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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02G
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H02G
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H02G
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  H02G
管理番号 1329040
異議申立番号 異議2016-700801  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-01 
確定日 2017-04-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5875151号発明「ハーネス用外装保護部材とそれを用いたワイヤハーネス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5875151号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について」)訂正することを認める。 特許第5875151号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 1. 手続の経緯
特許第5875151号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成24年3月30日に特許出願され、平成28年1月29日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人パテンタンワールト ジールリッヒ ウントピシッツィス パートナーシャフト エムベーベーにより特許異議の申立てがされ、平成28年11月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年1月5日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人パテンタンワールト ジールリッヒ ウントピシッツィス パートナーシャフト エムベーベーにより平成29年3月9日付けで意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア、イのとおりである。
ア 請求項1に係る「合成樹脂製の丸型の蛇腹管部と、該丸型の蛇腹管部に一体に続く平型のストレート管部とを備えたことを特徴とする」を、「外周及び内周に環状の凸部と凹部を交互に有する合成樹脂製の丸型の蛇腹管部と、該丸型の蛇腹管部に一体に続く平型のストレート管部とを備え、前記ストレート管部の外周に、前記凹部の深さよりも浅い矩形環状の溝部が、前記凹部のピッチよりも大きなピッチで複数列に形成されており、前記ストレート管部の各溝部間の凸部の幅は、前記溝部及び前記蛇腹管部の凸部の幅よりも大きく規定されていることを特徴とする」に訂正する。
なお、請求項1の記載を引用して記載された請求項2も、請求項1の訂正に伴い連動して訂正されたことになる。
イ 願書に添付した明細書の段落【0014】の「合成樹脂製の丸型の蛇腹管部と、該丸型の蛇腹管部に一体に続く平型のストレート管部とを備えたことを特徴とする。」という記載を「外周及び内周に環状の凸部と凹部を交互に有する合成樹脂製の丸型の蛇腹管部と、該丸型の蛇腹管部に一体に続く平型のストレート管部とを備え、前記ストレート管部の外周に、前記凹部の深さよりも浅い矩形環状の溝部が、前記凹部のピッチよりも大きなピッチで複数列に形成されており、前記ストレート管部の各溝部間の凸部の幅は、前記溝部及び前記蛇腹管部の凸部の幅よりも大きく規定されていることを特徴とする。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アの訂正に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明の段落【0071】には、「図6(b)の断面円形の蛇腹管部2’において、符号7’は蛇腹の凹部(谷部)、符号8’は蛇腹の凸部、符号9’は外向きの凹部(凸部8’の内面)、符号10’は円環状の内周面」と記載され、図6(a),6(b)を参照すれば「外周及び内周に環状の凸部と凹部を交互に有する合成樹脂製の丸型の蛇腹管部」は明細書に記載されているものと認められる。
また、明細書の発明の詳細な説明の段落【0067】の記載、図1(a),図6(a)によれば、図1のハーネス用外装保護部材1が平型の蛇腹管部2と平型のストレート管部3とを有するのに対し、図6のハーネス用外装保護部材1’は、蛇腹管部2’が丸型でストレート管部3が平型である点で相違するのみであって、ストレート管部の外周に形成されている矩形環状の溝部、各溝部間の凸部の構成は図1と図6とで同じものと認められる。そして、明細書の発明の詳細な説明の段落【0027】には、「図1(a)の如く、溝部4は平型のストレート管部3の長手方向(前後方向)に等ピッチで配設されている。前後の隣接する矩形環状の溝部4と溝部4との間には幅広の凸部6が矩形環状に形成され、溝部4の幅(前後方向長さ)L1は凸部6の幅(前後方向長さ)L2の概ね1/2程度ないしそれ以下に規定されている。溝部4の幅L1は凸部6の幅L2に比べて幅狭である。溝部4の深さH1は凸部6の板厚Tの概ね5?20%程度である。溝部4の深さH1は平型の蛇腹管部2の溝部(凹部ないし谷部)7の深さH2に比べて極めて浅く形成され、一例として平型の蛇腹管部2の溝部7の深さH2の概ね半分ないしそれ以下に規定されている(蛇腹管部2の溝部7の深さH2は任意に設定できるので、この値はあくまで参考である)。」と記載され、段落【0030】には、「本例の平型のストレート管部3の略矩形環状の溝部4の幅(前後方向長さ)L1は、平型の蛇腹管部2の略矩形環状の溝部7の幅(前後方向長さ)L3と同程度である。また、平型のストレート管部3の溝部4のピッチP1は、平型の蛇腹管部2の溝部7のピッチP2の概ね二倍程度である。これらは適宜設定可能である。」と記載されているから、「ストレート管部の外周に、前記凹部の深さよりも浅い矩形環状の溝部が、前記凹部のピッチよりも大きなピッチで複数列に形成されており、前記ストレート管部の各溝部間の凸部の幅は、前記溝部及び前記蛇腹管部の凸部の幅よりも大きく規定されている」ことは、明細書に記載されているものと認められる。なお、平型のストレート管部3の溝部4のピッチP1及び各溝部間の凸部の幅に関して、具体的には、段落【0030】に「概ね二倍程度である」としか記載されていないが、段落【0011】等に「しかも、ストレート管部の曲げ剛性をアップすることができるハーネス用外装保護部材とそれを用いたワイヤハーネスを提供することを目的とする。」と記載されており、平型のストレート管部3の溝部4のピッチP1を大きくし、各溝部間の凸部の幅を大きくすることにより、ストレート管部3の曲げ剛性をアップするという技術思想が記載されていると認められる。
上記アの訂正は、明細書に記載された事項な範囲内において「合成樹脂製の丸型の蛇腹管部と、該丸型の蛇腹管部に一体に続く平型のストレート管部とを備えたことを特徴とする」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記イの訂正は、上記アの訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るためのものであるから、イの訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項[1、2]について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
本件発明1「外周及び内周に環状の凸部と凹部を交互に有する合成樹脂製の丸型の蛇腹管部と、該丸型の蛇腹管部に一体に続く平型のストレート管部とを備え、前記ストレート管部の外周に、前記凹部の深さよりも浅い矩形環状の溝部が、前記凹部のピッチよりも大きなピッチで複数列に形成されており、前記ストレート管部の各溝部間の凸部の幅は、前記溝部及び前記蛇腹管部の凸部の幅よりも大きく規定されていることを特徴とするハーネス用外装保護部材。」
本件発明2「請求項1記載のハーネス用外装保護部材の内側に電線が挿通されて構成されていることを特徴とするハーネス用外装保護部材を用いたワイヤハーネス。」

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して平成28年11月2日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び刊行物2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1及び2に係る特許は、取り消されるべきものである。

(3)甲第1号証及び刊行物2の記載
(ア)甲第1号証(欧州特許第865130号公報)には、FIG.1?7とともに以下の記載がある。
a.(第2頁第1欄第6行?第9行)「The present invention relates to a corrugated tube for use as a cover of a wire harness and to a wire harness having such a tube as a cover.」(当審訳:本発明は、ワイヤハーネスの外装として使用するためのコルゲートチューブと外装としてそのようなチューブを有するワイヤハーネスに関連する。)

b.「As shown in Fig.7 of the accompanying drawings, in order to prevent a bundle(W) of electric wires constituting a wire harness which is installed in the interior of the vehicle from being damaged by interference of the bundle(W) of the electric wires with component parts of the vehicle body positioned in proximity thereto, a cylindrical corrugated tube 1 made of synthetic resin and corrugations formed by annular concave and convex surfaces formed on its periphery alternately in the lengthwise direction is installed on selected portions of the bundle(W) of the electric wires.」
(当審訳:添付した図のうちのFig.7に示されるように、車の内部に配設されるワイヤハーネスを構成している電線の束(W)が近接する車体の構成部品と干渉して損傷するのを保護するために、合成樹脂 で形成され、長手方向に輪状の凹凸の表面が交互に周囲に形成された円筒状のコルゲートチューブ1が電線の束(W)の選択された部分に設置されます。)

c.「Fig.1 shows a corrugated tube 11 of the invention which is to be used to cover a wire harness . The corrugated tube 11 is made of moldable thermoplastic synthetic resin such as polypropylene, nylon or the like and has circumferentially extending corrugations constituted by ribs or ridges 11a separated lengthwise by circumferentially extending recesses along its whole length. 」
(当審訳:Fig.1はワイヤハーネス外装に使われる発明のコルゲートチューブ11を示す。コルゲートチューブ11はポリプロピレン、ナイロンのような変形可能な熱可塑性の合成樹脂から作られ、そして長さ全体に沿って外周に延びる凹所によって長手方向に分離されたリブ又は凸部11aで構成された外周に延びるコルゲートを有している。)

d.「The corrugated tube 11 comprises cylindrical first regions 11b circular in cross-section, similar to the conventional corrugated tube of Fig.7 and positioned at both ends of the tube and second region 11c relatively flat section, positioned at the center part of the tube. Transition regions 11d of cross-sectional shape which is gradually varying lengthwise, connect the flat region 11c and the cylindrical regions 11b.」
(当審訳:コルゲートチューブ11は、チューブの両端に配置され、Fig.7 の従来のコルゲートチューブに類似した、断面が環状の円筒状の第1領域11bとチューブのセンター部分に配置された比較的フラットな部分である第2領域11cから構成されている。長手方向に断面形状が徐々に変化している移行領域11dは、平らな領域11cと円筒状の領域11bを接続している。)

e.「Preferably, the second region of the tube has a cross-sectional shape selected from elliptical and race-track. It is thus flattened, relative to the first regions.」
(当審訳:好ましくは、チューブの第2領域は、楕円とレーストラックから選択された断面形状を有している。それは第1領域に対して平らになっている。)

f.「The cylindrical first regions of the corrugated tube being positioned adjacent to connectors at the ends of the wire harness allows electrical wires of the harness to be uniformly distributed therein and prevents them from being twisted when the electrical wires inserted into cavities of the connectors. The relatively flat second region of the corrugated tube, positioned e.g. at the central of a part thereof, can be installed on the floor of the interior of a vehicle with little or no space between the tube and floor, thus allowing the space required for the wire harness in the interior of the vehicle to be small.」
(当審訳:コルゲートチューブの円筒状の第1領域がワイヤハーネスの両端のコネクタに隣接していることは、ハーネスの電線がその中に一様に配されることを可能にし、それら電線がコネクタの空洞に挿入されるときにねじれるのを防止する。コルゲートチューブの比較的平らな第2領域は、例えば、中央部に設置され、チューブとフロアの間にスペースがほとんどないように車の内部のフロアの上に設置でき、それでワイヤハーネスのために必要とされる車の内部のスペースを小さくすることができる。)

g.「As apparent from the above description, the flat region of the corrugated tube positioned in the lengthwise central region thereof can be installed on the floor of the interior of a vehicle minimizing a space between the corrugated tube and the floor, thus allowing the space required for installing the wire harness in the floor of the interior of a vehicle to be small.」
(上述から明らかなように、長手方向の中央領域に配置されたコルゲートチューブの平らな領域は、それにより、ワイヤハーネスを設置するのに必要とされる車の内部のフロアにおけるスペースを小さくすることを許容し、コルゲートチューブとフロアの間のスペースを最小にして、車の内部のフロアの上に設置することができる。)

以上の記載によれば、甲第1号証には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ポリプロピレン、ナイロンのような変形可能な熱可塑性の合成樹脂から作られており、長さ全体に沿って、凹所と凸部が交互に連続するコルゲート状の蛇腹管であり、
チューブの両端に配置された断面が環状の円筒状の第1領域11bとチューブのセンター部分に配置された楕円とレーストラックから選択された断面形状を有し、比較的フラットな部分である第2領域11cと長手方向に断面形状が徐々に変化する平らな領域 11c と円筒状の領域 11b を接続する移行領域11dとから構成されたワイヤハーネス用外装であり、ワイヤハーネスを保護する部材であるコルゲートチューブ11。」

(イ)刊行物2(特開2009-143326号公報)には、段落【0029】に「外装保護材パイプは、図1に示すように、ワイヤハーネスW/Hを包囲する直管部11と蛇腹管部12とを連続的に備えた一体成形品であり、・・・中略・・・ワイヤハーネスW/Hを車両に配索した時に屈曲位置となる領域に蛇腹管部12を予め設ける」と記載され、図2によれば、車両のフロアの上に設置される部分は外装保護材のパイプの屈曲されない直管部11である。以上の記載によれば、刊行物2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「蛇腹管部12とストレート管部11とを連続的に備えるワイヤハーネス用保外装護部材」

4.判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア)特許法第29条第2項について
本件発明1と引用発明とを対比すると引用発明は、平型のストレート管部の外周に、丸型の蛇腹管部の凹部の深さよりも浅い矩形環状の溝部が、前記凹部のピッチよりも大きなピッチで複数列に形成されており、前記ストレート管部の各溝部間の凸部の幅は、前記溝部及び前記蛇腹管部の凸部の幅よりも大きく規定されている事項を有しておらず、当該事項は、刊行物2にも記載されておらず示唆されてもいない。
そして、当該事項により、本件発明1は、配索経路の形態に応じて、作業性良くスムーズに配索することができ、しかも、ストレート管部の曲げ剛性をアップするという顕著な効果を奏するものであり、本件発明1は、引用発明及び刊行物2に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、「蛇腹管部」は屈曲性の良い構成として、「ストレート管部」は屈曲性を備える必要がないことは当業者にとって当然のことであり、合成樹脂の管において、凹部のピッチや深さを変更することは単なる設計的事項にすぎないから、訂正事項により追加された「平型のストレート管部の外周に、丸型の蛇腹管部の凹部の深さよりも浅い矩形環状の溝部が、前記凹部のピッチよりも大きなピッチで複数列に形成されており、前記ストレート管部の各溝部間の凸部の幅は、前記溝部及び前記蛇腹管部の凸部の幅よりも大きく規定されている」事項に進歩性は存在しないと主張するが、甲第1号証には、「蛇腹管部」は屈曲性の良い構成とし「ストレート管部」は屈曲性を備える必要がないことが記載されているとは認められず、また、自明のこととも認められない。さらに、矩形環状の溝部のピッチや深さについて「平型のストレート管部の外周に、丸型の蛇腹管部の凹部の深さよりも浅い矩形環状の溝部が、前記凹部のピッチよりも大きなピッチで複数列に形成されており、前記ストレート管部の各溝部間の凸部の幅は、前記溝部及び前記蛇腹管部の凸部の幅よりも大きく規定されている」ように変更することが、単なる設計的事項であるとは認められない。また、刊行物2には「ストレート管部」に溝部と凸部を形成すること自体記載されていない。
そうすると、本件発明1及び2が、甲第1号証に記載された発明及び刊行物2に記載された技術的事項から容易とはいえない。

イ 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、請求項1に係る発明は、甲第1号証記載の発明と同一、甲第1号証記載の発明から容易、甲第2号証(米国特許公開第2003/0051763号)記載の発明と同一、甲第2号証記載の発明から容易、甲第3号証(米国特許公開第2012/0018024号)記載の発明と同一、甲第3号証記載の発明から容易、甲第4号証(米国特許第6129120号明細書)記載の発明及び周知技術から容易、甲第4号証記載の発明及び甲第1?3号証のいずれかに記載の発明から容易、甲第4号証記載の発明及び甲第5号証(米国特許第4229615号明細書)に記載の発明から容易、請求項2に係る発明は、甲第1号証記載の発明と同一、甲第1号証記載の発明から容易、甲第3号証記載の発明から容易であると主張しているが、甲第1?5号証には、平型のストレート管部の外周に、丸型の蛇腹管部の凹部の深さよりも浅い矩形環状の溝部が、前記凹部のピッチよりも大きなピッチで複数列に形成されており、前記ストレート管部の各溝部間の凸部の幅は、前記溝部及び前記蛇腹管部の凸部の幅よりも大きく規定されている事項が記載されておらず、かかる主張は理由がない。

5. むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ハーネス用外装保護部材とそれを用いたワイヤハーネス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の蛇腹管部とストレート管部との何れか一方又は両方が平型に形成されて、例えば自動車のワイヤハーネスの外装部材として適用されるハーネス用外装保護部材とそれを用いたワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の内側に配索する電線を覆って車両ボディ等との干渉等から保護するために合成樹脂製のコルゲートチューブ等といった種々のハーネス用外装保護部材が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、断面円形の大径な蛇腹管部と、断面円形の小径なストレート管部(直管部)とで成るハーネス用外装保護部材(ワイヤハーネス外装保護材)が記載されている。例えば二つの蛇腹管部の間と一方の蛇腹管部の一端側と他方の蛇腹管部の他端側とにそれぞれストレート管部が直列に配置されている。蛇腹管部は三次元方向に屈曲自在であり、ストレート管部は蛇腹管部よりも高い剛性を有している。
【0004】
車両のワイヤハーネス配索箇所に応じて蛇腹管部を屈曲して配索し、ストレート管部を直線的に配索する。特許文献1の例では、ハイブリッド車の後方の高電圧バッテリから前方のインバータにかけてハーネス用外装保護部材が配索されている。
【0005】
特許文献1には、上記ハーネス用外装保護部材の製造方法として、押出機からダイスを経て成型機内に流動性の樹脂材料を送り込み、成型機は、蛇腹管部成型用金型とストレート管部成型用金型とをループ状に連続して回転可能に配置した上型機構と下型機構を備え、上下の各機構を同期して逆向きに回転させて、ハーネス用外装保護部材を連続して押出成形することが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、ハイブリッド自動車の後部のバッテリから床下を通って前部のインバータに配索されるワイヤハーネスとして、床下に蛇腹状で断面長円形の平型コルゲートチューブ(ハーネス用外装保護部材)を配索し、床下の平型コルゲートチューブからバッテリやインバータにかけて硬質樹脂製のプロテクタを介して(プロテクタで繋いで)断面円形の丸型コルゲートチューブ(ハーネス用外装保護部材)を配索し、平型コルゲートチューブ内に複数本の高圧電線と低圧電線を並列に配置したことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-143326号公報(図1)
【特許文献2】特開2010-12868号公報(図1,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の特許文献1に記載されたハーネス用外装保護部材にあっては、断面円形のハーネス用外装保護部材の内側に例えば断面長円形の電線を挿通させた場合に、ハーネス用外装保護部材の内面と電線の短径側の外面との間に例えば上下二箇所の大きな隙間を生じて、スペース的な無駄やガタつきを生じるという懸念があった。また、ストレート管部と蛇腹管部とが断面円形であるので、車両のフロア等の狭いスペース(配索経路)にハーネス用外装保護部材を配索する際に、ストレート管部又は蛇腹管部が車両ボディ等に干渉して、配索をスムーズに行うことができないという懸念があった。
【0009】
また、ストレート管部は蛇腹管部に比べて剛性が高く、曲がりにくいが、材料が合成樹脂であるので、完全に曲がらないということはなく、ストレート管部のさらなる剛性アップが期待されていた。
【0010】
また、上記特許文献2に記載されたハーネス用外装保護部材にあっては、断面円形のハーネス用外装保護部材と断面長円形(平型)のハーネス用外装保護部材とを硬質な合成樹脂製のプロテクタ(固定部材)で繋ぐ作業を必要として、ハーネス用外装保護部材の全体構造すなわちワイヤハーネスが複雑化、高コスト化するという懸念があった。
【0011】
本発明は、上記した点に鑑み、蛇腹管部とストレート管部とで成るハーネス用外装保護部材であって、平型(断面長円形等)の電線をスペース的な無駄やガタつきなく収容することができ、また、車両ボディ等の狭い配索経路に、ないしは車両ボディ等の配索経路の形態に応じて、作業性良くスムーズに配索することができ、しかも、ストレート管部の曲げ剛性をアップすることができるハーネス用外装保護部材とそれを用いたワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るハーネス用外装保護部材は、外周及び内周に環状の凸部と凹部を交互に有する合成樹脂製の丸型の蛇腹管部と、該丸型の蛇腹管部に一体に続く平型のストレート管部とを備え、前記ストレート管部の外周に、前記凹部の深さよりも浅い矩形環状の溝部が、前記凹部のピッチよりも大きなピッチで、複数列に形成されており、前記ストレート管部の各溝部間の凸部の幅は、前記溝部及び前記蛇腹管部の凸部の幅よりも大きく規定されていることを特徴とする。
【0015】
上記構成により、平型のストレート管部に平型(断面長円形等)の電線がスペース的な無駄やガタつきなく挿通・収容され、丸型の蛇腹管部における平型の電線のガタが抑えられる。丸型の蛇腹管部においては電線を平型とせずに丸型としてもよい。丸型の蛇腹管部は良好な屈曲性を有し、平型のストレート管部は、丸型(断面円形)の蛇腹管部や従来の丸型のストレート管部に比べて高い曲げ剛性を有する。平型のストレート管部は車両等の狭いスペースに干渉等なくスムーズに配索される。平型とは断面略矩形状ないし断面長円形状のことである。
【0019】
請求項2に係るハーネス用外装保護部材を用いたワイヤハーネスは、請求項1記載のハーネス用外装保護部材の内側に電線が挿通されて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、平型のストレート管部に平型(断面長円形等)の電線をスペース的な無駄やガタつきなく収容することができ、それによって丸型の蛇腹管部における平型の電線のガタつきを抑えることができる。また、丸型の蛇腹管部で屈曲性を高めることができると共に、平型のストレート管部を車両等の狭いスペースに作業性良くスムーズ且つ確実に配索することができる。また、ストレート管部を平型として、従来の丸型のストレート管部よりも剛性アップしたことで、ハーネス用外装保護部材を例えば車両ボディやフロア等といった相手側部材に配索する際に、丸型の蛇腹管部のみを屈曲させて平型のストレート管部で配索の位置精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るハーネス用外装保護部材の一実施形態を示す、(a)は真直な自由状態における側面図、(b)は屈曲させた状態における側面図、(c)は(a)の矢視A正面図、(d)は(a)の矢視B正面図である。
【図2】(a)は、ハーネス用外装保護部材に平型の電線を収容した状態を示す正面図、(b)はハーネス用外装保護部材の比較例を示す正面図である。
【図3】ハーネス用外装保護部材の耐摩耗試験方法を示す説明図である。
【図4】ハーネス用外装保護部材の製造方法を示す、(a)は全体的な側面図、(b)は要部断面図である。
【図5】ハーネス用外装保護部材の製造方法の要部を説明する線図である。
【図6】ハーネス用外装保護部材の他の実施形態を示し、(a)は側面図、(b)は(a)の矢視A正面図、(c)は(a)の矢視B正面図である。
【図7】ハーネス用外装保護部材のその他の実施形態を示し、(a)は側面図、(b)は(a)の矢視A正面図、(c)は(a)の矢視B正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1(a)?(d)は、本発明に係るハーネス用外装保護部材の一実施形態を示すものである。図1(a)はハーネス用外装保護部材の自由状態、図1(b)はハーネス用外装保護部材の蛇腹管部を屈曲させた状態、図1(c)は図1(a)の矢視A図、図1(d)は図1(a)の矢視B図をそれぞれ示している。
【0026】
このハーネス用外装保護部材1は、合成樹脂製の平型(断面略矩形状)の蛇腹管部2と、平型の蛇腹管部と一体に形成された平型(断面略矩形状)のストレート管部3とで平型に構成されたことを特徴としている。本例の平型のストレート管部3は、外周に浅く且つ幅狭な略矩形環状の溝部(凹部)4を複数並列に有し、平型のストレート管部3の断面略矩形状の内周面5は外周におけるような溝部4を有することなく平坦ないし略平坦に形成されている。溝部4は省略することも可能であり、その場合、平型のストレート管部3の外周面(6a)は内周面5と同様に平坦に形成される。
【0027】
図1(a)の如く、溝部4は平型のストレート管部3の長手方向(前後方向)に等ピッチで配設されている。前後の隣接する矩形環状の溝部4と溝部4との間には幅広の凸部6が矩形環状に形成され、溝部4の幅(前後方向長さ)L1は凸部6の幅(前後方向長さ)L2の概ね1/2程度ないしそれ以下に規定されている。溝部4の幅L1は凸部6の幅L2に比べて幅狭である。溝部4の深さH1は凸部6の板厚Tの概ね5?20%程度である。溝部4の深さH1は平型の蛇腹管部2の溝部(凹部ないし谷部)7の深さH2に比べて極めて浅く形成され、一例として平型の蛇腹管部2の溝部7の深さH2の概ね半分ないしそれ以下に規定されている(蛇腹管部2の溝部7の深さH2は任意に設定できるので、この値はあくまで参考である)。
【0028】
平型のストレート管部3の略矩形環状の溝部4は、底面4aと、底面4aよりも極めて小さな寸法(深さ)の垂直な管部長手方向の前後の各端面4bとで囲まれて構成されている。本例の溝部4の端面4bと凸部6の外周面6aとの交差部は円弧状の面6bで続いているが、直角に交差していてもよい。「略矩形環状」の「略」とは、図1(c)の平型の蛇腹管部2の四角の円弧面7a?10aや、図1(d)の平型のストレート管部3の四角の円弧面4c?6cがあるからであり、これら四角の円弧面がなければ完全な矩形環状と言える。
【0029】
平型のストレート管部3の内周面5に溝部4は形成されていないが、実際には後述の樹脂成形時に外周の凹凸4,6の影響を受けてストレート管部3の略矩形環状の内周面5は平坦というよりも若干波打った形状(略平坦)になる場合が多い。これでも実使用上の問題は全くなく、平型のストレート部3の耐摩耗性や剛性は、平坦な内周面5の場合と何ら変わることはない。平型のハーネス用外装保護部材1を形成するための合成樹脂材の種類は硬質のものや軟質のものを必要に応じて適宜設定可能である。
【0030】
本例の平型のストレート管部3の略矩形環状の溝部4の幅(前後方向長さ)L1は、平型の蛇腹管部2の略矩形環状の溝部7の幅(前後方向長さ)L3と同程度である。また、平型のストレート管部3の溝部4のピッチP1は、平型の蛇腹管部2の溝部7のピッチP2の概ね二倍程度である。これらは適宜設定可能である。
【0031】
平型のストレート管部3の略矩形環状の内周面5が平坦ないし略平坦に形成されているのに対し、平型の蛇腹管部2の内周は凹凸に形成され、平型の蛇腹管部2の外周の略矩形環状の凸部8が蛇腹管部2の内周の略矩形環状の逆向きの凹部9を構成し、平型の蛇腹管部2の外周の略矩形環状の凹部7が蛇腹管部2の内周の略矩形環状の逆向きの凸部10を構成している。
【0032】
本例の平型の蛇腹管部2の外周の凸部8の幅(前後方向長さ)L4と凹部7の幅(前後方向長さ)L3とはほぼ等しく規定されている。平型のストレート管部3の凸部6の肉厚T1は平型の蛇腹管部2の肉厚T2よりも厚く規定されて、平型のストレート管部3の曲げ剛性が高められている。平型のストレート管部3は、従来の丸型のストレート管部に比べて断面係数Zが大きく、丸型のストレート管部よりも高い曲げ剛性を発揮する。
【0033】
平型のストレート管部3の略矩形環状の内周面5は、平型の蛇腹管部2の略矩形環状の内周面10すなわち内周の逆向きの凸部10の周面に段差なくストレートに続いている。すなわち、平型のストレート管部3の内径(短径)D1は平型の蛇腹管部2の内径(短径)D2に等しく設定され、平型のストレート管部3の内径(長径)D3は平型の蛇腹管部2の内径(長径)D4に等しく設定されている。
【0034】
これは、電線41(図2参照)を平型のハーネス用外装保護部材1の内部に挿通(貫通)させる際に、ストレート管部3の端部開口11から挿入しても、蛇腹管部2の端部開口12から挿入しても、何れの場合でも引っ掛かりなく電線41をスムーズに挿通させることができるようにするためである。
【0035】
例えば、図1(a)の例に比べて平型のストレート管部3の内径(短径及び/又は長径)を大径に設定した場合には(ストレート管部3の外径も大径となる)、平型の蛇腹管部2と平型のストレート管部3の境界部分14ないしその近傍に段差(図示せず)が形成されてしまう。但し、この場合でも、電線41を蛇腹管部2の端部開口12から挿入することで、段差と電線41の挿入先端部との干渉を防ぐことができる。
【0036】
電線41の挿入方向を限定すれば、平型のストレート管部3の外径(短径D6及び/又は長径D8)を平型の蛇腹管部2の外径(短径D2及び/又は長径D5)よりも大きく設定可能である。図1の例では、平型の蛇腹管部2の外径(短径D6及び長径D8)は、平型の蛇腹管部2の外径(短径D5及び長径D7)よりも小さく規定されている。
【0037】
図1(b)の如く、平型のハーネス用外装保護部材1に曲げ力Fを加えた際に、平型の蛇腹管部2のみが曲げ力Fの加わった方向(図1で上下方向)に屈曲し、平型のストレート管部3は屈曲することなく、真直な状態を維持する。平型の蛇腹管部2は短径D5の方向に曲がりやすく、長径D7の方向に曲がりにくい。
【0038】
例えば平型の蛇腹管部2の肉厚T2を厚く(例えば2mm程度に)設定した場合は、曲げ力Fを除去すると蛇腹管部2は弾性的に復元してしまう。そこで(板厚Tが2mm以下例えば1mm程度の場合でもよいが)、平型の蛇腹管部2の長手方向の前後二箇所において、平型の蛇腹管部2に隣接する前後の平型の各ストレート管部3に既存の係止用クランプ(図示せず)を装着して、平型の蛇腹管部2を屈曲させた形態で平型のストレート管部3の係止用クランプを不図示の車両ボディやフロア等の相手側部材に係止固定させることで、平型の蛇腹管部2の復元を阻止することができる。
【0039】
その場合、図1において、平型の蛇腹管部2の左端(符号12で示す位置)にも右側におけると同様な平型のストレート管部3を一体に配設し、前後の平型のストレート管部3,3の略矩形環状の各溝部4を利用して、不図示の係止用クランプの例えばバンド部(凸部)を溝部4に巻回して固定させたり、係止用クランプに設けた凸部を溝部4に係合(係止)させることで、係止用クランプを前後方向の位置ずれなく良好な位置精度でストレート管部3に取り付けることができる。
【0040】
係止用クランプは、例えば、バンド部の基端に支柱を立設して支柱の先端に例えば一対の爪部を設け、バンド部の基端にバンド部の先端から挿通させる孔部を設け、孔部内にバンド部の裏面の例えば鋸歯状の突起を係止させる爪を設けて構成される既存のものである。バンド部の幅が溝部4の幅L1よりも広い場合は、バンド部の長方向中央に形成したリブ状の凸部、あるいはバンド部の基端部分に設けた凸部を溝部4に係合させてバンド部を位置決めし、且つバンド部の管部長手方向(前後方向)の不意な移動を防止することができる。なお、溝部4を形成しない平型のストレート管部(3)を用いた場合は、平型の蛇腹管部2と平型のストレート管部(3)との境界部14寄りにおいて平型のストレート管部(3)の端部に係止用クランプのバンド部を結束固定する。
【0041】
図1(c)の如く、平型の蛇腹管部2は、上下の平行な長辺部44と、左右の平行な短辺部45とで略矩形筒状に形成されている。各長辺部44と各短辺部45との交差部分46は円弧状に滑らかに繋がれている。交差部分46は、蛇腹管部2の外向きの凸部8の円弧面8aと、内向きの凹部7の円弧面7aと、外向きの凹部9の円弧面9aと、内周面10の円弧面10aとで成る。上下の長辺部44の外向きの凸部8の外面の間隔が短径D5であり、上下の長辺部44の内周面10の間隔が短径D2である。
【0042】
左右の短辺部45の外向きの凸部8の外面の間隔が長径D7であり、左右の短辺部45の内周面10の間隔が長径D3である。長辺部44と短辺部45と交差部分46とにおいて、外向きの凸部(山部)8の肉厚と内向きの凹部(谷部)7の肉厚T2(図1(a))とはほぼ等しく且つ薄く規定されている。
【0043】
図1(d)の如く、平型のストレート管部3は、上下の平行な長辺部47と、左右の平行な短辺部48とで略矩形筒状に形成されている。各長辺部47と各短辺部48との交差部分49は円弧状に滑らかに繋がれている。交差部分49は、外向きの凸部6の円弧面6cと、略矩形環状の溝部4の円弧面4cと、略矩形環状の内周面5の円弧面5cとで成る。上下の長辺部47の外向きの凸部6の外面の間隔が短径D6であり、上下の長辺部47の内周面5の間隔が短径D1である。
【0044】
左右の短辺部48の外向きの凸部6の外面の間隔が長径D8であり、左右の短辺部48の内周面5の間隔が長径D4である。長辺部47と短辺部48と交差部分49とにおいて、外向きの略矩形環状の凸部6の肉厚T1は厚く、略矩形環状の溝部4の肉厚T3は、凸部6の肉厚T1よりも若干薄く規定され、溝部4の肉厚T3は、蛇腹管部2の肉厚T2よりも厚く規定されている。
【0045】
図1の例では平型のハーネス用外装保護部材1に電線挿通用の長手方向のスリットを設けていないが、平型のハーネス用外装保護部材1に電線挿通用の長手方向のスリット(図示せず)を設けることも可能である。スリットがある場合は、電線41(図2)をハーネス用外装保護部材1の端部開口11,12から挿入する必要はなく、スリットを広げてスリット内に電線41を径方向に挿入すればよい。
【0046】
図2(a)は、平型(断面略矩形筒状)のハーネス用外装保護部材1の内部空間50に平型(断面略長円形)の電線41を挿通させた状態を示すものである。図2(b)は、図2(a)の比較例として、丸型(断面円形)のハーネス用外装保護部材51の内部空間52に同じく平型の電線41を挿通させた状態を示すものである。図2(a)の平型のハーネス用外装保護部材1の方が、図2(b)の丸型のハーネス用外装保護部材51に比べて、保護部材1の内周面と電線41の外周面との間の隙間50aが小さく、無駄なスペース52aを生じないことは明らかである。隙間50aが小さいので、平型のハーネス用外装保護部材1の内部における電線41のガタつきも小さく抑えられることは言うまでもない。
【0047】
図2の例の電線41は、複数本(二本)の左右並列な絶縁被覆電線42を合成樹脂製の薄肉のチューブやビニルテープあるいは導電金属性のシールド編組42やシールド皮膜で覆って構成されたものである。電線41はこれらに限られるものではなく、複数本の導体を含む電線を左右方向に並列に例えば束ねて配置したものであればよい。
【0048】
図2(a)の平型のハーネス用外装保護部材1は、図2(b)の丸型のハーネス用外装保護部材51に比べて、上下方向に薄く形成されているので、車両ボディ等の狭いスペース(配索経路)に、車両ボディ等との干渉なく作業性良くスムーズに配索することができる。図2(a)の平型のハーネス用外装保護部材1を90°反転して上下方向を左右方向として車両ボディ等の狭い配索経路に配索することも無論可能である。
【0049】
図3は、参考的に、図1の平型のハーネス用外装保護部材1における溝部4を有する平型のストレート管部3の耐摩耗性を推測するべく、断面円形のハーネス用外装保護部材1Aにおける溝部(4)を有する断面円形のストレート管部3Aの耐摩耗性の確認試験を実施した際の試験方法を示すものである。
【0050】
この試験方法は、ハーネス用外装保護部材1Aのストレート管部(試料)3Aの内部に導電金属製のアルミパイプ16を隙間なく挿通させ、アルミパイプ16内に挿通接続した電線17にリード線18を介して導通測定機19に接続し、ストレート管部3Aの上面に重り20を載せ、重り20に対向してストレート管部3Aの下面に回転自在な導電金属製のローラ21を介して帯状の摩耗テープ22を接触させ、ローラ21を電線25で導通測定機19に接続し、摩耗テープ22はやすり状の部分22aの表面に等ピッチで導電金属部分22bを配置して成る構成の耐摩耗性確認試験機23を用いて行われる。図3で符号24は電線17を受ける支持具を示す。アルミパイプ16や電線17はワイヤハーネスを成す製品であってもよい。図2の例でワイヤハーネスは例えば電線41とハーネス用外装保護部材1とで構成される。
【0051】
そして、ローラ21をストレート管部3Aの外周の円形環状の溝部(4)に対向して配置し、摩耗テープ22を不図示の駆動部でループ状に回転させて、摩耗テープ22のヤスリ状の部分22aでストレート管部3Aの外周面を擦って摩耗させ、ストレート管部3Aが摩耗して孔があいた時点で、摩耗テープ22の導電部分22bがストレート管部3Aの内側のアルミパイプ16に接触して、アルミパイプ16と電線17とリード線18と導通測定機19とローラ21と摩耗テープ22の導電部分22bとで閉回路を構成して、導通測定機19が摩耗テープ22の移動距離を計測表示する。円形環状の溝部(4)は図1の実施形態の溝部4とは矩形環状でない点で相違している。上記耐摩耗性試験における試料であるストレート管部3Aの溝部(4)の深さH1はストレート管部3Aの板厚T1の5?20%の範囲で規定されたものである。
【0052】
ストレート管部3Aの板厚Tが1mmの試料を用いてこの耐摩耗性の確認試験を行った結果、ストレート管部3Aの外周に環状の溝部(4)を設けない完全なストレート管部の耐摩耗性(摩耗テープ22の移動距離)は4050mm、環状の溝部(4)を有するストレート管部3Aの耐摩耗性(摩耗テープの移動距離)は4800mmであり、溝部(4)を有するストレート管部3Aの方が、溝部(4)を有さないストレート管部(外径は何れも同一)よりも耐摩耗性に優れることが判明した。
【0053】
これは、溝部(4)を有さないストレート管部に比べて、溝部(4)の前後の端面4b(図1)の径方向高さH1がある分、溝部(4)を有するストレート管部3Aの表面積が増加し(表面積は、溝部4の前後の端面4bの面積と溝部4の底面4aの面積とを合わせた値となる)、大きな表面積のストレート管部3Aに沿って移動する摩耗テープ22の移動距離が増したことが理由として挙げられる。
【0054】
このように、図1の実施形態のストレート管部3においても、溝部4があることによって、例えば車両ボディやフロア等といった相手側部材の比較的柔軟な部位とストレート管部3とが接触した場合に、耐摩耗性が十分に高まることが推測される。また、車両ボディやフロア等といった相手側部材の硬質な部品とストレート管部3とが接触した場合でも、溝部4の前後の端面4bが削れて摩耗することで、耐摩耗性が高まることが推測される。
【0055】
また、溝部4があることによってストレート管部3の外周面6aの面積が減少し(凸部6の外周面6aの面積は溝部4のない場合よりも少ない)、凸部6が小さな面積で車両ボディやフロア等といった相手側部材に接触することで、凸部6の外周面6aと車両ボディやフロア等といった相手側部材との摺動摩擦抵抗が減少し、それによってストレート管部3の耐摩耗性が向上するということも推測される。
【0056】
上記した耐摩耗性試験以外に、断面円形のストレート管部3Aの曲げ応力確認試験も実施している。曲げ応力確認試験(図示せず)は、ストレート管部3Aを長手方向の前後二箇所の不図示の受け具で支持し、二箇所の受け具の中間において、30°の開き角度の下向きの不図示の突部を有する金属治具でストレート管部3Aを下向きに押圧して曲げた際に発生する最大荷重を測定するものである。
【0057】
この曲げ応力確認試験の結果、溝部(4)を有するストレート管部3Aは、溝部(4)を有さないストレート管部と比べて同等ないしそれ以上の曲げ荷重を発揮することが判明した。この理由として、ストレート管部3Aに設けた極めて浅い溝部(4)の左右の端部(曲げ方向とは直交する方向の端部)における前後の端面4bによって、ストレート管部3Aの曲げ方向の剛性が高まったことが挙げられる。
【0058】
例えば蛇腹管部(2)のように外周と内周とにそれぞれ凹凸7?10があれば、内周と外周との凹凸7?10によって曲げ剛性が低下するが、ストレート管部3Aにおける溝部(4)は極めて浅いものであり、且つ溝部(4)は外周のみに形成され、内周面5には形成されていないので、曲げ剛性はアップする傾向にある(少なくとも溝部4を有さないストレート管部と同等の曲げ剛性を発揮する。
【0059】
この結果は、図1の平型のストレート管部3にも適用されるものと推定される。上記曲げ応力試験における試料であるストレート管部3Aの溝部(4)の深さH1はストレート管部3Aの板厚T1の5?20%の範囲で規定されたものである。なお、ストレート管部3Aを有する断面円形のハーネス用外装保護部材1Aについては本出願人が特願2012-38866で提案済みである。
【0060】
図4(a)(b)は、上記平型のハーネス用外装保護部材1の製造方法の一形態を示すものである。平型のハーネス用外装保護部材1の製造方法には、エアブロー方式による成形とバキュームによる成形との二種類があるが、図4(a)(b)を共通で使用して両成形方法を説明する。
【0061】
エアブロー方式による成形は、図4(a)の樹脂押出機31とブロー式成型機32を用いるもので、押出機31は、樹脂材を投入するホッパ33と、溶融した樹脂材を一定速度で押し出すノズル34とを有し、ブロー式成型機32は、図4(b)の上下の逆方向に回転する複数の金型35を有し、各金型35は、平型の蛇腹管部2を成形するための金型35aと、平型のストレート管部3を成形するための金型(図示せず)とで成る。
【0062】
蛇腹管部成型用の金型35aは、金型送り方向の矩形状の溝部36の内周面に深い溝部36aを移動方向に並列に有し、溝部36の内面で平型の蛇腹管部2の凹部7の底壁(符号7で代用)を形成し、溝部36aの内面で凸部8を形成する。ストレート管部成型用の金型(図示せず)は、平型のストレート管部3の凸部6を形成するための金型送り方向の矩形状の溝部と、平型のストレート管部3の浅い溝部4を形成するための低い突条を矩形状の溝部の内周面において金型移動方向に並列に有している。平型のストレート管部3の浅い溝部4を形成せずに、平型のストレート管部3の外周面を長手方向に平坦に形成する場合は、ストレート管部成型用の金型(図示せず)は金型送り方向の矩形状の溝部のみを有する。
【0063】
ノズル34から金型35内に溶融樹脂材と圧縮エアーを送り込み、平型のハーネス用外装保護部材1の先端を不図示の蓋で閉じた形態で、ハーネス用外装保護部材1を各金型35の内周面に沿って樹脂成型する。成型機32において上下の各金型35を金型送り方向に回転してハーネス用外装保護部材1を連続して押出成形し、長い平型のハーネス用外装保護部材1をドラム(図示せず)に巻き取る。平型のハーネス用外装保護部材1の長手方向にスリットを入れる場合は引取機(図示せず)でスリットを入れて、平型のハーネス用外装保護部材1を束取機(図示せず)に巻き取る。平型のハーネス用外装保護部材1は所要の長さに切断して使用される。
【0064】
バキュームによる成形は、平型のハーネス用外装保護部材1の先端を開口した状態で(蓋を用いずに)、各金型35に設けた孔(図示せず)から金型35内の空間を径方向外側にバキュームして、ノズル34から供給した溶融樹脂材を各金型35の内周面に沿わせてハーネス用外装保護部材1を成形する。上下の各金型35の回転によって平型のハーネス用外装保護部材1を連続して押し出し、引取機(図示せず)でスリットを必要な場合は形成して、束取機で平型のハーネス用外装保護部材1を連続して巻き取る。蛇腹管部成型用の金型35aとストレート管部成型用の金型(図示せず)との形状はブロー式成型機におけると同様である。
【0065】
上記各成形方法において、樹脂押出機31のノズル34からの溶融樹脂材の供給速度は一定であり、図5に示す如く、蛇腹管部成型用の金型35の送り速度を速くして、肉厚の薄い平型の蛇腹管部2を形成し、ストレート管部成型用の金型の送り速度を遅くして、肉厚の厚い平型のストレート管部3を形成する。図5において、縦軸に金型35の送り速度、横軸に平型のハーネス用外装保護部材1の長手方向の位置すなわち平型の蛇腹管部2と平型のストレート管部3とをそれぞれ示している。
【0066】
平型の蛇腹管部2と平型のストレート管部3との境界部分14の剛性を高めるために、金型35の送り速度を平型の蛇腹管部2と平型のストレート管部3との間で図5の如く傾斜状に徐々に高めて、あるいは徐々に緩めて、平型の蛇腹管部2と平型のストレート管部3との境界部分14の肉厚を厚く確保している。前側の平型のストレート管部2から平型の蛇腹管部3にかけて金型の送り速度を徐々に速め(符号Cで示す)、平型の蛇腹管部2から後側の平型のストレート管部3にかけて金型の送り速度を徐々に緩めている(符号Dで示す)。
【0067】
図6,図7は、本発明に係るハーネス用外装保護部材の他の各実施形態を示すものである。図1のハーネス用外装保護部材1が平型の蛇腹管部2と平型のストレート管部3とを有するのに対し、図6,図7のハーネス用外装保護部材1’,1”は、蛇腹管部2とストレート管部3との何れか一方が平型であり、何れか他方が丸型(断面円形)である点で相違している。
【0068】
図6(a)のハーネス用外装保護部材1’は、合成樹脂を材料として、断面円形の蛇腹管部2’(図6(b))と平型(断面略矩形状)のストレート管部3(図6(c))とを一体に形成して成るものである。断面円形の蛇腹管部2’を用いることで、蛇腹管部2’の屈曲性を図1の平型の蛇腹管部2よりも高めることができる。また、平型のストレート管部3を用いることで、ストレート管部3を車両ボディ等の狭いスペース(配索経路)に作業性良くスムーズ且つ確実に配索することができると共に、ストレート管部3の内側に平型の電線41(図2)を省スペースでコンパクトに収容することができ、しかも、従来の丸型のストレート管部に比べて曲げ剛性を高めることができる。
【0069】
図6(c)の平型のストレート管部3は、図1の平型のストレート管部3よりも左右方向の幅D8を狭く規定した例で示している。幅D8を狭くして、図6(b)の断面円形の蛇腹管部2’の外径D5に近づけて、平型のストレート部3と断面円形の蛇腹管部2’との境界部分14の段差を小さく抑えている。断面円形の蛇腹管部2’の内径D2(360°の範囲で均一である)と平型のストレート管部3の短径側の内径D1とは同一であることが、電線の挿通作業性を高める上で好ましい。
【0070】
図6(a)において、平型のストレート管部3の各部の符号は、図1(a)の平型のストレート管部3の各部の符号を流用し、断面円形の蛇腹管部2’の各部の符号は、図1(a)の平型の蛇腹管部2の各部の符号にダッシュを付して、詳細な説明を省略する。
【0071】
図6(b)の断面円形の蛇腹管部2’において、符号7’は蛇腹の凹部(谷部)、符号8’は蛇腹の凸部、符号9’は外向きの凹部(凸部8’の内面)、符号10’は円環状の内周面、符号12’は円形の端部開口をそれぞれ示している。
【0072】
図6(c)の平型のストレート管部3において、符号4は幅狭の浅い溝部、符号5は矩形環状の内周面、符号6は前後の溝部4の間の大径な凸部、符号11は矩形状の端部開口、符号47は長辺部、符号48は短辺部、符号49は四角の交差部をそれぞれ示している。平型のストレート管部3の浅い溝部4を省略することも可能である。
【0073】
図6のハーネス用外装保護部材1’の製造方法としては、図4のエアブロー式又はバキューム式の押出成型機32において、断面円形の蛇腹管部2’を樹脂成形するための金型35と、平型のストレート管部3を樹脂成形するための金型(図示せず)とを用いる。蛇腹管部成形用の金型35は、金型送り方向の断面半円形の溝部(36)(蛇腹管部2’の凹部7’を形成するためのもの)と、断面半円形の溝部(36)の内周面に並列に形成された複数の深い凹溝(蛇腹管部2’の凸部8’を形成するためのもの)とを有しており、ストレート管部成形用の金型(図示せず)は、図1の例と同様に金型送り方向の断面矩形状の溝部(ストレート管部3の凸部6を形成するためのもの)と、断面矩形状の溝部の内周面に並列に形成された複数の低い凸条(ストレート管部3の浅い溝部4を形成するためのもの)とを有している。溝部4を省略する場合は、金型送り方向の断面矩形状の溝部のみを有するストレート管部成形用の金型(図示せず)を用いる。
【0074】
押出成型機32において、ノズル34(図4)からの溶融樹脂材の押出速度は一定であり、断面円形の蛇腹管部2’を成形するための金型35の送り速度を速く規定して、断面円形の蛇腹管部2’の肉厚を薄く形成し、平型のストレート管部3を成形するための金型(図示せず)の送り速度を遅く規定して、平型のストレート管部3の肉厚を厚く形成し、さらに、図5で説明したように、蛇腹管部成形用の金型35とストレート管部成形用の金型(図示せず)との境界部分において金型の送り速度を遅く規定して、断面円形の蛇腹管部2’と平型のストレート管部3との境界部分14の肉厚を厚く形成して、境界部分14の剛性(曲げ強度)を高めることが好ましい。
【0075】
押出成形機32を用いる以外の製造方法としては、一本の直線的な長い射出成形金型(図示せず)を用いて、断面円形の蛇腹管部2’と平型のストレート管部3とを同時に溶融樹脂材で射出成形する方法が挙げられる。この射出成形金型の蛇腹管部成形用の金型は、軸方向の断面半円形の溝部(蛇腹管部2’の凹部7’を形成するためのもの)と、断面半円形の溝部の内周面に並列に形成された複数の深い凹溝(蛇腹管部2’の凸部8’を形成するためのもの)とを有しており、ストレート管部成形用の金型は、軸方向の断面矩形状の溝部(ストレート管部3の凸部6を形成するためのもの)と、断面矩形状の溝部の内周面に並列に形成された複数の低い凸条(ストレート管部3の浅い溝部4を形成するためのもの)とを有している。溝部4を省略する場合は、軸方向の断面矩形状の溝部のみを有するストレート管部成形用の金型を用いる。
【0076】
図7(a)のハーネス用外装保護部材1″は、合成樹脂を材料として、平型(断面略矩形状)の蛇腹管部2(図7(b))と丸型(断面円形)のストレート管部3’(図7(c))とを一体に形成して成るものである。平型の蛇腹管部2を用いることで、蛇腹管部2の屈曲性を維持しつつ、蛇腹管部2を車両ボディ等の狭いスペース(配索経路)に作業性良くスムーズ且つ確実に配索することができ、且つ蛇腹管部2の内側に平型の電線41(図2)を省スペースでコンパクトに収容することができる。また、断面円形のストレート管部3’を用いることで、ストレート管部3’の曲げ剛性を周方向のどの方向に対しても360°の範囲で均一に高めることができる。丸型のストレート管部3’の浅い溝4’を省略して、丸型のストレート管部3’の外周面(6’)を内周面(5’)と同様に平坦に形成することも可能である。
【0077】
図7(b)の平型の蛇腹管部2は、図1の平型の蛇腹管部2よりも左右方向の幅D7を狭く規定した例で示している。幅D7を狭くして、図7(c)の断面円形のストレート管部3’の外径D6に近づけて、平型の蛇腹管部2と断面円形のストレート管部3’との境界部分14の段差を小さく抑えている。平型の蛇腹管部2の内径D2と断面円形のストレート管部3’の内径D1(360°の範囲で均一である)とは同一であることが、電線の挿通作業性を高める上で好ましい。
【0078】
図7(a)において、平型の蛇腹管部2の各部の符号は、図1(a)の平型の蛇腹管部2の各部の符号を流用し、断面円形のストレート管部3’の各部の符号は、図1(a)の平型のストレート管部3の各部の符号にダッシュを付して、詳細な説明を省略する。
【0079】
図7(b)の平型の蛇腹管部2において、符号7は蛇腹の凹部(谷部)、符号8は蛇腹の凸部、符号9は外向きの凹部(凸部8の内面)、符号10は矩形環状の内周面、符号12は矩形状の端部開口をそれぞれ示している。
【0080】
図7(c)の丸型のストレート管部3’において、符号4’は幅狭の浅い溝部、符号5’は円環状の内周面、符号6’は前後の溝部4’の間の大径な凸部、符号11’は矩形状の端部開口をそれぞれ示している。
【0081】
図7のハーネス用外装保護部材1”の製造方法としては、図4のエアブロー式又はバキューム式の押出成型機32において、平型の蛇腹管部2を樹脂成形するための金型35と、断面円形のストレート管部3を樹脂成形するための金型(図示せず)とを用いる。蛇腹管部成形用の金型35は、金型送り方向の断面矩形状の溝部(36)(蛇腹管部2の凹部7を形成するためのもの)と、断面矩形状の溝部(36)の内周面に並列に形成された複数の深い凹溝(蛇腹管部2の凸部8を形成するためのもの)とを有しており、ストレート管部成形用の金型(図示せず)は、金型送り方向の断面円形の溝部(ストレート管部3’の凸部6’を形成するためのもの)と、断面円形の溝部の内周面に並列に形成された複数の低い凸条(ストレート管部3’の浅い溝部4’を形成するためのもの)とを有している。溝部4’を省略する場合は、金型送り方向の断面円形の溝部のみを有するストレート管部成形用の金型(図示せず)を用いる。
【0082】
押出成型機32において、ノズル34(図4)からの溶融樹脂材の押出速度は一定であり、平型の蛇腹管部2を成形するための金型35の送り速度を速く規定して、平型の蛇腹管部2の肉厚を薄く形成し、断面円形のストレート管部3’を成形するための金型(図示せず)の送り速度を遅く規定して、断面円形のストレート管部3’の肉厚を厚く形成し、さらに、図5で説明したように、蛇腹管部成形用の金型35とストレート管部成形用の金型(図示せず)との境界部分において金型の送り速度を遅く規定して、平型の蛇腹管部2と断面円形のストレート管部3’との境界部分14の肉厚を厚く形成して、境界部分14の剛性(曲げ強度)を高めることが好ましい。
【0083】
押出成形機32を用いる以外の製造方法としては、一本の直線的な長い射出成形金型(図示せず)を用いて、平型の蛇腹管部2と断面円形のストレート管部3’とを同時に溶融樹脂材で射出成形する方法が挙げられる。この射出成形金型の蛇腹管部成形用の金型は、軸方向の断面矩形状の溝部(蛇腹管部2の凹部7を形成するためのもの)と、断面矩形状の溝部の内周面に並列に形成された複数の深い凹溝(蛇腹管部2の凸部8を形成するためのもの)とを有しており、ストレート管部成形用の金型は、軸方向の断面半円形の溝部(ストレート管部3’の凸部6’を形成するためのもの)と、断面半円形の溝部の内周面に並列に形成された複数の低い凸条(ストレート管部3’の浅い溝部4’を形成するためのもの)とを有している。溝部4’を省略する場合は、軸方向の断面半円形の溝部のみを有するストレート管部成形用の金型を用いる。
【0084】
なお、上記各実施形態においては、平型の蛇腹管部2や平型のストレート管部3として、断面略矩形状の蛇腹管部2や断面略矩形状のストレート管部3を用いたが、断面略矩形状の他に、平型の蛇腹管部2や平型のストレート管部3として、不図示の断面長円形状の蛇腹管部や断面長円形状のストレート管部を用いることも可能である。また、ストレート管部3の外周の浅い溝部4を省略した場合でも、ストレート管部3を平型としたことで、従来の丸型のストレート管部に比べて高い剛性を発揮させることができる。
【0085】
また、上記各実施形態において、ハーネス用外装保護部材1,1’,1”の蛇腹管部2,2’とストレート管部3,3’との長さや径や数や配置等は必要に応じて適宜設定可能である。例えば、一本のハーネス用外装保護部材1’,1”に一ないしそれ以上の蛇腹管部2,2’と一ないしそれ以上のストレート管部3,3’を適宜レイアウトで配設する場合、大きく屈曲する必要のある位置の蛇腹管部2’のみを断面円形に形成し、車両等の狭いスペースに配索する必要のある位置のストレート管部3のみを平型に形成する等、必要に応じて適宜配置等を規定可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係るハーネス用外装保護部材は、蛇腹管部とストレート管部とで成るハーネス用外装保護部材において、断面長円形(平型)の電線をスペース的な無駄やガタつきなく収容し、また、車両ボディ等の狭い配索経路に、ないしは車両ボディ等の配索経路の形態に応じて、作業性良くスムーズに配索し、しかも、ストレート管部の剛性を高めるために利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1,1’,1” ハーネス用外装保護部材
2 平型の蛇腹管部
2’ 丸型の蛇腹管部
3 平型のストレート管部
3’ 丸型のストレート管部
5 内周面
10 内周面
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-04-06 
出願番号 特願2012-79353(P2012-79353)
審決分類 P 1 651・ 853- YAA (H02G)
P 1 651・ 841- YAA (H02G)
P 1 651・ 851- YAA (H02G)
P 1 651・ 121- YAA (H02G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 甲斐 哲雄  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 山澤 宏
和田 志郎
登録日 2016-01-29 
登録番号 特許第5875151号(P5875151)
権利者 矢崎総業株式会社
発明の名称 ハーネス用外装保護部材とそれを用いたワイヤハーネス  
代理人 川崎 隆夫  
代理人 瀧野 秀雄  
代理人 福田 康弘  
代理人 瀧野 文雄  
代理人 福田 康弘  
代理人 鳥野 正司  
代理人 津田 俊明  
代理人 特許業務法人 もえぎ特許事務所  
代理人 朴 志恩  
代理人 川崎 隆夫  
代理人 瀧野 秀雄  
代理人 朴 志恩  
代理人 津田 俊明  
代理人 瀧野 文雄  
代理人 鳥野 正司  

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