• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B42F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B42F
管理番号 1328979
審判番号 不服2016-7635  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-25 
確定日 2017-06-27 
事件の表示 特願2013-194135「綴じ具」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月30日出願公開、特開2015- 58632、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月19日に出願された特許出願であって、原審において平成27年8月3日付けで拒絶理由が通知され、同年10月9日付けで手続補正がされ、平成28年2月25日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。原査定の謄本の送達(発送)日 同年3月1日。)がされ、これに対して、同年5月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されて明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成29年2月9日付けで拒絶理由が通知され、これに対して指定期間内の同年4月10日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願の発明
本願の請求項1ないし5に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、上記の平成29年4月10日付けの手続補正に係る、特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、2は次のとおりのものである。
なお、原査定において拒絶の対象とされたのは本願発明2と、これを更に減縮した発明である本願発明3ないし5のうちの本願発明4、5である。
「【請求項1】
被綴じ物より離れるオープン状態からホールド状態に移動し、被綴じ物を押圧して保持する押圧部を有する綴じ部材と、
前記綴じ部材が、被綴じ物を押圧するオープン状態とホールド状態とに回動するように操作するために設けられた操作部材と、
前記綴じ部材及び前記操作部材を設ける台部材と、
被綴じ物を押圧する方向に前記綴じ部材を付勢する付勢部材とを含む綴じ具であって、
前記付勢部材は、操作部材側よりその一部分が前記綴じ部材の前記押圧部に向かってのびて、綴じ部材の操作部材側を中心として被綴じ物を押圧するホールド状態と被綴じ物より離れるオープン状態とに移動するように作動させ、
前記綴じ部材は、
少なくとも前記ホールド状態にあるときに、前記操作部材側より幅方向にのびる部分を有し、前記綴じ部材を平面視して前記操作部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通り、前記押圧部が台部材の主面に接する状態のときに前記主面に直交する基準面の近傍に形成された、前記押圧部と、
前記綴じ部材を平面視して前記付勢部材の巻線部とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る前記基準面の近傍に形成された、前記付勢部材の前記一部分を挿通するための貫通孔と、
前記綴じ部材を平面視して前記操作部材側の前記綴じ部材の端縁と前記貫通孔との間において、凹まされた収容凹部又は切り欠かれた収容空間部を形成された、第1の付勢部材収容部と、
前記綴じ部材を平面視して前記操作部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁と前記貫通孔との間に、上向きに膨出されて形成された、第2の付勢部材収容部と、
前記付勢部材の一部分を係止するように、前記第1の付勢部材収容部の前記押圧部側端から前記貫通孔にわたって形成された付勢部材端部係止部とを有しており、
前記付勢部材は、前記一部分からさらに綴じ部材の幅方向にのびて、前記綴じ部材を平面視して前記操作部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る前記基準面の近傍に位置し、前記付勢部材端部係止部が前記付勢部材の前記一部分の一部によって押圧されることによって、前記綴じ具がホールド状態を形成する、綴じ具。
【請求項2】
被綴じ物より離れるオープン状態からホールド状態に移動し、被綴じ物を押圧して保持する押圧部を有する綴じ部材と、
前記綴じ部材が、被綴じ物を押圧するオープン状態とホールド状態とに回動するように操作するために設けられた操作部材と、
前記綴じ部材及び前記操作部材を設ける台部材と、
被綴じ物を押圧する方向に前記綴じ部材を付勢する付勢部材とを含む綴じ具であって、
前記綴じ部材は、少なくとも前記ホールド状態にあるときに、前記操作部材側より幅方向にのびる部分を有し、前記綴じ部材を平面視して前記操作部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通り、前記押圧部が台部材の主面に接する状態のときに前記主面に直交する基準面の近傍において、前記押圧部を有し、
前記付勢部材は、巻線部と、前記巻線部より前記綴じ部材側に延びる第1端部と、前記巻線部より前記操作部材側に延びる第2端部とを有しており、操作部材側より第1端部が前記綴じ部材の前記押圧部に向かってのびて、綴じ部材の操作部材側を中心として被綴じ物を押圧するホールド状態と被綴じ物より離れるオープン状態とに移動するように作動させるように形成され、
前記付勢部材の前記第1端部は、綴じ部材の幅方向にのびて、その先端が、前記ホールド状態及び前記オープン状態のいずれの場合にも、前記綴じ部材を平面視して前記操作部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る前記基準面の近傍に位置し、かつ、前記綴じ部材の長手方向における中央の近傍に位置し、
前記綴じ部材の長手方向における中央であって、かつ、前記綴じ部材を平面視して前記付勢部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る前記基準面の近傍に、前記付勢部材の前記第1端部を挿通するための貫通孔を有し、
前記綴じ部材は、平面視して前記付勢部材側の前記綴じ部材の端縁と、前記綴じ部材を平面視して前記付勢部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る前記基準面の近傍の押圧部との間において、収容凹部又は切り欠かれて収容空間部を形成された、第1の付勢部材収容部を有し、且つ、前記第1の付勢部材収容部の前記押圧部側端から前記貫通孔にわたって形成された付勢部材端部係止部を有しており、
第1の付勢部材収容部は、ホールド状態とオープン状態との間で移動する際に、前記綴じ部材と干渉することなく、前記付勢部材の第1端部が、綴じ具のオープン状態においてほぼ斜めに立ち上がった状態となるように且つホールド状態においてはほぼ水平状態となるように移動することができるように形成され、
前記付勢部材端部係止部は、前記付勢部材の一部分を係止するように形成され、その上面が前記付勢部材の前記第1端部の一部によって押圧されることによって、前記綴じ具がホールド状態となるように形成されていることを特徴とする、綴じ具。」

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特許第5123969号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。(以下の下線は、いずれも審決で付した。引用文献2についても同じ。)
「【0007】
この発明にかかる綴じ具は、被綴じ物を押圧して保持する押圧部を有する綴じ部材と、前記綴じ部材が、被綴じ物を押圧するロック状態とロックを解除する状態とに移動するように操作するために設けられた操作部材と、前記綴じ部材及び操作部材を設ける台部材と、被綴じ物を押圧する方向に綴じ部材を付勢する付勢部材とを含む綴じ具であって、前記綴じ部材は、被綴じ物を押圧するホールド状態と被綴じ物より離れるオープン状態とに回動するための枢軸部を備え、前記付勢部材は、その一部分が綴じ部材の押圧部に向かってのびて、綴じ部材を枢軸部を中心として被綴じ物を押圧するホールド状態と被綴じ物より離れるオープン状態とに回動するように作動させるとともに綴じ部材をホールド状態から被綴じ物より離れるオープン状態に移動するときに前記枢軸部ののびる方向にスライドするように作動させるように構成されているので、綴じ部材に付勢部材の一部分を固定するとき、別に嵌挿して固定するように構成しても、小さい孔ですみ、綴じ部材に腕やクランクが不要であり、部品数を減らすことができ、組み立て及び加工精度のバラつきを無くすことができる。・・・」
「【0012】
・・・
綴じ具20は、板状の台部材たる基板22と、前記台部材上において被綴じ物Xを押圧して保持する押圧部を有する綴じ部材70と、前記台部材上において、綴じ部材70が被綴じ物Xを押圧するホールド状態と被綴じ物より離れるオープン状態とに移動(開閉)可能にするように、その固定部において台部材に固定された操作部材たる操作レバー60と、前記台部材上に装着され、前記操作レバー60に連結されるとともに綴じ部材70に連結され、被綴じ物Xを押圧する方向に綴じ部材70を付勢する付勢部材たるばね部材50とを含む。」
「【0019】
軸受板24の枢軸固定用貫通孔26と軸受部38の貫通孔40には、軸46が挿通され、軸46に捩りコイルばねからなるばね部材50および操作部材たる操作レバー60が取り付けられる。
ばね部材50は、軸46の外周に巻装された巻線部50aと、前記巻線部50aの一端(右端部)から綴じ部材70側に延びる第1端部50cと、前記巻線部50aの軸受板24側の他端(左端部)から操作レバー60側に直線状に延びる第2端部50bとを有している。・・・
前記ばね部材50は、その一部分(第1端部50c)が綴じ部材70の押圧部76に向かってのびて、綴じ部材70が被綴じ物Xを押圧するホールド状態と被綴じ物より離れるオープン状態とに開閉するために枢軸部72を中心として回動するように作動させるとともに綴じ部材70を前記枢軸部72ののびる方向にスライドするように作動させるように構成されている。」
「【0020】
ばね部材50の第2端部50bは、巻線部50aの軸受板24側でその後側の上端より手前側に直線状に延び、その先端が外力を受けないときは、その先端が手前側に斜め上方に向けて延びるように形成されている。
第1端部50cは、巻線部50aの軸受部38側でその手前側の下端より軸受板24とは反対側に延びた立ち上がり部50dを備え、外力を受けないときは略L字状となるように、上方に延びた立ち上がり部50dの上端から斜め上方に架け渡し部50eが延び、架け渡し部50eの自由端側に水平方向に屈曲した係止部50fが突設されている。・・・」
「【0027】
さらに、基板22上には、平面視略長方形状の綴じ部材70が、基板22の長手方向に延びて軸受板24と平行に取り付けられ、・・・綴じ部材70の幅方向の軸受板24側において、その長手方向の両側に突出する枢軸部72が形成される。・・・
【0028】
したがって、綴じ部材70は、2つの枢軸部72を結ぶ線を回転中心として回動可能となっている。
軸受板24と枢軸部72との間において、操作レバー60は、軸受板24及び第1枢軸72aと第2枢軸72bとを結ぶ線に沿って伸びる。
そして、操作レバー60の手前側の自由端を押さえてロック用係止部68を固定用凸部28に係止して操作レバー60をロックするとき、綴じ部材70の手前側の第2枢軸72bと向こう側の第1枢軸72aとが同一の高さに位置するので、ばね部材50の係止部50fが綴じ部材70の架け渡し部70bを押える位置(綴じ部材70の長手方向における中央近傍)との関係上同時に被綴じ物Xを押さえ始めて、被綴じ物Xにかかる押える力のバランスが向こう側と手前側と均等となる。」
「【0030】
綴じ部材70は、図6ないし9において示すように、枢軸部72側より軸受板24とは反対側の斜め上方に延びた立ち上がり部70aと、立ち上がり部70aの上端から斜め下方(水平面に対して略22°)に向けて延びた平板状の架け渡し部70bと、架け渡し部70bの自由端に、綴じ部材70の手前側端縁より向こう側端縁に亘って斜め下方(垂直面に対して略15°)に向けて折り曲げられて形成された押圧部76とが形成されている。押圧部76は、書類などの被綴じ物Xを押えるときに、架け渡し部70b側に若干撓みつつ押圧部76が書類などの被綴じ物Xを押圧し得るように形成されている。」
「【0032】
前記綴じ部材70は、その全体が平面視略長方形状で正面視略々アーチ状にわん曲した板状体に形成されており、幅方向におけるその一端側部分に前記押圧部76が下方に向かってのびるように形成され、幅方向におけるその他端側部分(軸受板24側部分)に一対の枢軸部72が前記他端側部分に平行にかつ互いに逆方向にのびるように形成されている。押圧部76は、基板22の長手方向にのび、枢軸部72は、基板22の長手方向にのびる。綴じ部材70は、幅方向において、前記一端側部分および前記他端側部分間の中央部分と前記一端側部分との間に、前記付勢部材たるばね部材50の一部分(第1端部50c)を挿通するための貫通孔78が形成されている。
【0033】
立ち上がり部70aは、綴じ部材70の長手方向(手前側端から向こう側端に至る方向)における中央において、一部切り欠かれて、ばね部材収容部70a1が形成されている。
架け渡し部70bは、ばね部材収容部70a_(1)に臨む領域において、下向き(下方向)に凹まされて、ばね部材50の第1端部50cを嵌め込むためのばね部材固定部74が形成されている。
【0034】
ばね部材50は、第1端部50cが綴じ部材70の内面に近似した形状に形成され、ばね部材50の立ち上がり部50dが綴じ部材70の立ち上がり部70aに沿って立ち上がり、そしてばね部材50の架け渡し部50eが綴じ部材70のばね部材固定部74に沿ってのびて、ばね部材50の係止部50fが綴じ部材70の内面側に係止固定されるように設けられている。
【0035】
ばね部材固定部74には、扇形、矩形、半円又は円形の貫通孔78が形成され、ばね部材50の第1端部50cがばね部材収容部70a1側より緩挿され、ばね部材50の第1端部50cの先端部(係止部50f)が折り曲げられて貫通孔78から外れないようにされている。・・・」
「【0036】
この実施の形態においては、綴じ部材70は、幅方向における中央cより軸受板24側に立ち上がり部70aと架け渡し部70bとが接続された頂部tが形成され、前記頂部tより押圧部76側にばね部材固定部74が形成され、ばね部材固定部74の高さ方向(上下方向)において略々中央において貫通孔78が穿設されている(図9(B)参照)。
貫通孔78は、その下縁eが頂部tより下方であって枢軸部72より上方において形成されている。
押圧部76は、枢軸部72より高さ方向(上下方向)において下方に形成されている(図9(C)参照)。
貫通孔78は、綴じ部材70の前後端に形成された枢軸部72の間(第1枢軸72aと第2枢軸72bとの間)において、綴じ部材70の長手方向における中央近傍であって、軸46に巻装された巻線部50aに近い位置に形成されている。」

図2、3、6Aから、「架け渡し部70bの自由端に、斜め下方(垂直面に対して略15°)に向けて折り曲げられて形成された押圧部76」は、綴じ部材70を平面視して操作部材(操作レバー60)とは反対側の綴じ部材の端縁を通り、押圧部76が台部材の主面に接する状態のときに前記主面に直交する基準面の近傍に設けられていることが看取できる。
また、図2、3、6A、6B、7A、7Bから、ばね部材50の第1端部50cは、綴じ部材70の長手方向における中央近傍に位置すると共に、前記ばね部材50の第1端部50cにおける架け渡し部50eは、ばね部材収容部70a_(1)において、オープン状態においてほぼ斜めに立ち上がった状態となるように且つホールド状態においてはほぼ水平状態となるように移動することができることが看取できる。
更に、図9Bから、ばね部材50の一部分(第1端部50c)を挿通するための貫通孔78は、綴じ部材70の幅方向における中央cより枢軸部72側(押圧部76側とは反対側)寄りに形成されていることが看取できる。
上記の記載事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認定できる。
「被綴じ物を押圧して保持する押圧部を有する綴じ部材70と、前記綴じ部材が、被綴じ物を押圧するロック状態とロックを解除する状態とに移動するように操作するために設けられた操作部材たる操作レバー60と、前記綴じ部材及び操作部材を設ける台部材たる基板22と、被綴じ物を押圧する方向に綴じ部材を付勢する付勢部材たるばね部材50とを含む綴じ具20であって、
前記綴じ部材は、被綴じ物を押圧するホールド状態と被綴じ物より離れるオープン状態とに回動するための枢軸部72と、枢軸部72側より斜め上方に延びた立ち上がり部70aと、立ち上がり部70aの上端から斜め下方に向けて延びた平板状の架け渡し部70bと、架け渡し部70bの自由端に、斜め下方に向けて折り曲げられて形成された押圧部76とを備え、押圧部76は、綴じ部材70を平面視して操作部材(操作レバー60)とは反対側の綴じ部材の端縁を通り、押圧部76が台部材の主面に接する状態のときに前記主面に直交する基準面の近傍に設けられており、
前記立ち上がり部70aは、綴じ部材70の長手方向における中央において、一部切り欠かれて、ばね部材収容部70a_(1)が形成されており、前記架け渡し部70bは、当該ばね部材収容部70a_(1)に臨む領域において、下向き(下方向)に凹まされて、ばね部材50の第1端部50cを嵌め込むためのばね部材固定部74が形成され、ばね部材固定部74には、綴じ部材70の長手方向における中央近傍であって、綴じ部材70の幅方向における中央cより枢軸部72側(押圧部76側とは反対側)寄りに、ばね部材固定部74の高さ方向(上下方向)において略々中央においてばね部材50の第1端部50cが緩挿される貫通孔78が穿設され、
前記ばね部材50は、巻線部50aと、前記巻線部50aの一端から綴じ部材70側に延びる第1端部50cと、前記巻線部50aの軸受板24側の他端から操作レバー60側に直線状に延びる第2端部50bとを有し、第1端部50cが綴じ部材70の内面に近似した形状に形成され、ばね部材50(第1端部50c)の立ち上がり部50dが綴じ部材70の立ち上がり部70aに沿って立ち上がり、そしてばね部材50(第1端部50c)の架け渡し部50eが綴じ部材70のばね部材固定部74に沿ってのびて、ばね部材50の係止部50fが綴じ部材70の内面側に係止固定されて、綴じ部材70の長手方向における中央近傍を押えるように設けられており、
前記架け渡し部50eは、ばね部材収容部70a_(1)において、オープン状態においてほぼ斜めに立ち上がった状態となるように且つホールド状態においてはほぼ水平状態となるように移動することができるように形成された、綴じ具。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2006-341567号公報)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0006】
この発明の請求項1にかかる綴じ具は、板状の台部材と、前記台部材上において被綴じ物を押圧して保持する押圧部を有する綴じ部材と、前記台部材上において、前記綴じ部材を移動させて被綴じ物を押圧するロック状態とロックを解除する状態とに移動可能に設けられた操作部材と、前記操作部材に連結されるとともに綴じ部材に連結され、被綴じ物を押圧する方向に綴じ部材を付勢するばね部材と、前記操作部材を被綴じ物を押圧するロック状態において固定する固定部とを含み、前記操作部材のロックを解除するときに、固定部より外す方向に操作部材を案内する案内部が形成された、綴じ具である。」
「【0009】
図1は、この発明の綴じ具の一例を示す斜視図であり、図2は、図1に示す綴じ具を閉じた状態を示す斜視図であり、図3は、図1に示す綴じ具を開いた状態を示す側面図解図であり、図4は、図1に示す綴じ具を閉じた状態を示す側面図解図であり、図5は、図1に示す綴じ具の分解斜視図である。図6ないし図9は、図1に示す綴じ具の案内部を示す正断面図解図である。
綴じ具20は、金属製薄板によって形成される台部材を構成する板状本体たる基板22を含む。基板22は、基板22の幅方向の一端側における直線状長手端縁に操作部材固定部たる軸受部を備え、軸受部は、図5に示すように、基板22に対して直立する起立平面部を有する軸受板24が一体的に形成されてなる。・・・」
「【0012】
軸受板24の貫通孔26と軸受部38の貫通孔40には、軸46が挿通され、軸46に捩りコイルばねからなるばね部材50および操作部材を構成する操作レバー60が取り付けられる。
ばね部材50は、軸38の外周に装着された巻線部50aと、前記巻線部50aの一端から軸受板24の面に略平行に操作レバー60側に延びる第2端部50bと、前記巻線部50aから基板22の幅方向で軸受板24より離れ綴じ部材70側方向に延びる第1端部50cとを有する。」
「【0017】
さらに、基板22上には、平面視略長方形状の綴じ部材70が、基板22の長手方向に延びて軸受板24と平行に取り付けられる。綴じ部材70は、たとえば1枚の金属板によって形成される。綴じ部材70は、たとえば枢支部30,34の距離に略等しい長さを有し、幅方向において上方に向けて膨らむように湾曲する形状(断面半円弧状)に形成される。
そして、綴じ部材70の幅方向の軸受板24側において、その長手方向の両側に突出する枢軸たる突出片72が形成される。これらの突出片72が、枢軸受けたる枢支部30の貫通孔32および枢支部34の貫通孔36に嵌め込まれる。したがって、綴じ部材70は、2つの突出片72を結ぶ線を回転中心として回動可能となっている。・・・」
「【0018】
また、綴じ部材70の幅方向における軸受板24の反対側は、上述の回転中心側(突出片72側)に向かって折り曲げられ、折曲部74が形成される。折曲部74は、綴じ部材70の手前側端縁より向こう側端縁に至るまで連続して形成される。さらに、折曲部74の先端側が基板22側に向かって折り曲げられ、書類などの被綴じ物Xを押えるための押圧部76が形成される。・・・」
「【0019】
ばね部材50の第2端部50bは、巻線部50aの軸受板24側でその向こう側の上端より手前側に直線状に延び、その先端が外力を受けないときは、その先端が手前側に斜め上方に向けて延びるように形成されている。
第1端部50cは、巻線部50aの軸受部38側でその手前側の下端より軸受板24とは反対側に延びた略L字状で、外力を受けないときは、上方に延びた立ち上がり部50dの上端から斜め上方に架け渡し部50eが延び、架け渡し部50eの自由端側に水平方向に屈曲した係止部50fが突設されている。
【0020】
折曲部74には、矩形の貫通孔78が形成され、ばね部材50の第1端部50cが上から嵌め込まれ、ばね部材50の第1端部50cの先端部が折り曲げられて貫通孔78から外れないようにされている。この実施の形態においては、貫通孔78は、綴じ部材70の前後端に形成された突出片72の間において、軸46に巻装された巻線部50aに近い位置に形成されている。さらに、押圧部76には、書類などの被綴じ物Xを押さえ付けたときの力による変形を防ぐために、直線状のリブ80が形成されている。
【0023】
このような綴じ具20は、たとえば基板22に形成された貫通孔44に取付用金具などを挿通することにより、ファイルなどに取り付けられる。そして、操作レバー60を操作することにより、綴じ部材70を開閉することができる。ここで、図1に示すように、操作レバー60を上げることにより、ばね部材50の他方側50cが綴じ具20を持ち上げ、基板22と綴じ部材70の押圧部76との間に隙間が生じる。この隙間に書類などの被綴じ物Xが挿入され、操作レバー60を下げることにより、綴じ部材70が閉じて、押圧部76によって書類などの被綴じ物Xが基板22に向かって押し付けられる。つまり、操作レバー60を下げることにより、ばね部材50の巻線部50aが締め付けられ、ばね部材50の第1端部50cによって、押圧部76が基板22方向に付勢される。」

図1ないし5から、ばね部材50の第1端部50cの先端部(係止部50f)と貫通孔78とは、いずれも、綴じ部材70を平面視して操作部材(操作レバー60)とは反対側の綴じ部材の端縁を通り、押圧部76が台部材の主面に接する状態のときに前記主面に直交する基準面の近傍に位置するようにされていることが看取できる。

したがって、上記引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認定できる。
「板状の台部材と、前記台部材上において被綴じ物を押圧して保持する押圧部を有する綴じ部材と、前記台部材上において、前記綴じ部材を移動させて被綴じ物を押圧するロック状態とロックを解除する状態とに移動可能に設けられた操作部材と、前記操作部材に連結されるとともに綴じ部材に連結され、被綴じ物を押圧する方向に綴じ部材を付勢するばね部材とを含む綴じ具であって、
台部材を構成する基板22には、操作部材固定部たる軸受部を備える軸受板24が一体的に形成されており、
ばね部材50は、巻線部50aと、前記巻線部50aの一端から操作部材を構成する操作レバー60側に延びる第2端部50bと、前記巻線部50aから基板22の幅方向で綴じ部材70側方向に延びる第1端部50cとを有し、この第1端部50cは、外力を受けないときは上方に延びた立ち上がり部50dと、立ち上がり部50dの上端から斜め上方に延びる架け渡し部50eと、架け渡し部50eの自由端側に水平方向に屈曲した係止部50fが突設されて形成されており、
綴じ部材70の幅方向の軸受板24側において、その長手方向の両側に形成された、枢軸たる2つの突出片72を結ぶ線を回転中心として回動可能となっており、綴じ部材70の幅方向における軸受板24の反対側は、上述の回転中心側(突出片72側)に向かって折り曲げられて折曲部74が形成され、折曲部74には、矩形の貫通孔78が形成され、ばね部材50の第1端部50cが上から嵌め込まれ、ばね部材50の第1端部50cの先端部(係止部50f)が折り曲げられて貫通孔78から外れないようにされており、さらに、折曲部74の先端側が基板22側に向かって折り曲げられて、書類などの被綴じ物Xを押えるための押圧部76が形成され、
操作レバー60を下げることにより、ばね部材50の巻線部50aが締め付けられ、ばね部材50の第1端部50cによって、押圧部76が基板22方向に付勢され、
ばね部材50の第1端部50cの先端部(係止部50f)と貫通孔78とは、いずれも、綴じ部材70を平面視して操作部材(操作レバー60)とは反対側の綴じ部材の端縁を通り、押圧部76が台部材の主面に接する状態のときに前記主面に直交する基準面の近傍に位置するようにされている、綴じ具。」

第4 対比・判断
1.本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明1とを対比する。
後者の「被綴じ物」は、その構造、機能等からみて、前者の「被綴じ物」に相当し、以下同様に、「ロックを解除する状態」は「オープン状態」に、「ロック状態」は「ホールド状態」に、「押圧部76」は「押圧部」に、「綴じ部材70」は「綴じ部材」に、「操作部材たる操作レバー60」は「操作部材」に、「台部材たる基板22」は「台部材」に、「付勢部材たるばね部材50」は「付勢部材」に、「綴じ具20」は「綴じ具」に、それぞれ相当し、後者の「綴じ部材70」は、被綴じ物を押圧して保持する押圧部を有するものであって、被綴じ物を押圧するロック状態(ホールド状態)とロックを解除する状態(オープン状態)とに移動するものであることは明らかであるから、「被綴じ物より離れるオープン状態からホールド状態に移動し、被綴じ物を押圧して保持する押圧部を有する」ものといえ、後者の「操作部材たる操作レバー60」は、綴じ部材が、被綴じ物を押圧するロック状態とロックを解除する状態とに移動するように操作するために設けられているから、「綴じ部材が、被綴じ物を押圧するオープン状態とホールド状態とに回動するように操作するために設けられた」ものといえ、後者の「台部材たる基板22」は、綴じ部材及び操作部材を設けているから、「綴じ部材及び操作部材を設けている」ものといえ、後者の「付勢部材たるばね部材50」は、被綴じ物を押圧する方向に綴じ部材を付勢するから、「被綴じ物を押圧する方向に前記綴じ部材を付勢する」ものといえる。
また、後者の「(枢軸部72側より斜め上方に延びた立ち上がり部70aの上端から斜め下方に向けて延びた平板状の)架け渡し部70b」は、前者の「少なくともホールド状態にあるときに、操作部材側より幅方向にのびる部分」に相当し、以下同様に、「巻線部50a」は「巻線部」に、「巻線部50aの一端から綴じ部材70側に延びる第1端部50c」は「巻線部より綴じ部材側に延びる第1端部」に、「巻線部50aの軸受板24側の他端から操作レバー60側に直線状に延びる第2端部50b」は「巻線部より操作部材側に延びる第2端部」に、それぞれ相当し、後者の「付勢部材たるばね部材50」は、被綴じ物を押圧する方向に綴じ部材を付勢し、巻線部50aと、前記巻線部50aの一端から綴じ部材70側に延びる第1端部50cと、前記巻線部50aの軸受板24側の他端から操作レバー60側に直線状に延びる第2端部50bとを有するから、前者と同様に、「付勢部材は、操作部材側より第1端部が綴じ部材の前記押圧部に向かってのびて、綴じ部材の操作部材側を中心として被綴じ物を押圧するホールド状態と被綴じ物より離れるオープン状態とに移動するように作動させるように形成され」、また、「付勢部材の前記第1端部の先端は、前記綴じ部材の長手方向における中央の近傍に位置している」といえる。
更に、後者の「ばね部材50の第1端部50cが緩挿される貫通孔78」は、前者の「付勢部材の第1端部を挿通するための貫通孔」に相当し、同様に、「(枢軸部72側より斜め上方に延びた立ち上がり部70aが一部切り欠かれて形成された)ばね部材収容部70a_(1)」は、「平面視して付勢部材側の綴じ部材の端縁と、前記綴じ部材を平面視して前記付勢部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る基準面の近傍の押圧部との間において、収容凹部又は切り欠かれて収容空間部を形成された、第1の付勢部材収容部」に相当する。
そして、後者において、「(ばね部材50の)第1端部50cにおける架け渡し部50eは、ばね部材収容部70a_(1)において、オープン状態においてほぼ斜めに立ち上がった状態となるように且つホールド状態においてはほぼ水平状態となるように移動することができる」としているのは、技術常識も参酌すれば、前者において「第1の付勢部材収容部は、ホールド状態とオープン状態との間で移動する際に、綴じ部材と干渉することなく、付勢部材の第1端部が、綴じ具のオープン状態においてほぼ斜めに立ち上がった状態となるように且つホールド状態においてはほぼ水平状態となるように移動することができる」としていることをいったものと解釈するのが技術的に自然である。

したがって、両者は、
「被綴じ物より離れるオープン状態からホールド状態に移動し、被綴じ物を押圧して保持する押圧部を有する綴じ部材と、
前記綴じ部材が、被綴じ物を押圧するオープン状態とホールド状態とに回動するように操作するために設けられた操作部材と、
前記綴じ部材及び前記操作部材を設ける台部材と、
被綴じ物を押圧する方向に前記綴じ部材を付勢する付勢部材とを含む綴じ具であって、
前記綴じ部材は、少なくとも前記ホールド状態にあるときに、前記操作部材側より幅方向にのびる部分を有し、前記綴じ部材を平面視して前記操作部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通り、前記押圧部が台部材の主面に接する状態のときに前記主面に直交する基準面の近傍において、前記押圧部を有し、
前記付勢部材は、巻線部と、前記巻線部より前記綴じ部材側に延びる第1端部と、前記巻線部より前記操作部材側に延びる第2端部とを有しており、操作部材側より第1端部が前記綴じ部材の前記押圧部に向かってのびて、綴じ部材の操作部材側を中心として被綴じ物を押圧するホールド状態と被綴じ物より離れるオープン状態とに移動するように作動させるように形成され、
前記付勢部材の前記第1端部は、綴じ部材の幅方向にのびて、その先端が、前記綴じ部材の長手方向における中央の近傍に位置し、
前記綴じ部材の長手方向における中央に、前記付勢部材の前記第1端部を挿通するための貫通孔を有し、
前記綴じ部材は、平面視して前記付勢部材側の前記綴じ部材の端縁と、前記綴じ部材を平面視して前記付勢部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る前記基準面の近傍の押圧部との間において、収容凹部又は切り欠かれて収容空間部を形成された、第1の付勢部材収容部を有しており、
第1の付勢部材収容部は、ホールド状態とオープン状態との間で移動する際に、前記綴じ部材と干渉することなく、前記付勢部材の第1端部が、綴じ具のオープン状態においてほぼ斜めに立ち上がった状態となるように且つホールド状態においてはほぼ水平状態となるように移動することができるように形成されている、綴じ具。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
付勢部材(ばね部材)の第1端部の先端が、本願発明2では、ホールド状態及びオープン状態のいずれの場合にも「綴じ部材を平面視して操作部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る基準面の近傍に位置」するのに対し、引用発明1では「綴じ部材70の幅方向の中央部近傍に位置」する点。
[相違点2]
貫通孔が、本願発明2では、「綴じ部材を平面視して付勢部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る基準面の近傍」に位置するのに対し、引用発明1では、「綴じ部材70の幅方向における中央cより枢軸部72側(押圧部76側とは反対側)寄り」に位置する点。
[相違点3]
本願発明2では、「第1の付勢部材収容部の押圧部側端から貫通孔にわたって形成された付勢部材端部係止部を有しており」、「付勢部材端部係止部は、付勢部材の一部分を係止するように形成され、その上面が付勢部材の第1端部の一部によって押圧されることによって、前記綴じ具がホールド状態となるように形成されている」のに対し、引用発明1のばね部材固定部74は、綴じ部材70の架け渡し部70bが「下向き(下方向)に凹まされて」形成されている一方、ばね部材50(付勢部材)の第1端部50cにおける架け渡し部50eは、ばね部材収容部70a_(1)において、「ホールド状態においてはほぼ水平状態となる」としており、付勢部材固定部74の上面が、ばね部材50(付勢部材)の第1端部50cによって押圧されることはない点。

(2)相違点についての判断
上記の相違点3について検討する。
引用発明2は、上記「第3 2」のとおりであって、 引用発明2の「綴じ部材70」は、その構造、機能等からみて、本願発明2の「綴じ部材」に相当し、以下同様に、「ばね部材50」は「付勢部材」に、「第1端部50c」は「第1端部」に、「押圧部76」は「押圧部」に、「操作レバー60」は「操作部材」に、「巻線部50a」は「巻線部」に、「台部材を構成する基板22」は「台部材」に、それぞれ相当するものであって、綴じ部材70の幅方向における軸受板24の反対側は、回転中心側(突出片72側)に向かって折り曲げられて折曲部74が形成され、折曲部74には、矩形の貫通孔78が形成され、ばね部材50の第1端部50cが上から嵌め込まれ、ばね部材50の第1端部50cの先端部(係止部50f)が折り曲げられて貫通孔78から外れないようにされており、さらに、折曲部74の先端側が基板22側に向かって折り曲げられて、書類などの被綴じ物Xを押えるための押圧部76が形成され、操作レバー60を下げることにより、ばね部材50の巻線部50aが締め付けられ、ばね部材50の第1端部50cによって、押圧部76が基板22方向に付勢されているから、引用発明2は、本願発明2の「平面視して前記付勢部材側の前記綴じ部材の端縁と、前記綴じ部材を平面視して前記付勢部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る前記基準面の近傍の押圧部との間において、収容凹部又は切り欠かれて収容空間部を形成された、第1の付勢部材収容部」、及び「第1の付勢部材収容部の押圧部側端から貫通孔にわたって形成された付勢部材端部係止部」を有するものではなく、当然「付勢部材端部係止部は、付勢部材の一部分を係止するように形成され、その上面が付勢部材の第1端部の一部によって押圧されることによって、前記綴じ具がホールド状態となるように形成されている」ものでもない。
なお、引用文献2の第2、5図をみると、綴じ部材70のばね部材50側の端縁に、収容凹部又は切り欠き部とみられるものが形成されていることが看取できるが、この切り欠き部には、ばね部材50の巻線部50aが位置するものの、第1端部50cを収容しているものではないから、当該収容凹部又は切り欠き部は、「第1の付勢部材収容部」に相当するものとはいえないし、当然「第1の付勢部材収容部の押圧部側端から貫通孔にわたって形成された付勢部材端部係止部」を有するものではない。
してみれば、引用発明2には、上記相違点3に係る本願発明2の発明特定事項を開示、あるいは示唆していない。
また、上記相違点3に係る本願発明2の発明特定事項が、当業者にとって通常の設計事項であるとする根拠もない。
したがって、本願発明2は、引用発明1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明4、5について
本願発明4、5は、本願発明2を更に減縮した発明であるから、上記「1.」と同様の理由により、引用発明1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(なお、本願発明1、3も、上記と同様の理由により、引用発明1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。)

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定に係る拒絶理由の概要は、原査定時における請求項2、4、5に係る発明は、上記引用文献1、2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかし、平成29年4月10日付けの手続補正に係る本願発明2、4、5は、いずれも「第1の付勢部材収容部の押圧部側端から貫通孔にわたって形成された付勢部材端部係止部を有しており」、「付勢部材端部係止部は、付勢部材の一部分を係止するように形成され、その上面が前記付勢部材の前記第1端部の一部によって押圧される」という発明特定事項を備えるものとなっており、上記「第4」のとおり、引用発明1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1.当審で通知した拒絶理由の概要
当審では、平成29年2月9日付けで拒絶理由を通知したが、その概要は次のとおりである。
「本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。


1.請求項1について
(1)「少なくとも前記ホールド状態にあるときに、前記操作部材側よりのびる幅方向を有し、」とされているが、「幅方向」を有するという記載の意味が明りょうではない。
(2)「前記綴じ部材を平面視して前記操作部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る基準面」という記載があるが、「基準面」の意味が明りょうではない。
(3)「前記付勢部材の一部分を係止するように形成された付勢部材端部係止部とを有しており、
前記付勢部材の前記一部分が綴じ部材の幅方向にのびて、」という記載では、付勢部材の(付勢部材端部係止部に係止される)部分が、綴じ部材の幅方向にのびる、と解しうる余地があり、当該記載の意味が明確ではない。

2.請求項2について
(1)請求項2の「前記操作部材側よりのびる幅方向を有し、」という記載と、「前記綴じ部材を平面視して前記操作部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る基準面」という記載は、上記の請求項1に関して指摘したのと同様に、明りょうではない。
(2)請求項2には、「第1の付勢部材収容部は、ロック状態とロック解状態との間で移動する際に、前記綴じ部材と干渉することなく、前記付勢部材の第1端部が、綴じ具のオープン状態においてほぼ斜めに立ち上がった状態となるように且つホールド状態においてはほぼ水平状態となるように移動することができるように形成され、
前記付勢部材端部係止部は、前記付勢部材の一部分を係止するように形成され、その上面が前記付勢部材の前記第1端部の一部によって押圧されることによって、前記綴じ具がロック状態となるように形成されていることを特徴とする、綴じ具。」という記載がある。
上記の記載では、「ロック状態とロック解状態」という用語と、「オープン状態とホールド状態」という用語とが併用されており、また、「綴じ具がロック状態となる」という記載はその意味が明確ではないから、請求項2の記載は明りょうなものとはいえない。

3.請求項3について
「前記綴じ部材を平面視して前記付勢部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る基準面」という記載は、明りょうではない。 」

2.当審拒絶理由についての検討
上記の指摘に対して、平成29年4月10日付け手続補正書によって、次のとおりの補正がなされた。
(1)請求項1ないし3の「前記綴じ部材を平面視して前記操作部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通る基準面」という記載は、「前記綴じ部材を平面視して前記操作部材とは反対側の前記綴じ部材の端縁を通り、前記押圧部が台部材の主面に接する状態のときに前記主面に直交する基準面」という記載に補正された。
(2)請求項1、2の「前記操作部材側よりのびる幅方向を有し、」という記載は、「前記操作部材側より幅方向にのびる部分を有し、」という記載に補正された。
(3)請求項1の「(前記付勢部材の一部分を係止するように形成された付勢部材端部係止部とを有しており、)前記付勢部材の前記一部分が綴じ部材の幅方向にのびて、」という記載は、「前記付勢部材は、前記一部分からさらに綴じ部材の幅方向にのびて、」という記載に補正された。
(4)請求項2の「ロック状態」と「ロック解状態」という記載は、それぞれ、「ホールド状態」と「オープン状態」という記載に補正された。

上記のとおり、平成29年4月10日付けの手続補正がなされた結果、当審において指摘した記載はいずれも明りょうなものとなり、上記の拒絶理由は全て解消した。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-12 
出願番号 特願2013-194135(P2013-194135)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (B42F)
P 1 8・ 121- WY (B42F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大澤 元成  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 古田 敦浩
黒瀬 雅一
発明の名称 綴じ具  
代理人 岡田 全啓  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ