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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J |
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管理番号 | 1328612 |
審判番号 | 不服2016-8697 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-10 |
確定日 | 2017-05-25 |
事件の表示 | 特願2014- 17142「非接触電力伝送システム、および充電ステーション」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月 6日出願公開、特開2015-144529〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年1月31日の出願であって、平成27年10月23日付けで拒絶の理由が通知され(発送日:平成27年10月27日)、これに対し、平成27年12月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年3月7日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成28年3月15日)、これに対し、平成28年6月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。 第2 平成28年6月10日にされた手続補正による補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成28年6月10日にされた手続補正による補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成28年6月10日にされた手続補正(以下、「本件補正」と言う。)により、次のように補正された。 (1)本件補正前 「【請求項1】 非接触電力伝送システムであって、 受電部を含む車両と、 充電ステーションとを備え、 前記充電ステーションは、 非接触で車両に送電可能な送電部と、 前記送電部からの送電を制御する送電制御部とを含み、 前記車両と前記充電ステーションとは、通信し、 前記車両は、前記充電ステーションと通信をした後に前記送電部に近づいて、前記送電部と位置合わせをし、 前記送電制御部は、前記位置合わせおよびペアリング処理がなされた後であって前記送電部から前記車両に送電を開始する前に前記車両が位置合わせされていることを確認した後に、前記送電部から前記車両に送電を開始させる、非接触電力伝送システム。 【請求項2】 前記送電部は前記充電ステーションに複数設けられ、 前記車両が位置合わせを行なった送電部は、複数の送電部のうちの第1送電部であり、 前記車両は、前記第1送電部との位置合わせが完了すると、前記充電ステーションに第1信号を送信し、 前記送電制御部は、前記第1信号を受信すると、前記複数の送電部からの供給時間を送電部毎に異ならせて送電を実行し、 前記車両は、受電した電力の供給時間が前記第1送電部を示す場合には、前記第1送電部を示す第2信号を前記送電制御部に送信し、 前記送電制御部は、前記第2信号に基づいて、車両が停車した送電部が前記第1送電部であることを特定する前記ペアリング処理を実施する、請求項1に記載の非接触電力伝送システム。 【請求項3】 前記送電部は前記充電ステーションに複数設けられ、 前記車両が位置合わせを行なった送電部は、複数の送電部のうちの第1送電部であり、 前記車両は、前記第1送電部との位置合わせが完了すると、前記充電ステーションに第1信号を送信し、 前記送電制御部は、前記第1信号を受信すると、前記複数の送電部からの送電のオン/オフの切替回数を送電部毎に異ならせて送電を実行し、 前記車両は、受電した電力のオン/オフの切替回数が前記第1送電部を示す場合には、前記第1送電部を示す第3信号を前記送電制御部に送信し、 前記送電制御部は、前記第3信号に基づいて、車両が停車した送電部が前記第1送電部であることを特定する前記ペアリング処理を実施する、請求項1に記載の非接触電力伝送システム。 【請求項4】 前記送電制御部は、前記送電部と前記受電部との位置関係が受電条件を満たすか否かを確認する処理として第1の電力を前記送電部から送電させ、前記送電部から前記受電部が受電した受電電圧が所定値以上である場合に、前記送電部から前記車両に前記第1の電力よりも大きい第2の電力の送電を開始させる、請求項1に記載の非接触電力伝送システム。 【請求項5】 充電ステーションは、周期的にビーコンを発信しており、車両は、当該ビーコンを受信すると、要求信号を発信し、充電ステーションが要求信号を受信すると、位置合わせ用の微弱電力の送電を開始する、請求項1に記載の非接触電力伝送システム。 【請求項6】 非接触で車両に送電可能な送電部と、 前記送電部からの送電を制御する送電制御部とを備えた充電ステーションであって、 前記車両と前記充電ステーションとは、通信し、 前記車両は、前記充電ステーションと通信をした後に前記送電部に近づいて、前記送電部と位置合わせをし、 前記送電制御部は、前記位置合わせおよびペアリング処理がなされた後であって前記送電部から前記車両に送電を開始する前に前記車両が位置合わせされていることを確認した後に、前記送電部から前記車両に送電を開始させる、充電ステーション。」 (2)本件補正後 「【請求項1】 非接触電力伝送システムであって、 受電部を含む車両と、 充電ステーションとを備え、 前記充電ステーションは、 非接触で車両に送電可能な送電部と、 前記送電部からの送電を制御する送電制御部とを含み、 前記車両と前記充電ステーションとは、通信し、 前記車両は、前記充電ステーションと通信をした後に前記送電部に近づいて、前記送電部と位置合わせをして駐車し、 前記送電制御部は、前記位置合わせ後の駐車と、ペアリング処理とがなされた後であって前記送電部から前記車両に送電を開始する前に前記車両が位置合わせされていることを確認した後に、前記送電部から前記車両に送電を開始させる、非接触電力伝送システム。 【請求項2】 前記送電部は前記充電ステーションに複数設けられ、 前記車両が位置合わせを行なった送電部は、複数の送電部のうちの第1送電部であり、 前記車両は、前記第1送電部との位置合わせが完了すると、前記充電ステーションに第1信号を送信し、 前記送電制御部は、前記第1信号を受信すると、前記複数の送電部からの供給時間を送電部毎に異ならせて送電を実行し、 前記車両は、受電した電力の供給時間が前記第1送電部を示す場合には、前記第1送電部を示す第2信号を前記送電制御部に送信し、 前記送電制御部は、前記第2信号に基づいて、車両が停車した送電部が前記第1送電部であることを特定する前記ペアリング処理を実施する、請求項1に記載の非接触電力伝送システム。 【請求項3】 前記送電部は前記充電ステーションに複数設けられ、 前記車両が位置合わせを行なった送電部は、複数の送電部のうちの第1送電部であり、 前記車両は、前記第1送電部との位置合わせが完了すると、前記充電ステーションに第1信号を送信し、 前記送電制御部は、前記第1信号を受信すると、前記複数の送電部からの送電のオン/オフの切替回数を送電部毎に異ならせて送電を実行し、 前記車両は、受電した電力のオン/オフの切替回数が前記第1送電部を示す場合には、前記第1送電部を示す第3信号を前記送電制御部に送信し、 前記送電制御部は、前記第3信号に基づいて、車両が停車した送電部が前記第1送電部であることを特定する前記ペアリング処理を実施する、請求項1に記載の非接触電力伝送システム。 【請求項4】 前記送電制御部は、前記送電部と前記受電部との位置関係が受電条件を満たすか否かを確認する処理として第1の電力を前記送電部から送電させ、前記送電部から前記受電部が受電した受電電圧が所定値以上である場合に、前記送電部から前記車両に前記第1の電力よりも大きい第2の電力の送電を開始させる、請求項1に記載の非接触電力伝送システム。 【請求項5】 非接触で車両に送電可能な送電部と、 前記送電部からの送電を制御する送電制御部とを備えた充電ステーションであって、 前記車両と前記充電ステーションとは、通信し、 前記車両は、前記充電ステーションと通信をした後に前記送電部に近づいて、前記送電部と位置合わせをして駐車し、 前記送電制御部は、前記位置合わせ後の駐車と、ペアリング処理とがなされた後であって前記送電部から前記車両に送電を開始する前に前記車両が位置合わせされていることを確認した後に、前記送電部から前記車両に送電を開始させる、充電ステーション。」 (下線部は、補正された箇所を示す。) 2.本件補正の目的要件について 特許請求の範囲の請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「位置合わせ」について、「位置合わせをして駐車」と記載するものであって、「位置合わせ」の結果を限定する補正を含むものである。 そして、そのような限定を行う補正がされた後の当該請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は、その補正前の当該請求項に記載された発明と同一である。 したがって、特許請求の範囲の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、特許請求の範囲の請求項6(本件補正後の請求項5)についての補正も、請求項1についての補正と同様に、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 さらに、特許請求の範囲の請求項5を削除する補正は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件 特許請求の範囲の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」と言う。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。 (1)引用例 本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-225969号公報(以下、「引用例1」と言う。)には、「非接触充電管理システム及びそれに対応する車両」と題する発明について、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。 ア.「【0011】 以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。 実施の形態1. 図1は、本発明の実施の形態1による非接触充電管理システムを示す構成図である。図において、駐車場1は、例えばハイブリッド自動車又は電気自動車等の車両2が駐車及び充電のために出入りするスペースである。駐車場1の出入口にはゲート装置3及び管理装置4(親機)が配置されており、駐車場1内の複数の駐車区画A?Fには充電装置5A?5Fがそれぞれ配置されている。」 イ.「【0015】 充電装置5A?5Fは、各駐車区画A?Fに車両2が駐車した際に車両2のバッテリ(図示せず)の充電に用いられる装置である。各充電装置5A?5Fは、非接触充電器50及び充電制御部51(子機)をそれぞれ有している。 【0016】 非接触充電器50は、周知のように交流電源に接続された一次側コイルを含むものであり、車両2に搭載された二次側コイルと磁気的に結合することによって車両2に非接触で電力を供給する。 【0017】 各充電装置5A?5Fの充電制御部51は、各充電装置5A?5Fの非接触充電器50に有線でそれぞれ接続されており、各充電装置5A?5Fの非接触充電器50の動作制御をそれぞれ行う。また、各充電装置5A?5Fの充電制御部51は、それらの通信エリア51aに進入した車両2と無線通信可能であり、その充電制御部51と無線通信する車両2がその充電制御部51の充電装置5A?5Fに割り当てられているか否かを判定する。割り当てられていると判定した場合、各充電装置5A?5Fの充電制御部51は、その充電制御部51が動作制御を行う非接触充電器50での充電を許容する。非接触充電器50及び充電制御部51(子機)の具体的な動作についても、後に詳しく説明する。」 ウ.「【0019】 次に、図2は、図1の車両2が駐車場1に入場するときに行われる非接触充電管理システムの処理を示す説明図である。図において、管理装置4の通信エリア4aに車両2が進入した場合、車両2の車載通信装置及び管理装置4は、互いの間に無線通信を確立する(ステップS1)。管理装置4は、この無線通信において車両2が後述の認証情報を有していないことを検出した場合に、その車両2が駐車場1に入場しようとする車両2であることを検出する(ステップS2)。 【0020】 管理装置4は、駐車場1に入場しようとする車両2を検出した場合、各充電装置5A?5Fの利用状態を確認して、空いている充電装置5A?5F(他の車両2に割り当てられていない充電装置5A?5F)をその車両2に割り当てる(ステップS3)。このとき、管理装置4は、割り当てた充電装置5A?5Fに対応する認証情報(認証ID)を車両2に送信する(ステップS4)。」 エ.「【0028】 次に、図4は、図1の車両2が割り当てられた充電装置5A?5Fに向かったときに行われる非接触充電管理システムの処理を示す説明図である。図において、車両2の車載通信装置と充電制御部51との間に無線通信が確立されてから、認証情報に基づいて充電制御部51が車両2の割り当てを確認するまでは(ステップS20?S23)、図3と同様である。 【0029】 充電制御部51は、車両2から受信した認証情報がその充電制御部51の充電装置5A?5Fに対応する認証情報であると判定した場合(ステップS30)、認証確認情報を車両2に送信し(ステップS31)、車両2の車載通信装置は、充電制御部51からの認証確認情報をナビゲーションシステムの表示部に表示させる(ステップS32)。認証確認情報は、車両2が近づいている充電装置5A?5Fがその車両2に割り当てられたものであることを示す情報である。 【0030】 非接触充電器50は、車両2が所定の充電位置に位置した場合に充電制御部51に位置確認情報を送信する(ステップS33)。充電制御部51は、車両2から受信した認証情報がその充電制御部51の充電装置5A?5Fに対応する認証情報であると判定した後に、非接触充電器50からの位置確認情報を検出した場合に、非接触充電器50に給電指令を送信する(ステップS34)。非接触充電器50は、充電制御部51からの給電指令を受けた場合に、車両2に対して電力を供給する(ステップS35)。すなわち、充電制御部51は、車両2がその充電制御部51の充電装置5A?5Fに割り当てられていると判定した後に、非接触充電器50から位置確認情報を受信した場合に、その充電制御部51が動作制御を行う非接触充電器50での充電を許容する。」 オ.車両2は割り当てられた充電装置5A?5Fに向かうものであるが(段落0028)、車両2には割り当てられた充電装置5A?5Fに対応する認証情報(認証ID)が管理装置4から予め送信されるものであり(段落0020)、この認証情報の送信は、車両2と管理装置4の無線通信確立後に行われるものであるから(段落0019)、車両2が割り当てられた充電装置5A?5Fに向かうのは、車両2と管理装置4の無線通信確立後であると言える。 カ.段落0028には「図において、車両2の車載通信装置と充電制御部51との間に無線通信が確立されてから、認証情報に基づいて充電制御部51が車両2の割り当てを確認するまでは(ステップS20?S23)、図3と同様である。」と記載されており、段落0029には「充電制御部51は、車両2から受信した認証情報がその充電制御部51の充電装置5A?5Fに対応する認証情報であると判定した場合(ステップS30)、認証確認情報を車両2に送信し(ステップS31)、」と記載されており、段落0030には「非接触充電器50は、車両2が所定の充電位置に位置した場合に充電制御部51に位置確認情報を送信する(ステップS33)。」と記載されている。そして、これらの記載と図4をあわせて参照すれば、充電制御部51に位置確認情報を送信するステップS33は、上記ステップS20?S23、S30、S31の後に行われるものであることは明らかである。 以上を踏まえると、引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」と言う。)が記載されていると認めることができる。 「非接触充電管理システムであって、その駐車場1は、例えばハイブリッド自動車又は電気自動車等の車両2が駐車及び充電のために出入りするスペースであり、駐車場1の出入口にはゲート装置3及び管理装置4(親機)が配置されており、駐車場1内の複数の駐車区画A?Fには充電装置5A?5Fがそれぞれ配置されており、 充電装置5A?5Fは、非接触充電器50及び充電制御部51(子機)をそれぞれ有しており、 非接触充電器50は、交流電源に接続された一次側コイルを含むものであって、車両2に搭載された二次側コイルと磁気的に結合することによって車両2に非接触で電力を供給するものであり、 充電制御部51は、各充電装置5A?5Fの非接触充電器50に有線でそれぞれ接続されており、各充電装置5A?5Fの非接触充電器50の動作制御をそれぞれ行うものであり、 管理装置4の通信エリア4aに車両2が進入した場合、車両2の車載通信装置及び管理装置4は、互いの間に無線通信を確立(ステップS1)し、 車両2が、管理装置4と無線通信確立後、割り当てられた充電装置5A?5Fに向かい、 車両2の車載通信装置と充電制御部51との間に無線通信が確立されてから、認証情報に基づいて充電制御部51が車両2の割り当てを確認(ステップS20?S23)し、 充電制御部51は、車両2から受信した認証情報がその充電制御部51の充電装置5A?5Fに対応する認証情報であると判定した場合(ステップS30)、認証確認情報を車両2に送信し(ステップS31)、 非接触充電器50は、車両2が所定の充電位置に位置した場合であり、また、前記認証確認情報の車両2への送信後(ステップS31)に、充電制御部51に位置確認情報を送信(ステップS33)し、 充電制御部51は、非接触充電器50からの位置確認情報を検出した場合に、非接触充電器50に給電指令を送信(ステップS34)し、非接触充電器50は、充電制御部51からの給電指令を受けた場合に、車両2に対して電力を供給(ステップS35)する、非接触充電管理システム。」 (2)対比・判断 (a)本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「非接触充電管理システム」は本願補正発明の「非接触電力伝送システム」に相当する。 (b)引用発明の「駐車場1」、「ゲート装置3」、「管理装置4」、及び、「非接触充電器50」と「充電制御部51」を有する「充電装置5A?5F」は車両2を充電するための設備であるから、本願補正発明の「充電ステーション」に相当する。 (c)引用発明の「車両2に搭載された二次側コイルと磁気的に結合することによって車両2に非接触で電力を供給するもの」である「非接触充電器50」は、本願補正発明の「非接触で車両に送電可能な送電部」に相当する。 (d)引用発明の「各充電装置5A?5Fの非接触充電器50の動作制御をそれぞれ行うもの」である「充電制御部51」は、本願補正発明の「前記送電部からの送電を制御する送電制御部」に相当する。 (e)引用発明の「管理装置4」が「車両2」と「無線通信を確立」することは、本願補正発明の「前記車両と前記充電ステーションとは、通信」することに相当する。 (f)引用発明の「車両2が、管理装置4と無線通信確立後、割り当てられた充電装置5A?5Fに向かい」、「車両2が所定の充電位置に位置」することと、本願補正発明の「前記車両は、前記充電ステーションと通信をした後に前記送電部に近づいて、前記送電部と位置合わせをして駐車」することは、「前記車両は、前記充電ステーションと通信をした後に前記送電部に近づいて、前記送電部と位置合わせ」する点で共通する。 (g)引用発明の「車両2の車載通信装置と充電制御部51との間に無線通信が確立されてから、認証情報に基づいて充電制御部51が車両2の割り当てを確認し、充電制御部51は、車両2から受信した認証情報がその充電制御部51の充電装置5A?5Fに対応する認証情報であると判定した場合、認証確認情報を車両2に送信(ステップS31)」することは、車両2と充電装置5A?5Fの対応を認証するものであるから、本願補正発明の「ペアリング処理」に相当する。 (h)引用発明の「非接触充電器50」が「充電制御部51に位置確認情報を送信」することは、本願補正発明の「前記送電制御部」が「前記車両が位置合わせされていることを確認」することに相当する。 (i)引用発明において「非接触充電器50」が「車両2が所定の充電位置に位置した場合」に「充電制御部51に位置確認情報を送信(ステップS33)」することは、上記(f)を踏まえれば、「位置合わせ後」に行われるものであると言え、また、「前記認証確認情報の車両2への送信(ステップS31)後」に行われるものであるから、上記(g)を踏まえれば、「ペアリング処理がなされた後」に行われるものであるとも言える。 (j)引用発明における「非接触充電器50」が「給電指令を受けた場合に、車両2に対して電力を供給する」構成は、本願補正発明の「前記送電部から前記車両に送電を開始させる」構成に相当する。また、引用発明における、この「車両2に対して電力を供給する」ことは、「非接触充電器50」が「充電制御部51に位置確認情報を送信し、充電制御部51は、非接触充電器50からの位置確認情報を検出した場合に、非接触充電器50に給電指令を送信し、非接触充電器50は、充電制御部51からの給電指令を受けた場合」に行われることであるから、上記(h)を踏まえれば、「位置合わせされていることを確認した後」に行われることであると言える。また、「位置合わせされていることを確認」することが、「車両2に対して電力を供給する」する前に行われることであるとも言える。 以上を踏まえると、本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「非接触電力伝送システムであって、 充電ステーションを備え、 前記充電ステーションは、 非接触で車両に送電可能な送電部と、 前記送電部からの送電を制御する送電制御部とを含み、 前記車両と前記充電ステーションとは、通信し、 前記車両は、前記充電ステーションと通信をした後に前記送電部に近づいて、前記送電部と位置合わせをし、 前記送電制御部は、前記位置合わせと、ペアリング処理とがなされた後であって前記送電部から前記車両に送電を開始する前に前記車両が位置合わせされていることを確認した後に、前記送電部から前記車両に送電を開始させる、非接触電力伝送システム。」 <相違点1> 本願補正発明は、非接触電力伝送システムが「受電部を含む車両」を備えるのに対して、引用発明は、非接触電力伝送システム(非接触充電管理システム)が「受電部を含む車両」を含んでいない点。 <相違点2> 本願補正発明は、車両が「前記送電部に近づいて、前記送電部と位置合わせをして駐車」するものであるのに対し、引用発明は、「割り当てられた充電装置5A?5Fに向かい」、「所定の充電位置に位置」するものであり、また、本願補正発明は、車両が位置合わせされていることの確認が、「前記位置合わせ後の駐車」がなされた後に行われるものであるのに対し、引用発明は、「車両2が所定の充電位置に位置した場合」に行われるものであって、引用発明の「所定の充電位置に位置」が駐車を伴うものであるか否かが不明な点 上記相違点1について検討する。 非接触電力伝送システムにおいて、電力の伝送を行う場合、伝送先として「受電部を有する車両」が存在することが明らかであり、この「受電部を有する車両」も非接触電力伝送システムの一要素とするか、非接触電力伝送システム外の要素とするかの選択は、当業者が適宜なし得たことであり、前者を選択して、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 上記相違点2について検討する。 引用例1には、「充電装置5A?5Fは、各駐車区画A?Fに車両2が駐車した際に車両2のバッテリ(図示せず)の充電に用いられる装置である。」(段落0015)と記載されているから、引用発明において、充電が駐車した状態で行われることは自明である。 引用発明は、上記のとおり、充電が駐車した状態で行われることを前提としたものであり、また、引用発明は、ハイブリッド自動車または電気自動車等に非接触充電を行うシステムであって(段落0011参照)、電力によって走行するために必要な電力量を非接触で充電するためには一定の時間を要することは技術常識であり、さらに、一定の充電時間を確保するためには車両を充電位置に駐車させることが望ましいことを考慮すると、引用発明の「所定の充電位置に位置」を、駐車を伴うものとして、相違点2に係る本願補正の発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3)小活 したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.まとめ 以上のとおり、本願補正発明は、独立特許要件を欠くものである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成27年12月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(上記「第2 1.(1)」参照。以下、同請求項に係る発明を「本願発明」と言う。) 2.引用例 原査定の拒絶の理由に示された刊行物である特開2013-225969号公報(引用例1)に記載された事項は、上記「第2 3.(1)」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明の発明特定事項を全て含むとともに、本願発明の発明特定事項に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 3.」に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-27 |
結審通知日 | 2017-03-28 |
審決日 | 2017-04-10 |
出願番号 | 特願2014-17142(P2014-17142) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02J)
P 1 8・ 575- Z (H02J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 猪瀬 隆広、竹下 翔平、小宮 慎司 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
矢島 伸一 松永 謙一 |
発明の名称 | 非接触電力伝送システム、および充電ステーション |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |