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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1328642
審判番号 不服2014-26783  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-26 
確定日 2017-05-22 
事件の表示 特願2012-113219「時限パルス放出システム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年8月16日出願公開、特開2012-153724〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成18年5月1日(優先権主張:2005年5月2日(米国))を国際出願日とする特許出願である特願2008-510092号の一部を平成24年5月17日に新たな特許出願としたものであって、平成26年8月28日付けで拒絶査定がなされたのに対して、同年12月26日に拒絶査定不服の審判請求がなされると同時に手続補正書が提出され、平成28年4月12日付けで当審から拒絶の理由が通知され、同年10月13日に意見書及び誤訳訂正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1-36に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明36」という。)は、平成28年10月13日提出の誤訳訂正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-36に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、本願発明1及び12は次のとおりである。

(1)本願発明1
「1種または複数種の時限パルス放出ビーズを含む医薬組成物であって、
少なくとも1種の時限パルス放出ビーズが、
a)わずかに酸性の活性薬剤成分またはその薬学的に許容される塩を含むコア粒子と、
b)水不溶性高分子を水溶性造孔高分子と組み合わせて含む内側バリアコーティングと、
c)水不溶性高分子を腸溶性高分子と組み合わせて含む外側遅延コーティングと、
を含み、
USP装置1または2、および二段階溶出溶媒(最初に700mLの0.1NのHCl中に2時間、その後に900mL(pH6.8)中)を用いて試験を行ったときに、前記時限パルス放出ビーズが薬物放出開始までに少なくとも6時間の遅延時間をもたらし、
前記水不溶性高分子が、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ酢酸ビニル、メタクリル酸メチルエステルの重合体、アクリル酸エチルとメタクリル酸メチルとの中性共重合体、アクリル酸エステルとメタアクリル酸エステルとの共重合体、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記水溶性造孔高分子が、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記腸溶性高分子が、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ酢酸ビニルフタレート、pH感受性メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、シェラック、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記内側バリアコーティングにおける水不溶性高分子と水溶性造孔高分子との重量比が9:1?1:1の範囲に及び、
前記外側遅延コーティングにおける前記水不溶性高分子と前記腸溶性高分子との重量比が10:1?1:2の範囲に及ぶ、医薬組成物。」

(2)本願発明12
「a)わずかに酸性の活性薬剤成分またはその薬学的に許容される塩を含む即時放出ビーズを製造するステップと、
b)内側バリアコーティングを前記即時放出ビーズに施すステップであって、前記内側バリアコーティングが水不溶性高分子を水溶性造孔高分子と組み合わせて含む、ステップと、
c)水不溶性高分子を腸溶性高分子と組み合わせて含む外側遅延コーティングを、工程b)の内側バリアコーティングを施したビーズまたはa)工程の即時放出ビーズに施すことによって、時限パルス放出ビーズ集団を形成するステップと、
d)カプセル剤または錠剤の形態で1種または複数種の時限パルス放出ビーズおよび即時放出ビーズ集団を合わせるステップと
を含む、医薬組成物の製造方法であって、
前記水不溶性高分子が、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリ酢酸ビニル、メタクリル酸メチルエステルの重合体、アクリル酸エチルとメタクリル酸メチルとの中性共重合体、アクリル酸エステルとメタアクリル酸エステルとの共重合体、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記水溶性造孔高分子が、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記腸溶性高分子が、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ酢酸ビニルフタレート、pH感受性メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、シェラック、およびそれらの混合物からなる群から選択され、
前記内側バリアコーティングにおける水不溶性高分子と水溶性造孔高分子との重量比が9:1?1:1の範囲に及び、
前記外側遅延コーティングにおける前記水不溶性高分子と前記腸溶性高分子との重量比が10:1?1:3の範囲に及ぶ、製造方法。」

3 本願明細書の記載
本願の明細書には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
技術分野
本発明は、約5時間を超える所定の遅延(遅延時間)の後に薬物を放出する1種または複数種のアルカリ性医薬品の活性成分(actives)を含む時限パルス放出ビーズ集団(timed、pulsatile release bead populations)の開発に関し、さらに一日2回または1回の投与計画に適した目標PK(薬物動態、すなわち、血漿濃度-時間)プロファイルの経口薬物送達システムの提供に関するものであり、これによって、有害な副作用の潜在的な危険をできるだけなくし、患者のコンプライアンスおよび治療効果を向上させ、治療コストが削減される。」

(2)「【0008】
発明の概要
本発明は、酸性度/アルカリ性度、胃腸液への溶解度、およびその排出半減期に応じて、特定治療薬の経口投与による一日2回または一日1回の投与計画に適したパルス送達システムを提供する。このパルス送達システムは、即時放出(immediate release)(IR)ビーズおよび時限パルス放出(TPR)ビーズ集団などの1種または複数種のビーズ集団を含む。経口投与されると、所定の遅延時間(例えば、10時間以上が実現可能)の後に、各TPRビーズ集団は薬物を急速破裂または徐放性で放出する。IRビーズは、保護膜で被覆された単なる薬物コアであってよい(例えば、オパドライ・クリア(Opadry Clear)によるコーティング)。バリアコーティングを有するこうしたIRビーズを水不溶性高分子と腸溶性高分子の混合物の機能性膜で被覆し、可塑化高分子系は水性組成物または溶剤をベースとする組成物から施す。完成品の剤形は、一日1回または2回の投与計画に適した目標血漿濃度になるように、修飾放出(modified-release)(MR)カプセル、普通の(従来の)錠剤、または活性物質を含む被覆球状ビーズ集団を単独で含むかまたは2種以上の被覆ビーズ集団を含む口腔内崩壊錠(ODT)であってもよい。例えば、排出半減期が約7時間である活性成分の一日1回の剤形は、IRビーズ集団(即時放出が可能)、遅延時間の短い(約3?4時間)第2のTPRビーズ集団(遅延「破裂」放出が可能)、および遅延時間の長い(約6?9時間)第3のTPRビーズ集団(排出半減期が約7時間である活性成分の、遅延した(通常は)徐放プロファイルが可能)の混合物を含むことができ、これによって安全性、治療効果および患者のコンプライアンスが向上すると同時に、治療コストが削減される。達成可能な遅延時間は、バリアコーティングの組成と厚さ、遅延コーティングの組成と厚さ、ならびに治療薬の性質に依存する。遅延時間に影響する具体的な因子としては、治療薬のアルカリ性度/酸性度、溶解度、排出半減期、および投与計画(一日2回または一日1回)などがあるが、これらに限定されない。」

(3)「【0010】
発明の詳細な説明
活性薬剤成分(API)は、通常、精製水に懸濁させたときにわずかに酸性または塩基性のいずれかである(表1を参照)。酸性度またはアルカリ性度の程度は著しく異なる。例えば、pHは、塩酸プロプラノロールの場合のわずか5.7?6.5からニザチジンの場合のpH6.5?8.7、アテノロールの場合の7.9?11.0ものpHまでの範囲に及びうる。固形分が2g/mLで水中に懸濁されたときに7.0以下のpHを示す活性薬剤成分は、本発明の開示においては酸性薬物と呼び、7.0以上のpHを示すAPIはアルカリ性薬物と呼ぶ。
【0011】
【表1】


【0012】
経口投与されたときに薬物放出の開始を数時間遅らせるのに通常使用するポリマーブレンド系は、水不溶性高分子と腸溶性高分子の混合物であるので、遅延の程度は、APIの酸性度/アルカリ性度によって異なる。本発明は、時限パルス放出プロファイル(すなわち、経口投与の数時間後に発生する良好に時間制御された単一パルスまたは一連のパルス)を有する薬剤的に優れた多粒子剤形の製造方法を提供する。本発明はまた、活性コア、中間バリアコーティングおよび水不溶性高分子と腸溶性高分子の混合物である外膜を有する多層被覆(multicoated)の多粒子剤形も提供する。IRビーズに施されるバリアコーティングは、腸溶性高分子、水不溶性高分子、または水不溶性高分子と水溶性高分子の混合物を含んでよい。バリアコーティングと外膜の形成に使用する高分子は可塑化されていてもよい。」

(4)「【0017】
一般に、活性コア上の個別の高分子コーティングは、活性成分の性質、バリアコートの組成および所望の遅延時間に応じて、約1.5?60重量%まで変化する。1つの実施態様では、約5?20時間にわたって薬物放出を持続させるために約1.5?15重量%の可塑化水不溶性高分子(エチルセルロース(EC)など)のバリアコートを有した高い薬物負荷を有するコアを提供することができる。他のある特定の実施態様では、約5?20重量%の可塑化腸溶性高分子(フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)など)のバリアコートを有する高い薬物負荷を有するコアを提供することができる。本発明のさらに別の実施態様では、遅延時間を約10時間以上まで延ばすために約30?60重量%だけ重量増加するように約45.5/40/14.5のEC/HPMCP/可塑剤の外側遅延コーティングを有する活性コアを提供することができる。
【0018】
水溶性/分散性薬物含有粒子(IRビーズ)上のバリアおよび外側(以下、「遅延時間」と呼ぶ)の両方の膜コーティングは可塑剤を含んでよい。中間膜またはバリア膜は、腸溶性高分子(フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)など)または水不溶性高分子(例えば、エチルセルロース)を単独で、または1種または複数種の水溶性/造孔高分子(HPMC、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリビニルピロリドン(PVP)など)と一緒に含むことができる。バリアコーティングが水不溶性高分子を水溶性/造孔高分子と一緒に含む場合、高分子は典型的には約9:1?5:5(水不溶性高分子対水溶性高分子)の比率で存在する。バリアコーティングは典型的には、約1.5?15重量%だけ重量増加するように施される。」

(5)「【0045】
実施例2(比較例):
A.プロプラノロールHClのIRビーズ:
プロプラノロールHCl(168kg)を、ポリビニルピロリドン(8.8kgのポビドン(povidone)K-30)の水溶液中にゆっくり添加してよく混合した。25-30メッシュの糖球(117.2kg)を、32インチの下部噴霧ウルスター(Wurster)インサートを装備したグラット(Glatt)流動床造粒機を用いて、薬物溶液で被覆した。薬物含有ペレットを乾燥させてから、オパドライ・クリア(Opadry Clear)(6.0kg)のシールコートを最初に施し、過剰の表面水分を飛ばす予防手段としてグラット(Glatt)流動床装置で乾燥させた。薬物負荷は56%(w/w)であった。
【0046】
B.HPMCPのバリアコーティングを有するプロプラノロールHClビーズ:
上記のように製造したIRビーズを、被覆ビーズの重量を基準にして10%だけ重量増加するように、下部噴霧ウルスター(Wurster)インサートを装備したグラット(Glatt)GPCG 5を用いて、アセトン/水(98/2)中に溶解させたHPMCPおよびTECを90/10の比率で被覆した。
【0047】
C.プロプラノロールHClのTPRビーズ(バリアコーティングなし):
上記のステップAで製造されたIRビーズを、被覆ビーズの重量を基準にして20%、30%および40%だけ重量増加するように、グラット(Glatt)GPCG 5を用いて、アセトン/水(98/2)中に45.5/40/14.5の比率で溶かしたエチルセルロース、HPMCPおよびクエン酸トリエチルで被覆した。
【0048】
D.プロプラノロールHClのTPRビーズ(ECのバリアコートを有する):
ステップAで製造したIRビーズを、1.8重量%だけ重量増加するように、流動床装置(32インチの下部噴霧ウルスター(Wurster)インサートを装備したフルイド・エア(Fluid Air)FA0300)を用いて、エチルセルロースおよび可塑剤としてフタル酸ジエチル(DEP)を90/10の比率で被覆した。このコーティングの後、被覆ビーズの重量を基準にして15%だけ重量増加するように、アセトン/水(98/2)中に45.5/40/14.5の比率で溶かしたEC/HPMCP/DEPの遅延コーティングを施した。」

(6)「【0051】
薬物放出プロファイル:
完成品のカプセルは、所望の遅延時間を示す1種または複数種のTPRビーズ集団を含むか、または所望の比率でIRビーズも一緒に含むことができ、かつ目標インビトロ薬物放出プロファイルをもたらすのに十分な量だけ、それゆえに一日2回または一日1回の投与計画に適した目標薬物動態(PK)プロファイルをもたらすのに十分な量だけ、含むことができる。上記の溶出試験手順の後にインビトロ条件で試験すると、負荷投与量を与えるように設計されているIRビーズは、通常、1時間以内に、好ましくは最初の30分以内に薬物を実質的に全部放出する。時限パルス放出(TPR)ビーズは、最高で数時間(経口投与後の最小薬物放出(投与量の約10%未満)の期間)の遅延後に薬物放出を開始するよう設計されている。このパルスは、遅延コーティングおよび/またはバリアコートの厚さに応じて、急速破裂であるかまたは約2時間?約20時間の範囲の期間にわたる拡散であってよい。
【0052】
HPMCPで被覆されたニザチジンおよびプロプラノロールのビーズの耐酸性
実施例1BのニザチジンIRビーズに施された腸溶性高分子コーティングは、1時間以内に多かれ少なかれ崩壊して、酸性緩衝液中に投与量のほとんどを放出したが、腸溶性高分子は溶解しないことになっていた。それに対して、実施例2Bの塩酸プロプラノロールの腸溶性被覆ビーズでは、pH1.2での1.5時間の溶出試験において放出されたのは投与量のせいぜい1%であり、予期された耐酸性を示した。理論に縛られることは望まないが、被覆ニザチジンビーズのコアに吸収された水分が一部のニザチジンを溶解してアルカリ性pH環境が生じ、その環境により、たとえ溶出溶媒が酸性であっても、腸溶性被覆IRビーズ上の腸溶性高分子膜が破壊される傾向があると思われる。
【0053】
遅延時間に対するバリアコートの効果:
バリアコートなしのTPRビーズの薬物放出プロファイルを示している図1および2を比較すると、30重量%だけEC/HPMCPで被覆されたニザチジン(わずかにアルカリ性の薬物)被覆のTPRビーズは、遅延時間が3時間未満であることが明白である。それに対して、同じコーティング厚さの同じポリマーブレンドで被覆されたプロプラノロールHCl(わずかに酸性の薬物)のTPRビーズは、遅延時間が約5時間であることを示している。同じコーティング条件および組成物でのニザチジンとプロプラノロールHClのTPRビーズを観察して分かる遅延時間を比較すると、遅延時間を与える点で酸性度/アルカリ性度が重要な役割を果たしていることが明らかである(図3)。
【0054】
図4および5は、ニザチジンのビーズで達成できる遅延時間に対するバリアコーティングの効果を示している。例えば、40重量%のコーティングでは、腸溶性高分子バリアの場合には約5時間の遅延時間がもたらされるが、EC/HPCの疎水性バリアが多くなると、約8時間の遅延時間の実現が可能になる。これらの相違は図6からより明確になり、図6では、30%のコーティングのTPRビーズからの薬物放出プロファイルを示しており、i)バリアコーティングがない場合、ii)腸溶性高分子のバリアコーティングを有する場合、またはiii)疎水性のポリマーブレンドの場合について示している。疎水性の水不溶性高分子(エチルセルロースなど)を有するバリアコーティングは、アルカリ性薬物のTPRビーズの腸溶性高分子のバリアコーティングと比べて遅延時間が長くなることが明らかである。
【0055】
上記の説明から、活性薬剤成分のアルカリ性度/酸性度は、所定のコーティング条件で達成できる遅延時間にかなりの影響を及ぼすことが明白である。ニザチジンよりもアルカリ性であるアテノロールなどの別の活性成分は、ニザチジンよりも遅延時間が短くなると予期されるであろう。もちろん、適切な高分子を単独で、または膜の改質剤と一緒に(例えば、疎水性のエチルセルロース単独または水溶性のヒドロキシプロピルセルロースと一緒に)含むバリアコーティングを設けることにより、遅延時間を増大させることができる。膜の厚さを変えて、遅延時間をさらに微調整することもできる。」

4 当審の判断-特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第1号について-
(1)実施可能要件について
ア 本願発明1は、「わずかに酸性」の活性薬剤成分またはその薬学的に許容される塩を含む「コア粒子」に、「水不溶性高分子を水溶性造孔高分子と組み合わせて含む内側バリアコーティング」と「水不溶性高分子を腸溶性高分子と組み合わせて含む外側遅延コーティング」とを順に施して、「薬物放出開始までに少なくとも6時間の遅延時間をもたら」すようにした「時限パルス放出ビーズ」を含むものと解されるところ、かかる「時限パルス放出ビーズ」がどのようにすれば「薬物放出開始までに少なくとも6時間の遅延時間をもたら」すものとすることができるのか、すなわち、この遅延時間「薬物放出開始までに少なくとも6時間」は実施しうるのか、明細書の記載は当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

イ 本願明細書には、「経口投与されると、所定の遅延時間(例えば、10時間以上が実現可能)の後に、各TPRビーズ集団は薬物を急速破裂または徐放性で放出する。…例えば、排出半減期が約7時間である活性成分の一日1回の剤形は、IRビーズ集団(即時放出が可能)、遅延時間の短い(約3?4時間)第2のTPRビーズ集団(遅延「破裂」放出が可能)、および遅延時間の長い(約6?9時間)第3のTPRビーズ集団(排出半減期が約7時間である活性成分の、遅延した(通常は)徐放プロファイルが可能)の混合物を含むことができ、これによって安全性、治療効果および患者のコンプライアンスが向上すると同時に、治療コストが削減される。達成可能な遅延時間は、バリアコーティングの組成と厚さ、遅延コーティングの組成と厚さ、ならびに治療薬の性質に依存する。」(【0008】)、「一般に、活性コア上の個別の高分子コーティングは、活性成分の性質、バリアコートの組成および所望の遅延時間に応じて、約1.5?60重量%まで変化する。1つの実施態様では、約5?20時間にわたって薬物放出を持続させるために約1.5?15重量%の可塑化水不溶性高分子(エチルセルロース(EC)など)のバリアコートを有した高い薬物負荷を有するコアを提供することができる。…本発明のさらに別の実施態様では、遅延時間を約10時間以上まで延ばすために約30?60重量%だけ重量増加するように約45.5/40/14.5のEC/HPMCP/可塑剤の外側遅延コーティングを有する活性コアを提供することができる。」(【0017】)と記載され、また、本願発明1の規定を満たさないが(内側バリアコーティングに相当する構成がない。)、水不溶性高分子であるエチルセルロースと腸溶性高分子であるフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む外側遅延コーティングを施した実施例2C(【0047】)は、図2において、40%重量増加するように適用すると、少なくとも6時間放出が遅延すること、図2及び3において、ビーズの重量あたり外側遅延コーティングを増加させると、遅延時間が長くなることが示されている。
さらに、本願明細書には、「時限パルス放出(TPR)ビーズは、最高で数時間(経口投与後の最小薬物放出(投与量の約10%未満)の期間)の遅延後に薬物放出を開始するよう設計されている。このパルスは、遅延コーティングおよび/またはバリアコートの厚さに応じて、急速破裂であるかまたは約2時間?約20時間の範囲の期間にわたる拡散であってよい。」(【0051】)、「適切な高分子を単独で、または膜の改質剤と一緒に(例えば、疎水性のエチルセルロース単独または水溶性のヒドロキシプロピルセルロースと一緒に)含むバリアコーティングを設けることにより、遅延時間を増大させることができる。膜の厚さを変えて、遅延時間をさらに微調整することもできる。」(【0055】)と記載されている。
しかし、明細書には、「薬物放出開始までに少なくとも6時間の遅延時間」をもたらす「時限パルス放出ビーズ」の例が存在しない。明細書の如何なる記載からも、「a)わずかに酸性の活性薬剤成分またはその薬学的に許容される塩を含むコア粒子と、b)水不溶性高分子を水溶性造孔高分子と組み合わせて含む内側バリアコーティングと、c)水不溶性高分子を腸溶性高分子と組み合わせて含む外側遅延コーティングと」を含んだ「時限パルス放出ビーズ」が、「薬物放出開始までに少なくとも6時間の遅延時間」をもたらすことが確認できない。

ウ ところで、実施例2Cにおいて、「水不溶性高分子を腸溶性高分子と組み合わせて含む外側遅延コーティング」は有するものの、「水不溶性高分子を水溶性造孔高分子と組み合わせて含む内側バリアコーティング」を有さず、被覆ビーズの重量を基準にして40%重量増加するように該外側遅延コーティングを施したものは6時間の遅延時間を有することが確認できる。
しかし、本願発明1は、被覆ビーズの重量を基準にして40%重量増加するように該外側遅延コーティングを施したものに限定されるものではなく、被覆ビーズの重量を基準にして40%の重量増加がなされていない該外側遅延コーティングを施したものが6時間の遅延時間を有するとはいえない。
そして、「水不溶性高分子を水溶性造孔高分子と組み合わせて含む内側バリアコーティング」が存在する場合、6時間の遅延時間を有することとなるのかは、本願明細書の記載からは確認できない。
「適切な高分子を単独で、または膜の改質剤と一緒に(例えば、疎水性のエチルセルロース単独または水溶性のヒドロキシプロピルセルロースと一緒に)含むバリアコーティングを設けることにより、遅延時間を増大させることができる。」(【0055】)との記載に鑑みると、遅延時間の増大は、どの程度の増大かは確定できないが、水不溶性高分子とみなされる「疎水性」高分子の使用で達成されると解され、「水溶性」高分子をさらに加えることで遅延時間がさらに増大するかは明らかでない。そして、本願発明1が内側バリアコーティングにおいて、水不溶性高分子に「水溶性造孔高分子と組み合わせて含む」ようにしたことで、「わずかに酸性の活性薬剤成分またはその薬学的に許容される塩」の放出開始までの遅延時間が増大するようになったと解される根拠を、本願明細書から見いだすことができない。

エ 請求人は、平成28年10月13日提出の意見書において、「実施例2Cで示唆されているとおり、実施例2Dに記載のような、不水溶性ポリマーであるエチルセルロースと腸溶性ポリマーであるヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む外側遅延コーティングは、コーティングされたビーズの重量あたり、40%重量増加するように適用すると、少なくとも6時間放出が遅延することが示されています(図2)。…本願発明に係る組成物が少なくとも6時間という遅延時間を有し得ることは図2からあ明らかです。実際、図2で使用された組成物に対し完全なバリアコーティングを追加すると遅延時間を減少させるのではなく反対の効果をもたらすため、図2の結果から、本発明により「少なくとも6時間の遅延時間」が提供されることがご理解頂けるものと出願人は思料致します。」と主張するが、仮に、実施例2D、すなわち、水不溶性高分子からなる内側バリアコーティングを有するものが「少なくとも6時間の遅延時間」を提供するものとしても、水不溶性高分子を「水溶性造孔」高分子と組み合わせて含む内側バリアコーティングを有するものまでも「少なくとも6時間の遅延時間」を提供するものといえるかは何ら明らかでない。

オ 以上のとおり、本願の発明の詳細な説明には、本願発明1が、「USP装置1または2、および二段階溶出溶媒(最初に700mLの0.1NのHCl中に2時間、その後に900mL(pH6.8)中)を用いて試験を行ったときに、前記時限パルス放出ビーズが薬物放出開始までに少なくとも6時間の遅延時間をもたらし、」との規定を満たすように実施しうることの記載があるとはいえない。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、本願発明1を実施しうる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。
そして、本願発明1を引用する本願発明2-11、14-21、及び23-36についても同様、本願の発明の詳細な説明は、係る発明を実施しうる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。

(2)サポート要件について
本願発明は上記2で認定したとおりであり、また、本願の発明の詳細な説明には上記3(1)-(6)の記載がある。
そして、上記(1)のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明1-11、14-21、及び23-36は、本願発明の課題の解決や作用効果の発現のためにどのように実施すればよいのか、また、本願発明1-11、14-21、及び23-36により、本願発明の課題の解決や作用効果の発現はしているのか、さらにはどのような態様であれば本願発明の課題の解決や作用効果の発現がなしうるのか、発明の詳細な説明からは何ら見出すことはできない。このため、本願発明の規定の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。
よって、本願発明1-11、14-21、及び23-36は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

5 むすび
以上のとおり、本願の発明の詳細な説明の記載は、本願発明1-11、14-21、及び23-36について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本願の特許請求の範囲の請求項1-11、14-21、及び23-36についての記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないことから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-26 
結審通知日 2016-12-27 
審決日 2017-01-10 
出願番号 特願2012-113219(P2012-113219)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
P 1 8・ 536- WZ (A61K)
P 1 8・ 537- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉江 渉池上 京子  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 大熊 幸治
関 美祝
発明の名称 時限パルス放出システム  
代理人 大貫 敏史  
代理人 江口 昭彦  
代理人 内藤 和彦  
代理人 稲葉 良幸  
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