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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1329076
異議申立番号 異議2016-700327  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-19 
確定日 2017-04-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5796296号発明「焙煎ごま含有食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5796296号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕、6について訂正することを認める。 特許第5796296号の請求項1?4、6に係る特許を取り消す。 特許第5796296号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5796296号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成27年8月28日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人前田桂子より特許異議の申立てがなされ、平成28年6月13日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成28年8月1日に意見書の提出及び訂正の請求がなされ、平成28年9月21日に特許異議申立人前田桂子から意見書が提出がなされ、平成28年11月11日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、指定期間内である平成29年1月13日に意見書の提出がなされたものである。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
特許権者は、特許請求の範囲の請求項1を以下の事項により特定されるとおりの請求項1として訂正し、その結果として請求項1を引用する請求項2?4も、以下の事項により特定されるとおりの請求項2?4として訂正することを請求する(訂正事項1)。
「【請求項1】
焙煎ごま粉砕物及び香辛料を含有する水中油型乳化食品であって、
(1)該食品100g中に含有される焙煎ごま粉砕物の臭気指数が22以上かつ32以下であり、
(2)該食品100g中に含有される香辛料の臭気指数が25以上かつ38以下であり、
(3)食品全体に対する油相の含有割合が30重量%以上かつ50重量%以下であり、
香辛料が生姜であることを特徴とする、食品。
【請求項2】
焙煎ごま粉砕物が、すりごま及び/又はねりごまである、請求項1記載の食品。
【請求項3】
食品100g中に含有される焙煎ごま粉砕物の臭気指数が、23以上かつ31以下である、請求項1又は2記載の食品。
【請求項4】
食品100g中に含有される香辛料の臭気指数が、26以上かつ37以下である、請求項1?3のいずれか1項に記載の食品。」
さらに、特許権者は、特許請求の範囲の請求項5を削除する訂正を請求する(訂正事項2)。
加えて、特許権者は、特許請求の範囲の請求項6を以下の事項により特定されるとおりの請求項6として訂正することを請求する(訂正事項3)。
「【請求項6】
焙煎ごま粉砕物及び香辛料を含有する食品における風味の改善方法であって、
(1)該食品100g中に含有される焙煎ごま粉砕物の臭気指数が22以上かつ32以下となるように焙煎ごま粉砕物を配合し、かつ(2)該食品100g中に含有される香辛料の臭気指数が25以上かつ38以下となるように香辛料を配合した水相と、
(3)食品全体に対する含有割合が30重量%以上かつ50重量%以下である油相とを、乳化して、水中油型乳化物とすることを含み、香辛料が生姜である、方法。」

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正の目的について
訂正事項1及び3は、特許明細書の請求項1及び6における食品全体に対する油相の含有割合を「15重量%以上かつ65重量%以下」の範囲から「30重量%以上かつ50重量%以下」の範囲に減縮するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2は、請求項5を削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の追加、及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項1及び3について、食品全体に対する油相の含有割合の範囲に係る説明として、本件特許明細書の段落【0032】には、「本発明の食品は、油相の含有割合が特定の範囲内であることが重要である。油相の含有割合が特定の範囲内であることにより、本発明の食品は、コク味が加わり、焙煎ごまのまろやかな風味がより好ましいものとなる。具体的には、油相の含有割合は、食品全体に対して、通常15重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、特に好ましくは30重量%以上である。油相の含有割合が、15重量%未満である場合、コク味がなく焙煎ごまのまろやかな風味を感じにくい。また、油相の含有割合は、食品全体に対して、通常65重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは55重量%以下、特に好ましくは50重量%以下である。・・・」と記載されている。
したがって、訂正事項1及び3は願書に添付した明細書に記載されていた事項であって、新規事項を追加するものではなく、また、訂正事項1は請求項1?5の一群の請求項ごとに請求された訂正であり、さらに、訂正事項1及び3は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
また、訂正事項2は、請求項5を削除するものであり、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(3)むすび
したがって、上記訂正請求による訂正事項1?3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項?第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕、6について訂正を認める。

第3 取消理由についての判断
1 訂正請求項1?6に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正請求項1?4、6に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明4」、「本件発明6」という。)は、上記「第2・1 訂正の内容」において示したとおりのものである。また、請求項5は削除されている。

2 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許に対し、平成28年6月13日付けで通知した取消理由1?5は、概ね、次のとおりである。
(1) 取消理由1
請求項1?5に係る本件特許発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用例1に掲載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2) 取消理由2
請求項1?5、6に係る本件特許発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である下記引用例2?5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用例1に掲載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(3) 取消理由3
食品中に含有される焙煎ごま粉砕物などの臭気指数の測定方法が、明細書の発明の詳細な説明に明確に記載されていないので、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(4) 取消理由4
食品中に含有される焙煎ごま粉砕物などの臭気指数の測定方法が、明細書の発明の詳細な説明の記載では不明であり、本件特許は、発明の詳細な説明にサポートされておらず、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(5) 取消理由5
請求項1?5、6に係る本件特許発明の「臭気指数」の測定方法が不明であり、水中油型乳化食品を構成する原料としての焙煎ごま粉砕物単体及び生姜単体の臭気指数を限定したものであるのから、請求項1?5、6に係る本件特許発明は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

<引用例等一覧>
引用例1:真美、”鰆の和風タルタル”、2009年4月17日(更新日2
009年10月7日)、クックパッド、インターネット、<UR
L:http://cookpad.com/recipe/7
85727>(異議申立人提出の甲第1号証)
引用例2:「目で見る食品カロリー辞典(2004年最新版)[おかず・素
材編]」、株式会社学習研究社、2003年11月22日、表紙
、p.114-119、奥付(同甲第2号証、周知技術を示す文
献)
引用例3:田中武彦監修、中島泰子編集、「常用量による市販食品成分早見
表(第3版)」、医歯薬出版株式会社、2003年10月20日
、表紙、p.25、奥付(同甲第3号証、周知技術を示す文献)
引用例4:文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会、「日本食品標
準成分表2010」、全国官報販売協同組合、平成22年12月
3日、表紙、p.238-239、奥付(同甲第4号証、周知技
術を示す文献)
引用例5:特開2001-231492号公報(同甲第6号証、周知技術を
示す文献)

3 取消理由3?5(記載要件)について
臭気指数について、本件特許明細書の段落【0011】に「・・・ここで臭気指数とは、臭気濃度の常用対数に10を乗じた値をいい、以下の式により算出される。なお、臭気濃度とは、臭いのついた気体や液体をその臭いが感じられなくなるまで無臭の空気や無臭の液体(水)で希釈した時の希釈倍率をいう。
臭気指数=10×Log(臭気濃度)」と説明がなされるとともに、臭気指数の具体的な測定方法は、段落【0012】に「本発明の食品における焙煎ごま粉砕物及び香辛料の臭気指数は、新コスモス電機株式会社製『ポータブル型ニオイセンサ XP-329IIIR』(以下、単に『ニオイセンサ』と略記する場合がある)を用い、下記(1)?(5)のとおりに測定して得られる値である(尚、測定は20?24℃の環境にて実施する)。
(1)ニオイセンサの吸気部分にテフロンチューブを装着する。
(2)本発明の食品100g中に含まれる量の焙煎ごま粉砕物及び香辛料をそれぞれ容量1Lのガラス瓶に投入し(例えば、焙煎ごま粉砕物の含有量が本発明の食品に対して4重量%である場合は、ガラス瓶に焙煎ごま粉砕物を4g投入する)、投入直後にキャップを閉めて1分間密封する。
(3)キャップを外し、その直後に、ガラス瓶の口部に穴の開いたゴム栓を取り付ける。
(4)ゴム栓の取り付け後、即座にその穴にテフロンチューブを通す。その際、テフロンチューブの先端がガラス瓶の底部より20cmの高さに位置するよう設置する。
(5)テフロンチューブを設置して1分後のニオイセンサの臭気指数を読み取る。尚、嗅覚とニオイセンサの感度特性の全てが同じではないため、種類の異なる臭気について、それぞれ臭気指数とニオイセンサのレベル値とを対応させた値を求める必要があるが、本発明においては、ニオイセンサの製造者が提供する『惣菜工場の排気ガスにおけるにんにく臭』について作成された臭気指数とニオイセンサのレベル値との対応表に従って、ニオイセンサのレベル値から換算される臭気指数の数値を、焙煎ごま粉砕物及びにんにく以外の香辛料についても、臭気指数として適用するものとする。」と記載されているので、本件発明における臭気指数は、発明の詳細な説明の段落【0012】に記載の上記(1)?(5)に記載の手順により測定されるものであると理解できる。
そして、臭気指数の定義として段落【0011】「臭気指数=10×Log(臭気濃度)」の説明があるとしても、当該段落【0011】の記載は、段落【0012】の手順でニオイセンサを用いて測定した値が、当該「臭気指数=10×Log(臭気濃度)」に対応する値であることを単に示すにすぎないものと理解でき、発明の詳細な説明は、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないということはできない。
また、「にんにくの臭気を基準とした臭気指数を、すりごま及び生姜にも適用した」(本件特許明細書段落【0035】)ことも、ニオイセンサにより焙煎ごま粉砕物及び生姜の臭気を計測する際の基準を定めたにすぎず、このことにより当業者が発明の実施をすることができないというものでもない。
さらに、本件発明1?4、6で特定する焙煎ごま粉砕物及び生姜の臭気指数は、「水中油型乳化食品」自体の物性値として特定したものではなく、原料の焙煎ごま粉砕物及び生姜それぞれ単体の臭気指数で「水中油型乳化食品」を特定するものであるが、焙煎ごま粉砕物及び生姜の臭気指数は、「水中油型乳化食品」100g中に含まれる量の焙煎ごま粉砕物及び生姜の臭気指数を特定するものであり、これは「水中油型乳化食品」における配合割合に対応するものであって、その点で不明確な記載であるとはいうことできない(本件特許明細書段落【0012】、【0035】、【0036】、平成28年8月1日付けの特許権者の提出した意見書8ページ13?19行、26?30行)。
したがって、取消理由3?5(記載要件)に規定する要件を満たさないとはいえない。

4 取消理由1(新規性)について
上記訂正事項1により、本件発明1の「食品」の「(3)食品全体に対する油相の含有割合が30重量%以上かつ50重量%以下」となったことにより、取消理由1は解消した。

5 取消理由2(容易性)について
(1) 引用例
取消理由通知書に引用した引用例1には、以下の事項が掲載されている。

(1a)レシピ名「鰆の和風タルタル」の「材料」欄に、
「☆マヨネーズ 大さじ3
☆酢 大さじ1/2
☆すりゴマ 大さじ1
☆白ネギ(みじん切り) 1/2本
☆おろししょうが 小さじ1/2」

(1b)「1
*を混ぜ合わせ、照り焼きのタレを作る。☆を混ぜ合わせ、和風タルタルソースを作る。」(中段欄)

(1c)「このレシピの生い立ち
テレビで『鮭の和風タルタル』が紹介されていました。鮭も美味しいですが、鰆もなかなか♪ さっぱり和風タルタルソースが最近のお気に入りです。」(右下欄)

以上の(1a)?(1c)によると、引用例1には和風タルタルソースについて、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が掲載されていると認められる。

「マヨネーズ大さじ3、酢大さじ1/2、すりゴマ大さじ1、白ネギ(みじん切り)1/2本、おろししょうが小さじ1/2からなる和風タルタルソース。」

また、和風タルタルソースを作ることに着目すると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「マヨネーズ大さじ3、酢大さじ1/2、すりゴマ大さじ1、白ネギ(みじん切り)1/2本、おろししょうが小さじ1/2を混ぜ合わせて和風タルタルソースを作る方法。」

取消理由通知書に引用した引用例2には、以下の各記載がある。

(2a)「品名」が「しょうが(おろし)」について、「目安量」が「小さじ1杯6g」、「エネルギー・kcal」が「3」、「塩分」が「0.1g」、以下同様に、「酢(穀物)」について、「大さじ1杯15g」、「4」、「0g」、「酢(米酢)」について、「大さじ1杯15g」、「7」、「0g」が記載されている(115ページ)。

(2b)「品名」が「マヨネーズ(全卵型)」について、「目安量」が「大さじ1杯14g」、「エネルギー・kcal」が「98」、「塩分」が「0.3g」が記載されている(116ページ)。

(2c)「品名」の「ねぎ(根深ねぎ)」について、「目安量」が「中1本120g」、「エネルギー・kcal」が「20」、「塩分」が「0g」が記載されている(119ページ)。

取消理由通知書に引用した引用例3には、以下の記載がある。

(3a)「製品名 会社名」が「すりごま黒 三育フーズ(株)」の「備考」欄に「小さじ1杯2?3g」、及び「すりごま白 三育フーズ(株)」の「備考」欄に「小さじ1杯2?3g」が記載されている(25ページ)。

取消理由通知書に引用した引用例4には、以下の記載がある。

(4a)「17 調味料及び香辛料類」に「可食部100g当たり」として、「食品名」が「マヨネーズ」の「全卵型」について「脂質」が「75.3」、「卵黄型」について「脂質」が「72.3」が記載されている(238ページ)。

取消理由通知書に引用した引用例5には、以下の各記載がある。

(5a)「【0022】本発明のマヨネーズ様調味料の原材料はマヨネーズの場合は日本農林規格の定めに従うが、それ以外のマヨネーズタイプ調味料の場合は多様な原材料が使用できる。すなわち少なくとも食用油脂、卵黄、食酢からなり、卵は全卵、卵黄の1種または2種、およびこれらにに卵白を組み合わせたものを使用することが、その他必要に応じて食塩、甘味料等の糖類、胡椒、パプリカ、バジル、ディル、ローズマリー、クミン、タラゴン、コリアンダー、スターアニス、クローブ、カルダモン、ローレル、ターメリック、フェンネル、マスタード、タイム、セージ、メース、オールスパイス、セロリシード、山椒、わさび、とうがらし、オレガノ、カイエンペッパー、チリパウダー、ケッパー等のハーブおよび香辛料類、コーン、パスタ等の穀類、くるみ、ごま、松の実、アーモンド等の種実類、味噌、納豆、豆乳等の豆類、ツナ、ホタテ、かつおぶし、うに、たらこ等の魚介類、ベーコン、コンビーフ、ハム、豚肉・牛肉・鶏肉のひき肉等の獣鳥鯨肉類、ヨーグルト、チーズ、牛乳、クリーム等の乳類、あさつき、かぼちゃ、しそ、しょうが、セロリー、だいこん、たけのこ、玉ねぎ、トマト(加工品含む)、にんじん、にんにく、ねぎ、パセリ、ピーマン、赤ピーマン、黄ピーマン、ピクルス、ザーサイ、ホースラッデッシュ、みょうが、わけぎ、グリーンピース、しその実等の野菜類、梅干し、うめ、かぼす、オリーブ、グレープフルーツ、すだち、パインアップル、ぶどう、マンゴ、もも、ゆず、ライム、りんご、レモン、みかん、キウイフルーツ、なつみかん、はっさく、パッションフルーツ等の果実類の実およびその果汁、しいたけ、マッシュルーム、きくらげ等のきのこ類、こんぶ、のり、ひじき、とさかのり、わかめ等の藻類、清酒、ワイン、みりん、こぶ茶、梅酒等の嗜好飲料類、コンソメ、醤油、ケチャップ、豆板醤、アミノ酸、テンメンジャン、醗酵調味料、酸味料、うまみ調味料(アミノ酸、核酸等)、風味調味料等の調味料類、チリソース、トマトソース、オイスターソース、ウスターソス、オイスターソース等のソース類、天然エキス、酵母エキス、肉エキス、魚介類エキス、野菜エキス等のエキス類、たんぱく加水分解物、酸化防止剤、香料、増粘剤、澱粉、乳化剤、水等を加えることができる。
【0023】マヨネーズ様調味料の製造方法は通常公知の製造方法を用いることができる。以下に述べる方法で製造できるが、これに限定されるものではない。食用油脂と卵以外の各種原材料を加温可能な攪拌槽に投入し、加熱攪拌を行い水相部を調製する。加熱攪拌は原材料の均一な分散、溶解、および殺菌を目的として必要に応じて行う、これを達成できれば特に条件に制限はない。加熱攪拌は加圧、減圧、常圧下で可能であり、通常は常圧下で行われる。温度の制限はなく原材料が溶解、殺菌がなされれば良く、通常は40?95℃で、好ましくは60℃?95℃で行われる。攪拌は原料の均一な分散等がなされれば良く、プロペラ、ホモミキサー、ブレンダー、ディスパー、パドルミキサー、コロイドミル、連続ミキサー、スタティックミキサー、超音波等の撹拌機または方法を用いることができ、回転数、攪拌時間は原材料が均一に分散されれば特に制限はない。加熱した場合は、その後、水相部を常温程度まで冷却し、別途に殺菌された卵と別途調製された食用油脂とを合わせ乳化する。乳化は通常減圧下で行い、プロペラ、ホモミキサー、ブレンダー、ディスパー、パドルミキサー、コロイドミル、連続ミキサー、スタティックミキサー等を用いることができマヨネーズ様調味料が得られる。」

(2) 判断
ア 本件発明1について
本件発明1と引用発明1とを対比すると、各文言の意味等からみて、後者の「おろししょうが」は、前者の「香辛料」及び「生姜」に、後者の「マヨネーズ」からなる「和風タルタルソース」は、前者の「水中油型乳化食品」及び「食品」に相当する。
後者の「すりゴマ」は、焙煎した後にすりつぶされるものであることが技術常識であるので、前者の「焙煎ごま粉砕物」に相当する。

よって、本件発明1と引用発明1との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「焙煎ごま粉砕物及び香辛料を含有する水中油型乳化食品であって、香辛料が生姜である、食品。」

[相違点1]
本件発明1は、「(1)該食品100g中に含有される焙煎ごま粉砕物の臭気指数が22以上かつ32以下であり、
(2)該食品100g中に含有される香辛料の臭気指数が25以上かつ38以下であ」るとされているのに対して、引用発明1は、そのような特定はなされていない点。

[相違点2]
本件発明1は、「(3)食品全体に対する油相の含有割合が30重量%以上かつ50重量%以下であ」るのに対して、引用発明1は、そのような特定はなされていない点。

そこで、上記各相違点について検討する。

[相違点1について]
まず、引用発明1のすりゴマ及びおろししょうがの配合割合について、検討する。
引用発明1の「マヨネーズ大さじ3」、「酢大さじ1/2」、「すりゴマ大さじ1」、「白ネギ(みじん切り)1/2本」及び「おろししょうが小さじ1/2」の各重量について、以下のとおりである。
「マヨネーズ」が全卵型であるか、卵黄型であるかについて引用発明1は特定していないが、全卵型及び卵黄型はどちらもよく用いられるものであり、引用発明1で全卵型を用いた場合には、後者の「マヨネーズ大さじ3」は、14×3=42g(記載事項(2b))となる。
「酢大さじ1/2」は、15×1/2=7.5g(記載事項(2a))である。
「すりゴマ大さじ1」は、大さじ1が小さじ3に相当することが技術常識であるので、6?9g(記載事項(3a))である。
「白ネギ(みじん切り)1/2本」は、120×1/2=60g(記載事項(2c))、「おろししょうが小さじ1/2」は、6×1/2=3g(記載事項(2a))である。
そうすると、和風タルタルソースの全重量は、42+7.5+(6?9)+60+3=118.5?121.5gといえる。
したがって、すりゴマの配合割合は、6/118.5×100=5.1%、9/121.5×100=7.4%から、5.1?7.4%の範囲といえる。
また、おろししょうがの配合割合は、3/118.5×100=2.5%、3/121.5×100=2.5%から、2.5%である。
そして、「すりゴマ」及び「おろししょうが」のこれらの配合割合の臭気指数について、引用発明1及び引用例1において特定するところはない。
しかしながら、上記「3 取消理由3?5(記載要件)について」において述べたとおり、本件発明1で特定する焙煎ごま粉砕物及び生姜の臭気指数は、「水中油型乳化食品」自体の物性値として特定したものではなく、原料の焙煎ごま粉砕物及び生姜それぞれ単体の臭気指数で「水中油型乳化食品」を特定するものであるが、焙煎ごま粉砕物及び生姜の臭気指数は、「水中油型乳化食品」100g中に含まれる量の焙煎ごま粉砕物及び生姜の臭気指数を特定するものであり、これは「水中油型乳化食品」における配合割合に対応するものである。そして、本件発明1は、官能試験で好適とされた範囲の配合割合に対応する臭気指数で示したものにすぎない。
そして、「おろししょうが」及び「すりゴマ」を臭気指数で特定する範囲が、配合割合(%)としてどの程度のものを特定しているかについて本件発明1をみると、「(1)該食品100g中に含有される焙煎ごま粉砕物の臭気指数が22以上かつ32以下であ」る場合の焙煎ごま粉砕物は、配合(%)で「1?10」の範囲であり(本件特許明細書段落【0036】【表1】)、「(2)該食品100g中に含有される香辛料の臭気指数が25以上かつ38以下であ」る場合の生姜は、配合(%)で「0.5?5」の範囲であり(本件特許明細書段落【0036】【表1】)、引用発明1のすりゴマの配合割合の5.1?7.4%、おろししょうがの配合割合の2.5%を含む範囲であり、そのような範囲を特定する臭気指数の範囲が格別なものとは認められない。
よって、相違点1に係る本件発明1の構成は、引用発明1において、引用例2、3に記載の事項を参照することにより、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2について]
次に、引用発明1の油相について、検討する。
引用発明1の「マヨネーズ」は、全卵型を用いた場合には、脂質の割合は、マヨネーズ100g中に75.3gである(上記記載事項(4a))。
上記[相違点1について]において検討したとおり、「マヨネーズ大さじ3」は、42gであり、引用発明1の油相としては、和風タルタルソースに用いる材料からみてマヨネーズの脂質がなすことは明らかであり、そうすると油相は、42×75.3/100=31.6gとなる。ここで、和風タルタルソースの全重量は、118.5?121.5gであるので、油相の割合は、26.0%?26.7%(31.6/121.5×100=26.0%、31.6/118.5×100=26.7%)の範囲といえる。
そして、引用発明1におけるマヨネーズ中の油相(脂質)の割合は、和風タルタルソースの材料であるマヨネーズ、酢、すりゴマ、白ネギ、おろししょうが等を食する者の好みで適宜調整されることにより変更されるものであり、ごまを含有する乳化型食品で油相が30重量%以上のものも本件特許出願前に周知のものであること(例えば、特開2009-11206号公報段落【0063】【表2】実施例7、特開2008-167723号公報段落【0067】【表1】等参照。)、油相を30重量%以上とすることは、引用発明1の油相の割合26.0?26.7%から、5%程度増やすにすぎないことを考慮すれば、引用発明1において、油相の割合が26.7%であるものを、マヨネーズを適宜増量して、30%を超えた範囲とすることも当業者が容易になし得たことである。
よって、相違点2に係る本件発明1の構成は、引用発明1において、引用例2?4に記載の事項を参照することにより、当業者が容易に想到し得たものである。

なお、特許権者は、平成29年1月13日の意見書において、(ア)「『さっぱり』とした風味を目的としてなされた引用発明1において、敢えてその目的とは反対に、油相の含有割合を増量させ、30重量%を超えた範囲としてみることは動機付けられるものではありません。」(5ページ下から3行?6ページ1行)、(イ)「仮に引用発明1においてマヨネーズを増量し得るとしても、焙煎ごま粉砕物及び生姜の臭気指数がそれぞれ特定の範囲であり、かつ食品全体に対する油相の含有割合が30重量%以上かつ50重量%以下という特定の範囲であることによって、焙煎ごまのまろやかな風味がコク味によって引き立ち、焙煎ごまのまろやかな風味と生姜の風味とのバランスに優れるという本件発明1の技術的思想は、容易に想到し得るものではありません。」(6ページ5?10行)及び(ウ)「マヨネーズに含まれる各種成分のうち、油脂が、特定の含有割合であるとき水中油型乳化食品に含有される焙煎ごま粉砕物及び生姜の風味をバランス良く向上させ得ることを見出して、本件発明1の技術的思想に想到することは、当業者といえども容易になし得るものではありません。」(6ページ24?27行)と主張しているので、以下に検討する。
上記(ア)については、引用発明1は、レシピであって(記載事項(1a))、レシピにおける材料の分量は目安であり、レシピを参考として料理を作る者が好みで材料の各分量を加減することは、一般常識の範疇である。
そうすると、引用例1に、「さっぱり和風タルタルソース」との記載(上記記載事項(1c))があるとしても、当該タルタルソースのレシピにおいて、よりコクのある味を好んで、マヨネーズの使用量を増やし、結果として、油脂の含有割合を30重量%を超えた範囲とすることに、動機付けがないとか、あるいは、マヨネーズの使用量を増やすことが当業者にとって困難であるとまでは認められない。
さらに、焙煎ごま粉砕物及び生姜の特定の範囲の臭気指数と、油相の特定の範囲の含有割合についていう上記(イ)及び(ウ)は、上記「相違点1について」で検討したとおり、焙煎ごま粉砕物及び生姜の特定の範囲の臭気指数が、官能試験で好適とされた範囲の焙煎ごま粉砕物と生姜の配合割合をいうにすぎず、また、本件特許明細書で特定される焙煎ごま粉砕物及び生姜の配合割合に含まれる範囲を、引用発明1の和風タルタルソースが、すりゴマの配合割合5.1?7.4%、おろししょうがの配合割合2.5%として実質特定していること、また、「相違点2について」で検討したとおり、引用発明1の和風タルタルソースの油相の割合に着目すると26.0%?26.7%であることを踏まえると、油相を30重量%以上としたことにより、特定の範囲の臭気指数を有する焙煎ごま粉砕物及び生姜が格別な効果を奏しているとまでいうことはできない。この点について、特許権者が、平成29年1月13日の意見書において提示した菜種油が30重量%の実施例17(追試)と26.7重量%の追加比較例1において、結果として、「実施例17(追試)の水中油型乳化ドレッシングは、追加比較例1の水中油型乳化ドレッシングに比べ、後味のクリーミー感、焙煎ごまのまろやかな風味が強く好ましいものであった。」(3ページ下から3行?下から1行)としているが、その程度は不明であり、上記格別な効果があるとまでいうことはできない。

したがって、本件発明1は、引用発明1、引用例2?4に記載の事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用し、本件発明1にさらに限定を付加するものであり、両者は、上記一致点及び「焙煎ごま粉砕物が、すりごま」である点で一致し、上記相違点1、2で相違する。
そして、相違点1、2については、上記アで検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。
また、本件発明2の奏する効果をみても、引用発明1、引用例2?4に記載の事項及び周知の事項から、当業者が予測し得る範囲内のものであって格別ではない。

したがって、本件発明2は、引用発明1、引用例2?4に記載の事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

ウ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は2を引用し、本件発明1で特定される焙煎ごま臭気指数について、さらに、「23以上かつ31以下」との限定を付加するものであり、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1において本件発明3の焙煎ごま臭気指数が「23以上かつ31以下」とした点及び相違点2で相違する。
そして、各相違点については、実質上記アで検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。
また、本件発明3の奏する効果をみても、引用発明1、引用例2?4に記載の事項及び周知の事項から、当業者が予測し得る範囲内のものであって格別ではない。

したがって、本件発明3は、引用発明1、引用例2?4に記載の事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

エ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明1?3を引用し、本件発明1で特定される香辛料の臭気指数について、さらに、「26以上かつ37以下」との限定を付加するものであり、両者は、上記一致点で一致し、上記相違点1において本件発明3の香辛料の臭気指数が「26以上かつ37以下」とした点及び相違点2で相違する。
そして、各相違点については、実質上記アで検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。
また、本件発明4の奏する効果をみても、引用発明1、引用例2?4に記載の事項及び周知の事項から、当業者が予測し得る範囲内のものであって格別ではない。
したがって、本件発明4は、引用発明1、引用例2?4に記載の事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

オ 本件発明6について
本件発明6と引用発明2とを対比すると、各文言の意味等からみて、各文言の意味等からみて、後者の「おろししょうが」は、前者の「香辛料」及び「生姜」に、後者の「マヨネーズ」からなる「和風タルタルソース」は、前者の「水中油型乳化食品」及び「食品」に相当する。
後者の「すりゴマ」は、焙煎した後にすりつぶされるものであることが技術常識であるので、前者の「焙煎ごま粉砕物」に相当する。
後者の「和風タルタルソースを作る方法」と、前者の「焙煎ごま粉砕物及び香辛料を含有する食品における風味の改善方法」とは、「食品を作る方法」という限りで共通する。
また、後者の「混ぜ合わせて和風タルタルソースを作る」ことと、前者の「乳化して、水中油型乳化物とすること」とは、「混ぜて水中油型乳化物を作る」限りにおいて共通する。

よって、本件発明6と引用発明2との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「焙煎ごま粉砕物及び香辛料を含有する食品を作る方法であって、
混ぜて水中油型乳化物を作ることを含み、香辛料が生姜である、方法。」

[相違点3]
食品を作る方法について、本件発明6は、「風味の改善方法」であるのに対して、引用発明2は、「和風タルタルソースを作る方法」である点。

[相違点4]
混ぜて水中油型乳化物を作ることについて、本件発明6は、「(1)該食品100g中に含有される焙煎ごま粉砕物の臭気指数が22以上かつ32以下となるように焙煎ごま粉砕物を配合し、かつ(2)該食品100g中に含有される香辛料の臭気指数が25以上かつ38以下となるように香辛料を配合した水相と、(3)食品全体に対する含有割合が30重量%以上かつ50重量%以下である油相とを、乳化して」いるのに対して、引用発明2は、「マヨネーズ大さじ3、酢大さじ1/2、すりゴマ大さじ1、白ネギ(みじん切り)1/2本、おろししょうが小さじ1/2を混ぜ合わせて」いる点。

そこで、上記各相違点について検討する。

[相違点3について]
「風味の改善」について、本件特許明細書には、次の事項が記載されている。

(h1)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術を用いてもなお、焙煎ごまのまろやかな風味と香辛料の風味とのバランスを保ちつつ、かつ、これらの風味を向上させる点で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、焙煎ごまと香辛料との配合に関して、臭気指数という当該分野でこれまで全く考慮されなかった概念を導入し、焙煎ごまと香辛料のそれぞれの臭気指数が特定の範囲内となるような配合を選択し、かつ油脂の配合比が特定の範囲内となるような水中油型乳化物とすることにより、香辛料の種類を問わず、焙煎ごまと香辛料との風味のバランスが良好な液体調味料(ドレッシング)が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。・・・」

(h2)「【0011】
本発明の食品は、焙煎ごま粉砕物及び香辛料の臭気指数が、いずれも特定の範囲内であることが重要である。これらの臭気指数がいずれも特定の範囲内であることにより、本発明の食品は、焙煎ごま特有のまろやかな風味と香辛料の風味とのバランスに優れるものとなる。・・・」

(h3)「【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、焙煎ごまのまろやかな風味と香辛料の風味とのバランスに優れ、かつ、これらの風味が向上した食用乳化物を提供することができるので、ドレッシングなどの液体調味料として大いに有用である。」

上記(h1)?(h3)の記載を総合すると、本件発明6が特定している「風味の改善」とは、「焙煎ごまのまろやかな風味と香辛料の風味とのバランスに優れ、かつ、これらの風味が向上した」ことと認められる。
そして、上記相違点1において検討したとおり、引用発明2の、すりゴマの配合割合が5.1?7.4%、おろししょうがの配合割合が2.5%であって、一方、本件発明6が配合割合(%)としてどの程度のものを特定しているかについてみると、「(1)該食品100g中に含有される焙煎ごま粉砕物の臭気指数が22以上かつ32以下であ」る場合の焙煎ごま粉砕物は、配合(%)で「1?10」の範囲であり(【0036】【表1】)、「(2)該食品100g中に含有される香辛料の臭気指数が25以上かつ38以下であ」る場合の生姜は、配合(%)で「0.5?5」の範囲であり(【0036】【表1】)、引用発明6のすりゴマの配合割合の5.1?7.4%、おろししょうがの配合割合の2.5%を含む範囲であり、そすうると、引用発明2も、本件発明6と同様に焙煎ごまと香辛料とのバランスがとれて風味の改善がなされているといえる。
したがって、相違点3は、実質的な相違点ではない。

[相違点4について]
混ぜて水中油型乳化物を作ることについて、焙煎ごま粉砕物及び香辛料である生姜を配合した水相と、油相とを、乳化して、水中油型乳化物とするか、水中油型乳化物に焙煎ごま粉砕物及び香辛料である生姜を配合した水相を加えるかは、当業者が適宜なし得た事項である(上記記載事項(5a)参照。)。
また、本件発明6が、「(1)該食品100g中に含有される焙煎ごま粉砕物の臭気指数が22以上かつ32以下となるように焙煎ごま粉砕物を配合」する点、及び「(2)該食品100g中に含有される香辛料の臭気指数が25以上かつ38以下となるように香辛料を配合した水相」と油相とを乳化する点については、上記相違点1で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。
加えて、本件発明6が「(3)食品全体に対する含有割合が30重量%以上かつ50重量%以下である油相」と水相とを乳化する点については、上記相違点2で検討したとおり、当業者が容易になし得たことである。
そして、本件発明6の奏する効果をみても、引用発明2、引用例2?5に記載の事項及び周知の事項から、当業者が予測し得る範囲内のものであって格別ではない。
なお、本件発明6についても、上記「ア 本件発明1について」において検討した、特許権者の平成29年1月13日の意見書についての事項は、同様である。

したがって、本件発明6は、引用発明2、引用例2?5に記載の事項及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?4は、引用発明1、引用例2?4に記載の事項及び周知の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?4の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件発明6は、引用発明2、引用例2?5に記載の事項及び周知の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明5の特許は、訂正により、削除されたため、本件発明5に対して、特許異議申立人前田桂子がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎ごま粉砕物及び香辛料を含有する水中油型乳化食品であって、
(1)該食品100g中に含有される焙煎ごま粉砕物の臭気指数が22以上かつ32以下であり、
(2)該食品100g中に含有される香辛料の臭気指数が25以上かつ38以下であり、
(3)食品全体に対する油相の含有割合が30重量%以上かつ50重量%以下であり、
香辛料が生姜であることを特徴とする、食品。
【請求項2】
焙煎ごま粉砕物が、すりごま及び/又はねりごまである、請求項1記載の食品。
【請求項3】
食品100g中に含有される焙煎ごま粉砕物の臭気指数が、23以上かつ31以下である、請求項1又は2記載の食品。
【請求項4】
食品100g中に含有される香辛料の臭気指数が、26以上かつ37以下である、請求項1?3のいずれか1項に記載の食品。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
焙煎ごま粉砕物及び香辛料を含有する食品における風味の改善方法であって、
(1)該食品100g中に含有される焙煎ごま粉砕物の臭気指数が22以上かつ32以下となるように焙煎ごま粉砕物を配合し、かつ(2)該食品100g中に含有される香辛料の臭気指数が25以上かつ38以下となるように香辛料を配合した水相と、
(3)食品全体に対する含有割合が30重量%以上かつ50重量%以下である油相とを、乳化して、水中油型乳化物とすることを含み、香辛料が生姜である、方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-03-14 
出願番号 特願2011-10234(P2011-10234)
審決分類 P 1 651・ 113- ZAA (A23L)
P 1 651・ 536- ZAA (A23L)
P 1 651・ 537- ZAA (A23L)
P 1 651・ 121- ZAA (A23L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 長谷川 茜  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 山崎 勝司
結城 健太郎
登録日 2015-08-28 
登録番号 特許第5796296号(P5796296)
権利者 味の素株式会社
発明の名称 焙煎ごま含有食品  
代理人 小池 順造  
代理人 小池 順造  
代理人 鎌田 光宜  
代理人 中 正道  
代理人 高島 一  
代理人 高島 一  
代理人 中 正道  
代理人 鎌田 光宜  

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