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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1329006
審判番号 不服2016-14085  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-20 
確定日 2017-06-08 
事件の表示 特願2014-195241号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月19日出願公開、特開2015- 33591号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年7月8日に出願した特願2011-152357号の一部を平成26年9月25日に新たな特許出願としたものであって,平成27年10月14日付けで拒絶理由が通知され,これに対し同年12月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが,平成28年6月15日付けで拒絶査定がなされ,それに対して,同年9月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され,同年11月7日付けで前置報告がなされ,同年12月16日に上申書が提出されたものである。

第2 平成28年9月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年9月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1?3の記載を含む補正であり,平成27年12月17日付けの手続補正と本件補正の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ,以下のとおりである(下線部は補正を示す。)。

(補正前:平成27年12月17日付けの手続補正)
「【請求項1】
可変表示を行い,遊技者にとって有利な有利状態に制御する遊技機であって,
前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段と,
可変表示が開始されてから表示結果が導出されるまでに,演出態様に応じて前記有利状態に制御される可能性を報知する報知演出を実行可能な報知演出実行手段と,
前記報知演出が終了した後の特定タイミングにて,前記報知演出実行手段により実行された前記報知演出の演出態様を示す演出を表示した後に,該表示した演出態様を,前記有利状態に制御される可能性がより高い演出態様を示す演出に変更して表示する変更演出実行手段とを備え,
前記報知演出実行手段は,前記報知演出として,所定画像を表示する画像表示演出を実行可能であり,該画像表示演出を実行するときは,前記決定手段の決定結果に応じて異なる割合で所定画像の少なくとも一部の表示態様を異なる表示態様で表示し,
前記変更演出実行手段は,前記報知演出実行手段により実行された前記画像表示演出における所定画像の表示態様を示す演出を,所定画像の一部の表示態様がより前記有利状態に制御される可能性が高い表示態様となる所定画像を示す演出に変更して表示することにより,前記有利状態となる可能性が高いことを報知し,
前記変更演出実行手段により前記報知演出の演出態様を示す演出が特定態様を示す演出に変更されるときと,前記報知演出実行手段により実行される前記報知演出の演出態様が前記特定態様となるときとで,前記有利状態に制御される期待度が異なる,
ことを特徴とする遊技機。」

(補正後:本件補正:平成28年9月20日付け手続補正)
「【請求項1】
可変表示を行い,遊技者にとって有利な有利状態に制御する遊技機であって,
前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段と,
可変表示が開始されてから表示結果が導出されるまでに,演出態様に応じて前記有利状態に制御される可能性を報知する報知演出を実行可能な報知演出実行手段と,
前記報知演出が終了した後の特定タイミングにて,前記報知演出実行手段により実行された前記報知演出の演出態様を示す演出を表示した後に,該表示した演出態様に対して所定の作用を実行することにより前記有利状態に制御される可能性がより高い演出態様を示す演出に変更して表示する変更演出実行手段とを備え,
前記報知演出実行手段は,前記報知演出として,所定画像を表示する画像表示演出を実行可能であり,該画像表示演出を実行するときは,前記決定手段の決定結果に応じて異なる割合で所定画像の少なくとも一部の表示態様を異なる表示態様で表示し,
前記変更演出実行手段は,前記報知演出実行手段により実行された前記画像表示演出における所定画像の表示態様を示す演出を,該表示した演出態様に対して所定の作用を実行して所定画像の一部の表示態様がより前記有利状態に制御される可能性が高い表示態様となる所定画像を示す演出に変更して表示することにより,前記有利状態となる可能性が高いことを報知し,
前記変更演出実行手段により前記報知演出の演出態様を示す演出が特定態様を示す演出に変更されるときと,前記報知演出実行手段により実行される前記報知演出の演出態様が前記特定態様となるときとで,前記有利状態に制御される期待度が異なる,
ことを特徴とする遊技機。」

2.補正の適否
(1)補正事項
本件補正は,補正前の請求項1について,以下に挙げる補正事項を含むものである。

ア 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「変更演出実行手段」に関して,「該表示した演出態様を,前記有利状態に制御される可能性がより高い演出態様を示す演出に変更して表示する」という記載を,「該表示した演出態様に対して所定の作用を実行することにより前記有利状態に制御される可能性がより高い演出態様を示す演出に変更して表示する」という記載にする補正。

イ 補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「変更演出実行手段」に関して,「所定画像の表示態様を示す演出を,所定画像の一部の表示態様がより前記有利状態に制御される可能性が高い表示態様となる所定画像を示す演出に変更して表示することにより」という記載を,「所定画像の表示態様を示す演出を,該表示した演出態様に対して所定の作用を実行して所定画像の一部の表示態様がより前記有利状態に制御される可能性が高い表示態様となる所定画像を示す演出に変更して表示することにより」という記載にする補正。

(2)補正の目的
ア 補正事項アは,「変更演出実行手段」における「該表示した演出態様」を変更して表示することについて,「に対して所定の作用を実行することにより」と限定する補正であり,また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 補正事項イは,「変更演出実行手段」における「所定画像の一部の表示態様がより前記有利状態に制御される可能性が高い表示態様となる所定画像を示す演出に変更して表示すること」について,「該表示した演出態様に対して所定の作用を実行して」と限定する補正であり,また,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)新規事項
ア 請求人の主張
請求人は,上記補正事項ア?イについて,平成28年9月20日付け審判請求書の【請求の理由】における「3.補正の内容とその根拠(1)特許請求の範囲」において,
「まず,本願請求項1の変更演出実行手段(前段)において,補正前の「・・・該表示した演出態様を,前記有利状態に制御される可能性がより高い演出態様を示す演出に変更して表示する」という記載を,「・・・該表示した演出態様に対して所定の作用を実行することにより前記有利状態に制御される可能性がより高い演出態様を示す演出に変更して表示する」という記載に改めています。この補正事項は,例えば,当初明細書の段落0384における『図40(I)に示すような区切り演出に続いて,図40(J)に示すような演出画像の表示などにより,既に実行されたステップアップ予告の演出態様として,ステップ数が「2」のステップアップ予告SU2を示す演出が行われる。そして,図40(K)に示すような演出画像の表示などにより,ステップ数が「4」のステップアップ予告SU4を示す演出に変更されることを報知する。ステップアップ予告では,ステップ数が増加するに従って大当り期待度が高くなる。したがって,ステップ数が「4」のステップアップ予告SU4に変更されることにより,既に示唆演出として実行されたステップ数が「2」のステップアップ予告SU2に比べて,大当り期待度がより高い演出態様に変更されたことを認識可能に報知できる。』という記載,及び,図40(J),(K)等の記載を根拠としています。つまり,図40(J)の演出画像(ステップ2の演出態様)を,図40(K)のように一旦左下に小さく表示し,矢印によって,変更された演出画像(ステップ4の演出態様)へと導いているため,「該表示した演出態様に対して所定の作用を実行することにより前記有利状態に制御される可能性がより高い演出態様を示す演出に変更して表示する」ことになります。
次に,本願請求項1の変更演出実行手段(後段)において,補正前の「・・・所定画像の表示態様を示す演出を,所定画像の一部の表示態様がより前記有利状態に制御される可能性が高い表示態様となる所定画像を示す演出に変更して表示することにより・・・」という記載を,「・・・所定画像の表示態様を示す演出を,該表示した演出態様に対して所定の作用を実行して所定画像の一部の表示態様がより前記有利状態に制御される可能性が高い表示態様となる所定画像を示す演出に変更して表示することにより・・・」という記載に改めています。この補正事項も,上記と同様に,例えば,当初明細書の段落0384,及び,図40(J),(K)等の記載を根拠としています。」
と,主張している。

イ 当審の判断
補正事項ア?イは,請求人が主張する記載の根拠が同じであるので,まとめて検討する。

本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲,明細書及び図面(以下,「当初明細書等」という。)の段落【0384】には,「図40(K)に示すような演出画像の表示などにより,ステップ数が「4」のステップアップ予告SU4を示す演出に変更されることを報知する」ことが記載されており,図40(K)を参酌することで,「変更演出手段」において,表示した演出態様に対して「一旦左下に小さく表示し,矢印によって,変更された演出画像(ステップ4の演出態様)へと導」く構成が示唆されていることから,上記補正事項は,この構成を一般的表現にして「に対して所定の作用を実行することにより」(補正事項ア),及び「該表示した演出態様に対して所定の作用を実行して」(補正事項イ)と補正したものである。
したがって,上記補正事項ア?イは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術事項を導入するものでない。

3.独立特許要件
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か,すなわち,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か,について以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1に係る発明
補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)は,上記「1.本件補正の概要」に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである(A?Hは,本願補正発明を分説するために当審で付与した。)。
「【請求項1】
A 可変表示を行い,遊技者にとって有利な有利状態に制御する遊技機であって,
B 前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段と,
C 可変表示が開始されてから表示結果が導出されるまでに,演出態様に応じて前記有利状態に制御される可能性を報知する報知演出を実行可能な報知演出実行手段と,
D 前記報知演出が終了した後の特定タイミングにて,前記報知演出実行手段により実行された前記報知演出の演出態様を示す演出を表示した後に,該表示した演出態様に対して所定の作用を実行することにより前記有利状態に制御される可能性がより高い演出態様を示す演出に変更して表示する変更演出実行手段とを備え,
E 前記報知演出実行手段は,前記報知演出として,所定画像を表示する画像表示演出を実行可能であり,該画像表示演出を実行するときは,前記決定手段の決定結果に応じて異なる割合で所定画像の少なくとも一部の表示態様を異なる表示態様で表示し,
F 前記変更演出実行手段は,前記報知演出実行手段により実行された前記画像表示演出における所定画像の表示態様を示す演出を,該表示した演出態様に対して所定の作用を実行して所定画像の一部の表示態様がより前記有利状態に制御される可能性が高い表示態様となる所定画像を示す演出に変更して表示することにより,前記有利状態となる可能性が高いことを報知し,
G 前記変更演出実行手段により前記報知演出の演出態様を示す演出が特定態様を示す演出に変更されるときと,前記報知演出実行手段により実行される前記報知演出の演出態様が前記特定態様となるときとで,前記有利状態に制御される期待度が異なる,
H ことを特徴とする遊技機。」

(2)刊行物に記載された事項
原査定の拒絶理由に引用された本願の出願遡及日前に頒布された特開2011-87667号公報(以下,「刊行物」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の識別情報による変動表示ゲームを表示する変動表示装置を備え,乱数の抽選結果が特別結果となった場合に,前記変動表示ゲームの結果態様を特別結果態様にするとともに遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生するようにした遊技機において,
前記変動表示ゲームの演出を前記乱数の抽選結果に基づき制御することで,該変動表示ゲームが前記特別結果態様となる信頼度を示唆する演出を実行する演出制御手段と,
特定領域へ至った遊技球を検出する遊技球検出手段と,
を備え,
前記演出制御手段は,前記変動表示ゲームの実行中に前記遊技球検出手段が遊技球を検出した場合に,当該変動表示ゲームにおいて既に実行した演出よりも前記信頼度の高い演出を実行可能としたことを特徴とする遊技機。」

(イ)「【0007】
ここで,「特定領域」は,遊技領域に配設された入賞口(賞球が付与されるもの)でも良いし,通過ゲート(賞球が付与されない)でも良い。また,アウト口に流入した後に遊技球が流下する遊技領域以外の領域等,結果が出た後の領域に設定しても良い。
また,「信頼度」とは,変動表示ゲームの結果が特別結果態様となる可能性の高さである。%表示等の数値表示だけではなく,信頼度が異なる段階的な表示を複数備え,当該表示が進行した段階により示すものも含む。
また,「信頼度を示唆する演出」とは,明確に信頼度を報知する演出の他,明確ではないが信頼度の高さを類推(例えば,演出間の相対的な判断から)できる程度に報知する演出も含む。
また,遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づき実行される演出は,既に実行した演出を最初からやり直すようにしても良いし,既に実行した演出のつづきを実行するようにしても良い。」

(ウ)「【0064】
また,遊技制御装置30では,第1始動入賞口13に備えられた特図1始動口SW13aからの遊技球の検出信号の入力に基づき,特図1変動表示ゲームの大当り乱数を抽出してRAM31cに所定の上限数(例えば4)まで特図1始動記憶として記憶する処理を行う。同様に,変動始動入賞装置7に備えられた特図2始動口SW7dからの遊技球の検出信号の入力に基づき,特図2変動表示ゲームの大当り乱数を抽出してRAM31cに所定の上限数(例えば4)まで特図2始動記憶として記憶する処理を行う。
・・・
【0066】
また,特図1始動記憶に基づく特図1変動表示ゲームの開始時に,特図1始動記憶に記憶されている大当り乱数をROM31bに記憶されている特図1変動表示ゲーム用の大当り判定値(特定値)と比較し,特図1変動表示ゲームの当りはずれを判定する処理を行う。また,この処理の後に特図1始動記憶数を1減算する。同様に,特図2始動記憶に基づく特図2変動表示ゲームの開始時に,特図2始動記憶に記憶されている大当り乱数をROM31bに記憶されている特図2変動表示ゲーム用の大当り判定値(特定値)と比較し,特図2変動表示ゲームの当りはずれを判定する処理を行う。また,この処理の後に特図2始動記憶数を1減算する。また,特図1始動記憶及び特図2始動記憶の何れの処理においても,変動パターン乱数に基づき変動パターン(リーチ状態の有無やリーチの種類)を決定する処理も行う。また,大当り乱数が大当り判定値と一致する場合には,大当り図柄乱数に基づき特別結果態様を選択する処理を行う。」

(エ)「【0074】
また,演出制御装置40では,遊技制御装置30からの指令信号(変動時間コマンド,変動停止コマンド等)に基づき,表示装置43で特図変動表示ゲームに対応した飾り特図変動表示ゲームを表示する処理や,演出の制御を行う。
・・・
【0078】
特図変動表示ゲームが開始されると,リーチ状態となるまでの前半変動時間において予告演出として初期演出が実行される(図3のt1からt2)。この初期演出は,複数の単位演出からなり当該単位演出が順次進行することで,結果が特別結果態様となる可能性の高さである信頼度が高まるステップアップ演出となっている。この実施形態でのステップアップ演出で実行可能な段階は4段階(ステップ4まで)であり,下位の段階(ステップ1)から所定の段階まで順次実行される。すなわち,より上位の段階まで進行すれば信頼度が高いことが示唆されることとなる。また,各段階の演出は,例えば,図4(b),(c)に示すように,段階に応じた単位演出をなす予告画像53を順次表示することで実行される。この例では初期演出として2段階目まで実行されるステップアップ演出が実行されている。
【0079】
前半変動時間が終了し,図4(d)に示すように変動表示している識別情報の一部が停止してリーチ状態となると,演出用ゲートSW46での遊技球の検出が有効となる有効期間が開始される(図3のt2)。有効期間の長さである有効時間には,長さが異なる複数種類の有効時間が用意されており,この複数種類の有効時間から一つが選択されて設定される。なお,再演出を行う必要があるため,有効期間はSPリーチ表示の開始(図3のt4)よりも前に終了するようにされている。
【0080】
有効期間が開始されると,図4(e)に示すように,演出用ゲート17を狙うように指示する文字情報54が表示部43aに表示される。また,有効期間の残り時間を報知する残り時間表示55もなされる。さらに,リプレイLED23を点灯させることにより演出用ゲート17を狙うように指示する報知も行われる。
【0081】
有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出せずに有効期間が終了した際には,図4(f)に示すように有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出しなかった旨を報知する文字情報56を表示部43aに表示する。なお,有効期間の終了は残り時間表示55が0秒となることで報知される。
【0082】
一方,有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出した場合は,停止していた識別情報を再度変動表示するとともに,SPリーチ表示が開始されるまでの期間において再演出が実行される(図3のt3からt4)。この再演出では,図4(g),(h)に示すように,前半変動時間での初期演出と同様のステップアップ演出が行われるが,初期演出でのステップアップ演出で実行された段階数(この例では2段階)以上の段階数,すなわち,信頼度が同じもしくは高い段階までステップアップ演出を実行する(この例では4段階)。これにより,仮に初期演出で信頼度が低く遊技者の期待感を高められない演出が行われた場合でも,その後の再演出で信頼度の高い演出が実行される可能性があるので,信頼度の低い演出が実行された時点で遊技者の期待感が低下してしまうといった課題を解決でき,遊技者の遊技に対する興趣と共に期待感を高めることができる。また,演出用ゲートSW46が遊技球を検出することを契機に演出が行われるので,所謂止め打ちを防止することができ遊技機の稼働率を高めることができる。なお,後述するように結果が特別結果態様である場合は,初期演出でのステップアップ演出で実行された段階数よりも少ない段階数のステップアップ演出を実行可能である。」

(オ)「【0089】
次に,初期演出におけるステップアップ演出で実行する段階数である初期ステップを決定する処理(ステップS4)を行う。初期ステップを決定する処理(ステップS4)では,結果情報を取得する処理(ステップS2)で取得した特図変動表示ゲームの結果及び有効時間を決定する処理(ステップS3)で決定された有効時間に基づき初期ステップを決定する。
【0090】
具体的には,図7に示すような割合となっており,例えば,図7(a)に示すように,結果が外れの場合であって選択された有効時間が5秒である場合は,初期ステップとして1が選択される確率が60%,2が選択される確率が35%,3が選択される確率が5%,4が選択される確率が0%となっている。この初期ステップの選択においては同じ長さの有効時間が選択されていても,図7(a)に示す結果がはずれの場合よりも図7(b)に示す結果が当りの場合の方が,初期ステップが多くなるようにされている。例えば,上述した図7(a)に示す結果が外れの場合であって選択された有効時間が5秒である場合に対して,図7(b)に示すように結果が当りの場合であって選択された有効時間が5秒である場合は,初期ステップとして1が選択される確率が50%,2が選択される確率が40%,3が選択される確率が7%,4が選択される確率が3%となっている。これにより,初期演出におけるステップアップ演出での段階数により,特別結果態様となる可能性の高さである信頼度が遊技者に報知されることとなる。
【0091】
また,図7(a)に示す結果がはずれの場合及び図7(b)に示す結果が当りの場合の何れにおいても,決定された有効時間が長い方が,初期ステップが多くなるようにされている。例えば,上述した図7(a)に示す結果が外れの場合であって選択された有効時間が5秒である場合に対して,結果が外れの場合であって選択された有効時間が20秒である場合は,初期ステップとして1が選択される確率が30%,2が選択される確率が45%,3が選択される確率が18%,4が選択される確率が7%となっている。これにより,初期演出におけるステップアップ演出で信頼度の高い演出(段階数の多い演出)が行われて期待感が高められた場合に再演出が実行され易くすることができ,遊技者の期待感をさらに高めることができる。
【0092】
その後,再演出でのステップアップ演出で実行する演出の段階数である再ステップを決定する処理(ステップS5)を行い,演出表示決定処理を終了する。再ステップを決定する処理(ステップS5)では,結果情報を取得する処理(ステップS2)で取得した特図変動表示ゲームの結果及び初期ステップを決定する処理(ステップS4)で決定された初期ステップに基づき再ステップを決定する。
【0093】
具体的には,図8に示すような割合となっており,例えば,図8(a)に示すように結果が外れの場合であって初期ステップが1である場合に,再ステップとして1が選択される確率が20%,2が選択される確率が70%,3が選択される確率が10%,4が選択される確率が0%となっている。この再ステップの選択においては,図8(a)に示す結果がはずれの場合よりも図8(b)に示す結果が当りの場合の方が,初期ステップが同じであっても再ステップが多くなるようにされている。すなわち,図8(a)に示す結果がはずれの場合よりも図8(b)に示す結果が当りの場合の方が,初期ステップと再ステップの差が大きくなり易くされている。例えば,上述した図8(a)に示す結果が外れの場合であって初期ステップが1である場合に対して,図8(b)に示すように結果が当りの場合であって初期ステップが1である場合は,再ステップとして1が選択される確率が5%,2が選択される確率が70%,3が選択される確率が20%,4が選択される確率が5%となっている。これにより,再演出におけるステップアップ演出で実行される段階数及び初期演出におけるステップアップ演出の段階数との差により,特別結果態様となる可能性の高さである信頼度が遊技者に報知されることとなる。」

上記記載事項(ア)?(オ)及び図4,7?8より,以下の事項が導かれる。

(カ)上記(ア)の【請求項1】には,変動表示ゲームの結果態様を特別結果態様にする遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生する点,上記(ウ)の段落【0064】,【0066】には,遊技制御装置30では,特図1変動表示ゲーム又は特図2変動表示ゲームの当りはずれを判定する処理を行う点が記載されているから,刊行物には,特別遊技状態を発生するか否かの変動表示ゲームの当りはずれを判定する遊技制御装置30が記載されているといえる。

(キ)上記(ア)の【請求項1】には,変動表示ゲームの結果態様を特別結果態様にする遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生する点,上記(エ)の段落【0074】には,演出制御装置40では演出の制御を行う点,段落【0078】には,特図変動表示ゲームが開始されると,リーチ状態となるまでの前半変動時間において予告演出として初期演出が実行される点,初期演出は,複数の単位演出が順次進行することで,結果が特別結果態様となる可能性の高さである信頼度が高まるステップアップ演出となっている点,ステップアップ演出で下位の段階から所定の段階まで順次実行される点,各段階の演出は,段階に応じた予告画像53を順次表示することで実行される点,初期演出として2段階目まで実行される点,が記載されており,また,上記(エ)の段落【0078】,【0080】を参酌すると,図4(b)には,表示部43aの右上に「STEP1」と記載された予告画像53が表示された点が図示され,図4(c)には,図4(b)の表示部43aの右上の「STEP1」と記載された予告画像53の左側に,「STEP2」と記載された予告画像53が追加表示された点が図示されている。
したがって,刊行物には,変動表示ゲームが開始されてからリーチ状態となるまでに,段階が順次進行し,段階に応じた予告画像53を順次追加表示することで,2段階目まで実行し,特別遊技状態となる可能性の高さを示す信頼度が高まるステップアップ演出である初期演出を実行する演出制御装置40が記載されているといえる。

(ク)上記(イ)の段落【0007】には,遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づき実行される演出は,既に実行した演出のつづきを実行するようにしても良い点,上記(エ)の段落【0078】には,初期演出として2段階目まで実行される点,段落【0078】?【0079】,【0082】には,初期演出(前半変動時間)が終了した後,図4(d)に示すようにリーチ状態となると,有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出した場合は,停止していた識別情報を再度変動表示するとともに,再演出が実行される点,再演出では,初期演出と同様のステップアップ演出が行われるが,初期演出でのステップアップ演出で実行された2段階以上の信頼度が高い4段階までステップアップ演出を実行する点,が記載されており,また,上記(エ)の段落【0078】?【0080】,【0082】を参酌すると,図4(d)には,初期演出が終了した後,リーチ状態となって,図4(c)と同様の表示部43aの右上の「STEP1」と記載された予告画像53の左側に,「STEP2」と記載された予告画像53が追加表示されることにより,表示部43aの右上から左側に「STEP1」,「STEP2」と記載された予告画像53が表示された点が図示され,図4(h)には,図4(c)の表示部43aの右上の「STEP2」と記載された予告画像53の左側に,「STEP3」,「STEP4」と記載された予告画像53が追加表示されることにより,表示部43aの右上から左側に「STEP1」,「STEP2」,「STEP3」,「STEP4」と記載された予告画像53が表示された点が図示されている。
そして,再演出で既に実行した演出のつづきを実行するということは,初期演出の最終段階からステップアップするようにつづきの演出が実行されることであるといえるから,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53のつづきとなる信頼度が高い4段階目までの予告画像53を順次追加表示するステップアップ演出を実行するといえる。
したがって,上記(エ)の段落【0074】に,演出制御装置40では演出の制御を行う点が記載されていることから,刊行物には,初期演出が終了した後,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53を表示したリーチ状態となった後に,有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出すると,リーチ態様で停止していた識別情報を再度変動表示して,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53のつづきとなる信頼度が高い4段階目までの予告画像53を順次追加表示するステップアップ演出である再演出を実行する演出制御装置40が記載されているといえる。

(ケ)上記(キ)に示したように,図4(b)には,表示部43aの右上に「STEP1」と記載された予告画像53が表示された点が図示され,図4(c)には,図4(b)の表示部43aの右上の「STEP1」と記載された予告画像53の左側に,「STEP2」と記載された予告画像53が追加表示された点が図示され,上記(ク)に示したように,図4(h)には,図4(c)の表示部43aの右上の「STEP2」と記載された予告画像53の左側に,「STEP3」,「STEP4」と記載された予告画像53が追加表示された点が図示されており,上記(エ)の段落【0078】には,各段階の演出は,段階に応じた予告画像53を順次表示することで実行される点,が記載されているから,刊行物には,予告画像53を表示する各段階の演出を実行するときは,段階に応じた予告画像53(「STEP1」?「STEP4」)を表示部43aの右上から左側に順次追加表示されることが記載されているといえる。
そして,上記(エ)の段落【0074】には,演出制御装置40では演出の制御を行う点,段落【0078】には,初期演出は,複数の単位演出が順次進行することで,結果が特別結果態様となる可能性の高さである信頼度が高まるステップアップ演出となっている点,図4(b),(c)に示すように,段階に応じた予告画像53を順次表示する初期演出としてのステップアップ演出が実行される点,上記(ウ)の段落【0064】,【0066】には,遊技制御装置30では,特図1変動表示ゲーム又は特図2変動表示ゲームの当りはずれを判定する処理を行う点,上記(オ)の段落【0089】には,特図変動表示ゲームの結果に基づき初期演出におけるステップアップ演出で実行する段階数である初期ステップを決定する点,段落【0090】には,はずれの場合よりも当りの場合の方が,初期ステップが多くなる点が,記載されているから,刊行物には,演出制御装置40は,初期演出として,各段階の演出を順次実行するステップアップ演出が実行可能であり,各段階の演出を順次実行するときは,遊技制御装置30の変動表示ゲームの判定がはずれの場合よりも当りの場合の方が,初期ステップが多くなる点が記載されているといえる。
したがって,刊行物には,演出制御装置40は,初期演出として,予告画像53を表示する各段階の演出を順次実行するステップアップ演出が実行可能であり,予告画像53を表示する各段階の演出を順次実行するときは,遊技制御装置30の変動表示ゲームの判定がはずれの場合よりも当りの場合の方が,実行する段階数が多くなるように,段階に応じた予告画像53(「STEP1」?「STEP4」)を表示部43aの右上から左側に順次追加表示する点が記載されているといえる。

(コ)上記(イ)の段落【0007】には,遊技球検出手段が遊技球を検出したことに基づき実行される演出は,既に実行した演出のつづきを実行するようにしても良い点,上記(エ)の段落【0074】には,演出制御装置40では演出の制御を行う点,段落【0078】には,ステップアップ演出で下位の段階から所定の段階まで順次実行される点,図4(b),(c)に示すように,段階に応じた予告画像53を順次表示する初期演出としてのステップアップ演出が2段階目まで実行される点,段落【0078】?【0079】,【0082】には,初期演出(前半変動時間)が終了した後,リーチ状態となると,有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出した場合は,停止していた識別情報を再度変動表示するとともに,再演出が実行される点,再演出では,初期演出と同様のステップアップ演出が行われるが,初期演出でのステップアップ演出で実行された2段階以上の信頼度が高い4段階までステップアップ演出を実行する点,上記(オ)の段落【0090】には,ステップアップ演出での段階数により,特別結果態様となる可能性の高さである信頼度が報知される点,上記(ア)の【請求項1】には,抽選結果が特別結果となった場合に,変動表示ゲームの結果態様を特別結果態様にするとともに特別遊技状態を発生する点,が記載されている。
また,上記(ク)に示したように,図4(d)には,初期演出が終了した後,リーチ状態となって,図4(c)と同様の表示部43aの右上から左側に「STEP1」,「STEP2」と記載された予告画像53が表示された点,図4(h)には,表示部43aの右上から左側に「STEP1」,「STEP2」,「STEP3」,「STEP4」と記載された予告画像53が表示された点が図示されていると共に,図4(c)(d)(h)の図示内容,及び上記(エ)の段落【0078】,【0082】の記載を参照すると,図4(c)(d)は2段階目であり,図4(h)は4段階目であるといえる。
そして,再演出で既に実行した演出のつづきを実行するということは,上記(ク)で述べたように,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53のつづきとなる信頼度が高い4段階目までの予告画像53を順次追加表示するステップアップ演出を実行するといえる。
したがって,刊行物には,演出制御装置40は,初期演出が終了し,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53である表示部43aの右上から左側に「STEP1」,「STEP2」と記載された予告画像53を表示したリーチ状態となった後に,有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出すると,リーチ態様で停止していた識別情報を再度変動表示して,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53のつづきとなる信頼度が高い4段階目である表示部43aの右上から左側に「STEP1」,「STEP2」,「STEP3」,「STEP4」と記載された予告画像53になるまでステップアップ演出である再演出を実行することにより,特別遊技状態となる可能性が高いことを報知する点が記載されているといえる。

(サ)図7(b)のテーブルには,上記(オ)の段落【0089】?【0090】を参酌すると,特別遊技状態が発生する当りの場合における,有効時間毎の初期演出におけるステップアップ演出で実行する段階数である初期ステップの選択比率が示されており,図8(b)のテーブルには,段落【0092】?【0093】の記載を参酌すると,特別遊技状態が発生する当りの場合における,初期ステップ毎の再演出でのステップアップ演出で実行する演出の段階数である再ステップの選択確率が示されている。
そして,図7(b)を参照すると,特別遊技状態が発生する当りの場合,かつ,有効時間が20秒の場合において初期演出で実行する段階が1となるのは20%,2となるのは55%,3となるのは15%,4となるのは10%と示されている。また,図8(b)を参照すると,特別遊技状態が発生する当りの場合,かつ,初期演出で実行する段階が1の場合に再演出で実行する段階が4となるのは5%,初期演出で実行する段階が2の場合に再演出で実行する段階が4となるのは15%,初期演出で実行する段階が3の場合に再演出で実行する段階が4となるのは90%と示されている。
以上のことから,特別遊技状態が発生する当りの場合,かつ,有効時間が20秒の場合において,初期演出で段階が4となるのは10%,初期演出で段階が1?3の場合で再演出で段階が4となるのは22.75%(=20×0.05+55×0.15+15×0.9)であるといえる。
したがって,刊行物には,初期演出ではステップアップ演出の4段階が実行されず再演出でステップアップ演出の4段階が実行されるときと,初期演出でステップアップ演出の4段階が実行されるときとで,特別遊技状態となる可能性の高さを示す信頼度が異なることが記載されているといえる。

上記の記載事項(ア)?(オ)及び上記の認定事項(カ)?(サ)から,刊行物には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「a 変動表示ゲームを表示する変動表示装置を備え,乱数の抽選結果が特別結果となった場合に,前記変動表示ゲームの結果態様を特別結果態様にするとともに遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生するようにした遊技機において(【請求項1】),
b 特別遊技状態を発生するか否かの変動表示ゲームの当りはずれを判定する遊技制御装置30と(認定事項(カ)),
c 変動表示ゲームが開始されてからリーチ状態となるまでに,段階が順次進行し,段階に応じた予告画像53を順次追加表示することで,2段階目まで実行し,特別遊技状態となる可能性の高さを示す信頼度が高まるステップアップ演出である初期演出を実行する演出制御装置40と(認定事項(キ)),
d 初期演出が終了した後,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53を表示したリーチ状態となった後に,有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出すると,リーチ態様で停止していた識別情報を再度変動表示して,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53のつづきとなる信頼度が高い4段階目までの予告画像53を順次追加表示するステップアップ演出である再演出を実行する演出制御装置40と,を備え(認定事項(ク)),
e 演出制御装置40は,初期演出として,予告画像53を表示する各段階の演出を順次実行するステップアップ演出が実行可能であり,予告画像53を表示する各段階の演出を順次実行するときは,遊技制御装置30の変動表示ゲームの判定がはずれの場合よりも当りの場合の方が,実行する段階数が多くなるように,段階に応じた予告画像53(「STEP1」?「STEP4」)を表示部43aの右上から左側に順次追加表示し(認定事項(ケ)),
f 演出制御装置40は,初期演出が終了し,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53である表示部43aの右上から左側に「STEP1」,「STEP2」と記載された予告画像53を表示したリーチ状態となった後に,有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出すると,リーチ態様で停止していた識別情報を再度変動表示して,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53のつづきとなる信頼度が高い4段階目である表示部43aの右上から左側に「STEP1」,「STEP2」,「STEP3」,「STEP4」と記載された予告画像53になるまでステップアップ演出である再演出を実行することにより,特別遊技状態となる可能性が高いことを報知し(認定事項(コ)),
g 初期演出ではステップアップ演出の4段階が実行されず再演出でステップアップ演出の4段階が実行されるときと,初期演出でステップアップ演出の4段階が実行されるときとで,特別遊技状態となる可能性の高さを示す信頼度が異なる(認定事項(サ)),
h 遊技機(【請求項1】)。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(a)引用発明の「変動表示ゲームを表示する」ことは,本願補正発明の「可変表示を行」うことに相当する。また,引用発明の「遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生する」ことは,本願補正発明の「遊技者にとって有利な有利状態に制御する」ことに相当する。
したがって,引用発明の「変動表示ゲームを表示する変動表示装置を備え,乱数の抽選結果が特別結果となった場合に,前記変動表示ゲームの結果態様を特別結果態様にするとともに遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生するようにした遊技機」は,本願補正発明の「可変表示を行い,遊技者にとって有利な有利状態に制御する遊技機」に相当する。

(b)引用発明の「特別遊技状態を発生するか否かの変動表示ゲームの当りはずれを判定する」ことは,本願補正発明の「有利状態に制御するか否かを決定する」ことに相当する。
このことから,引用発明の「特別遊技状態を発生するか否かの変動表示ゲームの当りはずれを判定する遊技制御装置30」は,本願補正発明の「前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段」に相当する。

(c)引用発明の「変動表示ゲームが開始されてからリーチ状態となるまで」の期間は,本願補正発明の「可変表示が開始されてから表示結果が導出されるまで」の期間に含まれる。
また,引用発明の「段階が順次進行し,段階に応じた予告画像53を順次追加表示することで,2段階目まで実行し,特別遊技状態となる可能性の高さを示す信頼度が高まるステップアップ演出である初期演出」は,本願補正発明の「演出態様に応じて前記有利状態に制御される可能性を報知する報知演出」に相当する。
これらのことから,引用発明の「変動表示ゲームが開始されてからリーチ状態となるまでに,段階が順次進行し,段階に応じた予告画像53を順次追加表示することで,2段階目まで実行し,特別遊技状態となる可能性の高さを示す信頼度が高まるステップアップ演出である初期演出を実行する演出制御装置40」は,本願補正発明の「可変表示が開始されてから表示結果が導出されるまでに,演出態様に応じて前記有利状態に制御される可能性を報知する報知演出を実行可能な報知演出実行手段」に相当する機能を有する。

(d)引用発明の「初期演出が終了した後」の「リーチ状態となった」タイミングは,本願補正発明の「前記報知演出が終了した後の特定タイミング」に相当する。
また,引用発明の「既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53を表示」することは,本願補正発明の「前記報知演出実行手段により実行された前記報知演出の演出態様を示す演出を表示」することに相当するから,引用発明の「既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53を表示したリーチ状態となった後」は,本願補正発明の「前記報知演出実行手段により実行された前記報知演出の演出態様を示す演出を表示した後」に相当する。
そして,引用発明の「既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53のつづきとなる信頼度が高い4段階目までの予告画像53を順次追加表示する」ことは,本願補正発明の「前記有利状態に制御される可能性がより高い演出態様を示す演出に変更して表示する」ことに相当する。
ここで,本願補正発明における「該表示した演出態様に対して所定の作用を実行することにより前記有利状態に制御される可能性がより高い演出態様を示す演出に変更して表示する」とは,上記「2.(3)新規事項 イ」で示したように,当初明細書等から示唆される,表示した演出態様に対して「一旦左下に小さく表示し,矢印によって,変更された演出画像(ステップ4の演出態様)へと導」く構成を一般的表現にしたものであるから,本願補正発明の表示した演出態様に対する「所定の作用」は,一般的表現故,様々な演出を含むものとなっている。
そうすると,引用発明の「既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53を表示したリーチ状態」という演出に対して,「有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出すると,リーチ態様で停止していた識別情報を再度変動表示」することは「所定の作用を実行」しているといえるため,引用発明の「既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53を表示したリーチ状態となった後に,有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出すると,リーチ態様で停止していた識別情報を再度変動表示」することは,本願補正発明の「前記報知演出実行手段により実行された前記報知演出の演出態様を示す演出を表示した後に,該表示した演出態様に対して所定の作用を実行すること」に相当するといえる。
したがって,引用発明の「初期演出が終了した後,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53を表示したリーチ状態となった後に,有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出すると,リーチ態様で停止していた識別情報を再度変動表示して,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53のつづきとなる信頼度が高い4段階目までの予告画像53を順次追加表示するステップアップ演出である再演出を実行する演出制御装置40」は,本願補正発明の「前記報知演出が終了した後の特定タイミングにて,前記報知演出実行手段により実行された前記報知演出の演出態様を示す演出を表示した後に,該表示した演出態様に対して所定の作用を実行することにより前記有利状態に制御される可能性がより高い演出態様を示す演出に変更して表示する変更演出実行手段」に相当するといえる。

(e)引用発明の「初期演出」,「予告画像53を表示する各段階の演出」及び「遊技制御装置30の変動表示ゲームの判定がはずれ」「当り」であることは,それぞれ,本願補正発明の「報知演出」,「所定画像を表示する画像表示演出」及び「決定手段の決定結果」に相当する。
また,引用発明の「初期演出として,予告画像53を表示する各段階の演出を順次実行するステップアップ演出が実行可能であり」及び「予告画像53を表示する各段階の演出を順次実行するときは」は,本願補正発明の「前記報知演出として,所定画像を表示する画像表示演出を実行可能であり」及び「該画像表示演出を実行するときは」に相当する。
そして,引用発明の「段階に応じた予告画像53(「STEP1」?「STEP4」)を表示部43aの右上から左側に順次追加表示」することは,「(2)刊行物に記載された事項 (ケ)」に示したように,表示部43aの右上の「STEP1」と記載された予告画像53の左側に,「STEP2」と記載された予告画像53が追加表示されことであり,今まで表示されていた予告画像53の表示を維持しながら,今まで表示されていた予告画像53の左側に新たな予告画像53を追加表示することであるから,新たな予告画像53を追加表示することにより,予告画像53が表示可能な領域全体に表示されている予告画像53の少なくとも一部の表示態様を異なる表示態様で表示したものであるといえるので,本願補正発明の「所定画像の少なくとも一部の表示態様を異なる表示態様で表示」することに相当するといえる。
加えて,引用発明の「遊技制御装置30の変動表示ゲームの判定がはずれの場合よりも当りの場合の方が,実行する段階数が多くなるように,段階に応じた予告画像53(「STEP1」?「STEP4」)を表示部43aの右上から左側に順次追加表示」することは,変動表示ゲームの判定の結果であるはずれになるか当りになるかに応じて,異なる割合で表示部43aの右上から左側に「STEP1」?「STEP4」を表示する数が異なる表示態様で表示されるといえるから,本願補正発明の「前記決定手段の決定結果に応じて異なる割合で所定画像の少なくとも一部の表示態様を異なる表示態様で表示」することに相当するといえる。
したがって,引用発明の「演出制御装置40は,初期演出として,予告画像53を表示する各段階の演出を順次実行するステップアップ演出が実行可能であり,予告画像53を表示する各段階の演出を順次実行するときは,遊技制御装置30の変動表示ゲームの判定がはずれの場合よりも当りの場合の方が,実行する段階数が多くなるように,段階に応じた予告画像53(「STEP1」?「STEP4」)を表示部43aの右上から左側に順次追加表示し」は,本願補正発明の「前記報知演出実行手段は,前記報知演出として,所定画像を表示する画像表示演出を実行可能であり,該画像表示演出を実行するときは,前記決定手段の決定結果に応じて異なる割合で所定画像の少なくとも一部の表示態様を異なる表示態様で表示し」に相当する。

(f)引用発明の「既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53である表示部43aの右上から左側に「STEP1」,「STEP2」と記載された予告画像53」の「表示」,及び「有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出すると,リーチ態様で停止していた識別情報を再度変動表示」することは,それぞれ,本願補正発明の「前記報知演出実行手段により実行された前記画像表示演出における所定画像の表示態様を示す演出」,及び「所定の作用を実行」に相当する。
また,引用発明の「既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53のつづきとなる信頼度が高い4段階目である表示部43aの右上から左側に「STEP1」,「STEP2」,「STEP3」,「STEP4」と記載された予告画像53になるまでステップアップ演出である再演出を実行することにより,特別遊技状態となる可能性が高いことを報知する」ことは,本願補正発明の「所定画像の一部の表示態様がより前記有利状態に制御される可能性が高い表示態様となる所定画像を示す演出に変更して表示することにより,前記有利状態となる可能性が高いことを報知」することに相当する。
したがって,引用発明の「演出制御装置40は,初期演出が終了し,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53である表示部43aの右上から左側に「STEP1」,「STEP2」と記載された予告画像53を表示したリーチ状態となった後に,有効期間において演出用ゲートSW46で遊技球を検出すると,リーチ態様で停止していた識別情報を再度変動表示して,既に実行した初期演出の2段階目の予告画像53のつづきとなる信頼度が高い4段階目である表示部43aの右上から左側に「STEP1」,「STEP2」,「STEP3」,「STEP4」と記載された予告画像53になるまでステップアップ演出である再演出を実行することにより,特別遊技状態となる可能性が高いことを報知し」は,本願補正発明の「前記変更演出実行手段は,前記報知演出実行手段により実行された前記画像表示演出における所定画像の表示態様を示す演出を,該表示した演出態様に対して所定の作用を実行して所定画像の一部の表示態様がより前記有利状態に制御される可能性が高い表示態様となる所定画像を示す演出に変更して表示することにより,前記有利状態となる可能性が高いことを報知し」に相当する。

(g)上記(c)及び(d)で検討したことを参酌すると,引用発明の「初期演出」及び「再演出」は,それぞれ本願補正発明の「前記報知演出実行手段により実行される前記報知演出の演出態様」及び「前記変更演出実行手段によ」る「前記報知演出の演出態様」に,相当する。
また,引用発明の「ステップアップ演出の4段階」は,本願補正発明の「特定態様」に相当し,引用発明の「特別遊技状態となる可能性の高さを示す信頼度」は,本願補正発明の「前記有利状態に制御される期待度」に相当する。
以上のことから,引用発明の「初期演出ではステップアップ演出の4段階が実行されず再演出でステップアップ演出の4段階が実行されるときと,初期演出でステップアップ演出の4段階が実行されるときとで,特別遊技状態となる可能性の高さを示す信頼度が異なる」ことは,本願補正発明の「前記変更演出実行手段により前記報知演出の演出態様を示す演出が特定態様を示す演出に変更されるときと,前記報知演出実行手段により実行される前記報知演出の演出態様が前記特定態様となるときとで,前記有利状態に制御される期待度が異なる」ことに相当する。

(h)引用発明の「遊技機」は,本願補正発明の「遊技機」に相当する。

以上,上記(a)から(h)により,本願補正発明と引用発明とは,
「A 可変表示を行い,遊技者にとって有利な有利状態に制御する遊技機であって,
B 前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段と,
C 可変表示が開始されてから表示結果が導出されるまでに,演出態様に応じて前記有利状態に制御される可能性を報知する報知演出を実行可能な報知演出実行手段と,
D 前記報知演出が終了した後の特定タイミングにて,前記報知演出実行手段により実行された前記報知演出の演出態様を示す演出を表示した後に,該表示した演出態様に対して所定の作用を実行することにより前記有利状態に制御される可能性がより高い演出態様を示す演出に変更して表示する変更演出実行手段とを備え,
E 前記報知演出実行手段は,前記報知演出として,所定画像を表示する画像表示演出を実行可能であり,該画像表示演出を実行するときは,前記決定手段の決定結果に応じて異なる割合で所定画像の少なくとも一部の表示態様を異なる表示態様で表示し,
F 前記変更演出実行手段は,前記報知演出実行手段により実行された前記画像表示演出における所定画像の表示態様を示す演出を,該表示した演出態様に対して所定の作用を実行して所定画像の一部の表示態様がより前記有利状態に制御される可能性が高い表示態様となる所定画像を示す演出に変更して表示することにより,前記有利状態となる可能性が高いことを報知し,
G 前記変更演出実行手段により前記報知演出の演出態様を示す演出が特定態様を示す演出に変更されるときと,前記報知演出実行手段により実行される前記報知演出の演出態様が前記特定態様となるときとで,前記有利状態に制御される期待度が異なる,
H ことを特徴とする遊技機。」
である点で一致し,相違点はない。

したがって,本願補正発明は刊行物に記載された発明である。
仮に,刊行物に記載された発明でないとしても,本願補正発明は当該刊行物に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。

(4)請求人の主張について
請求人は,平成28年12月16日付け上申書において,旧請求項1,2を削除し,旧請求項3を新請求項1に改める補正を行う用意がある旨の主張をしている。
しかしながら,請求項1の補正を行う機会は,平成27年10月14日付け拒絶理由の通知後,及び,平成28年9月20日における拒絶査定不服審判の請求時にあり,また,同年11月7日付け前置報告は,上記拒絶理由及び同年6月15日付け拒絶査定で引用された刊行物を用いて,上記拒絶理由及び上記拒絶査定と同様の判断を示すものであって,新たな判断を示すものではない。
そして,審査段階の手続に瑕疵があったわけでもない。
以上のことから,審理の公平性の観点から請求人の主張を受け入れることはできない。

(5)まとめ
したがって,本願補正発明は,特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に基づいて特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって,本件補正は,特許法第17条の2第5項及び第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1?3に係る発明は,平成27年12月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,上記「第2[理由]1.本件補正の概要」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

1.刊行物
原査定の拒絶理由に引用された本願の出願遡及日前に頒布された刊行物の記載事項及び引用発明の認定については,上記「第2[理由]3.(2)刊行物に記載された事項」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
本願発明は,上記「第2[理由]」で検討した本願補正発明に対し,「変更演出実行手段」の「該表示した演出態様」を変更して表示することにおける,「(該表示した演出態様)に対して所定の作用を実行することにより」との限定,「変更演出実行手段」の「変更して表示すること」における,「該表示した演出態様に対して所定の作用を実行して」との限定を省くものである。
そうすると,上記「第2[理由]3.(3)対比・判断」において検討したのと同様に,本願発明と引用発明とは相違点はなく一致するといえる。
したがって,本願発明は刊行物に記載された発明である。
仮に,刊行物に記載された発明でないとしても,本願発明は当該刊行物に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-30 
結審通知日 2017-04-04 
審決日 2017-04-17 
出願番号 特願2014-195241(P2014-195241)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 廣瀬 貴理  
特許庁審判長 本郷 徹
特許庁審判官 瀬津 太朗
加舎 理紅子
発明の名称 遊技機  
代理人 木村 満  

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