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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1328609 |
審判番号 | 不服2016-4508 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-25 |
確定日 | 2017-05-25 |
事件の表示 | 特願2012- 26247「遮光層形成用樹脂組成物、遮光層形成用樹脂組成物から構成される遮光層を備えたカラーフィルタおよびカラーフィルタを備えた表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月22日出願公開、特開2013-164457〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成24年2月9日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略以下のとおりである。 平成27年 7月 9日付け:拒絶理由通知書(同年同月14日発送) 平成27年 9月 9日提出:意見書 平成27年 9月 9日提出:手続補正書 平成28年 1月 6日付け:拒絶査定(同年同月12日送達) 平成28年 3月25日提出:審判請求書 平成28年 3月25日提出:手続補正書(以下、この手続補正書による補正を「本件補正」という。) 第2 補正の却下の決定 [結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は、平成27年9月9日提出の手続補正書による補正後(以下、「本件補正前」という。)の特許請求の範囲の請求項1についてするものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1が次の(1)のとおりであったものを、次の(2)のとおりに補正するものである(なお、下線は、本件補正による補正箇所を示すために、当審において付した。)。 (1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1 「基板を準備する工程と、 前記基板上に、所定の間隙を空けて所定の位置に複数の着色層を形成する着色層形成工程と、 各着色層の表面を撥液化する撥液処理工程と、 各着色層間の前記間隙に遮光層形成用樹脂組成物を含む塗工液を塗布する塗布工程と、 前記塗工液を乾燥させ、これによって各着色層間に遮光層を形成する工程と、を備えるカラーフィルタの製造方法に使用される遮光層形成用樹脂組成物であって、 前記遮光層形成用樹脂組成物は、黒色組成物および分散剤を含む黒色組成物分散体と、熱硬化性を有するバインダーとを有し、 前記黒色組成物の含有比率は、遮光層形成用樹脂組成物の固形分100重量部当り30?75重量部の範囲内となっており、 前記バインダーの含有比率は、遮光層形成用樹脂組成物の固形分100重量部当り25?70重量部の範囲内となっていることを特徴とする遮光層形成用樹脂組成物。」 (2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 「基板を準備する工程と、 前記基板上に、所定の間隙を空けて所定の位置に複数の着色層を形成する着色層形成工程と、 各着色層の表面を撥液化する撥液処理工程と、 各着色層間の前記間隙に遮光層形成用樹脂組成物を含む塗工液を塗布する塗布工程と、 前記塗工液を乾燥させ、これによって各着色層間に遮光層を形成する工程と、を備えるカラーフィルタの製造方法に使用される遮光層形成用樹脂組成物であって、 前記遮光層形成用樹脂組成物は、黒色組成物および分散剤を含む黒色組成物分散体と、熱硬化性を有するバインダーとを有し、 前記黒色組成物の含有比率は、遮光層形成用樹脂組成物の固形分100重量部当り30?75重量部の範囲内となっており、 前記バインダーの含有比率は、遮光層形成用樹脂組成物の固形分100重量部当り25?70重量部の範囲内となっており、 各着色層間の前記間隙に塗布された、前記遮光層形成用樹脂組成物を含む前記塗工液の厚みは、前記着色層の厚みよりも大きく、 前記塗工液を乾燥させることによって各着色層間に形成される前記遮光層の厚みは、前記着色層の厚みよりも小さいことを特徴とする遮光層形成用樹脂組成物。」 2 補正の適否について (1) 補正の目的及び新規事項の追加の有無について 本件補正は、本願発明の「遮光層形成用樹脂組成物」について、本件出願の願書に最初に添付した明細書の段落【0062】?【0067】及び図6の記載に基づいて、 「各着色層間の前記間隙に塗布された、前記遮光層形成用樹脂組成物を含む前記塗工液の厚みは、前記着色層の厚みよりも大きく、前記塗工液を乾燥させることによって各着色層間に形成される前記遮光層の厚みは、前記着色層の厚みよりも小さいことを」と限定するものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすとともに、同条5項2号に掲げる事項を目的とするものである。 (2) 独立特許要件について 前記(1)で述べたように、請求項1についての本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正後発明1」という。)について、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 ア 本件補正後発明1 本件補正後の請求項1の記載は、上記「1 本件補正の内容」の「(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1 」において記載したとおりのものである。 イ 引用例及びその記載事項 (ア)引用例1 本件出願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された刊行物である、特開2002-55223号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、当合議体が付したものである。)。 a 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、カラーテレビ、パーソナルコンピュータ、パチンコ遊技台に使用されているカラー液晶素子の構成部材であるカラーフィルタ等光学素子の製造方法に関し、さらには、該製造方法により製造される光学素子、及び該光学素子の一つであるカラーフィルタを用いてなる液晶素子に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、パーソナルコンピュータの発達、特に携帯用パーソナルコンピュータの発達に伴い、液晶ディスプレイ、特にカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。しかしながら、さらなる普及のためにはコストダウンが必要であり、特にコスト的に比重の重いカラーフィルタのコストダウンに対する要求が高まっている。 【0003】従来から、カラーフィルタの要求特性を満足しつつ上記の要求に応えるべく、種々の方法が試みられているが、未だ全ての要求特性を満足する方法は確立されていない。以下にそれぞれの方法を説明する。 ・・・略・・・ 【0005】第二の方法は顔料分散法であり、近年最も盛んに行われている。この方法は、先ず透明基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをパターニングすることにより、単色のパターンを得る。この工程を3回繰り返すことにより、R、G、Bの3色の着色部からなる着色層を形成する。 ・・・略・・・ 【0007】第四の方法としては、熱硬化型の樹脂に顔料を分散し、印刷を3回繰り返すことにより、R、G、Bを塗り分けた後、樹脂を熱硬化させることにより、着色層を形成するものである。いずれの方法においても、着色層の上に保護層を形成するのが一般的である。 【0008】カラーフィルタの着色部は規則的に配置され、通常、各着色部間には表示コントラストを高めるために遮光部が設けられている。以下に遮光部の形成方法について述べる。 ・・・略・・・ 【0010】第二の方法は、前記した顔料分散法を用いた方法であり、樹脂BMと称される。この方法では、透明基板上に遮光材料を分散した感光性樹脂層を形成し、マスクを介してパターニングすることにより遮光パターンを得る。また、その立体形状を利用してインクジェット方式で着色部を形成する場合にも用いられる。特開平9-127327号公報には、撥インク性を有する遮光部の開口部にインクジェット記録装置にて着色インクを充填し、カラーフィルタを製造する方法が開示されている。」 b 「【0012】 【発明が解決しようとする課題】上記した従来の遮光部の製造方法には、以下のような問題点があった。 ・・・略・・・ 【0014】樹脂BMは、必要な光学濃度を得るためには膜厚が大きくなることや、遮光性の高い材料を光パターニングするために解像度を得にくいといった問題点がある。 ・・・略・・・ 【0016】この他にも、上記カラーフィルタの着色部の形成方法で述べた印刷法や、近年研究が進んでいるインクジェット法なども理論的には応用できるが、高精細化が進んだ現在のカラーフィルタに応用するには解像度の面で高度な特殊技術が要求されるために今のところ量産化に対応できていない。 【0017】金属BMは上記したように、環境安全的に見れば樹脂BMに変更すべきところであるが、未だ金属BMが主流である理由の一つには、樹脂BMの製造安全性やコストの面での課題が多いことが挙げられる。 【0018】本発明の課題は、上記環境安全性や製造安定性、コスト等の問題点を解決し、簡便な方法で遮光部を形成して、信頼性の高い光学素子をより簡易に歩留まり良く製造し、安価に提供することにある。また、本発明は、該光学素子を用いて、カラー表示特性に優れた液晶素子をより安価に提供するものである。」 c 「【0019】 【課題を解決するための手段】本発明の第一は、支持基板上に複数の画素と隣接する画素間に位置する黒色樹脂組成物からなる遮光部とを少なくとも有する光学素子の製造方法であって、支持基板上に画素を形成する工程と、上記画素の少なくとも上面に撥インク化処理を施す工程と、隣接する画素の間隙にインクジェット方式によりインクを付与して遮光部を形成する工程と、を有することを特徴とする光学素子の製造方法である。 ・・・略・・・ 【0021】本発明の第二は、支持基板上に複数の画素と隣接する画素間に位置する遮光部とを少なくとも有し、上記本発明の光学素子の製造方法により製造されたことを特徴とする光学素子である。 【0022】上記本発明の第二は、上記支持基板が透明基板であり、複数色の着色部を備えたカラーフィルタであること、該着色部上に保護層を有すること、表面に透明導電膜を有すること、を好ましい態様として含むものである。 【0023】さらに本発明の第三は、一対の基板間に液晶を挟持してなり、一方の基板が上記本発明の光学素子の一態様であるカラーフィルタを用いて構成されたことを特徴とする液晶素子である。」 d 「【0024】 【発明の実施の形態】本発明は、先に画素を形成し、該画素の表面に撥インク化処理を施した上でインクジェット方式により該画素間隙にインクを付与して遮光部を形成することに特徴を有する。そのため本発明においては、インクを付与する際に、画素表面の撥インク性によって多量のインクでも画素上面にのらずに十分に画素間隙に保持され、画素上にインクが残って画素を遮光する恐れがなく、また、樹脂組成物からなる遮光部を十分な厚さで形成することができる。」 e 「【0030】以下に、図面を参照して本発明の光学素子の製造方法について説明する。 【0031】図1は本発明の光学素子の製造方法を模式的に示す工程図である。以下に各工程について説明する。尚、以下の工程(a)?(d)は図1の(a)?(d)に対応する。また、図1の各工程において紙面左側の(a-1)?(d-1)は上方より見た平面模式図、紙面右側の(a-2)?(d-2)は(a-1)?(d-1)のA-B断面模式図である。図中、1は支持基板、2は画素、3はインクジェットヘッド、4はインク、5は遮光部である。 【0032】工程(a) 支持基板1上に画素2を形成する。支持基板1は、図5に例示したカラーフィルタを製造する場合には透明基板71であり、一般にはガラス基板が用いられるが、液晶素子を構成する目的においては、所望の透明性、機械的強度等の必要特性を有するものであれば、プラスチック基板なども用いることができる。 【0033】画素2はカラーフィルタでは着色部73であり、その形成方法としては、先に示した染色法や顔料分散法、電着法、印刷法等を用いることができ、特に限定されるものではない。これらの方法の中では、エッジ形状の優れる顔料分散法や、印刷法が好適である。・・・ 【0034】工程(b) 画素2の少なくとも上面に撥インク化処理を施す。撥インク化処理としては、フッ素化処理・・・が挙げられる。 【0035】上記フッ素化処理としては、工程が簡単であり画素2表面を良好にフッ素化して撥インク性を増大させることができる方法として、少なくともフッ素原子を含有するガスを導入してプラズマ照射を行うプラズマ処理が好ましく用いられる。 ・・・略・・・ 【0037】さらに、導入ガスとしては、必要に応じて酸素、アルゴン、ヘリウム等のガスを併用しても良い。本工程においては、上記CF_(4)、CHF_(3)、C_(2)F_(6)、SF_(6)、C_(3)F_(8)、C_(5)F_(8)から選択されるハロゲンガスを1種以上とO2との混合ガスを用いると、本工程においてフッ素化処理される画素2表面の撥インク性の程度を制御することが可能になる。但し、当該混合ガスにおいて、O_(2)の混合比率が30%を超えるとO_(2)による酸化反応が支配的になり、撥インク性向上効果が妨げられるため、また、O_(2)混合比率が30%を超えると樹脂に対するダメージが顕著になるため、当該混合ガスを用いる場合にはO_(2)の混合比率が30%以下の範囲で使用する必要がある。 ・・・略・・・ 【0039】本工程において、撥インク性を高くすればするほど後工程において画素2の間隙に充填できるインク量が増すため材料設計や製造時のプロセスマージンを得ることが容易になるが、状況によっては白抜けを発生させてしまうことがある。 【0040】即ち、高度に撥インク化処理された表面に囲まれたポイント、具体的には90°近傍以下の角度で挟まれた角部において、使用する材料の組み合わせによっては白抜けを起こすことがある。 【0041】例えばカラーフィルタの遮光部の場合、その形状は格子状もしくはライン状が一般的であるが、場合によってはTFTの光による誤動作を防止するべくTFTを遮光するために、遮光部の形状を複雑化する必要が生じる。図2にその一例を示す。図中、22は着色部(画素)、25は遮光部、26は遮光部25のうちのTFT誤動作防止用遮光領域、27は白抜けである。図2に示すように、画素22の側壁で90°に挟まれた領域26では、両側壁の撥インク性が高いとインクがはじかれて白抜け27が発生しやすい。 【0042】従って、このような白抜けを防止する上で、当該撥インク化処理は画素2上面のみに施すことが望ましく、上記したフッ素化処理のような工程の場合には、画素2の側壁をレジストによって保護することが望ましい。 ・・・略・・・ 【0045】現像により、画素2上のレジスト層31を除去することによって、画素2間隙を埋めるレジストパターン33が得られ(図3(d))、この状態で撥インク化処理を施す(図3(e))ことによって画素2の上面のみが撥インク化処理され、処理後にレジストパターン33を除去する(図3(f))。 ・・・略・・・ 【0052】工程(c) インクジェット記録装置を用いて、インクジェットヘッド3より、インク4を画素2の間隙に付与する。インクジェットとしては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)タイプ、或いは圧電素子を用いたピエゾジェットタイプ等が使用可能である。また、インク4としては、硬化後に黒色の樹脂組成物層を形成するべく、硬化成分、水、溶剤を少なくとも含むものが好ましい。以下に、インクの組成についてさらに詳細に説明する。 【0053】〔1〕着色剤 本発明でインク中に含有させる着色剤としては、染料系及び顔料系共に使用可能であるが、十分な遮光性を少量で得るためには顔料系の着色剤が好ましい。具体的には、通常樹脂BMで用いられているカーボンブラックが好ましく用いられ、該カーボンブラックとしては、チャネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラックと呼ばれているコンタクト法で製造されたもの、ガスファーネストブラック、オイルファーネストブラックと呼ばれているファーネスト法で製造されたもの、サーマルブラック、アセチレンブラックと呼ばれているサーマル法で製造されたものなどを用いることができるが、特に、チャネルブラック、ガスファーネストブラック、オイルファーネストブラックが好ましい。さらに必要に応じて、R、G、Bの顔料の混合物などを加えても良い。また、着色剤の添加量としては、後述する硬化成分と同量以下であることが好ましい。 【0054】〔2〕硬化成分 後工程におけるプロセス耐性、信頼性等を考慮した場合、熱処理或いは光照射等の処理により硬化し、着色剤を固定化する成分、即ち架橋可能なモノマー或いはポリマー等の成分を含有することが好ましい。特に、後工程における耐熱性を考慮した場合、硬化可能な樹脂組成物を用いることが好ましい。具体的には、例えば基材樹脂として、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アミド基等の官能基を有するアクリル樹脂、シリコーン樹脂;またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体或いはそれらの変性物;またはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等のビニル系ポリマーが挙げられる。さらに、これらの基材樹脂を光照射或いは加熱処理により硬化させるための架橋剤、光開始剤を用いることが可能である。具体的には、架橋剤としては、メチロール化メラミン等のメラミン誘導体が、また光開始剤としては重クロム酸塩、ビスアジド化合物、ラジカル系開始剤、カチオン系開始剤、アニオン系開始剤等が使用可能である。また、これらの光開始剤を複数種混合して、或いは他の増感剤と組み合わせて使用することもできる。 【0055】〔3〕溶剤 本発明で使用されるインクの媒体としては、水及び有機溶剤の混合溶媒が好ましく使用される。水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用することが好ましい。 【0056】有機溶剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の炭素数1?4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン類またはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2?4個の炭素を含有するアルキレングリコール類;グリセリン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン等の中から選択することが好ましい。 【0057】また、上記成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、沸点の異なる2種類以上の有機溶剤を混合して用いたり、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を添加しても良い。 【0058】工程(d) 熱処理、光照射等必要な処理を施し、インク4中の溶剤成分を除去して硬化させることにより、遮光部5を形成する。 【0059】さらに、カラーフィルタの場合には、前記したように、必要に応じて保護層や透明導電膜を形成する。この場合の保護層としては、光硬化タイプ、熱硬化タイプ、或いは光熱併用硬化タイプの樹脂材料、或いは、蒸着、スパッタ等によって形成された無機膜等を用いることができ、カラーフィルタとした場合の透明性を有し、その後の透明導電膜形成プロセス、配向膜形成プロセス等に耐えうるものであれば使用可能である。また、透明導電膜は、保護層を介さずに着色部上に直接形成しても良い。」 f 「【0062】 【実施例】(実施例1) 〔着色部(画素)の形成〕ガラス基板(コーニング製「1737」)上に、顔料分散レジスト(富士フィルムオーリン製「カラーモザイクシリーズ」)をスピンコートにより塗布し、所定の露光、現像処理をR、G、Bの各色について繰り返し行い、膜厚が1μm、75μm×225μmの長方形の画素が20μmの間隔をおいて横にR、G、Bが繰り返され、縦に同一色が配列された着色部パターンを得た。 【0063】〔撥インク化処理〕上記着色部パターンに、平行平板型のプラズマ処理装置を用いて、以下の条件にてプラズマ処理を施した。 【0064】 使用ガス :CF_(4) ガス流量 :80sccm 圧力 :8Pa RFパワー :150W 処理時間 :60sec 【0065】〔撥インク性の評価〕上記撥インク化処理後の基板の純水に対する接触角を測定したところ、 着色部上面:125° ガラス基板表面:15° であった。 【0066】〔インクの調整〕下記に示す組成からなるアクリル系共重合体を熱硬化成分として用い、以下の組成にてR、G、Bの各インクを調製した。該インクは1mm^(2)当たり約20nlの付与量(キュア後の膜厚約1.5μm)で十分とされる光学濃度(OD)4以上となるように設計した。 【0067】硬化成分 メチルメタクリレート 50重量部 ヒドロキシエチルメタクリレート 30重量部 N-メチロールアクリルアミド 20重量部 【0068】インク カーボンブラック 5重量部 ジエチレングリコール 30重量部 エチレングリコール 20重量部 イオン交換水 40重量部 上記硬化成分 5重量部 【0069】〔遮光部の形成〕吐出量20plのインクジェットヘッドを具備したインクジェット記録装置を用い、上記基板の着色部間隙に対して、上記インクを1mm^(2)当たり10?50nlの範囲で10nlおきに付与量を変化させて付与した。次いで、90℃で10分間、引き続き230℃で30分間の熱処理を行ってインクを硬化させて遮光部(ブラックマトリクス)とし、インク付与量の異なる7種類のカラーフィルタを作製した。 【0070】〔カラーフィルタの評価〕得られた7種類のカラーフィルタを光学顕微鏡で観察したところ、全てのカラーフィルタにおいて、遮光部の着色部へのはみ出し、白抜けは観察されなかった。また、付与量30nlのカラーフィルタに保護層、透明導電膜を設けた液晶素子を構成したところ、良好な表示品質を得た。 【0071】(実施例2)実施例1と同じガラス基板上に、凹版オフセット印刷法にてR、G、Bの各色について繰り返し印刷を行って、膜厚が3μm、75μm×225μmの長方形の一角に30μm角のTFT誤動作防止用遮光領域分の領域を欠いた形状の着色部を20μmの間隔をおいて横にR、G、Bが繰り返され、縦に同一色が配列された着色部パターンを得た。また、当該工程において間接転写体表面にシリコーンゴム(信越化学製「KS779H」)をコーティングし、パターン転写時に同時に着色部上面のみに撥インク化処理を施した。 【0072】〔撥インク性の評価〕上記基板の純水に対する接触角を測定したところ、 着色部上面:102° ガラス基板表面:28° であった。 【0073】上記基板の着色部の間隙に実施例1と同様にしてインクを付与し、遮光部を形成した。 【0074】〔カラーフィルタの評価〕得られた7種類のカラーフィルタを光学顕微鏡で観察したところ、インク付与量40nl/mm^(2)までのカラーフィルタにおいて、遮光部の着色部へのはみ出しは観察されなかった。また、これらのカラーフィルタで、TFT誤動作防止用遮光領域の角部の白抜けは観察されなかった。また、付与量30nlのカラーフィルタに保護層、透明導電膜を設けた液晶素子を構成したところ、良好な表示品質を得た。」 (当合議体注:段落【0066】の「R、G、Bの各インクを調製した」の記載は、「遮光部のインクを調製した」の誤記である。) g 「【0082】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、画素上へのはみ出し白抜けのない遮光部を備えた信頼性の高いカラーフィルタを、環境安全性の優れた簡易なプロセスによって歩留まり良く製造することができ、よって、上記カラーフィルタを用いて、カラー表示特性に優れた液晶素子をより安価に提供することができる。」 h 「【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の光学素子の製造方法の一実施形態の工程図である。 【図2】インクジェット方式により形成される遮光部における白抜けを示す模式図である。 ・・・略・・・ 【符号の説明】 1 支持基板 2 画素 3 インクジェットヘッド 4 インク 5 遮光部 22 着色部 25 遮光部 26 TFT誤動作防止用遮光領域 27 白抜け」 i 「【図1】 」 j 「【図2】 」 k 引用例1の段落【0066】?【0067】(上記f参照)には、以下のインクが記載されている(以下、「引用発明」という。)。 「以下に示す組成(熱硬化成分の組成)からなるアクリル系共重合体を熱硬化成分として用い、 以下に示す組成(インクの組成)にて調製されたインクであって、キュア後の膜厚約1.5μmで十分とされる光学濃度(OD)4以上となるように設計された、 インク。 熱硬化成分の組成 メチルメタクリレート 50重量部 ヒドロキシエチルメタクリレート 30重量部 N-メチロールアクリルアミド 20重量部 インクの組成 カーボンブラック 5重量部 ジエチレングリコール 30重量部 エチレングリコール 20重量部 イオン交換水 40重量部 上記熱硬化成分 5重量部」 (イ)引用例2 本件出願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された刊行物である、国際公開第2008/123340号(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、当合議体が付したものである。)。 a 「[0001] 本発明は、スリットコーターなどの省液対応の塗工装置によって塗膜を形成し得て、液晶ディスプレイ等に用いられるカラーフィルターの製作のためのカラーフィルター用遮光性樹脂組成物及びこれを用いて形成されるカラーフィルターに関するものである。」 b 「[0014] 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明のカラーフィルター用遮光性樹脂組成物(以下、遮光性樹脂組成物ともいう)は、溶剤を80?90重量%含有し、好ましくは溶剤を除く固形分を10?20重量%含有するのがよい。ここで、溶剤を除く固形分とは、硬化後に残存する成分であり、モノマーや液状界面活性剤のような液状物を含む。」 c 「[0030] 本発明のカラーフィルター用遮光性樹脂組成物は、溶剤を除く固形分を含む。固形分には、着色剤としての黒色顔料、感光性樹脂、界面活性剤及び光重合開始剤等がある。」 d 「[0034] 黒色顔料としては、単独又は複数の顔料、染料からなる着色剤がある。本発明においては、着色剤の少なくとも一部が顔料で全体として黒色を示すものを黒色顔料という。黒色顔料としては、公知の顔料、染料等を用いることができるが、特に有機顔料を用いることが好ましく、カーボンブラックがより好ましい。これらは、目的とする遮光性に合わせて選択されればよく、その1種又は2種以上を併用して用いることができる。黒色顔料の配合量は、各原色の目的とする彩度に合わせて決定されればよいが、溶剤を除く遮光性樹脂組成物の固形分中45?65重量%となるようにする。」 e 「[0037] 本発明のカラーフィルター用遮光性樹脂組成物には、黒色顔料を安定に分散させる目的で、分散剤を配合することができる。ここで、分散剤としては、分散剤、分散促進剤等として市販されているもの又はその同等品であれば特に限定されるものではないが、例えば、カチオン性高分子系分散剤、アニオン性高分子系分散剤、ノニオン性高分子系分散剤等を挙げることができ、特に特開平9-169821号公報に開示されているカチオン性高分子系分散剤等が好ましい。これら分散剤の配合量は特に限定されるものではないが、カラーフィルター用遮光性樹脂組成物の固形分中の3?23重量%であることが好ましく、4?20重量%であることがより好ましい。また、分散剤の配合量は、分散安定性の点で黒色顔料に対して10?100重量%であることが好ましく、12?40重量%であることがより好ましい。なお、樹脂類のような高粘度物質は一般に分散を安定させる作用をも有するが、分散促進能を有しないものは分散剤とは扱わない。しかし、分散を安定させる目的で使用することを制限するものではない。」 (ウ)引用例3 本件出願の出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された刊行物である、特開2009-145884号公報(以下、「引用例3という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、当合議体が付したものである。)。 a 「【0001】 本発明は、インクジェット法にて画素部分を形成してなるカラーフィルターに適したブラックマトリックスを形成するための組成物およびその用途に関する。」 b 「【0018】 本発明の第1は、少なくとも色材、バインダー樹脂および溶媒を含むインクジェット法カラーフィルター用ブラックマトリックス形成用組成物であって、該組成物から溶媒を除いた固形分の軟化点が110℃以下であることを特徴とする、インクジェット法カラーフィルター用ブラックマトリックス形成用組成物に存する。・・・略・・・」 c 「【0019】 [1]ブラックマトリックス用組成物 まず、本発明のインクジェット法カラーフィルター用ブラックマトリックス形成用組成物(以下、単に「ブラックマトリックス用組成物」と称することがある)について説明する。 [1-1]色材 本発明のブラックマトリックス用組成物は、必須成分として色材を含有する。色材としては、黒色の色材を用いることができるが、該黒色色材は、黒色色材を単独でも良く、又は赤、緑、青等の色材の混合によるものでも良い。また、これら色材は無機又は有機の顔料、染料の中から適宜選択することができる。」 d 「【0021】 ・・・略・・・ また、単独使用可能な黒色色材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、アニリンブラック、シアニンブラック等が挙げられる。」 e 「【0024】 ・・・略・・・ 本発明のブラックマトリックス用組成物において、色材の含有量は全固形分に対し、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上、より好ましくは20重量%以上であり、また通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。」 f 「【0026】 [1-2]バインダー樹脂 本発明のブラックマトリックス用組成物は、必須成分としてバインダー樹脂を含有する。・・・略・・・」 g 「【0074】 [1-5]分散剤 本発明のブラックマトリックス用組成物は、分散剤を含有することが好ましい。分散剤は、色材を微細に分散させ、且つ、その分散状態を安定化させる作用を有し、分散剤は品質安定上重要となる。」 h 「【0093】 これらの分散剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。 本発明のブラックマトリックス用組成物中の全固形分量に対するこれらの分散剤の割合は、通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上であり、通常10重量%以下、好ましくは6重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。分散剤の含有割合が少なすぎると、分散安定性が悪化し、再凝集や増粘等の問題が発生する場合がある。逆に多すぎると、相対的に顔料の割合が減るため、着色力が低くなったり、露光による架橋において感度が低下するおそれがある。」 (エ)引用例4 本件出願の出願前に頒布された刊行物である、特開2009-282096号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は、当合議体が付したものである。)。 a 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 複数色の着色部を備えたカラーフィルターの製造方法であって、 基板を準備する基板準備工程と、 前記基板上にフォトリソグラフィー法を用いて複数色の着色部を形成する着色部形成工程と、 前記基板上の隣接する前記着色部間に、遮光材料を含むインクをインクジェット方式で付与するインク付与工程と、 吐出された前記インクを乾燥させて、遮光部を形成する遮光部形成工程とを有することを特徴とするカラーフィルターの製造方法。 ・・・ 【請求項9】 前記インクは、カーボンブラックを含む遮光材料と、当該遮光材料を分散させる分散媒と、バインダー樹脂とを含むものである請求項1ないし8のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。 【請求項10】 請求項1ないし9のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。 【請求項11】 前記遮光部の高さは、前記複数色の着色部の高さよりも低いものである請求項10に記載のカラーフィルター。」 b 「【0023】 また、後述するようなカラーフィルターの製造方法を用いることにより、製造されるカラーフィルター1の遮光部13の高さは、着色部12の高さよりも低くすることができる。一般に、着色部および遮光部の表面上には、共通電極が形成されるため、着色部と遮光部の高さはそれぞれ同じ高さであるのが好ましいが、カラーフィルター1の遮光部13の高さが着色部12の高さよりも低いと、カラーフィルター1は、さらに高い明度を有するものとなる。また、このようなカラーフィルター1を備える画像表示装置は、より鮮明な画像表示を行うことができるものとなる。 なお、遮光部13の構成材料については、カラーフィルターの製造方法において詳述する。」 c 「【0063】 <遮光部(遮光部)形成工程> 次に、基板11上に付与されたインク3を乾燥させて、分散媒を除去することにより、遮光部13が形成される(1f)。これにより、カラーフィルター1が得られる。このように、本発明において、遮光部13は着色部12を形成した後にインクジェット方式でインク3を吐出することにより形成されるものである。これにより、前述した着色部形成工程において、着色部形成用組成物をフォトマスクを介して露光する際に、フォトマスクの位置がずれ、着色部12の形成位置がずれた場合でも、遮光部13と着色部12とが重なるのを確実に防止することができる。これにより、カラーフィルター1の生産性(歩留まり)を向上させることができる。また、上述したように、遮光部13と着色部12とが重ならない上に、各色の着色部12の表面は確実に平坦なものとなる。その結果、カラーフィルター1の明度、コントラスト比を優れたものとすることができる。 また、このように、インク3を乾燥させて形成される遮光部13の高さは、溶媒が除去されることにより、着色部12の高さよりも低くすることができる。これにより、カラーフィルター1の色度をより高いものとすることができる。」 ウ 対比 本件補正後発明1と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。 (ア) 引用発明の「インクの組成」における「カーボンブラック」は、本件補正後発明1における「黒色組成物」に相当する。 (イ) 引用発明の「インクの組成」における「アクリル系共重合体」である「熱硬化成分」は、「熱硬化」する成分であるから、「熱硬化性」を有する。 (ウ) また、引用発明の「熱硬化成分」は、技術的にみて、インク中のカーボンブラックを固定化する結着剤(バインダー)である(引用例1の段落【0054】の記載(上記イ(ア)e参照)からも確認できる事項である。)。 (エ) 上記(イ)及び(ウ)からみて、引用発明の「熱硬化成分」は、本件補正後発明1の「バインダー」に相当し、また、「熱硬化性を有する」の構成も具備する。 (オ) 引用発明の「インク」の各成分のうち、「ジエチレングリコール」、「エチレングリコール」、「イオン交換水」が「溶剤」であり、「カーボンブラック」及び「熱硬化成分」が「固形分」であることは、技術的にみて明らかである(引用例1の段落【0055】,【0056】及び【0069】の記載(上記イ(ア)e及びイ(ア)f参照)からも確認できる事項である。)。 (カ) そうしてみると、引用発明の「インク」のうち、「カーボンブラック」と「熱硬化成分」を併せたもの(以下「インク固形分」という。)と、本件補正後発明1の「遮光層形成用樹脂組成物」は、「組成物」である点で、共通する。 エ 一致点 本件補正後発明1と引用発明の「インク固形分」とは、以下の点において一致する。 「組成物であって、 前記組成物は、黒色組成物と、熱硬化性を有するバインダーとを有する、 組成物。」 オ 相違点 本件補正後発明1と引用発明の「インク固形分」とは、以下の点において相違する。 (相違点1) 本件補正後発明1は、「基板を準備する工程と、前記基板上に、所定の間隙を空けて所定の位置に複数の着色層を形成する着色層形成工程と、各着色層の表面を撥液化する撥液処理工程と、各着色層間の前記間隙に遮光層形成用樹脂組成物を含む塗工液を塗布する塗布工程と、前記塗工液を乾燥させ、これによって各着色層間に遮光層を形成する工程と、を備えるカラーフィルタの製造方法に使用される遮光層形成用樹脂組成物」であるのに対して、引用発明の「インク固形分」は、一応、これが明らかでない点。 (相違点2) 本件補正後発明1の「遮光層形成用樹脂組成物」は、黒色組成物「および分散剤を含む黒色組成物分散体」と、熱硬化性を有するバインダーとを有し、「前記黒色組成物の含有比率は、遮光層形成用樹脂組成物の固形分100重量部当り30?75重量部の範囲内となっており、前記バインダーの含有比率は、遮光層形成用樹脂組成物の固形分100重量部当り25?70重量部の範囲内となって」いるのに対して、引用発明の「インク固形分」は、「分散剤を含む黒色組成物分散体」の構成を具備するものとは特定されておらず、したがって、カーボンブラック及び熱硬化成分の含有比率についても、一応、判らない点。 (相違点3) 本件補正後発明1は、「各着色層間の前記間隙に塗布された、前記遮光層形成用樹脂組成物を含む前記塗工液の厚みは、前記着色層の厚みよりも大きく、前記塗工液を乾燥させることによって各着色層間に形成される前記遮光層の厚みは、前記着色層の厚みよりも小さい」というものであるのに対して、引用発明の「インク固形分」は、これが明らかでない点。 カ 当合議体の判断 (相違点1について) 引用発明の「インク」は、引用例1の段落【0062】?【0069】に実施例1として記載されたカラーフィルタの作製(以下「引用例1製造方法」という。)に使用されるものである(上記イ(ア)f参照)。 そこで、本件補正後発明1の「基板を準備する工程と、前記基板上に、所定の間隙を空けて所定の位置に複数の着色層を形成する着色層形成工程と、各着色層の表面を撥液化する撥液処理工程と、各着色層間の前記間隙に遮光層形成用樹脂組成物を含む塗工液を塗布する塗布工程と、前記塗工液を乾燥させ、これによって各着色層間に遮光層を形成する工程と、を備えるカラーフィルタの製造方法」と、引用例1製造方法を比較すると、以下のとおりとなる。 (ア) 基板を準備する工程、着色層形成工程 引用例1の段落【0062】の記載(上記イ(ア)f参照)からみて、引用例1製造方法は、「〔着色部(画素)の形成〕」として、「ガラス基板(コーニング製「1737」)上に、・・・着色部パターンを得」る工程(以下「着色部形成工程」という。)を具備する。ここで、引用例1製造方法の「ガラス基板(コーニング製「1737」)」及び「着色部」は、それぞれ、本件補正後発明1の「基板」及び「着色層」に相当する。また、引用例1製造方法における「着色部形成工程」は、本件補正後発明1の「着色層形成工程」に相当する。さらに、引用例1製造方法において、「着色部パターン」は、「所定の露光、現像処理をR、G、Bの各色について繰り返し行い、膜厚が1μm、75μm×225μmの長方形の画素が20μmの間隔をおいて横にR、G、Bが繰り返され、縦に同一色が配列された」というものである。したがって、引用例1製造方法における「着色部パターン」は、「所定の間隙を空けて所定の位置に」形成された、「複数の」ものといえる。 加えて、引用例1製造方法において、着色部形成工程に先立って、「ガラス基板(コーニング製「1737」)」を準備する工程(以下「ガラス基板準備工程」という。)があることは、自明であり、これは、本件補正後発明1の「基板を準備する工程」に相当する。 したがって、引用例1製造方法は、「ガラス基板準備工程」及び「着色部形成工程」として、本件補正後発明1の「基板を準備する工程」及び「前記基板上に、所定の間隙を空けて所定の位置に複数の着色層を形成する着色層形成工程」を具備する。 (イ) 撥液処理工程 引用例1の段落【0063】?【0065】の記載(上記イ(ア)f参照)からみて、引用例1製造方法は、「着色部形成工程」に続き、「〔撥インク化処理〕」として、「上記着色部パターンに、平行平板型のプラズマ処理装置を用いて」、「プラズマ処理を施し」、「基板の純水に対する接触角」を「着色部上面:125°」、「ガラス基板表面:15°」とする工程(以下「撥インク化処理工程」という。)を具備する。ここで、引用例1製造方法の「着色部上面」は、本件補正後発明1の「着色層の表面」に相当する。また、引用例1製造方法において「撥インク化処理工程」が「着色部パターン」全体に対して行われていることは、技術的にみて明らかである。そうしてみると、引用例1製造方法の「撥インク化処理工程」は、本件補正後発明の「撥液処理工程」に相当する。 したがって、引用例1製造方法は「撥インク化処理工程」として、本件補正後発明1の「各着色層の表面を撥液化する撥液処理工程」を具備する。 (ウ) 塗布工程 引用例1の段落【0069】の記載(上記イ(ア)f参照)からみて、引用例1製造方法は、「撥インク化処理工程」に続き、「〔遮光部の形成〕」として、「インクジェット記録装置を用い、上記基板の着色部間隙に対して、上記インクを・・・付与」する工程を具備する(以下「インク付与工程」という。)。ここで、引用例1製造方法の「インク」とは、引用発明の「インク」のことである(引用例1の段落【0066】?【0068】の記載を参照。)。そして、引用例1製造方法の「遮光部」、「インク」、「着色部間隙」及び「付与」は、それぞれ、本件補正後発明1の「遮光層」、「塗工液」、「各着色層間の前記間隙」及び「塗布」に相当する。また、引用例1製造方法は、「〔遮光部の形成〕」についてのものであるから、引用例1製造方法の「インク」は、「インク固形分」としての「遮光層形成用樹脂組成物を含む」ものといえる。また、引用例1製造方法の「インク付与工程」は、本件補正後発明1の「塗布工程」に相当する。 したがって、引用例1製造方法は「インク付与工程」として、本件補正後発明1の「各着色層間の前記間隙に遮光層形成用樹脂組成物を含む塗工液を塗布する塗布工程」を具備する。 (エ) 遮光層を形成する工程 引用例1の段落【0069】の記載(上記イ(ア)f参照)からみて、引用例1製造方法は、「インク付与工程」に続き、「90℃で10分間、引き続き230℃で30分間の熱処理を行ってインクを硬化させて遮光部(ブラックマトリクス)と」する工程(以下「遮光部形成工程」という。)を具備する。ここで、引用例1製造方法の「90℃で10分間、引き続き230℃で30分間の熱処理」により、引用例1製造方法の「インク」が乾燥させられることは、技術的にみて明らかである。また、引用例1製造方法は、この熱処理の結果、「インクを硬化させて遮光部(ブラックマトリクス)」を形成するものであるから、引用例1製造方法においては、熱処理によって「着色部間隙」の各々に「遮光部」が形成されるといえる。そうしてみると、引用例1製造方法の「遮光部形成工程」は、本件補正後発明1の「遮光層を形成する工程」に相当する。 したがって、引用例1製造方法は「遮光部形成工程」として、本件補正後発明1の「前記塗工液を乾燥させ、これによって各着色層間に遮光層を形成する工程」を具備する。 (オ) カラーフィルタの製造方法 以上(ア)?(エ)からみて、引用例1製造方法は、本件補正後発明1の「基板を準備する工程と、前記基板上に、所定の間隙を空けて所定の位置に複数の着色層を形成する着色層形成工程と、各着色層の表面を撥液化する撥液処理工程と、各着色層間の前記間隙に遮光層形成用樹脂組成物を含む塗工液を塗布する塗布工程と、前記塗工液を乾燥させ、これによって各着色層間に遮光層を形成する工程と、を備えるカラーフィルタの製造方法」に相当する。 ここで、前記(ウ)で述べたとおり、引用発明の「インク」は、引用例1製造方法に使用されるものである。また、引用発明の「インク」は、「インク固形分」を含むものである。 そうしてみると、引用発明の「インク固形分」は、「基板を準備する工程と、前記基板上に、所定の間隙を空けて所定の位置に複数の着色層を形成する着色層形成工程と、各着色層の表面を撥液化する撥液処理工程と、各着色層間の前記間隙に遮光層形成用樹脂組成物を含む塗工液を塗布する塗布工程と、前記塗工液を乾燥させ、これによって各着色層間に遮光層を形成する工程と、を備えるカラーフィルタの製造方法に使用される」ことに適した物ということができるから、結局、相違点1として挙げた点は、相違点ではない。 なお、この点は、引用例1の段落【0071】?【0073】に実施例2として記載されたカラーフィルタの作製(上記イ(ア)f参照)を考慮しても、同様である。 (相違点2について) 引用発明の「カーボンブラック」は、「熱硬化成分」とともにカラーフィルタの遮光部となるものであるから、その分散性が高い方が好ましいことは、当業者において明らかな事項である。また、「カラーフィルタの製造方法に用いる遮光層を形成するための樹脂組成物に、カーボンブラック等の黒色顔料の分散性を高めるために分散剤を含有させること」は、当業者における周知技術である(例えば、前記引用例2及び前記引用例3の記載事項(前記イ(イ)及びイ(ウ))を参照。)。 そうしてみると、引用発明のインクにおいて周知技術を採用することにより、引用発明の「カーボンブラック」を「カーボンブラック及び分散剤を含むカーボンブラック分散体」とすることは、当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項にすぎない。また、含有させる分散剤の量は、分散剤の種類にもよるが、固形分に対し4?20重量%(引用例2の段落[0037])、10重量%以下(引用例3の段落【0093】)といった程度が適切といえる。 ところで、引用発明の「インク固形分」において、「カーボンブラック」の分量は「5重量部」である。また、「熱硬化成分」の分量も「5重量部」である。したがって、引用発明の「インク固形分」に分散剤が入るとしても、引用発明の「カーボンブラック」及び「熱硬化成分」の分量は、それぞれ、本件補正後発明1の「前記黒色顔料の含有比率は、遮光層形成用樹脂組成物の固形分100重量部当り30?75重量部の範囲内」及び「前記バインダーの含有比率は、遮光層形成用樹脂組成物の固形分100重量部当り25?70重量部の範囲内」の要件を満たすといえる。 以上のとおりであるから、引用発明において周知技術を採用することにより、相違点2に係る構成を克服することは、当業者における通常の創意工夫の範囲内の事項にすぎない。 (相違点3について) 引用例1に記載されたカラーフィルタの作製は、着色部パターンに対して撥インク化処理を施すものであるから、「各着色層間の前記間隙に塗布された、前記遮光層形成用樹脂組成物を含む前記塗工液の厚みは、前記着色層の厚みよりも大きく」の要件を満たすといえる(引用例1の【図1】からも看取できる事項である。)。次に、引用発明のインクは、「キュア後の膜厚約1.5μmで十分とされる光学濃度(OD)4以上となるように設計された」ものである。したがって、例えば、引用例1の段落【0071】に記載された実施例2の着色部の厚さ(3μm)を前提とした場合においては、(たとえ分散剤を入れることを考慮しても)「前記塗工液を乾燥させることによって各着色層間に形成される前記遮光層の厚みは、前記着色層の厚みよりも小さい」もので十分である。 そうしてみると、引用発明の「インク固形分」は、「各着色層間の前記間隙に塗布された、前記遮光層形成用樹脂組成物を含む前記塗工液の厚みは、前記着色層の厚みよりも大きく、前記塗工液を乾燥させることによって各着色層間に形成される前記遮光層の厚みは、前記着色層の厚みよりも小さい」というカラーフィルタの製造方法において使用されることに適した物ということができるから、結局、相違点3として挙げた点は、相違点ではない。 あるいは、「樹脂組成物を用いたカラーフィルタの製造方法において、各着色層間の間隙に塗布された塗工液を乾燥させ、溶媒を除去することによって、形成される遮光層の厚みを着色層の厚みよりも小さくして、高い明度が得られるようにすること」は、本件出願の出願日前に周知の技術である(例えば、前記引用例4の記載事項(前記イ(エ)を参照。)。また、引用発明の「インク」を使用してカラーフィルタを製造するに際しても、このような周知技術を適用できることは、明らかである。 そうしてみると、引用発明の「インク固形分」は、「各着色層間の前記間隙に塗布された、前記遮光層形成用樹脂組成物を含む前記塗工液の厚みは、前記着色層の厚みよりも大きく、前記塗工液を乾燥させることによって各着色層間に形成される前記遮光層の厚みは、前記着色層の厚みよりも小さい」というカラーフィルタの製造方法において使用されることに適した物ということができるから、いずれにせよ、相違点3として挙げた点は、相違点ではない。 キ 本件補正後発明1の作用・効果及び請求人の主張について (ア)請求人は、審判請求書において、「特徴(a)」「着色層間の間隙に遮光層形成用樹脂組成物を含む塗工液を塗布し、乾燥することにより遮光層を形成するための遮光層形成用樹脂組成物であること。」により、「遮光層形成用樹脂組成物中に光開始剤や現像により溶解する成分を含ませる必要がない。このように光開始剤や現像により溶解する成分を不要とした分だけ、黒色組成物の含有比率を大きくすることができる。」旨主張しているが、本件補正後の請求項1の記載は、「遮光層形成用樹脂組成物」が、「黒色組成物および分散剤を含む黒色組成物分散体と、熱硬化性を有するバインダー」「のみ」有するという記載となっておらず、重合反応が開始され易くするための開始助剤等を含んでもよい記載となっている(本件出願の明細書の段落【0036】からも確認できる事項である。)。 してみると、上記主張は、請求項1の記載に基づかない主張であって、採用することはできない。 (イ)請求人は、審判請求書において、「特徴(b)」「遮光層形成用樹脂組成物の黒色組成物の含有比率は、遮光層形成用樹脂組成物の固形分100重量部当り30?75重量部の範囲内にあること。」により、「これによって、遮光層形成用樹脂組成物自体の遮光性を高くすることができるので、小さい厚みを有する遮光層によって、高い遮光性や光学濃度を実現することができる(本願の段落〔0081〕参照)」、「特徴(c)」「塗工液を乾燥させることによって各着色層間に形成される遮光層の厚みは、着色層の厚みよりも小さいこと。」「のとおり、遮光層の厚みを、着色層の厚みよりも小さくすることができる。」旨主張しているが、上述のとおり、引用発明及び周知の技術に基づき、上記相違点1及び相違点2に係る本件補正後発明1の構成とすることは当業者にとって容易なことであり、また、「遮光層形成用」の「樹脂組成物」自体の遮光性を高くすることができることや、小さい厚みを有する遮光層によって、高い遮光性や光学濃度を実現することができることは、当業者にとって予測可能なことであって、格別のものではない。 あるいは、特許請求の範囲には、光学濃度等に関する数値限定がないから、請求人の主張は特許請求の範囲に基づくものではない。なお、引用発明の「インク」は、「キュア後の膜厚約1.5μmで十分とされる光学濃度(OD)4以上となるように設計された」ものであるから、1μmあたりの光学濃度は2.5以上となる。 してみると、上記の請求人の主張を採用することはできない。 (ウ)請求人は、審判請求書において、「特徴(c)」「塗工液を乾燥させることによって各着色層間に形成される遮光層の厚みは、着色層の厚みよりも小さいこと。」「によれば、液晶に対向する着色層の面の位置が、液晶に対向する遮光層の面の位置よりも液晶寄りになる。このため、カラーフィルタの基板の法線方向に対して傾斜した方向において液晶からの光がカラーフィルタに到達する場合に、着色層に入射すべき光が遮光層によって遮られてしまうことを抑制することができる。このことにより、光の利用効率を高めることができる。」旨主張しているが、上述のとおり、引用発明及び周知の技術に基づき、上記相違点2に係る本件補正後発明1の構成とすることは当業者にとって容易であり、また、着色層に入射すべき光が遮光層によって遮られてしまうことを抑制することができ、光の利用効率を高めることができることは、前記引用例4の段落【0023】や【0063】(上記イ(エ)参照)に記載されており、すでに知られた効果であるので、当業者にとって予測可能なことであって、格別のものではない。 してみると、上記の請求人の主張を採用することはできない。 (エ)請求人は、審判請求書において、「特徴(d)」「各着色層間の間隙に塗布された、遮光層形成用樹脂組成物を含む塗工液の厚みは、着色層の厚みよりも大きいこと。」「のとおり、各着色層間の間隙に塗布された、遮光層形成用樹脂組成物を含む塗工液の厚みは、着色層の厚みよりも大きい。このことは、塗工液が多量の溶媒を含むこと、すなわち塗工液の粘度が低いことを意味している。このため、各着色層間の間隙の隅々にまで塗工液を行き渡らせることができる。また、遮光層形成用樹脂組成物の黒色組成物を塗工液により均一に分散させることができ、このことにより、塗工液を乾燥させることによって得られる遮光層においても黒色組成物をより均一に分散させることができる。」旨主張している。 しかしながら、引用例1には、塗工液の厚みを着色層の厚みよりも大きくすることが記載されており、また、低粘度化により粘塗工液を隅々まで行き渡らせることや、黒色組成物を均一に分散させることは、着色層間への塗布により遮光層を形成する際の当業者であれば当然に考慮する技術的事項であることから、格別のものではない。 してみると、上記の請求人の主張を採用することはできない。 (オ)請求人は、審判請求書において、「本願発明によれば、塗工液の粘度が低く、このため塗工液を乾燥させることによって得られる遮光層の厚みが上記特徴(c)のとおり着色層の厚みよりも小さい場合であっても、上記(a)及び(b)により、高い遮光性や光学濃度を実現することができる。」ことについては、上述のとおり、引用発明及び上記の周知の技術に基づき、光学濃度(遮光性)を考慮の上、上記相違点2に係る本件補正後発明1の構成とすることは当業者にとって容易であり、また、塗工液の粘度をどのようにするかは、当業者であれば当然に考慮する技術的事項であり、高い遮光性や光学濃度を実現することができることも、当業者にとって予測可能なことであって、格別のものではない。 してみると、上記の請求人の主張を採用することはできない。 (カ)本件出願の願書に最初に添付された明細書に記載された本件補正後発明1の「このように遮光層形成用樹脂組成物における黒色組成物の含有比率を大きくすることによって、遮光層形成用樹脂組成物自体の遮光性を向上させることができる。」(段落【0016】)、「黒色組成物の含有比率は、好ましくは遮光層形成用樹脂組成物の固形分100重量部当り30?75重量部の範囲内となっており、・・・これによって、遮光層形成用樹脂組成物自体の遮光性を、従来の遮光層形成用樹脂組成物に比べて向上させることができる。」(段落【0031】)、「バインダーの含有比率は、好ましくは遮光層形成用樹脂組成物の固形分100重量部当り25?70重量部の範囲内となっており、・・・このようにバインダーの含有比率を小さくした分だけ、上述のように黒色組成物の含有比率をさらに大きくすることが可能となっている。」(段落【0035】)、「遮光層形成用樹脂組成物中の黒色組成物の含有比率が従来の遮光層形成用樹脂組成物に比べて大きくなっている。この結果、本実施の形態によれば、BM層50の光学濃度・・・を、従来のBM層の光学濃度に比べて高くすることができる。・・・これによって、従来と同等の厚みからなるBM層50によって、従来よりも高い光学濃度を実現することができる。若しくは、従来よりも小さい厚みからなるBM層50によって、従来と同等の光学濃度を実現することができる。」(段落【0039】)、「従来の遮光層形成用樹脂組成物に比べて、光開始剤や現像により溶解する成分を不要とした分だけ遮光層形成用樹脂組成物中の黒色組成物の含有比率を大きくすることができる。これによって、遮光層形成用樹脂組成物自体の遮光性を、従来の遮光層形成用樹脂組成物に比べて向上させることができる。加えて、光開始剤を不要とすることにより、遮光層形成用樹脂組成物のコストを低減することができる。」(段落【0069】)、「遮光層形成用樹脂組成物自体の遮光性が高くなっており、このため、BM層50の厚みh_(1)を小さくすることができる。これによって、BM層50の構造的な安定性をさらに高めることができる。このため本実施の形態によれば、構造的な安定性を十分に確保しながら、BM層50の幅を狭くすることが可能となる。従って、カラーフィルタ10に白抜け領域が形成されることを防ぐことができ、このことにより、歩留りを向上させることができる。」(段落【0083】)等の作用・効果については、当業者にとって予測可能なものであって、格別なものとは認められないものであるか、請求項の記載に基づかないものであるか、あるいは、カラーフィルタの製造方法に関するものであって、(遮光層形成用)樹脂組成物についてのものとは認められないものである。 ク 小括 よって、本件補正後発明1は、引用発明及び上記の周知の技術に基づいて、その出願前にその発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 3 補正却下のまとめ 上記2より、本件補正後発明1は、引用例1に記載された発明及び上記の周知の技術に基づいて、その出願前にその発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本件発明について 1 本件発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1?6のうち、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記「第2 補正却下の決定」の「1(1)」に記載のとおりのものである。 2 引用例、その記載事項及び引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1?3の記載事項及び引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の「2(2)イ(ア)ないし(ウ)」に記載されたとおりである。 3 対比・判断 (1)本件発明と本件補正後発明1の相違について 本件発明は、本件補正後発明1から、「各着色層間の前記間隙に塗布された、前記遮光層形成用樹脂組成物を含む前記塗工液の厚みは、前記着色層の厚みよりも大きく、前記塗工液を乾燥させることによって各着色層間に形成される前記遮光層の厚みは、前記着色層の厚みよりも小さい」という限定を除いたものである。 (2)そうすると、本件発明の構成要件を全て含み、これをより限定したものである本件補正後発明1が、上記「第2 補正却下の決定」の「2(2) 独立特許要件について」において検討したとおり、引用発明及び上記の周知の技術に基づいて、その出願前にその発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、引用発明及び上記の周知の技術に基づいて、その出願前にその発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 4 まとめ 以上のとおり、本件発明は、引用例1に記載された発明及び上記の周知の技術に基づいて、その出願前にその発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-27 |
結審通知日 | 2017-03-28 |
審決日 | 2017-04-12 |
出願番号 | 特願2012-26247(P2012-26247) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B) P 1 8・ 121- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高松 大、素川 慎司 |
特許庁審判長 |
樋口 信宏 |
特許庁審判官 |
河原 正 渡邉 勇 |
発明の名称 | 遮光層形成用樹脂組成物、遮光層形成用樹脂組成物から構成される遮光層を備えたカラーフィルタおよびカラーフィルタを備えた表示装置 |
代理人 | 岡村 和郎 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 中村 行孝 |