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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05K 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05K |
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管理番号 | 1328798 |
審判番号 | 不服2016-7483 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-05-23 |
確定日 | 2017-06-20 |
事件の表示 | 特願2013-512938「エッジ検出」拒絶査定不服審判事件〔2011年12月 8日国際公開、WO2011/151453、平成25年10月17日国内公表、特表2013-539197、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年6月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年6月4日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成28年1月29日付け(発送日:同年2月9日)で拒絶査定がされ、これに対し、同年5月23日に拒絶査定不服審判が請求がされると同時に手続補正がされ、同年10月6日に上申書が提出され、その後当審において平成29年1月26日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、同年4月26日に意見書が提出されるとともに手続補正されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成29年4月26日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 1つ以上の大きな基板から複数の小さな基板を、1つ以上の実体的な切断線マークによって案内される切断プロセスであって、該切断線マークからの所定の容認可能な範囲でずれがあり、該小さな基板において所定の変動範囲内で様々なサイズが存在し得る切断プロセスによって形成することと、 前記切断プロセスに先立って、前記1つ以上の大きな基板に1つ以上の検出マークを、前記1つ以上の切断線マークをも定めるパターン層の一部として設けることと、を含んでおり、 前記検出マークの大きさおよび位置が、前記切断プロセスが1つ以上の切断線マークからずれていても、かつ、前記小さな基板の実際のサイズが前記変動範囲内のいかなるサイズであっても、各々の検出マークの一部分が前記小さな基板の角において該小さな基板の一部として残りかつ該角を定める前記小さな基板の1対のエッジの少なくとも一部に一致する1対のエッジを有するように選択されている、方法。 【請求項2】 前記検出マークおよび前記切断線マークを、電子素子のアレイの一つのレベルの導電要素も定めるパターン層の一部として形成することを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記小さな基板の1つ以上のエッジへのシーラント材料の配置を、前記1つ以上の検出マークに基づいて制御することを含む、請求項1または2に記載の方法。」 第3 引用文献及びその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2010-8455号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 1 「【0025】 以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための表示パネルとして横電界方式の液晶表示パネルを例にとり説明したものであって、本発明をこの液晶表示パネルに特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。 【0026】 図1は第1実施形態に係る大判の表示パネルの部分平面図である。図2は図1のII-II線に沿った断面図である。図3Aは図1のIIIA部分のアライメントマークの拡大図であり、図3Bは図1のIIIB部分のスラントマークの拡大図であり、図3Cは図1のIIIC部分のスラントマークの拡大図である。図4Aは図3Bの分断線S1で分断した場合の分断面の拡大平面図であり、図4Bは図3Bの分断線S2で分断した際の分断面の拡大平面図であり、図4Cはアライメントマークの残存部の拡大平面図である。図5は第2実施形態に係る大判の表示パネルの部分平面図である。図6Aはスラントマークの第1の変形例の拡大図であり、図6Bはスラントマークの第2の変形例の拡大図であり、図6Cは図6BのVIC部分の拡大図である。 【0027】 [第1実施形態] 第1の実施形態の表示パネルを図1?図3を用いて説明する。なお、図1に示した大判の表示パネル11Aは、個別表示パネル11Pに分断される前の状態を示しており、実線部分が個別表示パネル11Pに分断するための分断線を示している。分断される前の大判の表示パネル11Aは、図2に示すように、個別表示パネル11P毎に、液晶が注入される空隙部12と、空隙部12に注入された液晶を背面側と表示面側から挟持するアレイ基板13とカラーフィルタ基板14と、アレイ基板13とカラーフィルタ基板14の周囲を囲むシール材15とを有している。この大判の表示パネル11Aから個別表示パネル11Pに分断された後、液晶注入孔16から空隙部12内に液晶を注入し、液晶注入孔16を封止し、更に、アレイ基板13の背面に第1偏光板17を、カラーフィルタ基板14の前面に第2偏光板18をそれぞれ貼付することにより、個々の液晶表示パネルが作製される。 【0028】 図示省略したが、アレイ基板13は、ガラスや石英、プラスチック等からなる基板本体を基体としており、この基板本体には背面側からスイッチング素子、下電極、上電極及び第1配向膜が形成されている。スイッチング素子(例えばTFT(Thin Film Transistor))により、下電極と上電極間に印加される電圧がON/OFFされ、第1配向膜に施されるラビング処理によって液晶の初期(下電極と上電極間の印加電圧がOFFのとき)の向きが設定される。同じく、カラーフィルタ基板14は、ガラスや石英、プラスチック等からなる基板本体を基体としており、基板本体には、第2配向膜、サブ画素毎に異なる色光(R、G、Bあるいは無色)を透過するカラーフィルタ層と所定の領域に遮光材層が形成されている。なお、第2配向膜には第1配向膜と逆方向のラビング処理が施される。 【0029】 また、第1偏光板17と第2偏光板18とは、アレイ基板13側の第1偏光板17の透過軸と、カラーフィルタ基板14側の第2偏光板18の透過軸とが互いに直交するように配置される。液晶は、初期状態ではラビング方向に沿って平行に配向しているが、下電極と上電極との間への電圧印加によって、上記電界の主方向側へ回転して再配向する。この初期配向状態と電圧印加時の配向状態との差異に基づいて各サブ画素の明暗表示が行われる。また、図2に示すように、個別表示基板11Pにおける、個別アレイ基板13Pの長い辺は個別カラーフィルタ基板14Pの長辺の延在方向(図2の下方)に突出部20が形成されている。この突出部20に不図示の液晶駆動用ドライバを接合させるための端子等が形成されている。 【0030】 図1に示すごとく、大判の表示パネル11Aのアレイ基板13とカラーフィルタ基板14に分断用のカッターの位置決めを行うためのアライメントマーク(alignment Mark)21、22が形成される。カラーフィルタ基板14のアライメントマーク21は遮光部材の形成と同時に遮光性の金属材あるいは樹脂材のBMで形成される。アレイ基板13のアライメントマーク22はゲートライン(走査線)の形成と同時に遮光性のゲートメタルで形成される。このために、工程数を増加させることなく、アライメントマーク21、22を形成することができる。アライメントマーク21、22は縦横の切断仮想線25X、25X'及び25Yの交差点、すなわち、個別表示パネル11Pの個別カラーフィルタ基板14Pと個別アレイ基板13Pのコーナーに対応する位置に形成される。図3Aに示すごとく、アライメントマーク21、22には切断位置の公差となる寸法(ここでは±100μm)の目盛りが実線で記されている。また、その公差を2等分する寸法(ここでは50μm)の最小目盛りも記されている。また、切断仮想線25Xは、大判の表示パネル11から個別表示パネル11Pに分断するためのものであり、個別アレイ基板13P側及び個別カラーフィルタ基板側14P側に形成される。また、切断仮想線25X'は、個別表示パネル11Pから個別アレイ基板13PのドライバIC等が載置される突出部20を露出させるためのものであり、個別カラーフィルタ基板14P側にのみ形成される。 【0031】 このアライメントマーク21、22を基準とし、最初に不図示のホイールカッターの位置を切断仮想線25Xに合わせ、ホイールカッターを切断仮想線25Xに沿って所定の圧力及び速度で移動させて、メディアンクラック(Median Crack)を形成させる。メディアンクラックとは、刃先が基板に食い込むことによる塑性変形である。そして、メディアンクラック部分に応力を加えて大判の表示パネル11Aを短冊状に分断する。この分断はアレイ基板13とカラーフィルタ基板14の両方について行われ、大判の表示パネル11Aが液晶の注入口16の並ぶ方向に短冊状に分断される。そして、一列に短冊状に並んだ個別表示パネル11Pの空隙部12の内部に注入口16から液晶が真空中で吸引される。次いで、注入口16が封止され、大判の表示パネル11Aを短冊状に分断した際と同様の切断方法で切断仮想線25Yに沿って分断することにより、1枚ずつの個別表示パネル11Pに分断される。その後、切断仮想線25X'に沿って個別カラーフィルタ基板14Pを分断することにより、個別アレイ基板13Pの突出部20が露出される。 【0032】 なお、短冊状に分断された大判の表示パネル11Aないし個別に分断された個別表示パネル11Pについて、分断位置や分断時の傾き等についての検査が行われる。この検査は、切断仮想線25X及び25Yに対する分断線の位置ずれがアライメントマーク21及び22に記された公差(±100μm)の範囲内であるか否かの検査のみでなく、傾斜の公差(例えば、±0.1度)の範囲内であるか否かの検査も行われる。切断仮想線25X及び25Yに対する分断線の位置ずれの検査は、アライメントマーク21及び22を用いることによって検査することができる。しかしながら、分断線の傾斜の検査は、アライメントマーク21及び22の最小目盛り間隔が例えば100μmと大きいので、必ずしも正確にはできない。また、アライメントマーク21及び22は欠けやすい分断線のコーナーに形成されているために、欠損することがある。」 2 図3Aを参照すると、アライメントマーク21、22は、切断位置から公差のL字形の目盛り(±100μm)、公差の半分のL字形の最小目盛り(±50μm)、及び公差よりも大きいL字形の目盛り(約±150μm)が、それぞれ4個ずつ点対称となるよう配置され、4個のL字形の最小目盛り(±50μm)の間の中央部分には、十字状の何もマークがない部分(以下、「十字状の空白部分」という。)が看取される。 上記の記載事項及び図面の記載を総合すると、引用文献には、「表示パネル及びその製造方法」に関して、第1実施形態として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「1つ以上の大判の表示パネル11から複数の個別表示パネル11Pを、1つ以上の実体的なアライメントマーク21、22によって案内される切断プロセスであって、該アライメントマーク21、22からの公差でずれがあり、該個別表示パネル11Pにおいて公差内で様々なサイズが存在し得る切断プロセスによって形成することと、 前記切断プロセスに先立って、前記1つ以上の大判の表示パネル11に1つ以上のアライメントマーク21、22を、パターン層の一部として設けることと、を含んでおり、 アライメントマーク21、22は、切断位置から公差のL字形の目盛り(±100μm)、公差の半分のL字形の最小目盛り(±50μm)、及び公差よりも大きいL字形の目盛り(約±150μm)が、それぞれ4個ずつ点対称となるよう配置され、4個のL字形の最小目盛り(±50μm)の間の中央部分には、十字状の空白部分を有する、方法。 第4 対比・判断 1 本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「大判の表示パネル11」は、本願発明1の「大きな基板」に相当する。 以下同様に、「個別表示パネル11P」は、「小さな基板」に、 「アライメントマーク21、22」は、「検出マーク」及び「切断線マーク」に、 「公差」は、「所定の容認可能な範囲」及び「所定の変動範囲」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「アライメントマーク21、22」は、本願発明1の「検出マーク」及び「切断線マーク」に相当するから、引用発明は、「前記1つ以上の大きな基板に1つ以上の検出マークを、前記1つ以上の切断線マークをも定めるパターン層の一部として設け」ているといえる。 以上のことから、本願発明1と引用発明とは次の点で一致する。 「1つ以上の大きな基板から複数の小さな基板を、1つ以上の実体的な切断線マークによって案内される切断プロセスであって、該切断線マークからの所定の容認可能な範囲でずれがあり、該小さな基板において所定の変動範囲内で様々なサイズが存在し得る切断プロセスによって形成することと、 前記切断プロセスに先立って、前記1つ以上の大きな基板に1つ以上の検出マークを、前記1つ以上の切断線マークをも定めるパターン層の一部として設けることと、を含んでいる、方法。」 一方で、両者は次の点で相違する。 [相違点] 本願発明1では「前記検出マークの大きさおよび位置が、前記切断プロセスが1つ以上の切断線マークからずれていても、かつ、前記小さな基板の実際のサイズが前記変動範囲内のいかなるサイズであっても、各々の検出マークの一部分が前記小さな基板の角において該小さな基板の一部として残りかつ該角を定める前記小さな基板の1対のエッジの少なくとも一部に一致する1対のエッジを有するように選択されている」のに対して、 引用発明では、「アライメントマーク21、22は、切断位置から公差のL字形の目盛り(±100μm)、公差の半分のL字形の最小目盛り(±50μm)、及び公差よりも大きいL字形の目盛り(約±150μm)が、それぞれ4個ずつ点対称となるよう配置され、4個のL字形の最小目盛り(±50μm)の間の中央部分には、十字状の空白部分を有する」点。 (2) 相違点についての判断 相違点についてさらに検討すると、引用発明では、4個のL字形の最小目盛り(±50μm)の間の中央部分には、十字状の空白部分を有するから、公差の半分のL字形の最小目盛り(±50μm)の範囲内で切断した場合には、個別表示パネル11Pの角に、十字状の空白部分の一部が残り、アライメントマーク21、22が角とならないこととなる。 すると、「検出マークの一部分が前記小さな基板の角において該小さな基板の一部」が、上記相違点に係る本願発明1の構成では、残るのに対して、上記相違点に係る引用発明の構成では、残らない点で異なるから、上記相違点は実質的な相違点である。 そして、上記相違点に係る本願発明1の構成については、引用文献に記載ないし記載されているに等しいとはいえないし、また、引用文献に示唆されているものでもない。 したがって、本願発明1は、引用文献に記載された発明ということはできないし、また、引用文献に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 2 本願発明2、3について 本願発明2及び3は、本願発明1をさらに限定したものであるので、同様に、引用文献に記載された発明ということはできないし、また、引用文献に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 第5 原査定の概要及び原査定についての判断 1 原査定の概要 原査定の概要は、次のとおりである。 (理由1)本件出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (理由2)本件出願の請求項1、2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 刊行物1:特開2006-186704号公報 刊行物2:特開2010-8455号公報 なお、原査定では、引用文献等一覧に刊行物1及び刊行物2の2つが挙げられてはいるが、刊行物1は、拒絶の理由には引用されていない。 2 原査定についての判断 上記刊行物2は、前記「第3」及び「第4」における引用文献と同じである。 そして、前記「第4 1」及び「第4 2」のとおり、本願発明1?3は、引用文献(刊行物2)に記載された発明ということはできないし、また、引用文献(刊行物2)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 当審拒絶理由について 当審では、本件出願は、特許請求の範囲の請求項3の記載が、「検出可能なマーク」はどのマークであるのか明確ではない点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知しているが、平成29年4月26日の手続補正において、請求項3は「前記小さな基板の1つ以上のエッジへのシーラント材料の配置を、前記1つ以上の検出マークに基づいて制御することを含む、請求項1または2に記載の方法。」と補正された結果、この拒絶理由は解消した(下線は、請求人が付与。)。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明1?3は、引用文献に記載された発明ということはできないし、また、引用文献に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-06-05 |
出願番号 | 特願2013-512938(P2013-512938) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(H05K)
P 1 8・ 537- WY (H05K) P 1 8・ 121- WY (H05K) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中島 昭浩 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 小関 峰夫 |
発明の名称 | エッジ検出 |
代理人 | 宇佐美 綾 |
代理人 | 小谷 昌崇 |
代理人 | 小谷 悦司 |