを防止するものである技術。」


4.刊行物4

(1)刊行物4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-359463号公報(以下、「刊行物4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

4a)「【0012】
本発明の一実施例の立体倉庫を図面を参照して説明する。
図1乃至図7において、Rは立体倉庫で、立体倉庫Rは、垂直方向に並設した複数の垂直部材1、1’、2、2’、3、3’・・・と、この垂直部材1、1’、2、2’、3、3’・・・に直交し、並設した複数の水平部材(図示せず)と、垂直部材1、1’、2、2’、3、3’・・・又は前記水平部材(図示せず)に接続され、荷台(例えば、パレット)4、4、4・・・を支持する荷台支持部材5、6、7・・・を複数備え、荷台支持部材5、6、7・・・上に物品30、30、30・・・を搭載した荷台4、4、4・・・を支持させて収納するようになっている。」(段落【0012】)

4b)「【0016】
ストッパ-(第1のストッパ-)S_(1) は荷台支持部材5の上面より上に位置し、隣接する第2の垂直部材2に向かって水平方向に張り出し、荷台4の前面(物品30を搭載した荷台4を受け入れる側R_(1 ))への移動を荷台4に当接して阻止するように第1の垂直部材1に取り付けられている。
次に、ストッパ-S_(1 )の第1の垂直部材1への取り付けについて、説明する。
S_(1 )はストッパ-(第1のストッパ-)で、ストッパ-(第1のストッパ-)S_(1 )は、例えば、図2に示すように、ストッパ-部材T_(1 )とストッパ-取り付け部材P_(1) とを有している。ストッパ-部材T_(1) は、第1の垂直部材1の外周に当接するU字状の当接部、このU字状の当接部の端部よりそれぞれ張り出す張り出し部を備えている。
ストッパ-取り付け部材P_(1) は、平らな板材で、第1の垂直部材1を介してストッパ-部材T_(1) に対向している。このストッパ-部材T_(1) とストッパ-取り付け部材P_(1) で第1の垂直部材1を挟持する。そして、この挟持状態は、ストッパ-部材T_(1)とストッパ-取り付け部材P_(1)とを結合する結合部材100 により保持される。
接合部材100 は、例えば、ストッパ-取り付け部材P_(1 )に設けられた穴101 に雄螺子102 を通すと共に、雄螺子102 をストッパ-部材T_(1) に設けた雌螺子103 に螺合させて、ストッパ-部材T_(1) とストッパ-取り付け部材P_(1) とを結合するようにしている。」(段落【0016】)


(2)刊行物4の技術

上記(1)及び図1ないし18の記載からみて、刊行物4には以下の技術(以下、「刊行物4の技術」という。)が記載されていると認める。


「垂直方向に並設した複数の垂直部材1、1’、2、2’、3、3’・・・と、この垂直部材1、1’、2、2’、3、3’・・・に直交し、並設した複数の水平部材と、垂直部材1、1’、2、2’、3、3’・・・又は前記水平部材に接続され、荷台4、4、4・・・を支持する荷台支持部材5、6、7・・・を複数備え、荷台支持部材5、6、7・・・上に物品30を搭載した荷台4、4、4・・・を支持させて収納するようになっている立体倉庫Rに用いられるストッパーS1、S2、S3・・・が、荷台支持部材5の上面より上に位置し、隣接する第2の垂直部材2に向かって水平方向に張り出し、荷台4の前面への移動を荷台4に当接して阻止するように第1の垂直部材1に取り付けられている技術。」


5.刊行物5

(1)刊行物5の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-143719号公報(以下、「刊行物5」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

5a)「【0022】
図1は、本発明にかかる物品保管装置の実施の形態を示す正面図である。物品保管装置1には、物品保管装置1が設置されている床上2に複数の柱部材3が直立して設けられている。柱部材3には、上下方向に亘って所定間隔ごとに水平方向へ指向したアングル状の保管棚の荷受け部材4が設けられていて、棚通路7を挟んで左右両側に棚小間5a,5bが形成されている。柱部材3と荷受け部材4とは、物品保管装置の保管棚を構成する部材である。
なお、物品保管装置の保管棚を構成する荷受け部材としては、アングル状のもの以外に、例えば、棚板などを用いるようにしてもよい。」(段落【0022】)

5b)「【0028】
次に、荷受け部材4の構成について説明する。
図3は、本発明にかかる係止部材の実施の形態を示す説明図である。荷受け部材4は、容器9が載置される荷載置面4Aと、これと連続して略直角に折り曲げられた側面4Bとを備える。荷受け部材4の例としては、たとえば、弾性を有した熱間圧延鋼板などの金属製のアングル部材が用いられている。
【0029】
荷受け部材4は、2つのアングル材が容器9の幅方向、つまり、容器9の搬出入方向と直交する方向両側にそれぞれ対をなして配置されており、容器9の搬入方向における後方側の端面同士で荷載置面開口を構成している。
荷載置面開口前面(以下、「開口前面」という。)には、容器9の落下を防止するための係止部材が設けられている。
【0030】
荷載置面4Aと連続して一体に構成されている係止部材は、荷載置面4Aの開口前面側に形成された突出部4A1と、荷移載装置6により押圧される接触部4A2とを備えている。符号4B1は、側面における開口前面側の端部を左右方向外側に向けて折り曲げて傾けた搬入ガイド部である。」(段落【0028】ないし【0030】)


(2)刊行物5の技術

上記(1)及び図1ないし9の記載からみて、刊行物5には以下の技術(以下、「刊行物5の技術」という。)が記載されていると認める。


「直立して設けられた複数の柱部材3と、柱部材3に設けられ、上下方向に亘って所定間隔ごとに水平方向へ指向したアングル状の保管棚の荷受け部材4とからなる物品保管装置の保管棚において、荷受け部材4は、容器9が載置される荷載置面4Aと、荷載置面4Aに連続して略直角に折り曲げられた側面4Bとを備えるとともに、荷載置面4Aと連続して一体に構成される係止部材を備えている技術。」


6.対比・判断

(1)本願発明1について

本願発明1と引用発明とを対比する。

引用発明における「前後方向ならびに左右方向で」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「前後左右に」に相当し、以下同様に、「トラス1」は「支柱」に、「トラス1の側面から左右方向で」は「支柱のそれぞれから」に、「隣接するトラス1側に向いて」は「ラック内方に向けて」に、「突出部材2A、2B」は「水平材」に、「遊端間」は「突出端同士」に、「奥行部材2C」は「受け材」に、「腕木2」は「腕基部」に、「一対の突出部材2A,2B間に配設され」は「一対の前側水平材および後側水平材に載置され」に、「傾斜面4a」は「サイドストッパー面」に、「受け材4」は「ストッパー本体」にそれぞれ相当する。
また、引用発明における「自動倉庫用棚」は、本願発明1における「立体自動倉庫の既設のラック」に、「立体自動倉庫のラック」という限りにおいて一致する。

よって、両者の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]

「前後左右に立設される支柱と、
前後の前記支柱のそれぞれからラック内方に向けて突出する前後一対の水平材、および該一対の水平材の突出端同士を連結して前後方向に延在する受け材からなる腕木部と、
を備えた立体自動倉庫のラックに用いられ、前記腕木部に対して後付けされるパレット落下防止装置であって、
前記一対の前側水平材および後側水平材に載置され、前後方向に延びるサイドストッパー面を有するストッパー本体と、
を備えている立体自動倉庫のラックに用いるパレット落下防止装置。」


[相違点]

本願発明1のパレット防止装置は「立体自動倉庫の既設のラックに用いられ、前記腕木部に対して後付けされる」ものであり、「当接あるいは接触により前記ストッパー本体の後側を前記後側水平材に係止させるための係止支持部と、前記ストッパー本体の前側を前記前側水平材に固定させるための固定支持部と」を備えているのに対して、引用発明のパレット防止装置は、既設の棚に用いられ、腕木2に対して後付けされるものであるかどうか不明であり、受け材4が突出部材2A、2Bに対してどのような手段により支持されているか不明であるところ、少なくとも当接あるいは接触により受け材4の後側を後側の突出部材2Bに係止させるための係止支持部と、受け材4の前側を前側の突出部材2Aに固定させるための固定支持部とを備えたものではない点(以下、「相違点」という。)。


上記相違点について検討する。

本願明細書には、「本発明では、既設の腕木部に対して前後方向に沿って連続的に延在するストッパー本体が、ラックに収納されるパレット(物品)の左右両側に設けられるので、パレットの地震等による左右方向の移動を前後方向に延びるサイドストッパー面の全面で規制することができる。」(段落【0009】)、「また、本発明では、係止支持部による当接又は接触によって、ストッパー本体の後側と後側水平材とを係止させるとともに、固定支持部を前側水平材に対して固定させる方法とすることで、既設の立体自動倉庫の腕木部に対して後付けによりパレット落下防止装置を取り付けることができる。つまり、このときの取付け作業は、係止支持部での固定作業は無く、ラックの手前で作業員の手が届く範囲のみでの簡単な固定作業となるので、立体自動倉庫の通路側(ラックの収納口側)で作業を行うことができ、高所のラックに対してはスタッカークレーン通路側からだけで取付作業が可能となる。」(段落【0010】)との記載があり、本願発明1の発明特定事項による効果は、ストッパー本体が前後方向に沿って延在することによりパレットの左右方向の移動を規制できること、及び、ラックの後側の係止支持部は作業員による固定作業が不要であるため、既設のラックにパレット落下防止装置を後付けする作業は、立体自動倉庫の通路側におけるラックの前側の固定支持部の作業のみとすることができるというものであることが分かる。

一方、刊行物3の技術は、パレットのずれ防止装置14が、積載棚本体1の幅方向に沿って渡された前側の水平部材8に装着固定されており、積載棚本体1からパレット11が前方に落下するのを防止するものであり、刊行物4の技術は、ストッパーS_(1)、S_(2)、S_(3)・・・が、荷台4の前面への移動を阻止するように第1の垂直部材1に取り付けられているものであり、ストッパー本体1が前後方向に延びるサイドストッパー面を有する本願発明1と相違し、パレットの左右方向の移動を規制することができるという本願発明1の効果を奏するものではない。

また、刊行物2の技術は、ラック支柱3a,3bと荷受台2a,2bとが、前後何れか一方の支柱3a、3bの側壁に設けられた切り欠き孔8と、対応する垂直板部5の一端に設けられる舌片9との嵌合により結合されるとともに、他方の支柱3a、3bと垂直板部5の他端においてはリベット等の固定具により結合されるものであり、刊行物2の技術が、前後両方の支柱と荷受台とをリベット等の固定具で結合させる場合と比較して組み立て作業が簡単になるという効果を奏するものであるとしても、ラック支柱3a、3bと荷受台2a、2bの結合構造に関する技術である点で、既設のラックに用いられるパレット落下防止装置を腕木部に対して後付けする本願発明1とは相違しており、立体自動倉庫内に既設のラックの腕木部のパレット落下防止装置を後付けするにあたり、立体自動倉庫の通路側におけるラックの前側の固定支持部の作業のみとすることができるという本願発明1の効果を奏するものではない。

してみれば、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項は、刊行物2ないし4のいずれにも記載がなく、また、刊行物2の技術、並びに、刊行物3の技術及び刊行物4の技術において示唆されるものでもない。

したがって、引用発明に刊行物2の技術並びに刊行物3及び刊行物4の技術を適用することにより、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものとすることはできないのであるから、本願発明1は、引用発明、刊行物2の技術並びに刊行物3及び刊行物4の技術に基いて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。


(2)本願発明2ないし5について

本願の特許請求の範囲における請求項2ないし5は、請求項1の記載を直接又は間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本願発明2ないし5は、本件発明の発明特定事項を全て含むものである。

したがって、本願発明2ないし5は、本願発明1と同様の理由で、引用発明、刊行物2の技術並びに刊行物3及び刊行物4の技術に基いて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。


第5 むすび


以上のとおり、本願の請求項1ないし5に係る発明は、いずれも引用発明、刊行物2の技術並びに刊行物3及び刊行物4の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。


また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。


よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-23 
出願番号 特願2012-103780(P2012-103780)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大谷 光司  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 佐々木 芳枝
槙原 進
発明の名称 立体自動倉庫の既設のラックに用いるパレット落下防止装置  
代理人 川渕 健一  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 佐伯 義文  

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