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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1329004
審判番号 不服2016-13215  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-05 
確定日 2017-06-08 
事件の表示 特願2012-108138「画像形成装置及び濃度変動抑制方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月21日出願公開、特開2013-235167〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年5月10日の出願であって、平成28年3月23日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年6月2日付けで拒絶の査定(謄本送達日 同年同月8日。以下「原査定」という。)がなされ、同年9月5日付けで審判請求書が提出されると同時に、手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年9月5日付け手続補正書による補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成28年9月5日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおり補正された(下線は補正箇所を明らかにするために当審にて付した。)。

「画像情報に基づいて画像を形成する画像形成装置であって、
感光体ドラムと、
光源を含み、該光源からの光によって前記感光体ドラム表面を主走査方向に走査し、前記感光体ドラム表面に潜像を形成する光走査装置と、
前記潜像を現像する現像装置と、
前記感光体ドラムの回転周期を検出するドラム周期検出センサと、
前記現像装置で現像された画像の前記主走査方向の複数位置における濃度を検出する濃度検出装置と、
前記濃度検出装置の出力信号に基づいて、前記画像の前記主走査方向の各位置における前記感光体ドラムの回転周期を周期とする第1の周期的濃度変動の振幅を、前記画像の前記主走査方向の複数位置における前記第1の周期的濃度変動の振幅に基づいて求められた関数で近似することで取得し、
前記画像の前記主走査方向の各位置における前記第1の周期的濃度変動の位相を、前記画像の前記主走査方向の複数位置における前記第1の周期的濃度変動の位相に基づいて求められた関数で近似することで取得し、
取得された前記振幅、前記位相及び前記感光体ドラムの回転周期に基づいて、前記画像の前記主走査方向の各位置における前記第1の周期的濃度変動が抑制されるように前記光源の駆動信号を補正するための光量補正パターンを作成し、前記主走査方向の各位置に対応する前記画像情報に基づく変調データに応じた前記駆動信号に、該位置に対応する前記光量補正パターンを重畳させることで前記駆動信号を補正する処理装置と、を備える画像形成装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成28年5月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりのものである。
「画像情報に基づいて画像を形成する画像形成装置であって、
感光体ドラムと、
光源を含み、該光源からの光によって前記感光体ドラム表面を主走査方向に走査し、前記感光体ドラム表面に潜像を形成する光走査装置と、
前記潜像を現像する現像装置と、
前記感光体ドラムの回転周期を検出するドラム周期検出センサと、
前記現像装置で現像された画像の前記主走査方向の複数位置における濃度を検出する濃度検出装置と、
前記濃度検出装置の出力信号に基づいて、前記画像の前記主走査方向の各位置における前記感光体ドラムの回転周期を周期とする第1の周期的濃度変動の振幅を、前記画像の前記主走査方向の複数位置における前記第1の周期的濃度変動の振幅に基づいて求められた関数で近似することで取得し、取得された前記振幅及び前記感光体ドラムの回転周期に基づいて、前記画像の前記主走査方向の各位置における前記第1の周期的濃度変動が抑制されるように前記光源の駆動信号を補正するための光量補正パターンを作成し、前記主走査方向の各位置に対応する変調データに応じた前記駆動信号に、該位置に対応する前記光量補正パターンを重畳させることで前記駆動信号を補正する処理装置と、を備える画像形成装置。」

2 補正の適否
本件補正により、請求項1の「光量補正パターン」は、「画像の主走査方向の各位置における第1の周期的濃度変動の位相を、前記画像の前記主走査方向の複数位置における前記第1の周期的濃度変動の位相に基づいて求められた関数で近似することで取得し」、「前記位相」に基づいて生成されたものに限定され、また、「変調データ」は「画像情報に基づく変調データ」に限定された。そして、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明とは、産業上の利用分野は共に「画像形成装置」であり、解決しようとする課題は共に「第1の周期的濃度変動」の「抑制」であるから、産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
よって、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて、以下検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)刊行物
ア 米国特許出願公開第2012/009165号明細書(以下「引用文献1」という。)
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。また、括弧内に当審における日本語訳文を付記する。以下同じ。)。

(ア) [0255] The light quantity correction information acquiring process will be described with reference to FIG.45. A flowchart of FIG.45 corresponds to an algorithm including a series of processes executed by the CPU 3210 at the time of the light quantity correction information acquiring process. The light quantity correction information acquiring process is performed for each station; but since it is performed in the same manner for each station, a description will be exemplarily made in connection the light quantity information acquiring process for the K station.
([0255]ここで、光量補正情報取得処理について、図45を用いて説明する。図45のフローチャートは、光量補正情報取得処理の際に、CPU3210によって実行される一連の処理アルゴリズムに対応している。なお、光量補正情報取得処理は、ステーション毎に行われるが、各ステーションで同様にして行われるので、ここでは、代表として、Kステーションでの光量補正情報取得処理について説明する。)

(イ) 「[0270] In step S606, a sine wave having the same period as a rotation period of the photosensitive element 2030a is extracted from each sensor output level waveform as a period pattern based on the output signal of the home position sensor 2246a (see FIG. 51).」
([0270]ステップS606では、ホームポジションセンサ2246aの出力信号に基づいて、各センサ出力レベル波形から感光体2030aの回転周期と同じ周期の正弦波を周期パターンとして抽出する(図51参照)。)

(ウ) 「[0271] In step S607, a density correction pattern is obtained by shifting the period pattern by a 1/2 period; and a reference pattern is obtained by converting the vertical axis from the sensor output level into the light-emitting power with reference to the correlation between the sensor output level and the light-emitting power on one period of the density correction pattern (see FIG. 51).」
([0271]ステップS607では、上記周期パターンを1/2周期シフトさせた濃度補正周期パターンを求め、その1周期分に関して、センサ出力レベルと発光パワーとの相関関係を参照して、縦軸をセンサ出力レベルから発光パワーに変換し、基準パターンとする(図51参照)。)

(エ) 「[0277] At the time of performing image formation, for each station, the CPU 3210 obtains a time difference between the home position and the writing start based on the output signal of the home position sensor and the writing start timing obtained from an output signal of a synchronization detection sensor (not shown); and generates a first light quantity correction signal by shifting the phase of the reference pattern according to the time difference (see FIG. 55). Here, the vertical axis of the first light quantity correction signal is converted to a coefficient having an average value of 1.0. Then, a driving signal is corrected by multiplying the coefficient and the driving signal of each light-emitting unit corresponding to image information. A non-corrected sensor output level and a corrected sensor output level are illustrated in FIG. 56. In this way, it is possible to suppress the density variation in the sub scanning direction.」
([0277]CPU3210は、画像形成が行われる際に、ステーション毎に、ホームポジションセンサの出力信号と不図示の同期検知センサの出力信号から得られる書込開始のタイミングとに基づいて、ホームポジションと書込開始の時間差を求め、該時間差に応じて基準パターンの位相をシフトさせて、第1光量補正信号を生成する(図55参照)。ここでは、第1光量補正信号の縦軸は、平均値を1.0とする係数に変換されている。そして、画像情報に対応する各発光部の駆動信号に該係数を掛けることによって、駆動信号を補正する。図56には、補正前後のセンサ出力レベルが示されている。このように、副走査方向の濃度変動を抑制することができた。)

(オ) 「15 . An image forming apparatus that forms an image based on image information, comprising:
a photosensitive element;
an optical scanning device that includes a light source, scans a surface of the photosensitive element in a main scanning direction with light from the light source, and forms a latent image on the surface of the photosensitive element;
a developing unit that develops the latent image;
a photosensitive element period detecting sensor that detects a rotation period of the photosensitive element;
a plurality of density sensors that are arranged at different positions in the main scanning direction,
each density sensor detecting a density variation of an image, which is developed by the developing unit, in a sub scanning direction orthogonal to the main scanning direction; and
a processing device that corrects a driving signal of the light source according to the image information, based on output signals of the plurality of density sensors and an output signal of the photosensitive element period detecting sensor, so as to suppress the density variation in the sub scanning direction and a density variation in the main scanning direction.」
(15.画像情報に応じた画像を形成する画像形成装置であって、
感光体と;
光源を含み、該光源からの光によって前記感光体表面を主走査方向に走査し、前記感光体表面に潜像を形成する光走査装置と;
前記潜像を現像する現像装置と;
前記感光体の回転周期を検出する感光体周期検出センサと;
前記主走査方向に関して互いに異なる位置に配置され、前記現像装置で現像された画像における前記主走査方向に直交する副走査方向の濃度変動をそれぞれ検出する複数の濃度センサと;
前記複数の濃度センサの各出力信号と前記ドラム周期検出センサの出力信号とに基づいて、前記副走査方向の濃度変動及び前記主走査方向の濃度変動が抑制されるように、前記画像情報に応じた前記光源の駆動信号を補正する処理装置と;を備える画像形成装置。)

(カ)上記(ア)、(エ)の「CPU3210」は、上記(オ)の「処理装置」であるといえる。
また、上記(イ)の「ステップS606」について、図45の「S606」には、「ACQUIRE PERIOD PATTERN CORRESPONDING TO DENSITY VARIATION IN SUB SCANNING DIRECTION」(副走査方向の濃度変動に対応する周期パターンを取得)と記載されているから、上記(イ)記載の「周期パターン」は「副走査方向の濃度変動に対応する周期パターン」であること、及び「センサ」は「副走査方向の濃度変動」を検出する「濃度センサ」であることがいえる。
上記(エ)の「画像情報に対応する各発光部の駆動信号に該係数を掛けること」の記載について、全ての「画像情報に対応する各発光部の駆動信号」に、画像の位置に対応する「該係数を掛ける」ものであるから、走査方向の各位置において「画像情報に対応する各発光部の駆動信号」に、該位置に対応する「該係数を掛ける」ものであるといえる。

上記(ア)ないし(カ)より、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。
「画像情報に応じた画像を形成する画像形成装置であって、
感光体と;
光源を含み、該光源からの光によって前記感光体表面を主走査方向に走査し、前記感光体表面に潜像を形成する光走査装置と;
前記潜像を現像する現像装置と;
前記感光体の回転周期を検出する感光体周期検出センサと;
前記主走査方向に関して互いに異なる位置に配置され、前記現像装置で現像された画像における前記主走査方向に直交する副走査方向の濃度変動をそれぞれ検出する複数の濃度センサと;
処理装置と;を備え、
前記処理装置によって実行される一連の処理アルゴリズムは、
各濃度センサ出力レベル波形から感光体の回転周期と同じ周期の正弦波を、副走査方向の濃度変動に対応する周期パターンとして抽出し、
上記周期パターンを1/2周期シフトさせ、その1周期分を基準パターンとし、
画像形成が行われる際に、書込開始のタイミングに基づいて、基準パターンの位相をシフトさせて、第1光量補正信号を生成し、第1光量補正信号の縦軸は、平均値を1.0とする係数に変換され、走査方向の各位置において画像情報に対応する各発光部の駆動信号に、該位置に対応する該係数を掛けることによって、駆動信号を補正して、副走査方向の濃度変動を抑制すること、を含む、
画像形成装置。」

イ 特開2005-274919号公報(以下「引用文献2」という。)
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、以下の記載がある。

(ア)「【発明の名称】画像形成装置」

(イ)「【0096】
また、SS方向のレジずれのAC成分は、主として感光体ドラム15Y、15M、15C、15Kや中間転写ベルト25を駆動するローラ27?32の偏芯、中間転写ベルト25の厚みの不均一性等に起因して発生する。例として図24(C)に示すように、感光体ドラムの軸線に対して実際の回転軸が偏芯していた場合、走査露光部による走査露光位置において、感光体の周速が周期的に変動することによりSS方向に沿った画素間隔が周期的に変動する。この画素間隔の周期的な変動は、例えば濃度が一定の領域内においては、図24(D)に示すようにSS方向に沿った周期的な濃度変動として視認される。」

(ウ)「【0099】
なお、感光体ドラムの回転軸が傾いていることによるウォブルが生じていた場合、感光体ドラムの周速の変動の振幅及び位相がFS方向に沿った各位置で相違し、これに伴って画素間隔の変動の振幅及び位相がFS方向に沿った各位置で相違することになる。このため、上記を考慮すると、SS方向に沿った画素間隔の変動の周期、振幅及び位相の検知をSOS、COS、EOSの各位置で各々行い検出結果に基づき、FS方向に沿った各位置における、SS方向に沿った画素間隔の変動の周期、振幅及び位相を補間算出によって求め、算出結果に基づいてSS方向に沿った画素間隔の変動を補正することが望ましい。
【0100】
また写真画像等のように、画像の幾何学的な歪み(具体的には、画像形成位置のFS方向に沿った変動やSS方向に沿った画素間隔の変動)は目立たないものの、濃度の周期的な変動は顕著に視認される画像に対しては、上述したFS方向に沿った画素位置及びSS方向に沿った画素間隔の補正に代えて、濃度の補正のみを行うようにしてもよい。この場合、レジずれ検出用パターン50に代えて、濃度が一定のベタ画像を形成し、形成したベタ画像のFS方向及びSS方向に沿った濃度変動の周期、振幅(濃度変動幅)及び位相を検知することが望ましく、検知した濃度変動の周期、振幅及び位相に基づき、検知した濃度変動が打ち消されるように各画素の濃度を周期的に変化させる補正を行えばよい。」

(エ) 上記(イ)の「画素間隔の周期的な変動は、SS方向に沿った周期的な濃度変動として視認される。」との記載、及び上記(ウ)の【0100】の「上述したFS方向に沿った画素位置及びSS方向に沿った画素間隔の補正に代えて、濃度の補正のみを行うようにしてもよい。」との記載からすれば、上記(ウ)【0099】には、「画素間隔の変動」を「濃度変動」に替えた事項が記載されているといえる。

上記(ア)ないし(エ)より、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「感光体ドラムの回転軸が傾いていることによるウォブルが生じていた場合、感光体ドラムの周速の変動の振幅及び位相がFS方向に沿った各位置で相違し、これに伴って濃度変動の振幅及び位相がFS方向に沿った各位置で相違することになり、このため、SS方向に沿った濃度変動の周期、振幅及び位相の検知をSOS、COS、EOSの各位置で各々行い検出結果に基づき、FS方向に沿った各位置における、SS方向に沿った濃度変動の周期、振幅及び位相を補間算出によって求め、算出結果に基づいてSS方向に沿った濃度変動を補正する、画像形成装置。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「感光体」、「感光体周期検出センサ」、「主走査方向に関して互いに異なる位置に配置され、現像装置で現像された画像における前記主走査方向に直交する副走査方向の濃度変動をそれぞれ検出する複数の濃度センサ」、「各濃度センサ出力レベル波形」、「感光体の回転周期と同じ周期」の「副走査方向の濃度変動」、「各発光部の駆動信号」、「画像情報に対応する各発光部の駆動信号」は、それぞれ本件補正発明の「感光体ドラム」、「ドラム周期検出センサ」、「現像装置で現像された画像の主走査方向の複数位置における濃度を検出する濃度検出装置」、「濃度検出装置の出力信号」、「第1の周期的濃度変動」、「光源の駆動信号」、「画像情報に基づく変調データに応じた駆動信号」に相当する。
引用発明1においては、「各濃度センサ出力レベル波形から感光体の回転周期と同じ周期の正弦波を、副走査方向の濃度変動に対応する周期パターンとして抽出」しているから、「各濃度センサ出力レベル波形から感光体の回転周期と同じ周期の副走査方向の濃度変動の振幅及び位相を取得している」といえる。また、引用発明1では、上記「周期パターン」から作成した「第1光量補正信号」は、その係数を「主走査方向の各位置」において掛けているから、「主走査方向の各位置」における「第1光量補正信号」であるといえ、その作成の基となった「周期パターン」もまた、「主走査方向の各位置」における「周期パターン」といえるから、取得した「周期パターン」の「振幅及び位相」は、「主走査方向の各位置における振幅及び位相」であるといえる。したがって、引用発明1では、「各濃度センサ出力レベル波形から、画像の主走査方向の各位置における感光体の回転周期と同じ周期の副走査方向の濃度変動の振幅及び位相を取得」しており、これは本件補正発明の「濃度検出装置の出力信号に基づいて、画像の主走査方向の各位置における感光体ドラムの回転周期を周期とする第1の周期的濃度変動の振幅」を「取得し」、「画像の主走査方向の各位置における第1の周期的濃度変動の位相」を「取得」することに相当する。
引用発明1の「副走査方向の濃度変動を抑制すること」は、画像の主走査方向の各位置で行われるといえるから、本件補正発明の「画像の主走査方向の各位置における第1の周期的濃度変動が抑制される」ことに相当する。
引用発明1の「基準パターン」は、上記「振幅及び位相」及び「感光体の回転周期」を持つ「周期パターン」に基づいて作成されているから、上記「振幅及び位相」及び「感光体の回転周期」に基づいて作成されているといえる。また、「基準パターン」は「副走査方向の濃度変動を抑制する」ために「画像情報に対応する各発光部の駆動信号」を「補正」して光量補正するためのものであり、「1周期分」の「パターン」である。したがって、引用発明1の「基準パターン」は、本件補正発明の「取得された振幅、位相及び感光体ドラムの回転周期に基づいて、画像の主走査方向の各位置における第1の周期的濃度変動が抑制されるように前記光源の駆動信号を補正するための光量補正パターン」に相当する。
引用発明1の「走査方向の各位置において画像情報に対応する各発光部の駆動信号に、該位置に対応する該係数を掛けること」は、本件補正発明の「前記主走査方向の各位置に対応する前記画像情報に基づく変調データに応じた前記駆動信号に、該位置に対応する前記光量補正パターンを重畳させること」に相当する。
以上より、本件補正発明と引用発明1とは、
「画像情報に基づいて画像を形成する画像形成装置であって、
感光体ドラムと、
光源を含み、該光源からの光によって前記感光体ドラム表面を主走査方向に走査し、前記感光体ドラム表面に潜像を形成する光走査装置と、
前記潜像を現像する現像装置と、
前記感光体ドラムの回転周期を検出するドラム周期検出センサと、
前記現像装置で現像された画像の前記主走査方向の複数位置における濃度を検出する濃度検出装置と、
前記濃度検出装置の出力信号に基づいて、前記画像の前記主走査方向の各位置における前記感光体ドラムの回転周期を周期とする第1の周期的濃度変動の振幅を取得し、
前記画像の前記主走査方向の各位置における前記第1の周期的濃度変動の位相を取得し、
取得された前記振幅、前記位相及び前記感光体ドラムの回転周期に基づいて、前記画像の前記主走査方向の各位置における前記第1の周期的濃度変動が抑制されるように前記光源の駆動信号を補正するための光量補正パターンを作成し、前記主走査方向の各位置に対応する前記画像情報に基づく変調データに応じた前記駆動信号に、該位置に対応する前記光量補正パターンを重畳させることで前記駆動信号を補正する処理装置と、を備える画像形成装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点)
本件補正発明では、前記画像の前記主走査方向の各位置における前記感光体ドラムの回転周期を周期とする第1の周期的濃度変動の振幅を、「前記画像の前記主走査方向の複数位置における前記第1の周期的濃度変動の振幅に基づいて求められた関数で近似すること」で取得し、前記画像の前記主走査方向の各位置における前記第1の周期的濃度変動の位相を、「前記画像の前記主走査方向の複数位置における前記第1の周期的濃度変動の位相に基づいて求められた関数で近似すること」で取得しているのに対し、引用発明1はそうではない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
引用発明2の「FS方向」、「SOS、COS、EOS」、「補間算出によって求め」ることは、本件補正発明の「主走査方向」、「画像の主走査方向の複数位置」、「求められた関数で近似することで取得する」ことに相当する。
引用発明2において、「SS方向に沿った濃度変動」は、「感光体ドラムの回転軸が傾いていることによるウォブル」によるものであるから、感光体ドラムの回転周期を周期とする濃度変動であるといえる。よって、引用発明2の「SS方向に沿った濃度変動」は、本件補正発明の「感光体ドラムの回転周期を周期とする第1の周期的濃度変動」に相当する。
以上より、引用発明2の、「FS方向に沿った各位置における、SS方向に沿った濃度変動の振幅及び位相」を「SOS、COS、EOSの各位置」での「SS方向に沿った濃度変動の振幅及び位相」の「検出結果に基づき」、「補間算出によって求め」ることは、本件補正発明の「画像の主走査方向の各位置における感光体ドラムの回転周期を周期とする第1の周期的濃度変動の振幅を、前記画像の前記主走査方向の複数位置における前記第1の周期的濃度変動の振幅に基づいて求められた関数で近似することで取得し、前記画像の前記主走査方向の各位置における前記第1の周期的濃度変動の位相を、前記画像の前記主走査方向の複数位置における前記第1の周期的濃度変動の位相に基づいて求められた関数で近似することで取得」することに相当する。
したがって、引用発明2は、上記相違点に係る本件補正発明の技術事項を備えている。
そして、引用発明1と引用発明2とは、共に画像形成装置の技術分野に属しており、いずれも第1の周期的濃度変動を抑制する点で課題が共通しているから、引用発明1に対して、引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得たものである。
効果について検討しても、引用発明1及び2から予想できる範囲のものである。
よって、本件補正発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるとはいえない。

(5)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明
平成28年9月5日付け手続補正書による補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成28年5月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載」に記載したとおりのものである。

第4 刊行物
原査定の拒絶の理由で引用した引用文献1及び2の記載事項は、上記「第2[理由]2(2)刊行物」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
上記「第2[理由]2(3)対比」及び「(4)判断」で検討した本件補正発明は、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を付加したものである。そして、「第2[理由]2(3)対比」及び「(4)判断」で記載したとおり、本件補正発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-31 
結審通知日 2017-04-03 
審決日 2017-04-24 
出願番号 特願2012-108138(P2012-108138)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 植田 高盛
黒瀬 雅一
発明の名称 画像形成装置及び濃度変動抑制方法  
代理人 立石 篤司  

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