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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1328796
審判番号 不服2016-14248  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-23 
確定日 2017-06-20 
事件の表示 特願2012-273876「情報処理装置およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月30日出願公開、特開2014-119910、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年12月14日の出願であって、平成28年2月25日付けで拒絶の理由が通知され、平成28年4月12日付けで手続補正がされ、平成28年6月24日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して平成28年9月23日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同時に手続補正がされ、平成28年10月20日に前置報告がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2012-155431号公報
引用文献2 特開2012-237764号公報
引用文献3 特開2009-15584号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとは認められない。
そして、「第4 本願発明」から「第6 当審の判断」までに示すように、補正後の請求項1-7に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、平成28年9月23日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりである。

「情報処理装置であって、
前記情報処理装置は、複数種類のユニットにより構成されるネットワークの構築を支援するためのものであり、
前記複数種類のユニットは、下流側に接続されるユニットに電力を供給するための電力供給ユニットと、上流側のユニットから電力の供給を受けて動作し、残電力を下流側のユニットに供給する機能を有する接続ユニットとを含み、
前記情報処理装置は、
前記接続ユニットの消費電力と、前記電力供給ユニットの供給可能電力とを記憶するための記憶部と、
入力操作に応じて前記接続ユニットと前記電力供給ユニットとを含むネットワークを仮想的に構成する構成部と、
前記仮想的に構成されるネットワークに含まれるユニットそれぞれについて、前記ユニットへ供給される電力の過不足を、前記ユニットの上流側にある前記電力供給ユニットの供給可能電力と、前記ユニットの上流側にある1以上の接続ユニットの各消費電力と、前記ユニットの消費電力とに基づいて判定する判定部と、
前記ネットワークの仮想的な構成を、各々のユニットの接続関係を含む態様で表示するとともに、前記判定部の判定結果に応じて、前記仮想的に構成されるネットワークに含まれるユニットそれぞれへの電力供給の状態を表示する表示部とを含み、
前記表示部は、前記判定部が前記ユニットへ供給される電力が不足していると判定した場合に、当該電力不足を解消するためのメッセージを表示するように構成される、情報処理装置。」

なお、本願発明2-7の概要は以下のとおりである。
本願発明2-6は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明7は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1とカテゴリ表現上の差異となる発明である。

第5 引用文献、引用発明
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、管理装置および管理方法に関し、特に情報処理システムの構成の変更を扱う管理装置および管理方法に関する。」

「【0015】
図1は、実施の形態に係る管理装置の管理対象であるデータセンタ2の構成を示す模式図である。データセンタ2は、サーバやストレージやネットワーク機器やコンセントや分電盤などの構成要素からなる情報処理システムである。データセンタ2は、第1分電盤4、第2分電盤6、第1コンセント8、第2コンセント10、第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16、ネットワーク18、を備える。
【0016】
第1分電盤4、第2分電盤6はそれぞれ外部の送電線20と電気的に接続され、送電線20から電力の供給を受ける。第1コンセント8、第2コンセント10はそれぞれ第1分電盤4、第2分電盤6と接続され、第1分電盤4、第2分電盤6から電力の供給を受ける。図1ではコンセントはひとつの分電盤から電力の供給を受ける場合が示されるが、コンセントは複数の分電盤から電力の供給を受けてもよい。
【0017】
第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16それぞれのプラグは第1コンセント8の対応する差し込み口に差し込まれ、第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16はいずれも第1コンセント8から電力の供給を受ける。第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16はイントラネットなどのネットワーク18に接続される。ネットワーク18はインターネットなどの外部ネットワーク(不図示)と接続される。
【0018】
このようにデータセンタ2には、データセンタ2において電力供給の元となる分電盤から、供給された電力が最終的に使用されるサーバやストレージに至るまでの電力供給網が形成されている。以下、データセンタ2において電力供給の元により近い側を電力供給網の上流、そうでない側を下流と定義する。
【0019】
本実施の形態に係る管理装置は、電力に関するデータセンタ2の構成の変更が企画されるとき、その変更によってデータセンタ2の各構成要素において取り扱われる電力がどのように変化するかをユーザ、この場合は変更の担当者やデータセンタ2の管理者、に提示する。電力に関するデータセンタ2の構成の変更は、電力の供給を必要とする新たな構成要素のデータセンタ2への追加と、消費電力の変化を伴う既存の構成要素の更新と、既存の構成要素と新たな構成要素との置換と、既存の構成要素の削除と、を含む。」

「【0021】
これにより、管理者は電力に関するデータセンタ2の構成の変更によって電力的に影響を受けうる構成要素およびその影響の度合いを、自ら配線図等をたどるような場合と比べてより速く正確に知ることができる。また、意図しない構成要素に変更の影響が及ぼされていないかを把握できる。」

「【0024】
図2は、本実施の形態に係る管理装置100の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0025】
管理装置100はキーボード、マウスなどの入力装置102と接続され、またディスプレイなどの表示装置104と接続される。また管理装置100はネットワーク18と接続される。
管理装置100は、変更内容取得部106、情報仮更新部108、関連構成抽出部110、変化量演算部112、通知部114、決定受付部116、関連情報保持部118、仮関連情報保持部120、要素情報保持部122、仮要素情報保持部124、安全性判定部126、警告情報生成部128、履歴保持部130、履歴更新部132、を含む。
【0026】
図3は、要素情報保持部122の一例を示すデータ構造図である。要素情報保持部122は、管理装置100の管理対象であるデータセンタ2の構成要素についての情報を保持する。要素情報保持部122は、構成要素を特定する構成要素IDと、その構成要素の名と、その構成要素の種類と、その構成要素に対応する変更履歴IDと、その構成要素が電力を供給できる構成要素である場合は供給できる電力の最大値(以下、最大供給電力と称す)と、供給余力と、その構成要素が電力を必要とする構成要素である場合はその構成要素が必要とする必要電力と、その構成要素が電力を消費する場合はその消費電力と、を対応付けて保持する。図3において構成要素名のフィールド内の括弧内の符号は、対応する構成要素の符号である。」

「【0030】
図4は、関連情報保持部118の一例を示すデータ構造図である。関連情報保持部118はデータセンタ2における構成要素間の電力の供給関係についての情報を保持する。関連情報保持部118は、構成要素IDと、その構成要素IDが特定する構成要素に電力を供給する構成要素を特定する電力供給元IDの群である電力供給元ID群と、その構成要素IDが特定する構成要素が電力を供給する構成要素を特定する電力供給先IDの群である電力供給先ID群と、その構成要素IDが特定する構成要素についてのドキュメントを特定するデータ関連IDと、を対応付けて保持する。」

「【0034】
変更情報受付部134は、管理者が入力装置102を介して入力するまたは管理者がネットワーク18を介して送信する変更に関する情報を受け付ける。この変更に関する情報は、企画されている電力に関するデータセンタ2の構成の変更に関する情報であり、どの構成要素が変更対象とされるかについての情報および変更対象の構成要素において変更後に扱われる電力の情報を含む。」

「【0038】
仮保持部更新部142は、変更情報受付部134が変更に関する情報を受け付けると、そのとき関連情報保持部118、要素情報保持部122それぞれに保持されている情報を仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124に複製する。特に、仮保持部更新部142は仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124に保持される情報がそれぞれ関連情報保持部118、要素情報保持部122に保持される情報と同一となるように仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124を更新する。したがって、仮関連情報保持部120は図4に示される関連情報保持部118と同様のデータ構造を有する。仮要素情報保持部124は、図3に示される要素情報保持部122と同様のデータ構造を有する。
【0039】
情報仮更新部108は、仮保持部更新部142によって複製が行われた仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124を、変更情報受付部134によって受け付けられた変更に関する情報に基づいて更新する。特に情報仮更新部108は変更対象IDと変更対象の構成要素において変更後に扱われる電力とを仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124に反映させる。」

「【0057】
安全性判定部126は、電力情報仮更新部148によって更新された仮要素情報保持部124を参照し、必要電力が最大供給電力を超える構成要素が存在する場合、その構成要素の構成要素IDおよび構成要素名を警告情報生成部128に渡す。
警告情報生成部128は、渡された構成要素IDおよび構成要素名を含む警告情報を生成する。」

「【0061】
表示制御部150はまた、警告情報生成部128によって生成された警告情報を図10で後述する警告画面330の形で表示装置104に表示させる。」

「【0086】
また、本実施の形態に係る管理装置100では、電力に関するデータセンタ2の構成の変更の結果、必要電力が最大供給電力を超える構成要素が生じる場合、その構成要素の情報を管理者に通知する。したがって、管理者はその通知を受けて必要電力が最大供給電力を超えないように変更の内容を修正できる。
【0087】
例えば図1に示されるデータセンタ2について、第2ストレージ22に第1コンセント8から電力を供給することとすると、第1コンセント8の必要電力は「700(W)」となり最大供給電力「600(W)」を超える。管理装置100はこの場合、管理者に第1コンセント8の必要電力が最大供給電力を超える旨を通知する。したがって、コンセントに定格を超える負荷が接続されることを未然に防ぐことができる。」

以上の記載及び図面によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、括弧内は、対応する明細書の段落、図面の番号を示す。

[引用発明]
「管理装置100(【0001】、【0024】、【図2】)であって、
前記管理装置100の管理対象であるデータセンタ2は、第1分電盤4、第2分電盤6、第1コンセント8、第2コンセント10、第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16、ネットワーク18、を備え(【0015】、【図1】)、第1コンセント8、第2コンセント10はそれぞれ第1分電盤4、第2分電盤6と接続され、第1分電盤4、第2分電盤6から電力の供給を受け、第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16それぞれのプラグは第1コンセント8の対応する差し込み口に差し込まれ、第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16はいずれも第1コンセント8から電力の供給を受け(【0016】、【0017】)、このようにデータセンタ2には、データセンタ2において電力供給の元となる分電盤から、供給された電力が最終的に使用されるサーバやストレージに至るまでの電力供給網が形成されており(【0018】)、
前記管理装置100は、電力に関するデータセンタ2の構成の変更が企画されるとき、その変更によってデータセンタ2の各構成要素において取り扱われる電力がどのように変化するかを提示し(【0019】)、これにより、電力に関するデータセンタ2の構成の変更によって電力的に影響を受けうる構成要素およびその影響の度合いを、配線図等をたどるような場合と比べてより速く正確に知ることができるものであり(【0021】)、
前記管理装置100は、
仮要素情報保持部124、仮関連情報保持部120、情報仮更新部108、安全性判定部126、警告情報生成部128、表示制御部150を含み(【0025】、【図2】、【図7】、【図6】)、
前記仮要素情報保持部124は、データセンタ2の各構成要素について、最大供給電力、供給余力、必要電力、消費電力を保持し(【0026】、【0038】、【図7】)、
前記仮関連情報保持部120は、データセンタ2における構成要素間の電力の供給関係についての情報を保持し(【0030】、【0038】、【図6】)、
前記情報仮更新部108は、入力装置102を介して入力した、企画されている電力に関するデータセンタ2の構成の変更に関する情報を受け付け、受け付けられた変更に関する情報に基づいて、前記仮関連情報保持部120、前記仮要素情報保持部124を更新し(【0034】、【0039】)、
前記安全性判定部126は、更新された仮要素情報保持部124を参照し、必要電力が最大供給電力を超える構成要素が存在する場合、その構成要素の構成要素IDおよび構成要素名を警告情報生成部128に渡し(【0057】)、
前記警告情報生成部128は、渡された構成要素IDおよび構成要素名を含む警告情報を生成し(【0057】)、
前記表示制御部150は、警告情報生成部128によって生成された警告情報を警告画面330の形で表示装置104に表示させ(【0061】、【図10】)、
必要電力が最大供給電力を超えないように変更の内容を修正でき、例えば、コンセントに定格を超える負荷が接続されることを未然に防ぐことができる(【0086】、【0087】)、
管理装置100。」

第6 当審の判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明の「管理装置100」は、「情報処理装置」といえるから、両者は「情報処理装置」である点で一致する。

引用発明における「管理装置100」は、その管理対象であるデータセンタ2が、「第1分電盤4、第2分電盤6、第1コンセント8、第2コンセント10、第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16」を備え、「データセンタ2において電力供給の元となる分電盤から、供給された電力が最終的に使用されるサーバやストレージに至るまでの電力供給網」が形成されているから、引用発明の「第1分電盤4、第2分電盤6、第1コンセント8、第2コンセント10、第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16」、「電力供給網」は、それぞれ、本願発明1の「複数種類のユニット」、「ネットワーク」に相当する。
また、引用発明の「前記管理装置100」は、「電力に関するデータセンタ2の構成の変更が企画されるとき、その変更によってデータセンタ2の各構成要素において取り扱われる電力がどのように変化するかを提示し、これにより、電力に関するデータセンタ2の構成の変更によって電力的に影響を受けうる構成要素およびその影響の度合いを、配線図等をたどるような場合と比べてより速く正確に知ることができるもの」であるから、引用発明の「管理装置100」は、「複数種類のユニットにより構成されるネットワークの構築を支援するためのもの」であるといえる。
したがって、本願発明1と引用発明の「前記情報処理装置」は、「複数種類のユニットにより構成されるネットワークの構築を支援するためのもの」である点で一致する。

引用発明において、「第1コンセント8、第2コンセント10はそれぞれ第1分電盤4、第2分電盤6と接続され、第1分電盤4、第2分電盤6から電力の供給を受け、第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16それぞれのプラグは第1コンセント8の対応する差し込み口に差し込まれ、第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16はいずれも第1コンセント8から電力の供給を受け」るから、引用発明の「第1分電盤4、第2分電盤6」は、本願発明1の「下流側に接続されるユニットに電力を供給するための電力供給ユニット」に相当し、また、引用発明1の「第1コンセント8、第2コンセント10」は、「上流側のユニットから電力の供給を受けて下流側のユニットに供給する接続ユニット」といえるから、本願発明1と引用発明とは、「前記複数種類のユニットは、下流側に接続されるユニットに電力を供給するための電力供給ユニットと、上流側のユニットから電力の供給を受けて下流側のユニットに供給する接続ユニットとを含」む点で共通するといえる。

引用発明は、「仮要素情報保持部124」を含み、「前記仮要素情報保持部124は、データセンタ2の各構成要素について、最大供給電力、供給余力、必要電力、消費電力を保持」するから、本願発明1とは、「前記接続ユニットの消費電力と、前記電力供給ユニットの供給可能電力とを記憶するための記憶部」を含む点で一致する。

引用発明は、「情報仮更新部108」を含み、「前記情報仮更新部108は、入力装置102を介して入力した、企画されている電力に関するデータセンタ2の構成の変更に関する情報を受け付け、受け付けられた変更に関する情報に基づいて、前記仮関連情報保持部120、前記仮要素情報保持部124を更新」するから、本願発明1とは、「入力操作に応じて前記接続ユニットと前記電力供給ユニットとを含むネットワークを仮想的に構成する構成部」を含む点で一致する。

引用発明は、「安全性判定部126、警告情報生成部128」を含み、「前記安全性判定部126は、更新された仮要素情報保持部124を参照し、必要電力が最大供給電力を超える構成要素が存在する場合、その構成要素の構成要素IDおよび構成要素名を警告情報生成部128に渡し、
前記警告情報生成部128は、渡された構成要素IDおよび構成要素名を含む警告情報を生成」するから、引用発明は、「前記仮想的に構成されるネットワークに含まれるユニットそれぞれについて、電力の過不足を判定する判定部」を含むといえる。
したがって、本願発明1と引用発明は、「前記仮想的に構成されるネットワークに含まれるユニットそれぞれについて、電力の過不足を判定する判定部」を含む点で共通する。

引用発明は、「表示制御部150」を含み、「前記表示制御部150は、警告情報生成部128によって生成された警告情報を警告画面330の形で表示装置104に表示させる」から、引用発明は、「前記判定部の判定結果に応じて、電力供給の状態を表示する表示部を含み、前記表示部は、前記判定部が電力が不足していると判定した場合に、メッセージを表示するように構成される」といえる。
したがって、本願発明1と引用発明は、「前記判定部の判定結果に応じて、電力供給の状態を表示する表示部を含み、前記表示部は、前記判定部が電力が不足していると判定した場合に、メッセージを表示するように構成される」点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
「情報処理装置であって、
前記情報処理装置は、複数種類のユニットにより構成されるネットワークの構築を支援するためのものであり、
前記複数種類のユニットは、下流側に接続されるユニットに電力を供給するための電力供給ユニットと、上流側のユニットから電力の供給を受けて下流側のユニットに供給する接続ユニットとを含み、
前記情報処理装置は、
前記接続ユニットの消費電力と、前記電力供給ユニットの供給可能電力とを記憶するための記憶部と、
入力操作に応じて前記接続ユニットと前記電力供給ユニットとを含むネットワークを仮想的に構成する構成部と、
前記仮想的に構成されるネットワークに含まれるユニットそれぞれについて、電力の過不足を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、電力供給の状態を表示する表示部とを含み、
前記表示部は、前記判定部が電力が不足していると判定した場合に、メッセージを表示するように構成される、情報処理装置。」

[相違点]
相違点1
「接続ユニット」(引用発明でいう「第1コンセント8」、「第2コンセント10」)が、本願発明1では、「上流側のユニットから電力の供給を受けて動作し、残電力を下流側のユニットに供給する機能を有する」ものであるのに対し、引用発明では、「上流側のユニットから電力の供給を受けて下流側のユニットに供給する」ものとはいえるものの、「上流側のユニットから電力の供給を受けて動作し、残電力を下流側のユニットに供給する機能を有する」ものではない点。

相違点2
本願発明1は、「前記仮想的に構成されるネットワークに含まれるユニットそれぞれについて、前記ユニットへ供給される電力の過不足を、前記ユニットの上流側にある前記電力供給ユニットの供給可能電力と、前記ユニットの上流側にある1以上の接続ユニットの各消費電力と、前記ユニットの消費電力とに基づいて判定する判定部と、
前記ネットワークの仮想的な構成を、各々のユニットの接続関係を含む態様で表示するとともに、前記判定部の判定結果に応じて、前記仮想的に構成されるネットワークに含まれるユニットそれぞれへの電力供給の状態を表示する表示部とを含み、
前記表示部は、前記判定部が前記ユニットへ供給される電力が不足していると判定した場合に、当該電力不足を解消するためのメッセージを表示するように構成される」のに対し、引用発明はそのようなものではない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1、2について併せて検討する。

引用発明は、ネットワークに含まれるユニットそれぞれについて、必要電力が最大供給電力を超える構成要素が存在する場合、その構成要素に対する警告情報(例えば、図10のような「第1コンセントの必要電力が最大供給電力を越えます」)を表示させ、例えば、コンセントに定格を超える負荷が接続されることを未然に防ぐことができるものである。
引用発明における必要電力、及び、最大供給電力とは、例えば、ユニット(構成要素)がコンセントの場合、コンセントに接続された複数の負荷の合計消費電力(図3において、コンセント1(8)の必要電力500Wは、接続されたサーバ1(12)、サーバ2(16)、ストレージ1(14)の消費電力200W、150W、150Wの合計)、及び、コンセントの定格電力(図3において、600W)であるから、引用発明における電力の過不足の判定とは、ユニットが供給できる定格電力が、ユニットの下流に接続された負荷の合計消費電力を上回っているかどうかを判定することであり、本願発明1における、「ユニットへ供給される電力の過不足を、前記ユニットの上流側にある前記電力供給ユニットの供給可能電力と、前記ユニットの上流側にある1以上の接続ユニットの各消費電力と、前記ユニットの消費電力とに基づいて判定する」ものとは異なるものであり、引用発明において、本願発明1のこのような構成を採用する動機付けはない。
また、引用発明のコンセントは、消費電力が0Wであって、本願発明1の「上流側のユニットから電力の供給を受けて動作し、残電力を下流側のユニットに供給する機能を有する接続ユニット」とは異なるものであるから、引用発明は、そもそも、本願発明1における「複数種類のユニットにより構成されるネットワーク」の前提となるユニットの構成が異なるものである。
したがって、前提となるユニットの構成が異なる引用発明において、引用発明とは異なる構成である「残電力を下流側のユニットに供給する機能を有する接続ユニット」を含むことが前提となる、「前記ユニットの上流側にある前記電力供給ユニットの供給可能電力と、前記ユニットの上流側にある1以上の接続ユニットの各消費電力と、前記ユニットの消費電力とに基づいて(前記ユニットへ供給される電力の過不足を)判定する判定部」を採用する動機付けは、引用文献1にはなく、また、拒絶査定や前置報告で周知例として提示された文献にも記載乃至示唆はない。

したがって、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

2.本願発明2-7について
本願発明2-7も、本願発明1の上記相違点に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、本願発明2-7は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1-7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることはできない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-06 
出願番号 特願2012-273876(P2012-273876)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 575- WY (G06F)
P 1 8・ 572- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 征矢 崇宮下 誠三橋 竜太郎  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 千葉 輝久
山田 正文
発明の名称 情報処理装置およびプログラム  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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