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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B
管理番号 1328728
審判番号 不服2016-8844  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-14 
確定日 2017-06-20 
事件の表示 特願2012- 90265「サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日出願公開、特開2013-218773、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年4月11日の出願であって、平成27年10月26日付けで拒絶理由通知がされ、同年12月25日付けで意見書が提出されたが、平成28年3月10日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成28年3月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1?12に係る発明は、以下の引用文献1、2、3、4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2012-18708号公報
2.実公平07-5538号公報
3.特開2001-101638号公報
4.特開2010-49786号公報


第3 本願発明
本願請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明12」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明と認められる。

「 【請求項1】
アクチュエータ素子に導電性接着剤を介して接続されるサスペンション用基板において、
基板本体と、
前記基板本体に引出部を介して連結され、前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して接続される素子接続部と、を備え、
前記引出部は、絶縁層と、前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側とは反対側の面に設けられた配線層と、を有し、
前記引出部における前記絶縁層は、前記基板本体の側に設けられた絶縁本体側端部と、前記素子接続部の側に設けられた絶縁素子側端部と、前記絶縁本体側端部と前記絶縁素子側端部との間に設けられた絶縁幅狭部と、を有し、
前記絶縁幅狭部は、前記絶縁本体側端部および前記絶縁素子側端部より幅が狭くなっていることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項2】
前記引出部における前記配線層は、前記基板本体の側に設けられた配線本体側端部と、前記素子接続部の側に設けられた配線素子側端部と、前記配線本体側端部と前記配線素子側端部との間に設けられた配線幅狭部と、を有し、
前記配線幅狭部は、前記配線本体側端部および前記配線素子側端部より幅が狭くなっていると共に、前記絶縁幅狭部に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【請求項3】
前記引出部において、前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側の面は露出されていることを特徴とする請求項1または2に記載のサスペンション用基板。
【請求項4】
前記素子接続部は、前記絶縁層と前記配線層とを有し、
前記絶縁層は、前記引出部の少なくとも一部に設けられ、前記素子接続部における前記絶縁層の厚さより薄い薄肉部を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のサスペンション用基板。
【請求項5】
アクチュエータ素子に導電性接着剤を介して接続されるサスペンション用基板において、
基板本体と、
前記基板本体に引出部を介して連結され、前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して接続される素子接続部と、を備え、
前記素子接続部および前記引出部は、絶縁層と、前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側とは反対側の面に設けられた配線層と、を有し、
前記引出部において、前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側の面は露出され、
前記絶縁層は、前記引出部の少なくとも一部に設けられ、前記素子接続部における前記絶縁層の厚さより薄い薄肉部を有していることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項6】
前記引出部における前記配線層は、前記基板本体の側に設けられた配線本体側端部と、前記素子接続部の側に設けられた配線素子側端部と、前記配線本体側端部と前記配線素子側端部との間に設けられた配線幅狭部と、を有し、
前記配線幅狭部は、前記配線本体側端部および前記配線素子側端部より幅が狭くなっていることを特徴とする請求項5に記載のサスペンション用基板。
【請求項7】
アクチュエータ素子に導電性接着剤を介して接続されるサスペンション用基板において、
基板本体と、
前記基板本体に引出部を介して連結され、前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して接続される素子接続部と、を備え、
前記引出部は、配線層を有し、
前記引出部における前記配線層は、当該引出部の少なくとも一部に設けられた、前記アクチュエータ素子の側に露出される露出面を有していることを特徴とするサスペンション用基板。
【請求項8】
前記露出面は、前記引出部の全体にわたって設けられていることを特徴とする請求項7に記載のサスペンション用基板。
【請求項9】
前記引出部における前記配線層は、前記基板本体の側に設けられた配線本体側端部と、
前記素子接続部の側に設けられた配線素子側端部と、前記配線本体側端部と前記配線素子側端部との間に設けられた配線幅狭部と、を有し、
前記配線幅狭部は、前記配線本体側端部および前記配線素子側端部より幅が狭くなっていることを特徴とする請求項7または8に記載のサスペンション用基板。
【請求項10】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに、ロードビームを介して取り付けられた請求項1乃至9のいずれかに記載の前記サスペンション用基板と、
前記ベースプレートおよび前記ロードビームの少なくとも一方に接合されると共に、前記サスペンション用基板の前記素子接続部に前記導電性接着剤を介して接続された前記アクチュエータ素子と、を備えたことを特徴とするサスペンション。
【請求項11】
請求項10に記載の前記サスペンションと、
前記サスペンションに実装されたヘッドスライダと、を備えたことを特徴とするヘッド付サスペンション。
【請求項12】
請求項11に記載の前記ヘッド付サスペンションを備えたことを特徴とするハードディスクドライブ。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

あ.「【0025】
図1に示すように、サスペンション用基板1は、基板本体領域2と、基板本体領域2の両側に配置される後述のピエゾ素子(アクチュエータ素子、図4参照)44に接続可能な一対の接続構造領域3と、基板本体領域2と各接続構造領域3との間に延びる一対の延長構造領域4とを有している。このうち基板本体領域2には、後述のスライダ52(図8参照)に接続されるヘッド端子5と、図示しない外部機器に接続される外部機器接続端子6とが設けられており、ヘッド端子5と外部機器接続端子6との間には、後述する配線13が接続されている。
【0026】
図1および図2に示すように、サスペンション用基板1は、絶縁層10と、絶縁層10のピエゾ素子44の側の面(一方の面)に設けられた金属支持層11と、絶縁層10の他方の面に設けられた複数の配線13を有する配線層12とを備えている。このうち、配線層12は、接続構造領域3に配置され、ピエゾ素子44に導電性接着剤(例えば、銀ペースト)を介して電気的に接続される配線接続部16を有している。この配線接続部16は、各配線13と同一材料から形成されている。また、複数の配線13のうち2つの配線は、外部機器接続端子6から接続構造領域3にそれぞれ延びて、配線接続部16を介してピエゾ素子44に電気的に接続されている。
・・・・・・・・
【0033】
図3に示すように、延長構造領域4における絶縁層10は、接続構造領域3の側に配置された第1の絶縁層端部10bと、基板本体領域2の側に配置され、第1の絶縁層端部10bより幅が広い第2の絶縁層端部10cとを有している。本実施の形態においては、延長構造領域4における絶縁層10は、第1の絶縁層端部10bから第2の絶縁層端部10cに向かって徐々に幅が広くなっている。なお、延長構造領域4においては、金属支持層11は設けられておらず、金属支持層11のうち基板本体領域2における部分と、接続構造領域3における部分とが、分離されている。」

い.「【0074】
なお、本実施の形態においては、サスペンション用基板1の延長構造領域4において、絶縁層10が、第1の絶縁層端部10bから第2の絶縁層端部10cに向かって徐々に幅が広くなっていると共に、保護層20が、第1の保護層端部20bから第2の保護層端部20cに向かって徐々に幅が広くなっている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、保護層20は、任意の形状としてもよい。この場合においても、延長構造領域4の機械的強度を向上させることができる。あるいは、絶縁層10および保護層20のいずれも、任意の形状としてもよい。」

う.図1、2、3として以下の図面が記載されている。



したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 ピエゾ素子(アクチュエータ素子)44に導電性接着剤を介して接続されるサスペンション用基板1であって、
基板本体領域2と、
前記基板本体領域2の両側に配置される前記ピエゾ素子44に接続可能な一対の接続構造領域3と、前記基板本体領域2と各接続構造領域3との間に延びる一対の延長構造領域4とを有し、
前記接続構造領域3と前記延長構造領域4における絶縁層10上には、前記ピエゾ素子とは反対の面に配線層12を有し、
前記延長構造領域4における前記絶縁層10は、前記接続構造領域3の側に配置された第1の絶縁層端部10bと、前記基板本体領域2の側に配置され、第1の絶縁層端部10bより幅が広い第2の絶縁層端部10cとを有し、
前記延長構造領域4における前記絶縁層10は、前記第1の絶縁層端部10bから前記第2の絶縁層端部10cに向かって徐々に幅が広くなっている、
サスペンション用基板。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「即ち、このフレキシブルプリント配線基板(10)の中途部(10b)には、その両側縁に切込状の凹部(14a)(14b)が対称的に形成され、これによつてフレキシブルプリント配線基板(10)はこの部分が小幅となるように括れた形状の幅狭部(13)と成されている。本例ではフレキシブルプリント配線基板(10)の中途部(10)の幅a1と2.85mmに形成してあるのに対し、幅狭部(13)における幅a2は1.8mmに形成してある。
また、この幅狭部(13)においては、導体部(11)の幅及びピツチも小に形成されている。即ち、本例ではフレキシブルプリント配線基板(10)の中途部(10b)においては導体部(10)の幅b1を0.25mm、同ピツチc1を0.5mm、また両端の導体部(11)とフレキシブルプリント配線基板(10)の両側縁までの距離d1を0.3mmに形成してあるも、幅狭部(13)においては導体部(11)の幅b2を0.15mm、同ピツチc2を0.3mm、また両端の導体部(11)からフレキシブルプリント配線基板(10)の両側縁までの距離d2を0.225mmに形成してある。
このように幅狭部(13)を形成することによりフレキシブルプリント配線基板(10)はこの幅狭部(13)において剛性が小となり容易に撓むことができるように成され、デイスク(1)の変動時の磁気ヘツド(2)の揺動に円滑に追従することができる。」(4欄43行?5欄15行)

したがって、上記引用文献2には、「フレキシブルプリント配線基板の中途部に、幅を小さく構成された幅狭部を形成し、この幅狭部において剛性を小とすることで容易に撓むようにする」という技術的事項(以下、「技術事項1」という。)が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】 先部にヘッド本体が直接にまたはフレキシャを介して支持され基端部が固定部とされた支持部材と、前記支持部材上に重ねられて前記固定部から前記ヘッド本体へ電気的に接続可能な位置まで延びるフレキシブルプリント基板とを有するヘッド装置において、
前記支持部材には弾性変形可能な弾性変形部が部分的に形成され、前記フレキシブルプリント基板は、樹脂フィルムとこの樹脂フィルム上に形成された導電パターンを有し、
前記フレキシブルプリント基板の前記樹脂フィルムと前記導電パターンの少なくとも一方の幅寸法が、前記支持部材の弾性変形部に重ねられている部分で前記支持部材の前記弾性変形部以外の領域に重ねられた部分よりも小さいことを特徴とするヘッド装置。
【請求項2】 先部にヘッド本体が直接にまたはフレキシャを介して支持され基端部が固定部とされた支持部材と、前記支持部材上に重ねられて前記固定部から前記ヘッド本体へ電気的に接続可能な位置まで延びるフレキシブルプリント基板とを有するヘッド装置において、
前記支持部材には弾性変形可能な弾性変形部が部分的に形成され、前記フレキシブルプリント基板は、樹脂フィルムとこの樹脂フィルム上に形成された導電パターンを有し、
前記フレキシブルプリント基板の前記樹脂フィルムと前記導電パターンの少なくとも一方の厚さ寸法が、前記支持部材の弾性変形部に重ねられている部分で前記支持部材に重ねられた他の部分よりも小さいことを特徴とするヘッド装置。
・・・・・・・
【請求項6】 前記フレキシブルプリント基板は、導電パターンを覆う樹脂層を有し、
前記フレキシブルプリント基板は、前記支持部材の弾性変形部に重ねられている部分で前記樹脂層が部分的に除去されている請求項1または2記載のヘッド装置。」

「【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記のように、幅寸法T1が広くしかも厚いフレキシブルプリント基板5が、ロードビーム1のうち弾性変形部B上に設けられていると、前記ロードビーム1の先部に取付けられたヘッド本体3に加わる静荷重が増大するといった問題が発生する。
【0015】前記ロードビーム1のばね定数は、予め所定範囲内に収まるように設定されているが、前記ロードビーム11上にフレキシブルプリント基板5が設けられていると、前記フレキシブルプリント基板5の剛性をも加味しなければならず、従って前記ばね定数の増大を招く。」

したがって、上記引用文献3には、「弾性変形部において、フレキシブルプリント基板の樹脂フィルムの幅寸法を小さくするか、樹脂フィルムの厚さ寸法を小さくするか、あるいは樹脂層を部分的に除去して、ばね定数を小さくし曲がりやすくする」という技術的事項(以下、「技術事項2」という。)が記載されていると認められる。


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明における「基板本体領域2」、「接続構造領域3」、「延長構造領域4」、「サスペンション用基板」、「ピエゾ素子」、「絶縁層10」、「配線層12」は、本願発明1における「基板本体」、「素子接続部」、「引出部」、「サスペンション用基板」、「アクチュエータ素子」、「絶縁層」、「配線層」にそれぞれ相当する。

イ また、引用発明における「第1の絶縁層端部10b」、「第2の絶縁層端部10c」は、本願発明1における「絶縁素子側端部」、「絶縁本体側端部」にそれぞれ対応するが、本願発明1においては、絶縁本体側端部および絶縁素子側端部より幅が狭い「絶縁幅狭部」をさらに有するのに対して、引用発明ではこのような構成を有していない。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があると認める。

(一致点)
「 アクチュエータ素子に導電性接着剤を介して接続されるサスペンション用基板において、
基板本体と、
前記基板本体に引出部を介して連結され、前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して接続される素子接続部と、を備え、
前記引出部は、絶縁層と、前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側とは反対側の面に設けられた配線層と、を有し、
前記引出部における前記絶縁層は、前記基板本体の側に設けられた絶縁本体側端部と、前記素子接続部の側に設けられた絶縁素子側端部と、
を有していることを特徴とするサスペンション用基板。」

(相違点)
本願発明1は「前記絶縁本体側端部と前記絶縁素子側端部との間に設けられた絶縁幅狭部と、を有し、前記絶縁幅狭部は、前記絶縁本体側端部および前記絶縁素子側端部より幅が狭くなっている」のに対して、引用発明は「絶縁幅狭部」に相当する構成を有さず、「前記延長構造領域4における前記絶縁層10は、前記第1の絶縁層端部10bから前記第2の絶縁層端部10cに向かって徐々に幅が広く」構成されている点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用発明は「前記延長構造領域4における前記絶縁層10は、前記第1の絶縁層端部10bから前記第2の絶縁層端部10cに向かって徐々に幅が広くなっている」構成を有する。これに関して、引用文献1には、上記「第4 1.引用文献1について」の「い.」の項で摘記したように、「絶縁層10が、第1の絶縁層端部10bから第2の絶縁層端部10cに向かって徐々に幅が広くなっている・・・・例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、・・・・保護層20は、任意の形状としてもよい。この場合においても、延長構造領域4の機械的強度を向上させることができる。あるいは、絶縁層10および保護層20のいずれも、任意の形状としてもよい。」と記載されていることをみると、引用発明において「絶縁層10が、第1の絶縁層端部10bから第2の絶縁層端部10cに向かって徐々に幅が広くなっている」のは、延長構造領域4の機械的強度を向上させるためのものであり、また、そうした前提の上で絶縁層10を任意の形状としてもよいことが摘記事項「い.」に示唆されていると解される。
一方、技術事項1、2としたように、フレキシブルプリント配線基板に幅狭部を形成する技術が引用文献2、3に記載されている。しかしながら、当該幅狭部は剛性を小さくして容易に撓むようにするための構成であることを踏まえると、技術事項1、2を引用発明に適用することは、引用発明が前提としている延長構造領域4の機械的強度を向上させることに対して、この前提に反するような機械的強度を低下させる技術を導入しようとすることであるといわざるを得ない。
このことから、技術事項1、2を引用発明に適用することに阻害要因が有るということができ、このように適用することに、当業者が想到することはできない。
したがって、本願発明1は、当業者が、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明5について
(1)対比
本願発明5と引用発明との間には、次の一致点、相違点があると認める。

(一致点)
「 アクチュエータ素子に導電性接着剤を介して接続されるサスペンション用基板において、
基板本体と、
前記基板本体に引出部を介して連結され、前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して接続される素子接続部と、を備え、
前記素子接続部および前記引出部は、絶縁層と、前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側とは反対側の面に設けられた配線層と、を有し、
前記引出部において、前記絶縁層の前記アクチュエータ素子の側の面は露出され、
ていることを特徴とするサスペンション用基板。」

(相違点)
本願発明5では、「前記絶縁層は、前記引出部の少なくとも一部に設けられ、前記素子接続部における前記絶縁層の厚さより薄い薄肉部を有している」のに対して、引用発明には当該構成について記載されていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
技術事項2としたように、引用文献3には、弾性変形部において、フレキシブルプリント基板の樹脂フィルムの厚さ寸法を小さくする技術が記載されている。しかしながら、上記「1.本願発明1について」の「(2)相違点についての判断」の項で検討したように、技術事項2を引用発明に適用することには、阻害要因が存在するから、当業者であっても、容易に適用することはできない。
したがって、本願発明5は、当業者が引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明7について
(1)対比
本願発明7と引用発明との間には、次の一致点、相違点があると認める。

(一致点)
「 アクチュエータ素子に導電性接着剤を介して接続されるサスペンション用基板において、
基板本体と、
前記基板本体に引出部を介して連結され、前記アクチュエータ素子に前記導電性接着剤を介して接続される素子接続部と、を備え、
前記引出部は、配線層を有し、
ていることを特徴とするサスペンション用基板。」

(相違点)
本願発明7では、「前記引出部における前記配線層は、当該引出部の少なくとも一部に設けられた、前記アクチュエータ素子の側に露出される露出面を有している」のに対して、引用発明には当該構成について記載されていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
技術事項2としたように、引用文献3には、弾性変形部において、樹脂層を部分的に除去する技術が記載されている。しかしながら、上記「1.本願発明1について」の「(2)相違点についての判断」の項で検討したように、技術事項2を引用発明に適用することには、阻害要因が存在するから、当業者であっても、容易に適用することはできない。
したがって、本願発明7は、当業者が引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4.本願発明2?4、6、8?12について
本願発明2?4は本願発明1と同様の構成を有し、更に構成を特定したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
本願発明6は本願発明5と同様の構成を有し、更に構成を特定したものであるから、本願発明5と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献3、4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
本願発明8は本願発明7と同様の構成を有し、更に構成を特定したものであるから、本願発明7と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
本願発明9?12は本願発明1、5、7と同様の構成を有し、更に他の構成と組み合わせたものであるから、本願発明1、5、7と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?12は、当業者が引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-07 
出願番号 特願2012-90265(P2012-90265)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 北岡 浩
山本 章裕
発明の名称 サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブ  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 中村 行孝  
代理人 朝倉 悟  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 永井 浩之  
代理人 山下 和也  

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