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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1328605
審判番号 不服2015-21588  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-04 
確定日 2017-05-25 
事件の表示 特願2012-214381「スチレン系樹脂粒子、その製造方法、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月10日出願公開、特開2013-209608〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月27日(先の出願に基づく優先権主張 平成24年2月29日)を出願日とする特許出願であって、平成27年7月16日付けで拒絶理由が通知され、同年8月26日に意見書が提出されたが、同年9月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月4日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明の認定
本願の請求項1ないし9に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
スチレン系樹脂及びグラファイトを含むスチレン系樹脂粒子であり、
前記グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、
(1)前記スチレン系樹脂粒子全体で、3?15重量%含まれ、
(2)前記スチレン系樹脂粒子全体に含まれるグラファイトの量をX重量%とし、表層部分に含まれるグラファイトの量をY重量%とした場合、X≧1.1×Yの関係を満たすように含まれる
ことを特徴とするスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、前記スチレン系樹脂粒子の中心部分に含まれるグラファイトの量をZ重量%とした場合、Z≧1.1×Yの関係を満たすように含まれる請求項1に記載のスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記グラファイトが、1?100μmの平均粒子径を有する請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
Y<3.5の関係を満たす請求項1?3のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
Z≧1.3×Yの関係を満たす請求項2に記載のスチレン系樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1?5のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂粒子と、発泡剤とを含む発泡性粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の発泡性粒子を発泡させて得られた発泡粒子。
【請求項8】
スチレン系樹脂及びグラファイトを含む発泡成形体であり、
前記グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、
(1)前記発泡成形体全体で、3?15重量%含まれ、
(2)前記発泡成形体全体に含まれるグラファイトの量をX重量%とし、表層部分に含まれるグラファイトの量をY重量%とした場合、X≧1.1×Yの関係を満たすように含まれる
ことを特徴とする発泡成形体。
【請求項9】
請求項1?5のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂粒子の製造方法であり、
グラファイトを含むスチレン系樹脂製の種粒子に、スチレン系単量体を吸収させ重合させることにより前記スチレン系樹脂粒子を得ることを特徴とするスチレン系樹脂粒子の製造方法。」

第3 原査定の理由
原査定の理由とされた、平成27年7月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由1は、以下のとおりのものである。

「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
・・・
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(新規性)、・・・
・請求項1-9
・引用文献等
1(特に、特許請求の範囲、[0019]、実施例参照)
・備考
引用文献1の特許請求の範囲には、スチレン系樹脂に黒鉛粒子を混合し、混合組成物を製造し、前記組成物を押出し、懸濁可能であり、均一な粒子のマイクロペレットを得る段階、及び黒鉛の含まれたマイクロペレットを水に懸濁させ、スチレン系単量体を添加し、核重合を実施し、発泡剤を投入して含浸する段階によって製造される、発泡性ポリスチレン粒子が記載されている。
また、引用文献1には、該黒鉛粒子のサイズは0.1?20μmであり、スチレン系樹脂100重量%に対して0.1?30重量%使用されること([0019])、実施例には、ポリスチレン100kgに黒鉛10kgを投入して混合し、混合組成物を調製したこと、該混合組成物を2軸成型機にて溶融させ、粒子の均一な黒鉛が含まれたマイクロペレットを製造したこと、該マイクロペレット20kg、スチレン単量体20kg、重合開始剤等を加えて重合反応させた後、発泡剤を添加して、含浸させ、発泡性ポリスチレン粒子を製造したこと(実施例1)が記載されている。
ここで、上記実施例において、該マイクロペレットに含まれる黒鉛の割合は9重量%、発泡性ポリスチレン粒子表層に含まれる黒鉛の割合は0重量%、発泡性ポリスチレン粒子に含まれる黒鉛の割合は4.5重量%である。
してみると、本願請求項1-9に係る発明は、引用文献1に記載された発明と発明を特定するための事項に差異がなく、・・・
<引用文献等一覧>
1.特表2009-536687号公報 」

第4 当審の判断
1 刊行物
刊行物:特表2009-536687号公報(平成27年7月16日付け拒絶理由通知書において提示された引用文献1)

2 刊行物の記載事項
本願の優先日前に頒布された刊行物であることが明らかな特表2009-536687号公報(以下、単に「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「【請求項1】
スチレン系樹脂に黒鉛粒子を混合し、混合組成物を製造し、前記組成物を押出し、懸濁可能であり、均一な粒子のマイクロペレットを得る段階、及び
黒鉛の含まれたマイクロペレットを水に懸濁させ、スチレン系単量体及びC_(6)?C_(10)芳香族炭化水素を添加し、核重合を実施し、発泡剤を投入して含浸する段階を含める断熱性に優れた発泡性ポリスチレン粒子の製造方法。
【請求項3】
前記黒鉛は、粒子サイズが0.1?20μmであり、スチレン系樹脂100重量%に対して0.1?30重量%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記黒鉛が含まれたマイクロペレットとスチレン系単量体との重量比は、10?90:90?10であることを特徴とする請求項1に記載の方法。」(特許請求の範囲の請求項1、3、4)

イ 「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、熱伝導率を減少し、熱伝導率の経時性を補うことが可能な黒鉛が含まれた発泡性ポリスチレン粒子の新規製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、一般懸濁重合から成し得ない、所望のサイズからなる粒子を高収率で得ることができる黒鉛が含まれた発泡性ポリスチレン粒子の新規製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、懸濁重合時、黒鉛を導入した製品の短所(発泡粒内部気泡の対立化及び不均一性)を改善することができる、黒鉛が含まれた発泡性ポリスチレン粒子の新規製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ポリスチレンペレットに黒鉛を投入し、溶融し、再押出し、黒鉛の含まれたマイクロペレットに製造し、再びこのペレットの含浸を行うことによって、黒鉛の含まれた発泡性ポリスチレン粒子を製造する工程での短所となる押出加工費が増えるといった不適切な事態を防ぐことで、高品質・低コストの断熱材用度としての黒鉛が含まれた発泡性ポリスチレン粒子の新規製造方法を提供することにある。」(段落【0006】?【0010】)

ウ 「【発明の効果】
このような方法により得られた黒鉛粒子を含める発泡性ポリスチレン粒子は、一般の発泡性ポリスチレンよりかなり低い熱伝導率を有しており、また、黒鉛による熱伝導率の経時的変化が小さいことから、長時間に亘って断熱特性を保持することができるという長所がある。」(段落【0011】?【0012】)

エ 「本発明の実施において、前記混合組成物の製造に使用される黒鉛粒子のサイズは、0.1?20μmであり、スチレン系樹脂100重量%に対して0.1?30重量%を使用する。」(段落【0019】)

オ 「本発明の実施において、より正確な工程を紹介すれば、超純水、黒鉛の含まれたマイクロペレット、分散剤を反応機に投入し、分散を保持させる。この過程が完了すると、反応機の温度を60?90℃の間に上昇/維持させ、スチレン系単量体、開始剤、気泡調節剤、難燃剤、C_(6)?C_(10)芳香族炭化水素を2?3時間以上維持しながら徐々に投入する。その後、反応機の入口を閉じてから、残りのスチレン単量体を投入する。
この過程は、温度を60?90℃から100?130℃まで3?6時間の間、昇温すると共に、残りのスチレン単量体を徐々に投入しながら行われる。このように重合が終了となり、発泡剤を投入し、含浸を同時に進める。含浸は、発泡剤を投入した後、100?130℃で3?6時間保持することで、黒鉛の含まれた発泡性ポリスチレン粒子の新規核重合を完了するのである。」(段落【0029】?【0030】)

カ 「<実施例1> 黒鉛粒子を含む発泡性ポリスチレン粒子の製造実験(Under water cutting)
ポリスチレン(錦湖石油化学(株);GP150)100kgに黒鉛(現代コマ産業(株);HCN-905)10kgを投入して混合し、この混合組成物を2軸成型機にて230℃で溶融させ、水中ペレット化機(Under water cutting)を利用し、粒子の均一な黒鉛が含まれた、2.0mm^(3)以下の平均体積を有するマイクロペレットを得た。
100L反応機内に超純水40kgと分散剤(トリカルシウムフォスフェイト;デュボン乳化)0.2kgを投入し、かつ攪拌し、前記黒鉛の含まれたマイクロペレット20kgを投入した。次いで、60℃まで反応機の温度を昇温し、スチレン単量体(Styrene Monomer;SK社)5kgに難燃剤(ヘキサブロモシクロドデカン;GLC;CD75^(TM))1kg、低温開始剤(ベンゾイルパーオキサイド;ハンソルケミカル社)0.05kg、高温開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート;Hosung Chemex社)0.03kgを溶解させ、2時間の間投入した。それから、反応機の入口を閉じてスチレン単量体15kgを60℃から125℃まで3.5時間の間昇温しながら、徐々に投入し、重合を進めた。このことが終了した後、125℃で発泡剤(ペンタン;SK社)3kgを窒素圧力で反応機に投入し、最終反応機圧力を13kgf/cm^(2)に保持しながら、5時間の間含浸を行った。
それから、30℃以下に冷却させ、製品を反応機から排出させた。この製品を水洗、乾燥し、通常の発泡性ポリスチレンで用いるようなブレンディング剤を塗布し、物性評価を行った。
<実施例2>黒鉛粒子を含める発泡性ポリスチレン粒子の製造実験(水冷式ダイ面ペレット化機)
ポリスチレン(錦湖石油化学(株);GP150)100kgに黒鉛(現代コマ産業(株);HCN-905)10kgを投入し、かつ混合組成物を製作し、この混合組成物を2軸成型機にて230℃で溶融し、水冷式ダイ面(Die-face)ペレット化機を介して平均体積が2.0mm^(3)以下の黒鉛が含まれたマイクロペレットを得た。核重合/含浸工程は、<実施例1>と同様に進行させた。こうして得られた製品を水洗、乾燥し、通常の発泡性ポリスチレンで使用するようなブレンディング剤を塗布し、物性評価を行った。
<実施例3>黒鉛粒子を含める発泡性ポリスチレン粒子の製造実験(気泡調節剤導入)
<実施例1>と同じく、黒鉛の含まれたマイクロペレットを製造した。核重合の手続きは、<実施例1>と同様に進行させるが、60℃で気泡調節剤(エチレンビスステアリルアミド;SUNKOO Chemical社)0.05kgを投入し、核重合/含浸を進めた。こうして得られた製品を水洗、乾燥し、通常の発泡性ポリスチレンで使用するようなブレンディング剤を塗布し、物性評価を行った。
<実施例4>黒鉛粒子を含める発泡性ポリスチレン粒子の製造実験(溶剤導入)
<実施例1>と同じく、黒鉛の含まれたマイクロペレットを製造した。核重合の手続きは、<実施例1>と同様に進行させるが、60℃の工程で溶剤(トルエン;Chemitech社)を0.05kgを投入し、核重合/含浸を進行させた。こうして得られた製品を水洗、乾燥し、通常の発泡性ポリスチレンで用いるようなブレンディング剤を塗布し、物性評価を行った。
<比較例1>黒鉛粒子を含まない発泡性ポリスチレン粒子の製造実験
ポリスチレン(錦湖石油化学(株);GP150)を2軸成型機にて230℃で溶融し、水中ペレット化機(Under water cutting)を利用し、平均体積(Volume)が2.0mm^(3)以下のマイクロペレットを得た。核重合は、<実施例1>と同様に進行し、こうして得られた製品を水洗、乾燥し、通常の発泡性ポリスチレンで使用するようなブレンディング剤を塗布し、物性評価を行った。
<比較例2>黒鉛粒子を含める発泡性ポリスチレン粒子の製造実験(核重合ではないマイクロペレットの単純含浸)
ポリスチレン(錦湖石油化学(株);GP150)100kgに黒鉛(現代コマ産業(株);HCN-905)5kg、難燃剤(Albemarle HBCD^(HT))1kgを投入して混合し、この混合組成物を2軸成型機にて230℃で溶融し、水中ペレット化機(Under water cutting)を利用し、平均体積が2.0mm^(3)以下の黒鉛が含まれたマイクロペレットを得た。100L反応機内の超純水40kgに分散剤(トリカルシウムフォスフェイト;デュボン乳化)0.2kgを投入して攪拌し、前記黒鉛の含まれたマイクロペレット40kgを投入した。そして、反応機の入口を閉じて110℃まで昇温した。次いで、窒素圧力を利用して発泡剤(ペンタン、SK社)を3kg投入し、反応機の圧力を13kgf/cm^(2)に保持しながら5時間の間、含浸を行った。その後、30℃以下に冷却し、製品を反応機から排出した。この製品を水洗、乾燥し、通常の発泡性ポリスチレンで用いるようなブレンディング剤を塗布し、物性評価を行った。
下記表1/表2において、評価のためのポリスチレン発泡体試片の密度は両方とも30kg/m^(3)であって、物性評価は、具体的に以下の通り行った。
・・・
【表1】

【表2】

」(段落【0034】?【0044】)

3 引用文献に記載された発明
引用文献には、摘示アから、請求項1を引用する請求項3及び請求項4に記載の「発泡性ポリスチレン粒子の製造方法」が記載されているから、引用文献には、当該製造方法で製造された発泡性ポリスチレン粒子として、

「スチレン系樹脂と黒鉛粒子とから得られる発泡性ポリスチレン粒子であって、
発泡性ポリスチレン粒子は、発泡剤を含有しており、
前記黒鉛は、粒子サイズが0.1?20μmであり、スチレン系樹脂100重量%に対して0.1?30重量%であって、黒鉛が含まれたマイクロペレットとスチレン系単量体との重量比は、10?90:90?10である製造方法で製造された発泡性ポリスチレン粒子。」
に係る発明(以下、「引用発明1A」という。)が記載されており、同じく、当該発泡性ポリスチレン粒子の製造方法として、

「発泡性ポリスチレン粒子の製造方法であって、スチレン系樹脂に黒鉛粒子を混合し、混合組成物を製造し、前記組成物を押出し、懸濁可能であり、均一な粒子のマイクロペレットを得る段階、及び、黒鉛の含まれたマイクロペレットを水に懸濁させ、スチレン系単量体及びC_(6)?C_(10)芳香族炭化水素を添加し、核重合を実施し、発泡剤を投入して含浸する段階を含める製造方法であって、前記黒鉛は、粒子サイズが0.1?20μmであり、スチレン系樹脂100重量%に対して0.1?30重量%であって、黒鉛が含まれたマイクロペレットとスチレン系単量体との重量比は、10?90:90?10である断熱性に優れた発泡性ポリスチレン粒子の製造方法。」が記載されていて、発泡剤を投入する前の段階では、発泡剤を含まないポリスチレン粒子が製造されており、当該発泡剤を含まないポリスチレン粒子の単離も可能であることから、以下の発明(以下、「引用発明1B」という。)が記載されていると認める。

「スチレン系樹脂に黒鉛粒子を含むポリスチレン粒子の製造方法であって、スチレン系樹脂に黒鉛粒子を混合し、混合組成物を製造し、前記組成物を押出し、懸濁可能であり、均一な粒子のマイクロペレットを得る段階、及び、黒鉛の含まれたマイクロペレットを水に懸濁させ、スチレン系単量体及びC_(6)?C_(10)芳香族炭化水素を添加し、核重合を実施して得られるポリスチレン粒子の製造方法において、
前記黒鉛は、粒子サイズが0.1?20μmであり、スチレン系樹脂100重量%に対して0.1?30重量%であって、黒鉛が含まれたマイクロペレットとスチレン系単量体との重量比は、10?90:90?10である、ポリスチレン粒子の製造方法。」
また、摘示カにおいて具体的に記載された実施例1の発泡性ポリスチレン粒子として、

「ポリスチレン(錦湖石油化学(株);GP150)100kgに黒鉛(現代コマ産業(株);HCN-905)10kgを投入して混合し、この混合組成物を2軸成型機にて230℃で溶融させ、水中ペレット化機(Under water cutting)を利用し、粒子の均一な黒鉛が含まれた、2.0mm^(3)以下の平均体積を有するマイクロペレットを得、100L反応機内に超純水40kgと分散剤(トリカルシウムフォスフェイト;デュボン乳化)0.2kgを投入し、かつ攪拌し、前記黒鉛の含まれたマイクロペレット20kgを投入し、次いで、60℃まで反応機の温度を昇温し、スチレン単量体(Styrene Monomer;SK社)5kgに難燃剤(ヘキサブロモシクロドデカン;GLC;CD75^(TM))1kg、低温開始剤(ベンゾイルパーオキサイド;ハンソルケミカル社)0.05kg、高温開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート;Hosung Chemex社)0.03kgを溶解させ、2時間の間投入し、それから、反応機の入口を閉じてスチレン単量体15kgを60℃から125℃まで3.5時間の間昇温しながら、徐々に投入し、重合を進め、このことが終了した後、125℃で発泡剤(ペンタン;SK社)3kgを窒素圧力で反応機に投入し、最終反応機圧力を13kgf/cm^(2)に保持しながら、5時間の間含浸を行い、それから、30℃以下に冷却させ、製品を反応機から排出させて、この製品を水洗、乾燥し、通常の発泡性ポリスチレンで用いるようなブレンディング剤を塗布して得られた発泡性ポリスチレン粒子。」
に係る発明(以下、「引用発明2A」という。)が記載されていて、発泡剤を投入する前の段階では、発泡剤を含まないポリスチレン粒子が製造されており、当該発泡剤を含まないポリスチレン粒子の単離も可能であることから、

「ポリスチレン(錦湖石油化学(株);GP150)に黒鉛(現代コマ産業(株);HCN-905)を含むポリスチレン粒子の製造方法であって、
ポリスチレン(錦湖石油化学(株);GP150)100kgに黒鉛(現代コマ産業(株);HCN-905)10kgを投入して混合し、この混合組成物を2軸成型機にて230℃で溶融させ、水中ペレット化機(Under water cutting)を利用し、粒子の均一な黒鉛が含まれた、2.0mm^(3)以下の平均体積を有するマイクロペレットを得、100L反応機内に超純水40kgと分散剤(トリカルシウムフォスフェイト;デュボン乳化)0.2kgを投入し、かつ攪拌し、前記黒鉛の含まれたマイクロペレット20kgを投入し、次いで、60℃まで反応機の温度を昇温し、スチレン単量体(Styrene Monomer;SK社)5kgに難燃剤(ヘキサブロモシクロドデカン;GLC;CD75^(TM))1kg、低温開始剤(ベンゾイルパーオキサイド;ハンソルケミカル社)0.05kg、高温開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート;Hosung Chemex社)0.03kgを溶解させ、2時間の間投入し、それから、反応機の入口を閉じてスチレン単量体15kgを60℃から125℃まで3.5時間の間昇温しながら、徐々に投入し、重合を進めて得られた、ポリスチレン粒子の製造方法。」
に係る発明(以下、「引用発明2B」という。)が記載されていると認める。

4 本願発明1を引用する本願発明6(以下、「本願発明6-1」という。)と引用発明1Aとの対比・判断
(1)本願発明6-1
本願発明6-1は、本願発明1を引用する本願発明6であるが、これを本願発明1を引用しない形式で記載すると、以下のとおりである。

「スチレン系樹脂及びグラファイトを含むスチレン系樹脂粒子であり、
前記グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、
(1)前記スチレン系樹脂粒子全体で、3?15重量%含まれ、
(2)前記スチレン系樹脂粒子全体に含まれるグラファイトの量をX重量%とし、表層部分に含まれるグラファイトの量をY重量%とした場合、X≧1.1×Yの関係を満たすように含まれる、
スチレン系樹脂粒子と、発泡剤とを含む発泡性粒子。」

(2)対比・判断
引用発明1Aと本願発明6-1とを対比する。
引用発明1Aの「黒鉛粒子」は、本願発明6-1の「グラファイト」に相当する。
引用発明1Aの「発泡性ポリスチレン粒子」は、黒鉛の含まれたマイクロペレットを水に懸濁させ、スチレン系単量体及びC_(6)?C_(10)芳香族炭化水素を添加し、核重合を実施し、発泡剤を投入して含浸して得られたものであることから、本願発明6-1の「スチレン系樹脂粒子と発泡剤とを含む発泡性粒子」に相当する。
そうすると、本願発明6-1と引用発明1Aとは、
「スチレン系樹脂及びグラファイトを含むスチレン系樹脂粒子と発泡剤とを含む発泡性粒子。」の点で一致し、以下の点で一応相違している。

<相違点1>
スチレン系樹脂粒子全体に含まれるグラファイトの配合量に関し、本願発明6-1は「グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、(1)前記スチレン系樹脂粒子全体で、3?15重量%含まれ」と特定するのに対して、引用発明1Aは、「黒鉛(グラファイト)は、・・・スチレン系樹脂100重量%に対して0.1?30重量%である」と特定する点。

<相違点2>
スチレン系樹脂粒子に含まれるグラファイトについて、本願発明6-1は「(2)前記スチレン系樹脂粒子全体に含まれるグラファイトの量をX重量%とし、表層部分に含まれるグラファイトの量をY重量%とした場合、X≧1.1×Yの関係を満たすように含まれる」と特定するのに対し、引用発明1Aは、この点を特定しない点。

以下、相違点について検討する。
相違点1について
引用発明1Aの「黒鉛は、・・・スチレン系樹脂100重量%に対して0.1?30重量%である」ことは、引用発明1Aのスチレン系樹脂と黒鉛粒子との合計量に対して、黒鉛粒子(グラファイト)は、スチレン系樹脂粒子全体で0.1?23重量%含まれることになるので、本願発明6-1の「グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、(1)前記スチレン系樹脂粒子全体で、3?15重量%含まれ」と重複一致する。
そうすると、相違点1は実質的な相違点ではない。

相違点2について
本願発明6-1において、相違点2に係る要件を満足するスチレン系樹脂粒子は、「スチレン系樹脂粒子の製造方法は、グラファイトを粒子中心部分に偏在できさえすれば、特に限定されない。例えば、水性懸濁液中で、グラファイトを含むスチレン系樹脂製の種粒子に、単量体混合物を吸収させる工程と、吸収させた後又は吸収させつつ単量体混合物の重合を行う工程とを含む、いわゆるシード重合法により製造することが簡便である。」(本願明細書の段落【0021】)と記載されている。
一方で、引用発明1Aの発泡剤を含浸する前のポリスチレン粒子は、スチレン系樹脂に黒鉛粒子を混合し、混合組成物を製造し、前記組成物を押出し、懸濁可能であり、均一な粒子のマイクロペレットを得る段階、及び、黒鉛の含まれたマイクロペレットを水に懸濁させ、スチレン系単量体及びC_(6)?C_(10)芳香族炭化水素を添加し、核重合を実施する段階を含む製造方法により得られるものであって、かかる製造条件における「マイクロペレット」、「マイクロペレットを水に懸濁させ、スチレン系単量体及びC_(6)?C_(10)芳香族炭化水素を添加し、核重合を実施する段階」は、それぞれ、上記相違点2に係る要件を満足するスチレン系樹脂粒子の製造方法における「種粒子」、「水性懸濁液中で、グラファイトを含むスチレン系樹脂製の種粒子に、単量体混合物を吸収させる工程と、吸収させつつ単量体混合物の重合を行う工程とを含む、いわゆるシード重合法」に相当するから、本願明細書の上記相違点2に係る要件を満足するスチレン系樹脂粒子の製造方法と一致する。
したがって、引用発明1Aにおいても、スチレン系樹脂粒子全体に含まれるグラファイトの量をX重量%とし、表層部分に含まれるグラファイトの量をY重量%とした場合、X≧1.1×Yの関係を満たす蓋然性が高い。
そうすると、相違点2は実質的な相違点ではない。
以上のことから、引用発明1Aと本願発明6-1との間に相違点はない。

したがって、本願発明6-1は引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

5 本願発明1を引用する本願発明9(以下、「本願発明9-1」という。)と引用発明1Bとの対比・判断
(1)本願発明9-1
本願発明9-1は、本願発明1を引用する本願発明9であるが、これを本願発明1を引用しない形式で記載すると、以下のとおりである。

「スチレン系樹脂及びグラファイトを含むスチレン系樹脂粒子の製造方法であり、
前記グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、
(1)前記スチレン系樹脂粒子全体で、3?15重量%含まれ、
(2)前記スチレン系樹脂粒子全体に含まれるグラファイトの量をX重量%とし、表層部分に含まれるグラファイトの量をY重量%とした場合、X≧1.1×Yの関係を満たすように含まれ、
グラファイトを含むスチレン系樹脂製の種粒子に、スチレン系単量体を吸収させ重合させることにより前記スチレン系樹脂粒子を得る、スチレン系樹脂粒子の製造方法。」

(2)対比・判断
引用発明1Bと本願発明9-1とを対比する。
引用発明1Bの「黒鉛粒子」は、本願発明9-1における「グラファイト」に相当する。
引用発明1Bの「黒鉛は、・・・スチレン系樹脂100重量%に対して0.1?30重量%である」ことは、引用発明1Bのスチレン系樹脂と黒鉛粒子との合計量に対して、黒鉛粒子(グラファイト)は、スチレン系樹脂粒子全体で0.1?23重量%含まれることになるので、本願発明9-1の「グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、(1)前記スチレン系樹脂粒子全体で、3?15重量%含まれ」と重複一致する。
引用発明1Bの「マイクロペレット」は、水に懸濁させスチレン系単量体を添加して核重合を実施するものであるから、本願発明9-1における「種粒子」に相当する。
引用発明1Bの「黒鉛の含まれたマイクロペレットを水に懸濁させ、スチレン系単量体及びC_(6)?C_(10)芳香族炭化水素を添加し、核重合を実施」する工程は、引用文献の「超純水、黒鉛の含まれたマイクロペレット、分散剤を反応機に投入し、分散を保持させる。この過程が完了すると、反応機の温度を60?90℃の間に上昇/維持させ、スチレン系単量体、開始剤、気泡調節剤、難燃剤、C_(6)?C_(10)芳香族炭化水素を2?3時間以上維持しながら徐々に投入する。その後、反応機の入口を閉じてから、残りのスチレン単量体を投入する。この過程は、温度を60?90℃から100?130℃まで3?6時間の間、昇温すると共に、残りのスチレン単量体を徐々に投入しながら行われる。このように重合が終了となり」(摘示オ)の記載から、本願発明9-1における「グラファイトを含むスチレン系樹脂製の種粒子に、スチレン系単量体を吸収させ重合させることにより前記スチレン系樹脂粒子を得ること」に相当することは明らかである。
引用発明1Bの「ポリスチレン粒子」は、本願発明9-1における「スチレン系樹脂粒子」に相当する。
そうすると、本願発明9-1と引用発明1Bとは、

「スチレン系樹脂及びグラファイトを含むスチレン系樹脂粒子の製造方法であり、
前記グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、
(1)前記スチレン系樹脂粒子全体で、3?15重量%含まれ、
グラファイトを含むスチレン系樹脂製の種粒子に、スチレン系単量体を吸収させ重合させることにより前記スチレン系樹脂粒子を得る、スチレン系樹脂粒子の製造方法。」の点で一致し、以下の点で一応相違している。

<相違点3>
本願発明9-1においては、製造するスチレン系樹脂粒子に含まれるグラファイトに関して、「(2)前記スチレン系樹脂粒子全体に含まれるグラファイトの量をX重量%とし、表層部分に含まれるグラファイトの量をY重量%とした場合、X≧1.1×Yの関係を満たすように含まれ」と特定するのに対して、引用発明1Bは、この点を特定しない点。

以下、相違点3について検討する。
本願明細書において、相違点3に係るスチレン系樹脂粒子は、「スチレン系樹脂粒子の製造方法は、グラファイトを粒子中心部分に偏在できさえすれば、特に限定されない。例えば、水性懸濁液中で、グラファイトを含むスチレン系樹脂製の種粒子に、単量体混合物を吸収させる工程と、吸収させた後又は吸収させつつ単量体混合物の重合を行う工程とを含む、いわゆるシード重合法により製造することが簡便である。」(本願明細書の段落【0021】)と記載されている一方で、引用発明1Bの「ポリスチレン粒子」(スチレン系樹脂粒子)は、スチレン系樹脂に黒鉛粒子を混合し、混合組成物を製造し、前記組成物を押出し、懸濁可能であり、均一な粒子のマイクロペレットを得る段階、及び、黒鉛の含まれたマイクロペレットを水に懸濁させ、スチレン系単量体及びC_(6)?C_(10)芳香族炭化水素を添加し、核重合を実施して製造されたものであって、前記4の相違点2での検討と同様に、かかる製造条件は本願明細書の前記記載と一致しているから、引用発明1Bの「ポリスチレン粒子」(スチレン系樹脂粒子)においても、スチレン系樹脂粒子全体に含まれるグラファイトの量をX重量%とし、表層部分に含まれるグラファイトの量をY重量%とした場合、X≧1.1×Yの関係を満たす蓋然性が高い。
そうすると、相違点3は実質的な相違点ではないから、引用発明1Bと本願発明9-1との間に相違点はない。

したがって、本願発明9-1は引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

6 本願発明6-1と引用発明2Aとの対比・判断
(1)本願発明6-1
本願発明6-1は、上記4(1)に記載のとおりである。
(2)対比・判断
引用発明2Aと本願発明6-1とを対比する。
引用発明2Aの「ポリスチレン(錦湖石油化学(株);GP150)」と黒鉛を含むマイクロペレットを核としてスチレン単量体が重合された樹脂を合わせたものが、本願発明6-1の「スチレン系樹脂」に相当する。
引用発明2Aの「黒鉛(現代コマ産業(株);HCN-905)」は、本願発明6-1の「グラファイト」に相当する。
引用発明2Aの「発泡性ポリスチレン粒子」は、ポリスチレン粒子に発泡剤を含有させたものであるから、本願発明6-1の「発泡剤を含む発泡性粒子」に相当する。
引用発明2Aの発泡性ポリスチレン粒子(発泡性粒子)に含まれる黒鉛(グラファイト)の配合量は、発泡剤を含有しないポリスチレン粒子に配合されている黒鉛の量と変わらないから、ポリスチレン粒子(スチレン系樹脂粒子)と黒鉛(グラファイト)の合計量に対して、ポリスチレン粒子(スチレン系樹脂粒子)全体で、4.5重量%(マイクロペレット20kg中の黒鉛は、20×10/(100+10)=1.8kgであり、スチレン系樹脂の合計量は、スチレン単量体がすべて重合されたとすれば、18.2+5+15=38.2であるから、1.8/(1.8+38.2)=0.045)である。そうすると、引用発明2Aのポリスチレン粒子は、本願発明6-1の「グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、(1)前記スチレン系樹脂粒子全体で、3?15重量%」を満足している。
以上のことから、本願発明6-1と引用発明2Aとは、

「スチレン系樹脂及びグラファイトを含むスチレン系樹脂粒子であり、
前記グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、
(1)前記スチレン系樹脂粒子全体で、3?15重量%含まれるスチレン系樹脂粒子と、
発泡剤とを含む発泡性粒子。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。

<相違点4>
スチレン系樹脂粒子に含まれるグラファイトについて、本願発明6-1は「(2)前記スチレン系樹脂粒子全体に含まれるグラファイトの量をX重量%とし、表層部分に含まれるグラファイトの量をY重量%とした場合、X≧1.1×Yの関係を満たすように含まれる」と特定するのに対し、引用発明2Aは、この点を特定しない点。

以下、相違点4について検討する。
本願明細書において、相違点4に係るスチレン系樹脂粒子は、「スチレン系樹脂粒子の製造方法は、グラファイトを粒子中心部分に偏在できさえすれば、特に限定されない。例えば、水性懸濁液中で、グラファイトを含むスチレン系樹脂製の種粒子に、単量体混合物を吸収させる工程と、吸収させた後又は吸収させつつ単量体混合物の重合を行う工程とを含む、いわゆるシード重合法により製造することが簡便である。」(本願明細書の段落【0021】)と記載されている一方で、引用発明2Aのポリスチレン粒子は、「ポリスチレン(錦湖石油化学(株);GP150)100kgに黒鉛(現代コマ産業(株);HCN-905)10kgを投入して混合し、この混合組成物を2軸成型機にて230℃で溶融させ、水中ペレット化機(Under water cutting)を利用し、粒子の均一な黒鉛が含まれた、2.0mm^(3)以下の平均体積を有するマイクロペレットを得、100L反応機内に超純水40kgと分散剤(トリカルシウムフォスフェイト;デュボン乳化)0.2kgを投入し、かつ攪拌し、前記黒鉛の含まれたマイクロペレット20kgを投入し、次いで、60℃まで反応機の温度を昇温し、スチレン単量体(Styrene Monomer;SK社)5kgに難燃剤(ヘキサブロモシクロドデカン;GLC;CD75^(TM))1kg、低温開始剤(ベンゾイルパーオキサイド;ハンソルケミカル社)0.05kg、高温開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート;Hosung Chemex社)0.03kgを溶解させ、2時間の間投入し、それから、反応機の入口を閉じてスチレン単量体15kgを60℃から125℃まで3.5時間の間昇温しながら、徐々に投入し、重合を進めて得」ていて、前記4の相違点2での検討と同様に、かかる製造条件は本願明細書の前記記載と一致しているから、引用発明2Aの「ポリスチレン粒子」(スチレン系樹脂粒子)においても、スチレン系樹脂粒子全体に含まれるグラファイトの量をX重量%とし、表層部分に含まれるグラファイトの量をY重量%とした場合、X≧1.1×Yの関係を満たす蓋然性が高い。
そうすると、相違点4は実質的な相違点ではない。

したがって、本願発明6-1は引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

7 本願発明9-1と引用発明2Bとの対比・判断
(1)本願発明9-1
本願発明9-1は、上記5(1)に記載のとおりである。
(2)対比・判断
引用発明2Bと本願発明9-1とを対比する。
引用発明2Bの「ポリスチレン(錦湖石油化学(株);GP150)」と黒鉛を含むマイクロペレットを核としてスチレン単量体が重合された樹脂を合わせたものが、本願発明9-1の「スチレン系樹脂」に相当する。
引用発明2Bの「黒鉛(現代コマ産業(株);HCN-905)」、「ポリスチレン粒子」は、それぞれ、本願発明9-1の「グラファイト」、「スチレン系樹脂粒子」に相当する。
引用発明2Bの「マイクロペレット」は、水に懸濁させ、核重合を実施するものであるから、本願発明9-1における「種粒子」に相当する。
引用発明2Bのポリスチレン粒子(スチレン樹脂粒子)に含まれる黒鉛(グラファイト)の配合量は、ポリスチレン粒子と黒鉛の合計量に対して、ポリスチレン粒子(スチレン系樹脂粒子)全体で、4.5重量%(マイクロペレット20kg中の黒鉛は、20×10/(100+10)=1.8kgであり、スチレン系樹脂の合計量は、スチレン単量体がすべて重合されたとすれば、18.2+5+15=38.2であるから、1.8/(1.8+38.2)=0.045)である。そうすると、引用発明2Bのポリスチレン粒子は、本願発明9-1の「グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、(1)前記スチレン系樹脂粒子全体で、3?15重量%」を満足している。
引用発明2Bの「100L反応機内に超純水40kgと分散剤(トリカルシウムフォスフェイト;デュボン乳化)0.2kgを投入し、かつ攪拌し、前記黒鉛の含まれたマイクロペレット20kgを投入し、次いで、60℃まで反応機の温度を昇温し、スチレン単量体(Styrene Monomer;SK社)5kgに難燃剤(ヘキサブロモシクロドデカン;GLC;CD75^(TM))1kg、低温開始剤(ベンゾイルパーオキサイド;ハンソルケミカル社)0.05kg、高温開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート;Hosung Chemex社)0.03kgを溶解させ、2時間の間投入し、それから、反応機の入口を閉じてスチレン単量体15kgを60℃から125℃まで3.5時間の間昇温しながら、徐々に投入し、重合を進めて得」る工程は、本願発明9-1における「グラファイトを含むスチレン系樹脂製の種粒子に、スチレン系単量体を吸収させ重合させることにより前記スチレン系樹脂粒子を得ること」に相当することは明らかである。
そうすると、本願発明9-1と引用発明2Bとは、

「スチレン系樹脂及びグラファイトを含むスチレン系樹脂粒子の製造方法であり、
前記グラファイトが、前記スチレン系樹脂とグラファイトの合計量に対して、
(1)前記スチレン系樹脂粒子全体で、3?15重量%含まれ、
グラファイトを含むスチレン系樹脂製の種粒子に、スチレン系単量体を吸収させ重合させることにより前記スチレン系樹脂粒子を得る、スチレン系樹脂粒子の製造方法。」という点で一致し、以下の点で一応相違している。

<相違点5>
本願発明9-1においては、製造するスチレン系樹脂粒子に含まれるグラファイトに関して、「(2)前記スチレン系樹脂粒子全体に含まれるグラファイトの量をX重量%とし、表層部分に含まれるグラファイトの量をY重量%とした場合、X≧1.1×Yの関係を満たすように含まれ」と特定するのに対して、引用発明2Bは、この点を特定しない点。

以下、相違点5について検討する。
上記6における相違点4の検討のとおり、引用発明2Bの「ポリスチレン粒子」においても、スチレン系樹脂粒子全体に含まれるグラファイトの量をX重量%とし、表層部分に含まれるグラファイトの量をY重量%とした場合、X≧1.1×Yの関係を満たす蓋然性が高い。
そうすると、相違点5は実質的な相違点ではない。

したがって、本願発明9-1は引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

8 審判請求人の主張の検討
審判請求人は、平成27年12月4日提出の審判請求書において、2015年8月24日に積水化成品工業(株)高野雅之作成の「特願2012-214381号(本願)への拒絶理由通知に挙げられた引用文献の追試験」に基づいて、引用文献の実施例1では、全く粒子が得られないことを根拠に、引用文献に記載の事項を引用発明と認定することはできないと主張している。
しかしながら、前記2015年8月24日に積水化成品工業(株)高野雅之が作成した「特願2012-214381号(本願)への拒絶理由通知に挙げられた引用文献の追試験」は、少なくとも下記の点で引用文献の実施例1を再現しているものとはいえないから、当該主張は採用できない。
また、カーボンブラックの重合阻害が周知であってもグラファイトについては同様の阻害があるかどうか不明であることに加え、カーボンブラックの重合阻害を回避する方法が周知であること、また、引用文献においては、具体的な複数の実施例で粒子が得られていることが記載されていることも踏まえると、引用発明が実施不可能とする理由は特段見出すことができない。

(1)追試験では、マイクロペレットに配合する黒鉛の種類が異なるとともに、マイクロペレットの製造方法についても記載がないから、追試験は引用文献の実施例1と同じマイクロペレットを利用しているとはいえない。
(2)追試験は、重合工程の温度プロファイル、滴下時間について、配合量(スケール)が1/20になっているにもかかわらず、その影響を考慮せず、実施例1に記載のままのプロファイルとなっていて、スケールの観点を欠如しているから再現になっていない。
(3)実施例1における「次いで、60℃まで反応機の温度を昇温し、スチレン単量体(Styrene Monomer;SK社)5kgに難燃剤(ヘキサブロモシクロドデカン;GLC;CD75^(TM))1kg、低温開始剤(ベンゾイルパーオキサイド;ハンソルケミカル社)0.05kg、高温開始剤(t-ブチルパーオキシベンゾエート;Hosung Chemex社)0.03kgを溶解させ、2時間の間投入し」は、引用文献の「本発明の実施において、より正確な工程を紹介すれば、超純水、黒鉛の含まれたマイクロペレット、分散剤を反応機に投入し、分散を保持させる。この過程が完了すると、反応機の温度を60?90℃の間に上昇/維持させ、スチレン系単量体、開始剤、気泡調節剤、難燃剤、C_(6)?C_(10)芳香族炭化水素を2?3時間以上維持しながら徐々に投入する。その後、反応機の入口を閉じてから、残りのスチレン単量体を投入する。この過程は、温度を60?90℃から100?130℃まで3?6時間の間、昇温すると共に、残りのスチレン単量体を徐々に投入しながら行われる。このように重合が終了となり、発泡剤を投入し、含浸を同時に進める。含浸は、発泡剤を投入した後、100?130℃で3?6時間保持することで、黒鉛の含まれた発泡性ポリスチレン粒子の新規核重合を完了するのである。」(摘示オ)との記載、及び、当業者の技術常識から、難燃剤、重合開始剤を溶解させたスチレン単量体を2時間かけて滴下していると認められるが、追試験における重合工程の温度プロファイルとして記載されているのは


」であって、「St滴下3.5hr」との記載があるのに対して、「開始剤溶解St」については、そのような記載がないから、難燃剤と開始剤を含有したスチレン単量体を滴下しているとは認識できない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項6及び9に係る発明は、その優先日前に頒布された特表2009-536687号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-24 
結審通知日 2017-03-28 
審決日 2017-04-10 
出願番号 特願2012-214381(P2012-214381)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 裕介繁田 えい子  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 大島 祥吾
西山 義之
発明の名称 スチレン系樹脂粒子、その製造方法、発泡性粒子、発泡粒子及び発泡成形体  
代理人 金子 裕輔  
代理人 稲本 潔  
代理人 野河 信太郎  
代理人 甲斐 伸二  
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