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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1329007
審判番号 不服2016-14531  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-28 
確定日 2017-06-08 
事件の表示 特願2014-266630号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月11日出願公開、特開2016-123624号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月26日に出願されたものであって、平成27年11月25日付けで拒絶理由通知がなされ、平成28年1月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年7月25日付け(発送日:平成28年8月2日)で拒絶査定がなされ、これに対して平成28年9月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成28年9月28日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成28年9月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。

[理由]

1.本件補正の概要
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含む補正であり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、
補正前(平成28年1月13日付け手続補正)の
「【請求項1】
所定の演出を行う遊技機であって、
前記所定の演出にともない動く可動体は、
配線パターンを有するとともに、前記可動体の動きにともない変形する配線基板と、
前記配線基板の前記配線パターンと接続される接続端子を有し、当該配線基板上に設けられるコネクタとを備え、
前記配線基板の前記配線パターンは、
前記配線基板において前記コネクタが装着される装着領域にて、前記接続端子に接続される部分から第1方向に向けて延びる第1部と、
前記配線基板の前記装着領域にて前記第1部から延び、前記第1方向とは異なる第2方向に向けて延びる第2部と
を有することを特徴とする遊技機。」
から、
補正後(本件補正である平成28年9月28日付け手続補正)の
「【請求項1】
所定の演出を行う遊技機であって、
前記所定の演出にともない動く可動体は、
配線パターンを有するとともに、前記可動体の動きにともない変形する配線基板と、
前記配線基板の前記配線パターンと接続される接続端子を有し、当該配線基板上に設けられるコネクタと
を備え、
前記配線基板の前記配線パターンは、
前記配線基板において前記コネクタが装着され当該コネクタによって覆われる領域である装着領域にて、前記接続端子に接続される部分から第1方向に向けて延びる第1部と、
前記第1部から延びるとともに当該装着領域にて湾曲し前記第1方向とは異なる第2方向に向けて延びる第2部と
を有することを特徴とする遊技機。」
へ補正された(下線は補正箇所を示す。)。

2.補正の適否
上記補正事項は、「第1方向に向けて延びる第1部」と「前記配線基板の前記装着領域にて前記第1部から延び、前記第1方向とは異なる第2方向に向けて延びる第2部」を有する「配線パターン」について、「第1部」と「第2部」が延びる「装着領域」を、「当該コネクタによって覆われる領域である」ものに限定するととともに、「第2部」を「前記第1部から延びるとともに当該装着領域にて湾曲し第1方向とは異なる第2方向に向けて延びる」ものに限定する補正である。
また、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する限定的減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正は新規事項を追加するものではない。

3.独立特許要件
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)原査定の拒絶の理由において提示された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開2011-172698号公報(以下、「刊行物」という)には以下の記載がある。(下線は当審で付した。以下、同じ)

(ア) 「【0019】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、パチンコ遊技機の遊技盤(Ba)に設けられる可動演出装置において、
遊技盤の一部にその裏面側にて支持されて当該遊技盤の中央開口部(13)の裏面側へ延出する支持壁部材(220)と、
電飾手段(230)と、
複数の可動装飾体(240a、240b、240c)と、
駆動手段(270、260a?260c、250a?250c、245?247)とを備えて、
電飾手段は、
単一のフレキシブルプリント基板(230a)と、
複数の電飾作動部(R、G、B)をそれぞれ有する複数の電飾作動素子(236a、236b、237a、237b、238a、238b)と、
少なくとも1つのコネクタ部材(239a、239b)とを具備しており、
フレキシブルプリント基板は、
支持壁部材の裏面に支持される共通基板部(230c)と、
この共通基板部とは一体的に形成されるとともに当該共通基板部から互いに独立的に延出される複数の帯状独立基板部(230d?230f)とでもって構成されて、
上記共通基板部に内包される共通層部(231a)と、この共通層部とは一体的に形成されるとともに当該共通層部から互いに独立して並行に延出してそれぞれ上記複数の帯状独立基板部の各々に内包される各帯状独立層部(231b?231d)とにより構成してなる柔軟性電気絶縁層(231)と、
当該柔軟性電気絶縁層の一側面に沿い上記共通層部から上記複数の帯状独立層部にかけてそれぞれ独立的に延在するように柔軟性金属薄膜でもって形成してなる複数の一側配線であってそれぞれ互いに独立した並行な複数の信号配線部(232a?232c、233a?233c、234a?234c)からなる複数の一側配線(232?234)と、
上記共通層部の他側面に沿い設けられる共通配線部(235a)と、この共通配線部から延出されて上記複数の帯状独立層部に沿いそれぞれ設けられる複数の独立配線部(235b?235d)とを一体的に有するように、柔軟性金属薄膜でもって形成してなる他側配線(235)とを具備しており、
上記複数の帯状独立層部は、それぞれ、上記複数の独立配線部の各々の長手方向中間部位から各対応の上記複数の信号配線部の各長手方向中間部位に向けて凸な湾曲形状となるように、複数の可動装飾体の各々及びハウジングによって支持されており、
複数の可動装飾体は、駆動手段により可動的に支持されて、それぞれ、上記複数の帯状独立基板部の各々をその先端側部位(b、d、f)にて保持して、各対応の上記複数の信号配線部をその各長手方向中間部位の湾曲方向或いはその逆方向に変位させつつ移動するように、駆動手段により駆動されるようになっており、
複数の電飾作動素子は、それぞれ、上記複数の帯状独立基板部の上記各先端側部位に複数の一側配線側から上記複数の帯状独立基板部に搭載されて、各対応の上記複数の電飾作動部の各一側端子にて、各対応の上記複数の信号配線部の各々に接続され、各対応の上記複数の電飾作動部の各他側端子にて、上記複数の帯状独立層部の各々を介し、上記複数の独立配線部の各々に接続されており、
上記少なくとも1つのコネクタ部材は、上記複数の帯状独立基板部の上記各先端側部位に複数の一側配線側から搭載されて、各接続端子にて、それぞれ、上記複数の信号配線部の各々に接続されるとともに上記共通層部を介し上記共通配線部に接続されていることを特徴とする。」

(イ) 「【0087】
両一側コネクタ部材239a、239bは、それぞれ、外部回路(図示しない)から延出する複数の配線の各延出端部に接続してなる各他側コネクタ部材(図示しない)に嵌着されて電気的に当該各他側コネクタ部材と共に各コネクタを構成する。
【0088】
ここで、一側コネクタ部材239aは、図8及び図9にて示すごとく、フレキシブルプリント基板230aの共通基板部230cの右端部に絶縁被覆膜部h側から搭載されており、当該一側コネクタ部材239aは、その各正側コネクタピンにて、正側配線232の各信号配線部232a?232cの各延出端部及び正側配線233の各信号配線部233a?233cの各延出端部に絶縁被覆膜部hのうち電飾盤230の共通基板部230cの右端部に対する対応部位に形成したコネクタ用非被覆孔部(後述する)を介し半田付けにより電気的に接続されている。」

(ウ) 「【0101】
また、両一側コネクタ部材239a、239bのうち、一側コネクタ部材239aを、絶縁被覆膜部hのうち各両信号配線部231a?231c及び233a?233cの各延出端部に対応する上記コネクタ用非被覆孔部を通して当該各延出端部上に搭載するとともに、当該各延出端部に対し一側コネクタ部材239aの各コネクタピンをそれぞれ半田により接続する。」

(エ) 「【0144】
しかして、歯車部材260aが回転すると、円柱状突起部262が、歯車部材260aの回転に伴い、平歯車部261の軸周りに回転する。このため、板状案内部材250aは、円柱状突起部262によりその回転に伴い、U字状壁部252の内面に沿い押動されて摺動する。これにより、板状案内部材250aは、可動装飾体240aと共に、他側ハウジング部材220に沿い、図3にて図示位置からの突起部262の半回転に応じて下動し、また、当該突起部262の残りの半回転に応じて上動する。換言すれば、電飾盤230は、帯状独立基板部230dにて、可動装飾体240aの下動或いは上動に伴い湾曲しながら一対の発光ダイオード236a、236bと共に下動或いは上動する。・・・
【0147】
しかして、歯車部材260bが回転すると、円柱状突起部264が、歯車部材260bの回転に伴い、平歯車部263の軸周りに回転する。このため、板状案内部材250bは、円柱状突起部264によりその回転に伴い、長手楕円状壁部255の内面に沿い、押動されて摺動する。これにより、板状案内部材250bは、可動装飾体240bと共に、他側ハウジング部材220に沿い、図3にて図示位置からの突起部264の半回転に応じて下動し、また、当該突起部264の残りの半回転に応じて上動する。換言すれば、電飾盤230は、帯状独立基板部230eにて、可動装飾体240bの下動或いは上動に伴い湾曲しながら一対の発光ダイオード237a、237bと共に下動或いは上動する。・・・
【0149】
しかして、歯車部材260cが回転すると、円柱状突起部267が、歯車部材260cの回転に伴い、平歯車部267の軸周りに回転する。このため、板状案内部材250cは、円柱状突起部267によりその回転に伴い、U字状壁部258の内面に沿い押動されて摺動する。これにより、板状案内部材250cは、可動装飾体240cと共に、他側ハウジング部材220に沿い、図3にて図示位置からの突起部267の半回転に応じて下動し、また、当該突起部267の残りの半回転に応じて上動する。換言すれば、電飾盤230は、帯状独立基板部230fにて、可動装飾体240cの下動或いは上動に伴い湾曲しながら一対の発光ダイオード238a、238bと共に下動或いは上動する。」

(オ) 「【0189】
これにより、フレキシブルプリント基板230aは、複数の帯状独立基板部230d?230fにて上述のように変位するにあたり、複数の信号配線部232a?232c、233a?233c及び234a?234cを複数の負側独立配線部235b?235dの外側に位置させた状態で、各独立基板部230d?230fが上述のように湾曲状に変位する。
【0190】
このため、複数の帯状独立基板部230d?230fの上述の湾曲状変位による負荷は、複数の負側独立配線部235b?235dよりも各複数の信号配線部232a?232c、233a?233c及び234a?234cの方にて小さく作用する。従って、複数の信号配線部232a?232c、233a?233c及び234a?234cが、その長手方向湾曲部位にて、断線等の導通不良を招くことはない。」

上記(ア)?(エ)の記載事項から、以下の(カ)?(ケ)の事項が認定できる。

(カ) (ア)の記載事項から、上記刊行物には
「電飾手段230と、複数の可動装飾体240a、240b、240cとを備え、
上記電飾手段230は、単一のフレキシブルプリント基板230aと、コネクタ部材239aとを具備しており、
上記フレキシブルプリント基板230aは、支持壁部材の裏面に支持される共通基板部230cと、この共通基板部とは一体的に形成されるとともに当該共通基板部から互いに独立的に延出される複数の帯状独立基板部230d?230fとでもって構成され、
上記共通基板部に内包される共通層部231aから上記複数の帯状独立層部にかけてそれぞれ互いに独立した並行な信号配線部233a?233cからなる配線と、を具備して」いる「可動演出装置」を「遊技盤に設け」た「パチンコ遊技機」が記載されているといえる。

(キ) (イ)には「コネクタ部材239aは」「フレキシブルプリント基板230aの共通基板部230cの右端部に」「搭載されて」いることが記載されており、(ウ)には「コネクタ部材239aを」「信号配線部」「233a?233cの」「各延出端部上に搭載するとともに、当該各延出端部に対しコネクタ部材239aの各コネクタピンを」「半田により接続する」ことが記載されているから、上記刊行物には、「フレキシブルプリント基板230a」は「共通基板部230cの右端部」の「信号配線部233a?233cの各延出端部上に搭載され、当該各延出端部に対し各コネクタピンが半田により接続」されている「コネクタ部材239a」を有することが記載されているといえる。

(ク) (エ)には「電飾盤230は、帯状独立基板部230d?230fにて、可動装飾体240a?240cの下動或いは上動に伴い湾曲しながら」「下動或いは上動」することが記載されているから、上記刊行物には「各帯状独立基板部230d?230f」は「可動装飾体240a?240cの動きに伴い湾曲」することが記載されているといえる。

さらに、【図6】から、以下の(ケ)の事項が認定できる。

(ケ) 信号配線部233bの延出端部から延びる配線パターンは、信号配線部233aの延出端部を「つ」字形で囲むように配線されており、信号配線部233cの延出端部から延びる配線パターンは、信号配線部233bの外側において信号配線部233aの延出端部を「つ」字形で囲むように配線されていること、が看取できる。

そうすると、上記(ア)?(エ)の記載事項及び(カ)?(ケ)の認定事項から、上記刊行物には、
「可動演出装置を遊技機に設けたパチンコ機(認定事項(カ))であって、
上記可動演出装置は、電飾手段230と、複数の可動装飾体240a、240b、240cとを備え、
上記電飾手段230は、単一のフレキシブルプリント基板230aと、コネクタ部材239aとを具備しており、
上記フレキシブルプリント基板230aは、支持壁部材の裏面に支持される共通基板部230cと、この共通基板部230cとは一体的に形成されるとともに当該共通基板部230cから互いに独立的に延出される複数の帯状独立基板部230d?230fとでもって構成され、
上記共通基板部に内包される共通層部231aから上記複数の帯状独立層部230d?230fにかけてそれぞれ互いに独立した並行な信号配線部233a?233cからなる配線と、を具備しており(認定事項(カ))、
上記フレキシブルプリント基板230aは、共通基板部230cの右端部の信号配線部233a?233cの各延出端部上に搭載され、当該各延出端部に対し各コネクタピンが半田により接続されているコネクタ部材239aを有し(認定事項(キ))、上記フレキシブルプリント基板230aの各帯状独立基板部230d?230fは可動装飾体240a?240cの動きに伴い湾曲し(認定事項(ク))
信号配線部233bの延出端部から延びる配線パターンは、信号配線部233aの延出端部を「つ」字形で囲むように配線されており、信号配線部233cの延出端部から延びる配線パターンは、信号配線部233bの外側において信号配線部233aの延出端部を「つ」字形で囲むように配線されている(認定事項(ケ))、
パチンコ遊技機」

という発明(以下、「刊行物記載の発明」という)が記載されているものと認める。

(コ) また、上記(オ)の記載事項から、上記刊行物には「基板の変位による負荷は信号配線部にて小さく作用することで、信号配線部が断線等の導通不良を招くことはない」ことが記載されている(以下、「刊行物記載の事項」という)ものといえる。

(2)対比

本件補正発明と刊行物記載の発明とを対比する。

(A) 刊行物記載の発明の「可動演出装置を遊技盤に設けたパチンコ遊技機」について、可動演出装置は所定の演出を行うものであるから、本件補正発明の「所定の演出を行う遊技機」に相当する。

(B) まず、刊行物記載の発明の「可動体240a、240b、240cを備え」た「可動演出装置」は、本件補正発明の「可動体」に相当する。

(B-1) 刊行物記載の発明の「可動装飾体240a、240b、240cを備え」た「可動演出装置」は、「信号配線部233a?233cからなる配線」を具備し、「共通基板部230c」と「可動装飾体240a?240cの動きに伴い湾曲する」「各帯状独立基板部230d?230f」とでもって構成される「フレキシブルプリント基板230a」を備えていることから、該「信号配線部233a?233cからなる配線」、「フレキシブルプリント基板230a」は、それぞれ、本件補正発明の「所定の演出にともない動く可動体」に備えられた「配線パターン」、「可動体の動きにともない変形する配線基板」に相当する。

(B-2) また、刊行物記載の発明の「可動装飾体240a、240b、240cを備え」た「可動演出装置」における「フレキシブルプリント基板230a」は、「共通基板部230cの右端部であって信号配線部233a?233cの各延出端部上に搭載され」「当該各延出端部に対し各コネクタピン」「が半田により接続されているコネクタ部材239a」を有するといえるから、該「コネクタピン」、「コネクタ部材239」は、それぞれ、本件補正発明の「所定の演出にともない動く可動体」に備えられた「前記配線基板の前記配線パターンと接続される接続端子」、「接続端子を有し、当該配線基板上に設けられるコネクタ」に相当する。

(C) また、刊行物記載の発明の「信号配線部233a?233cからなる配線」は、「信号配線部233a?233cの各延出端部に対し各コネクタピンが半田により接続されて」おり、「信号配線部233bの延出端部から延びる配線パターンは、信号配線部233aの延出端部を「つ」字形で囲むように配線されており、信号配線部233cの延出端部から延びる配線パターンは、信号配線部233bの外側において信号配線部233aの延出端部を「つ」字形で囲むように配線されて」おり、刊行物記載の発明の「「つ」字形で囲む」ことは、本件補正発明の「湾曲する」ことに相当するから、本件補正発明の「前記配線基板の前記配線パターン」とは、「前記接続端子に接続される部分から第1方向に向けて延びる第1部」と、「前記第1部から延びるとともに湾曲し前記第1方向とは異なる第2方向に向けて延びる第2部とを有する」点で共通する。

以上のことから、本件補正発明と刊行物記載の発明は、
(一致点)
「所定の演出を行う遊技機であって、
前記所定の演出にともない動く可動体は、
配線パターンを有するとともに、前記可動体の動きにともない変形する配線基板と、
前記配線基板の前記配線パターンと接続される接続端子を有し、当該配線基板上に設けられるコネクタと
を備え、
前記配線基板の前記配線パターンは、
前記接続端子に接続される部分から第1方向に向けて延びる第1部と、
前記第1部から延びるとともに湾曲し前記第1方向とは異なる第2方向に向けて延びる第2部と
を有することを特徴とする遊技機。」
という点で一致する。

一方、両者は以下の点で相違する。
(相違点)
「配線基板の配線パターン」の「接続端子に接続される部分から第1方向に向けて延びる第1部」と、「第1部から延びるとともに湾曲し前記第1方向とは異なる第2方向に向けて延びる第2部」のそれぞれについて、本件補正発明では「前記配線基板において前記コネクタが装着され当該コネクタによって覆われる領域である装着領域にて第1方向に向けて延び」、「当該装着領域にて湾曲」するのに対して、刊行物記載の発明では配線パターンの「第1方向に向けて延び」る場所、及び「湾曲」する場所について特定されていない点。

(4)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
基板の変位による負荷は小さく作用すると信号配線部の断線を招かないことは、上記(コ)のとおり、刊行物記載の事項に示されており、接続端子に接続される部分から第1方向に向けて延びる第1部と、第1部から延びるともに湾曲し、前記第1方向とは異なる第2方向に向けて延びる第2部を有する配線パターンを、電子部品の装着領域において形成することで、応力を小さくして断線を防止することはフレキシブル配線基板における周知技術(例えば、特開2001-111181号公報の「【0034】本実施の形態のフレキシブル配線基板17も、電子部品18を実装することにより、ランド25から延出する配線パターン19とランド25との複数の接合部19aが多端子の電子部品18の直下に形成されるため、配線パターン19と電気的接続部8との境界部10及びその近傍が常に平坦に保たれるので、曲げ部9の曲げに伴う境界部10への応力は小さくなり、境界部10での配線パターン19の断線を防止できる。」との記載及び図3の記載を参照すると、多端子の電子部品18の直下に配線パターン19とランド25との複数の接合部19aが形成され、水平方向(第1方向)に延びている部分(第1部)と、電子部品18の中央付近の直下で90度湾曲して垂直下方向(第1方向とは異なる第2方向)に延びている部分(第2部)を有する配線パターン19が形成されていることが示されている。また、登録実用新案公報3173004号公報の「【0040】ICチップを実装ランド部6に接合させるはんだ9・・・・即ち、はんだ9の縁部(境界線B3)が実装領域A内に存在する。このため、ICタグ10に外力が係った際にICチップ7が配線パターン5の補強板として機能するため、当該縁部には大きな曲げ応力が発生せず、配線パターンが当該縁部において断線を防止できる」との記載及び図1,2の記載を参照すると、ICチップ7の下ではんだ9を介して実装ランド部6に接続される配線パターン5は、ランド部6に沿った方向(第1方向)に延びている部分(第1部)と、90度湾曲した方向(第1方向とは異なる第2方向)に延びている部分(第2部)を有することが示されている)にすぎない。
上記周知技術を、上記刊行物記載の事項に示される示唆に基づき、刊行物記載の発明の「信号配線部233bの延出端部から延びる配線パターンは、信号配線部233aの延出端部を「つ」字形で囲むように配線されており、信号配線部233cの延出端部から延びる配線パターンは、信号配線部233bの外側において信号配線部233aの延出端部を「つ」字形で囲むように配線されている」部分に適用し、コネクタ部材239a(電子部品の装着領域)において形成することで、上記相違点にかかる本件補正発明の構成とすることは、当業者ならば容易になし得たものである。
また、本件補正発明の作用効果は刊行物記載の発明、刊行物記載の事項及び周知技術からみて格別なものではない。

(5)審判請求人の主張について
審判請求人は平成28年9月28日付け審判請求書の3.本願発明が特許されるべき理由の4)本願発明と引用文献に記載の発明との対比において、以下の主張を行っている。

「(3)ここで、上記拒絶査定の備考欄において、『「配線233b」の配線方向が、「つ」の字型に方向を変えて延びていることが看てとれるとともに(図6)、その領域が「コネクタ239a」の装着されている領域であることが看てとれる』と認定されているが、図5および図6を参照すると、「つ」の字型に方向を変えて延びている領域は、「コネクタ239a」の装着されている領域の外であると思料する。また、図6および図8を参照すると、図8における「コネクタ239a」の右側端部よりもさらに右側の位置に、図6に示す「配線233b」が「つ」の字型に方向を変える部分が配置されると思料する。
(4)また、引用文献1においては、コネクタにより覆われることで、配線基板におけるコネクタが実装される領域の剛性が増すという着想自体が開示されていない。したがって、当業者が、引用文献1の図5、図6および図8から、本願発明の構成に想到することは容易ではない。 」

そこで、上記主張について検討するに、上記(4)相違点についての判断において示したとおり、配線の変位部への負荷が小さく作用するようにすることで、フレキシブル基板における配線の断線等の導通不良を招くことがないことは刊行物記載の事項において示されており、刊行物記載の発明において上記において示した周知技術を適用することで、信号配線部の延出端部を「つ」字形で囲むように配線された部分を電子部品の下に形成することで、電子部品を搭載した箇所の剛性が増して配線の変位部の負荷が小さくなり、配線の断線が防止できるようになることは、刊行物記載の発明及び刊行物記載の事項ならびに周知技術から当業者が予測しえた程度のものにすぎない。

以上のとおりであるから審判請求人の主張は採用できない。

(6)小括
したがって、本件補正発明は、刊行物記載の発明、刊行物記載の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-3に係る発明は、平成28年1月13日付けの手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記第2の1.において記載した次のとおりのものである。

「【請求項1】 所定の演出を行う遊技機であって、
前記所定の演出にともない動く可動体は、
配線パターンを有するとともに、前記可動体の動きにともない変形する配線基板と、
前記配線基板の前記配線パターンと接続される接続端子を有し、当該配線基板上に設けられるコネクタとを備え、
前記配線基板の前記配線パターンは、
前記配線基板において前記コネクタが装着される装着領域にて、前記接続端子に接続される部分から第1方向に向けて延びる第1部と、
前記配線基板の前記装着領域にて前記第1部から延び、前記第1方向とは異なる第2方向に向けて延びる第2部と
を有することを特徴とする遊技機。」

2.拒絶理由通知の概要
平成27年11月25日付け拒絶理由通知は、本願発明は、上記刊行物である特開2011-172698号公報に記載の発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない、及び上記刊行物記載の発明に基づき特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

3.刊行物記載の発明について
刊行物記載の発明の認定は前記「第2 平成28年9月28日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「3.独立特許要件」の(1)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、本件補正発明を特定する事項について、前記第2の2.に記載したように「装着領域」から「当該コネクタによって覆われる領域である」という限定、及び「第1部から延びるとともに当該装着領域にて湾曲し前記第1方向とは異なる第2方向に向けて延びる第2部」から「るとともに当該装着領域にて湾曲し」という限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の限定を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2に記載したとおり、刊行物記載の発明、刊行物記載の事項及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、刊行物記載の発明、刊行物記載の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明、刊行物記載の事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-28 
結審通知日 2017-04-04 
審決日 2017-04-17 
出願番号 特願2014-266630(P2014-266630)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥  
特許庁審判長 長井 真一
特許庁審判官 瀬津 太朗
川崎 優
発明の名称 遊技機  
代理人 尾形 文雄  
代理人 古部 次郎  
代理人 伊與田 幸穂  

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