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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A45D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A45D
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A45D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A45D
管理番号 1328860
審判番号 不服2014-22336  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-04 
確定日 2017-06-07 
事件の表示 特願2009-220794号「へアドライヤー」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 7月15日出願公開、特開2010-155061〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成21年 9月25日(パリ条約による優先権主張 2008年12月29日、(CN)中国、2009年 9月14日、(WO)世界知的所有権機関)の出願であって、平成26年 6月26日付で拒絶査定され、これに対し、同年11月 4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
その後、平成27年12月 2日付で当審から拒絶理由が通知され、平成28年 6月 3日付で意見書及び手続補正書が提出され、さらに、同年 7月11日付で当審から最後の拒絶理由が通知され、同年10月11日付で意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年10月11日の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成28年10月11日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、補正前の
「【請求項1】
ファンとヒーターを有するヘアドライヤーであって、
プログラム可能な集積回路(IC)が実装され、前記ファンと前記ヒーターが接続されたプリント基板と、
それぞれの動作モードについて前記ファンと前記ヒーターの作動レベルが予め組み合わせられて前記集積回路に記憶された複数の動作モードと、
前記プリント基板に接続され、前記複数の動作モードを制御するマルチモードスイッチと、を有し、
前記マルチモードスイッチは、前記ヘアドライヤーにおいて片手で操作できる位置に置かれ、ユーザは、ヘアドライヤーを握っている手のみで、前記マルチモードスイッチを介して前記複数の動作モードを連続的に制御し、ヘアドライヤーを操作することができる
ヘアドライヤー。」
から、補正後の
「【請求項1】
ファンとヒーターを有するヘアドライヤーであって、
プログラム可能な集積回路(IC)が実装され、前記ファンと前記ヒーターが接続されたプリント基板と、
それぞれの動作モードについて前記ファンと前記ヒーターの作動レベルが予め組み合わせられて前記集積回路に記憶された複数の動作モードと、
前記プリント基板に接続され、前記複数の動作モードを制御するマルチモードスイッチと、を有し、
前記マルチモードスイッチは、回転ダイヤル又はトグルスイッチであり、前記ヘアドライヤーにおいて片手で操作できる位置に置かれ、ユーザは、ヘアドライヤーを握っている手のみで、前記マルチモードスイッチを介して前記複数の動作モードを制御し、ヘアドライヤーを操作することができる
ヘアドライヤー。」
へと変更する補正事項を含むものである(下線部は、本件補正により変更された箇所を示す)。

2 本件補正の目的
本件補正の上記補正事項は、補正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「複数の動作モードを連続的に制御」する「マルチモードスイッチ」を具体的に、「複数の動作モードを制御」する「回転ダイヤル又はトグルスイッチ」であることを特定するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成28年10月11日付の意見書(「第2 1.」)にて請求人が主張するように、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について検討する。

3 独立特許要件
(1) 本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、平成28年10月11日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 補正の内容」の補正後の請求項1参照。)により特定されたとおりのものと認める。

(2) 引用文献
当審が通知した平成27年12月 2日付の拒絶理由に引用された本願出願(優先日)前に頒布された刊行物である実願昭59-201536号(実開昭61-110306号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)、特表2001-526563号公報(以下「引用文献2」という。)には、それぞれ以下の事項が記載されている。

[引用文献1について]
(2-1a) 「ここでヘアドライヤとしては全体を保持して使用する第4図(A)に模式的に外観を示したタイプや、同じく(B)図に示す大型・据置型のタイプのヘアドライヤであってもよい。複数のスイッチは第4図(A)のタイプでは本体筒部上、あるいは把手部等に使用上邪魔にならない場所を選んで設ければよく、一方据置型(第4図(B))の場合には操作パネル上に設ければよい。また操作性を考慮して送風用の筒体の一部に設けることも好適である。」(7頁8-17行)

(2-1b) 「風量と温度との設定を択一的に選択する複数のスイッチは、第4図(A)、(B)に例示したように風量と温度を各軸とする平面上に配置すれば、一目で風量と温度の組合わせ(高温弱風、高温強風、あるいは低温強風といった種々の組合わせ)がわかり、扱いやすい。この他、スイッチの各々に「パーマヘア」「ブロー」「ハードヘア」といった表示を付けて、調髪の実際に適したスイッチの配列にすることも好適である。また、第4図(A)、(B)の例では風量、温度を各3分割としたが、適用するヘアドライヤの発熱量等に応じて、2分割や4分割など種々の設定とその組合わせを選択して構成することができる。更に、実際の調髪上使用されない組合わせについてはスイッチを設けなくとも何ら差支えない。」(8頁8-9頁2行)

(2-1c) 「上記の如く構成された本考案のヘアドライヤは、吹出空気の温度を検出して、加熱用ヒータに供給される電力を制御して、吹出空気の温度を設定された温度に調整するのであるが、この風量と温度設定を、択一的に選択できるよう両者を組合せて設定する複数のスイッチにより行うよう構成されている。
即ち、この複数のスイッチのうちのいずれかひとつを選択することによって、吹出空気の風量と温度とを定められ、この設定温度となるようにヒータに供給する電力が温度制御手段により制御されるのである。この結果、ヘアドライヤの吹出空気の状態はスイッチの選択ひとつによって、その発熱能力と送風能力との全範囲から容易に選択・設定される。」(9頁4-下から3行)

(2-1d) 「図において、1は耐熱樹脂でつくられたヘアドライヤの外ケース、2は送風用フィン3を回転させて送風を行なうブロアモータ、5は加熱用のヒータ、7はブロアモータ2とヒータ5への電力の供給を制御する電子制御回路、10はスイッチSW1ないしスイッチSW9よりなる選択スイツチ部、15はスイッチノブ16によってヘアドライヤ全体への電力の供給を入・切する電源スイッチ、18は電源コード、19はヘアドライヤを壁などの取付金具に掛けておくリング、20はヒータ5を支持する絶縁材料で形成された支持枠、22はヒータ5の発熱が外ケース1へ伝わらないよう円筒状に形成された断熱板、25は温度を検出する手段としてのサーミスタ、26はそのリード線、27は外ケース1と断熱板22との間を電子制御回路までひき回されたサーミスタ25用の接続コード、29はヒータ5の過熱を検出するサーモスタット、30は吹出空気の流れを整流する整流板、を各々表わしている。」(10頁5行-11頁3行)

(2-1e) 「電子制御回路7は、第2図に示すように、エンコード部50と発熱量制御回路60及び風量制御回路70とから構成されている。エンコード部50はスイッチSW1ないしスイッチSW9の信号を入力してこれをエンコードする集積回路のエンコーダIC1と、その出力に抵抗R1ないしR6を介してつながれたフォトカプラFC1ないしFC6より構成されている。ここで、スイッチSW1ないしSW9は排他的にしか選択されないような機構を有している。又、エンコーダIC1のエンコードは次の真理値表に示された出力コードを有する。

尚、上記表のうち「-」はそのフォトカプラがオフ状態であることを示している。」(11頁4行-12頁2行)

(2-1f) 「以上のように構成された本実施例においては、電源スイッチ15をオンとすると、風量と吹出空気温度とをスイッチSW1ないしスイツチSW9により設定して、ヘアドライヤの使用が可能となる。スイッチSW1ないしスイッチSW9のうち、いずれかのスイッチを選択すると、エンコード部50により、スイッチに対応して、フォトカプラFC1ないしFC6のうち2つがオン状態となり、DCモータ2とヒータ5への電力の供給が制御される。DCモータ2への供給電力はスイッチの選択により一意に定まるが、ヒータ5への供給電力は、吹出空気の温度をサーミスタ25によって検出していることから、これによってフイードバック制御され、例えば風量が変化したりあるいは室内温が高い時でも低い時でも、吹出空気の温度をほぼ一定に保つよう制御される。従って吹出空気の状態は第3図(D)に示したA1ないしC3の全域をカバーすることができ、調髪上のあらゆる要求に応えることが可能となる。
又、本実施例によれば、吹出空気の風量と温度の設定とをスイッチひとつによって種々選択することができ、容易に所望の温度・風量の吹出空気を得ることができる。しかもスイッチSW1ないしスイッチSW9は風量と温度とを各々縦軸・横軸とする平面上にマトリックス状に配列されているので、所望の吹出空気の風量と温度との選択も極めて容易である。」(第14頁末行-第16頁第6行)

(2-1g) 「又、電子制御回路7はプリント基板上に配設された部品ごと、冷風の通路に、最小断面積方向をもって設置されているので、ヘアドライヤの使用時には強制空冷が行われることになり、エンコーダIC1、電力制御素子IC2を初めとする各半導体の環境温度を低温に抑制することに役立つている。」(17頁1-7行)

(2-1h) 上記(2-1e)の表、上記(2-1e)及び(2-1f)の記載を参酌すると、エンコーダIC1のエンコードは、スイッチSW1ないしスイッチSW9に対応した複数の風量と温度の組合せの出力コードを有していることが記載されている。

(2-1i) 上記記載事項(2-1a)-(2-1h)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「送風用フィン3を回転させて送風を行なうブロアモータ2、加熱用のヒータ5、ブロアモータ2とヒータ5への電力の供給を制御する電子制御回路7、スイッチSW1ないしスイッチSW9よりなる選択スイッチ部10、を有し、電子制御回路7は、エンコード部50と発熱量制御回路60及び風量制御回路70とから構成され、エンコード部50はスイッチSW1ないしスイツチSW9の信号を入力してこれをエンコードする集積回路のエンコーダIC1と、その出力に抵抗R1ないしR6を介してつながれたフォトカプラFC1ないしFC6より構成され、電子制御回路7はプリント基板上に配設され、エンコーダIC1のエンコードは、スイッチSW1ないしスイッチSW9に対応した複数の風量と温度の組合せの出力コードを有し、スイッチSW1ないしスイッチSW9のうち、いずれかのスイッチを選択すると、エンコード部50により、スイッチに対応して、フォトカプラFC1ないしFC6のうち2つがオン状態となり、ブロアモータ2とヒータ5への電力の供給が制御され、吹出空気の風量と温度の組合せの出力コードを選択することができ、スイッチSW1ないしスイッチSW9は、本体筒部上、あるいは把手部等に設けたヘアドライヤ。」

[引用文献2について]
(2-2a) 「ハンドル34は、モータ36および以下で詳細に論じる抵抗加熱素子に電力を供給するための従来の回路も含む。オンオフ・スイッチ39は、従来通りハンドル上に配置される。このスイッチは、図示のトグル・スイッチにすることも、その他の形態をとることもできるが、いずれの場合にも、通常は、オペレータが最大限便利に使用できるようにするために、複数のパワー設定(すなわち送風機速度/加熱電流の組合せ)に対応する複数の位置を有することになる。この目的のために複数のパワー設定を提供するのに必要な回路は、従来通りの設計であり、当業者の技能の範囲内である。したがって、これについての詳細な説明は本明細書に含めない。」(12頁下から3行-13頁6行)

(2-2b) 「上述のように、ヘア・ドライヤーを通って流れる空気は、第1のステータ・ステージ150の羽根152?154の周りに巻き付けた抵抗コイル70によって加熱される。抵抗コイル70は、様々な発熱レベルでそれらを付勢することができるようにする作動回路中にある。例えば、抵抗コイル70を低温になるように付勢すると、空気が中程度の温度に加熱される低熱設定を提供し、また高温になるように付勢すると、高熱設定を提供する。低熱設定ではファンは低速で回転し、高熱設定ではファンはそれより速い速度で回転する。」(20頁5-11行)

(2-2c) 上記記載事項(2-2a)及び(2-2b)を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

「ファンと抵抗コイルを有するヘア・ドライヤーであって、
複数のパワー設定(すなわち送風機速度/加熱電流の組合せ)と、
前記複数のパワー設定に対応する複数の位置を有するトグルスイッチと、を有し、
トグルスイッチは、ハンドル上に配置される
ヘア・ドライヤー。」

(3) 対比、判断
(3-1) 本願補正発明と引用発明1について
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、各用語の意味、機能または作用等からみて、引用発明1の「送風用フィン3」及び「ブロアモータ2」は、本願補正発明の「ファン」に相当し、以下同様に、「集積回路のエンコーダIC1」は「集積回路」に、「ヘアドライヤ」は「ヘアドライヤー」に相当する。
引用発明1の「プリント基板」は、その基板上に「電子制御回路7」が配設され、該「電子制御回路7」が「エンコード部50」を含み、該「エンコード部50」が「集積回路のエンコーダIC1」を含み、該電子制御回路が「ブロアモータ2とヒータ5への電力の供給を制御する」ことから、本願補正発明の「集積回路(IC)が実装され、前記ファンと前記ヒーターが接続されたプリント基板」に相当する。
引用発明1の「複数の風量と温度の組合せ」は、「エンコーダIC1のエンコード」が「スイッチSW1ないしスイッチSW9に対応した複数の風量と温度の組合せの出力コードを有し」ていることから、該エンコーダIC1に風量と温度が予め組み合わせられて記憶されているといえるので、本願補正発明の「それぞれの動作モードについて風量と温度の組合せ作動レベルが予め組み合わせられて前記集積回路に記憶された複数の動作モード」に相当する。
引用発明1の「スイッチSW1ないしスイッチSW9」は、本願補正発明の「回転ダイヤル又はトグルスイッチ」と「マルチモードスイッチ」という概念において一致し、「プリント基板」に配設された「集積回路のエンコーダIC1」に信号を入力し「吹出空気の風量と温度の組合せ」を選択するものであるから、本願補正発明の「前記プリント基板に接続され、前記複数の動作モードを制御するマルチモードスイッチ」に相当する。
引用発明1の「スイッチSW1ないしスイッチSW9のうち、いずれかのスイッチを選択」することにより、「風量と温度の組合せを選択することができ」る態様は、本願補正発明の「マルチモードスイッチを介して複数の動作モードを制御し、ヘアドライヤーを操作することができる」態様に相当する。

よって、本願補正発明と、引用発明1とは、
「ファンとヒーターを有するヘアドライヤーであって、
集積回路が実装され、前記ファンと前記ヒーターが接続されたプリント基板と、
それぞれの動作モードについて前記ファンと前記ヒーターの作動レベルが予め組み合わせられて前記集積回路に記憶された複数の動作モードと、
前記プリント基板に接続され、複数の動作モードを制御するマルチモードスイッチと、を有し、
前記マルチモードスイッチは、前記マルチモードスイッチを介して前記複数の動作モードを制御し、ヘアドライヤーを操作することができる
ヘアドライヤー。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
「集積回路」が、本願補正発明は、「プログラム可能な集積回路」であるのに対し、引用発明1は、そのような特定がなされていない点。

(相違点2)
マルチモードスイッチに関し、本願補正発明は、「回転ダイヤル又はトグルスイッチ」であって、「前記ヘアドライヤーにおいて片手で操作できる位置に置かれ、ユーザは、ヘアドライヤーを握っている手のみで、」操作することができるのに対し、引用発明1は、「スイッチSW1?SW9からなる選択スイッチ部」であって、「本体筒部上、あるいは把手部等」に設けたものである点。

そこで、上記各相違点について検討する。
(相違点1)について
本願明細書の【0042】をみると、「プログラム」はビルトインされたものを指していることから、本願補正発明の「プログラム可能な集積回路」の「プログラム」は、ヘアドライヤーの製造時にプログラムするものであって、ユーザーが書換可能であることを指すものでないから、引用発明1の「集積回路」も「プログラム可能な集積回路」であるといえ、上記相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に、「プログラム可能な集積回路」が、文字通りプログラムをユーザーが書換可能な集積回路を指していたとしても、当該集積回路を採用することは周知の事項であり、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2)について
引用文献2には、オンオフ・スイッチ39が、ハンドル上に配置され、複数のパワー設定(すなわち送風機速度/加熱電流の組合せ)に対応する複数の位置を有するトグル・スイッチからなることが記載されている(上記記載事項(2-2a)参照)。
また、ヘアドライヤーにおいて、保持した手のみで片手で操作可能な位置にスイッチを配置することは、周知の事項である(例えば、特開昭52-132956号公報の3頁左下欄14-20行参照)。
そして、引用発明1と引用文献2記載の技術的事項は、ともにヘアドライヤーという共通の分野に属し、スイッチにより風量及び温度の組合せを選択するという共通の機能を有しており、また、ヘアドライヤーは通常片手のみで保持して使用されるものであり、片手で使用しながら複数のモードを切り替える際には複数のスイッチの操作よりも一つのスイッチの操作の方が簡易であることは明らかであるから、ヘアドライヤーの操作性を向上させる自明な課題解決のため引用発明1に引用文献2に記載事項及び上記周知の事項を適用し、引用発明1をして、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明1、引用文献2記載の技術的事項及び上記周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

よって、本願補正発明は、引用発明1、引用文献2記載の技術的事項及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-2) 本願補正発明と引用発明2について
本願補正発明と引用発明2とを対比すると、各用語の意味、機能または作用等からみて、引用発明2の「抵抗コイル」は、本願補正発明の「ヒータ」に相当し、以下同様に、「送風機速度」は「ファン」の「作動レベル」に、「加熱電流」は「ヒーターの作動レベル」に、「ヘア・ドライヤー」は「ヘアドライヤー」に相当する。
また、引用発明2の「複数のパワー設定(すなわち送風機速度/加熱電流の組合せ)」は、「パワー設定」が送風機速度と加熱電流を予め組み合わせたものであるから、本願補正発明の「それぞれの動作モードについて前記ファンと前記ヒーターの作動レベルが予め組み合わせられた複数の動作モード」に相当する。
引用発明2の「トグルスイッチ」は、複数のパワー設定(すなわち送風機速度/加熱電流の組合せ)に対応する複数の位置を有していることから、「マルチモードスイッチ」であり、ユーザはトグルスイッチを介して複数のパワー設定を制御し、ヘアドライヤーを操作することができるといえる。

よって、本願補正発明と、引用発明2とは、
「ファンとヒーターを有するヘアドライヤーであって、
それぞれの動作モードについて前記ファンと前記ヒーターの作動レベルが予め組み合わせられた複数の動作モードと、
前記複数の動作モードを制御するマルチモードスイッチと、を有し、
前記マルチモードスイッチは、回転ダイヤル又はトグルスイッチであり、前記ヘアドライヤーに配置され、ユーザは、前記マルチモードスイッチを介して前記複数の動作モードを制御し、ヘアドライヤーを操作することができる
ヘアドライヤー。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点3)
本願補正発明は、「プログラム可能な集積回路が実装され、ファンとヒーターが接続されたプリント基板」を有し、「複数の動作モード」が「前記集積回路に記憶され」たものであり、「マルチモードスイッチ」が「プリント基板に接続されている」のに対し、引用発明2は、そのような態様が特定されていない点。

(相違点4)
マルチモードスイッチに関し、本願補正発明は、「回転ダイヤル又はトグルスイッチ」が「前記ヘアドライヤーにおいて片手で操作できる位置に置かれ、ユーザは、ヘアドライヤーを握っている手のみで、」操作することができるのに対し、引用発明2は、「トグルスイッチ」がハンドル上に配置されている点。

そこで、上記各相違点について検討する。
(相違点3)について
引用文献1には、集積回路が実装され、送風用フィン3を回転させて送風するブロアモータとヒータが接続されたプリント基板を備え、スイッチSW1ないしSW9がプリント基板に接続されているヘアドライヤーが記載されている(上記記載事項(2-1d)、(2-1e)、(2-1g)参照)。
また、本願補正発明の「プログラム可能な集積回路」の「プログラム」は、本願明細書をみると、ビルトインされたプログラムを指しており、ヘアドライヤーの製造時にプログラムするもので、ユーザーが書換可能であることを指すのものでないから、引用文献1記載の「集積回路」も「プログラム可能な集積回路」といえる。
そして、引用発明2において、トグルスイッチで複数の動作モードを制御する具体的回路として、引用文献1記載の回路構成を採用し、引用発明2をして、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。
さらに、「プログラム可能な集積回路」が、文字通りプログラムをユーザーが書換可能な集積回路を指していたとしても、当該集積回路を採用することは周知の事項であり、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点4)について
ヘアドライヤーにおいて、保持した手のみで片手で操作可能な位置にスイッチを配置することは、周知の事項である(例えば、特開昭52-132956号公報の3頁左下欄14-20行参照)。
そして、引用発明2の「トグルスイッチ」を、操作性を考慮して上記周知の事項を適用し、保持した手のみで片手で操作可能な位置に配置する構成とし、引用発明2をして、上記相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明2、引用文献1記載の技術的事項及び上記周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別顕著なものとはいえない。

よって、本願補正発明は、引用発明2、引用文献1記載の技術的事項及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4) 小括
したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用文献2記載の技術的事項及び上記周知の事項に基いて、または、引用発明2、引用文献1記載の技術的事項及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年 6月 3日の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「第2 1 補正の内容」の補正前の請求項1参照。)により特定されるとおりのものと認める。

2 引用文献等
当審拒絶理由(平成27年12月 2日付)に引用された引用文献及びその記載事項並びに引用発明1及び引用発明2は、前記「第2 3(2)引用文献」に記載したとおりである。

3 当審の判断
(1) 特許法第29条第2項について(平成27年12月 2日付拒絶理由)
「マルチモードスイッチ」について、本件補正発明の「回転ダイヤル又はトグルスイッチ」は、本願発明1の「複数の動作モードを連続的に制御する」マルチモードスイッチの具体例として特定したものであり、トグルスイッチで操作することは、すなわち、マルチモードスイッチを介して複数の動作モードを連続的に制御することとなり、本願発明は、本願補正発明を特定するための事項をすべて含む、上位概念に相当する。
そうすると、本願発明の下位概念に相当する本願補正発明が、前記「第2 3(3)対比・判断」に記載したとおり、引用発明1、引用文献2記載の技術的事項及び上記周知の事項に基いて、または、引用発明2、引用文献1記載の技術的事項及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1、引用文献2記載の技術的事項及び上記周知の事項に基いて、または、引用発明2、引用文献1記載の技術的事項及び上記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2) 特許法第17条の2第3項について(平成28年 7月11日付拒絶理由)
本願発明の「前記マルチモードスイッチを介して前記複数の動作モードを連続的に制御し、」という事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
「連続的に制御」するとは、一般的にアナログの制御を含むものである。しかしながら、願書に最初に添付した明細書の【0038】には、「他の実施形態において、マルチモードトリガは、無段階マルチモードトリガ、つまり、連続的な信号の量である。」と記載されてはいるものの、当該信号を受信した制御装置によるファンとヒータとの具体的制御について何ら記載されていないから、「前記マルチモードスイッチを介して前記複数の動作モードを連続的に制御」する事項は記載されておらず、また、自明であるともいえない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項及び特許法第17条の2第3項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-04 
結審通知日 2017-01-10 
審決日 2017-01-23 
出願番号 特願2009-220794(P2009-220794)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A45D)
P 1 8・ 121- WZ (A45D)
P 1 8・ 55- WZ (A45D)
P 1 8・ 575- WZ (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 秀行  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 大山 広人
佐々木 正章
発明の名称 へアドライヤー  
代理人 廣瀬 隆行  

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