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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1328613
審判番号 不服2016-9191  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-21 
確定日 2017-05-25 
事件の表示 特願2012- 61056「データ管理装置,データ管理方法及びデータ管理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月30日出願公開,特開2013-196194〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成24年3月16日を出願日とする出願であって,平成26年11月12日付けで審査請求がなされ,平成27年8月10日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して平成27年10月16日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成28年3月16日付けで審査官により拒絶査定(平成28年3月22日謄本送達)がなされ,これに対して平成28年6月21日付けで審判請求がなされたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は,平成27年10月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されると認められるところ,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は次のとおりのものと認められる。

「利用者を識別する利用者登録情報を登録した利用者管理テーブルと,利用者情報と当該利用者情報に対応する利用者が操作を許可されたデータファイルを識別するファイル識別情報とを関連付けて登録したファイル管理テーブルとを記憶する記憶部と,
利用者情報の削除要求を受け付けると,削除要求を受け付けた利用者情報に関連づけられたデータファイルのファイル識別情報が前記ファイル管理テーブルに登録されているか否かを判定する判定部と,
前記判定部により削除要求を受け付けた利用者情報に関連付けられたファイル識別情報が前記ファイル管理テーブルに登録されていると判定された場合に,前記削除要求を受け付けた利用者情報に関連付けられたファイル識別情報を表示する表示部と,
を有することを特徴とするデータ管理装置。」

第3.引用文献
1.引用文献1
(1)引用文献1に記載されている技術的事項
本願の出願前に既に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,平成27年8月10日付けの拒絶理由において引用された文献である特開2006-110907号公報には関連する図面とともに,以下の事項が記載されている。(当審注;下線は参考のため当審が付与した。)

A「【0006】
この発明は,上記の点に鑑みてなされたものであり,文書データとユーザ情報とを関連付け(対応付け)て,その文書データへの不正アクセスを阻止すると共に,上記ユーザ情報を抹消しても,これに関連付けられている文書データの削除を防止することを目的とする。
(中略)
【0009】
この発明の画像形成装置によれば,当該画像処理装置の使用が許可された後,上記管理者情報記憶手段に上記管理者情報が記憶されていない場合,もしくは上記入力された情報と上記管理者情報記憶手段に記憶されている上記管理者情報とが一致しない場合には,上記蓄積文書ユーザ別管理手段により上記入力された情報と一致するユーザ情報に対応付けられている上記文書蓄積手段内の文書データ(蓄積文書データ)に対するアクセスのみを許可し,上記入力された情報と上記管理者情報記憶手段に記憶されている上記管理者情報とが一致する場合には,上記文書蓄積手段内の全ての文書データに対するアクセスを許可するので,上記入力された情報と一致するユーザ情報が削除された場合に,そのユーザ情報に対応する蓄積文書データを管理者設定時(上記入力された情報に一致する管理者情報が記憶されている時)以外アクセス不可とし,管理者未設定である場合は管理者が設定される(上記入力された情報に一致する管理者情報が記憶される)までは全ての蓄積文書データのアクセスを禁止するので,蓄積文書データ(重要な文書データ)とユーザ情報とを関連付けて,その蓄積文書データへの不正アクセスを阻止すると共に,そのユーザ情報を抹消しても,これに関連付けられている蓄積文書データの削除を防止することができる。よって,蓄積文書データを安易に削除することなく,その蓄積文書データの機密性を維持することが可能になる。
【0010】
以下,この発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1は,この発明の一実施形態である画像処理装置の基本構成例を示すブロック図である。なお,矢印付き実線は命令/指示の流れを,矢印付き破線は画像データの流れをそれぞれ示している。
この画像処理装置は,主に読み取り部21,印刷部22(文書出力手段),画像記憶部23(文書蓄積手段),操作部30,およびこれら各部を制御するメイン制御部(メインコントローラ)20によって構成されたデジタル複写機である。
操作部30は,液晶タッチパネル31,キー入力部40,および操作表示制御部24からなる。」

B「【0021】
次に,このように構成した画像処理装置におけるこの発明に係わる部分について,図7,図8も参照して説明する。
〔ユーザ管理テーブル〕
このユーザ管理テーブルは,例えば表1に示すような構成になっており,これらの情報は画像記憶部23のHD65に格納されている。
図1のメイン制御部20は,必要に応じてHD65内のユーザ管理テーブルから個々のユーザ情報を画像記憶部23を介して読み出す。
【0022】
【表1】



C「【0028】
〔文書データ蓄積の動作の流れ〕
この画像処理装置における文書データ蓄積の動作についてを説明する。なお,ユーザ認証に成功し,認証画面が閉じた状態であることが前提である。
ユーザは,ADF1の原稿台2上に原稿を戴置し,液晶タッチパネル31上の「文書蓄積」キー38を押下する。このとき,「文書蓄積」キー38が押下された旨がメイン制御部20へ通知され,メイン制御部20は,以降の原稿読み取り動作にて読み取る原稿の画像データ(文書データ)がHD65に半永久的に保持されるものであることを予め知っておく。
【0029】
その状態でプリントキー34が押下されると,操作表示制御部24は,メイン制御部20に対してプリントキー34が押下されたことを通知する。
メイン制御部20は,このキー押下通知を受けると,読み取り部21に対して原稿読み取りを命令するとともに,読み取った原稿の画像データを画像記憶部23に送出することも合わせて命令する。ここで,画像記憶部23に対して,画像データの蓄積の開始を指示し,以降,受信する原稿の画像データをHD65に保持すると共に印刷部22に送出する旨を通知する。また,このときメイン制御部20内のRAMに保持されているユーザ情報を画像記憶部23に通知する。画像記憶部23のCPU67は,これら情報を受信すると,ファイルIDを生成する。
【0030】
読み取られた原稿画像の電気信号(画像データ)は画像記憶部23に送出されるが,画像記憶部23は受信した電気信号をデジタル信号に変換し,一連の画像処理を施した後,メモリコントローラ66を経由して画像メモリ64に記憶する。
画像メモリ66に記憶された画像データは,メモリコントローラ66により,印刷部22に送出されると共に,メモリコントローラ66内の圧縮処理を受け,HD65に保存される。このとき,画像記憶部23のCPU67は,HD65に保存した画像データに画像IDを割り振り,NV-RAM70にその画像IDと共にHD65におけるその画像データの記憶場所を記憶する。
【0031】
一連の原稿束の原稿読み取りが完了すると,読み取り部21は,ADF1の原稿台2に原稿が戴置されていないことをメイン制御部20に通知すると共に画像記憶部23に対して原稿の画像データが最終ページであることを通知する。
画像記憶部23のCPU67は,最終ページの画像データのHD65への保存が終了すると,その画像データに対応する画像IDを生成し,それをNV-RAM70に記憶すると共に,予め生成しておいたファイルIDと画像データ蓄積開始時の画像IDから最終ページの画像データの画像IDまでのID群,およびユーザ情報を関連付けた蓄積文書ユーザ別管理テーブルを生成する。
このようにして文書データ(原稿の画像データ)の蓄積を複数作成したときの蓄積文書ユーザ別管理テーブルの例を,表2に示す。
【0032】
【表2】



【0033】
〔蓄積文書データの一覧表示の流れ〕
図4の液晶タッチパネル31の「文書一覧」キー39を押下すると,操作表示制御部24からメイン制御部20に対してそのキー押下が通知される。
メイン制御部20は,このキー押下の通知を受けて,メイン制御部20内のRAMに記憶されているユーザ情報(指定されたユーザ情報)に応じた蓄積文書ユーザ別管理テーブルの読み出しを画像記憶部23に依頼する。
【0034】
その依頼を受けた画像記憶部23のCPU67は,HD65から蓄積文書ユーザ別管理テーブルを読み出し,指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルを作成した後,その文書管理テーブルをメイン制御部20へ送出する。
メイン制御部20は,その文書管理テーブルを受け取ると,この文書管理テーブルを元に表示する一覧情報(画像ID列を除いたもの)を作成し,その情報の表示を操作表示制御部24に依頼する。ここで,指定されたユーザ情報が管理者を示すものであった場合は,画像記憶部23に対して全ての蓄積文書データの管理テーブルの読み出しを依頼する。」


D「【0039】
次に,この画像処理装置におけるユーザ登録抹消処理の具体例について,図8を参照して説明する。
図8は,そのユーザ登録抹消処理の具体例を示すフローチャートである。
図4の初期設定キー36の押下によって図5に示した初期設定画面が液晶タッチパネル31に表示され,その初期設定画面上の「ユーザ登録抹消」キー42が押下された後,登録抹消(削除)すべきユーザ情報が指定されると,そのユーザ情報が操作表示制御部24からメイン制御部20へ通知されるため,メイン制御部20は,その通知を受けることによって以下の処理を開始する。
【0040】
すなわち,ステップS1で操作表示制御部24から受けた指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルの読み出しを画像記憶部23に依頼する。その依頼を受けた画像記憶部23のCPU67は,指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルを作成し,それをメイン制御部20に送出するが,指定されたユーザ情報に応じたファイルIDが存在しない場合,つまりそのユーザ情報に対応する文章データが存在しない場合には,「文書データなし」の情報をメイン制御部20に通知する。
メイン制御部20は,その通知を受けると,ステップS2でその通知から指定されたユーザ情報に対応する文書データの有無をチェックする。
【0041】
そして,指定されたユーザ情報に対応する文書データがない場合には,ステップS3に移行して,前述した〔ユーザ登録抹消の流れ〕に従い,ユーザ管理テーブルから対応するユーザ登録を抹消する一連の動作を行う。また,指定されたユーザ情報に対応する文書データがある場合には,画像記憶部23から指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルを受け取るため,管理者設定(管理者登録)の有無をメイン制御部20内のNV-RAM70の内容を参照することによってチェックして,管理者が設定されていれば(管理者情報が記憶されていれば)ステップS3で上述した処理を行う。また,管理者が設定されていない場合には,ステップS5で操作表示制御部24によって管理者未設定である旨を操作部30の液晶タッチパネル31に警告表示させると共に,ユーザ登録抹消(ユーザ情報削除)動作を中止(中断)する。なお,次のような警告手段を用いてもよい。つまり,ランプ,LED等の他の表示手段を備え,その点灯又は点滅によって管理者未設定である旨を警告する。あるいは,スピーカ等の音声手段を備え,その音声出力によって管理者未設定である旨を警告する。あるいはまた,表示による警告と音声出力による警告を組み合わせることもできる。
【0042】
このように,この実施形態の画像処理装置では,入力された情報(ユーザ名,パスワード)と一致するユーザ情報が削除(ユーザ登録が抹消)された場合に,そのユーザ情報に対応する蓄積文書データ(そのユーザが作成者となっている蓄積文書データ)を管理者設定時(入力された情報に一致する管理者情報が記憶されている時)以外アクセス不可とし,管理者未設定である場合は管理者が設定される(入力された情報に一致する管理者情報が記憶される)までは全ての蓄積文書データのアクセスを禁止するので,蓄積文書データ(重要な文書データ)とユーザ情報とを関連付けて,その蓄積文書データへの不正アクセスを阻止すると共に,そのユーザ情報を抹消しても,これに関連付けられている蓄積文書データの削除を防止することができる。よって,蓄積文書データ(重要な文書データ)を安易に削除することなく,その文書データの機密性を維持することが可能になる。
また,いずれかのユーザの登録抹消が指示されたとき,管理者が未設定であれば,その旨を警告するので,誰にも見えない文書データが存在することをユーザに示すことにより,メモリの有効活用を行うことができる。
【0043】
さらに,いずれかのユーザの登録抹消が指示されたとき,そのユーザに対応する蓄積文書データが存在する場合に,管理者が未設定である場合にのみ,そのユーザ登録抹消動作を中断するので,そのユーザに対応する蓄積文書データをメモリに残したままにする可能性が少なくなるため,セキュリティの一層の向上につながる。
なお,いずれかのユーザの登録抹消が指示されたとき,そのユーザに対応する蓄積文書データが存在する場合には,管理者設定の有無に係わらず,そのユーザ登録抹消動作を中断することも可能である。そうすれば,そのユーザに対応する蓄積文書データをメモリに残したままにする可能性が更に少なくなるため,セキュリティのより一層の向上につながる。」

2.引用文献1に記載の発明
(1)上記Aには「この発明は,上記の点に鑑みてなされたものであり,文書データとユーザ情報とを関連付け(対応付け)て,その文書データへの不正アクセスを阻止すると共に,上記ユーザ情報を抹消しても,これに関連付けられている文書データの削除を防止することを目的とする」と記載され,同じく上記Aには「この画像処理装置は,主に読み取り部21,印刷部22(文書出力手段),画像記憶部23(文書蓄積手段),操作部30,およびこれら各部を制御するメイン制御部(メインコントローラ)20によって構成されたデジタル複写機である。 操作部30は,液晶タッチパネル31,キー入力部40,および操作表示制御部24からなる」と記載されていることから,引用文献1には「文書データとユーザ情報とを関連付けて,その文書データへの不正アクセスを阻止すると共に,ユーザ情報を抹消しても,これに関連付けられた文書データの削除を防止することを目的とした,画像記憶部,メイン制御部,操作表示制御部,液晶タッチパネル等からなる画像処理装置」が記載されているといえる。

(2)上記Bには「このユーザ管理テーブルは,例えば表1に示すような構成になっており,これらの情報は画像記憶部23のHD65に格納されている」と記載され,表1には「ID」,「ユーザ名」,「パスワード」の項目が記載されていることから,引用文献1には「ID,ユーザ名,パスワードの項目からなるユーザ管理テーブルを格納した画像記憶部」が記載されているといえる。

(3)上記Cには「画像記憶部23のCPU67は,最終ページの画像データのHD65への保存が終了すると,その画像データに対応する画像IDを生成し,それをNV-RAM70に記憶すると共に,予め生成しておいたファイルIDと画像データ蓄積開始時の画像IDから最終ページの画像データの画像IDまでのID群,およびユーザ情報を関連付けた蓄積文書ユーザ別管理テーブルを生成する」と記載され,表2には「文書ID」,「ユーザID」,「画像ID」の項目が記載されていることから,引用文献1には「ユーザ情報と文書IDとを関連付けた蓄積文書ユーザ別管理テーブル」が記載されている。また,上記Aには「蓄積文書ユーザ別管理手段により上記入力された情報と一致するユーザ情報に対応付けられている上記文書蓄積手段内の文書データ(蓄積文書データ)に対するアクセスのみを許可」と記載されていることから,ユーザ情報に関連付けられている文書IDは,ユーザがアクセスを許可される文書データ(蓄積文書データ)の文書IDといえることから,「ユーザ情報とユーザがアクセスを許可される文書データの文書IDが関連付けられた蓄積文書ユーザ別管理テーブル」が記載されているといえる。更に,上記Cには「依頼を受けた画像記憶部23のCPU67は,HD65から蓄積文書ユーザ別管理テーブルを読み出し」と記載されていることから,「画像記憶部23」には「蓄積文書ユーザ別管理テーブル」が記憶されていることと,上記(2)で検討したことから,引用文献1には「ID,ユーザ名,パスワードの項目からなるユーザ管理テーブルと,ユーザ情報とユーザがアクセスを許可された文書データ(蓄積文書データ)の文書IDと画像IDのID群とユーザ情報を関連付けた蓄積文書ユーザ別管理テーブルを格納する画像記憶部」が記載されているといえる。

(4)上記Dには「登録抹消(削除)すべきユーザ情報が指定されると,そのユーザ情報が操作表示制御部24からメイン制御部20へ通知されるため,メイン制御部20は,その通知を受けることによって以下の処理を開始する(中略)ステップS1で操作表示制御部24から受けた指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルの読み出しを画像記憶部23に依頼する。その依頼を受けた画像記憶部23のCPU67は,指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルを作成し,それをメイン制御部20に送出するが,指定されたユーザ情報に応じたファイルIDが存在しない場合,つまりそのユーザ情報に対応する文書データが存在しない場合には,「文書データなし」の情報をメイン制御部20に通知する。メイン制御部20は,その通知を受けると,ステップS2でその通知から指定されたユーザ情報に対応する文書データの有無をチェックする」と記載されていることから,引用文献1には「登録抹消(削除)すべきユーザ情報が指定され,操作制御部から通知されると,指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルの読み出しを画像記憶部に依頼し,画像記憶部から指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルを受け取り,指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルの有無をチェックするメイン制御部」が記載されているといえる。

(5)上記Dには「指定されたユーザ情報に対応する文書データがある場合には,画像記憶部23から指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルを受け取るため,管理者設定(管理者登録)の有無をメイン制御部20内のNV-RAM70の内容を参照することによってチェックして,管理者が設定されていれば(管理者情報が記憶されていれば)ステップS3で上述した処理を行う。また,管理者が設定されていない場合には,ステップS5で操作表示制御部24によって管理者未設定である旨を操作部30の液晶タッチパネル31に警告表示させると共に,ユーザ登録抹消(ユーザ情報削除)動作を中止(中断)する」と記載されていることから,操作表示制御部24が,液晶タッチパネル31に警告表示させるのは,指定されたユーザ情報(登録抹消すべきユーザ情報)に対応する文書データがあり,管理者が設定されていない場合といえるから,引用文献1には「指定されたユーザ情報に対応する文書データがある場合には,管理者設定(管理者登録)の有無をチェックし,管理者が設定されていない場合には,操作表示制御部によって,管理者未設定である旨を計液晶タッチパネルに警告表示させると共に,ユーザ登録抹消(ユーザ情報削除)動作を中止(中断)するメイン制御部と,指定されたユーザ情報(登録抹消すべきユーザ情報)に対応する文書データがあり管理者が設定されていない場合,管理者未設定である旨を警告表示する液晶タッチパネル」が記載されているといえる。

(6)上記Dには「いずれかのユーザの登録抹消が指示されたとき,そのユーザに対応する蓄積文書データが存在する場合には,管理者設定の有無に係わらず,そのユーザ登録抹消動作を中断することも可能である」と記載されていることから,引用文献1には「ユーザの登録抹消が指示がされたとき,ユーザに対応する蓄積文書データが存在する場合には,管理者設定の有無に係わらず,ユーザ登録抹消動作を中断することが可能である」ことが記載されている。

(7)上記Cには「液晶タッチパネル31の「文書一覧」キー39を押下すると,操作表示制御部24からメイン制御部20に対してそのキー押下が通知される。メイン制御部20は,このキー押下の通知を受けて,メイン制御部20内のRAMに記憶されているユーザ情報(指定されたユーザ情報)に応じた蓄積文書ユーザ別管理テーブルの読み出しを画像記憶部23に依頼する(中略)その依頼を受けた画像記憶部23のCPU67は,HD65から蓄積文書ユーザ別管理テーブルを読み出し,指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルを作成した後,その文書管理テーブルをメイン制御部20へ送出する。 メイン制御部20は,その文書管理テーブルを受け取ると,この文書管理テーブルを元に表示する一覧情報(画像ID列を除いたもの)を作成し,その情報の表示を操作表示制御部24に依頼する」と記載されていることから,「蓄積文書ユーザ別管理テーブル」と「文書管理テーブル」には,上記Cの表2より,文書ID,ユーザID,画像IDが含まれており,指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルを元に表示する一覧情報(画像ID列を除いたもの)には,画像IDが除かれるものの,指定されたユーザ情報に応じた文書IDが含まれると解される。その文書IDが含まれる一覧を操作表示制御部24が表示させているといえる。そうすると,引用文献1には「液晶タッチパネル31の文書一覧キーを押下すると,指定されたユーザ情報に応じた文書IDを含む一覧情報を表示させる操作表示制御部」が記載されているといえる。

(8)上記(1)ないし(7)の検討より,引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。

「文書データとユーザ情報とを関連付けて,その文書データへの不正アクセスを阻止すると共に,ユーザ情報を抹消しても,これに関連付けられた文書データの削除を防止することを目的とした,画像記憶部,メイン制御部,操作表示制御部,液晶タッチパネル等からなる画像処理装置であって,
ID,ユーザ名,パスワードの項目からなるユーザ管理テーブルと,ユーザ情報とユーザがアクセスを許可された文書データ(蓄積文書データ)の文書IDとを関連付けた蓄積文書ユーザ別管理テーブルを格納する画像記憶部と,
登録抹消(削除)すべきユーザ情報が指定され,操作制御部から通知されると,指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルの読み出しを画像記憶部に依頼し,画像記憶部から指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルを受け取り,指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルの有無をチェックするメイン制御部と,
指定されたユーザ情報に対応する文書データがある場合には,管理者設定(管理者登録)の有無をチェックし,管理者が設定されていない場合には,操作表示制御部によって,管理者未設定である旨を液晶タッチパネルに警告表示させると共に,ユーザ登録抹消(ユーザ情報削除)動作を中止(中断)するメイン制御部と,
指定されたユーザ情報(登録抹消すべきユーザ情報)に対応する文書データがあり管理者が設定されていない場合,管理者未設定である旨を警告表示する液晶タッチパネルと,
ユーザの登録抹消が指示がされたとき,ユーザに対応する蓄積文書データが存在する場合には,管理者設定の有無に係わらず,ユーザ登録抹消動作を中断することが可能であり,
液晶タッチパネルの文書一覧キーを押下すると,
指定されたユーザ情報に応じた文書IDを含む一覧情報を表示させる操作表示制御部と,
を備えることを特徴とする画像処理装置。」

第4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「文書データとユーザ情報とを関連付けて,その文書データへの不正アクセスを阻止すると共に,ユーザ情報を抹消しても,これに関連付けられた文書データの削除を防止することを目的とした,画像記憶部,メイン制御部,操作表示制御部,液晶タッチパネル等からなる画像処理装置」と本願発明の「データ管理装置」とを対比すると,
引用発明の「ユーザ情報を抹消してもこれに関連付けられた文書データの削除を防止することを目的とした」「画像処理装置」は,本願明細書【0006】に「利用者情報の削除の際に,利用者情報の削除によってアクセスができなくなるデータファイルの発生を抑制したデータ管理装置(中略)を提供することを目的とする」と記載されているように,発明の目的が共通するといえるので,引用発明の「画像処理装置」は本願発明の「データ管理装置」に対応する。

イ 引用発明の「ID,ユーザ名,パスワードの項目からなるユーザ管理テーブルと,ユーザ情報とユーザがアクセスを許可された文書データ(蓄積文書データ)の文書IDとを関連付けた蓄積文書ユーザ別管理テーブルを格納する画像記憶部」と本願発明の「利用者を識別する利用者登録情報を登録した利用者管理テーブルと,利用者情報と当該利用者情報に対応する利用者が操作を許可されたデータファイルを識別するファイル識別情報とを関連付けて登録したファイル管理テーブルとを記憶する記憶部」とを対比すると,
引用発明の「ID,ユーザ名,パスワードの項目からなるユーザ管理テーブル」は利用者(ユーザ)を識別する利用者登録情報(ユーザ情報)を登録しているといえるので,本願発明の「利用者を識別する利用者登録情報を登録した利用者管理テーブル」に相当し,引用発明の「ユーザ情報とユーザがアクセスを許可された文書データ(蓄積文書データ)の文書IDとを関連付けた蓄積文書ユーザ別管理テーブル」は,利用者情報(ユーザ情報)と当該利用者情報(ユーザ情報)に対応する利用者(ユーザ)の操作(アクセス)が許可されたデータファイル(文書データ)を識別するファイル識別情報(文書ID)とを関連付けて登録しているといえるので,本願発明の「利用者情報と当該利用者情報に対応する利用者が操作を許可されたデータファイルを識別するファイル識別情報とを関連付けて登録したファイル管理テーブル」に相当する。そうすると,引用発明の「画像記憶部」は,本願発明の「記憶部」に相当し,両者に実質的な差異はない。

ウ 引用発明の「登録抹消(削除)すべきユーザ情報が指定され,操作制御部24から通知されると,指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルの読み出しを画像記憶部に依頼し,画像記憶部から指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルを受け取り,指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルの有無をチェックするメイン制御部」と,本願発明の「利用者情報の削除要求を受け付けると,削除要求を受け付けた利用者情報に関連づけられたデータファイルのファイル識別情報が前記ファイル管理テーブルに登録されているか否かを判定する判定部」とを対比すると,
引用発明の「登録抹消(削除)すべきユーザ情報が指定され,操作制御部から通知される」ことは,本願発明の「利用者情報の削除要求を受け付ける」ことに相当し,引用発明の「指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルの読み出しを画像記憶部に依頼し,画像記憶部から指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブル」は,登録抹消(削除)要求を受け付けた利用者情報(ユーザ情報)に関連付けられた(応じた)データファイルのファイル識別情報がファイル管理テーブル(文書管理テーブル)に登録されているといえるので,引用発明の「指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルの有無をチェックする」ことは,削除要求を受け付けた利用者情報(指定されたユーザ情報)に関連付けられたデータファイルのファイル識別情報(文書ID)がファイル管理テーブルに登録されているか否かを判定することといえ,引用発明の「指定されたユーザ情報に応じた文書管理テーブルの有無をチェックするメイン制御部」は,本願発明の「削除要求を受け付けた利用者情報に関連づけられたデータファイルのファイル識別情報が前記ファイル管理テーブルに登録されているか否かを判定する判定部」に相当する。そうすると,両者に実質的な差異はない。

エ 引用発明の「指定されたユーザ情報に対応する文書データがある場合には,管理者設定(管理者登録)の有無をチェックし,管理者が設定されていない場合には,操作表示制御部によって,管理者未設定である旨を計液晶タッチパネルに警告表示させると共に,ユーザ登録抹消(ユーザ情報削除)動作を中止(中断)するメイン制御部と,指定されたユーザ情報(登録抹消すべきユーザ情報)に対応する文書データがあり管理者が設定されていない場合,管理者未設定である旨を警告表示する液晶タッチパネル」と,本願発明の「前記判定部により削除要求を受け付けた利用者情報に関連付けられたファイル識別情報が前記ファイル管理テーブルに登録されていると判定された場合に,前記削除要求を受け付けた利用者情報に関連付けられたファイル識別情報を表示する表示部」とを対比すると,
引用発明の「指定されたユーザ情報に対応する文書データがある場合には,管理者設定(管理者登録)の有無をチェックし,管理者が設定されていない場合には,操作表示制御部によって,管理者未設定である旨を液晶タッチパネルに警告表示させると共に,ユーザ登録抹消(ユーザ情報削除)動作を中止(中断)するメイン制御部」は,メイン制御部(判定部)により指定されたユーザ情報(削除要求を受けた利用者情報)に関連付けられたファイル識別情報(文書ID)がある場合,操作表示制御部(表示部)に判定結果に応じた内容(理由)を表示させているといえ,引用発明の「指定されたユーザ情報(登録抹消すべきユーザ情報)に対応する文書データがあり管理者が設定されていない場合,管理者未設定である旨を警告表示する液晶タッチパネル」と本願発明の「前記削除要求を受け付けた利用者情報に関連付けられたファイル識別情報を表示する表示部」とは「前記判定結果に応じた内容(理由)を表示する表示部」という点で共通する。
そうすると,両者は後記する点で相違するものの,
“前記判定部により削除要求を受け付けた利用者情報に関連付けられたファイル識別情報が前記ファイル管理テーブルに登録されていると判定された場合に,前記判定結果に応じた内容(理由)を表示する表示部”という点で,一致する。

オ 上記アないしエの検討より,以下の点で一致し,以下の点で相違する。
<一致点>
利用者を識別する利用者登録情報を登録した利用者管理テーブルと,利用者情報と当該利用者情報に対応する利用者が操作を許可されたデータファイルを識別するファイル識別情報とを関連付けて登録したファイル管理テーブルとを記憶する記憶部と,
利用者情報の削除要求を受け付けると,削除要求を受け付けた利用者情報に関連づけられたデータファイルのファイル識別情報が前記ファイル管理テーブルに登録されているか否かを判定する判定部と,
前記判定部により削除要求を受け付けた利用者情報に関連付けられたファイル識別情報が前記ファイル管理テーブルに登録されていると判定された場合に,前記判定結果に応じた内容(理由)を表示する表示部と,を有することを特徴とするデータ管理装置。

<相違点>
判定結果に応じた内容(理由)を表示する表示部に関し,
本願発明では「前記判定部により削除要求を受け付けた利用者情報に関連付けられたファイル識別情報が前記ファイル管理テーブルに登録されていると判定された場合に,前記削除要求を受け付けた利用者情報に関連付けられたファイル識別情報を表示する表示部」であるの対して,引用発明では「指定されたユーザ情報(登録抹消すべきユーザ情報)に対応する文書データがあり管理者が設定されていない場合,管理者未設定である旨を警告表示する表示部」であるものの,そのように特定されていない点。

第5.当審判断
1.相違点について
引用発明の「液晶タッチパネル31の文書一覧キーを押下すると,指定されたユーザ情報に応じた文書IDを含む一覧情報を表示する」ことは,指定された利用者情報(ユーザ情報)に関連付けられたファイル識別情報(文書IDを含む一覧情報)を表示する機能を備えているといえる。
また,引用発明の「ユーザの登録抹消が指示がされたとき,ユーザに対応する蓄積文書データが存在する場合には,管理者設定の有無に係わらず,ユーザ登録抹消動作を中断することが可能」であることは,管理者設定の有無に係わらず,ユーザに対応する蓄積文書データが存在するだけで,ユーザ登録抹消動作を中断する態様が記載されており,この態様において警告表示を行うことについて明記されていないものの,判定部により削除要求を受け付けた利用者情報に関連付けられたファイル識別情報が前記ファイル管理テーブルに登録されていると判定された場合に,ユーザ登録抹消動作を中断するという判定結果に応じた内容(理由)として「指定された利用者情報(ユーザ情報)に関連付けられたファイル識別情報(文書IDを含む一覧情報)」が存在することであり,それを表示させる動機付けがあるといえる。
そうすると,管理者設定の有無に係わらず,ユーザに対応する蓄積文書データが存在するだけで,ユーザ登録抹消動作を中断する態様において,ユーザ登録抹消を中断するという判定結果に応じた内容(理由)として,引用発明の「指定されたユーザ情報に応じた文書IDを含む一覧情報を表示する」ことに格別の困難性が認められない。この場合の「ユーザに対応する蓄積文書データ」の「ユーザ」が「登録抹消が指示されたユーザ情報」となることは明らかであり,その「ユーザ」を「指定されたユーザ情報」となることも明らかであるので,引用発明において「判定部により削除要求を受け付けた利用者情報に関連付けられたファイル識別情報が前記ファイル管理テーブルに登録されていると判定された場合に,前記削除要求を受け付けた利用者情報に関連付けられたファイル識別情報を表示する」ことは当業者が容易に想到し得ることである。
そして,本願発明の構成によってもたらされる効果も,当業者であれば容易に予測できる程度のものであって,格別なものとは認められない。

第6.むすび
したがって,本願発明は,本願出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-22 
結審通知日 2017-03-28 
審決日 2017-04-11 
出願番号 特願2012-61056(P2012-61056)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 須田 勝巳
高木 進
発明の名称 データ管理装置、データ管理方法及びデータ管理プログラム  
代理人 片山 修平  

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