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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F16B
管理番号 1328825
審判番号 不服2016-15842  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-24 
確定日 2017-06-27 
事件の表示 特願2016- 11257「非円形ねじ」拒絶査定不服審判事件〔請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月25日の出願であって、同年4月14日付けで拒絶理由が通知され、同年6月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月30日付け(発送日:同年9月6日)で拒絶査定(以下、「原審拒絶査定」という。)がなされ、これに対し、同年10月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、当審において平成29年4月17日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月10日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原審拒絶査定の概要
原審拒絶査定の概要は、次のとおりである。

本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1
・引用文献等 アないしウ
引用文献アには、「ネジ山6」の尾根部に複数の「切欠き7」(切欠き部)を有し、複数の切欠き7が、ネジ山6の尾根部に略等しい間隔で設けられている「タッピンネジ5」が記載されている(第2ページ左上欄第14ないし19行、第3ないし6図等参照)。
引用文献イには、「木質系材料用自穿孔ねじ1」において、「ねじ込み時のトルクを安定的に小さく」するために、「進み側フランク角α」(進み側フランク面のフランク角)を「追い側フランク角β」(戻り側フランク面のフランク角)よりも小さくする、との技術的事項が記載されている(段落【0035】ないし【0039】、図1,2等参照)。
また、ワークの素材が樹脂のように弾性変形の大きな素材である場合に、タッピングねじとして非円形ねじを用いること、及びねじ山先端に幅(頂上面)を設けることは、引用文献ウに記載されるとおり、本願出願前の周知技術である(段落【0007】、図8等参照)。
タッピンネジのねじ込み時のトルクを小さくすることは、当業者にとって当然な課題であるから、この課題解決のために、引用文献イに記載された技術的事項を引用文献アの「タッピンネジ5」に適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、非円形ねじのネジ山の尾根部に複数の切欠きを設けるにあたり、切欠き部を尾根部のどの位置に設けるか、は当業者が適宜決定する設計的事項に過ぎず、本願発明に係る発明の詳細な説明、特許請求の範囲、及び図面を参酌しても、非円形ねじのネジ山の尾根部の最大外径部や尾根部の最小外径部に切欠き部を設けることで、顕著な効果を奏するものとも認められない。
よって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献アに記載された発明に、引用文献イに記載された技術的事項、及び周知技術を適用し、当業者が容易に発明をすることができたものである。

・請求項 2ないし4
・引用文献等 アないしウ
引用文献アには、複数の「切欠き7」のそれぞれの「ねじ込み側a方向」(挿入回転方向側)の箇所と「ネジ山6」の尾根部がなす角度は、複数の「切欠き7」のそれぞれの「ゆるみ側b方向」(反挿入回転方向側)の箇所と「ネジ山6」の尾根部がなす角度よりも小さい「タッピンネジ5」が記載されている(第2ページ左上欄第14ないし右上欄第11行、第4図等参照)。
引用文献アの「切欠き7」は隣接する上下段において同じ位置にないから、引用文献アには、複数の「切欠き7」は、「ネジ山6」の尾根部に略等しい間隔で設けられ、前記間隔の整数倍は、「ネジ山6」のらせん一周分の周長とならない「タッピンネジ5」が記載されているといえる(図3,4等参照)。
ねじ山の尾根部に設ける切欠き部の数を決定すること(切欠き部の間隔の大きさを決定すること)は、当業者が適宜決定する設計的事項に過ぎない。

・請求項 5
・引用文献等 アないしオ
ワーク等との接触による損傷防止やワークへの挿入容易のために、ねじの下端を半球状とすることは、引用文献エ、オに記載されるとおり、本願出願前の周知技術である(引用文献エの段落【0006】、【0010】、図1等と、引用文献オの第2ページ左上欄第12ないし18行、第2ページ右上欄第20行ないし右下欄第4行、第5図等参照)。

<引用文献等一覧>
ア.特開昭50-35567号公報
イ.特開2013-96466号公報
ウ.特許第3909767号公報(周知技術を示す文献)
エ.特開2003-206918号公報(周知技術を示す文献)
オ.特開昭56-160415号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審拒絶理由の概要
<理由1>
本願は、特許請求の範囲の記載が、下記の点で不備であるから、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
<理由2>
本願の請求項1、2及び5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<理由1について>
請求項1において、「前記複数の切欠き部は、前記尾根部の最大外径部に設けられている切欠き部と、前記尾根部の最小外径部に設けられている切欠き部と、を有し、」との記載(以下、「記載A」という。)は、技術的意味が不明であって、出願時の技術常識を考慮すると発明特定事項が不足していることが明らかである。
すなわち、審判請求人は、平成28年6月13日提出の意見書において、上記記載Aに係る発明特定事項は、少なくとも本願の出願当初の図3に記載され、又は、当該記載から自明な事項であると主張しているところ、図3は「図1に示される非円形ねじの軸心及びねじ山の一例を示す横断面図」(明細書段落【0011】)であって、ねじ山は「軸心の表面にらせん状に設けられて」(同段落【0012】)いるから、同段落【0022】の記載「本明細書で開示される非円形ねじにおいては、複数の切欠き部222が概略等しい間隔で設けられ、また、当該間隔の整数倍は、ねじ山22のらせん一周分の周長とならない。換言すると、本明細書で開示される非円形ねじにおいては、複数の切欠き部222が隣接する上下段において同じ位置にない。」及び図1等の記載からみて、図3上に示された切欠き部222の位置は、図1の上下方向において横断面をとる位置に応じて変わるものであると理解される。
したがって、図3に示された範囲におけるねじ山22のらせん1周分において、尾根部の最大外径部に設けられている切欠き部と、尾根部の最小外径部に設けられている切欠き部を有するとしても、図3に示された以外の範囲におけるねじ山22のらせん1周分においては、尾根部の最大外径部に設けられている切欠き部と、尾根部の最小外径部に設けられている切欠き部を有するか否か不明である。
ゆえに、請求項1に係る発明において、上記記載Aを発明特定事項として有するということは、図3に示された範囲におけるねじ山22のらせん1周分において、尾根部の最大外径部に設けられている切欠き部と、尾根部の最小外径部に設けられている切欠き部を有するとともに、図3に示された以外の範囲におけるねじ山22のらせん1周分においては、切欠き部を有するとしても任意の位置であることを意味すると介され、それがいかなる技術的意味を有するのか理解することができない。
なお、上記記載Aに関連すると思われる構成として、明細書の段落【0022】には、上記記載のほか、「そして、この場合、以下の理由から、非円形ねじの品質を均等にすること及び安価に大量生産することの両立が可能である。」との記載があり、該構成は「緩みを効果的に抑制することが可能な非円形ねじを提供する」(本願の明細書の段落【0008】)との本願発明の課題を解決するための手段であると理解される。

<理由2について>
1 引用文献
(1)特許第3909767号公報(原審拒絶査定における引用文献ウ。以下、「引用文献1」という。特に、段落【0021】ないし【0025】並びに図1及び2等参照。)
(2)特開2013-96466号公報(原審拒絶査定における引用文献イ。以下、「引用文献2」という。特に、段落【0035】並びに図1及び2等参照。)
(3)特開昭50-35567号公報(原審拒絶査定における引用文献ア。以下、「引用文献3」という。特に、第2ページ左上欄第14ないし19行及び第4図等参照。)
(4)特開2003-206918号公報(原審拒絶査定における引用文献エ。以下、「引用文献4」という。特に、【請求項1】及び図1等参照。)
(5)特開昭56-160415号公報(原審拒絶査定における引用文献オ。以下、「引用文献5」という。特に、特許請求の範囲及び第5図等参照。)

2 引用発明
引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認める。
「上端面にねじ回転工具係合部2を備えた頭部3と、
前記頭部3の下面から垂設されている脚部4と、を有し、
前記脚部4は、
軸と、
前記軸の表面にらせん状に設けられているねじ山7と、を有し、
前記ねじ山7は、
外周形状がおむすび形をなす尾根部分と、
前記尾根部分に設けられている複数の窪み10と、を有し、
前記ねじ山7の進み側のフランク面15の角度は、戻り側のフランク面16の角度よりも大きく、
前記複数の窪み10は、前記尾根部分に概略等しい間隔で設けられ、
前記ねじ山7は、前記軸の表面と平行な頂上面を有する、非円形ねじ。」

3 請求項1に係る発明に対して
引き抜き強度を安定的に大きくすることを目的としたタッピンねじにおいて、進み側フランク角を追い側フランク角よりも小さくすることは、引用文献2に記載されている(以下、「引用文献2記載事項」という。)。
そして、請求項1に係る発明において、複数の切欠き部が、尾根部の最大外形部に設けられている切欠き部と尾根部の最小外径部に設けられている切欠き部とを有することは、技術的意味を有さず、単なる設計上の事項である。
したがって、請求項1に係る発明は、引用発明A及び引用文献2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 請求項2に係る発明に対して
引用文献3には、タッピンネジにおいて、ネジ山6に複数個形成した切り欠き7の傾斜について、ねじ込み回転側を15°とし、反対側を75°とすることにより、ゆるみ止めを図ることが記載されている(以下、「引用文献3記載事項」という。)。
したがって、請求項2に係る発明は、引用発明A並びに引用文献2及び3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 請求項5に係る発明に対して
ワーク等との接触による損傷防止やワークへの挿入容易化のために、ねじの下端を半球状とすることは、周知の事項(以下、「周知事項」という。例えば、引用文献4及び5等参照。)。
したがって、請求項5に係る発明は、引用発明A、引用文献2及び3記載事項並びに周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成29年5月10日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
上面にねじ回転工具係合部を備えた頭部と、
前記頭部の下面から垂設されている脚部と、を有し、
前記脚部は、
軸心と、
前記軸心の表面にらせん状に設けられているねじ山と、を有し、
前記ねじ山は、
外周が非円形である尾根部と、
前記尾根部に設けられている複数の切欠き部と、を有し、
前記ねじ山の進み側フランク面のフランク角は、戻り側フランク面のフランク角よりも小さく、
前記複数の切欠き部は、前記尾根部に概略等しい間隔で設けられ、
前記間隔の整数倍は、前記ねじ山のらせん一周分の周長とならず、
前記ねじ山は、前記軸心の表面と平行な頂上面を有する、非円形ねじ。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の切欠き部のそれぞれの挿入回転方向側の箇所と前記尾根部がなす角度は、前記複数の切欠き部のそれぞれの反挿入回転方向側の箇所と前記尾根部がなす角度よりも小さい、非円形ねじ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記間隔は、前記ねじ山のらせん3分の1周分の周長よりも短く、且つ、前記ねじ山のらせん7分の1周分の周長よりも長い、非円形ねじ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記軸心の下端は、半球状である、非円形ねじ。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1) 引用文献1の記載事項
本願の出願前に頒布され、当審拒絶理由で引用された特許第3909767号公報(引用文献1)には、「戻り止め付非円形ねじ」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0021】
本発明は、非円形ねじの回り止めを確実に行い、容易にねじ込みを行うことができるようにするため、非円形ねじの外周面の最大径をなす部分より、ねじ込み回転方向に対して遅れ側の外周面に窪みを形成し、非円形ねじの戻り側フランク面のフランク角を、進み側フランク面のフランク角より小さく設定することによって解決する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の第1の実施例を示している。図1に示す非円形ねじ1においては、全体形状は前記図8に示した従来の非円形ねじ41とほぼ同様の形状をなしている。即ち、上端面に図示されないトルク伝達工具と係合して非円形ねじ1にねじ込み力、或いは戻し力を伝達するねじ回転工具係合部2を備えた頭部3と、この頭部3と一体に連なる脚部4とからなっており、この脚部4には頭部3の下部に位置する首部5から脚部先端6にかけて、雄ねじとしてねじ山7を形成している。また、ねじ山7の外周形状は同図(b)に示すように互いに120度の間隔で外径が最も大きな突出部8を備えたおむすび形をなしており、脚部4の外周形状もこのねじ山7の外周形状と相似形のおむすび形をしている。
【0023】
図1に示す実施例においては、同図(b)に示すように、ねじ山7の各突出部8において、このねじをねじ込む図中矢印の回転方向Aに対して回転遅れ側の位置に窪み10を形成している。同図(b)に示す例においては、この窪み10を円弧状に形成しており、この窪み10の先端11は突出部8の最大径をなす先端部12と一致するように設けた例を示している。本発明における窪み10は、少なくともねじ込み方向の遅れ側である後端13の径が、このねじ山の最大外径部分となることがないようにする。
【0024】
即ち、窪み10のねじ回転方向の後端13の外径が、このねじ山の最大外径部になることによって、下穴内周面に対してタッピング作用を生じ、この部分で雌ねじ形成屑を生じさせることがないようにする。したがって、このようなタッピング作用を生じさせないようにするならば、窪み10は適宜の位置において、適当な大きさで、各種の形状に形成することができるが、図示のようにできる限り最大外径部に近接していることが、素材の流動の面から好ましく、ねじ山外周の最小外径部9と最大外径部との間に窪み10を配置することが好ましい。
【0025】
また、図1に示す実施例におけるねじ山7の拡大断面図である図2(a)に示されるように、ねじ山の形状は進み側のフランク面15の角度が大きく、したがってその傾斜は緩く形成し、一方、戻り側のフランク面16の角度は小さく、したがってその傾斜が強い鋸歯形をしている。図示の例においては進み側の角度を30度、戻り側の角度を5度に設定し、したがってねじ山角度はその合計である35度に設定した例を示している。同図の例においてはねじ山のピッチを0.577mmとし、ねじ山先端の幅を0.05mmにしている。なお、図示の例は一例に過ぎず、特にねじ山ピッチ、ねじ山先端幅等は必要に応じて任意に設定することができる。図2(b)には従来広く用いられているタップねじのねじ山形状を示しており、多くの場合ねじ山角度は60度程度に設定され、進み側と戻り側のフランク角度は同じ角度に設定している。」(段落【0021】ないし【0025】)

(イ)上記(ア)の段落【0022】の「上端面に図示されないトルク伝達工具と係合して非円形ねじ1にねじ込み力、或いは戻し力を伝達するねじ回転工具係合部2を備えた頭部3と、この頭部3と一体に連なる脚部4とからなっており」との記載及び図1(a)によれば、引用文献1には、上端面にねじ回転工具係合部2を備えた頭部3と、前記頭部3の下面から垂設されている脚部4と、を有する非円形ねじ1が記載されていることが分かる。

(ウ)上記(ア)の段落【0022】の「この脚部4には頭部3の下部に位置する首部5から脚部先端6にかけて、雄ねじとしてねじ山7を形成している」との記載を図1(a)に照らし合わせれば、図1(a)において、非円形ねじ1の脚部4は、軸と該軸の表面にらせん状に設けられているネジ山7とを有することが看取される。

(エ)上記(ア)の段落【0022】の「ねじ山7の外周形状は同図(b)に示すように互いに120度の間隔で外径が最も大きな突出部8を備えたおむすび形をなしており」及び同段落【0023】の「同図(b)に示すように、ねじ山7の各突出部8において、このねじをねじ込む図中矢印の回転方向Aに対して回転遅れ側の位置に窪み10を形成している」との記載を図1(b)に照らし合わせれば、ねじ山7は、外周形状がおむすび形をなす尾根部分と、該尾根部分に設けられている複数の窪み10とを有することが分かる。

(オ)上記(ア)の段落【0025】の「図2(a)に示されるように、ねじ山の形状は進み側のフランク面15の角度が大きく、したがってその傾斜は緩く形成し、一方、戻り側のフランク面16の角度は小さく、したがってその傾斜が強い鋸歯形をしている」との記載を図2(a)に照らし合わせれば、ねじ山7の進み側のフランク面15の角度は、戻り側のフランク面16の角度よりも大きいことが分かる。

(カ)図1(a)及び(b)において、複数設けられた窪み10は、尾根部分に概略等しい間隔で設けられていることが看取される。

(キ)図1(a)において、ねじ山7は、軸の表面と平行なねじ山先端面を有することが看取される。

(2) 引用発明
上記記載事項及び認定事項並びに図示事項を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「上端面にねじ回転工具係合部2を備えた頭部3と、
前記頭部3の下面から垂設されている脚部4と、を有し、
前記脚部4は、
軸と、
前記軸の表面にらせん状に設けられているねじ山7と、を有し、
前記ねじ山7は、
外周形状がおむすび形をなす尾根部分と、
前記尾根部分に設けられている複数の窪み10と、を有し、
前記ねじ山7の進み側のフランク面15の角度は、戻り側のフランク面16の角度よりも大きく、
前記複数の窪み10は、前記尾根部分に概略等しい間隔で設けられ、
前記ねじ山7は、前記軸の表面と平行なねじ山先端面を有する、戻り止め付非円形ねじ。」

2 引用文献2
(1) 引用文献2の記載事項
本願の出願前に頒布され、当審拒絶理由で引用された特開2013-96466号公報(引用文献2)には、「木質系材料用自穿孔ねじ」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的の一つは、ねじ込み時のトルクを安定的に小さくするとともに、引き抜き抵抗を安定的に大きくでき、かつ1本1本のねじ毎のねじ込みトルク性能および引き抜き抵抗性能のばらつきを少なくすることができる木質系材料用自穿孔ねじを提供することにある。」(段落【0009】)

(イ)「【0035】
図1および2は本発明の実施例1を示している。木質系材料用自穿孔ねじ1は、鋼、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼等の金属からなり、転造により製作されており、軸部2とこの軸部2の一端部に設けられた頭部3とを一体的に有している。前記頭部3にはリセス4が設けられている。前記軸部2の外周には、1条のねじ山5が螺旋状に設けられている。前記ねじ山5の進み側フランク角αは20度、追い側フランク角βは45度とされており、したがって、進み側フランク角α<追い側フランク角βとされている。」(段落【0035】)

(ウ)「【0039】
この木質系材料用自穿孔ねじ1では、進み側フランク6の面積が追い側フランク8の面積より前記長さの比Ll/Lfに対応して小さくされているので、ねじ締結時に被ねじ込み材と進み側フランク6との接触面積を減少させ、ねじ込み時の摩擦抵抗を一定以上少なくすることができる。したがって、被ねじ込み材が木質系材料の場合においても、ねじ込み時の摩擦、ひいてはねじ込み時のトルクを安定的に小さくし、かつ1本1本のねじ1毎のねじ込みトルク性能のばらつきを少なくすることができる。
【0040】
また、ねじ込み時の摩擦が小さいことにより、ねじ込み時に木質系材料がねじ1から受ける剪断力が小さいので、木質系材料に形成される雌ねじがその形成過程で壊れにくく、正常な状態に形成され易いため、引き抜き強度を安定的に大きくし、かつ1本1本のねじ1毎の引き抜き抵抗性能のばらつきを少なくすることができる。
【0041】
加うるに、木質系材料と進み側フランク6との接触面積が小さいので、木質系材料が進み側フランク6から受ける単位面積当たりの圧縮力(圧縮圧力)が高くなり、木質系材料がより大きく圧縮されて、形成される雌ねじ部分の密度が高くなり、ひいては雌ねじの強度が高くなる。したがって、これによっても、引き抜き強度を安定的に大きくし、かつ1本1本のねじ1毎の引き抜き抵抗性能のばらつきを少なくすることができる。
【0042】
さらに、締め付けが完了すると、軸方向荷重が除去され、追い側フランク8がねじの締め付け力を受けて木質系材料と密着する。その上、木質系材料がねじ山5全体を締め付ける方向にスプリングバックしてくる。ここにおいて、本発明では、追い側フランク8の面積が進み側フランク6の面積より大きくされており、この広い面積の追い側フランク8が木質系材料を安定に受け止めるので、これによっても、引き抜き強度を安定的に大きくし、かつ1本1本のねじ毎の引き抜き抵抗性能のばらつきを少なくすることができる。」(段落【0039】ないし【0042】)

(2)引用文献2記載技術
上記記載事項並びに図1及び2の図示事項を総合すると、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載技術」という。)が記載されている。

「引き抜き強度を安定的に大きくすることを目的とした自穿孔ねじにおいて、進み側フランク角αを追い側フランク角βよりも小さくする技術。」

3 引用文献3
(1) 引用文献3の記載事項
本願の出願前に頒布され、当審拒絶理由で引用された特開昭50-35567号公報(引用文献3)には、「合成樹脂用ネジ」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「以上のように合成樹脂部材にタッピンネジを止めるとき、ゆるみ止めの改良が特に要望されている。」(第2ページ左上欄第7ないし9行)

(イ)「図から明らかなように、金属製のタッピンネジ5のネジ山6には、切欠き7が複数個形成してある。この切欠き7は、ネジ山1の1/2(当審注:第4図参照)の深さまで刻設してあり、かつ切欠きの傾斜はねじ込み回転側を15°とし、反対側を75°としている。その他の構成は従来と同様である。」(第2ページ左上欄第14ないし19行)

(2)引用文献3記載技術
上記記載事項及び図4の図示事項を総合すると、引用文献3には、次の技術(以下、「引用文献3記載技術」という。)が記載されている。

「タッピンネジにおいて、ネジ山6に複数個形成した切欠き7の傾斜について、ねじ込み回転側を15°とし、反対側を75°とすることにより、ゆるみ止めを図る技術。」

4 引用文献4
(1) 引用文献4の記載事項
本願の出願前に頒布され、当審拒絶理由で引用された特開2003-206918号公報(引用文献4)には、「セルフタッピングねじ」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】 雄ねじが形成された軸部の先端部に、当該軸部の最小谷径と同径またはやや小なる径のストレート部を形成し、このストレート部の先端部に当該ストレート部の径と同径の半球状部を形成したことを特徴とするセルフタッピングねじ。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

5 引用文献5
(1) 引用文献5の記載事項
本願の出願前に頒布され、当審拒絶理由で引用された特開昭56-160415号公報(引用文献5)には、「タツピングネジ」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

「2.特許請求の範囲
一端に頭部が形成された軸部にネジ山を形成し、前記軸部の端部に球面等の曲面部を形成したことを特徴とするタツピングネジ。」(特許請求の範囲)

第6 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、その技術的意義、機能又は構造からみて、引用発明における「上端面」は、本願発明1における「上面」に相当し、以下同様に、「ねじ回転工具係合部2」は「ねじ回転工具係合部」に、「頭部3」は「頭部」に、「脚部4」は「脚部」に、「軸」は「軸心」に、「ねじ山7」は「ねじ山」に、「外周形状がおむすび形をなす」ことは「外周が非円形である」ことに、「尾根部分」は「尾根部」に、「窪み10」は「切欠き部」に、「ねじ山先端面」は「頂上面」に、「戻り止め付非円形ねじ」は「非円形ねじ」にそれぞれ相当する。

よって、本願発明1と引用発明とは、
「上面にねじ回転工具係合部を備えた頭部と、
前記頭部の下面から垂設されている脚部と、を有し、
前記脚部は、
軸心と、
前記軸心の表面にらせん状に設けられているねじ山と、を有し、
前記ねじ山は、
外周が非円形である尾根部と、
前記尾根部に設けられている複数の切欠き部と、を有し、
前記複数の切欠き部は、前記尾根部に概略等しい間隔で設けられ、
前記ねじ山は、前記軸心の表面と平行な頂上面を有する、非円形ねじ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
(a)本願発明1においては「ねじ山の進み側フランク面のフランク角は、戻り側フランク面のフランク角よりも小さ」いのに対し、引用発明においては「ねじ山7の進み側フランク面15の角度は、戻り側フランク面のフランク角よりも大き」い点(以下、「相違点1」という。)。
(b)本願発明1においては複数の切欠き部の「間隔の整数倍は、前記ねじ山のらせん一周分の周長となら」ないのに対し、引用発明においては、複数の窪み10の間隔とねじ山7のらせん一周分の周長との関係が不明である点(以下、「相違点2」という。)。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず、上記相違点2について検討すると、引用文献1の段落【0024】には、窪み10のねじ回転方向の後端13がねじ山の最大外径部にならず、かつ、できる限り最大外径部に近接していることが望ましい旨が記載されており(上記第5の1(1)(ア)参照)、また、図1(a)及び(b)において、複数設けられた窪み10は、尾根部分に概略等しい間隔で設けられている(上記第5の1(1)(カ)参照)。
これに対し、本願発明1は、切欠き部の「間隔の整数倍が、ねじ山のらせん一周分の周長となら」ないことによって、「非円形ねじの品質を均等にすること及び安価に大量生産することの両立」(本願の明細書の段落【0022】)を可能とするとの作用効果を奏するものである。
すなわち、非円形ねじにおいては、ねじ山の外周と中心軸の距離が変化するから、仮に、流れ作業で複数の切欠き部が隣接する上下段において同じ位置に設けられる場合には、ねじ山の外周と中心軸の距離が長い位置にばかり切欠き部が設けられた非円形ねじと、ねじ山の外周と中心軸の距離が短い位置にばかり切欠き部が設けられた非円形ねじとが製造されうるところ、両者の非円形ねじは、その特性が大きく異なる。他方、流れ作業ではなく、切欠き部を設ける位置を特定した状態で非円形ねじを製造することも可能であるが、その場合には、製造に係る費用の増大及びスループットの低下は避けられない。このように、本願発明1は非円形ねじにおいて、特有の作用効果を奏するものであるということができる。
この点に関し、上記引用文献3の第3図において、切欠き7の位置が隣り合うネジ山6で異なっており、切欠き7の間隔の整数倍がネジ山6のらせん一周分の周長となっていないことが看取される。しかし、引用文献3に記載された技術は、非円形ねじに係るものではないから、非円形ねじにおいて、切欠き部の間隔の整数倍がねじ山のらせん一周分の周長とならないことによって、非円形ねじの品質を均等にすること及び安価に大量生産することの両立を可能とする旨を開示するものではない。
そして、引用文献2、4及び5のいずれにも、非円形ねじにおいて、切欠き部の間隔の整数倍がねじ山のらせん一周分の周長とならないことによって、非円形ねじの品質を均等にすること及び安価に大量生産することの両立を可能とする旨の開示はない。
以上から、引用発明において、引用文献2及び3記載技術並びに引用文献4及び5記載事項を参酌することで、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を想到することが容易であったということはできない。
したがって、上記相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明、引用文献2及び3記載技術並びに引用文献4及び5記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、本願発明1を直接的又は間接的に引用することによって上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者が引用発明、引用文献2及び3記載技術並びに引用文献4及び5記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原審拒絶査定について
平成29年5月10日提出の手続補正書による補正によって、補正後の請求項1は、切欠き部の「間隔の整数倍は、前記ねじ山のらせん一周分の周長となら」ないという発明特定事項を有するものとなった。上記第6に記載したように、非円形ねじにおいて、切欠き部の間隔の整数倍がねじ山のらせん一周分の周長とならないことは、引用文献アないしオ(それぞれ、当審拒絶理由における引用文献3、2、1、4及び5)には記載されておらず、本願出願時における周知技術でもないので、本願発明1ないし4は、当業者であっても、原審拒絶査定における引用文献アないしオに基いて、容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原審拒絶査定の理由を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第2号について
平成29年5月10日提出の手続補正書による補正によって、補正前の請求項1の「前記尾根部の最大外径部に設けられている切欠き部と、前記尾根部の最小外径部に設けられている切欠き部と、を有し、」との記載が削除された結果、特許法第36条第6項第2号についての拒絶理由は解消した。

2 特許法第29条第2項について
平成29年5月10日提出の手続補正書による補正によって、補正後の請求項1は、切欠き部の「間隔の整数倍は、前記ねじ山のらせん一周分の周長となら」ないという発明特定事項を有するものとなった結果、特許法第29条第2項についての拒絶理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原審拒絶査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-13 
出願番号 特願2016-11257(P2016-11257)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16B)
P 1 8・ 537- WY (F16B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩田 健一鵜飼 博人  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 中川 隆司
中村 達之
発明の名称 非円形ねじ  
代理人 五味渕 琢也  
代理人 坪倉 道明  
代理人 森山 正浩  
代理人 安藤 健司  
代理人 城山 康文  
代理人 市川 英彦  
代理人 市川 祐輔  
代理人 小野 誠  
代理人 今藤 敏和  
代理人 川嵜 洋祐  
代理人 飯野 陽一  
代理人 櫻田 芳恵  
代理人 重森 一輝  
代理人 青木 孝博  
代理人 岩瀬 吉和  
代理人 金山 賢教  
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