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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1329068
異議申立番号 異議2016-700525  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-08 
確定日 2017-05-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5828835号発明「熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5828835号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1-15〕について訂正することを認める。 特許第5828835号の請求項1-15に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯
特許第5828835号の請求項1ないし15に係る特許についての出願は、平成23年3月29日(優先日 平成22年4月8日)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年10月30日にその特許権の設定登録がされ、同年12月9日に特許公報が発行され、平成28年6月8日付け(受理日:同月9日)で特許異議申立人坂田純子(以下、単に「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において同年8月12日付けで取消理由が通知され、同年10月14日付け(受理日:同月17日)で意見書が提出されるとともに訂正の請求がされたので、異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、同年11月30日に意見書が提出され、同年12月15日付けで取消理由(以下、単に「取消理由2」という。)が通知され、平成29年2月17日付け(受理日:同月20日)で意見書が提出されるとともに訂正の請求がされたので、異議申立人に対して特許法第120条の5第5項に基づく通知をしたところ、同年4月5日に意見書が提出されたものである。


第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
平成29年2月17日付けでされた訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)による訂正の内容は、次のとおりである。 (なお、平成28年10月14日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものと見なされる。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「(A-1)平均粒径0.1?2μmのフィラー成分、(A-2)平均粒径2?20μmのフィラー成分、(A-3)平均粒径20?100μmのフィラー成分を含有してなり、」
とあるのを
「(A-1)平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分、(A-2)平均粒径3.5μm以上8μm未満のフィラー成分、(A-3)平均粒径30μm以上80μm以下のフィラー成分」
と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「混合割合が、(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は5?25質量%、(A-2)は25?40質量%、(A-3)は50?65質量%である」
とあるのを
「混合割合が、(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は10?20質量%、(A-2)は25?35質量%、(A-3)は50?60質量%である」
と訂正する

(3)訂正事項3
願書に添付した明細書(以下、「明細書」という。)の【0043】に
「実施例18」
とあるのを
「参考例18」
と訂正する。
また、明細書の【0060】の【表3】に
「実施例18」
とあるのを
「参考例18」
と訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の【0045】に
「実施例20」
とあるのを
「参考例20」
と訂正する。
また、明細書の【0061】の【表4】に
「実施例20」
とあるのを
「参考例20」
と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項ごとか否か、明細書又は図面の訂正に係る請求項の全てについて訂正の請求を行っているか
(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1に(A-1)として、「平均粒径0.1?2μmのフィラー成分」とあったのを「平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分」とするものであり、平均粒径が0.1μm、2μmのフィラー成分が(A-1)に含まれるのかを明確にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、同じく(A-2)として、「平均粒径2?20μmのフィラー成分」とあったのを「平均粒径3.5μm以上8μm未満のフィラー成分」とするものであり、平均粒径の下限値及び上限値を特定すると共に、その間の範囲を限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的し、また、特許請求の範囲を減縮するものに該当する。
また、同じく(A-3)として、「平均粒径20?100μmのフィラー成分」とあったのを「平均粒径30μm以上80μm以下のフィラー成分」とするものであるから、(A-2)の訂正と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的し、また、特許請求の範囲を減縮するものに該当する。
また、訂正事項1は、明細書の段落【0013】に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項1に(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は「5?25質量%」とあったのを「10?20質量%」とするものであり、特許請求の範囲を減縮するものに該当する。
そして、同じく(A-2)は「25?40質量%」、(A-3)は「50?65質量%」とあったのを(A-2)は「25?35質量%」、(A-3)は「50?60質量%」とするものであり、これらは同様に、特許請求の範囲を減縮するものに該当する。
また、訂正事項2は、明細書の段落【0014】に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3及び訂正事項4
訂正事項3及び訂正事項4は、訂正事項2によって、特許請求の範囲の(A-1)?(A-3)の各成分の割合が訂正され、特許請求の範囲での各成分の割合を満たしていた「例」が特許請求の範囲での各成分の割合を満たさないこととなったことに伴い、そのような「例」を「実施例」から「参考例」に訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3及び訂正事項4は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、訂正事項3及び訂正事項4は、願書に添付した明細書の訂正であるが、本件訂正の請求は、明細書の訂正に係る全ての請求項について行うものである。

(4)一群の請求項
訂正事項1及び訂正事項2は、訂正前の請求項1に係るものであり、訂正前の請求項2ないし15は請求項1を直接的に又は間接的に引用するものである。そして、訂正事項3及び訂正事項4は発明の詳細な説明の記載に係るものである。
よって、訂正事項1ないし4は、一群の請求項に対して請求されたものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正の請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3及び4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし15について訂正することを認める。


第3 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし15に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明15」という。)は、本件訂正の請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
下記(A)?(D)成分を含有してなる組成物。
(A)(A-1)平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分、(A-2)平均粒径3.5μm以上8μm未満のフィラー成分、(A-3)平均粒径30μm以上80μm以下のフィラー成分を含有してなり、混合割合が、(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は10?20質量%、(A-2)は25?35質量%、(A-3)は50?60質量%であるフィラー成分
(B)加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール
(C)硬化触媒
(D)シランカップリング剤
【請求項2】
前記混合割合が、(A-1)が10?20質量%、(A-2)が25?35質量%、(A-3)が50?60質量%である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)成分が絶縁性を有する熱伝導性フィラーである請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(B)成分が、粘度300?3,000mPa・s、重量平均分子量3,000?25,000の加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項5】
(B)成分が、(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項6】
(B)成分が、(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項7】
(B)成分が、(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール及び(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールを含有してなる請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項8】
(A)成分は前記組成物全体に対して60?95質量%の量で、(C)成分は(B)成分に対して0.01?10質量%の量で、(D)成分は(B)成分に対して0.01?10質量%の量で含まれる請求項1から7いずれかに記載の組成物。
【請求項9】
(C)成分が、ビスマス系硬化触媒である請求項1から8いずれかに記載の組成物。
【請求項10】
(C)成分が、チタン系硬化触媒である請求項1から8いずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物の硬化体が、デュロメーターアスカー硬度計による硬度が90以下である請求項1から10いずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の組成物を含有してなる熱伝導性組成物。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の組成物を含有してなる熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の組成物を含有してなる放熱材。
【請求項15】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の組成物を電子部品に塗布することにより、電子部品から発生した熱を外部へ放熱させる放熱方法。」


第4 取消理由2の概要
取消理由2の概要は以下の通りである。

本件特許の請求項1?5に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された甲1に記載された発明及び甲2ないし甲9に記載された公知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1?5に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
本件特許の請求項6?15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲1及び甲11に記載された事項及び甲2ないし甲9に記載された公知技術1、甲12に記載された公知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項6?15に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
甲1:特開2001-302936号公報
甲2:特開2010-6923号公報
甲3:特開2009-138036号公報
甲4:特開2001-348488号公報
甲5:特開2008-260855号公報
甲6:特開2009-179771号公報
甲7:特開2007-246861号公報
甲8:特開2007-277406号公報
甲9:特開2007-204510号公報
甲11:特開2010-242006号公報
甲12:特開2010-53331号公報
なお、甲1ないし9、11及び12は、何れも、異議申立人が提出した特許異議申立書に添付されたものである。


第5 取消理由2についての判断
1.甲1に記載された事項及び記載された発明
(1)甲1には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】 一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有化合物(A)、前記加水分解性シリル基含有化合物(A)を架橋させるための架橋性化合物(B)、及び、熱伝導性充填材(C)からなることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。
【請求項2】 加水分解性シリル基含有化合物(A)は、アルコキシシリル基が、ポリアルキレングリコール、又はポリイソブチレン中に置換して存在する加水分解性シリル基含有ポリマーである請求項1記載の熱伝導性樹脂組成物。」(特許請求の範囲)


「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記現状に鑑み、本発明は、優れた熱伝導性と共に、優れた強度と密着性をも併せ持つ高熱伝導性の樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の熱伝導性樹脂組成物は、一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有化合物(A)、上記加水分解性シリル基含有化合物(A)を架橋させるための架橋性化合物(B)、及び、熱伝導性充填材(C)からなるものである。以下に本発明の詳細を説明する。
【0008】上記加水分解性シリル基としては特に限定されず、例えば、ケイ素原子にアルコキシル基を結合させたもの、ケイ素原子にオキシム基を結合させたもの、ケイ素原子にアルケニルオキシ基を結合させたもの、ケイ素原子にアセトキシ基を結合させたもの、ケイ素原子にハロゲン基を結合させたもの等が挙げられるが、中でも、得られる樹脂組成物の貯蔵安定性の観点から、ケイ素原子にアルコキシル基を結合させたアルコキシシリル基が好ましい。
【0009】さらに、上記加水分解性シリル基含有化合物(A)は、得られる熱伝導性樹脂組成物の粘度設計のし易さ、硬化後の凝集力と被着物への粘着性のバランスを両立出来る点等から、加水分解性シリル基含有ポリマーであることが好ましい。」(段落【0006】?【0009】)


「【0012】上記加水分解性シリル基含有ポリマーの分子量としては特に限定されず、例えば、4千?3万のものが好ましく、特に1万?3万で分子量分布(Mw/Mn)が1.6以下のものが扱いやすく好ましい。
【0013】上記アルコキシシリル基としては、例えば、モノアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、トリアルコキシシリル基等が挙げられ、また、アルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、tert-ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0014】上記アルコキシシリル基が、ジアルコキシシリル基、又はトリアルコキシシリル基である場合、同じアルコキシル基を用いても良いし、異なるアルコキシル基を組み合わせて用いても良い。上記アルコキシシリル基の上記ポリマーへの置換位置は、ポリマー末端に位置していても良いし、ポリマーの側鎖に位置していても良い。また、ポリマー末端と側鎖の両方に位置していても良い。
【0015】上記加水分解性シリル基含有化合物(A)としては、例えば、商品名「MSポリマー」(ポリプロピレングリコール系)で、MSポリマーS-203、S-303、S-903;商品名「サイリルポリマー」で、サイリルSAT-200、MA-403、MA-447;商品名「エピオンポリマー」(ポリイソブチレン系)で、EP103S、EP303S、EP505S等が鐘淵化学工業から市販されている。また、商品名「エクセスター」(ポリプロピレングリコール系)で、ESS-2410、ESS-2420、ESS-3630等が旭硝子工業から市販されている。
【0016】上記加水分解性シリル基含有化合物(A)の粘度は特に限定されないが、10cps?10000cpsの範囲が好ましい。粘度が10cps未満では、充填材を混練・混合させる際に剪断が伝わらず、充填材粒子同士が凝集したり、ベース樹脂中に均一に分散せず混ざりにくくなり、10000cpsを超えると粘度が高くなり過ぎて、充填量が分散せず混ざりにくくなる。
【0017】本発明に用いられる架橋性化合物(B)は、加水分解性シリル基含有化合物(A)を架橋するために用いられるものであり、加水分解性シリル基含有化合物(A)の架橋を空気中の湿気で促進させ又は触媒作用を示すものであれば、特に限定されず例えば、ジブチル錫ジラウリレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトネート、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド等の錫化合物、テトラ-n-ブトキシチタネート、テトライソプロポキシチタネート等のチタネート系化合物、ジブチルアミン-2-エチルヘキソエート等のアミン塩や、他の酸性触媒及び塩基性触媒等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を併用出来る。
【0018】上記加水分解性シリル基含有化合物(A)と上記架橋性化合物(B)との配合割合は特に限定されないが、例えば、加水分解性シリル基含有化合物(A)100重量部に対して、架橋性化合物(B)0.01?20重量部の割合で配合されていることが好ましい。
【0019】上記架橋性化合物(B)が、0.01重量部より少ない場合、加水分解性シリル基含有化合物(A)の硬化速度が著しく低下し、実用に適さなくなり、20重量部を超えると、硬化速度は充分早くなるが、硬化後のバルクへの影響が著しく現れるようになり、充分な接着力を得ることが困難になる。
【0020】本発明で使用される熱伝導性充填材(C)としては、通常、熱伝導性樹脂組成物中に配合されるものが挙げられ、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の酸化物類;窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物類;炭化ケイ素等の炭化物類;銅、銀、鉄、アルミニウム、ニッケル等の金属充填材;チタン等の金属合金充填材;ダイヤモンド、炭素繊維、カーボンブラック等の炭素系充填材;石英、石英ガラス等のシリカ粉類等が用いられる。また、無機充填材粒子に銀や銅等や炭素材料を表面被覆したもの、金属充填材粒子に無機材料や炭素材料を表面被覆したものを使用しても良い。これらは単独又は2種類以上を併用出来る。
【0021】上記熱伝導性充填材(C)としては、これらの充填材とベースとなる樹脂との親和性を向上させるためにシラン処理等の各種表面処理を行った充填材を用いても良い。また、粒子形状についても特に限定されるものではなく、球状、針状、繊維状、鱗片状、樹枝状、平板状、不定形等が用いられる。
【0022】上記熱伝導性充填材(C)の配合量は、通常は、5?90体積%が好ましく、より好ましくは20?80体積%である。熱伝導性充填材の含有量が20体積%未満であると効率的な熱伝導性を得ることが出来ず、80体積%を超えると組成物の硬度が高くなってしまい、放熱部材の表面の凹凸への密着追従性が悪く接触熱抵抗が増大し効率的な熱伝導性が得られなくなる。
【0023】本発明の熱伝導性樹脂組成物には、必要に応じて物性調整剤、可塑剤、着色剤、難燃剤等が添加されても良い。上記物性調整剤として、各種シランカップリング剤が挙げられ、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を併用出来る。」(段落【0012】?【0023】)


「【0029】(実施例1)加水分解性シリル基含有化合物(A)として、MSポリマーS303(鐘淵化学工業社製)100重量部、架橋性化合物(B)として、錫系触媒SB-65(三共有機合成社製)1重量部、及び熱伝導性充填材(C)として、窒化ホウ素SGP(電気化学工業社製)150重量部を、脱泡攪拌機を用いて均一混合行い、熱伝導性樹脂組成物を調製後、型に流し込み室温で40時間以上放置硬化させ、シート状の熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0030】(実施例2)熱伝導性充填材(C)を、230重量部にしたこと以外は、実施例1と同様の配合及び方法でシート状の熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0031】(実施例3)熱伝導性充填材(C)を、酸化アルミニウムAL-33(住友化学工業社製)390重量部にしたこと以外は、実施例1と同様の配合及び方法でシート状の熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0032】(実施例4)加水分解性シリル基含有化合物(A)を、エピオンポリマーEP505S(鐘淵化学工業社製)100重量部、架橋性化合物(B)を錫系触媒SB-65(三共有機合成社製)2重量部にしたこと以外は実施例2と同様の配合、方法で組成物を調製した後、200℃にて硬化させる共に、プレスしてシート状の熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0033】(実施例5)加水分解性シリル基含有化合物(A)を、MSポリマーS303(鐘淵化学工業社製)50重量部、架橋性化合物(B)を錫系触媒SB-65(三共有機合成社製)1重量部、熱伝導性充填材(C)として、窒化ホウ素SGP(電気化学工業社製)150重量部、さらに可塑剤として、D2000(日本油脂社製;ポリプロピレングリコール)50重量部を組成物として、実施例1と同様の方法にてシート状の熱伝導性樹脂組成物を得た。
【0034】(実施例6)加水分解性シリル基含有化合物(A)を、エピオンポリマーEP505S(鐘淵化学工業社製)50重量部、架橋性化合物(B)を錫系触媒SB-65(三共有機合成社製)1重量部、及び熱伝導性充填材(C)として、窒化ホウ素SGP(電気化学工業社製)230重量部、可塑剤として、D2000(日本油脂社製;ポリプロピレングリコール)50重量部としたこと以外は実施例4と同様の方法でシート状の熱伝導性樹脂組成物を得た。」(段落【0029】?【0034】)

(2)上記(1)より、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有化合物(A)、前記加水分解性シリル基含有化合物(A)を架橋させるための架橋性化合物(B)、熱伝導性充填材(C)を含む熱伝導性樹脂組成物であって、前記加水分解性シリル基含有化合物(A)はアルコキシシリル基がポリアルキレングリコール中に置換して存在する加水分解性シリル基含有ポリマーである熱伝導性樹脂組成物。」

2.本件特許発明1
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「熱伝導性充填材(C)」は、本件特許発明1の「(A)(A-1)平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分、(A-2)平均粒径2μm以上20μm未満のフィラー成分、(A-3)平均粒径20μm以上100μm以下のフィラー成分を含有してなり、混合割合が、(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は5?25質量%、(A-2)は25?40質量%、(A-3)は50?65質量%であるフィラー成分」のフィラー成分であるという範囲に限り一致する。
甲1発明の「一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する加水分解性シリル基含有化合物(A)」は、アルコキシシリル基がポリアルキレングリコール中に置換して存在する加水分解性シリル基含有ポリマーであるから、本件特許発明1の「(B)加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール」に相当する。
甲1発明の「架橋性化合物(B)」は、加水分解性シリル基含有化合物(A)を架橋するものであるから、本件特許発明1の「硬化触媒」に相当する。

そうしてみると、本件特許発明1と甲1発明とは、
「(A)フィラー成分
(B)加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール
(C)硬化触媒
を含有してなる組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)(A)フィラー成分について、本件特許発明1では「(A-1)平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分、(A-2)平均粒径2μm以上20μm未満のフィラー成分、(A-3)平均粒径20μm以上100μm以下のフィラー成分を含有してなり、混合割合が、(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は5?25質量%、(A-2)は25?40質量%、(A-3)は50?65質量%である」のに対して、甲1発明ではそのような特定がされていない点。

(相違点2)本件特許発明1ではシランカップリング剤を含有するのに対して、甲1発明ではそのような特定がされていない点。

(2)判断
ア まず、相違点1について検討する。
甲2ないし甲9には、以下の記載がある。
(ア)甲2
「【請求項1】
(A)23℃における粘度が10?100mPa・sであり、下記一般式で表されるアルケニル基含有シロキサンオリゴマー100重量部と、
【化1】(合議体注:化学式は省略)
(式中、Zはアルケニル基、mは0?20の整数、nは10?40の整数であり、m+nは10?40である。)
(B)(B1)平均粒径が10μm以上、50μm未満のアルミニウム粉末または酸化アルミニウム、(B2)平均粒径が1μm以上、10μm未満のアルミニウム粉末または酸化アルミニウムおよび(B3)平均粒径が0.1μm以上、1μm未満の酸化アルミニウムをそれぞれ含む熱伝導性充填剤1000?3000重量部(但し、(B1)は(B)成分全体の50?70容量%(vol%)となる量、(B2)は(B)成分全体の10?30vol%となる量、(B3)は(B)成分全体の10?30vol%となる量である。)と、
(C)白金系触媒の触媒量と、
(D)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンを、(A)成分のアルケニル基1個に対してケイ素原子に結合した水素原子が0.5?2.0個となる量、および
(E)接着性付与剤1.0?10重量部
を含有することを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物。」

「【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、低粘度で作業性(塗布作業性)が良好であり、接着性に優れ高い熱伝導性を有する硬化物を形成するシリコーン組成物を提供することを目的とする。」

(イ)甲3
「【請求項1】
(A)23℃における粘度が10?100mPa・sであり、下記一般式で表されるアルケニル基含有シロキサンオリゴマー 100重量部、
【化1】(合議体注:化学式は省略)
(式中、R1は独立に炭素原子数1?6のアルキル基、R2は独立に炭素原子数2?10のアルキレン基、R3は-COOR_(2)-で表される基、Xは炭素原子数1?4のアルコキシ基、a,bは1以上の整数、cは0以上の整数、a+b+cは4以上である。Aは下記一般式:
【化2】(合議体注:化学式は省略)
(式中、R1は前記規定の通り、Zはアルケニル基、dは10?40の整数、eは0?20の整数、d+eは10?40である。)で表される基である。)
(B)下記(B1)、(B2)及び(B3)を含む熱伝導性充填剤 1000?3000重量部(但し、(B1)は(B)成分中、50?70vol%となる量、(B2)は10?30vol%となる量、(B3)は10?30vol%となる量)、
(B1)平均粒径が10μm以上、50μm未満の酸化アルミニウムもしくはアルミニウム、
(B2)平均粒径が1μm以上、10μm未満の酸化アルミニウムもしくはアルミニウム、
(B3)平均粒径が0.1μm以上、1μm未満の酸化アルミニウム
(C)白金系触媒、
(D)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を3個以上有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン (A)成分のアルケニル基1個に対して、ケイ素原子に結合した水素原子が0.12?0.18個となる量、ならびに
(E)イソパラフィン系溶剤 20?40重量部
を含有することを特徴とする熱伝導性シリコーングリース組成物。」

「【0006】
本発明の目的は、オイルブリードを抑制するとともに作業性に優れ、良好な熱伝導性を有する熱伝導性シリコーングリース組成物を提供することにある。」

(ウ)甲4
「【請求項1】 平均粒径が50?100μmの粒子が30?60質量部、平均粒径が5?30μmの粒子が30?60質量部、平均粒径0.1?3μmの粒子が5?15質量部含まれた無機フィラーを80?95重量%配合して、硬化物の熱伝導率を3?10W/mKとして成ることを特徴とする熱伝導性樹脂組成物。」

「【0011】本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、無機充填材が高充填されて、熱伝導性に優れた成形物を得ることができる熱伝導性樹脂組成物、この熱伝導性樹脂組成物を用いて形成され、熱伝導性に優れた成形物を得ることができるプリプレグ、このプリプレグを絶縁層の形成のために用いることにより、優れた熱伝導性を有する絶縁層を容易に形成することができて低コスト化が可能であり、かつ優れた放熱性が付与されると共に大電流化が容易な放熱性回路基板、及び上記のプリプレグにて形成される接着層を介して金属放熱体が取り付けられることにより、優れた熱伝導性を有する接着層を容易に形成することができて低コスト化が可能であり、かつ優れた放熱性が付与さた放熱性発熱部品を提供する事を目的とする。」

(エ)甲5
「【請求項1】
硬化性ベース樹脂100重量部に対し、酸化アルミ粒子と窒化アルミ粒子の混合粒子が1000から1300重量部の範囲で充填され、かつ、前記混合粒子のうち窒化アルミ粒子が500から700重量部の範囲であることを特徴とする熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項2】
前記酸化アルミ粒子は、平均粒径が略0.5μmの粒子と平均粒径が略10μmの粒子とを混合した粒子であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項3】
前記酸化アルミ粒子において、平均粒径が略0.5μmの粒子と平均粒径が略10μmの粒子との重量比は、略1:5であることを特徴とする請求項2に記載の熱伝導性樹脂ペースト。」

「【請求項8】
前記窒化アルミ粒子は、平均粒径が略40μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性樹脂ペースト。」

「【0014】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、熱伝導率が高く、硬化重合後も所定の柔軟性を持ち、硬化前の粘度が低い熱伝導性樹脂ペーストおよびそれを用いた光ディスク装置を提供することを目的とする。」

(オ)甲6
「【請求項1】
硬化性ベース樹脂100重量部に対し、150W/m・K以上の熱伝導率を有する粒子がX重量部、20W/m・K以上の熱伝導率を有し、少なくとも粒子表面が金属酸化物である粒子がY重量部配合されたとき、1.0X+0.4Y≧700を満たす粒子が配合されたことを特徴とする熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項2】
前記150W/m・K以上の熱伝導率を有する粒子は、窒化アルミニウム粒子であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項3】
前記窒化アルミニウム粒子は、平均粒径が40?100μmの範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項4】
前記窒化アルミニウム粒子は、小粒径の窒化アルミニウムを造粒し、焼結することにより略球状に形成されていることを特徴とする請求項2乃至3に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項5】
前記窒化アルミニウム粒子は、多糖類または酸化ケイ素により表面処理がなされることを特徴とする請求項2乃至4に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項6】
前記20W/m・K以上の熱伝導率を有し、少なくとも粒子表面が金属酸化物である粒子は、酸化アルミニウム粒子であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性樹脂ペースト。
【請求項7】
前記酸化アルミニウム粒子は、平均粒径が略0.7μmの粒子と、平均粒径が略10μmの粒子とを混合した粒子であることを特徴とする請求項6に記載の熱伝導性樹脂ペースト。」

「【請求項13】
窒化アルミニウム粒子と酸化アルミニウム粒子の混合比が、重量比で略4:6?6:4であることを特徴とする請求項12に記載の熱伝導性樹脂ペースト。」

「【0011】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、硬化性で熱伝導率が高い熱伝導性樹脂ペーストおよびそれを用いた光ディスク装置を提供することを目的とする。」

(カ)甲7
「【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、及び(D)アルミナ粉末を含有する樹脂組成物であって、
樹脂組成物の固形分当たりの(D)アルミナ粉末の含有率が86?95重量%、(D)アルミナ粉末の最大粒子径が120μm以下、及び(D)アルミナ粉末中での結晶性の球状アルミナの割合が90重量%以上であり、
上記結晶性の球状アルミナの粒子径分布が、平均粒子径D50が35?50μmであると共に[体積平均粒子径]/[個数平均粒子径]が1.2?2.0の範囲のものが30?50重量%、平均粒子径D_(50)が5?15μmであると共に[体積平均粒子径]/[個数平均粒子径]が2.0?3.5の範囲のものが30?50重量%、及び平均粒子径D_(50)が0.1?2μmのものが10?30重量%であり、かつ、
樹脂組成物の固形分当たりの煮沸抽出水ナトリウムイオンが20ppm以下であると共にICP発光分光分析法で検出される鉄分が100ppm以下であることを特徴とする樹脂組成物。」

「【0006】
本発明の目的は、金属基板に絶縁接着層を介して回路が形成される金属ベース回路基板において、熱伝導性に優れると共に、耐電圧特性及び接着性に優れた絶縁接着層を形成することができる樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の別の目的は、熱伝導性に優れると共に、耐電圧特性及び接着性に優れたワニス、フィルム状接着剤、及びフィルム状接着剤付き銅箔を提供することにある。」

(キ)甲8
「【請求項1】
平均粒径50?100μmの球状アルミナ粒子が60?80vol%、平均粒径0.5?7μmの球状アルミナ粒子が5?30vol%、平均粒径0.5?7μmの非球状アルミナ粒子が10?35vol%の配合で含まれることを特徴とする、高熱伝導性樹脂コンパウンド用配合粒子。」

「【0007】
従来の技術である球状の大径粒子と球状の小径粒子の組合せでは、高い熱伝導率が得られない。また、球状の大径粒子と非球状の小径粒子の組合せでは、高い熱伝導率は得られるが、放熱シートが硬くなり、シートの柔軟性を低下させるという問題があり、高熱伝導率と低シート硬度を両立することは困難であった。
そこで本発明は、高熱伝導率と柔軟性に優れた低シート硬度を両立した放熱シートを製造することができる高熱伝導性樹脂コンパウンド・高熱伝導性樹脂成形体・放熱シート用配合粒子、高熱伝導性樹脂コンパウンド・高熱伝導性樹脂成形体・放熱シート、および、その製造方法を提供することを課題とする。」

(ク)甲9
「【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、硬化促進剤(C)、及び無機充填材(D)を含むエポキシ樹脂組成物であって、前記硬化促進剤(C)が一般式(1)で表されるホスホベタイン化合物(c1)を含むものであり、前記無機充填材(D)が平均粒径10μm以上40μm以下、比表面積1m^(2)/g以上3.5m^(2)/g以下の球状溶融シリカ(d1)を含むものであり、かつ該球状溶融シリカ(d1)が平均粒径20μm以上60μm以下、比表面積0.1m^(2)/g以上0.5m^(2)/g以下の球状溶融シリカ(d11)と、平均粒径0.1μm以上10μm以下、比表面積1m^(2)/g以上50m^(2)/g以下の球状溶融シリカ(d12)とを含んでなるものであることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】(合議体注:化学式は省略)
(ただし、上記一般式(1)において、Xは水素又は炭素数1以上3以下のアルキル基、Yは水素又はヒドロキシル基を表す。m、nは1以上3以下の整数。)」

「【0006】
本発明は、上記のような従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、金線変形が発生し難く、流動性、成形性、硬化性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び耐半田性に優れた半導体装置を提供することにある。」

イ 上記ア(ア)ないし(ク)によれば、甲2ないし甲9から、熱硬化性樹脂を含む熱伝導性樹脂組成物にフィラー成分を含ませる技術において、熱伝導性樹脂組成物の粘度や熱伝導性などの制御を意図して、平均粒径が異なる3種のものを併用することが知られていたことを理解することができる。
ここで、平均粒径が異なる3種類のフィラーの配合割合は、特許請求の範囲の記載だけみても、例えば甲2、甲3では、最も大きい平均粒子径の配合割合は、中程度の平均粒子径の配合割合よりも多いが、中程度の平均粒子径と最も小さい平均粒子径の配合割合とはほぼ同等であるのに対して、甲4、甲7では、最も大きい平均粒子径の配合割合は、中程度の平均粒子径の配合割合とほぼ同等で、最も小さい平均粒子径の配合割合よりも多くなっていて、一様ではないし、さらに実施例まで含めて検討すると、様々な配合割合のパターンがあることが示されている。(以下、イに記載の事項を、「甲2ないし甲9に記載された公知技術1」あるいは「公知技術1」という。)

ウ そうしてみると、甲1発明と公知技術1とを併せて考えると、甲1発明において使用されているフィラー成分として、平均粒径が異なる3種類のフィラーを使用することまでは容易に行い得ても、平均粒径が最も大きいフィラー成分の配合割合を一番多くし、次に、中程度の平均粒径のものの配合割合を多くし、最も小さな平均粒径のものの配合割合を最小にするようにそれぞれの配合割合を調整することまで容易に行えるものとはすることができない。
加えて、本件発明1では、平均粒径が最も大きいフィラー成分の平均粒径として「30μm以上80μm以下」を、中程度のものの平均粒径として「3.5μm以上8μm未満」を、最も小さなものの平均粒径として「0.1μm以上2μm未満」をそれぞれ選択し、それぞれの配合割合も、順に「50?60質量%」、「25?35質量%」、「10?20質量%」としているが、大きさの範囲や配合割合には多くの選択肢がある中で、どのような範囲、割合とするのかは一義的に決定されることではないと認められる。
したがって、相違点1は、当業者が適宜なし得たことであるとすることができない。

エ そうしてみると、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び公知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3.本件特許発明2ないし本件特許発明5
本件特許発明2は、本件特許発明1の混合割合をさらに特定するものである。
上記2.(2)エのとおり、本件特許発明1は、甲1発明及び公知技術1から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないので、本件特許発明2についても同様に、甲1発明及び公知技術1から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本件特許発明3ないし本件特許発明5も同様である。

4.本件特許発明6
(1)新規性及び進歩性の判断の基準日
本件出願は、以下の先の出願に基づく優先権を主張するものである。
先の出願:特願2010-89116号(出願日:平成22年4月8日、特許異議申立書に添付された甲第14号証(以下、「甲14」という。))
しかしながら、以下の理由により、本件特許発明6に対して、先の出願に基づく優先権の効果は認められず、本件特許発明6についての新規性及び進歩性の判断の基準日は、本件出願の実際の出願日である平成23年3月29日である。
<理由>
本件特許発明6における「(B)成分が、(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである」という発明特定事項は、甲14に記載がなく、自明な事項でもない。
よって、本件特許発明6は、先の出願には記載されていないので、先の出願に基づく優先権の効果は認められない。

本件特許発明6についての新規性及び進歩性の判断の基準日は、平成23年3月29日であるから、公知日が平成22年10月28日である甲11は、本件特許発明6に関しては、本件出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である。なお、請求項6を引用する本件特許発明8ないし15についても同様である。

(2)判断
本件特許発明6は、本件特許発明1ないし3の(B)成分をさらに特定するものである。
上記2.(2)エのとおり、本件特許発明1は、甲1発明及び公知技術1から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないので、本件特許発明6についても同様に、甲1発明、甲11に記載された事項及び公知技術1から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

5.本件特許発明7ないし本件特許発明15
(1)本件特許発明7
上記4.と同様の理由により、本件特許発明7に対して、先の出願に基づく優先権の効果は認められず、本件特許発明7についての新規性及び進歩性の判断の基準日は、本件特許の出願日である平成23年3月29日である。
したがって、公知日が平成22年10月28日である甲11は、本件特許発明7に関しては、本件出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である。
しかしながら、上記4.(2)と同様に、本件特許発明7についても同様に、甲1発明、甲11に記載された事項及び公知技術1から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本件特許発明8ないし本件特許発明15
上記4.及び5.と同様に、本件特許発明8ないし本件特許発明15は、甲1発明、甲11に記載された事項及び公知技術1、甲12に記載された公知技術2から当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

6.小括
本件特許の請求項1?5に係る発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された甲1に記載された発明及び甲2ないし甲9に記載された公知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
本件特許の請求項6?15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲1及び甲11に記載された事項及び甲2ないし甲9に記載された公知技術1、甲12に記載された公知技術2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。


第6 結語
上記第5のとおり、取消理由2によっては、本件請求項1ないし15に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1ないし15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、熱伝導性を有する湿気硬化型樹脂組成物、発熱した熱を外部へ放熱させる放熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の集積化、高密度化、高性能化に伴い、電子部品自身の発熱量が大きくなってきている。熱によって、電子部品は、その性能が著しく低下、もしくは故障し得ることから、電子部品の効率的な放熱が重要な技術になってきている。
【0003】
電子部品の放熱方法として、発熱する電子部品と放熱器の間や、発熱する電子部品と金属製伝熱板との間に放熱材を導入し、電子部品から発生する熱を他の部材に伝え、電子部品に蓄積させないことが一般的である。この種の放熱材として放熱グリース、熱伝導性シート、熱伝導性接着剤等が用いられている。
【0004】
放熱グリースを用いた場合は、発熱量が多量であるため、グリース成分が蒸発してしまったり、グリース油と熱伝導性フィラーが分離してしまったりする。蒸発成分は、電子部品に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくない。フィラーと分離したグリース油は、流れて電子部品を汚染する恐れがある(特許文献1参照)。
【0005】
熱伝導性シートを用いると、成分の流出の問題は解決するが、電子部品と放熱器等が、固体のシート状の物に押し付けられるため、両間の密着性に不安が残る恐れがある(特許文献2参照)。
【0006】
熱伝導性接着剤を用いると、その硬化性により、蒸発したり、液状成分が流れたり、電子部品を汚染したりすることはない。しかし、硬化の際に電子部品に応力がかかり、電子部品がずれてしまう恐れがある。接着した物を取り外す作業は困難であり、さらに電子部品を破壊してしまう恐れがある(特許文献3参照)。
【0007】
それらに対して、電子部品と放熱材の間の表面部分のみが硬化し、内部には未硬化部分が残る熱伝導性接着剤が提案された。この熱伝導性接着剤は、電子部品と放熱材との密着性に優れ、内部に未硬化部分があるので、電子部品と放熱材との間の応力を取り除くことができ、取り外し作業を簡便にできる(特許文献4,5)。
最近では、更なる高熱伝導性に加え絶縁性が要求され、用い得る熱伝導性フィラーが制限され、フィラーの高充填化が必要となってきている。
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3-162493号公報
【特許文献2】特開2005-60594号公報
【特許文献3】特開2000-273426号公報
【特許文献4】特開2002-363429号公報
【特許文献5】特開2002-363412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、未硬化成分が存在するため接着性に不安が残る、内部が未硬化であるため硬化時間が遅い、といった課題があった。さらに絶縁性を付与した放熱材では、得られる熱伝導率に限りがあった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、高い作業性と速硬化性と熱伝導性を有する組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記(A)?(D)成分を含有してなる組成物である。
(A)(A-1)平均粒径0.1?2μmのフィラー成分、(A-2)平均粒径2?20μmのフィラー成分、(A-3)平均粒径20?100μmのフィラー成分を含有してなるフィラー成分
(B)加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール
(C)硬化触媒
(D)シランカップリング剤
(A)成分は、絶縁性を有する熱伝導性フィラーである該組成物であることが好ましい。
(B)成分は、粘度300?3,000mPa・s、重量平均分子量3,000?25,000の加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである該組成物であることが好ましい。
(B)成分は、(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである該組成物であることが好ましく、
(B)成分は、(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである該組成物であることが好ましく、
(B)成分が、(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール及び(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールを含有することが好ましい。
(A)成分は組成物全体に対して60?95質量%の量で、(C)成分は(B)成分に対して0.01?10質量%の量で、(D)成分は(B)成分に対して0.01?10質量%の量で含まれることが好ましい。
該組成物の硬化体が柔軟な物性を示す該組成物が好ましい。
該組成物を含有してなる熱伝導性組成物、
該組成物を含有してなる熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物、及び
該組成物を含有してなる放熱材も、本発明に包含される。
該組成物を電子部品に塗布することにより、電子部品から発生した熱を外部へ放熱させる放熱方法も本発明に包含される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組成物は、高い作業性、速硬化性、高熱伝導性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で使用する(A)フィラーとしては、酸化アルミニウム等のアルミナ、酸化亜鉛、窒化アルミ、窒化ホウ素等、熱伝導性が高く、絶縁性を有するフィラーが好ましい。熱伝導性フィラーは、球状、破砕状等の形状のものであってよい。
本発明で使用する(A)フィラーは、(A-1)平均粒径0.1?2μmのフィラー成分、(A-2)平均粒径2?20μmのフィラー成分、(A-3)平均粒径20?100μmのフィラー成分といった、3種類のフィラーを併用する。
(A-1)成分の平均粒径は、0.1μm以上2μm未満であり、0.2μm以上1μm以下が好ましく、0.3μm以上0.8μm以下がより好ましい。(A-2)成分の平均粒径は、2μm以上20μm未満であり、2以上10μm以下が好ましく、3.5μm以上8μm以下がより好ましい。(A-3)成分の平均粒径は、20μm以上100μm以下であり、30μm以上80μm以下が好ましく、35μm以上60μm以下がより好ましい。
【0014】
3種類の(A)成分の混合割合としては、(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)平均粒径0.1?2μmは5?25質量%、(A-2)2?20μmは20?40質量%、(A-3)20?100μmは45?65%が好ましく、最密充填を考慮する観点から、(A-1)平均粒径0.1?2μmは10?20質量%、(A-2)2?20μmは25?35質量%、(A-3)20?100μmは50?60質量%がより好ましい。
フィラーとしては、熱伝導性フィラーが好ましい。
(A)成分としては、電子部品近辺に塗布する観点から、絶縁性を有する熱伝導性フィラーが好ましい。熱伝導性フィラーの絶縁性としては、電気抵抗値が10^(8)Ωm以上であることが好ましく、電気抵抗値が10^(10)Ωm以上であることがより好ましい。電気抵抗値とは、JIS R 2141に従って測定した、20℃体積固有抵抗をいう。
【0015】
本発明で使用する(B)加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールは、ケイ素原子に加水分解性基が結合したポリアルキレングリコールをいう。例えば、ケイ素原子の分子鎖の両末端や片末端に加水分解性基が結合したポリアルキレングリコール等が挙げられる。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。これらの中では、ポリプロピレングリコールが好ましい。加水分解性基としては、カルボキシル基、ケトオキシム基、アルコキシ基、アルケノキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基等が結合したもの等が挙げられる(例えば、旭硝子社製「S-1000N」、カネカ社製「SAT-010」、「SAT-115」)。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。(B)成分の粘度は、300?3,000mPa・sであることが好ましく、500?1,500mPa・sがより好ましい。(B)成分の重量平均分子量は、3,000?25,000であることが好ましく、4,000?15,000がより好ましい。重量平均分子量とは、GPC(ポリスチレン換算)により測定した値をいう。
【0016】
(B)成分の中では、(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールや(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールが好ましい。硬度を調整する点で、(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールと(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールを併用することが好ましい。(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールと(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールを併用する場合、(B-1)成分と(B-2)成分の混合比は、質量比で、(B-1):(B-2)=2?50:50?98が好ましく、5?40:60?95がより好ましく、10?30:70?90が最も好ましい。
【0017】
本発明で使用する(C)成分の硬化触媒は、特に限定されないが、前記加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールの縮合反応を促進する化合物であることが好ましい。(C)成分の硬化触媒としては、シラノール化合物の縮合触媒が好ましい。(C)成分としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン酸エステル類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ジブチル錫と正ケイ酸エチルの反応物等の有機錫化合物:ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N-メチルモルホリン、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7(DBU)等のアミン系化合物又はこれらとカルボン酸等との塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;ビスマスカルボキシレート、アビエチン酸ビスマス、ネオアビエチン酸ビスマス、d-ピマル酸ビスマス、イソ-d-ピマル酸ビスマス、ポドカルプ酸ビスマス、安息香酸ビスマス、ケイ皮酸ビスマス、p-オキシケイ皮酸ビスマス、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ネオドデカン酸ビスマス等のビスマス系硬化触媒、オクチル酸鉛、ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、チタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンテトライソプロポギシド、チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド等のチタン系硬化触媒、バナジルトリエトキシド等の公知のシラノール縮合触媒が挙げられる。これらの中では、樹脂の柔軟性の観点から、ビスマス系硬化触媒が好しく、反応促進性の観点からチタン系硬化触媒が好ましい。
【0018】
(C)成分の硬化触媒の含有量は、(B)成分に対して0.01?10質量%が好ましく、0.1?5質量%がより好ましい。0.1質量%以上であれば硬化促進の効果が確実に得られるし、10質量%以下であれば充分な硬化速度を得ることができる。
【0019】
(A)成分のフィラーの含有量は、組成物全体に対して60?98質量%が好ましく、70?97質量%がより好ましい。60質量%以上であれば熱伝導性能が十分であり、98質量%以下であれば電子部品と放熱材との接着性が大きくなる。
【0020】
本発明で使用する(D)成分のシランカップリング剤は、硬化性、安定性を向上させるために配合するものであり、公知のシランカップリング剤が使用可能である。シランカップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシシリルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、安定性の観点から、ビニルトリメトキシシランが好ましい。これらの中では、硬化性の観点から、3-グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシラン及び/又はN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく、3-グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシランがより好ましい。これらの中では、ビニルトリメトキシシランと3-グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシランを併用することが好ましい。ビニルトリメトキシシランと3-グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシランを併用する場合、混合比としては、ビニルトリメトキシシランと3-グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシランの合計100質量%中、ビニルトリメトキシシラン:3-グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシラン=30?90質量%:10?70質量%が好ましく、50?70質量%:30?50質量%がより好ましい。
【0021】
(D)成分のシランカップリング剤の含有量は(B)成分に対して0.1?10質量%が好ましく、1?5質量%がより好ましい。0.1質量%以上であれば保存安定性が十分であり、10質量%以下であれば硬化性と接着性が大きくなる。
【0022】
本発明では、さらに添加剤として、有機溶剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、チクソ性付与剤等も必要により使用することができる。本発明は、分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールと、分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールとを併用することができる。
【0023】
本発明の組成物は、例えば、熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物である。本発明の熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物は空気中の湿分により硬化することができる。
本発明の組成物は、高精度に固定した部材に塗布でき、かつ、接着した被着体(例えば、電子部品等)がずれないように固定できる点で、その硬化体が柔軟な物性を示すものであることが好ましい。硬化体の柔軟性としては、デュロメーターアスカー硬度計「CSC2型」による硬度が90以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましい。硬度が90以下であることは、硬化物による歪みが全く発生しない観点から、好ましい。組成物が被着体からはみ出さないようにし、被着体の汚染を防ぐことが好ましい場合がある。そのためには、硬化速度を大きくすることで、硬度を大きくすることが好ましい。硬度を大きくするには、チタン系硬化触媒を使用したり、(B-1)と(B-2)とを併用したりすることが好ましい。
【0024】
本発明の組成物は、CPUやMPU等の演算回路、光ピックアップモジュール等の精密機器に使用されるレーザーダイオードに適用される。本発明の組成物は、金属製伝熱板等の放熱材として使用される。
【実施例】
【0025】
以下に実施例及び比較例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。結果を表1?5に示した。
【0026】
(実施例1)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール(ベースポリマーA、粘度800mPa・s、重量平均分子量5,000、カネカ社「SAT115」)30g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール(ベースポリマーB、粘度1,300mPa・s、重量平均分子量18,000、旭硝子社「S-1000N」)70g、チタン系硬化触媒A(ジ-i-プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタン、日本曹達社「キレートT-50」)3g、熱伝導性フィラーA-1(平均粒径0.5μmの酸化アルミニウム、電気抵抗値が10^(11)Ωm以上、住友化学社製「AA-05」)240g、熱伝導性フィラーA-2(平均粒径5μmの酸化アルミニウム、電気抵抗値が10^(11)Ωm以上、電気化学工業社製「DAW-05」)480g、熱伝導性フィラーA-3(平均粒径45μmの酸化アルミニウム、電気抵抗値が10^(11)Ωm以上、電気化学工業社製「DAW-45S」)880g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0027】
(実施例2)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 240g、熱伝導性フィラーA-2 480g、熱伝導性フィラーA-3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0028】
(実施例3)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール10g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール90g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 240g、熱伝導性フィラーA-2 480g、熱伝導性フィラーA-3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0029】
(実施例4)
メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール100g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 240g、熱伝導性フィラーA-2 480g、熱伝導性フィラーA-3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0030】
(実施例5)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 160g、熱伝導性フィラーA-2 480g、熱伝導性フィラーA-3 960g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0031】
(実施例6)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 320g、熱伝導性フィラーA-2 480g、熱伝導性フィラーA-3 800g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0032】
(参考例7)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 400g、熱伝導性フィラーA-2 480g、熱伝導性フィラーA-3 720g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0033】
(実施例8)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 160g、熱伝導性フィラーA-2 560g、熱伝導性フィラーA-3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0034】
(実施例9)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 320g、熱伝導性フィラーA-2 400g、熱伝導性フィラーA-3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0035】
(参考例10)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 240g、熱伝導性フィラーA-2 320g、熱伝導性フィラーA-3 1,040g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0036】
(実施例11)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 240g、熱伝導性フィラーA-2 400g、熱伝導性フィラーA-3 960g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0037】
(実施例12)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 240g、熱伝導性フィラーA-2 560g、熱伝導性フィラーA-3 800g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0038】
(参考例13)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 240g、熱伝導性フィラーA-2 640g、熱伝導性フィラーA-3 720g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0039】
(実施例14)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒A3g、熱伝導性フィラーA-1 264g、熱伝導性フィラーA-2 530g、熱伝導性フィラーA-3 968g、ビニルトリメトキシシラン3g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0040】
(実施例15)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール20g、メトキシシリル基を片末端に有するポリプロピレングリコール80g、チタン系硬化触媒B(チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド、マツモトファインケミカル社製「オルガチックスTA-30」)0.5g、熱伝導性フィラーA-1 264g、熱伝導性フィラーA-2 530g、熱伝導性フィラーA-3 968g、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン13g、を混合して熱伝導性樹脂組成物を調整した。
【0041】
(参考例16)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒(ビスマスカルボキシレート、日本化学産業製「プキャットB7」)3g、熱伝導性フィラーA-1(平均粒径0.5μmの酸化アルミニウム、電気抵抗値が10^(11)Ωm以上)400g、熱伝導性フィラーA-2(平均粒径5μmの酸化アルミニウム、電気抵抗値が10^(11)Ωm以上)480g、熱伝導性フィラーA-3(平均粒径45μmの酸化アルミニウム、電気抵抗値が10^(11)Ωm以上)720g、ビニルトリメトキシシラン3g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0042】
(実施例17)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA-1 240g、熱伝導性フィラーA-2 480g、熱伝導性フィラーA-3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0043】
(参考例18)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA-1 80g、熱伝導性フィラーA-2 480g、熱伝導性フィラーA-3 1040g、ビニルトリメトキシシラン3g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0044】
(参考例19)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA-1 240g、熱伝導性フィラーA-2 640g、熱伝導性フィラーA-3 720g、ビニルトリメトキシシラン3g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0045】
(参考例20)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA-1 80g、熱伝導性フィラーA-2 640g、熱伝導性フィラーA-3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0046】
(参考例21)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA-1 400g、熱伝導性フィラーA-2 320g、熱伝導性フィラーA-3 880g、ビニルトリメトキシシラン3g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0047】
(参考例22)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA-1 240g、熱伝導性フィラーA-2 320g、熱伝導性フィラーA-3 1040g、ビニルトリメトキシシラン3g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0048】
(比較例1)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA-1 80g、熱伝導性フィラーA-2 1520g、ビニルトリメトキシシラン3g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0049】
(比較例2)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA-1 10g、熱伝導性フィラーA-2 1590g、ビニルトリメトキシシラン3g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0050】
(比較例3)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA-1 480g、熱伝導性フィラーA-3 1120g、ビニルトリメトキシシラン3g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0051】
(比較例4)
メトキシシリル基を両末端に有するポリプロピレングリコール100g、ビスマス系硬化触媒3g、熱伝導性フィラーA-2 480g、熱伝導性フィラーA-3 1120g、ビニルトリメトキシシラン3g、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2gを混合して熱伝導性樹脂組成物を調製した。
【0052】
(比較例5)
比較として市販されている湿気硬化型放熱樹脂「製品名:ThreeBond 2955(スリーボンド社製)」を評価した。
【0053】
(平均粒径評価)
平均粒径評価は「島津製作所製 SALD-2200」を用い、レーザー回析・散乱法にて測定した。
【0054】
(熱伝導率評価)
熱伝導率は物質中の熱の伝わり易さを表す値であり、熱伝導率は大きいほうが好まれる。上記で得られた各組成物を使用して熱伝導率の評価を行った。熱伝導率の評価は、「NETZSCH社製 LFA447」を用い、レーザーフラッシュ法にて、25℃で測定した。
【0055】
(タックフリー評価)
タックフリー時間は作業性や硬化性の一つの指針であり、タックフリー時間が長すぎると生産性が落ち、タックフリー時間が短すぎると作業途中で硬化が始まり、不良の発生原因となる。作業状況により求められるタックフリー時間の範囲は変わってくるが、作業性が良い観点から、10?70分が好ましく、40?60分がより好ましい。23℃・50%RH雰囲気下にて上記で得られた組成物を幅20mm×長さ20mm×厚さ5mmの型枠に流し込んで暴露させ、触指した。流し込んでから指に付着しなくなるまでの時間をタックフリー時間と定義し評価を行った。
【0056】
(硬度評価)
幅60mm×長さ40mm×厚さ5mmの各組成物を23℃・50%RH雰囲気下で10日間養生した試験片について、アスカー高分子計器社製、デュロメーターアスカー硬度計「CSC2型」により硬度の測定を行った。測定値が小さい場合、柔軟性を有する。
【0057】
(粘度測定)
粘度測定はハンドリング性の一つの指針であり、粘度が高すぎると塗布性が悪く作業できなくなる。熱伝導性を向上させたい場合にはフィラー充填量を多くすると良いがハンドリング性が悪くなるため、粘度は、小さいことが好ましい。組成物を被着体からはみ出させず、被着体の汚染を防ぐためには、粘度が大きいことが好ましい。粘度は、適切な値を示すことが好ましい。粘度の評価は「Anton Paar社製 レオメーター(型番:MCR301)」を用いて測定した。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】


【0060】
【表3】


【0061】
【表4】

【0062】
【表5】


【0063】
本実施例によると、本発明は優れた効果を示すことが分かる。実施例1?4、8?9、11?12、14、17は、3種類の(A)成分の混合割合が、より好ましい範囲内にあるため、より優れた効果を示す。(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール及び(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールを併用した場合、実施例1?4、6、8?9、11?12、14は、3種類の(A)成分及びその他の成分の混合割合が、より好ましい範囲内にあるため、より優れた効果を示す。
(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールを単独で使用した場合、本発明は優れた効果を示すことが分かる。実施例17は、3種類の(A)成分の混合割合が、より好ましい範囲内にあるため、より優れた効果を示す。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物は、高い作業性と、高い熱伝導性と、硬化後の柔軟性と、速硬化性とが非常に良好であり、高精度に固定化された電子部品の放熱媒体として最適である。本熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物は、硬化速度が向上するため、高い生産性を有することになる。本発明の柔軟性は、硬化の際に電子部品に応力をかけないほど軟らかい柔軟性を示す。
本熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物は、1剤常温湿気硬化型放熱材として使用できる。本熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物を発熱する電子部品に塗布することにより、電子部品から発生した熱を外部へ放熱させることができる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)?(D)成分を含有してなる組成物。
(A)(A-1)平均粒径0.1μm以上2μm未満のフィラー成分、(A-2)平均粒径3.5μm以上8μm以下のフィラー成分、(A-3)平均粒径30μm以上80μm以下のフィラー成分を含有してなり、混合割合が、(A-1)、(A-2)及び(A-3)の合計100質量%中、(A-1)は10?20質量%、(A-2)は25?35質量%、(A-3)は50?60質量%であるフィラー成分
(B)加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール
(C)硬化触媒
(D)シランカップリング剤
【請求項2】
前記混合割合が、(A-1)が10?20質量%、(A-2)が25?35質量%、(A-3)が50?60質量%である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)成分が絶縁性を有する熱伝導性フィラーである請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(B)成分が、粘度300?3,000mPa・s、重量平均分子量3,000?25,000の加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項5】
(B)成分が、(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項6】
(B)成分が、(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールである請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項7】
(B)成分が、(B-1)分子鎖両末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコール及び(B-2)分子鎖片末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレングリコールを含有してなる請求項1から3いずれかに記載の組成物。
【請求項8】
(A)成分は前記組成物全体に対して60?95質量%の量で、(C)成分は(B)成分に対して0.01?10質量%の量で、(D)成分は(B)成分に対して0.01?10質量%の量で含まれる請求項1から7いずれかに記載の組成物。
【請求項9】
(C)成分が、ビスマス系硬化触媒である請求項1から8いずれかに記載の組成物。
【請求項10】
(C)成分が、チタン系硬化触媒である請求項1から8いずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物の硬化体が、デュロメーターアスカー硬度計による硬度が90以下である請求項1から10いずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の組成物を含有してなる熱伝導性組成物。
【請求項13】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の組成物を含有してなる熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の組成物を含有してなる放熱材。
【請求項15】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の組成物を電子部品に塗布することにより、電子部品から発生した熱を外部へ放熱させる放熱方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-04-25 
出願番号 特願2012-509476(P2012-509476)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤井 明子井津 健太郎藤井 勲  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 守安 智
橋本 栄和
登録日 2015-10-30 
登録番号 特許第5828835号(P5828835)
権利者 デンカ株式会社
発明の名称 熱伝導性湿気硬化型樹脂組成物  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  

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