• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
管理番号 1329051
異議申立番号 異議2016-700939  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-30 
確定日 2017-04-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5897360号発明「LED用ソルダーレジストを形成するための組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5897360号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし8〕について訂正することを認める。 特許第5897360号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5897360号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成24年3月15日を出願日とする特許出願であって、平成28年3月11日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人長幸江(以下「異議申立人」という。)により請求項1ないし8に係る特許について特許異議の申立てがされ、平成28年11月18日付けで請求項1ないし8に係る特許について取消理由が通知され、平成29年1月23日に意見書の提出及び訂正請求(以下「本件訂正」という。)があり、同年同月31日付けで異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知がされ、同年3月2日に異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 本件訂正について
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、次の(1)及び(2)のとおりである。
(1)訂正事項1
請求項1において、
「(B2)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して200ないし300質量部の充填材」とあるのを、
「(B2)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して200ないし300質量部のタルク及び硫酸バリウムである充填材」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし8も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0019】において、
「成分(B2)に使用され得る充填材としては、タルク、硫酸バリウム、シリカ等が挙げられる。
また、アンダーコート層に光を前面に反射する効果を付与する目的で、充填材として、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、チタン酸バリウムなどを添加することもできる。」とあるのを、
「成分(B2)に使用され得る充填材としては、タルク及び硫酸バリウムが挙げられる。」に訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
後記第3の2(1)アのとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)において、請求項1ないし8の記載と発明の詳細な説明の記載(特に、実施例)が整合していないため、請求項1ないし8におけるアンダーコート層を形成するための組成物の成分(B2)である「充填材」に何が含まれるのかが明らかではなく、請求項1ないし8の記載は明確ではなかったところ、訂正事項1は、「充填材」に何が含まれるのかを明確にするために、請求項1の「充填材」を「タルク及び硫酸バリウムである充填材」と訂正し、請求項2ないし8も同様に訂正するものであるから、訂正事項1係る訂正は、明瞭でない記載の釈明(特許法第120条の5ただし書第2項第3号)を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
本件特許明細書の実施例1?8のアンダーコート層を形成するための組成物において(段落【0026】、【0033】、【0034】。実施例1?8のアンダーコート層の組成は同じである。)、「ルチル型酸化チタン、タルク、硫酸バリウム及びシリカ」が合計で350質量部(エポキシアクリレート樹脂である光重合反応性ポリマー100質量部に対する含有量。以下、充填材などの無機粒子の含有量はエポキシアクリレート樹脂である光重合反応性ポリマー100質量部に対する含有量で表記する。)含まれており、「ルチル型酸化チタン、タルク、硫酸バリウム及びシリカ」の全てが成分(B2)である「充填材」とすると、実施例1?8は全て、請求項1ないし8の「充填材」の含有量である「200ないし300質量部」から外れるものとなり、請求項1ないし8の記載と実施例1?8の「充填材」の含有量とが整合しない。
他方、比較例4と5(段落【0031】)には、「実施例1の2)における充填材(タルク及び硫酸バリウム)の使用量を○○g・・・とした以外は、実施例1と同様の操作を行って」との記載があることから、実施例1?8においても「充填材」として「タルク及び硫酸バリウム」を用い、ルチル型酸化チタンとシリカは、「充填材」として添加されているものではないと理解することが可能であり、そのように理解すると、実施例1?8における「充填材」である「タルク及び硫酸バリウム」の含有量は、227質量部となり、請求項1ないし8の記載と整合する。
そうすると、本件特許明細書の上記記載に接した当業者は、実施例1ないし8において、200?300質量部の範囲で添加されている「充填材」は、「タルク及び硫酸バリウム」であると解するのが自然であり、実施例1ないし8は、成分(B2)として「タルク及び硫酸バリウムである充填材」を200?300質量部の範囲で含む発明に対応する具体例として記載されていると理解するのが相当である。
したがって、訂正事項1により、成分(B2)として、エポキシアクリレート樹脂である光重合反応性ポリマー100質量部に対して200?300質量部含まれる「充填材」を、「タルク及び硫酸バリウムである充填材」とすることは、本件特許明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとは認められず、訂正事項1に係る訂正は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、一群の請求項ごとに請求されたものである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1に伴い、訂正後の請求項の記載と発明の詳細な説明の記載の整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。そして、一群の請求項ごとに請求されたものである。

(3)異議申立人の意見について
ア 異議申立人は、実施例1のアンダーコート層を形成するための組成物における「充填材」の割合は、訂正前は、特許請求の範囲に含まれなかったものが、訂正後は、特許請求の範囲に含まれることになり、少なくともこの点で、特許請求の範囲が拡張されており、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的としないことが明らかであり、特許法第120条の5第2項ただし書に適合しないものである旨を主張する。

しかし、訂正事項1に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書に適合するものであることは、上記(1)アのとおりである。
したがって、異議申立人の上記意見は採用することはできない。

イ 異議申立人は、訂正前は特許請求の範囲に含まれていたものが、訂正後は、特許請求の範囲に含まれなくなる場合(タルクと硫酸バリウムの合計割合が150質量部、シリカが50質量部である場合)もあるから、少なくともこの点で、訂正事項1は、特許請求の範囲を縮小することになり、訂正事項1は、上記アにおいて主張するとおり特許請求の範囲を拡張する部分に加えて、縮小する部分を含むから、実質上特許請求の範囲を変更するものであることが明らかであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合しないものである旨を主張する。

しかしながら、後記第3の2(1)アのとおり、訂正前の請求項1ないし8の「充填材」に何が含まれるのか明確ではなく、訂正前の特許請求の範囲の記載は明確であるとはいえず、実施例1が訂正前の特許請求の範囲に含まれるか否かが明らかではなかったのである。
したがって、実施例1が訂正前の特許請求の範囲に含まれていたことを前提とする異議申立人の上記主張は採用できない。
なお、訂正前の特許請求の範囲の記載が明確であるとはいえないことは、異議申立人が、異議申立書(第43頁第17行?第44頁第4行)の「(5)-5 取消理由3,4(サポート要件違反ないし明確性違反)について」の項目の(ア-2)において主張するとおりである。

ウ 異議申立人は、本件特許明細書の段落【0019】の(B2)充填材に関する記載が、「タルク及び硫酸バリウムである充填材のみ」について記載されているものとはいえず、また、「タルク及び硫酸バリウムの合計で227質量部」を使用する実施例1の一点のデータから、「(B2)光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して200ないし300質量部のタルク及び硫酸バリウムである充填材」との範囲まで拡張できるとはいえないから、訂正事項1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内の訂正であるとはいえないから、新規事項を追加するものである旨を主張する。

しかし、上記(1)イのとおり、本件特許明細書の記載に接した当業者は、実施例1?8において、200?300質量部添加されている充填材は「タルク及び硫酸バリウム」であると解するのが自然であり、訂正事項1は、本件特許明細書の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとは認められず、訂正事項1は、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、異議申立人が主張する、実施例1の一点のデータから特許請求の範囲まで拡張できるか否かは、特許法第36条第6項第1号のサポート要件に関する論点であって、新たな技術的事項を導入する新規事項か否かとは直接は関係がない。
したがって、異議申立人の上記主張は採用することはできない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5ただし書第2項第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する特許法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
よって、本件訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明1ないし8に係る発明
上記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、平成29年1月23日に提出された訂正請求書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「訂正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明8」という。)。

「【請求項1】 白色インク層とアンダーコート層の2層からなる完全UV硬化型のLED用ソルダーレジストを形成するための組成物であって、
前記白色インク層を形成するための組成物は、
(A1)ウレタンアクリレート樹脂又はウレタンアクリレート樹脂とエポキシアクリレート樹脂との混合物である光重合反応性ポリマー、
(A2)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して100ないし170質量部の白色顔料、及び
(A3)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して10ないし50質量部の光重合開始剤を含み、そして、前記アンダーコート層を形成するための組成物は、
(B1)エポキシアクリレート樹脂である光重合反応性ポリマー、
(B2)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して200ないし300質量部のタルク及び硫酸バリウムである充填材、及び
(B3)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して10ないし50質量部の光重合開始剤
を含む、
完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項2】 前記成分(B1)のエポキシアクリレート樹脂が、ビスフェノール型エポキシアクリレート樹脂である請求項1記載の完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項3】 前記白色インク層を形成するための組成物が、更に、
(A4)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して10ないし40質量部の3官能以上のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含む、請求項1又は2記載の完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項4】 前記白色インク層を形成するための組成物が、更に、(A5)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して30ないし70質量部の2官能以下のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含む、請求項1ないし3の何れか1項に記載の完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項5】 前記白色インク層を形成するための組成物が、更に、
(A6)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して70ないし120質量部の充填材を含む、請求項1ないし4の何れか1項に記載の完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項6】 前記アンダーコート層を形成するための組成物が、更に、
(B4)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して100ないし160質量部の3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含む、請求項1ないし5の何れか1項に記載の完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項7】 前記アンダーコート層を形成するための組成物が、更に、
(B5)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して20ないし70質量部の2官能以下のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含む、請求項1ないし6の何れか1項に記載の完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項8】 白色インク層とアンダーコート層の2層からなる完全UV硬化型のLED用ソルダーレジストを形成する方法であって、
1)基板上に、請求項1ないし7の何れか1項に記載のアンダーコート層を形成するための組成物からなる溶液を塗布する工程、
2)UVを照射してアンダーコート層を硬化させる工程、
3)硬化したアンダーコート層上に、請求項1ないし7の何れか1項に記載の白色インク層を形成するための組成物からなる溶液を塗布する工程、及び
4)UVを照射して白色インク層を硬化させる工程
を含む方法。」

2 取消理由について
(1)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし8に係る特許に対して、平成28年11月18日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
ア 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)(以下「取消理由1」という。)
本件特許明細書の段落【0019】の記載からみて、請求項1の「充填材」には、「タルク、硫酸バリウム、シリカ、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、チタン酸バリウム」が少なくとも含まれると解すると、実施例1は、「充填材」である「ルチル型酸化チタン、タルク、硫酸バリウム及びシリカ」を350質量部含んでいることから、「充填材」含有量が200?300質量部である請求項1に係る発明の実施例ではないと解され、また、比較例4の「実施例1の2)における充填材(タルク及び硫酸バリウム)の使用量を・・・192質量部)とした以外は、実施例1と同様の操作を行っ」たとの記載も明確ではないから、本願特許明細書の全ての記載に照らすと、請求項1における「充填材」としてどのようなものが含まれるのかが、不明確である。
したがって、請求項1に係る特許及び請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである。

イ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)(以下「取消理由2」という。)
特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明の課題は、「白色顔料を高充填し、それにより高反射率を維持しつつ、それに伴う硬化不良を改善することができ、熱による変色が少なく且つ基板との密着性に優れる、完全UV硬化型のLED用ソルダーレジストを形成するための組成物を提供すること」(段落【0003】)であると認められるが、本件特許明細書の段落【0019】の記載からみて、請求項1の「充填材」に、「タルク、硫酸バリウム、シリカ、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、チタン酸バリウム」が少なくとも含まれると解すると、実施例1は、その「充填材」の含有量は350質量部となり、本願請求項1ないし8に係る発明に含まれないにもかかわらず上記課題を解決しているものであり、また、比較例4及び5は、上記課題を解決できないものであるが、使用した充填材の種類と含有量が明確ではない。
したがって、本願請求項1ないし8に係る発明は、「充填材」の含有量が200?300質量部の範囲において、当該課題を解決できることを、発明の詳細な説明の記載により当業者が認識できるとはいえないから、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。

(2)判断
ア 取消理由1(明確性要件)について
本件特許発明1ないし8において、「充填材」に関し「タルク及び硫酸バリウムである充填材」であることが特定されたので、本件特許発明1ないし8の記載は、訂正明細書の段落【0019】の「成分(B2)に使用され得る充填材としては、タルク及び硫酸バリウムが挙げられる。」との記載、及び、「タルク及び硫酸バリウム」が227重量部含まれる実施例1ないし8の記載とも整合する。
したがって、本件特許発明1ないし8における「充填材」は、「タルク及び硫酸バリウムである充填材」であることが明確となったので、取消理由1は理由がない。

イ 取消理由2(サポート要件)について
(ア)本件特許発明1ないし8は、成分(B2)として、200ないし300質量部の「タルク及び硫酸バリウムである充填材」を用いるものであり、「白色顔料を高充填し、それにより高反射率を維持しつつ、それに伴う硬化不良を改善することができ、熱による変色が少なく且つ基板との密着性に優れる、完全UV硬化型のLED用ソルダーレジストを形成するための組成物を提供すること」(段落【0003】)を課題とするものである。

(イ)訂正明細書の段落【0019】には、「成分(B2)に使用され得る充填材としては、タルク及び硫酸バリウムが挙げられる。・・・・
成分(B2)の充填材の使用量は、前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して200ないし300質量部であり、好ましくは、230ないし270質量部である。
成分(B2)の充填材の使用量が200質量部未満であると、白色インク層との密着性が不十分となり、300質量部を超えると、基板との密着性が不十分となるため、好ましくない。」と記載され、実施例1ないし8においては、成分(B2)の充填材としてタルク及び硫酸バリウムを合計で227質量部含み、その他の添加剤としてルチル型酸化チタンとシリカを123質量部含むアンダーコート層を使用すると、鉛筆硬度、密着性及び耐熱性に関し優れた効果を奏することが記載され、上記課題が解決できることが理解できる(段落【0025】?【0027】、【0029】、【0033】、【0034】)。
他方、比較例4又は5においては、実施例1のタルク及び硫酸バリウムの含有量を192質量部又は305質量部に変更した以外は、実施例1と同じアンダーコート層を使用すると、白色インク層又は基板との密着性が不分であったことが記載され、上記課題が解決できないことが理解できる(段落【0031】、【0032】)。

(ウ)そうすると、当業者は、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載により、成分(B2)としてタルク及び硫酸バリウムである充填材を、実施例1?8の含有量(227質量部)を包含する200?300質量部としたアンダーコート層を形成する組成物を用いる本件特許発明1ないし8は、上記課題を解決できることを認識することができる。
したがって、本件特許発明1ないし8は、訂正明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるから、取消理由2は、理由がない。

ウ 異議申立人の意見について
(ア)異議申立人は、特許権者が出願後に提出した実験成績証明書、及び出願時に認識していなかった理由(タルクと硫酸バリウムの形状と密着性との関係)を後付けした特許権者の意見書の記載によって、訂正後の特許発明が当該発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものとなったとしても、サポート要件は、本来出願時において満足しているものと思料されるから、依然として、本件特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである旨を主張する。
しかしながら、上記イのとおり、本件特許の出願当時の技術常識に照らすと、当業者は、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載により、本件特許発明1ないし8が、当該発明の課題を解決できること認識することができるのであって、出願後に提出した実験成績証明書などの意見書の記載によってサポート要件を満たすこととなったものではない。
したがって、異議申立人の上記意見は採用することはできない。

(イ)異議申立人は、段落【0032】には、比較例3の白色インク層における白色顔料、すなわち、ルチル型酸化チタン及び硫酸バリウムなどの使用量が密着性に影響することが記載され、また、特許権者の意見書に記載された試験結果において、シリカとルチル型酸化チタンの使用量が比較的多い場合の試験がされていないことから、特許権者による意見書の試験結果を参照しても、充填材としてのタルク及び硫酸バリウムのみの量を200?300質量部と規定した本件特許発明1?8は、依然として、当該発明の課題を解決できることを認識できるとはいえない旨を主張する。

しかし、異議申立人が指摘する段落【0032】の記載は、白色インク層における白色顔料の使用量に関する記載であって、アンダーコート層におけるシリカとルチル型酸化チタンの使用量について言及するものではないから、当該記載により、直ちに、アンダーコートを形成するための組成物におけるシリカとルチル型酸化チタンの量を特定していない本件特許発明1ないし8は、当該発明の課題を解決できないものを包含するとはいえない。
また、本件特許の出願当時の技術常識からみて、シリカとルチル型酸化チタンは、本件特許発明1ないし8のアンダーコート層において通常多量に添加される成分であるということもできないから、特許権者が提出した実験成績証明書において、必須の成分ではないシリカとルチル型酸化チタンの使用量が比較例多い場合の試験がされていないからといって、当業者は、本件特許発明1ないし8が当該発明の課題を解決できることを認識することはできないとはいえない。
したがって、異議申立人の上記意見は採用することはできない。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由として、異議申立人は、以下の甲第1号証?甲第8号証(以下、順に「甲1」?「甲8」という。)を提出し、おおむね次のア及びイを主張する。

甲1:台湾特許出願公開第200936705号公報(部分訳を参照)
甲2:特開2011-216687号公報
甲3:特開平9-183920号公報
甲4:日本合成化学|スペシャリティポリマー UV-3000B
http://www.nichigo.co.jp/spp/products/shiko/UV-3000B.html
甲5:特開2010-117703号
甲6:国際公開第2002/48794号
甲7:特開2009-194222号公報
甲8:特開昭62-10175号公報

ア 訂正前の請求項1及び2に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、訂正前の請求項1及び2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 訂正前の請求項1ないし8に係る発明は、甲1に記載された発明及び公知技術(甲2?3、5?8)に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、訂正前の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)判断
ア 甲1発明
甲1には、第8頁第14?20行、第10頁第13行?第11頁第2行、第13頁第13?15行、第16頁第10?13行、表1-2(第18頁)、第19頁第8?12行、第23頁第18?20行、第23頁第23行?第24頁第2行及び図1?3の記載(異議申立人が提出した部分訳参照)、特に図3(b’)の記載からみて、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「下層を形成するソルダーレジスト及び上層を形成する白色硬化性樹脂組成物からなる、発光素子が実装されたプリント配線板に塗布する組成物であって、該白色硬化性樹脂組成物が、光硬化性樹脂100質量部に対して、ルチル型酸化チタンの配合率が好ましくは30?600質量部、光重合開始剤の配合率が好ましくは0.1?20質量部である組成物である、発光素子が実装されたプリント配線板に塗布する組成物。」

イ 本件特許発明1について
(ア)本件特許発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「上層を形成する白色硬化性樹脂組成物」、「下層を形成するソルダーレジスト」、「ルチル型酸化チタン」、「光硬化性樹脂」は、それぞれ本件特許発明1の「白色インク層を形成するための組成物」、「アンダーコート層を形成するための組成物」、「白色顔料」、「光重合反応性ポリマー」に相当する。また、甲1発明の「発光素子が実装されたプリント配線板に塗布する組成物」は、その機能からみて、本件特許発明1の「ソルダーレジスト形成組成物」に相当する。
したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、
「白色インク層とアンダーコート層の2層からなる発光素子用ソルダーレジストを形成するための組成物であって、前記白色インク層を形成するための組成物は、
(A1)光重合反応性ポリマー、
(A2)白色顔料、
(A3)光重合開始剤を含む、発光素子用ソルダーレジスト形成組成物。」
である点で一致し、少なくとも次の点において相違する。

<相違点1>
本件特許発明1は、白色インク層が、(A1)ウレタンアクリレート樹脂又はウレタンアクリレート樹脂とエポキシアクリレート樹脂との混合物である光重合体反応性ポリマーを含み、アンダーコート層が、(B1)エポキシアクリレート樹脂である光重合反応性ポリマーを含むのに対し、甲1発明は、対応する事項が特定されていない点。

(イ)相違点1の検討
上記相違点1について検討する。
甲1には、白色硬化性樹脂組成物において用いられる光硬化性樹脂である光重合性オリゴマーとして、ウレタン(メタ)アクリレートやエポキシ(メタ)アクリレートなど多数のものが例示され(第10頁第13行?第11頁2行)、表1-2には、350nmの光照射により硬化するエポキシアクリレートを使用した白色硬化性樹脂組成物が記載されている(第18頁、第19頁第8?12行)。
また、甲1には、白色硬化性樹脂組成物のみの1層を設けた図1及び図2について、「発光素子が実装されたプリント配線板の最外層の絶縁材料である白色硬化性樹脂組成物そのものを高反射率の白色レジストとする形態である。」(第23頁第18?20行)と記載され、白色硬化性樹脂組成物とソルダーレジストの2層とした図3について、「プリント配線板に直接塗布するソルダーレジストは緑色等の有色または白色のものを用いた上で、当該ソルダーレジスト層をプリント配線板に実装された発光素子をくり抜くように加工する(図3(a)及び(a’)参照)。」(第23頁第23行?第24頁第2行)と記載されている。
しかし、甲1には、甲1発明において、「上層を形成する白色硬化性樹脂組成物」として、ウレタン(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレートとエポキシ(メタ)アクリレートとの混合物を用い、同時に、「下層を形成するソルダーレジスト」として、「エポキシ(メタ)アクリレート」を用いるという特定の組合せとすることは、記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ということはできない。

また、甲2?3、5?8にも、上記の特定の組合せとした、2層のソルダーレジストを形成する組成物については記載も示唆もされていないから、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の構成を採用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲1?3、5?8の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

ウ 本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし7は、本件特許発明1の発明特定事項を全て包含する発明であり、また、本件特許発明8は、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用するLED用ソルダーレジストを形成する方法の発明である。
したがって、本件特許発明1と同様の理由により、本件特許発明2は、甲1に記載された発明ではなく、また、本件特許発明2ないし8は、甲1発明及び甲1?3、5?8の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

エ 小括
以上によれば、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由によっても、本件特許発明1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
LED用ソルダーレジストを形成するための組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED用ソルダーレジストを形成するための組成物に関するものであり、詳細には、高い光反射性を維持し、硬化性に優れ、熱による変色が少なく且つ基板との密着性に優れる、白色インク層とアンダーコート層の2層からなる完全UV硬化型のLED用ソルダーレジストを形成するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の白色LED用ソルダーレジストは、UV硬化後に熱硬化という工程を必要とする熱硬化型であるものが多い。その理由は、反射率を向上させるために酸化チタン等の白色顔料を高充填させる必要があり、そのため、完全UV硬化型では硬化不良になり易く、それにより密着性、耐熱性の低下を引き起こし易くなるためである。
しかし、このように白色顔料が高充填されたLED用ソルダーレジストは、硬化後の塗膜が硬くて脆くなり、それにより、耐熱試験後に基板との密着不良を起こし易くなるという問題があった。
一方、完全UV硬化型では硬化不良による前記特性の低下を改善するために、白色顔料の充填料を減らして、効果不良を引き起こさない対策を施しているが、高い反射率を確保するのが困難になるという問題が解決されない。
また、LED用ソルダーレジストには、耐熱性に優れる、ビスフェノール樹脂やノボラック樹脂が一般的に用いられるが、これらの樹脂は、熱処理により変色し易いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、白色顔料を高充填し、それにより高反射率を維持しつつ、それに伴う硬化不良を改善することができ、熱による変色が少なく且つ基板との密着性に優れる、完全UV硬化型のLED用ソルダーレジストを形成するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、LED用ソルダーレジストを白色インク層とアンダーコート層の2層とし、白色インク層を形成するための組成物において、光重合反応性ポリマーとしてウレタンアクリレート樹脂又はウレタンアクリレート樹脂とエポキシアクリレート樹脂との混合物を使用すると共に白色顔料を高充填し、アンダーコート層を形成するための組成物において、熱耐性に優れる光重合反応性ポリマーを用いると共に微細な粒子である充填材を多く含ませると、白色インク層とアンダーコート層の2層からなるLED用ソルダーレジストをUV硬化により形成した際、得られたLED用ソルダーレジストは、白色顔料が高充填された白色インク層により高反射率が維持され、UV硬化により硬化不良を引き起こさず、熱による変色も少なく且つ基板との密着性にも優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
従って、本発明は、
[1]白色インク層とアンダーコート層の2層からなるLED用ソルダーレジストを形成するための組成物であって、
前記白色インク層を形成するための組成物は、
(A1)ウレタンアクリレート樹脂又はウレタンアクリレート樹脂とエポキシアクリレート樹脂との混合物である光重合反応性ポリマー、
(A2)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して100ないし170質量部の白色顔料、及び
(A3)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して10ないし50質量部の光重合開始剤
を含み、そして、前記アンダーコート層を形成するための組成物は、
(B1)エポキシアクリレート樹脂である光重合反応性ポリマー、
(B2)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して200ないし300質量部の充填材、及び
(B3)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して10ないし50質量部の光重合開始剤
を含む、
LED用ソルダーレジスト形成組成物、
[2]前記成分(B1)のエポキシアクリレート樹脂が、ビスフェノール型エポキシアクリレート樹脂である前記[1]記載のLED用ソルダーレジスト形成組成物、
[3]前記白色インク層を形成するための組成物が、更に、
(A4)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して10ないし40質量部の3官能以上のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含む、前記[1]又は[2]記載のLED用ソルダーレジスト形成組成物、
[4]前記白色インク層を形成するための組成物が、更に、
(A5)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して30ないし70質量部の2官能以下のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含む、前記[1]ないし[3]の何れか1つに記載のLED用ソルダーレジスト形成組成物、
[5]前記白色インク層を形成するための組成物が、更に、
(A6)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して70ないし120質量部の充填材を含む、前記[1]ないし[4]の何れか1つに記載のLED用ソルダーレジスト形成組成物、
[6]前記アンダーコート層を形成するための組成物が、更に、
(B4)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して100ないし160質量部の3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含む、前記[1]ないし[5]の何れか1つに記載のLED用ソルダーレジスト形成組成物、
[7]前記アンダーコート層を形成するための組成物が、更に、
(B5)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して20ないし70質量部の2官能以下のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含む、前記[1]ないし[6]の何れか1つに記載のLED用ソルダーレジスト形成組成物、
[8]白色インク層とアンダーコート層の2層からなるLED用ソルダーレジストを形成する方法であって、
1)基板上に、前記[1]ないし[8]の何れか1つに記載のアンダーコート層を形成するための組成物からなる溶液を塗布する工程、
2)UVを照射してアンダーコート層を硬化させる工程、
3)硬化したアンダーコート層上に、前記[1]ないし[8]の何れか1つに記載の白色インク層を形成するための組成物からなる溶液を塗布する工程、及び
4)UVを照射して白色インク層を硬化させる工程
を含む方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、白色顔料を高充填し、それにより高反射率を維持しつつ、それに伴う硬化不良を改善することができ、熱による変色が少なく且つ基板との密着性に優れる、完全UV硬化型のLED用ソルダーレジストを形成するための組成物が提供される。
本発明のLED用ソルダーレジストを形成するための組成物は、完全に光硬化型であり、硬化後、熱処理後を問わず、塗膜変色を抑え、塗膜不良が発生しないため、LED用ソルダーレジストの形成方法としても優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、基板表面にLED用ソルダーレジストが形成されたLED基板の斜視図を示す。
【図2】図2は、白色インク層とアンダーコート層の2層からなるLED用ソルダーレジストが形成された基板の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明の白色インク層とアンダーコート層の2層からなるLED用ソルダーレジストを形成するための組成物は、
前記白色インク層を形成するための組成物が、
(A1)ウレタンアクリレート樹脂又はウレタンアクリレート樹脂とエポキシアクリレート樹脂との混合物である光重合反応性ポリマー、
(A2)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して100ないし170質量部の白色顔料、及び
(A3)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して10ないし50質量部の光重合開始剤
を含み、そして、前記アンダーコート層を形成するための組成物が、
(B1)エポキシアクリレート樹脂である光重合反応性ポリマー、
(B2)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して200ないし300質量部の充填材、及び
(B3)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して10ないし50質量部の光重合開始剤
を含むことを特徴とする。
【0009】
前記白色インク層を形成するための組成物に付き以下に説明する。
成分(A1)として使用され得るウレタンアクリレート樹脂としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、ポリオール及びヒドロキシアクリレート系化合物等を反応せしめて得られたもの、脂肪族ポリイソシアネート、ポリオール及びヒドロキシアクリレート系化合物等を反応せしめて得られたもの、芳香族ポリイソシアネートとヒドロキシアクリレート系化合物を反応せしめて得られたもの、脂肪族ポリイソシアネートとヒドロキシアクリレート系化合物を反応せしめて得られたもの等を挙げることができ、ポリエーテルウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルウレタンアクリレート樹脂の何れも使用することができる。
上記ウレタンアクリレート樹脂は1種類の化合物を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
【0010】
成分(A1)に使用され得るエポキシアクリレート樹脂(ビニルエステル樹脂とも記載される)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂にアクリル酸及び/又はメタクリル酸等を反応せしめて得られたビスフェノール型エポキシアクリレート樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、m-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂にアクリル酸及び/又はメタクリル酸等を反応せしめて得られたノボラック型エポキシアクリレート樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂にアクリル酸及び/又はメタクリル酸等を反応せしめて得られたビフェニル型エポキシアクリレート樹脂や、更にこれを臭素化したもの等が挙げられる。
上記エポキシアクリレート樹脂は1種類の化合物を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
【0011】
具体的なエポキシアクリレート樹脂の構造としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【化1】

(式中、R_(1)及びR_(2)はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、塩素原子又は臭素原子を表し、nは2ないし10を表す。)
【化2】

(式中、R_(3)及びR_(4)はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、mは2ないし10を表す。)
【化3】

[式中、R_(5)は、
-(CH_(2)-CHR_(7)-O)_(q)-CH_(2)-CH(OH)-CH_(2)-O-C(O)-CR_(8)=CH_(2)
(式中、R_(7)及びR_(8)はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、qは0又は1を表す。)を表し、R_(6)はそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、塩素原子又は臭素原子を表し、pは2ないし10を表す。)
【化4】

[式中、R_(9)は、
-(CH_(2)-CHR_(10)-O)_(s)-CH_(2)-CH(OH)-CH_(2)-O-C(O)-CR_(11)=CH_(2)
(式中、R_(10)及びR_(11)はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表し、sは0又は1を表す。)を表し、rは2ないし10を表す。)
【0012】
成分(A2)に使用され得る白色顔料としては、ルチル型酸化チタンやチタン酸バリウム等が挙げられ、特に、ルチル型酸化チタンが好ましい。
上記白色顔料は1種類の化合物を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
成分(A2)の白色顔料の使用量は、前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して100ないし170質量部であり、好ましくは、130ないし150質量部である。
成分(A2)の白色顔料の使用量が、100質量部未満では、白度(光反射性)が不足し、170質量部を超えると、白度(光反射性)は十分であるものの、反応性やアンダーコート層との密着性が不十分となるため好ましくない。
【0013】
成分(A3)に使用され得る光重合開始剤としては、チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4-ブロモベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系光重合開始剤、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルエチルアセタール等のケタール化合物、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α-ヒドトキシ-2-メチルフェニルプロパノン、1-ヒドロキシ-1-メチルエチル-(p-イソプロピルフェニル)ケトン、1-ヒドロキシ-1-(p-ドデシルフェニル)ケトン等のα-ヒドロキシケトン、α-アミノアセトフェノン等のアミノケトン、ビス-(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジペントキシフェニルホスフィンオキシド等のビスアシルホスフィンオキシド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルホスフィンオキシド等のモノアシルホスフィンオキシド、ジベンゾイル等が挙げられる。
上記光重合開始剤は1種類を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
成分(A3)の光重合開始剤の使用量は、前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して10ないし50質量部であり、好ましくは、20ないし40質量部である。
【0014】
前記白色インク層を形成するための組成物は、更に、
(A4)3官能以上のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含み得る。
成分(A4)に使用され得る3官能以上のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーとしては、例えば、ポリオールと(メタ)アクリル酸とのエステル、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート等が挙げられ、また、トリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと(メタ)アクリル酸とのトリエステル等が挙げられる。
上記モノマーは1種類の化合物を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
成分(A4)の光重合反応性モノマーの使用量は、前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して10ないし40質量部であり、好ましくは、15ないし25質量部である。
【0015】
前記白色インク層を形成するための組成物は、更に、
(A5)2官能以下のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含み得る。
成分(A5)に使用され得る2官能以下のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーとしては、アルコール又はグリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。
上記モノマーは1種類の化合物を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
成分(A5)の光重合反応性モノマーの使用量は、前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して30ないし70質量部であり、好ましくは、40ないし60質量部である。
成分(A5)の光重合反応性モノマーの使用量が、30質量部未満であると、反応性が不十分となりやすく、70質量部を超えると、アンダーコート層上への印刷性が不十分となりやすいため、好ましくない。
【0016】
前記白色インク層を形成するための組成物は、更に、
(A6)充填材を含み得る。
成分(A6)に使用され得る充填材としては、タルク、硫酸バリウム、シリカ等が挙げられる。
上記充填材は1種類を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
組成物の粘度、Ti値、反射率、隠蔽性などを調整するために、充填材を組み合わせて使用するのが好ましい。
使用する充填材は、基材との密着性及び白色インク層との密着性を向上させるために、微粉末であるものが好ましく、更に、超微粉末であるものが好ましい。
充填材の平均粒径としては、0.1ないし10μmが挙げられ、好ましくは、0.5ないし3μmが挙げられ、また、0.5ないし2μmが挙げられる。
成分(A6)の充填材の使用量は、前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して70ないし120質量部であり、好ましくは、90ないし110質量部である。
【0017】
前記白色インク層を形成するための組成物は、前記成分(A1)ないし(A6)に加えて、消泡剤、レベリング剤、分散剤、シランカップリング剤等の他の添加剤を使用することもできる。
上記添加剤を使用する際は、上記の1種類を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
上記添加剤を使用する際の使用量は、前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して5ないし20質量部であり、好ましくは、7ないし15質量部である。
【0018】
次に、前記アンダーコート層を形成するための組成物に付き以下に説明する。
成分(B1)に使用され得るエポキシアクリレート樹脂(ビニルエステル樹脂とも記載される)としては、成分(A1)において、エポキシアクリレート樹脂として例示されたものと同様のものを使用することができる。
成分(B1)のエポキシアクリレート樹脂は1種類の化合物を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
【0019】
成分(B2)に使用され得る充填材としては、タルク及び硫酸バリウムが挙げられる。
使用する充填材は、基材との密着性及び白色インク層との密着性を向上させるために、微粉末であるものが好ましく、更に、超微粉末であるものが好ましい。
充填材の平均粒径としては、1ないし50μmが挙げられ、好ましくは、1ないし20μmが挙げられ、また、5ないし10μmが挙げられる。
上記充填材は1種類を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
組成物の粘度、Ti値、反射率、隠蔽性などを調整するために、充填材を組み合わせて使用するのが好ましい。
成分(B2)の充填材の使用量は、前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して200ないし300質量部であり、好ましくは、230ないし270質量部である。
成分(B2)の充填材の使用量が200質量部未満であると、白色インク層との密着性が不十分となり、300質量部を超えると、基板との密着性が不十分となるため、好ましくない。
【0020】
成分(B3)に使用され得る光重合開始剤としては、成分(A3)において、光重合開始剤として例示されたものと同様のものを使用することができる。
成分(B3)の光重合開始剤は1種類の化合物を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
成分(B3)の光重合開始剤の使用量は、前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して10ないし50質量部であり、好ましくは、20ないし40質量部である。
【0021】
前記アンダーコート層を形成するための組成物は、更に、
(B4)3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含み得る。
成分(B4)に使用され得る3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合反応性モノマーとしては、成分(A4)において、3官能以上のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーとして例示されたものと同様のものを使用することができる。
成分(B4)の光重合反応性モノマーは1種類の化合物を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
成分(B4)の光重合反応性モノマーの使用量は、前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して100ないし160質量部であり、好ましくは、110ないし150質量部である。
成分(B4)の光重合反応性モノマーの使用量が100質量部未満であると、反応性が不十分となりやすく、160質量部を超えると、基板との密着性が不十分となりやすくなるため、好ましくない。
【0022】
前記アンダーコート層を形成するための組成物は、更に、
(B5)2官能以下のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含み得る。
成分(B5)に使用され得る2官能以下のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーとしては、成分(A5)において、2官能以下のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーとして例示されたものと同様のものを使用することができる。
成分(B5)の光重合反応性モノマーは1種類の化合物を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
成分(B5)の光重合反応性モノマーの使用量は、前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して20ないし70質量部であり、好ましくは、30ないし60質量部である。
【0023】
前記アンダーコート層を形成するための組成物は、前記成分(B1)ないし(B5)に加えて、消泡剤、レベリング剤、分散剤、シランカップリング剤等の他の添加剤を使用することができる。
上記添加剤を使用する際は、上記の1種類を単独で使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
上記添加剤を使用する際の使用量は、前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して5ないし30質量部であり、好ましくは、7ないし20質量部である。
【0024】
本発明はまた、白色インク層とアンダーコート層の2層からなるLED用ソルダーレジストを形成する方法であって、
1)基板上に、上述のアンダーコート層を形成するための組成物からなる溶液を塗布する工程、
2)UVを照射してアンダーコート層を硬化させる工程、
3)硬化したアンダーコート層上に、上述の白色インク層を形成するための組成物からなる溶液を塗布する工程、及び
4)UVを照射して白色インク層を硬化させる工程
を含む方法にも関する。
LED用ソルダーレジストの形成方法を図2を用いて説明する。
基板3に、研磨、ケミカルエッチング等の表面処理を施した後、前記アンダーコート層を形成するための組成物を予め混合・分散させた溶液を、基板3上に、厚さ5ないし30μm、好ましくは10ないし20μmになるように塗布し、UV(700ないし1500mJ)を照射してアンダーコート層2を形成(硬化)させる。
次いで、硬化したアンダーコート層2の表面を洗浄した後、前記白色インク層を形成するための組成物を予め混合・分散させた溶液を、アンダーコート層2上に、厚さ5ないし30μm、好ましくは10ないし20μmになるように塗布し、UV(1500ないし2000mJ)を照射して白色インク層1を形成(硬化)させることにより、LED用ソルダーレジストを形成することができる。
【実施例】
【0025】
実施例1
1)白色インク層を形成するための組成物の調製
ビスフェノール型ビニルエステル樹脂(商品名:VR-90)10.3g、エステル系ウレタンアクリレート樹脂(商品名:UX-5000)14.7gを、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)4.4g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート6.4g、1,4-ブタンジオールジメタクリレート5.8g、シリコン系消泡剤(商品名:TSA-750S)2g及び密着改善剤(シラン系カップリング剤)1gの混合溶媒に十分溶解させた。
次に、上記混合溶液に、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン2.6g、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)5.1g、チタン酸バリウム3.2g、ルチル型酸化チタン32g、タルク(超微粉末タルク:平均粒径1μm)25.6gを配合し、3本混練ロールにて分散させることにより、白色インク層を形成するための組成物を調製した。
【0026】
2)アンダーコート層を形成するための組成物の調製
ビスフェノール型ビニルエステル樹脂(商品名:VR-77)10.5g、フェノールノボラック型エポキシアクリレート(商品名:SP-4010)4.6gを、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)15.6g、特殊アクリレート(多官能)THEIC(トリス-(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート)系(商品名:M-327)4.5g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート8.0g、シリコン系消泡剤(商品名:TSA-750S)1g及び密着改善剤(シラン系カップリング剤)1.4gの混合溶媒に十分溶解させた。
次に、上記混合溶液に、ジベンゾイル0.5g、2-エチルアントラキノン(EAQ)0.35g、1,1-ベンジルジメチルケタール0.8g、ルチル型酸化チタン2.6g、タルク(超微粉末タルク:平均粒径5-10μm)29.7g及び硫酸バリウム4.6gを配合し、3本混練ロールにて分散させた。
次に、シリカ(微粉末シリカ:平均粒径5-10μm)16.0gを配合し、3本混練ロールにて分散させることにより、アンダーコート層を形成するための組成物を調製した。
【0027】
3)LED用ソルダーレジストの形成
表面処理した基板上に、上記2)で調製したアンダーコート層を形成するための組成物を、厚さ15μmになるように塗布した。
次いで、水銀灯を用いて、1000mJ(80W、3灯)の照射条件で露光を行った。
次いで、硬化したアンダーコート層の塗布面を洗浄した後、アンダーコート層上に、上記1)で調製した白色インク層を形成するための組成物を膜厚15μmにて塗布した。
次いで、水銀灯を用いて2000mJ(80W、3灯)の照射条件で露光して、LED用ソルダーレジストを形成した。
【0028】
比較例1
実施例1の3)において、表面処理した基板上に、アンダーコート層を形成せず、白色インク層のみを形成した。
【0029】
試験例1
実施例1で作成した、アンダーコート層と白色インク層の2層が形成された基板と、比較例1で作成した、白色インク層のみが形成された基板において、鉛筆硬度、密着性及び耐熱性に関する評価試験を行った。
評価試験結果を表1に示した。
尚、各試験における評価方法及び評価基準は以下の通りとした。
<鉛筆硬度>:JIS K 5400 8.4 手かき法に準じて評価を行った。
<密着性>:JIS K 5400 8.5 Xカットテープ法に準じて評価を行った。
評価基準
◎:端欠けも無く、100/100密着している。
○:端欠けがあるが、100/100密着している。
△:50?100/100の密着。
×:0?49/100の密着。
<耐熱性>:260℃の半田槽に10秒浸漬し評価した。
評価基準
◎:膜の剥離や半田のもぐりの発生が認められない。
○:ランド周りにわずかな半田のもぐりが認められる。
△:ランド周りに膨れが生じる。
×:膜の剥離が生じる。
【表1】

【0030】
比較例2
実施例1の1)における白色顔料(チタン酸バリウム及び酸化チタン)の使用量を24g(光重合反応性ポリマー100質量部に対して96質量部)とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、LED用ソルダーレジストを形成した。
比較例3
実施例1の1)における白色顔料(チタン酸バリウム及び酸化チタン)の使用量を43g(光重合反応性ポリマー100質量部に対して172質量部)とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、LED用ソルダーレジストを形成した。
【0031】
比較例4
実施例1の2)における充填材(タルク及び硫酸バリウム)の使用量を29g(光重合反応性ポリマー100質量部に対して192質量部)とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、LED用ソルダーレジストを形成した。
比較例5
実施例1の2)における充填材(タルク及び硫酸バリウム)の使用量を46g(光重合反応性ポリマー100質量部に対して305質量部)とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、LED用ソルダーレジストを形成した。
【0032】
試験例2
比較例2ないし5で作成した基板を、白度(光反射性)、反応性(硬化性)、密着性、印刷性(塗布性)等の観点で実施例1で作成した基板と比較した。
比較例2の基板(白色インク層における白色顔料の使用量が光重合反応性ポリマー100質量部に対して96質量部)では、白度(光反射性)が不足した。
比較例3の基板(白色インク層における白色顔料の使用量が光重合反応性ポリマー100質量部に対して172質量部)では、白度(光反射性)は十分であったが、ポリマーの光重合反応性やアンダーコート層との密着性が不十分であった。
比較例4の基板(アンダーコート層における充填材の使用量が光重合反応性ポリマー100質量部に対して192質量部)では、白色インク層との密着性が不十分であった。
比較例5の基板(アンダーコート層における充填材の使用量が光重合反応性ポリマー100質量部に対して305質量部)では、基板との密着性が不十分であった。
【0033】
実施例2ないし4及び比較例6ないし8
実施例1の1)における光重合反応性ポリマー(100質量部)を表2に記載されているような光重合反応性ポリマーの組み合わせ(合計100質量部)変えた以外は実施例1と同様の操作を行って、実施例2ないし4及び比較例6ないし8の基板を作成し、鉛筆硬度、密着性及び変色に関する評価試験を行った。
評価試験結果を表2に示した。
尚、各試験における評価方法及び評価基準は以下の通りとした。
<鉛筆硬度>:JIS K 5400 8.4 手かき法に準じて評価を行った。
評価基準
◎:4H以上
○:2?3H
△:H
×:F以下
<密着性>:JIS K 5400 8.5 Xカットテープ法に準じて評価を行った。
評価基準
◎:端欠けも無く、100/100密着している。
○:端欠けがあるが、100/100密着している。
△:50?100/100の密着。
×:0?49/100の密着。
<変色>:270℃のオーブンに5分間放置後、目視にて評価した。
評価基準
◎:入れる前のものと比べ、全く変色が見られない。
○:入れる前のものと比べると、少し黄変が見られる。
△:比べなくても多少の変色がわかる。
×:変色が見られる。
また、表2中のP1ないしP6は、以下を意味する。
P1:フェノールノボラック型エポキシアクリレート樹脂(商品名:SP-4010)
P2:クレゾールノボラック型エポキシアクリレート樹脂(商品名:SP-4060)
P3:ビスフェノール型ビニルエステル樹脂(商品名:VR-77)
P4:ビスフェノール型ビニルエステル樹脂(商品名:VR-90)
P5:ビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂(商品名:8314)
P6:エステル系ウレタンアクリレート樹脂(商品名:UX-5000)
【表2】

【0034】
実施例5ないし8
実施例1の2)における光重合反応性ポリマー(100質量部)を表3に記載されているような光重合反応性ポリマーの組み合わせ(合計100質量部)を変えた以外は実施例1と同様の操作を行って、実施例5ないし8の基板を作成し、鉛筆硬度及び密着性(基板との密着性:密着性1、白色インク層との密着性:密着性2)に関する評価試験を行った。
評価試験結果を表3に示した。
尚、各試験における評価方法及び評価基準は上記と同様にして行った。
また、表3中のP1ないしP4も上記と同様のポリマーを意味する。
【表3】

【符号の説明】
【0035】
1:白色インク層
2:アンダーコート層
3:基板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 白色インク層とアンダーコート層の2層からなる完全UV硬化型のLED用ソルダーレジストを形成するための組成物であって、
前記白色インク層を形成するための組成物は、
(A1)ウレタンアクリレート樹脂又はウレタンアクリレート樹脂とエポキシアクリレート樹脂との混合物である光重合反応性ポリマー、
(A2)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して100ないし170質量部の白色顔料、及び
(A3)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して10ないし50質量部の光重合開始剤
を含み、そして、前記アンダーコート層を形成するための組成物は、
(B1)エポキシアクリレート樹脂である光重合反応性ポリマー、
(B2)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して200ないし300質量部のタルク及び硫酸バリウムである充填材、及び
(B3)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して10ないし50質量部の光重合開始剤
を含む、
完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項2】 前記成分(B1)のエポキシアクリレート樹脂が、ビスフェノール型エポキシアクリレート樹脂である請求項1記載の完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項3】 前記白色インク層を形成するための組成物が、更に、
(A4)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して10ないし40質量部の3官能以上のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含む、請求項1又は2記載の完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項4】 前記白色インク層を形成するための組成物が、更に、
(A5)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して30ないし70質量部の2官能以下のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含む、請求項1ないし3の何れか1項に記載の完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項5】 前記白色インク層を形成するための組成物が、更に、
(A6)前記光重合反応性ポリマー(A1)100質量部に対して70ないし120質量部の充填材を含む、請求項1ないし4の何れか1項に記載の完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項6】 前記アンダーコート層を形成するための組成物が、更に、
(B4)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して100ないし160質量部の3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含む、請求項1ないし5の何れか1項に記載の完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項7】 前記アンダーコート層を形成するための組成物が、更に、
(B5)前記光重合反応性ポリマー(B1)100質量部に対して20ないし70質量部の2官能以下のアクリロイル基を有する光重合反応性モノマーを含む、請求項1ないし6の何れか1項に記載の完全UV硬化型のLED用ソルダーレジスト形成組成物。
【請求項8】 白色インク層とアンダーコート層の2層からなる完全UV硬化型のLED用ソルダーレジストを形成する方法であって、
1)基板上に、請求項1ないし7の何れか1項に記載のアンダーコート層を形成するための組成物からなる溶液を塗布する工程、
2)UVを照射してアンダーコート層を硬化させる工程、
3)硬化したアンダーコート層上に、請求項1ないし7の何れか1項に記載の白色インク層を形成するための組成物からなる溶液を塗布する工程、及び
4)UVを照射して白色インク層を硬化させる工程
を含む方法。
【図面】


 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-03-31 
出願番号 特願2012-58966(P2012-58966)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08F)
P 1 651・ 121- YAA (C08F)
P 1 651・ 537- YAA (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 昭浩  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 藤原 浩子
大島 祥吾
登録日 2016-03-11 
登録番号 特許第5897360号(P5897360)
権利者 サンワ化学工業株式会社
発明の名称 LED用ソルダーレジストを形成するための組成物  
代理人 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所  
代理人 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ