• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1328923
審判番号 不服2016-6332  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-28 
確定日 2017-06-09 
事件の表示 特願2011- 68849「投影装置およびダイクロイックホイール」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月22日出願公開、特開2012-203262〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年3月25日に出願された特願2011-68849号であって、平成26年12月12日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月13日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年7月1日付けで拒絶理由(最後)が通知され、同年8月19日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、平成28年1月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年4月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成28年4月28日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項7に係る発明は、平成27年8月19日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項7に記載の、

「複数種の光源から入射される光に対し、当該光の波長に関係なく透過させる透過部と、
当該光の波長に応じて透過または反射させるダイクロイックミラー部と、を備えることを特徴とするダイクロイックホイール。」が

「複数種の光源から入射される光に対し、当該光の波長に関係なく透過させる切欠きと、
当該光の波長に応じて透過または反射させるダイクロイックミラー部と、を備えることを特徴とするダイクロイックホイール。」と補正されたものである。(下線は補正箇所を示す。)

そして、この補正は、補正前の「透過部」について、その具体的構成となる「切欠き」として特定する補正事項からなり、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正であるといえる。
すなわち、この補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものである。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項7に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しないか)について検討する。

(1)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-276209号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下記「イ 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

a「【0001】
本発明は、発光ダイオードを光源としたディスプレイの照明装置に関する。」
b「【0009】
以下図面により本発明の実施形態について説明する。
まず、本発明の特徴の理解を容易にするために、発光ダイオードを光源とした一般的なディスプレイ装置について説明する。
図1は、一般的なディスプレイ照明装置の構成例を示す平面図である。
図1に示した一般的なディスプレイ照明装置は、緑色のLED光源である緑光源1、赤色のLED光源である赤光源2および青色のLED光源である青光源3を備えている。このディスプレイ照明装置では緑光源1を独立させて配置し、赤光源2と青光源3とを並べて配置しているが、図2の様にクロスプリズム12を用いて全ての光源を独立に配置することもある。
【0010】
緑光源1の出射側である発光面には配光制御を行なうためのコリメータレンズ4が取り付けられ、赤光源2と青光源3の発光面には別のコリメータレンズ4が取り付けられる。
緑光源1からの光の光軸と赤光源2や青光源3からの光の光軸と交差位置には、これらの光を白色合成するためのダイクロイックフィルタ5が設けられ、ダイクロイックフィルタ5は、緑光源1からの光の光軸および赤光源2や青光源3からの光の光軸に対して45度傾いている。
【0011】
また、赤光源2や青光源3側のコリメータレンズ4から見たダイクロイックフィルタ5の先には、当該コリメータレンズ4と平行に2枚のレンズでなるフライアイレンズ6が配置される。
【0012】
フライアイレンズ6の光出射側にはコンデンサレンズ7が取り付けられ、反射ミラー8やフィールドレンズ9を用いて、ライトバルブ10に重畳平均化された照明が為される。
ライトバルブ10がON状態のときは、フィールドレンズ9を通過して投射レンズ11に照射光が導かれ、OFF状態の場合は図示されない任意遮光域へ導かれる。」
c「【0022】
(第1の実施形態)
次に、本発明の第1の実施形態について説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態におけるディスプレイ照明装置のミラーホイールの一例を示す平面図である。
図8は、本発明の第1の実施形態におけるディスプレイ照明装置の全体構成例を示す平面図である。
簡単のために、本実施形態図では、図1、図2、図3での例と異なり、フライアイレンズではなくライトトンネルを用いた重畳平均化を行うと同時に、ダイクロイックミラーその他光学手段による光三原色光源光合成部を省略し、色合成後の一つの光源として図示する。
【0023】
図7に示すように、光学部材であるミラーホイール41は円板であり、半円部分を透過領域42とし、残りの半円部分を反射領域43としている。ただし、ミラーホイール41の中心を含む予め定められた領域を除いた領域は、ミラーホイール41の回転制御手段である駆動モータが重なる領域であり、従来は光の透過や反射には用いられなかった範囲である。
【0024】
また、この実施形態では、2つの光源51,53が出射光の光軸が交差するようにそれぞれ配置される。光源51の出射面にはコリメータレンズ52が配置され、光源53の出射面にはコリメータレンズ54が配置される。
また、この実施形態では、光源51,53からの出射光の交差部分はミラーホイール41の有効範囲47内に収まるように配置される。
このミラーホイール41はモータ55の駆動により、映像に同期された回転を行い、透過領域42が光源51,53出射光の交差範囲57に位置する場合に光源53が点灯し、出射光が透過領域42を透過して、ライトトンネル56を介して図示されないライトバルブに導かれる。また、反射領域43が交差範囲57に位置する場合には光源51が駆動し、光源51の出射光が反射領域43で反射して、ライトトンネル56により配光角を利用した重畳平均が行われ、図示されないライトバルブに導かれる。
【0025】
ここで光源51,53は有限形状と出射発散角を有しているから、コリメータレンズ52,54を介したそれぞれの出射光によりミラーホイール41上で作られる交差範囲44は有限な大きさを持つ。このため、透過領域42と反射領域43の境界部が交差範囲44を跨ぐ領域では光源51からの光と光源53からの光の一部が混合され、または光源51からの光と光源53からの光の一部がライトトンネル56に導かれずに透過と反射が行われる。即ち、前述した交差範囲44を跨ぐ領域が有限集光範囲領域L1となる。
【0026】
光源51の光を反射させて光源53の光を透過させるダイクロイックミラー46,45をミラーホイール41の有限集光範囲領域L1に配置すれば、有限集光範囲領域L1を含む全ての領域で、光源51,53の何れからの光も有効にライトトンネル56へ導くことが可能になる。
【0027】
図9は、本発明の第1の実施形態におけるディスプレイ照明装置の各光源の発光期間、ミラーホイール各領域の切り替え状態、および合成光の発光状態の関係を示すタイミングチャートの一例を示す図である。
この実施形態では、ミラーホイール41は映像同期信号の周期1Vで同期回転しており、この周期1Vの半分の期間V/2にわたって光源51から赤(R)、青(B)、緑(G)の順で各色発光させ、残るV/2にわたって光源53から赤、青、緑の順で各色発光させる。光源51と光源53の発光切り替えタイミングを中心とする期間T22(D)では、光源51からの緑色光を反射させて光源53からの赤色光を透過させるダイクロイックミラー46が交差範囲57に配され、または、光源51からの赤色光を反射させて光源53からの緑色光を透過させるダイクロイックミラー45が交差範囲57に配される。
図9に示したミラーホイール41の「r」の期間は反射領域43が交差範囲57に配される期間であり、「t」の期間は透過領域42が交差範囲57に配される期間である。
【0028】
これにより、時間T21(=V/2)においては、光源51からの光がミラーホイール41で反射してライトトンネル56に導かれ、時間T23(=V/2)においては、光源53からの光がミラーホイール41を透過してライトトンネル56に導かれる。周期1Vで積分すれば、光源51と光源53の光源光は些かもタイムロス無い状態で合成することが可能になる。
【0029】
ここでダイクロイックミラー45,46の範囲は、有限集光範囲領域L1に一致させる必要はなく、T22の領域を超えてダイクロイックミラーの反射/透過有効期間、即ち光学諸特性条件とホワイトバランス確保の観点から定められた任意の色光源毎に定めた発光期間範囲T25,T26の何れの位置で切り替わっても良い。」
d「【図7】


e「【図9】



イ 引用例1に記載された発明の認定
上記「ア」のa?eの記載から、引用例1には、
「ディスプレイ照明装置のミラーホイール41に関し、
ミラーホイール41は円板であり、半円部分を透過領域42とし、残りの半円部分を反射領域43としているとともに、
透過領域42と反射領域43の境界部が、光源51,53それぞれの出射光によりミラーホイール41上で作られる交差範囲44を跨ぐ領域に、ダイクロイックミラー46,45を配置し、
ダイクロイックミラー46は、光源51からの緑色光を反射させて光源53からの赤色光を透過させ、
ダイクロイックミラー45は、光源51からの赤色光を反射させて光源53からの緑色光を透過させる、ディスプレイ照明装置のミラーホイール41。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

ウ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2007-47700号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下記「エ 引用例2に記載された技術事項」において直接引用した記載に下線を付した。)
f「【0001】
本発明は、ビデオ信号等の画像情報に基づいて画像を投影するプロジェクタ装置に関するものである。」
g「【0010】
本発明は、光源装置(210)、光源側光学系(220)、表示素子(230)、投影側光学系(250)、冷却ファン(190)、更に、ランプ電源回路(261)及びファン駆動電源回路(263)やプロジェクタ制御手段(267)を備えたプロジェクタ(100)であって、赤色フィルタ(271R,272R)、緑色フィルタ(271G,272G)、青色フィルタ(271B,272B)の3原色に透明又は白色のフィルタ(271W,272W)を加えた4色のカラーホイールを2枚有し、2枚のカラーホイール(221,222)における透明又は白色のフィルタ(271W,272W)を重ねて光路上に配置したカラーホイール(221,222)の位置を基準とし、2枚のカラーホイール(221,222)の何れか一方を回転させるホイールモータ(275)を備えたプロジェクタ(100)とするものである。
【0011】
そして、2枚のカラーホイール(221,222)は、透明又は白色のフィルタ(271W,272W)の面積率が異なるカラーホイール(221,222)であり、2個のホイールモータ(275、276)を備え、各ホイールモータ(275、276)のモータ軸にカラーホイール(221,222)を固定し、各カラーホイール(221,222)毎に各々のカラーホイール(221,222)を駆動するホイールモータ(275、276)を設けるようにすることが好ましい。
【0012】
尚、2個のホイールモータ(275、276)は、ホイールモータ(275、276)のモータ軸を相互に平行として光路の両側に配置する場合と、ホイールモータ(275、276)のモータ軸を同一線上に配置して光路の側方に配置する場合がある。
また、単一のホイールモータ(275)を備え、ホイールモータ(275)のモータ軸(278)に沿って移動可能なホイールモータギヤ(279)を各カラーホイール(221,222)と各々一体に回転するホイールギヤ(285,286)の一方と噛合させるようにすることもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るプロジェクタは、透明又は白色のフィルタを含む4色のフィルタを備えた2枚のカラーホイールを有しているため、透明又は白色のフィルタを備えたカラーホイールの一方を回転させることにより、何れのカラーホイールを回転させるかによって表示素子に照射する光における赤色光、緑色光、青色光、及び、白色光の割合を変化させることができる。
【0014】
従って、明るい投影画像と色合いの濃い投影画像の切換えが容易であり、2枚のカラーホイールの透明又は白色のフィルタを重ねて光路に位置させることにより、カラーホイールを軸方向と交わる方向に移動させる必要が無く、小型で耐久性のあるプロジェクタとすることが容易にできる。」
h「【0051】
尚、図7においては、白色半透明フィルタ271W,272Wを用いることなく透孔を形成し、透孔以外の部分は、赤色フィルタ271R,272R、緑色フィルタ271G,272G、青色フィルタ271B,272Bを貼り付けた窓部を有するカラーホイール221,222としているものである。」
i「【図7】



エ 引用例2に記載された技術事項
上記「ウ」のf?iの記載から、引用例2には、
「ビデオ信号等の画像情報に基づいて画像を投影するプロジェクタ装置において、
光路上に配置するカラーホイールとして、赤色フィルタ、緑色フィルタ、青色フィルタに加えて透孔を形成した部分を配置すること」が記載されている。

(2)本願補正発明と引用発明との対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「透過領域42」と、本願補正発明の「複数種の光源から入射される光に対し、当該光の波長に関係なく透過させる切欠き」とは、「複数種の光源から入射される光に対し、当該光の波長に関係なく透過させる透過部」である点で一致する。
引用発明の「交差範囲44を跨ぐ領域に」「配置」された「光源51からの緑色光を反射させて光源53からの赤色光を透過させ」る「ダイクロイックミラー46」及び「光源51からの赤色光を反射させて光源53からの緑色光を透過させる」「ダイクロイックミラー45」が、本願補正発明の「(複数種の光源から入射される光に対し)当該光の波長に応じて透過または反射させるダイクロイックミラー部」に相当する。
引用発明の「ディスプレイ照明装置のミラーホイール41」は、「ダイクロイックミラー46,45を配置」しているものであるから、本願補正発明の「ダイクロイックホイール」に相当する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明とは、
「複数種の光源から入射される光に対し、当該光の波長に関係なく透過させる透過部と、
当該光の波長に応じて透過または反射させるダイクロイックミラー部と、を備えるダイクロイックホイール。」
の発明である点で一致し、次の点で相違する。

ウ 相違点
「光の波長に関係なく透過させる透過部」が、本願補正発明においては「切欠き」であるのに対して、引用発明においてはその点についての特定がない点。

(3)当審の判断
ア 上記相違点について検討する。
上記(1)「エ」から、画像情報に基づいて画像を投影するプロジェクタ装置において、光路上に配置するホイールに、照射光を透過させるための切欠き部(透光)を設けることは、引用例2に記載されている技術事項であるといえる。
そして、プロジェクタ装置において、光路上に配置されて照射光が透過するホイール等の透過率を高めて投影画像の輝度を高めることは自明の技術課題である(必要とあらば、特開2006-64785号公報(【0007】)、特開2007-316632号公報(【0005】?【0007】)参照)から、引用発明においても、上記の自明の技術課題の解決を目的として、引用例2に記載されている技術事項を適用して、ダイクロイックホイールの透過部を「切欠き」とすることは、当業者が容易になし得たことにすぎない。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年4月28日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年8月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成28年4月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成28年4月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、上記「第2 平成28年4月28日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明の対比」の「ア 対比」において記載したのと同様の対比の手法及び結果により、本願発明と引用発明は、「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)本願補正発明と引用発明の対比」の「イ 一致点」において記載した本願補正発明と引用発明の一致点と同じ点で一致し、そして、両者に相違するところがない。
したがって、本願発明は、引用発明である。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であり、特許法第29条第1項3号に該当するから、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-02-17 
結審通知日 2017-03-14 
審決日 2017-03-28 
出願番号 特願2011-68849(P2011-68849)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03B)
P 1 8・ 113- Z (G03B)
P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 博之  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 小松 徹三
森林 克郎
発明の名称 投影装置およびダイクロイックホイール  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ