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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1328598
審判番号 不服2016-6460  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-28 
確定日 2017-06-13 
事件の表示 特願2014-164561「情報提供装置、広告配信システム、情報提供方法及び情報提供プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月 6日出願公開、特開2014-209391、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年6月26日を出願日とする特願2012-142869号の一部を平成26年8月12日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年 8月12日 :上申書の提出
平成27年 7月13日付け:拒絶理由の通知
平成27年 9月15日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 2月 3日付け:拒絶査定
平成28年 4月28日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成28年 6月 7日 :前置報告
平成28年 7月19日 :上申書の提出
平成29年 2月 7日付け:当審による拒絶理由の通知
平成29年 4月14日 :意見書、手続補正書の提出


第2 原査定の概要

原査定(平成28年2月3日付け拒絶査定)の概要は次の通りである。

「本願請求項1?7に係る発明は、以下の引用文献1?6に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-145549号公報
2.特開2007-067544号公報
3.特開2011-209862号公報
4.特開2006-323629号公報
5.特開2009-181334号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2009-086154号公報(周知技術を示す文献) 」


第3 当審拒絶理由の概要

当審による拒絶理由の概要は次の通りである。

「 理 由

この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



請求項5には、「前記通知手段は、前記コンテンツ提供装置がユーザ情報を提供する情報提供装置毎に、当該情報提供装置から広告配信装置に・・・・」と記載されているが、情報提供装置毎に提供可否情報を送信するようユーザ端末に通知する、との事項は明細書の詳細な説明に記載されていない。

よって、請求項5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 」


第4 本願発明

本願請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、平成29年4月14日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される以下の通りのものである。

「【請求項1】
ユーザ端末にアクセスされた複数のコンテンツ提供装置を介して提供された前記ユーザ端末に関するユーザ情報を記憶する記憶手段と、
前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかにアクセスしたユーザ端末、又は、当該ユーザ端末にアクセスされたコンテンツ提供装置から、前記ユーザ情報に基づいて広告コンテンツを配信する広告配信装置に対して提供元のコンテンツ提供装置が異なる当該ユーザ端末に関するユーザ情報の提供を許可するか否かを示す提供可否情報であって、前記コンテンツ提供装置毎に当該コンテンツ提供装置から提供されたユーザ情報を前記広告配信装置に提供することを許可するか否かを示す提供可否情報を受け付ける受付手段と、
前記広告配信装置から前記ユーザ端末に関するユーザ情報の取得要求を受信した場合に、当該ユーザ端末に対応する提供可否情報に基づいて、前記記憶手段に記憶されているユーザ情報が前記広告配信装置に提供することが許可されているユーザ情報であるかを判定する提供判定手段と、
前記提供判定手段により提供許可を示すと判定されたユーザ情報を前記広告配信装置に応答する要求応答手段と、を備え、
前記受付手段は、
前記ユーザ端末が前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかにアクセスする契機で前記ユーザ端末のユーザに設定させる前記提供可否情報を前記ユーザ端末から受け付けるか、
又は、前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかが前記ユーザ端末にアクセスされる契機で前記ユーザに設定させる前記提供可否情報を前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかから受け付ける、
ことを特徴とする情報提供装置。

【請求項2】
前記受付手段は、
広告配信装置毎に、当該広告配信装置にユーザ情報の提供を許可するか否かを示す提供可否情報を受け付け、
前記提供判定手段は、
前記広告配信装置から前記取得要求を受信した場合に、当該広告配信装置に対応する提供可否情報が提供許可を示すか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。

【請求項3】
コンテンツ提供装置と情報提供装置と広告配信装置とを含む広告配信システムであって、
前記コンテンツ提供装置は、
ユーザ端末からアクセスされた場合に、当該ユーザ端末に関するユーザ情報を前記情報提供装置に提供する提供手段と、
前記ユーザ端末からアクセスされた場合に、前記広告配信装置にユーザ情報の提供を許可するか否かを示す提供可否情報を送信するよう前記ユーザ端末に通知する通知手段と
を備え、
前記情報提供装置は、
複数の前記コンテンツ提供装置を介して提供されたユーザ情報を記憶する記憶手段と、
前記通知手段によって通知されたユーザ端末のユーザに設定させる前記提供可否情報であって、前記コンテンツ提供装置毎に当該コンテンツ提供装置から提供されたユーザ情報を前記広告配信装置に提供することを許可するか否かを示す前記提供可否情報を前記ユーザ端末から受け付けるか、又は、前記ユーザ端末にアクセスされる契機で前記ユーザ端末のユーザに設定させる前記提供可否情報を複数の前記コンテンツ提供装置のいずれかから受け付ける受付手段と、
前記広告配信装置から前記ユーザ端末に関するユーザ情報の取得要求を受信した場合に、当該ユーザ端末に対応する提供可否情報に基づいて、前記記憶手段に記憶されているユーザ情報が前記広告配信装置に提供することが許可されているユーザ情報であるかを判定する提供判定手段と、
前記提供判定手段により提供許可を示すと判定されたユーザ情報を前記広告配信装置に応答する要求応答手段と
を備えたことを特徴とする広告配信システム。

【請求項4】
前記コンテンツ提供装置は、
前記ユーザ端末からアクセスされた場合に、前記情報提供装置に問い合わせることにより、当該ユーザ端末に対応する提供可否情報を当該情報提供装置が受信済みであるか否かを判定する受信判定手段をさらに備え、
前記通知手段は、
前記受信判定手段により受信済みでないと判定された場合に、前記ユーザ端末に対して前記提供可否情報を送信するよう通知する
ことを特徴とする請求項3に記載の広告配信システム。

【請求項5】
情報提供装置が実行する情報提供方法であって、
ユーザ端末にアクセスされた複数のコンテンツ提供装置を介して提供された前記ユーザ端末に関するユーザ情報を記憶手段に格納する格納工程と、
前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかにアクセスしたユーザ端末、又は、当該ユーザ端末にアクセスされたコンテンツ提供装置から、前記ユーザ情報に基づいて広告コンテンツを配信する広告配信装置に対して提供元のコンテンツ提供装置が異なる当該ユーザ端末に関するユーザ情報の提供を許可するか否かを示す提供可否情報であって、前記コンテンツ提供装置毎に当該コンテンツ提供装置から提供されたユーザ情報を前記広告配信装置に提供することを許可するか否かを示す提供可否情報を受け付ける受付工程と、
前記広告配信装置から前記ユーザ端末に関するユーザ情報の取得要求を受信した場合に、当該ユーザ端末に対応する提供可否情報に基づいて、前記記憶手段に記憶されているユーザ情報が前記広告配信装置に提供することが許可されているユーザ情報であるかを判定する提供判定工程と、
前記提供判定工程において提供許可を示すと判定されたユーザ情報を前記広告配信装置に応答する要求応答工程と、を含み、
前記受付工程は、
前記ユーザ端末が前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかにアクセスする契機で前記ユーザ端末のユーザに設定させる前記提供可否情報を前記ユーザ端末から受け付けるか、
又は、前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかが前記ユーザ端末にアクセスされる契機で前記ユーザに設定させる前記提供可否情報を前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかから受け付ける、
ことを特徴とする情報提供方法。

【請求項6】
ユーザ端末にアクセスされた複数のコンテンツ提供装置を介して提供された前記ユーザ端末に関するユーザ情報を記憶手段に格納する格納手順と、
前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかにアクセスしたユーザ端末、又は、当該ユーザ端末にアクセスされたコンテンツ提供装置から、前記ユーザ情報に基づいて広告コンテンツを配信する広告配信装置に対して提供元のコンテンツ提供装置が異なる当該ユーザ端末に関するユーザ情報の提供を許可するか否かを示す提供可否情報であって、前記コンテンツ提供装置毎に当該コンテンツ提供装置から提供されたユーザ情報を前記広告配信装置に提供することを許可するか否かを示す提供可否情報を受け付ける受付手順と、
前記広告配信装置から前記ユーザ端末に関するユーザ情報の取得要求を受信した場合に、当該ユーザ端末に対応する提供可否情報に基づいて、前記記憶手段に記憶されているユーザ情報が前記広告配信装置に提供することが許可されているユーザ情報であるかを判定する提供判定手順と、
前記提供判定手順において提供許可を示すと判定されたユーザ情報を前記広告配信装置に応答する要求応答手順と、をコンピュータに実行させ、
前記受付手順は、
前記ユーザ端末が前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかにアクセスする契機で前記ユーザ端末のユーザに設定させる前記提供可否情報を前記ユーザ端末から受け付けるか、
又は、前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかが前記ユーザ端末にアクセスされる契機で前記ユーザに設定させる前記提供可否情報を前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかから受け付ける、
ことを特徴とする情報提供プログラム。」


第5 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2009-145549号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ア)「本発明が解決しようとする課題としては、上記のものが例として挙げられる。本発明の目的は、検索した広告情報について、所定の方法で優先順位を決定し、優先順位に基づいて広告情報を提供する広告情報提供装置を提供することを課題とする。」(【0006】)

(イ)「まず、図8を参照し、広告情報提供システム101の概念図を示す。広告情報提供システム101は、端末装置1と、広告情報提供サーバ3と、サービス提供サーバ4とがネットワーク2を通じて接続されることにより構成される。
端末装置1は、広告情報を含むページの閲覧を要求する利用者が使用するクライアント端末である。具体的に、広告を閲覧する利用者が端末装置1を使用して、ログイン情報(利用者識別情報等)を入力すると、端末装置1は、入力されたログイン情報をサービス提供サーバ4へ送信するとともに、広告情報を含むページの提供要求を行う。そして、端末装置1は、広告情報提供サーバ3から広告情報を含むページを受信すると、当該広告情報を含むページを表示する。
広告情報提供サーバ3は、広告情報を保持している。そして、広告情報提供サーバ3は、サービス提供サーバ4から利用者属性情報321を取得すると、取得した利用者属性情報321を用いて広告情報を検索し、当該広告情報を含むページを生成し、当該ページを端末装置1へ送信する。
サービス提供サーバ4は、利用者属性情報321を管理する利用者情報DB320を保持する。そして、サービス提供サーバ4は、端末装置1から広告情報を含むページの提供要求を受信すると、端末装置1の利用者に対応する利用者属性情報321を検索し、検索した利用者属性情報321を広告情報提供サーバ3へ送信すると共に、広告一覧ページ提供要求指示を行う。」(【0071】?【0074】)

上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。

検索した広告情報について、所定の方法で優先順位を決定し、優先順位に基づいて広告情報を提供することを課題とする発明であって、
「広告情報提供システム101は、端末装置1と、広告情報提供サーバ3と、サービス提供サーバ4とがネットワーク2を通じて接続されることにより構成され、
端末装置1は、広告情報を含むページの閲覧を要求する利用者が使用するクライアント端末であり、広告を閲覧する利用者が端末装置1を使用して、ログイン情報(利用者識別情報等)を入力すると、端末装置1は、入力されたログイン情報をサービス提供サーバ4へ送信するとともに、広告情報を含むページの提供要求を行い、端末装置1は、広告情報提供サーバ3から広告情報を含むページを受信すると、当該広告情報を含むページを表示し、
広告情報提供サーバ3は、広告情報を保持しており、広告情報提供サーバ3は、サービス提供サーバ4から利用者属性情報321を取得すると、取得した利用者属性情報321を用いて広告情報を検索し、当該広告情報を含むページを生成し、当該ページを端末装置1へ送信し、
サービス提供サーバ4は、利用者属性情報321を管理する利用者情報DB320を保持し、サービス提供サーバ4は、端末装置1から広告情報を含むページの提供要求を受信すると、端末装置1の利用者に対応する利用者属性情報321を検索し、検索した利用者属性情報321を広告情報提供サーバ3へ送信すると共に、広告一覧ページ提供要求指示を行う、
広告情報提供システム。」(以下、「引用発明」という。)

2.引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2007-067544号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ウ)「本発明は、インターネット等のデータ網を介して、電話注文や詳細の問い合わせ等の電話連絡の必要性が予想されるサービス情報や商品情報等の有用情報を配信するWebサーバに関する。」(【0001】)

(エ)「図3は、利用者情報データベースの構成例を示している。利用者情報データベース51は、各利用者端末に対応する利用者毎の情報が格納される。本図を参照すると、利用者に対して一意である「利用者ID」と、当該利用者がWebサーバ50のホームページにアクセスするための「パスワード」と、「利用者名」、「住所」、「電話番号」等の利用者の個人情報と、当該個人情報をどの事業者に開示許可又は不許可とするかが設定される「許可リスト」とからなる。例えば、利用者IDが「003」の利用者については許可リストが「001のみ許可」に設定され、利用者氏名及び電話番号等の個人情報が事業者ID「001」の事業者のみに許可されるようになっている。
以上の如き利用者情報データベース51の設定により、利用者は、許可した事業者にのみ個人情報の開示することができる。個人情報を複数の事業者に知られたくないといった場合、例えば、商品を購入する事業者がA社であり搬送はC社である場合に、利用者は搬送業者C社にのみ、個人情報の開示を認めるといった条件をシステムに設定することができる。これにより、A社には利用者IDのみ通知され、A社はC社に利用者IDと共に商品の配送を依頼し、C社がシステムから利用者IDを元に個人情報を取得して商品を運搬するといった形態が可能になる。」(【0014】?【0015】)

3.引用文献3について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2011-209862号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(オ)「この発明は、データ処理技術に関し、特に、ユーザに関する情報を外部へ提供する技術に関する。」(【0001】)

(カ)「サービス提供装置300は、ユーザ端末200へウェブページを提供するに際し、その条件として、ユーザの属性に関する情報(以下、「ユーザ情報」とも呼ぶ。)の提供を要求する。言い換えれば、サービス提供装置300からサービスを享受するために、ユーザ端末200はサービス提供装置300に対してユーザ情報を提供する必要がある。このユーザ情報には、氏名、年齢、住所、性別、職業、年収、口座番号、クレジットカード番号等、様々な項目の情報が含まれる。
また、本実施の形態においてユーザ情報は情報提供システム100に保持される。ユーザ端末200およびサービス提供装置300は、情報提供システム100に対し適宜アクセスすることにより、情報提供システム100からサービス提供装置300へユーザ情報を提供させる。具体的には、サービス提供装置300は情報提供システム100に対してユーザ情報の提供を要求し、ユーザ端末200は情報提供システム100に対してユーザ情報の提供を許可する必要がある。」(【0011】?【0012】)

(キ)「ユーザ端末200は、サービス提供装置300に対してサービスの提供を要求する(S30)。サービス提供装置300は、情報提供装置104に対してユーザ情報の提供を要求する(S32)。情報提供装置104は、要求データをローカルストレージに格納する(S34)。そして、要求データを受け付けた旨を示す情報であり、情報提供装置104においてその要求データを一意に指し示すポインタ情報(以下、「要求受付情報」とも呼ぶ。)をサービス提供装置300へ送信する(S36)。この要求受付情報は、例えば、情報提供装置104のローカルストレージにおける要求データの格納位置を示す情報である。サービス提供装置300は、要求受付情報をユーザ端末200へ転送し(S38)、ユーザ端末200は、要求受付情報を情報提供装置104へ送信する(S40)。情報提供装置104は、その要求受付情報に基づいて元の要求データを特定し、その要求データから確認画面のデータを設定する(S42)。
続いて、情報提供装置104は確認画面のデータをユーザ端末200へ送信して表示させ(S44)、ユーザ端末200はユーザ情報の提供を許可する旨のデータを情報提供装置104へ送信する(S46)。情報提供装置104は、ユーザ情報の提供が許可された旨を示す情報であり、元の要求データを一意に指し示すポインタ情報(以下、「提供許可情報」とも呼ぶ。)をユーザ端末200へ送信する(S48)。この提供許可情報は、例えば、要求受付情報の一部が改変された(特定の項目値やビット値が提供許可情報を示す値に変更された)ものである。ユーザ端末200は提供許可情報をサービス提供装置300へ転送し(S50)、サービス提供装置300は提供許可情報を情報提供装置104へ送信する(S52)。情報提供装置104は、提供許可情報に基づいて元の要求データを特定し、要求されたユーザ情報を所定の記憶装置(例えばユーザ情報DB102)から取得して(S54)、サービス提供装置300へ送信する(S56)。」(【0019】?【0020】)

4.引用文献4について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2006-323629号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ク)「以上のような問題を解決するために、本発明に係るサーバは、複数のページを公開するウェブサーバと、ユーザ端末のページ閲覧を検知するために各ページに埋め込まれたウェブビーコン手段と、を含むウェブ環境において、ウェブビーコン手段によって検出されたページ閲覧情報を収集してウェブサーバのページ更新のための情報を解析するサーバに関する。」(【0006】)

(ケ)「図1は、本発明の実施形態に係るウェブサーバのページ更新に用いられるサーバ(ログ解析サーバ20)を含む全体構成を示す構成図である。複数のウェブサーバ10と、ユーザ端末31と、検索エンジン32と及びログ解析サーバ20はインターネット30に接続される。さらに、各ウェブサーバ10のホームページ11及び複数のページ12はウェブビーコン又はクリアジフ(JavaScript(商標)で記述されたプログラムや透明なgifファイルでウェブブラウザなどには表示されない)を有しており、ユーザ端末31a,31bからのアクセスをログ解析サーバ20へ送信する。
ログ解析サーバ20は、制御部21と、アクセスログデータベース22(以下、DBと略す)と、ユーザ動向DB23と、コンテンツデザインDB24と、リンクデザインDB25と、キーワードデザインDB26と、ページデザインDB27とを有している。
アクセスログDB22は、ウェブサーバ10毎にユーザ端末31a,31bからのアクセス時刻、アクセス数、滞留時間などを記録し、アクセスログDB22に記憶されたアクセスログに基づいてユーザの閲覧行動を記録する。また、ユーザ動向DB23は、制御部21により後述するページ修正情報とコンバージョン率も同様に記録する。」(【0015】?【0017】)

5.引用文献5について

原査定の拒絶の理由に周知文献として引用された引用文献5(特開2009-181334号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(コ)「この発明は、利用者の属性情報を管理するとともに、利用者にサービスを提供するサービス提供装置へ属性情報を提供する情報管理代行装置、サービス提供システムおよびサービス提供方法に関する。」(【0001】)

(サ)「まず、本実施例1に係るサービス提供システムの概要について説明する。図1は、本実施例1に係るサービス提供システムの概要を説明するための説明図である。同図に示すように、このサービス提供システムは、インターネット400を介して通信可能に接続された利用者端末100、サービスサイト200および情報管理代行サイト300を含んで構成されている。なお、ここでは説明の便宜上、利用者端末100およびサービスサイト200をそれぞれ1台ずつ示しているが、このサービス提供システムには、多数の利用端末100およびサービスサイト200が接続される。
かかるサービス提供システムにおいて、利用者端末100は、利用者によって操作され、サービスサイト200へサービスの要求を送信する。また、サービスサイト200は、利用者からの要求に応じて、要求されたサービスを提供する。また、情報管理代行サイト300は、利用者の個人属性情報を管理し、サービスサイト200からの要求に応じて、要求された個人属性情報を提供する。」(【0027】?【0028】)

(シ)「一方、情報管理代行サイト300は、利用者の属性情報を管理する装置であり、本発明に関連する機能部として、通信部310と、個人属性情報データベース320と、付加情報項目データベース330と、利用者認証部340と、サービスサイト認証部350と、個人属性情報管理部360と、付加情報項目管理部370と、付加情報・代替情報収集部380と、制御部390とを有する。
通信部310は、サービスサイト200との間でやり取りされる情報の送受信を制御する処理部である。例えば、この通信部310は、利用者の属性情報を要求する情報要求信号などをサービスサイト200から受信し、要求された属性情報とともに、付加情報や代替情報などをサービスサイト200へ送信する。
個人属性情報データベース320は、利用者の個人属性情報を記憶する記憶部である。具体的には、この個人属性情報データベースは、利用者の個人属性情報と、サービスサイト200に対する個人属性情報の提供可否を示す提供可否フラグとを、それぞれ利用者IDに対応付けて記憶する。なお、これら個人属性情報および提供可否フラグは、利用者がサービスの利用登録を行った際などに、サービスサイト200を介して登録される。」(【0048】?【0050】)

6.引用文献6について

原査定の拒絶の理由に周知文献として引用された引用文献6(特開2009-86154号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線部は当審にて付与した。)

(ス)「本発明は、広告配信システム及び車載器に関する。」(【0001】)

(セ)「ここで、図4を参照して、アップリンク情報記憶領域Mに格納されるアップリンク情報について説明する。
アップリンク情報記憶領域Mには、(1)広告配信事業者情報、(2)目的地情報、(3)経由地情報、(4)累計走行距離情報、(5)過去立ち寄り地情報、(6)嗜好ジャンル情報、(7)広告視聴履歴情報についての各種の情報が格納される。なお、以下の説明では、制御部4がこれらの情報をアップリンク情報として生成し、アップリンク情報記憶領域Mに格納するものとしているが、これに限らず、カーナビ制御部1a又はDSRC制御部3aの各部がそれぞれアップリンク情報記憶領域Mへ格納することとしてもよい。
以下に、アップリンク情報を構成するそれぞれの情報について説明する。なお、以下に説明する各情報は、アップリンク情報として生成して格納するか否かをユーザが入力部1dを介して個々に設定可能なものであってもよい。
・・・途中省略・・・
上記説明してきたアップリンク情報記憶領域Mに格納されたアップリンク情報は、センター装置30に送信される。具体的には、アップリンク情報は管理サーバ30aに一旦格納され、その後、顧客管理サーバ30bへ送信される。
そして、顧客管理サーバ30bは、このアップリンク情報及び顧客管理サーバ30bが予め記憶する所定の条件に基づいて、特典通知情報を生成する。ここで、特典通知情報とは、広告を視聴したことに対して付与する特典をユーザに通知する情報をいう。
顧客管理サーバ30bは生成した特典通知情報を車載器10へ送信し、車載器10は特典通知情報を表示部1eに表示することとなる。」(【0037】?【0045】)


第6 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

(1-1)
引用発明に係る「端末装置1」は、「広告情報を含むページの閲覧を要求する利用者が使用するクライアント端末」であるから、本願発明1でいうところの『ユーザ端末』に対応する。

(1-2)
引用発明に係る「広告情報提供サーバ3」は、「広告情報を保持しており、広告情報提供サーバ3は、サービス提供サーバ4から利用者属性情報321を取得すると、取得した利用者属性情報321を用いて広告情報を検索し、当該広告情報を含むページを生成し、当該ページを端末装置1へ送信」するものであり、前記「利用者属性情報」及び「広告情報」は、何れも本願発明1でいうところの『ユーザ情報』及び『広告コンテンツ』に対応することは明らかであるから、引用発明に係る「広告情報提供サーバ3」は、本願発明1でいうところの『ユーザ情報に基づいて広告コンテンツを配信する広告配信装置』に対応する。

(1-3)
引用発明に係る「サービス提供サーバ4」は、「利用者属性情報321を管理する利用者情報DB320を保持し」ているのであるから、前記「利用者属性情報321を管理する利用者情報DB320」は、本願発明1でいうところの『ユーザ端末に関するユーザ情報を記憶する記憶手段』に対応する。

また、引用発明に係る「サービス提供サーバ4」は、「端末装置1から広告情報を含むページの提供要求を受信する」のであるから、本願発明1でいうところの『受付手段』を備えていることは明らかである。

そして、引用発明に係る「サービス提供サーバ4」は、「端末装置1から広告情報を含むページの提供要求を受信すると、端末装置1の利用者に対応する利用者属性情報321を検索し、検索した利用者属性情報321を広告情報提供サーバ3へ送信すると共に、広告一覧ページ提供要求指示を行う」のであり、前記「提供要求」に対して「端末装置1の利用者に対応する利用者属性情報321を検索し、利用者属性情報321を広告情報提供サーバ3へ送信すると共に、広告一覧ページ提供要求指示を行う」との処理を行うのであるから、当該「端末装置1の利用者に対応する利用者属性情報321を検索し、利用者属性情報321を広告情報提供サーバ3へ送信すると共に、広告一覧ページ提供要求指示を行う」との処理は、前記端末装置1からの“提供要求”に対する、いわゆる、“要求応答手段”といえるから、引用発明に係る「サービス提供サーバ4」は、本願発明1でいうところの『要求応答手段』を備えているといえる。

してみると、引用発明に係る「サービス提供サーバ4」は、本願発明1でいうところの『ユーザ端末に関するユーザ情報を記憶する記憶手段』、『受付手段』、『要求応答手段』を備えているのであるから、本願発明1でいうところの『情報提供装置』に対応するものといえる。


以上、上記(1-1)から(1-3)で対比した様に、本願発明1と引用発明とは、

「ユーザ端末に関するユーザ情報を記憶する記憶手段と、
ユーザ端末から要求を受け付ける受付手段と、
ユーザ情報をユーザ情報に基づいて広告コンテンツを配信する広告配信装置に応答する要求応答手段と、
を備えた情報提供装置。」

という点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本願発明1に係る『記憶手段』は、『ユーザ端末にアクセスされた複数のコンテンツ提供装置を介して提供された前記ユーザ端末に関するユーザ情報を記憶』しているのに対し、引用発明に係る「記憶手段」は、前記『ユーザ端末にアクセスされた複数のコンテンツ提供装置を介して提供された』との限定がない点。

(相違点2)
本願発明1に係る『受付手段』は、『前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかにアクセスしたユーザ端末、又は、当該ユーザ端末にアクセスされたコンテンツ提供装置から、前記ユーザ情報に基づいて広告コンテンツを配信する広告配信装置に対して提供元のコンテンツ提供装置が異なる当該ユーザ端末に関するユーザ情報の提供を許可するか否かを示す提供可否情報であって、前記コンテンツ提供装置毎に当該コンテンツ提供装置から提供されたユーザ情報を前記広告配信装置に提供することを許可するか否かを示す提供可否情報を受け付ける』との限定が付されているのに対し、引用発明に係る「受付手段」には、その旨の限定がない点。

(相違点3)
本願発明1は、『前記広告配信装置から前記ユーザ端末に関するユーザ情報の取得要求を受信した場合に、当該ユーザ端末に対応する提供可否情報に基づいて、前記記憶手段に記憶されているユーザ情報が前記広告配信装置に提供することが許可されているユーザ情報であるかを判定する提供判定手段』を備えているのに対して、引用発明には、かかる手段を備えていない点。

(相違点4)
本願発明1に係る『要求応答手段』は、『前記提供判定手段により提供許可を示すと判定されたユーザ情報を前記広告配信装置に応答する』との限定が付されているのに対し、引用発明にはその旨の限定がない点。

(相違点5)
提供可否情報を受け付ける『受付手段』について、本願発明1には、『前記ユーザ端末が前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかにアクセスする契機で前記ユーザ端末のユーザに設定させる前記提供可否情報を前記ユーザ端末から受け付けるか、又は、前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかが前記ユーザ端末にアクセスされる契機で前記ユーザに設定させる前記提供可否情報を前記複数のコンテンツ提供装置のいずれかから受け付ける、』との限定事項が付されているのに対し、引用発明にはその旨の限定がない点。

(2)判断

(2-1)
上記(相違点1)について判断する。

上記「第5 引用文献、引用発明等」で摘記した様に、引用文献2に係る「利用者情報データベース51」には、「各利用者端末に対応する利用者毎の情報」及び「個人情報をどの事業者に開示許可又は不許可とするかが設定される「許可リスト」」が格納されている。
引用文献3に係る「情報提供装置104」には、「ユーザ情報DB102」を備えている。
引用文献5には、「情報管理代行サイト300」が「利用者の個人属性情報」を管理し、サービスサイト200からの要求に応じて、要求された個人属性情報を提供する、旨開示されている。
引用文献6には、アップリンク情報記憶領域Mには、「(1)広告配信事業者情報、(2)目的地情報、(3)経由地情報、(4)累計走行距離情報、(5)過去立ち寄り地情報、(6)嗜好ジャンル情報、(7)広告視聴履歴情報についての各種の情報」が格納される旨開示されている。

しかしながら、引用文献2、3、5、6は、何れも本願発明1でいうところの『コンテンツ提供装置』を備えることを前提としていないものであり、前記引用文献2、3、5、6においては、格納される「個人情報」、「ユーザ情報」、「個人属性情報」等が、本願発明1の様に『ユーザ端末にアクセスされた複数のコンテンツ提供装置を介して提供された』ものであるとの事項は開示されておらず、当該引用文献2、3、5、6に開示されている事項を引用発明に適応しても上記(相違点1)に係る構成を満たすには至らない。

また、引用文献4には、「ウェブビーコン手段によって検出されたページ閲覧情報を収集してウェブサーバのページ更新のための情報を解析するサーバに関する。」、「各ウェブサーバ10のホームページ11及び複数のページ12はウェブビーコン又はクリアジフ(JavaScript(商標)で記述されたプログラムや透明なgifファイルでウェブブラウザなどには表示されない)を有しており、ユーザ端末31a,31bからのアクセスをログ解析サーバ20へ送信する。」、「アクセスログDB22は、ウェブサーバ10毎にユーザ端末31a,31bからのアクセス時刻、アクセス数、滞留時間などを記録し、アクセスログDB22に記憶されたアクセスログに基づいてユーザの閲覧行動を記録する。」ことが開示されているが、本願発明1でいうところの『コンテンツ提供装置』を備えることを前提としていない引用発明に当該引用文献4に開示されている上記事項を適用する動機づけがない。

したがって、引用発明及び引用文献2?6に開示されている事項に基づいて、当業者が上記(相違点1)に係る構成を容易に想到し得るとは認められない。

(2-2)
上記(相違点2)から(相違点4)についても、本願発明1に係る『受付手段』、『提供判定手段』、『要求応答手段』が実行する各種処理の対象である「ユーザ情報」は、『ユーザ端末にアクセスされた複数のコンテンツ提供装置を介して提供された』ものであるから、上記(相違点1)で検討したのと同様に、引用発明及び引用文献2?6に開示されている事項に基づいて、当業者が上記(相違点2)から(相違点4)に係る構成を容易に想到し得るとは認められない。

(2-3)
上記(相違点5)については、引用発明及び引用文献2?6の何れにも開示されていないので、引用発明及び引用文献2?6に開示されている事項に基づいて、当業者が上記(相違点5)に係る構成を容易に想到し得るとは認められない。

以上の通りであるから、本願発明1は、引用発明及び引用文献2?6に開示されている事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2から本願発明6について

本願発明2は、本願発明1を引用する発明であり、本願発明3は「広告配信システム」に係る発明であり、本願発明4は、本願発明3を引用する発明であり、本願発明5は「情報提供方法」に係る発明であり、本願発明6は「情報提供プログラム」に係る発明であり、いずれも上記(相違点1)から(相違点5)に係る発明特定事項のいずれか、及び/又は、全てを備えているものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2?6に開示されている事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。


第7 原査定についての判断

上記「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」で示した様に、本願発明1?6は、拒絶査定において引用された引用文献1?6に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第8 当審拒絶理由についての判断

平成29年4月14日付け手続補正書により、当審拒絶理由の対象である平成28年4月28日付け手続補正書により補正された請求項5は、削除されたので、平成29年2月7日付けの拒絶理由通知書にて指摘した事項は解消した。


第9 むすび

以上の通り、本願発明1?6は、当業者が引用発明及び引用文献2?6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-05-29 
出願番号 特願2014-164561(P2014-164561)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06Q)
P 1 8・ 121- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松田 直也松野 広一  
特許庁審判長 金子 幸一
特許庁審判官 佐藤 智康
宇多川 勉
発明の名称 情報提供装置、広告配信システム、情報提供方法及び情報提供プログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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