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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特174条1項  A61K
管理番号 1329045
異議申立番号 異議2016-700268  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-31 
確定日 2017-04-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5827052号発明「外用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5827052号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?3〕〔4〕〔5?6〕について訂正することを認める。 特許第5827052号の請求項1?3、4、5?6、7に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5827052号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成23年7月12日に特許出願され、平成27年10月23日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 田中俊子 により特許異議の申し立てがされるとともに、特許異議申立人 中川賢治 により特許異議の申し立てがされ、平成28年8月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年11月15日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人 田中俊子 から平成29年2月13日付けで意見書及び上申書が提出されるとともに、特許異議申立人 中川賢治 から平成29年2月13日付けで意見書が提出され、さらに特許異議申立人 田中俊子 から平成29年3月13日付けで上申書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア?ウのとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%である、皮膚外用組成物。」と記載されているのを、「ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、pHが5?8である、皮膚外用組成物(ただし、(a)40℃の粘度が100cSt以下の炭化水素系油及び/又はブチルステアレートと、(b)ポリオレフィン類と、(c)油膨潤性粉体とを含有する油性組成物を除く)。」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に、「ビタミンA類がパルミチン酸レチノールである、請求項1?3の何れかに記載の組成物。」と記載されているのを、「ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、pHが5?8である、皮膚外用組成物であって、ビタミンA類がパルミチン酸レチノールである組成物。」に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に、「皮膚刺激性を抑えながら肌荒れを改善するための、請求項1?4の何れかに記載の組成物。」と記載されているのを、「ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、pHが5?8である、皮膚外用組成物であって、皮膚刺激性を抑えながら肌荒れを改善するための組成物。」に訂正する。

(2)一群の請求項、訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び新規事項の有無
ア 一群の請求項について
訂正事項1?3に係る訂正は、いずれも、訂正前の請求項1?6について訂正するものであるところ、請求項2は請求項1を、請求項3?5は請求項1及びその前に記載されたいずれかの請求項を、請求項6は請求項5を、それぞれ引用している関係にあるから、訂正前の請求項1?6は、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正事項1?3に係る訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。

イ 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(ア)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明に対して、「pHが5?8である」とするとともに、特定の油性組成物を除外するものである。また、訂正前の請求項2?3は請求項1を引用するものであって、訂正事項1は請求項2及び請求項3に係る発明についても、pHを特定し、特定の油性組成物を除外するものである。
そして、訂正事項1のうち、「pHが5?8である」とする点に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明には「本発明の外用組成物のpHは、約4?9が好ましく、約5?8がより好ましい。」(段落0038)との記載があることから、訂正前の請求項1?3に係る発明において、「pHが5?8である」ことは明細書に記載されているものと認められる。また、訂正事項1のうち、皮膚外用組成物において「(ただし、(a)40℃の粘度が100cSt以下の炭化水素系油及び/又はブチルステアレートと、(b)ポリオレフィン類と、(c)油膨潤性粉体とを含有する油性組成物を除く)」とする点については、平成28年8月29日付けで通知された取消理由において引用された刊行物2(特開2003-95984号公報)に記載された発明を除外する、いわゆる「除くクレーム」とするものであり、この訂正により新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかである。
よって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(イ)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項4に係る発明に対して、「pHが5?8である」とするとともに、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1?3の何れかを引用する形式であったものを、他の請求項を引用しない独立形式請求項に改めるものである。
訂正事項2のうち、「pHが5?8」とした点については、前記(ア)に示したとおり、「pHが5?8である」発明は明細書に記載されているものと認められる。
また、訂正事項2のうち、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1?3の何れかを引用する形式であったものを、他の請求項を引用しない独立形式請求項に改める点は、引用関係の解消を目的とするものである。
よって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮及び引用関係の解消を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項5に係る発明に対して、「pHが5?8である」とするとともに、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1?4の何れかを引用する形式であったものを、他の請求項を引用しない独立形式請求項に改めるものである。また、訂正前の請求項6は請求項5を引用するものであって、訂正事項3によって、請求項5についての訂正と同様、「pHが5?8である」とする訂正がされるものである。
訂正事項3のうち、「pHが5?8」とした点については、前記(ア)に示したとおり、「pHが5?8である」発明は明細書に記載されているものと認められる。
また、訂正事項3のうち、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1?4の何れかを引用する形式であったものを、他の請求項を引用しない独立形式請求項に改める点は、引用関係の解消を目的とするものである。
よって、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮及び引用関係の解消を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1?訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?3〕〔4〕〔5?6〕について訂正を認める。
訂正後の請求項4に係る訂正事項2、訂正後の請求項5?6に係る訂正事項3は、引用関係の解消を目的とする訂正であって、その訂正は認められるものである。そして、特許権者から、訂正後の請求項4、5?6について訂正が認められるときは請求項1とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから、訂正後の請求項〔4〕〔5?6〕については別の訂正単位として訂正することを認める。

3 特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求による訂正後の請求項1?7に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」、……、「本件発明7」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、pHが5?8である、皮膚外用組成物(ただし、(a)40℃の粘度が100cSt以下の炭化水素系油及び/又はブチルステアレートと、(b)ポリオレフィン類と、(c)油膨潤性粉体とを含有する油性組成物を除く)。
【請求項2】
ビタミンA類の含有量に対するヘパリン類似物質の含有量が、重量比で、1:0.01?10である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヘパリン類似物質の含有量が、組成物の全量に対して、0.01?5重量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、pHが5?8である、皮膚外用組成物であって、ビタミンA類がパルミチン酸レチノールである組成物。
【請求項5】
ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、pHが5?8である、皮膚外用組成物であって、皮膚刺激性を抑えながら肌荒れを改善するための組成物。
【請求項6】
肌荒れが乾皮症又は角化症である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物において、ビタミンA類の含有量を、組成物の全量に対して、0.5?1重量%とする、この組成物のビタミンA類による皮膚刺激性を軽減する方法。」

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1?6に係る特許に対して平成28年8月29日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

ア 請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物1:特開2002-205937号公報に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

イ 請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物2:特開2003-95984号公報に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

ウ 請求項1?6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された、
刊行物1:特開2002-205937号公報、
刊行物2:特開2003-95984号公報、
刊行物3:特開平6-32728号公報、
刊行物4:「日本医薬品集 一般薬 2009-10年版」、平成20年9月1日発行、株式会社じほう、683頁、802頁、
刊行物5:「一般薬 日本医薬品集 2004-05年版」、平成15年7月30日発行、株式会社じほう、587頁、588頁、590頁、
刊行物6:日本美容皮膚科学会監修「美容皮膚科プラクティス」、2000年1月20日2刷発行、株式会社南山堂、550?553頁、
刊行物7:「西日本皮膚科」、第69巻第1号、2007年発行、44?49頁、
刊行物8:「ヒルドイド(R)ゲル0.3%添付文書」2008年12月改訂第4版(なお、この「(R)」の字は、原文では下付きの○内にRの文字)、
刊行物9:「皮膚」、第34巻第1号、平成4年2月発行、97?103頁、
刊行物10:特開2004-307491号公報、及び
刊行物11:「西日本皮膚科」、第57巻第2号、1995年発行、311?314頁
に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。

(3)刊行物の記載
ア 刊行物1:特開2002-205937号公報(特許異議申立人 中川賢治 により提出された甲第1号証)の記載
刊行物1には、以下の記載がある。
(記載事項1)


」(段落0067?段落0069)
記載事項1によれば、刊行物1には以下の発明(以下「引用発明1」ともいう。)が記載されていると認められる。
「水相成分として、ヘパリン類似物質 0.30g/100g、尿素 3.00g/100g、アミノ酸 0.10g/100g、ジエチレングリコール 0.10g/100g及び精製水 76.50g/100gを含有し、総水相量 80.00g/100gであり、油相成分として、ビタミンA油 0.50g/100g、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル 3.70g/100g、メチルフェニルポリシロキサン(100mm2/s) 2.00g/100g、スクワラン 5.40g/100g、ラウリルアルコール 1.60g/100g、ミツロウ 1.50g/100g、グリセリン脂肪酸エステル 2.50g/100g、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル 2.50g/100g及びパラベン 0.30g/100gを含有し、総油相量 20.00g/100gである、ビタミン配合保湿クリーム。」

イ 刊行物2:特開2003-95984号公報(特許異議申立人 中川賢治 により提出された甲第2号証)の記載
刊行物2には、以下の記載がある。
(記載事項2-1)
「【0014】(a)成分の炭化水素系油及び/又はブチルステアレートの配合量は、特に制限されるものではないが、配合量が少なすぎると粉末固形製剤となってしまうため、全油性組成物中に10?99質量%、好ましくは30?95質量%である。」(段落0014)

(記載事項2-2)
「【0016】(b)成分のポリオレフィン類の配合量は、特に制限されるものではないが、配合量が多すぎる場合、製造時の粘度が高くなりハンドリング性や出来上がり製剤の使用感が重くなるといった影響を与えるため、全油性組成物中に20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であることが好ましい。」(段落0016)

(記載事項2-3)
「【0018】前記(c)成分の油膨潤性粒子の配合量は、特に制限されるものではないが、配合量が多すぎると(b)成分のポリオレフィン類と同様に流動性が悪くなってしまうため、全油性組成物中に0.1?10質量%、より好ましくは0.5?5質量%であることが好ましい。」(段落0018)

(記載事項2-4)
「【0021】(d)成分の金属石ケン類の配合量は、特に制限されるものではないが、配合量が多すぎる場合、製造時の粘度が高くなりハンドリング性が悪くなり、かつ、使用感が悪くなるため、全油性組成物中に10質量%以下、好ましくは5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下であることが好ましい。」(段落0021)

(記載事項2-5)
「【0023】(e)成分の界面活性剤の配合量は、特に制限されるものではないが、安定性に関する効果及び人体への安全性の観点から、全油性組成物中に0.1?5質量%、更に好ましくは0.1?2質量%である。」(段落0023)

(記載事項(2-6)
「【0025】(f)成分の粒子の配合量は、特に制限されるものではないが、全油性組成物中に0.1?90質量%、更に好ましくは1?70質量%である。」(段落0025)

(記載事項2-7)
「【0027】前記(g)成分の薬効成分の配合量は、特に制限されるものではないが、全油性組成物中に0.01?20質量%、好ましくは0.1?10質量%である。」(段落0027)

(記載事項2-8)
「【0031】
【実施例】以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0032】〔実施例1?17及び比較例1〕表1?表3に示す組成について常法に準じて各油性液状組成物を調製し、下記方法により、油浮き性(離油性)及び使用感の評価を行った。結果を表1?3に併記する。
【0033】<油浮き性(離油性)評価>各組成物について製造1週間後の油浮きの有無を評価した。
<使用感評価>モニター10名による各組成物の使用感を下記基準で評価した。
○:好ましいが7名以上
△:好ましいが4名以上、
×:好ましいが3名以下
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

」(段落0031?段落0036)

記載事項2-1?記載事項2-8によれば、刊行物2には以下の発明(以下、「引用発明2」ともいう。)が記載されていると認められる。
「(a)形質流動パラフィン(CRYSTOL70、12.4cSt/40℃) 残量、(b)低融点ポリエチレン(サンテックPAK0025、融点104℃) 3.5質量%、(c)有機変性粘土鉱物(ニューエスベンD) 1.5質量%、(d)ステアリン酸アルミニウム(モノアルミニウムタイプ) 1.0質量%、(e)モノステアリン酸グリセリル 0.4質量%、(f)ポリスチレン粒子(平均粒子径6μm) 20.0質量%、(g)ヘパリン類似物質 1質量%、ビタミンA 1質量%、及びユーカリ油 0.05質量%である油性液状組成物。」

ウ 刊行物3:特開平6-32728号公報(特許異議申立人 中川賢治 により提出された甲第9号証)の記載
刊行物3には以下の記載がある。
(記載事項3-1)
「【請求項1】ビタミンAと抗炎症薬とを含有することを特徴とする皮膚外用剤。」(特許請求の範囲)

(記載事項3-2)
「【0010】本発明に用いられるビタミンAは別名をレチノールとも言い、通常、医療分野等で小児病、夜盲症の治療や妊娠後の回復剤として利用されている。これらの中でall-trans体もしくは13-cis体を使用することが好ましく、それらの混合物を使用してもかまわない。
【0011】本発明の皮膚外用剤へのビタミンAの配合量については限定はしないが、ビタミンAの肌への効果を考えると0.00001重量%?5.0重量%が好ましく、0.0001重量%?0.5重量%がより好ましい。」(発明の詳細な説明の段落0010?段落0011)

(記載事項3-3)
「【0028】
実施例10 乳液 重量%
(1)ビタミンA 1.0
(2)酢酸ヒドロコルチゾン 0.05
(3)エタノール 2.0
(4)グリセリン 10.0
(5)プロピレングリコール 3.0
(6)カルボキシビニルポリマー 0.3
(7)KOH 0.1
(8)メチルパラベン 0.1
(9)セタノール 2.5
(10)ワセリン 2.0
(11)スクワラン 10.0
(12)イソプロピルミリステート 5.0
(13)グリセリルモノステアレート 2.0
(14)POE(25モル)セチルエーテル 2.0
(15)精製水 残余
製法
常法により本発明の乳液を得た。本発明の乳液は肌荒れ改善効果に優れていた。」(発明の詳細な説明の段落0028)

エ 刊行物4:「日本医薬品集 一般薬 2009-10年版」、株式会社じほう、平成20年9月1日発行、683頁、802頁(特許異議申立人 中川賢治 により提出された甲第10号証)の記載
刊行物4には以下の記載がある。
(記載事項4-1)




(記載事項4-2)




オ 刊行物5:「一般薬 日本医薬品集 2004-05年版、株式会社じほう、平成15年7月30日発行、587頁、588頁、590頁(特許異議申立人 中川賢治 により提出された甲第11号証)の記載
刊行物5には以下の記載がある。
(記載事項5-1)
「甲2-11、アネモネ軟膏


(記載事項5-2)




カ 刊行物6:日本美容皮膚科学会監修「美容皮膚科プラクティス」、株式会社南山堂、2000年1月20日2刷発行、550?553頁(特許異議申立人 中川賢治 により提出された甲第3号証)の記載
刊行物6には以下の記載がある。
(記載事項6-1)
「ビタミンA誘導体(retinoids)(図60-1)には,レチノールretinol(いわゆるビタミンA),トレチノインtretinoin(all-trans-retinoic acid),イソトレチノインisotretinoin(13-cis-retinoic acid)(Accutane(R),エトレチナートetretinate(Tigason(R))がある.」(なお、「(R)」は原文では「○」内に「R」である。)(550頁「1.概念」の項1?3行)

(記載事項6-2)
「トレチノイン・クリームを使用した患者の90%以上に,随伴する皮膚症状がみられている.すなわち紅斑,局所の腫脹,皮膚の乾燥,軽度の軽屑などである.この症状は外用開始早期から出現し,保湿クリームの併用や本剤の外用回数を減らすことによって改善する.またトレチノイン・エモリエントクリームでは同症状が71%にみられている.」(552頁「5.使用方法」の項9?12行)

キ 刊行物7:「西日本皮膚科」、第69巻第1号、2007年発行、44?49頁(特許異議申立人 中川賢治 により提出された甲第4号証)の記載
刊行物7には以下の記載がある。
(記載事項7-1)
「ヘパリン類似物質の保湿作用メカニズム」(44頁2行)

(記載事項7-2)
「ヒルドイド(R),ヒルドイド(R)ソフト,及びヒルドイド(R)ローションの有効成分であるヘパリン類似物質は,…(中略)…角質水分保持増強作用,血流量増加作用及び繊維芽細胞増殖抑制作用などの作用を有している。また,ヒルドイド製剤には保湿剤として比し欠乏症や進行性指掌角皮症などの乾燥性皮膚疾患の改善のほか,…(中略)…多彩な効能が報告されている。」(なお、「(R)」は原文では「○」内に「R」である。)(44頁左下欄2?10行)

ク 刊行物8:「ヒルドイド(R)ゲル0.3%添付文書」2008年12月改訂第4版(ただし、この「(R)」の字は、原文では下付きの○内にRの文字)(特許異議申立人 中川賢治 により提出された甲第6号証)の記載
刊行物8には以下の記載がある。
(記載事項8)




ケ 刊行物9:「皮膚」、第34巻第1号、平成4年2月発行、97?103頁(特許異議申立人 中川賢治 により提出された甲第7号証)の記載
刊行物9には以下の記載がある。
(記載事項9-1)
「1)使用薬剤:市販のヒルドイド(R)軟膏を使用した。本剤はムコ多糖多硫酸エステルであるヘパリン類似物質0.3%,グリセリン14.75%を含有するO/W型基剤のクリームで,防腐剤としてパラベンおよびチモールが添加されている。」(なお、「(R)」は原文では「○」内に「R」である。)(97頁右下欄「使用薬剤,対象および方法」の項1?5行)

(記載事項9-2)




コ 刊行物10:特開2004-307491号公報(特許異議申立人 中川賢治 により提出された甲第5号証)の記載
刊行物10には以下の記載がある。
(記載事項10-1)
「【請求項1】
ヘパリン類似物質と、リドカインと、アミノアルコールとを含むことを特徴とする皮膚外用剤。
…(中略)…
【請求項5】
ビタミンE及び/またはビタミンAを含むことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の皮膚外用剤。」

(記載事項10-2)
「【0013】
本発明の皮膚外用剤は、ヘパリン類似物質(Heparinoid)と、特定の保湿性成分とを含む。ヘパリン類似物質は、ムコ多糖の多硫酸エステルであり、日本薬局方外医薬品規格に収載されたものを好適に用いることができる。皮膚外用剤中におけるヘパリン類似物質の含有量は、例えば0.03?2重量%であり、好ましくは0.1?0.5重量%である。」(発明の詳細な説明の段落0013)

(記載事項10-3)
「【0021】
本発明の皮膚外用剤には、ビタミンAまたはビタミンEを適宜配合することができ、これら両者を組み合わせて配合することもできる。ビタミンAは、レチノール(ビタミンA_(1))の他、3-デヒドロレチノール(ビタミンA_(2))、レチノイン酸(ビタミンA酸)等の形態であっても良い。また、パルミチン酸塩等のカルボン酸塩の形態をはじめ種々の形態をとることができる。一方、ビタミンEは、天然ビタミンや、α?トコフェロール、β?トコフェロール、γ?トコフェロールの他、酢酸トコフェロールやニコチン酸トコフェロール等の誘導体の形態であっても良い。」(発明の詳細な説明の段落0021)

サ 刊行物11:「西日本皮膚科」、第57巻第2号、1995年発行、311?314頁(特許異議申立人 中川賢治 により提出された甲第8号証)の記載
刊行物11には以下の記載がある。
(記載事項11-1)
「ヒルドイド(R)が優れた保湿効果を有することは,従前から進行性指掌角皮症に対する有効性にても示唆されていた。1984年安藤らはヒルドイド(R)の主成分であるヘパリン類似物質(ムコ多糖多硫酸エステル)の保湿能に関する研究結果を報告し,1988年,難波は実験的乾燥性皮膚に対するムコ多糖多硫酸エステルの効果を報告した。その後乾燥性皮膚疾患に対するヒルドイド(R)の臨床効果が相次いで報告され,老人性乾皮症に対する二重盲検左右比較試験により,ヒルドイド(R)はその基剤より有意に優れた効果を示し,また20%尿素軟膏に対しても同等以上の臨床効果を示した。これらをもとに,1990年12月に「皮脂欠乏症」の効能効果が追加承認された。皮脂欠乏症やアトピー性皮膚炎患者の乾燥症状に対しては,従来尿素軟膏やビタミンAを含有する製剤が多用されているが,1992年,須貝はアトピー性皮膚炎におけるヒルドイド(R)の有効性を確認している。」(なお、「(R)」は原文では「○」内に「R」である。)(311頁左下欄「はじめに」の項1?19行)

(記載事項11-2)
「試験には当病院に既採用の下記の市販医薬品を用いた。
ヒルドイド(R)(1g中,ヘパリン類似物質3.0mgを含有する軟膏)
ビタミンA油軟膏(1g中,ビタミンA5000単位を含有するザーネ(R)軟膏)」(なお、「(R)」は原文では「○」内に「R」である。)(311頁右下欄「2.試験薬剤」の項1?6行)

(記載事項11-3)
「ヒルドイド(R)もザーネ(R)軟膏もともに油中水型のクリームの一種であるが,ヒルドイド(R)の方が粘稠度は低く,…(中略)…ヒルドイド(R)とザーネ(R)を同僚を同範囲に塗擦すると,…(後略)。」(なお、「(R)」は原文では「○」内に「R」である。)(314頁左欄11?17行)

(4)判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
(ア)前記(2)アについて
本件発明1?3と引用発明1とを対比すると、引用発明1は「pHが5?8である」と規定されておらず、また、刊行物1の記載を参酌しても引用発明1が「pHが5?8である」ものとは認められないことから、引用発明1は「pHが5?8である」との事項を有するものではない。
したがって、本件発明1?3は、引用発明1ではない。

(イ)前記(2)イについて
本件発明1?3と引用発明2とを対比すると、本件発明1?3は「(ただし、(a)40℃の粘度が100cSt以下の炭化水素系油及び/又はブチルステアレートと、(b)ポリオレフィン類と、(c)油膨潤性粉体とを含有する油性組成物を除く)」との事項を有することにより、引用発明2とは異なるものとなっている。
したがって、本件発明1?3は、引用発明2ではない。

(ウ)前記(2)ウについて
本件発明1?6と引用発明1とを対比すると、上記(ア)に示したとおり、引用発明1は「pHが5?8である」との事項を有するものではない点で相違する。
本件発明1?6が解決しようとする課題は、訂正後の請求項1?6の記載及び明細書の発明の詳細な説明の段落0001、段落0005?段落0010、段落0012、段落0016、段落0066などの記載から、ビタミンA類を含有する皮膚外用組成物において、ビタミンA類による肌への刺激性を抑制し、肌荒れを改善するための皮膚外用組成物を提供することであると認められるところ、刊行物1?11のいずれにも、その課題は記載されておらず、当業界における周知の課題であるとも認められない。
そして、その課題を解決するために、「ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、pHが5?8である、皮膚外用組成物(ただし、(a)40℃の粘度が100cSt以下の炭化水素系油及び/又はブチルステアレートと、(b)ポリオレフィン類と、(c)油膨潤性粉体とを含有する油性組成物を除く)。」とすることについて、刊行物1?11のいずれにも記載も示唆もなく、引用発明1及び刊行物1?11に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
明細書の発明の詳細な説明又は図面(特に、段落0040?0053及び図1?図3)の記載から、本件発明1?6はその発明特定事項を採用することにより、刊行物1?11の記載から当業者が予想し得ない程度に、ビタミンA類を含有する皮膚外用組成物において、ビタミンA類による肌への刺激性を抑制し、肌荒れを改善するという顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明1?6は、刊行物1に記載された発明及び刊行物1?11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)特許異議申立人 田中俊子 の意見について
特許異議申立人 田中俊子 は、平成29年2月13日付け意見書において、技術常識を示す証拠として以下の甲第5号証?甲第10号証を提出しつつ、以下(i)?(iv)の主張をする。
甲第5号証:青柳健太郎 他4名「薬事法・薬剤師法 毒物及び劇物取締法 解説 第20版」、平成22年2月14日、株式会社薬事日報社、第295?296頁、表紙及び奥付
甲第6号証:「第十五改正 日本薬局方解説書 医薬品各条【た行】?【わ行】」、2006年、廣川書店、C-3222?C3223頁及び表紙
甲第7号証:「医薬品用原料|食品の理研ビタミン」(http://www.rikenvitamin.jp/business/health/medicinal.html)1/2?2/2頁、頒布日・印刷日不明、発行元不明
甲第8号証:江藤隆史 他1名監修「軟膏剤の処方・調剤ガイド-皮膚外用剤配合変化一覧表-」、平成15年7月10日、株式会社じほう、序の頁、第2章表題頁、128頁、130頁、表紙及び奥付
甲第9号証:「医薬品インタビューフォーム ヒルドイド(R)クリーム0.3% ヒルドイド(R)ソフト軟膏0.3% ヒルドイド(R)ローション0.3%」第9版、2016年2月改訂、マルホ株式会社、表題頁、「IF利用の手引きの概要-日本病院薬剤師会-」頁、目次の頁及び1?23頁、(「(R)は、原文では○内に文字「R」)
甲第10号証:「医薬品インタビューフォーム 外用ビタミンE・A剤 ユベラ(R)軟膏」改訂第4版、2013年10月作成、サンノーバ株式会社及びエーザイ株式会社、表題頁、「IF利用の手引きの概要-日本病院薬剤師会-」頁、目次の頁、1?27頁及び裏表紙、(「(R)は、原文では○内に文字「R」)

(i) 本件発明1?3は「除くクレーム」によって除かれる部分が不明確であるので明確性要件に違反するものであり、
(ii) 刊行物1の実施例29は引用発明としての適格性を有し、本件発明1?3は刊行物1の実施例29とpHの点で相違するとはいえないので、本件発明1?3は刊行物1に記載された発明に対して新規性を有さないものであり、
(iii) 本件発明1?3は「除くクレーム」によって除かれる部分が不明確であり刊行物2の記載された発明と相違するものにはなっていないので、刊行物2に記載された発明に対して新規性を有しないものであり、
(iv) 刊行物1の実施例29に着目すること、更にpHやビタミンA類に着目することを想起し得ないとの特許権者の主張は失当であり、皮膚外用組成物のpHは皮膚への刺激性等を勘案して適宜設定されるものであり、ビタミンA油についてパルミチン酸レチノールを含むものを選択することも強く動機づけられるものであり、ヘパリン類似物質0.3%とビタミンA油0.5%を含有する皮膚外用組成物とすることは刊行物11の開示内容に基いて当業者が容易になし得たものであり、本件発明1?6の効果に関する特許権者の主張も失当であるから、本件発明1?6は進歩性を有しないものであると主張する。
しかし、これらの主張は以下のとおり、いずれも受け入れられない。
(i) 「除くクレーム」における「40℃の粘度が100cSt以下の炭化水素系油」は当業界において一般的に用いられる粘度測定法による値で規定されるものと認められるから、粘度の測定方法・条件について規定されていないことを以て、その示すものが不明確であるとすることはできない。また、「除くクレーム」における「油膨潤性粉体」は、油により膨潤する性質を有する粉体として当業者に認識されるものであると認められから、「油膨潤性粉体」の「油」の種類及び「膨潤性」の程度が記載されていないことを以て、その示すものが不明確であるとすることはできない。
(ii) 前記(ア)に示したとおり、引用発明1は「pHが5?8である」との事項を有するものではないので、本件発明1?3は引用発明1ではない。
(iii) 上記(i)に示したとおり、本件発明1?3における「除くクレーム」によって除かれる部分が不明確とはいえず、「除くクレーム」により引用発明2が除かれていることは明らかであるから、本件発明1?3は引用発明2ではない。
(iv) 上記(ア)に示したとおり、本件発明1?6と、刊行物1の実施例29についての記載を含む刊行物1の記載から認定される引用発明1を対比すると、引用発明1は「pHが5?8である」との事項を有するものではない点で相違する。
本件発明1?6が解決しようとする課題は、上記(ウ)に示したとおり、ビタミンA類を含有する皮膚外用組成物において、ビタミンA類による肌への刺激性を抑制し、肌荒れを改善するための皮膚外用組成物を提供することであると認められるところ、刊行物1?11のいずれにも、その課題は記載されておらず、特許異議申立人 田中俊子 の提出した甲第5号証?甲第10号証の記載を参酌しても、当業界における周知の課題であるとも認められない。
そして、その課題を解決するために、「ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、pHが5?8である、皮膚外用組成物(ただし、(a)40℃の粘度が100cSt以下の炭化水素系油及び/又はブチルステアレートと、(b)ポリオレフィン類と、(c)油膨潤性粉体とを含有する油性組成物を除く)。」とすることについて、刊行物1?11及び特許異議申立人 田中俊子 の提出した甲第5号証?甲第10号証のいずれにも記載も示唆もなく、引用発明1及び刊行物1?11並びに特許異議申立人 田中俊子 の提出した甲第5号証?甲第10号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
明細書の発明の詳細な説明又は図面(特に、段落0040?0053及び図1?図3)の記載から、本件発明1?6はその発明特定事項を採用することにより、刊行物1?11及び特許異議申立人 田中俊子 の提出した甲第5号証?甲第10号証の記載から当業者が予想し得ない程度に、ビタミンA類を含有する皮膚外用組成物において、ビタミンA類による肌への刺激性を抑制し、肌荒れを改善するという顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明1?6は、刊行物1に記載された発明及び刊行物1?11並びに特許異議申立人 田中俊子 の提出した甲第5号証?甲第10号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(オ)特許異議申立人 中川賢治 の意見について
特許異議申立人 中川賢治 は、平成29年2月13日付け意見書において、以下の参考資料1及び参考資料2を提出しつつ、以下(i)?(iii)の主張をする。
参考資料1:特開2004-307491号公報
参考資料2:特開2002-356420号公報
(i) pHが5?8とすることは皮膚外用組成物において当然必要とされる性質を単に限定したものである。しかも、特許異議申立人 中川賢治 の提出する参考資料1におけるヘパリン類似物質及びビタミンAを含有するローション液の保存安定性とpHとの関係についての記載内容、同参考資料2におけるビタミンA類の安定性とpHとの関係についての記載内容も考慮すると、pHが5?8と限定することは当業者が容易になし得たことに過ぎない。
なお、特許権者による刊行物1の実施例29の組成物のpH測定結果は化学的に信用し難いものである。
(ii) 「(ただし、(a)40℃の粘度が100cSt以下の炭化水素系油及び/又はブチルステアレートと、(b)ポリオレフィン類と、(c)油膨潤性粉体とを含有する油性組成物を除く)」(「除くクレーム」)との事項を有することによっても、取消理由は解消しない。
(iii) ヘパリン類似物質を含有させることにより、ビタミンAによる刺激感を抑え、皮膚刺激を抑制するという技術思想は、刊行物6、刊行物7及び刊行物9の記載から容易に導き出せることであり、刊行物6及び刊行物3の記載内容からも、ビタミンA類を高濃度(0.5%以上)配合することや、さらに保湿作用を期待してヘパリン類似物質を併用することに阻害要因があるとはいえない。
しかし、これらの主張は以下のとおり、いずれも受け入れられない。
(i)及び(iii) 前記(ウ)に示したとおり、本件発明1?6が解決しようとする課題は、訂正後の請求項1?6の記載及び明細書の発明の詳細な説明の記載から、ビタミンA類を含有する皮膚外用組成物において、ビタミンA類による肌への刺激性を抑制し、肌荒れを改善するための皮膚外用組成物を提供することであると認められるところ、刊行物6、刊行物7及び刊行物9を含む刊行物1?11並びに参考資料1及び参考資料2のいずれにも、その課題は記載されておらず、当業界における周知の課題であるとも認められない。
そして、その課題を解決するために、「ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、pHが5?8である、皮膚外用組成物(ただし、(a)40℃の粘度が100cSt以下の炭化水素系油及び/又はブチルステアレートと、(b)ポリオレフィン類と、(c)油膨潤性粉体とを含有する油性組成物を除く)。」とすることについて、刊行物6及び刊行物3を含む刊行物1?11並びに参考資料1及び参考資料2のいずれにも記載も示唆もなく、引用発明1及び刊行物1?11並びに参考資料1及び参考資料2に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
さらに、たとえ、特許権者による刊行物1の実施例29の組成物のpH測定結果が化学的に信用し難いものであるとしても、明細書の発明の詳細な説明又は図面(特に、段落0040?0053及び図1?図3)の記載から、本件発明1?6はその発明特定事項を採用することにより、刊行物1?11の記載から当業者が予想し得ない程度に、ビタミンA類を含有する皮膚外用組成物において、ビタミンA類による肌への刺激性を抑制し、肌荒れを改善するという顕著な効果を奏するものと認められる。
(ii) 上記(イ)に示したとおり、本件発明1?3は「(ただし、(a)40℃の粘度が100cSt以下の炭化水素系油及び/又はブチルステアレートと、(b)ポリオレフィン類と、(c)油膨潤性粉体とを含有する油性組成物を除く)」(「除くクレーム」)との事項を有することにより、引用発明2とは異なるものとなっていることから、本件発明1?3は、引用発明2ではない。

イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(ア)特許異議申立人 田中俊子 の申立理由について
特許異議申立人 田中俊子 は、特許異議申立書において、以下の甲第1号証?甲第4号証を提出しつつ、訂正前の請求項1?7に係る発明に関して、(i)明確性要件違反、(ii)サポート要件違反、(iii)実施可能要件違反、(iv)進歩性欠如及び(v)新規事項追加を主張し、訂正前の請求項1?4に係る発明に関して、新規事項追加を主張する。また、平成29年2月13日付け上申書とともに、以下の甲第11号証を提出し、さらに平成29年3月13日付け上申書を提出し、それら上申書において、本件発明1?本件発明7に関して(iv)進歩性欠如を主張する。
甲第1号証:「日本医薬品集 一般薬 2009-10年版」、平成20年9月1日発行、株式会社じほう、761頁、表紙及び奥付
甲第2号証:「医薬品製造販売指針 2008」、平成20年10月10日発行、株式会社じほう、70-71頁、表紙及び奥付
甲第3号証:特開2004-307491号公報
甲第4号証:久保亮五 他3名、「岩波 理化学事典 第4版」、1987年10月12日発行、1042?1043頁、表紙及び奥付
甲第11号証:「第十五改正 日本薬局方解説書 医薬品各条【た行】?【わ行】」、2006年、廣川書店、C-4736?C4738頁及び表紙

(i) 訂正後の請求項1にいう「ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、」及び訂正後の請求項7にいう「ビタミンA類の含有量を、組成物の全量に対して、0.5?1重量%とする、」における「ビタミンA類の含有量」は、明細書の発明の詳細な説明の段落0014の記載によれば、通常は文言どおり「ビタミンA類の含有量」と解され、ただし、ビタミンA類がビタミンA油の形態で組成物に含まれる場合は、ビタミンA類を溶解させたビタミンA油の重量であると解されるから、不明確であるとはいえない。また、他に、訂正後の各請求項の記載に不明確な点も見出せない。
したがって、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものであり、特許異議申立人 田中俊子 による明確性要件違反との主張は理由がない。

(ii)及び(iii) 明細書の発明の詳細な説明の段落0006の記載によれば、本件発明1?6である皮膚外用組成物の発明及び本件発明7である方法の発明は、いずれも、ビタミンA類による皮膚刺激性を軽減するためのものであって、同段落0009の記載によれば、ビタミンA類の皮膚刺激性が生じるのは、その濃度が高いときであるから、ビタミンA類の含有量が過少であるために所望の効果が生じないような態様は、当然含まれないと解され、本件発明1?7には、発明の課題を解決できない範囲が包含されるとも、明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1?7を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとも、することはできない。
したがって、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものであり、明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号の要件を満たすものであって、特許異議申立人 田中俊子 によるサポート要件違反及び実施可能要件違反との主張は理由がない。

(iv) 特許異議申立人 田中俊子 の提出した甲第3号証:特開2004-307491号公報(特に、第6頁表1及び第10頁表3)には、ヘパリン類似物質0.3重量%及びビタミンA-パルミテート(パルミチン酸レチノール)0.118重量%を含むローション液及びクリームが記載されている。甲第3号証に記載されたローション液及びクリームを、本件発明1?7と対比すると、ビタミンA-パルミテート含有量が0.118重量%である点で少なくとも相違する。
そして、甲第3号証の発明の詳細な説明には
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来技術によると、保湿効果等の経時安定性が不充分であった。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、保湿性成分等の有効成分を含む皮膚外用剤において、長期保存後もpH上昇その他の品質劣化を防ぐことができ、保湿等の効果を持続することのできる皮膚外用剤を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の皮膚外用剤は、ヘパリン類似物質と、リドカインと、アミノアルコール(アルカノールアミン)とを含むことを特徴とする。また、本発明の皮膚外用剤は、別の態様において、ヘパリン類似物質と、ピロリドンカルボン酸塩とを含むことを特徴とする。」(段落0007?段落0010)との記載があることから、甲第3号証には、皮膚外用剤に対して、ヘパリン類似物質と、リドカインと、アミノアルコールとを含ませることにより、保湿効果等の経時安定性の向上を図ることが記載されていると認められるところ、上記のヘパリン類似物質0.3重量%及びビタミンA-パルミテート0.118重量%を含むローション液及びクリームにおいて、ビタミンA-パルミテートの含有量を変更する動機づけも、ビタミンA-パルミテートをビタミンA油に変更する動機づけも、見出せない。
そして、本件発明1?7は、ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物において、ビタミンA類の含有量を組成物の全量に対して0.5?1重量%とすることにより、組成物のビタミンA類による皮膚刺激性を当業者の予想し得ない程度に顕著に軽減する効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明1?7は、特許異議申立人 田中俊子 の提出した甲3号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないので、特許異議申立人 田中俊子 による進歩性欠如との主張は理由がない。

(v) 願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明は「皮膚刺激性を抑えながら肌荒れを改善するための」という用途限定のある外用組成物であり、同請求項7?11に係る発明は「肌荒れ改善用」という用途限定のある外用組成物であったところ、補正により、請求項1?6に係る発明の用途が請求項の文言上不明となった。しかしながら、上記皮膚外用組成物として、明細書の発明の詳細な説明に記載されているものは、一貫して、「皮膚刺激性を抑えながら肌荒れを改善するための」もののみであるから、この用途限定を文言上削除しても、請求項1?6に係る発明は、この用途限定のあるものと解される。
よって、この出願は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとはいえず、特許異議申立人 田中俊子 による新規事項追加との主張は理由がない。

(イ)特許異議申立人 中川賢治 の申立理由について
特許異議申立人 中川賢治 は、特許異議申立書において、甲第1号証?甲第11号証を提出しつつ、訂正前の請求項1?3に係る発明に関し、新規性欠如及び進歩性欠如を主張し、訂正前の請求項1?7に係る発明に関し、進歩性欠如を主張する。
しかし、前記3(2)に示したとおり、特許異議申立人 中川賢治 の提出した
甲第1号証は、取消理由通知で引用した刊行物1であり、
甲第2号証は、取消理由通知で引用した刊行物2であり、
甲第3号証は、取消理由通知で引用した刊行物6であり、
甲第4号証は、取消理由通知で引用した刊行物7であり、
甲第5号証は、取消理由通知で引用した刊行物10であり、
甲第6号証は、取消理由通知で引用した刊行物8であり、
甲第7号証は、取消理由通知で引用した刊行物9であり、
甲第8号証は、取消理由通知で引用した刊行物11であり、
甲第9号証は、取消理由通知で引用した刊行物3であり、
甲第10号証は、取消理由通知で引用した刊行物4であり、
甲第11号証は、取消理由通知で引用した刊行物5であるところ、
本件発明1?3は、刊行物1に記載された発明ではなく、刊行物2に記載された発明でなく、本件発明1?6は、刊行物1に記載された発明及び刊行物1?11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことは、前記3(4)アに示したとおりである。
また、本件発明7について、その解決しようとする課題は、訂正後の請求項7の記載及び明細書の発明の詳細な説明の段落0001、段落0005?段落0010、段落0012、段落0016、段落0066などの記載から、ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物において、ビタミンA類による皮膚刺激性を軽減することと認められるところ、特許異議申立人 中川賢治 の提出した甲第1号証?甲第11号証のいずれにも、その課題は記載されておらず、当業界における周知の課題であるとも認められない。
そして、その課題を解決するために、「ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物において、ビタミンA類の含有量を、組成物の全量に対して、0.5?1重量%とする」ことについて、同甲第1号証?甲第11号証のいずれにも記載も示唆もなく、同甲第1号証に記載された発明及び同甲第1号証?甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に想到し得たものとは認められない。
明細書の発明の詳細な説明又は図面(特に、段落0040?0053及び図1?図3)の記載から、本件発明7はその発明特定事項を採用することにより、同甲第1号証?甲第11号証の記載から当業者が予想し得ない程度に、ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物において、ビタミンA類による皮膚刺激性を軽減するという顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明7も、同甲第1号証に記載された発明及び同甲第1号証?甲第11号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
以上のとおり、本件発明1?7は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないので、特許異議申立人 中川賢治 による進歩性欠如との主張は理由がない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人 田中俊子 の提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び特許異議申立人 中川賢治 の提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?3、4、5?6、7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?3、4、5?6、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、pHが5?8である、皮膚外用組成物(ただし、(a)40℃の粘度が100cSt以下の炭化水素系油及び/又はブチルステアレートと、(b)ポリオレフィン類と、(c)油膨潤性粉体とを含有する油性組成物を除く)。
【請求項2】
ビタミンA類の含有量に対するヘパリン類似物質の含有量が、重量比で、1:0.01?10である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヘパリン類似物質の含有量が、組成物の全量に対して、0.01?5重量%である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、pHが5?8である、皮膚外用組成物であって、ビタミンA類がパルミチン酸レチノールである組成物。
【請求項5】
ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含み、ビタミンA類の含有量が、組成物の全量に対して、0.5?1重量%であり、pHが5?8である、皮膚外用組成物であって、皮膚刺激性を抑えながら肌荒れを改善するための組成物。
【請求項6】
肌荒れが乾皮症又は角化症である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ビタミンA類及びヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物において、ビタミンA類の含有量を、組成物の全量に対して、0.5?1重量%とする、この組成物のビタミンA類による皮膚刺激性を軽減する方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-04-11 
出願番号 特願2011-154200(P2011-154200)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A61K)
P 1 651・ 113- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 55- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今村 明子  
特許庁審判長 内藤 伸一
特許庁審判官 山本 吾一
村上 騎見高
登録日 2015-10-23 
登録番号 特許第5827052号(P5827052)
権利者 ロート製薬株式会社
発明の名称 外用組成物  
代理人 岩谷 龍  
代理人 勝又 政徳  
代理人 勝又 政徳  
代理人 岩谷 龍  
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