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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1328991
審判番号 不服2016-3887  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-14 
確定日 2017-06-08 
事件の表示 特願2011-178201「モジュール部品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月28日出願公開、特開2013- 41999〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成23年8月17日に出願したものであって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成27年 5月21日(起案日)
意見書 :平成27年 7月21日
手続補正 :平成27年 7月21日
拒絶査定 :平成27年12月 7日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成28年 3月14日
手続補正 :平成28年 3月14日
拒絶理由通知(当審) :平成29年 1月18日(起案日)
意見書 :平成29年 3月15日
手続補正 :平成29年 3月15日

2.本願発明

本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成29年3月15日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
回路基板の第一の面に複数の電子部品及び樹脂層が配置されたモジュール部品集合体の加工工程と、
前記モジュール部品集合体を加熱する加熱工程と、
加熱された前記モジュール部品集合体をハーフダイシングして、前記回路基板にハーフダイシング溝部を形成するハーフダイシング工程と、
ハーフダイシングされた前記モジュール部品集合体を冷却する冷却工程と、
導電性樹脂を、前記ハーフダイシング溝部に充填するとともに前記樹脂層の表面に積層して、導電性樹脂層を形成する導電性樹脂層形成工程と、
前記モジュール部品集合体を、前記導電性樹脂層が露出するように、前記ハーフダイシング溝部に沿ってダイシングするダイシング工程とを備え、
前記ハーフダイシング工程では、温水を用いて湿式で行うことを特徴とするモジュール部品の製造方法。」

3.引用例

当審の拒絶理由通知に引用した特開2008-288610号公報(平成20年11月27日公開、以下「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【0001】
本発明は、電子部品の回路モジュールの製造方法に関する。」

(2)「【0007】
請求項1では、複数の基板がマトリクス状に連設された集合基板を形成する集合基板製造工程と、当該集合基板上面に要素部品を実装する要素部品実装工程と、要素部品を実装した集合基板の上面側に封止樹脂層を形成する封止樹脂層形成工程と、当該集合基板の上面方向から当該封止樹脂層を分離ラインに沿って当該封止樹脂層から当該集合基板に至る溝をハーフカットすることにより形成するハーフカット工程と、当該溝を埋設するように導電性樹脂を流し込んで当該封止樹脂層の上にシールド層を形成するシールド層形成工程と、当該ハーフカットのカット幅よりも狭いカット幅で分離ラインに沿って切断して切断基板と当該シールド層の端面を同一の切断平面状に位置させる分離工程と、からなる回路モジュールの製造方法を提案する。」

(3)「【0052】
図9および10は、本発明の第7実施形態の回路モジュールに対応する製造方法を示している。本第7実施形態と第6実施形態との相違は、封止樹脂層14の形成工程の後、つまり、封止樹脂層14を基板11の上面と部品表面とを完全に被覆して硬化させた後でのシールド層19の形成工程の前に、ダイサー等で個片化する分離ラインに沿って封止樹脂層から基板11至る溝20を形成するハーフカット工程を入れること、そして最後の分離切断工程において前記ハーフカット幅よりも狭い幅のダイサー等で切断することにより、回路モジュール10の端面にシールド層19の端面と基板11の端面と同一面内に露呈するように形成することである。」

上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。

(a)引用例1には、「電子部品の回路モジュールの製造方法」が記載されている(摘示事項(1))。

(b)「回路モジュールの製造方法」は、「複数の基板がマトリクス状に連設された集合基板を形成する集合基板製造工程と、当該集合基板上面に要素部品を実装する要素部品実装工程と、要素部品を実装した集合基板の上面側に封止樹脂層を形成する封止樹脂層形成工程と、当該集合基板の上面方向から当該封止樹脂層を分離ラインに沿って当該封止樹脂層から当該集合基板に至る溝をハーフカットすることにより形成するハーフカット工程と、当該溝を埋設するように導電性樹脂を流し込んで当該封止樹脂層の上にシールド層を形成するシールド層形成工程と、当該ハーフカットのカット幅よりも狭いカット幅で分離ラインに沿って切断して切断基板と当該シールド層の端面を同一の切断平面状に位置させる分離工程と、からなる」(摘示事項(2))。

(c)「ハーフカット工程」及び「分離切断工程」には、「ダイサー等」が用いられる(摘示事項(3))。

以上を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「複数の基板がマトリクス状に連設された集合基板を形成する集合基板製造工程と、
当該集合基板上面に要素部品を実装する要素部品実装工程と、
要素部品を実装した集合基板の上面側に封止樹脂層を形成する封止樹脂層形成工程と、
ダイサー等で当該集合基板の上面方向から当該封止樹脂層を分離ラインに沿って当該封止樹脂層から当該集合基板に至る溝をハーフカットすることにより形成するハーフカット工程と、
当該溝を埋設するように導電性樹脂を流し込んで当該封止樹脂層の上にシールド層を形成するシールド層形成工程と、
ダイサー等で当該ハーフカットのカット幅よりも狭いカット幅で分離ラインに沿って切断して切断基板と当該シールド層の端面を同一の切断平面状に位置させる分離工程と、
からなる電子部品の回路モジュールの製造方法。」

同じく、当審の拒絶理由通知に引用した特開2006-351908号公報(平成18年12月28日公開、以下「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

(4)「【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
個別の半導体装置となるベース基板が複数個一体に形成されており、夫々の半導体装置についてベース基板を覆う封止体を一体に一括形成した半導体装置集合体を個別の半導体装置に個片化する半導体装置の製造方法において、前記半導体装置集合体を加熱した状態で、前記個片化を行なう。」

(5)「【0016】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
(1)本発明によれば、個片化を行なう半導体装置集合体を加熱することにより、軟化させることができるという効果がある。
(2)本発明によれば、上記効果(1)により、個片化時の平坦性を向上させることができるという効果がある。
(3)本発明によれば、上記効果(2)により、切断の精度を向上させることができるという効果がある。
(4)本発明によれば、上記効果(3)により、不良品の発生を防止することができるという効果がある。
(5)本発明によれば、上記効果(2)(3)により、処理に要する時間を増加させることがないことができるという効果がある。」

(6)「【0044】
また、ヒータ14を用いる以外にも、加熱の方法としては、赤外線の照射によって加熱を行なう、温風を用いて加熱することも可能であり、更に、ダイシングの際にダイシングブレード12によって生じる切削屑を排除するためにノズル13から切削水を吐出させているが、この切削水を所定の温度に加熱して、半導体装置集合体4を加熱することも可能である。
【0045】
状況に応じて、前述した加熱の手段を適宜に採用する、或いは複数の加熱手段を組み合わせて採用し、半導体装置集合体4の加熱を効果的に行なうことによって、平坦性を改善し、ダイシングの精度を向上させることが可能になる。」

上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。

(d)引用例2には、「個別の半導体装置となるベース基板が複数個一体に形成されており、夫々の半導体装置についてベース基板を覆う封止体を一体に一括形成した半導体装置集合体を個別の半導体装置に個片化する半導体装置の製造方法において、前記半導体装置集合体を加熱した状態で、前記個片化を行なう」ことが記載されている(摘示事項(4))。

(e)個片化を行なう半導体装置集合体を加熱することにより、軟化させ、個片化時の平坦性を向上させ、切断の精度を向上させることができる(摘示事項(5))。

(f)切削水を所定の温度に加熱して、半導体装置集合体4の加熱を効果的に行なう(摘示事項(6))。

以上を総合勘案すると、引用例2には、次の技術事項(以下「技術事項1」及び「技術事項2」という。)が記載されているものと認める。

「個別の半導体装置となるベース基板が複数個一体に形成されており、夫々の半導体装置についてベース基板を覆う封止体を一体に一括形成した半導体装置集合体を個別の半導体装置に個片化する半導体装置の製造方法において、前記半導体装置集合体を加熱した状態で、前記個片化を行なうことにより、個片化を行なう半導体装置集合体を加熱して、軟化させ、個片化時の平坦性を向上させ、切断の精度を向上させることができる。」(技術事項1)

「切削水を所定の温度に加熱して、半導体装置集合体4の加熱を効果的に行なう。」(技術事項2)

4.対比

そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)モジュール部品の製造方法
引用発明は、「電子部品の回路モジュールの製造方法」であるから、「モジュール部品の製造方法」ともいえる。

(2)加工工程
引用発明は、「複数の基板がマトリクス状に連設された集合基板を形成する集合基板製造工程と、当該集合基板上面に要素部品を実装する要素部品実装工程と、要素部品を実装した集合基板の上面側に封止樹脂層を形成する封止樹脂層形成工程と、」を備えるから、「回路基板の第一の面に複数の電子部品及び樹脂層が配置されたモジュール部品集合体の加工工程」を備えるといえる。

(3)加熱工程
本願発明は、「前記モジュール部品集合体を加熱する加熱工程」を備えるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点で相違する。

(4)ハーフダイシング工程
引用発明は、「ダイサー等で当該集合基板の上面方向から当該封止樹脂層を分離ラインに沿って当該封止樹脂層から当該集合基板に至る溝をハーフカットすることにより形成するハーフカット工程」を備えるから、「前記モジュール部品集合体をハーフダイシングして、前記回路基板にハーフダイシング溝部を形成するハーフダイシング工程」を備えるといえる。
もっとも、本願発明は、「加熱された」前記モジュール部品集合体をハーフダイシングするのに対し、引用発明は、そのような特定がない点で相違する。

(5)冷却工程
本願発明は、「ハーフダイシングされた前記モジュール部品集合体を冷却する冷却工程」を備えるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点で相違する。

(6)導電性樹脂層形成工程
引用発明は、「当該溝を埋設するように導電性樹脂を流し込んで当該封止樹脂層の上にシールド層を形成するシールド層形成工程」を備えるから、「導電性樹脂を、前記ハーフダイシング溝部に充填するとともに前記樹脂層の表面に積層して、導電性樹脂層を形成する導電性樹脂層形成工程」を備えるといえる。

(7)ダイシング工程
引用発明は、「ダイサー等で当該ハーフカットのカット幅よりも狭いカット幅で分離ラインに沿って切断して切断基板と当該シールド層の端面を同一の切断平面状に位置させる分離工程」を備えるから、「前記モジュール部品集合体を、前記導電性樹脂層が露出するように、前記ハーフダイシング溝部に沿ってダイシングするダイシング工程」を備えるといえる。

(8)ハーフダイシング工程の詳細
「ハーフダイシング工程」について、本願発明は、「温水を用いて湿式で行う」のに対し、引用発明は、そのような特定がない点で相違する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。

<一致点>

「回路基板の第一の面に複数の電子部品及び樹脂層が配置されたモジュール部品集合体の加工工程と、
前記モジュール部品集合体をハーフダイシングして、前記回路基板にハーフダイシング溝部を形成するハーフダイシング工程と、
導電性樹脂を、前記ハーフダイシング溝部に充填するとともに前記樹脂層の表面に積層して、導電性樹脂層を形成する導電性樹脂層形成工程と、
前記モジュール部品集合体を、前記導電性樹脂層が露出するように、前記ハーフダイシング溝部に沿ってダイシングするダイシング工程とを備えるモジュール部品の製造方法。」の点。

そして、次の点で相違する。

<相違点>

(1)本願発明は、「前記モジュール部品集合体を加熱する加熱工程」を備え、「加熱された」前記モジュール部品集合体をハーフダイシングし、「ハーフダイシングされた前記モジュール部品集合体を冷却する冷却工程」を備えるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。

(2)「ハーフダイシング工程」について、本願発明は、「温水を用いて湿式で行う」のに対し、引用発明は、そのような特定がない点。

5.判断

そこで、上記相違点について検討する。

相違点(1)について
封止体の樹脂と基板との熱膨張率の差によって半導体装置が湾曲することは、引用発明においても起こり得る問題であるから、引用発明のハーフカット工程において、引用例2に記載された技術事項1を適用することによって、加熱工程を備え、加熱された状態でハーフカットするようにすることは、当業者が容易に想到し得る。そして、加熱された状態でのハーフカット終了後に冷却工程を設けることも当業者であれば適宜なし得る。

相違点(2)について
引用発明のハーフカット工程において、引用例2に記載された技術事項1を適用するに際して、その効果を高めるために、同じく引用例2に記載された技術事項2を適用することによって、切削水として温水を用いるようにすることも、当業者が容易に想到し得る。

また、明細書に記載された本願発明が奏する効果についてみても、本願発明のものとして当業者であれば予測し得る程度のものに過ぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

6.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-29 
結審通知日 2017-04-04 
審決日 2017-04-17 
出願番号 特願2011-178201(P2011-178201)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金田 孝之松田 直也▲吉▼澤 雅博  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 井上 信一
関谷 隆一
発明の名称 モジュール部品の製造方法  
代理人 松沼 泰史  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 伊藤 英輔  
代理人 森 隆一郎  

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