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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1328710
審判番号 不服2016-17028  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-15 
確定日 2017-06-26 
事件の表示 特願2015-501676「一体的強磁性材料を有する磁場センサ集積回路」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日国際公開、WO2013/141981、平成27年 5月18日国内公表、特表2015-514207、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、2013年2月13日(パリ条約に基づく優先権主張 2012年3月20日(以下、「最先の優先日」という。)、米国、2013年1月24日、米国)を国際出願とする出願であって、平成26年10月29日付けで、翻訳文が提出され、平成28年1月25日付けで拒絶理由が通知され、平成28年4月20日付けで手続補正がなされたが、平成28年8月10日付けで拒絶査定がなされ(送達日:平成28年8月15日)、平成28年11月15日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、平成29年4月11日付けで上申書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年8月10日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
1 この出願の請求項1-8、13-16に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2 この出願の請求項1-18に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:米国特許出願公開第2012/0013333号明細書

第3 本件補正について
本件補正は、請求項1、13における、リードフレームの第2の部分を封入する点について「前記強磁性モールド材料内で終端するように、前記リードフレームの前記第2の部分を完全に封入」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、本件補正後の請求項1-18に係る発明は独立特許要件を満たすものである。
さらに、本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4項の要件に違反していない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の要件に違反しているものとはいえない。

第4 本願発明
本願の請求項1-18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明18」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-18に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
第1の表面および第2の対向する表面を有するリードフレームと、
磁場感知素子が中に配設された第1の表面と、前記リードフレームの前記第1の表面に取り付けられた第2の対向する表面とを有する半導体ダイと、
前記ダイおよび前記リードフレームの第1の部分を封入する非導電性モールド材料であって、前記リードフレームの第2の部分が前記非導電性モールド材料を超えて延び、前記非導電性モールド材料によって封入されない、非導電性モールド材料と、
前記非導電性モールド材料の一部分に固定された強磁性モールド材料であって、前記リードフレームの近位の第1の端部から、前記リードフレームから遠位の第2の端部までテーパにされ、前記リードフレームの前記第2の部分が前記強磁性モールド材料内で終端するように、前記リードフレームの前記第2の部分を完全に封入し、さらに前記第2の部分に固定され、前記第2の部分と直接接触し、前記リードフレームの前記第2の部分は前記強磁性モールド材料を係合するための固定機構を提供する、強磁性モールド材料と備える
、磁場センサ。
【請求項2】
前記強磁性モールド材料が、バイアス磁石を形成するために硬質の強磁性材料を含む、請求項1に記載の磁場センサ。
【請求項3】
前記硬質の強磁性材料が、フェライト、SmCo合金、NdFeB合金、硬質の磁気粒子を備えた熱可塑性ポリマー、または硬質の磁気粒子を備えた熱硬化性ポリマーの少なく
とも一つを含む、請求項2に記載の磁場センサ。
【請求項4】
前記強磁性モールド材料が、集中器を形成するために軟質の強磁性材料を含む、請求項1に記載の磁場センサ。
【請求項5】
前記軟質の強磁性材料が、NiFe、Ni、Ni合金、鋼、またはフェライトの少なくとも一つを含む、請求項4に記載の磁場センサ。
【請求項6】
前記強磁性モールド材料が、前記強磁性モールド材料の前記第1の端部の近傍から前記強磁性モールド材料の前記第2の端部まで延びる不連続の中央領域を有する、請求項1に記載の磁場センサ。
【請求項7】
前記強磁性モールド材料が、ほぼD字形状、O字形状、U字形状、またはC字形状の構造を形成する、請求項6に記載の磁場センサ。
【請求項8】
前記非導電性モールド材料が、前記強磁性モールド材料の前記中央領域内に延びる突起部を含む、請求項6に記載の磁場センサ。
【請求項9】
前記突起部が、前記強磁性モールド材料の前記第1の端部の近傍から前記強磁性モールド材料の前記第2の端部まで延びる、請求項8に記載の磁場センサ。
【請求項10】
前記突起部が、前記強磁性モールド材料の前記第1の端部の近傍から延びて前記強磁性モールド材料の前記第2の端部の手前で終端し、前記強磁性モールド材料は前記突起部を覆う、請求項9に記載の磁場センサ。
【請求項11】
前記強磁性モールド材料の前記中央領域内に配設されそこに固定された第3のモールド材料であって、軟質の強磁性材料からなる、第3のモールド材料をさらに含む、請求項6に記載の磁場センサ。
【請求項12】
熱硬化性接着剤をさらに含み、前記強磁性モールド材料が、前記熱硬化性接着剤を用いて前記非導電性モールド材料の一部分に固定される、請求項1に記載の磁場センサ。
【請求項13】
第1の表面および第2の対向する表面を有するリードフレームと、
磁場感知素子が中に配設された第1の表面と、前記リードフレームの前記第1の表面に取り付けられた第2の対向する表面とを有する半導体ダイと、
前記ダイおよび前記リードフレームの第1の部分を封入する非導電性モールド材料であって、前記リードフレームの第2の部分が前記非導電性モールド材料を超えて延び、前記非導電性モールド材料によって封入されない、非導電性モールド材料と、
前記非導電性モールド材料の一部分に固定され、前記リードフレームの前記第2の部分が前記強磁性モールド材料内で終端するように、前記リードフレームの前記第2の部分を完全に封入し、前記第2の部分に固定され、前記第2の部分と直接接触する強磁性モールド材料であって、前記リードフレームの近位の第1の端部から、前記リードフレームから遠位の第2の端部まで延びる不連続の中央領域を含む、強磁性モールド材料とを備える、
磁場センサ。
【請求項14】
前記強磁性モールド材料が、硬質の強磁性材料である、請求項13に記載の磁場センサ。
【請求項15】
前記硬質の強磁性材料が、フェライト、SmCo合金、NdFeB合金、硬質の磁気粒子を備えた熱可塑性ポリマー、または硬質の磁気粒子を備えた熱硬化性ポリマーの少なくとも一つを含む、請求項14に記載の磁場センサ。
【請求項16】
前記非導電性モールド材料が、前記強磁性モールド材料の前記不連続の中央領域内に延びる突起部を含む、請求項13に記載の磁場センサ。
【請求項17】
前記突起部が、前記強磁性モールド材料の前記第1の端部の近傍から前記強磁性モールド材料の前記第2の端部まで延びる、請求項16に記載の磁場センサ。
【請求項18】
前記強磁性モールド材料の前記中央領域内に配設されそこに固定された第3のモールド材料であって、軟質の強磁性材料からなる、第3のモールド材料をさらに含む、請求項14に記載の磁場センサ。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の最先の優先日前に頒布された刊行物である、米国特許出願公開第2012/0013333号明細書には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、当審訳は、パテントファミリーである、特表2012-511152号公報を参考にした。また、訳文には、便宜のため、当該公表公報に付された段落番号をそのまま記載した。以下の引用では、公表公報に付された段落番号にて記載箇所を特定する。なお、下線は、当審で付与したものである。)。
「[0003] This invention relates generally to magnetic field sensors, and, more particularly, to magnetic field sensors having a magnetic field sensing element die and magnet and also to the assembly and packaging of the magnetic field sensors.」(当審訳:
【0001】
本発明は、一般に磁場センサに関し、より詳細には、磁場感知素子のダイおよび磁石を有する磁場センサならびに磁場センサの組み立ておよびパッケージングに関する。)

「[0046] Referring now to FIGS. 2-2C, in which like elements of FIGS. 1-1C are shown having like reference designations, but wherein a molded capsule 16' is different than the molded capsule 16 of FIGS. 1-1C, a magnetic field sensor 26 ( FIG. 2C ) is fabricated in a way similar to the magnetic field sensor 24 of FIG. 1C. The different molded capsule 16' has a region, which, unlike the molded capsule 16 of FIGS. 1-1C, forms an insulating layer 16d' proximate to the second opposing surface 12bb of the die attach pad 12b between the magnet 22 and the second opposing surface 12bb of the die attach pad 12b. The insulating layer 16d' can have a predetermined thickness to separate the magnet 22 from the second surface 12bb of the die attach pad 12b by a predetermined distance.
[0047] The lead frame 12 includes leads 12a', which, unlike the leads 12 a of FIG. 1 can have no bend, since the magnet 22 will not contact the leads 12a', otherwise shorting them to the die attach pad 12b. 」(当審訳:
【0041】
次に、図1?図1Cの同じ要素が同じ参照記号表示を有するように示されるが、モールドされたカプセル16’は図1?図1Cのモールドされたカプセル16とは異なる図2?図2Cを参照すると、磁場センサ26(図2C)は、図1Cの磁場センサ24と同様の方法で製造される。異なるモールドされたカプセル16’は、図1?図1Cのモールドされたカプセル16とは違って、磁石22とダイ付パッド12bの第2の対向する表面12bbとの間に、ダイ付パッド12bの第2の対向する表面12bbに隣接して絶縁層16d’を形成する領域を有する。絶縁層16d’は、磁石22をダイ付パッド12bの第2の表面12bbから所定の距離だけ離隔するために、所定の厚さを有することができる。
【0042】
リードフレーム12は、図1のリード線12aとは違って、曲がりを有さなくてよいリード線12a’を含む。というのは、磁石22はリード線12a’と接触しないからであり、そうでなければ、リード線12a’をダイ付パッド12bに短絡させる。)

「[0049] Referring now to FIG. 3, in which like elements of FIG. 1 are shown having like reference designations, another method of fabricating a magnetic field sensor includes attaching the magnetic field sensor circuit die 10, i.e., a magnetic field sensing element, to the first surface 12ba of the die attach pad 12b of the lead frame 12. The die attach pad 12b has the first surface 12ba and the second opposing surface 12bb. The method can also include coupling the magnetic field sensor circuit die 10 to the leads 12a of the lead frame 12 with the wire bonds 14 or the like.

[0050] Referring now to FIG. 3A, in which like elements of FIG. 3 are shown having like reference designations, the method further includes forming a molded capsule 50 enclosing the magnetic field sensor circuit die 10. The molded capsule 50 can be made of a variety of materials, for example, E670C mold compound from the Sumitomo Corporation, HYSOL(R) MG52F mold compound from the Henkel Loctite Corporation, or PLASKON(R) CK-6100 mold compound from Cookson Electronics. In some embodiments, the molded capsule 50 can be formed in a one step molding process. The molded capsule 50 covers the second surface 12bb of the die attach pad 12b forming an insulating layer 50 a over the second surface 12 bb of the die attach pad 12 b.

[0051] Referring now to FIG. 3B, in which like elements of FIGS. 3 and 3A are shown having like reference designations, a magnet 52 can be placed over the insulating layer 50a. In some embodiments, an adhesive layer 54 is disposed between the magnet 52 and the insulating layer 50a. The adhesive layer can be cured after the magnet 52 is disposed thereon. The insulating layer 50 a can have a predetermined thickness to separate the magnet 52 from the second surface 12bb of the die attach pad 12b by a predetermined distance.

[0052] Referring now to FIG. 3C, in which like elements of FIGS. 3-3B are shown having like reference designations, a molded enclosure 56 is formed surrounding at least the magnet 52. In some embodiments, the molded enclosure 56 can also surround or partially surround the molded capsule 50 .

[0054] In some embodiments, the magnet 52 has a magnetic field oriented approximately perpendicular to the first and second surfaces 12ba, 12bb, respectively of the die attach pad 12b. In these embodiments, the magnetic field sensor circuit die 10 comprises a magnetic field sensing element, for example, a Hall effect element, having a maximum response axis also approximately perpendicular to the first and second surfaces 12ba, 12bb of the die attach pad 12b.

[0055] The above-described method above results in a magnetic field sensor 58 having the lead frame 12 with the die attach pad 12b, the die attach pad 12b having the first and second opposing surfaces 12ba, 12bb, respectively. The magnetic field sensor circuit die 10 is proximate to the first surface 12ba of the die attach pad 12b. The molded capsule 50 encloses the magnetic field sensor circuit die 10 and forms an insulating layer 50 a over the second surface 12bb of the die attach pad 12b. The magnet 52 is proximate to the second surface 12bb of the die attach pad 12b. The molded enclosure 56 surrounds at least the magnet 52 .

[0056] In some other embodiments, similar to embodiments described above in conjunction with FIG. 1C, the magnet 52 can be omitted. In these embodiments, the material of the molded enclosure 56 can be filled either with magnetic particles to form a permanent magnet or with soft magnetic particles to form a flux concentrator. In these embodiments, it may be advantageous to form the molded enclosure 56 on only one side of the lead frame 12, i.e., a side of the lead frame 12 opposite to the molded capsule 50.

[0057] Referring now to FIG. 4, in which like elements of FIGS. 3-3C are shown having like reference designations, a lead frame strip 60 includes a plurality of lead frames 62a- 62f, each of which can be cut from the lead frame strip at a later time. Each one of the lead frames 62a - 62f can be the same as or similar to the lead frame 12 shown in FIGS. 1- 1C, 2- 2C and 3- 3C. Each one of the lead frames 62a- 62f is shown at a different step in a manufacturing process.

[0058] The lead frames 62a- 62f has the magnetic field sensor circuit die 10, i.e. the magnetic field sensing element, disposed over a first surface a die attach pad (not visible) of the lead frames 62a- 62f. In these views, the magnetic field sensor circuit die 10 is over top of the die attach pad.」(当審注:丸記号のRを、「(R)」と表記した。)(当審訳:
【0044】
次に、図1の同じ要素が同じ参照記号表示を有するように示される図3を参照すると、磁場センサを製造する別の方法は、磁場センサ回路ダイ10、すなわち磁場感知素子をリードフレーム12のダイ付パッド12bの第1の表面12baに取り付けるステップを含む。ダイ付パッド12bは、第1の表面12baおよび第2の対向する表面12bbを有する。また、方法は、磁場センサ回路ダイ10を、リードフレーム12のリード線12aと、ワイヤボンド14などで結合するステップを含むことができる。
【0045】
次に、図3の同じ要素が同じ参照記号表示を有するように示される図3Aを参照すると、方法は、磁場センサ回路ダイ10を包含するモールドされたカプセル50を形成するステップをさらに含む。モールドされたカプセル50は、多様な材料、例えば、Sumitomo CorporationのE670Cモールド化合物、Henkel Loctite CorporationのHYSOL(登録商標) MG52Fモールド化合物、またはCookson ElectronicsのPLASKON(登録商標) CK-6100モールド化合物、で製造できる。いくつかの実施形態では、モールドされたカプセル50は、1ステップのモールド工程で形成できる。モールドされたカプセル50は、ダイ付パッド12bの第2の表面12bbを覆い、ダイ付パッド12bの第2の表面12bbを覆う絶縁層50aを形成する。
【0046】
次に、図3および図3Aの同じ要素が同じ参照記号表示を有するように示される図3Bを参照すると、磁石52が、絶縁層50aの上に設置されてよい。いくつかの実施形態では、接着剤層54が、磁石52と絶縁層50aとの間に配置される。接着剤層は、磁石52が接着剤層の上に配置された後、硬化されてよい。絶縁層50aは、磁石52をダイ付パッド12bの第2の表面12bbから所定の距離だけ離隔するために、所定の厚さを有することができる。
【0047】
次に、図3?図3Bの同じ要素が同じ参照記号表示を有するように示される図3Cを参照すると、モールドされたエンクロージャ56が、少なくとも磁石52を取り囲んで形成される。いくつかの実施形態では、モールドされたエンクロージャ56がまた、モールドされたカプセル50を取り囲むかまたは部分的に取り囲むことができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、磁石52は、ダイ付パッド12bの第1の表面12baおよび第2の表面12bbそれぞれにほぼ垂直に向けられた磁場を有する。これらの実施形態では、磁場センサ回路ダイ10は、同様に、ダイ付パッド12bの第1の表面12baおよび第2の表面12bbにほぼ垂直な最大応答軸を有する磁場感知素子、例えばホール効果素子を備える。
【0049】
いくつかの他の実施形態では、磁石52は、ダイ付パッド12bの第1の表面12baおよび第2の表面12bbそれぞれにほぼ平行に向けられた磁場を有する。これらの実施形態では、磁場センサ回路ダイ10は、同様に、ダイ付パッド12bの第1の表面12baおよび第2の表面12bbにほぼ平行な最大応答軸を有する磁場感知素子、例えば異方性磁気抵抗素子または巨大磁気抵抗素子を備える。
【0050】
上で説明された方法は、ダイ付パッド12bを備えるリードフレーム12を有する磁場センサ58をもたらし、ダイ付パッド12bは、第1の表面12baおよび第2の対向する表面12bbそれぞれを有する。磁場センサ回路ダイ10は、ダイ付パッド12bの第1の表面12baに隣接する。モールドされたカプセル50は、磁場センサ回路ダイ10を包含し、絶縁層50aをダイ付パッド12bの第2の表面12bbの上に形成する。磁石52は、ダイ付パッド12bの第2の表面12bbに隣接する。モールドされたエンクロージャ56は、少なくとも磁石52を取り囲む。
【0051】
図1Cと併せて上で説明された実施形態に類似する、いくつかの他の実施形態では、磁石52が省略されてよい。これらの実施形態では、モールドされたエンクロージャ56の材料が、永久磁石を形成するために磁性の粒子で満たされてよく、または磁束集中器を形成するために軟性で磁性の粒子で満たされてよい。これらの実施形態では、モールドされたエンクロージャ56を、リードフレーム12の片側、すなわちリードフレーム12のモールドされたカプセル50と反対側、の上だけに形成することが有利である。
【0052】
次に、図3?図3Cの同じ要素が同じ参照記号表示を有するように示される図4を参照すると、リードフレームストリップ60は、複数のリードフレーム62a?62fを含み、リードフレーム62a?62fのそれぞれは、後で、リードフレームストリップから切断できる。リードフレーム62a?62fのそれぞれは、図1?図1C、図2?図2Cおよび図3?図3C、に示されたリードフレーム12と同じかまたは類似してよい。リードフレーム62a?62fのそれぞれは、製造工程の異なるステップにおいて示される。
【0053】
リードフレーム62a?62fは、リードフレーム62a?62fのダイ付パッド(不可視)の第1の表面の上に配置された、磁場センサ回路ダイ10、すなわち磁場感知素子を有する。これらの図では、磁場センサ回路ダイ10は、ダイ付パッドの上面の上に存在する。)

上記記載事項及び図面(FIG.3C)の記載より、次のア、イの技術的事項を読み取ることができる。
ア 段落【0050】には「磁石52は、ダイ付パッド12bの第2の表面12bbに隣接する。モールドされたエンクロージャ56は、少なくとも磁石52を取り囲む。」構成が記載されている。そして、該構成を、段落【0051】における「いくつかの他の実施形態では、磁石52が省略されてよい。これらの実施形態では、モールドされたエンクロージャ56の材料が、永久磁石を形成するために磁性の粒子で満たされてよく、または磁束集中器を形成するために軟性で磁性の粒子で満たされてよい。」との記載に従って読み替えることにより、「モールドされたエンクロージャ56は、ダイ付パッド12bの第2の表面12bbに隣接し、モールドされたエンクロージャ56の材料が、永久磁石を形成するために磁性の粒子で満たされてよく、または磁束集中器を形成するために軟性で磁性の粒子で満たされてよい。」との構成を読み取ることができる。

イ FIG.3Cより、リードフレーム12が、リード線12a’を含み(段落【0042】参照)、リードフレーム12(ダイ付パッド12bを備える部分)及びリード線12a’のそれぞれが、モールドされたカプセル50の外側に延び、モールドされたエンクロージャ56を貫通して外部に突出している構成を読み取ることができる。

ウ FIG.3Cより、モールドされたエンクロージャ56が、モールドされたカプセル50に近い側から遠い側の端部にかけて、テーパにされている構成を読み取ることができる。

以上より、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。という。)が記載されているものと認められる。
「ダイ付パッド12bを備えるリードフレーム12を有する磁場センサ58であって、ダイ付パッド12bは、第1の表面12baおよび第2の対向する表面12bbそれぞれを有し(段落【0050】より)、 磁場センサ回路ダイ10は、磁場感知素子を備え(段落【0048】より)、磁場センサ回路ダイ10は、ダイ付パッド12bの第1の表面12baに隣接し、モールドされたカプセル50は、磁場センサ回路ダイ10を包含し、絶縁層50aをダイ付パッド12bの第2の表面12bbの上に形成し(段落【0050】より)、つまり、ダイ付パッド12bの第2の表面12bbを覆い(段落【0045】より)、モールドされたエンクロージャ56は、ダイ付パッド12bの第2の表面12bbに隣接し、モールドされたエンクロージャ56の材料が、永久磁石を形成するために磁性の粒子で満たされてよく、または磁束集中器を形成するために軟性で磁性の粒子で満たされてよい(上記「ア」より)、
リードフレーム12が、リード線12a’を含み、リードフレーム12(ダイ付パッド12bを備える部分)及びリード線12a’のそれぞれが、モールドされたカプセル50の外側に延び、モールドされたエンクロージャ56を貫通して外部に突出しており(上記「イ」より)、
モールドされたエンクロージャ56が、モールドされたカプセル50に近い側から遠い側の端部にかけて、テーパにされている(上記「ウ」より)、
磁場センサ58(段落【0001】より)。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「ダイ付パッド12b」は、「第1の表面12baおよび第2の対向する表面12bbそれぞれを有し」ているから、本願発明1における「第1の表面および第2の対向する表面を有するリードフレーム」に相当する。

イ 引用発明における「磁場センサ回路ダイ10」は、「磁場感知素子を備え」、「ダイ付パッド12bの第1の表面12baに隣接し」ているから、「磁場センサ回路ダイ10」が、磁場感知素子を有し、第1の表面と、ダイ付パッド12bの第1の表面12baに対向する表面とを有していることは、明らかである。
よって、引用発明における「磁場センサ回路ダイ10」と、本願発明1における「磁場感知素子が中に配設された第1の表面と、前記リードフレームの前記第1の表面に取り付けられた第2の対向する表面とを有する半導体ダイ」とは、「磁場感知素子を有し、第1の表面と、前記リードフレームの前記第1の表面に取り付けられた第2の対向する表面とを有する半導体ダイ」の点で共通する。

ウ 引用発明における「モールドされたカプセル50」は、「絶縁層50aをダイ付パッド12bの第2の表面12bbの上に形成し」ているから、非導電性であることは明らかである。
そして、引用発明における「モールドされたカプセル50」は、「磁場センサ回路ダイ10を包含し」、「ダイ付パッド12bの第2の表面12bbを覆」っており、「リードフレーム12が、リード線12a’を含み、リードフレーム12(ダイ付パッド12bを備える部分)及びリード線12a’のそれぞれが、モールドされたカプセル50の外側に延び」ているから、本願発明1における「前記ダイおよび前記リードフレームの第1の部分を封入する非導電性モールド材料であって、前記リードフレームの第2の部分が前記非導電性モールド材料を超えて延び、前記非導電性モールド材料によって封入されない、非導電性モールド材料」に相当する。

エ 引用例の段落【0048】には、「いくつかの実施形態では、接着剤層54が、磁石52と絶縁層50aとの間に配置される。」と記載されているから、磁石52を省略し、「モールドされたエンクロージャ56の材料が、永久磁石を形成するために磁性の粒子で満たされてよく、または磁束集中器を形成するために軟性で磁性の粒子で満たされてよ」い(上記「第5」「1.引用文献1について」「ア」参照。)ものとした引用発明においては、モールドされたエンクロージャ56と絶縁層50aとは、接着剤層54等により、固定されているものといえる。
すると、引用発明における「モールドされたエンクロージャ56」は、「ダイ付パッド12bの第2の表面12bbに隣接し、モールドされたエンクロージャ56の材料が、永久磁石を形成するために磁性の粒子で満たされてよく、または磁束集中器を形成するために軟性で磁性の粒子で満たされてよ」く、「リードフレーム12(リード線12a’を除く)及びリード線12a’のそれぞれ」は、「モールドされたエンクロージャ56を貫通して外部に突出しており」、「モールドされたエンクロージャ56が、モールドされたカプセル50に近い側から遠い側の端部にかけて、テーパにされている」から、本願発明1における「前記非導電性モールド材料の一部分に固定された強磁性モールド材料であって、前記リードフレームの近位の第1の端部から、前記リードフレームから遠位の第2の端部までテーパにされ、前記リードフレームの前記第2の部分が前記強磁性モールド材料内で終端するように、前記リードフレームの前記第2の部分を完全に封入し、さらに前記第2の部分に固定され、前記第2の部分と直接接触し、前記リードフレームの前記第2の部分は前記強磁性モールド材料を係合するための固定機構を提供する、強磁性モールド材料」とは、「前記非導電性モールド材料の一部分に固定された強磁性モールド材料であって、前記リードフレームの近位の第1の端部から、前記リードフレームから遠位の第2の端部までテーパにされている、強磁性モールド材料」の点で共通する。

オ 引用発明における「磁場センサ58」が、次の相違点は除いて、本願発明1における「磁場センサ」に相当する。

従って、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「第1の表面および第2の対向する表面を有するリードフレームと、
磁場感知素子を有し、第1の表面と、前記リードフレームの前記第1の表面に取り付けられた第2の対向する表面とを有する半導体ダイと、
前記ダイおよび前記リードフレームの第1の部分を封入する非導電性モールド材料であって、前記リードフレームの第2の部分が前記非導電性モールド材料を超えて延び、前記非導電性モールド材料によって封入されない、非導電性モールド材料と、
前記非導電性モールド材料の一部分に固定された強磁性モールド材料であって、前記リードフレームの近位の第1の端部から、前記リードフレームから遠位の第2の端部までテーパにされている、強磁性モールド材料と備える、
磁場センサ。」

(相違点1)
本願発明1では、ダイが「半導体ダイ」であって、「磁場感知素子が中に配設された第1の表面」を有しているのに対し、引用発明では、「磁場センサ回路ダイ10」であって、「磁場感知素子を備え」ているものの、「磁場センサ回路ダイ10」が半導体ダイであるか、また、磁場感知素子がどこに配設されているのか、明らかでない点。

(相違点2)
本願発明1では、「強磁性モールド材料」が「前記リードフレームの前記第2の部分が前記強磁性モールド材料内で終端するように、前記リードフレームの前記第2の部分を完全に封入し、さらに前記第2の部分に固定され、前記第2の部分と直接接触し、前記リードフレームの前記第2の部分は前記強磁性モールド材料を係合するための固定機構を提供する」のに対し、引用発明では、「リードフレーム12が、リード線12a’を含み、リードフレーム12(ダイ付パッド12bを備える部分)及びリード線12a’のそれぞれが」、「モールドされたエンクロージャ56を貫通して外部に突出して」いる点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討すると、引用例1には、段落【0052】に「次に、図3?図3Cの同じ要素が同じ参照記号表示を有するように示される図4を参照すると、リードフレームストリップ60は、複数のリードフレーム62a?62fを含み、リードフレーム62a?62fのそれぞれは、後で、リードフレームストリップから切断できる。」と記載されている。
また、図4は、次のとおりである。

すると、引用例1において、リードフレーム12は、モールドされたエンクロージャ56を形成した後で、リードフレームストリップから切断されて形成されたものであるから、引用発明1において、モールドされたエンクロージャ56が、リードフレーム12の所定の部分を、モールドされたエンクロージャ56を貫通させず、モールドされたエンクロージャ56内で終端するように、完全に封入し、さらに前記所定の部分に固定され、前記所定の部分と直接接触し、前記リードフレーム12の前記所定の部分は前記強磁性モールド材料を係合するための固定機構を提供するようにすることは、当業者であっても、容易に想到し得ないことである。

よって、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明13について
本願発明13も、本願発明1の「強磁性モールド材料」が「前記リードフレームの前記第2の部分が前記強磁性モールド材料内で終端するように、前記リードフレームの前記第2の部分を完全に封入し、さらに前記第2の部分に固定され、前記第2の部分と直接接触し、前記リードフレームの前記第2の部分は前記強磁性モールド材料を係合するための固定機構を提供する」ことと同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明2?12、14?18について
本願発明2?12は、本願発明1に所定の限定を付した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本願発明14?18は、本願発明13に所定の限定を付した発明であるから、本願発明13と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定について
1 理由1(特許法第29条第1項第3号)について
本件補正により、本件補正後の請求項1に係る発明は、少なくとも上記「第6」「1」「(1)対比」に記載した「(相違点2)」の点で、引用発明と実質的に相違しているから、原査定において引用された刊行物1に記載された発明ではない。
また、本件補正後の請求項13に係る発明も、少なくとも上記「第6」「1」「(1)対比」に記載した「(相違点2)」と同様の点で、引用発明と実質的に相違しているから、原査定において引用された刊行物1に記載された発明ではない。
さらに、本件補正後の請求項2-8、14-18に係る発明は、本件補正後の請求項1、13に係る発明に所定の限定を付した発明であるから、同様に、原査定において引用された刊行物1に記載された発明ではない。
従って、原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由2(特許法第29条第2項)について
本件補正により、本件補正後の請求項1に係る発明は、「強磁性モールド材料」が「前記リードフレームの前記第2の部分が前記強磁性モールド材料内で終端するように、前記リードフレームの前記第2の部分を完全に封入し、さらに前記第2の部分に固定され、前記第2の部分と直接接触し、前記リードフレームの前記第2の部分は前記強磁性モールド材料を係合するための固定機構を提供する」という事項を有するものとなっており、原査定において引用された刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件補正後の請求項13に係る発明も、前記事項と同様の事項を有するので、同様に、原査定において引用された刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
さらに、本件補正後の請求項2-8、14-18に係る発明は、本件補正後の請求項1、13に係る発明に所定の限定を付した発明であるから、同様に、原査定において引用された刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
従って、原査定の理由2を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-14 
出願番号 特願2015-501676(P2015-501676)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
P 1 8・ 113- WY (G01R)
P 1 8・ 575- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川瀬 正巳小川 浩史  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 須原 宏光
清水 稔
発明の名称 一体的強磁性材料を有する磁場センサ集積回路  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 鳥居 健一  
代理人 山本 修  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  

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