• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F01N
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  F01N
管理番号 1329101
異議申立番号 異議2017-700115  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-08 
確定日 2017-06-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第5968954号発明「排ガス及びガス・スクラバ流体浄化装置及び方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5968954号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許5968954号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし11に係る特許(以下、「請求項1の特許」ないし「請求項11の特許」という。)についての出願は、2011年(平成23年)2月24日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2010年2月25日(EP)欧州特許庁、2010年7月2日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特願2012-554342号の一部を平成26年6月18日に新たな特許出願としたものであって、平成28年7月15日に特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年2月8日に村上友一(以下、「村上申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年2月9日に齋藤慎二(以下、「齋藤申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年3月28日付けで齋藤申立人に対して審尋がされ、それに対して、平成29年4月14日に齋藤申立人による回答書が提出されたものである。

第2 本件発明
請求項1ないし11の特許に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明11」という。)は、それぞれ、本件特許の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される次のとおりものである。

「【請求項1】
ディーゼル・エンジンのための排ガス浄化装置であって、
排ガスを浄化するためのガス・スクラバ(1)を有し、このガス・スクラバは、汚染物質粒子を有する汚染されたスクラバ流体を作り出し、
このガス・スクラバに接続され、前記汚染されたスクラバ流体を浄化するためのスクラバ流体浄化装置を有し、
前記スクラバ流体浄化装置は、前記汚染されたスクラバ流体から、汚染物質相としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体とを分離するための遠心分離機(9)を有し、
この遠心分離機は、
分離ディスク(13)の積層体を分離スペース(12)の周りを取り囲むロータ(11)と、
前記分離スペースの中に伸びる、汚染されたスクラバ流体のための密封式のセパレータ入口(8)と、
前記分離スペースから伸びる、浄化されたスクラバ流体のための第一のセパレータ出口(14)と、
前記分離スペースから伸びる、汚染物質相のための第二のセパレータ出口(15)と、
を有し、
このスクラバ流体浄化装置は、
汚染されたスクラバ流体を前記ガス・スクラバから前記セパレータ入口へ導くための手段と、
浄化されたスクラバ流体を第一のセパレータ出口から前記ガス・スクラバへ導くための手段と、を更に有していること、
前記排ガス浄化装置は、バッファ・タンク(6)を更に有し、
前記浄化されたスクラバ流体を前記第一のセパレータ出口から前記ガス・スクラバへ導くための手段は、このバッファ・タンクを介して、浄化されたスクラバ流体を前記第一のセパレータ出口(14)から前記ガス・スクラバ(1)へ導くように構成されていること、
前記汚染されたスクラバ流体を前記ガス・スクラバから前記セパレータ入口へ導くための手段は、前記バッファ・タンク(6)を介して、汚染されたスクラバ流体を前記ガス・スクラバ(1)から前記セパレータ入口(8)へ導くように構成されていること、 を特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載の排ガス浄化装置、
前記第二のセパレータ出口(15)は、汚染物質相の間欠的な排出のための排出ポートを有している。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項2に記載の排ガス浄化装置、
前記スクラバ流体浄化装置は、
前記分離スペース(12)の径方向外側の部分の中の汚染物質相の量に関係する前記遠心分離機のプロセス・パラメータを決定するための手段と、
前記分離スペースの径方向外側の部分の中の汚染物質相の量が予め定められたレベルを超えたことを示す、前記プロセス・パラメータについての予め定められた条件で、前記第二のセパレータ出口(15)の前記排出ポートを開くように構成された手段と、
を更に有している。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項3に記載の排ガス浄化装置、
前記プロセス・パラメータは、前記第一のセパレータ出口(14)の中の浄化されたスクラバ流体の濁り度であり、
前記プロセス・パラメータの予め定められた条件は、この濁り度が予め定められたレベルを超えたことである。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項3に記載の排ガス浄化装置、
前記遠心分離機は、第三のセパレータ出口を更に有していて、この第三のセパレータ出口は、前記分離スペース(12)の径方向外側の部分から伸び、
前記プロセス・パラメータは、この第三のセパレータ出口での圧力であって、前記予め定められた条件は、この圧力が予め定められたレベルを下回ったことである。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項1から5の何れか1項に記載の排ガス浄化装置、
前記スクラバ流体浄化装置は、前記セパレータ入口(8)及び前記第一のセパレータ出口(14)と連絡するバイパス(19)を更に有している。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項1から6の何れか1項に記載の排ガス浄化装置、
前記スクラバ流体は、水道水、海水脱塩水、淡水などのような水である。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項1から7の何れか1項に記載の排ガス浄化装置、
汚染されたスクラバ流体の一部を、ブリード・オフ・ディスク積層体遠心分離機(20,20’)に抜き出すための手段を更に有していて、この手段は、前記汚染されたスクラバ流体から、少なくとも、汚染物質粒子を有する汚染物質相と浄化されたスクラバ流体とを、分離するように構成されている。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項8に記載の排ガス浄化装置、
前記ブリード・オフ・ディスク積層体遠心分離機(20,20’)は、更に、前記第二
のセパレータ出口(15)から汚染物質相を受け取るように構成されている。
【請求項10】
ディーゼルエンジンのための排ガス浄化装置における汚染されたスクラバ流体を浄化するための方法であって、
- ガス・スクラバ(1)からバッファ・タンク(6)へ、汚染されたスクラバ流体を取り出し、ここで、この汚染されたスクラバ流体は、油と汚染物質粒子を有し、
- 汚染されたスクラバ流体を前記バッファ・タンクから密封式のセパレータ入口(8)を備えたディスク積層体遠心分離機(9)に供給し、
- 前記ディスク積層体遠心分離機(9)の中で、前記汚染されたスクラバ流体から、
前記油と前記汚染物質粒子を有する汚染物質相を分離し、それにより、浄化されたスクラバ流体を取り出し、
- 前記遠心分離機から前記バッファ・タンク(6)に、浄化されたスクラバ流体を供給すること、
- 前記バッファ・タンク(6)から前記ガス・スクラバに、浄化されたスクラバ流体を供給すること、
を特徴とする方法。
【請求項11】
下記工程を更に有する、請求項10に記載の方法、
- 前記ディスク積層体遠心分離機(9)から、汚染物質粒子を有する前記分離された汚染物質相を排出する。」

第3 特許異議申立ての理由の概要
村上申立人は証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証(以下、「甲1-1」ないし「甲1-4」という。)を、齋藤申立人は証拠方法として、甲第1号証ないし11号証(以下、「甲2-1」ないし「甲2-11」という。)をそれぞれ提出し、次の異議理由を主張している。

1.各甲号証
村上申立人より提出された証拠
甲1-1:特許第3868352号公報
甲1-2:特開2004-4652号公報
甲1-3:特開2006-320870号公報
甲1-4:特開2007-1339号公報

齋藤申立人より提出された証拠
甲2-1:特開2000-176242号公報
甲2-2:特開平1-242160号公報
甲2-3:特表平8-510161号公報
甲2-4:特開2004-154694号公報
甲2-5:特表2002-518159号公報
甲2-6:特開平9-38456号公報
甲2-7:特開平9-192440号公報
甲2-8:特開平8-168630号公報
甲2-9:特開平6-226041号公報
甲2-10:特開平9-192447号公報
甲2-11:特開2001-259360号公報

2.異議理由1(特許法第29条第2項)
(1)村上申立人による主張
i)理由1-1
本件特許発明1ないし5並びに10及び11は、本件特許の出願前に頒布された甲1-1ないし甲1-3に記載された発明に基いて、
本件特許発明6ないし9は、本件特許の出願前に頒布された甲1-1ないし甲1-4に記載された発明に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明特許1ないし11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

(2)齋藤申立人による主張
i)理由1-2
本件特許発明1ないし7並びに10及び11は、本件特許の出願前に頒布された甲2-1ないし甲2-4に記載された発明に基いて、
本件特許発明8及び9は、本件特許の出願前に頒布された甲2-1ないし甲2-5に記載された発明に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1ないし11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

ii)理由1-3
本件特許発明1ないし5並びに10及び11は、本件特許の出願前に頒布された甲2-6及び甲2-2ないし甲2-4に記載された発明に基いて、
本件特許発明6及び7は、本件特許の出願前に頒布された甲2-6及び甲2-1ないし甲2-4に記載された発明に基いて、
本件特許発明8及び9は、本件特許の出願前に頒布された甲2-6及び甲2-1ないし甲2-5に記載された発明に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1ないし11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

iii)理由1-4
本件特許発明1並びに10及び11は、本件特許の出願前に頒布された甲2-2、甲2-1及び甲2-6ないし甲2-11に記載された発明に基いて、
本件特許発明2ないし7は、本件特許の出願前に頒布された甲2-2、甲2-1、甲2-3、甲2-4及び甲2-6ないし甲2-11に記載された発明に基いて、
本件特許発明8及び9は、本件特許の出願前に頒布された甲2-2、甲2-1及び甲2-3ないし甲2-11に記載された発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1ないし11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

3.異議理由2(特許法第36条6項2号)
(1)村上申立人による主張
本件請求項5には、「前記遠心分離機は、第三のセパレータ出口を更に有していて、第三のセパレータ出口は、前記分離スペース(12)の径方向外側の部分から伸び、」との記載がある。しかし、「分離スペース(12)の径方向外側の部分」には、請求項2、3の記載から、汚染物質相を間欠的に排出するための排出ポートを有する第二のセパレータ出口が備えられていると考えられる。よって、第二のセパレータ出口と第三のセパレータ出口との配置関係が不明確である。
また、明細書中の記載(例えば段落0050)からは、第三のセパレータ出口からは、スクラバ流体が排出されるかのように読み取る事ができるが、分離スペースの径方向外側に配置された第三のセパレータ出口からスクラバ流体を排出し続けた場合には、第一のセパレータ出口からスクラバ流体を排出する事はできなくなるのではないかと考えられる。よって、請求項5に係る発明に関する明細書中の記載は、技術的にみて不明確であると思量する。

よって、本件請求項5の記載が不明確であるから、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、請求項5の特許は、特許法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。

4.異議理由3(特許法第36条4項1号)
(1)齋藤申立人による主張
請求項1には、「前記スクラバ流体浄化装置は、前記汚染されたスクラバ流体から、汚染物質相としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体とを分離するための遠心分離機(9)を有し、」と記載されている。
また、請求項1には、「この遠心分離機は、分離ディスク(13)の積層体を分離スペース(12)の周りを取り囲むロータ(11)と、・・・を有し、」と記載されている。
請求項10には、「汚染されたスクラバ流体を前記バッファ・タンクから密封式のセパレータ入口(8)を備えたディスク積層体遠心分離機(9)に供給し、
- 前記ディスク積層体遠心分離機(9)の中で、前記汚染されたスクラバ流体から、前記油と前記汚染物質粒子を有する汚染物質相を分離し、それにより、浄化されたスクラバ流体を取り出し、」と記載されている。

そして、これらの記載により特定されるディスク積層型の遠心分離及びその使用方法(運転方法)に関し、明細書段落0014に、「見出されているところによれば、ディスク積層体遠心分離機を使用することによって、排ガス・スクラバ流体からの、汚染物質粒子を有する汚染物質相の分離が、驚くほどに効果的になる。そのようなセパレータ内での分離は、凝集された粒子を維持するために十分に穏やかであって」と記載されている。
この明細書の記載を読むと、ディスク積層型の遠心分離機を用いれば、常にセパレータ内が十分に穏やかとなる(凝集された粒子が維持される)ように思える。

しかしながら、ディスク積層型の遠心分離機を用いたとしても、ロータの回転数を多くなるように設定すると、セパレータ内は十分に穏やかにならず、凝集体が粒子と油とに分離してしまう。

また、遠心分離機内において、流体の流路上に乱流が発生していることは当業者にとって周知である。なお、乱流は、様々な要因から発生するものである。よって、流体の流れ方向が変わる箇所に乱流が発生したり、流路の幅が代わる箇所で乱流が発生したりするが、このような乱流は、凝集体に対しせん断力として作用すること(凝集体が粒子と油とに分離すること)が容易に予想される。
このため、ディスク積層型の遠心分離機において、ロータの回転数を極めて少なくなるように設定しても、言い換えると、スクラバ流体に作用する遠心力を極めて小さくなるようにしても、乱流が発生してしまい、乱流により凝集体が分離してしまう。

このように、遠心分離機の実施において、「セパレータ内での分離は、凝集された粒子を維持するために十分に穏やか」にするためには、単にロータの回転数を制御するだけでは足りず、乱流の発生を抑制することが必要となる。

にも関わらず、本件明細書には、「セパレータ内での分離は、凝集された粒子を維持するために十分に穏やか」にするための具体的な方法が示されておらず、不明瞭である。
また、「セパレータ内での分離は、凝集された粒子を維持するために十分に穏やか」にするための具体的な方法について出願時の技術常識に基づいても当業者は理解できない。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1と10に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
同様に、請求項1と10に従属する請求項2-9及び11に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

よって、本件出願における発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1ないし本件特許発明11を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許発明1ないし本件特許発明11に係る特許は、特許法第113条第4号の規定により取り消すべきものである。

第4 当審の判断
[1]各甲号証の記載等
1.甲1-1の記載等
(1)甲1-1の記載
甲1-1には、「排水処理装置」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「【請求項1】
船舶用エンジンの燃焼による排ガスの洗浄に使用した海水を貯蔵する貯蔵部と、
前記貯蔵部に貯蔵された前記海水に含まれるばいじんを前記海水から分離する遠心分離部と、
前記遠心分離部で処理された前記海水から油分をフィルタで除去する油除去部と、
前記油除去部で処理された前記海水を中和する中和部と、
を具備し、
前記油除去部は、二つの油除去部を備え、一方の油除去部のフィルタを交換するとき他方の油除去部を利用する
排水処理装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

b)「【請求項4】
船舶のエンジンからの排ガスを海水により浄化するステップと、
前記海水を一時的に貯蔵するステップと、
前記貯蔵された前記海水から、ばいじんを取り除くステップと、
前記ばいじんを取り除かれた前記海水から、油分をフィルタで除去する二つの油除去部のうちの少なくとも一方を用いて油分を取り除くステップと、
前記油分を取り除かれた前記海水を中和するステップと、
前記浄化された前記排ガスの一部を前記エンジンへ循環するステップと、
を具備する
排水処理方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項4】)

c)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、船舶のエンジン等の燃焼による排ガスを、水を使って洗浄するガス洗浄用スクラバーからの排水中に含まれる有害物質を、低減することが可能な排水処理装置を提供することである。」(段落【0005】)

d)「【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明である排ガスを処理した後の排水の処理装置である排水処理装置の一実施の形態に関して、添付図面を参照して説明する。本実施例において、船舶のエンジンの排ガスを海水等により処理するガス洗浄用スクラバーに使用される排水処理装置を例に示して説明するが、定置型のエンジンやボイラからの排ガスを水(この場合は海水ではない)で処理するガス洗浄用スクラバーにおいても、適用可能である。」(段落【0021】)

e)「【0032】
ガス洗浄用スクラバー13は、配管C20-6の他端部と、配管C20-7の一端部と、配管B18-3の一端部と、配管B18-4の一端部が接続されている。ガス流量調節弁12からの排ガスを、海水を利用して洗浄し、主にばいじん及びSOxを除去する。そして、洗浄後の排ガスをブロア16へ送り込む。また、洗浄に用いる海水は、第1ポンプ17(配管B18-3経由)から導入され、洗浄後に処理部7(配管B18-4経由)へ入る。」(段落【0032】)

f)「【0040】
排水処理装置30は、容積部6と処理部7と排水締切弁8と取水弁9と第2ポンプ10と排水処理弁14と配管A15-1?配管A15-6と配管B18-4?配管B18-6と排水管21とを具備する。
【0041】
容積部6は、海水を一時的に溜めておくための貯蔵室である。また、メンテナンス時に一時的に海水をストップする場合などのバッファとしても機能する。ガス洗浄用スクラバー13において、排ガス洗浄に使用した海水を容積部6にて受け取り、溜めておくことが可能である。その海水の洗浄を行う場合には、第2ポンプ10を介して処理部7へ送られるのに対して、そのまま海中へ戻される場合には、排水締切弁8を開放して海中(外部)へ排水される。
配管B18-4は、ガス洗浄用スクラバー13と容積部6を接続する配管である。」(段落【0040】及び【0041】)

g)「【0046】
処理部7は、遠心分離部22、油除去部23、中和部24、クーラ25、配管A15-7?配管A15-14及び交換弁27-1?交換弁27-2を有する。第2ポンプ10から送られた海水から、主にばいじん除去や中和等SOxを取り除く処理を行う。
【0047】
遠心分離部22(又はばいじん分離部ともいう)は、第2ポンプ10から送られてきた排ガス処理を行った海水を、遠心力を利用して、各成分の比重の違いにより、各成分毎に分離する遠心分離装置である。
配管A15-3は、第2ポンプ10と遠心分離部22を接続している。
【0048】
遠心力Fは、F=mrω^(2)(ただし、m:質量又は比重、r:半径、ω:角速度)で表される。すわなち、同じ半径r、角速度ωにおいて、比重の違いにより受ける遠心力の大きさが異なることから、比重の大きさの異なる物質同士を分離することが可能である。
本実施例の遠心分離部では、排ガス処理を行った海水中に含まれるばいじんと、その他の海水とを分離するために用いる。ばいじんの比重は、約2g/cm^(3)、海水の比重は、約1.0g/cm^(3)である。すなわち、比重が2倍近く異なるので、容易に分離することが可能である。除去されたばいじんは、遠心分離部22から、一定の量が溜まるごとに除去される。」(段落【0046】ないし【0048】)

h)「【0058】
上記海水は、ばいじん、油分及びSOx等を除去されている為、リサイクルし(以下、リサイクル海水という)、再びガス洗浄用スクラバー13の洗浄液として使用することも可能である。その場合、ガス洗浄用スクラバー13の洗浄液に、リサイクル海水のみを使用する閉じた系とすることが可能である。閉じた系なので、ガス洗浄用スクラバー13からの排水を環境中へ排出せず、環境に対する負荷の著しく小さいシステムといえる。」(段落【0058】)

i)「【0086】
本発明は、船舶におけるエンジンについて説明しているが、定置型の施設(排ガスを発生する設備を有するエンジンやボイラなど)においても適用可能である。その場合には、海水の代わりとして工業用水を利用し、ガス洗浄用スクラバーに用いるようにする。また、そこで使用される工業用水は出来るだけリサイクルして使用するようにする。」(段落【0086】)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること。
j)図1及び図2には、容積部6を介して、ばいじん及び油分を含む排水をガス洗浄用スクラバー13から処理部7に導入することが記載されている。

k)図1及び図2には、ばいじん及び油分が除去された排水を、処理部から直接ガス洗浄用スクラバー13へ導くことが記載されている。

(3)甲1-1発明
上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、甲1-1には以下の発明が記載されていると認める。

「エンジン1のための排ガス洗浄を行う装置であって、
排ガスを浄化するためのガス洗浄用スクラバー13を有し、このガス洗浄用スクラバー13は、ばいじん及び油分を含む排水を排出し、
このガス洗浄用スクラバー13に接続され、ばいじん及び油分を含む排水を浄化するための処理部7を有し、
処理部7は、ばいじん及び油分を含む排水から、ばいじんの分離を行う遠心分離部22、油を除去する油除去部23-1、23-2を有し、
処理部7は、ばいじん及び油分を含む排水をガス洗浄用スクラバー13から処理部7へ導入するための手段と、
ばいじん及び油分が除去された排水を処理部7からガス洗浄用スクラバー13へ導くための手段を有しており、
排ガス洗浄を行う装置は、容積部6を更に有し、
ばいじん及び油分が除去された排水を、処理部7から容積部6を介さずに直接、ガス洗浄用スクラバー13へ導くように構成されており、
ばいじん及び油分を含む排水をガス洗浄用スクラバー13から処理部7に導入する手段は、容積部6を介して、ばいじん及び油分を含む排水をガス洗浄用スクラバー13から処理部7に導入する排ガス洗浄を行う装置。」(以下、「甲1-1A発明」という。)

「エンジン1のための排ガス洗浄を行うための装置における、排水を浄化するための方法であって、
- ガス洗浄用スクラバー13から容積部6へ、排水を導入し、
排水は、ばいじん及び油分を含み、
- 排水を容積部6から、ばいじんの分離を行う遠心分離部22及び油を除去する油除去部23-1、23-2を有する処理部7に供給し、
- 処理部7において、ばいじん及び油分を含む排水から、ばいじん及び油分を除去し、それにより浄化された排水を取り出し、
- 処理部7からガス洗浄用スクラバー13に容積部6を介さずに直接、浄化された排水を供給する、
方法。」(以下、「甲1-1B発明」という。)

2.甲1-2の記載等
(1)甲1-2の記載
甲1-2には、「トナー製造装置、製造方法、トナー及びトナーの製造ライン」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「【0042】
本発明は、トナー粒子分散液中のトナー粒子と不純物との比重差に着目して見出したものであることは前述したとおりである。すなわち、本発明者は、粒子表面に残存する遊離離型剤等の不純物の比重が、水の比重とそれ程変わらないものであることに着目し、両者の比重差がないことからトナー粒子の沈降距離を大幅に短くしてもトナー粒子表面から不純物を確実に除去できると推測し、本発明に到った。」(段落【0042】)

b)「【0049】
ウェットケーキ状態のトナーは、乾燥工程を経て完成する。
次に、本発明に係るトナーの製造方法における濃縮工程で使用される遠心沈降装置について説明する。遠心沈降装置本体1は、その中央にロータ3を有し、このロータと締め付けリングにより軸方向に結合されて一体になっている。本体1は、2つのどんぶりを重ね合わせた様な上部部材2と下部部材4から構成され、その内部は後述する沈降板10を配置した濃縮室5を有している。また、上部部材2と下部部材4の接合部6より濃縮室5で濃縮されたトナー粒子分散液を装置外に自動排出する。
【0050】
本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置は、粒子の比重差が2%以上あれば固体粒子の分離が可能で、本発明に係るトナー粒子と不純物との比重差では、極めて短い沈降距離で粒子と不純物の除去が可能である。
【0051】
本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置は、図1に示す様に、装置中央のロータの周囲に円錐状の沈降板10を0.5?1mm間隔で番傘を重ね合わせた様な形状で配置している。すなわち、本発明では、トナー粒子表面に付着している不純物の比重が水の比重とほぼ同等の値を有するので、沈降距離の極めて短くして沈降板を配置しても、トナー粒子表面から不純物を確実に除去して濃縮したトナー粒子分散液を得ることが可能である。なお、本発明に使用される遠心沈降装置は、トナー粒子と不純物との比重差が2%以上あれば不純物を確実に除去できる。また、濃縮を行うトナー粒子分散液の量等に応じて、沈降距離を変更することも可能である。」(段落【0049】ないし【0051】)

c)「【0055】
また、本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置の沈降板の間隔は0.5mm以上であるが、この様な短い間隔でもトナー粒子と水との比重差が約0.1程度でありながら、トナー粒子分散液の濃縮と不純物の除去が可能である。粒子の沈降距離となる沈降板の間隔は、好ましくは0.5mm?10mmであり、より好ましくは0.75mm?1mmであることが確認されている。
【0056】
本発明では、上記の様に短い距離でトナー粒子を沈降させることでトナー粒子分散液の濃縮と不純物除去が可能なので、濃縮時における濾過材の使用を不要にした。
【0057】
本発明に使用されるディスク型遠心沈降装置は、前述の様に回転軸の周りに沈降板を円錐状に配置しているが、図1に示す様に薄い板状の沈降板10を円錐状に何枚も傾斜させた状態で重ねる様に下方に開いた形態で配置し、あたかも番傘を開いて積み重ねた様な形態とすることで、遠心沈降装置の設置面積に対して10倍以上の分離沈降面積を得ることが可能で、作業スペースの効率化と同時に大量、高速の分離を可能にする。なお、本発明では濃縮手段の設置面積に対して10倍以上の分離沈降面積が得られることを確認している。」(段落【0055】ないし【0057】)

d)「【0067】
本発明に好ましく使用されるディスク型遠心沈降装置本体1の接合部6の開閉は、装置本体1を構成する下部部材4の上下動により達成される。図3は装置本体1の接合部6の開閉を示す模式図であり、図3(A)は接合部6が閉じている無排出時を示し、(B)は接合部6が開放している自動排出時を示す。なお、図中の実線の矢印は濃縮前のトナー粒子分散液の流れを、白抜きの矢印はトナー粒子の動きを、破線の矢印は濃縮後のトナー粒子を含有していない液の流れを、更にハッチングの入った矢印は下部部材4の移動方向を示す。」(段落【0067】)

e)「【0092】
液体集積室12を貫通して中央に延びて固定されている管は送入管15で、トナー粒子分散液を濃縮室5内に導入する管である。送入管15はディストリビュータ11の内部にある送入室16に開口している。送入管15の上方にある固定の送出管17は液体集積室12に集められた分散液中の比重の軽い液を分離するために配置されているものである。また、送出装置18が送入管15の周囲に液体集積室12内に配置され、そして送出管17に連結されている。送出装置18は固定されているが、また熱の送出構造では同様な送出装置をロータの回転速度よりも低い速度で回転するように配置することも可能である。」(段落【0092】)

(2)甲1-2技術
上記(1)及び図面の記載を総合すると、甲1-2には以下の技術が記載されている。

「送入管、送出管、濃縮したトナー粒子分散液を排出するための接合部、沈降板を円錐状に傾斜させた状態で重ねて形成した積層体及び積層体を囲む部材を有するディスク型遠心沈降装置を用いて、トナー粒子と水とからなるトナー粒子分散液中のトナー粒子表面から不純物を確実に除去して濃縮したトナー粒子分散液を得る技術。」(以下、「甲1-2技術という。」)

3.甲1-3の記載等
(1)甲1-3の記載
甲1-3には、「排ガス処理システム」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「【0018】
図1を参照して、排ガス処理システムは、スクラバ20、貯留タンク30、ろ過器40、電解槽50、NaOH水溶液槽60およびNaCl水溶液槽70から主に構成される。」(段落【0018】)

b)「【0025】
スクラバ20において排ガスと接触した吸収液は、排出管25を介して貯留タンク30へと導入される。貯留タンク30に導入された吸収液は、ポンプ32が適宜駆動されることによって、ろ過器40を介して電解槽50へと導入される。また、電解槽50には、ポンプ71が適宜駆動されることによって、NaCl水溶液槽70内のNaCl水溶液が導入される。」(段落【0025】)

c)「【0031】
そして、活性酸素種を含む吸収液は、貯留タンク30に返送される。
貯留タンク30では、排ガスを吸収することによって吸収液中に存在する亜硝酸ガスや亜硫酸ガスが、吸収液に含まれる活性酸素種によって酸化される。これによって、当該吸収液のCOD(Chemical Oxygen Demand)値が減少し、吸収液が一般の下水道に排水できる状態となる。」(段落【0031】)

d)「【0034】
そして、スクラバ20と貯留タンク30との間で吸収液を循環させるために駆動するポンプ31によって、排ガス吸収部と貯留槽との間で吸収液を循環する第1の循環部が構成される。また、貯留タンク30と電解槽50との間で吸収液を循環させるために駆動するポンプ32いよって、貯留層と電解槽との間で吸収液を循環する第2の循環部が構成される。」(段落【0034】)

(2)甲1-3技術
上記(1)及び図1及び2の記載を総合すると、甲1-3には以下の技術が記載されている。

「燃焼装置10で発生した排ガスをスクラバ20において貯留タンク30から供給した吸収液に接触させて浄化し、スクラバ20から排出された吸収液を貯留タンク30に導入した後、ろ過器40でろ過してタンク30に循環する技術。」(以下、「甲1-3技術」という。)

4.甲1-4の記載等
(1)甲1-4の記載
甲1-4には、「船舶の推進装置における内燃機関廃熱回収プラント」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「【0019】
推進システム3には、主プロペラ5と、主機9と、ポッド推進器7と、ボイラ17と、発電機駆動用タービン19と、発電機21と、高圧蒸気生成手段23と、低圧蒸気生成手段25と、が備えられている。
ボイラ17は、例えば、自然循環式水管ボイラが用いられている。ボイラ17には、略箱形形状をした火炉24と、火炉24の上部に設けられた燃焼装置26と、蒸発管群27と、蒸発管群27の上方に設けられた蒸気ドラム29と、蒸発管群27の下方に設けられた水ドラム31と、主煙道33と、バイパス煙道35とが備えられている。
主煙道33は、燃焼ガスが火炉24の出口部から蒸発管群27の略下半分を通り、Uターンして蒸発管群27の略上半分を通り上方へ向かうように形成されている。
【0020】
バイパス煙道35は、主煙道33における蒸発管群27の略上半分へ向かう位置の上流側で主煙道33から分岐され、上方へ向かうように形成されている。バイパス煙道35を通る燃焼ガスは、蒸発管群27の略上半分を通らないので、そこで吸熱されない分だけ主煙道のものよりも高温を維持している。
主煙道33とバイパス煙道35とは、上方において合流されている。この合流位置には、煙道ダンパ(流路調節手段)37が設けられている。煙道ダンパ37は、一端が主煙道33とバイパス煙道35との下側会合部に揺動可能に取り付けられ、揺動することによって各煙道の流路断面積を調節するように構成されている。
バイパス煙道35の煙道ダンパ37下流側には、熱交換コア39が装着されている。熱交換コア39には、上流側から過熱器41と、節炭器43とが備えられている。」(段落【0019】及び【0020】)

b)「【0022】
高圧蒸気生成手段23には、高圧蒸発器45と、蒸気と水とを分離する高圧気水分離器47と、高圧蒸発器45および高圧気水分離器47を接続して流体を循環させる高圧循環ライン49と、高圧循環ライン49に配設され流体を循環させる高圧循環ポンプ51とが備えられている。
高圧蒸発器45は、主機9の排ガス通路53に設置された高圧コア44の内部に位置され、主機9の排ガスと熱交換を行なえるように構成されている。
本実施形態では、高圧気水分離器47は、独立して設けられているが、高圧気水分離器として蒸気ドラム29を用いてもよい。
排ガス通路53には、高圧蒸発器45の下流側の分岐位置Sで分岐された排ガスバイパス55が設けられている。この分岐位置Sには、排ガスダンパ56が設けられている。排ガスダンパ56は、排ガスの流路を排ガスバイパス55と排ガス通路53とのいずれかに振り分けるものである。
【0023】
低圧蒸気生成手段25には、低圧蒸発器57と、蒸気と水とを分離する低圧気水分離器59と、低圧蒸発器57および低圧気水分離器59を接続して流体を循環させる低圧循環ライン61と、低圧循環ライン61に配設され流体を循環させる低圧循環ポンプ63とが備えられている。
低圧蒸発器57は、主機9の排ガス通路53における分岐位置Sの下流側に設置された低圧コア46の内部に位置され、主機9の排ガスと熱交換を行なえるように構成されている。
なお、高圧蒸発器45および低圧蒸発器57は高圧コア44と低圧コア46とに分離して配置されているが、同じコアに配置するようにしてもよい。」(段落【0022】及び【0023】)

(2)甲1-4技術
上記(1)及び図1の記載を総合すると、甲1-4には以下の技術が記載されている。

「ボイラ17に主煙道とバイパス煙道とが設けられた内燃機関廃熱回収プラントにおいて、主煙道とバイパス煙道との下流側の合流部に煙道ダンパを設けることにより各煙道の流路断面積を調節する技術。」
(以下、「甲1-4」技術という。)

5.甲2-1の記載等
(1)甲2-1の記載
甲2-1には、「湿式排煙脱硫方法と装置」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、排ガスの脱硫装置と脱硫方法に関し、特に副生物の脱水を行うのに好適な湿式排煙脱硫方法と装置に関する。」(段落【0001】)

b)「【0003】火力発電所等から発生した硫黄酸化物を含む排ガス1は脱硫装置の吸収塔2に導かれる。吸収塔2内では多数のスプレノズル4を備えたスプレヘッダ3が設置されており、スプレノズル4から微細な液滴として噴霧される吸収液スラリ(吸収剤としてカルシウム系吸収剤(石灰石、石灰等)を使用する)と排ガス1を接触させることで排ガス中の硫黄酸化物は吸収液スラリ滴の表面で化学的に除去される。排ガス1に同伴される微小な液滴は吸収塔2の上部に設置されたミストエリミネータ5で除去され、浄化ガス6は必要により吸収塔2の後流側に設置される図示していない再加熱設備により昇温されて煙突より排出される。スプレノズル4から噴霧された大部分の液滴は硫黄酸化物(SO2)を吸収したのち、吸収塔2の下部に設けられた吸収塔循環タンク7に落下する。循環タンク7の吸収液スラリは循環ポンプ17でスプレヘッダに送られ、再びスプレノズル4から排ガス1に向けて噴霧される。
【0004】吸収液スラリに吸収されたSO_(2)は、吸収液スラリ中に含まれる石灰石(CaCO_(3))と反応し、さらに吸収塔循環タンク7に供給される空気8によって酸化され石膏(CaSO_(4)・2H_(2)O)となる。この一連の反応は下記式によって表される。
SO_(2)+2H_(2)O+CaCO_(3)+1/2O_(2)→CaSO_(4)・2H_(2)O+CO
【0005】一方、吸収剤である石灰石9は石灰石供給設備10で石灰石スラリとして貯えられ、石灰石スラリポンプ11より吸収塔循環タンク7へ供給される。また、吸収塔2内で生成した石膏を回収するため、吸収塔循環タンク7内の吸収液スラリの一部を抜出しポンプ12にて石膏脱水設備13a及び13bに送液し、吸収液スラリ中に含まれている石膏およびばい塵を石膏14として回収する。石膏14を主成分とする吸収液スラリは10?30%程度(プラント設計条件により、この値は異なる)が脱水設備13へ導かれ、一次脱水装置13a(一般的にはシックナ、ハイドロサイクロン)においてスラリの濃縮及び微小粒径分の分離が行われ、20?60%の範囲に濃縮された後、二次脱水装置13b(一般的には遠心分離機、ベルトフィルタ)において最終的に付着水の量が約10%以下の粉状石膏として回収される。
【0006】石膏およびばい塵の脱水ろ液16は、系内に不純物が濃縮するのを防ぐため一部を排水15として系外に排出し、残りの液の一部は石灰石供給設備10により石灰石スラリ製造用補給水として一次脱水装置13aで使用され、残りの液の他部は吸収塔2の吸収塔循環タンク7へ送液される。ここで、排水ライン15より抜き出された脱硫排水は図示しない排水処理設備へ送られ、鉄分、重金属等が除去された後、放流される。」(段落【0003】ないし【0006】)

c)「【0021】また、本発明の利用方法として、流量変化については二次脱水装置13bがベルトフィルタ(図示せず)を備えたものである場合に、ベルトフィルタのスピードコントロールによる対応が可能であるため、脱水設備13の入口スラリ濃度を一定にすることが特に重要であり、このため前記入口スラリの流量と比重(吸収液スラリタンク7内での吸収液スラリの比重でも良い)の計測結果に基づき、一次脱水バイパスライン18を流れるバイパス量を制御し、二次脱水装置13bの入口スラリの濃度を制御することが可能である。また、この場合には前記バイパス流量の程度によるが、実際には複数本のハイドロサイクロンで構成される一次脱水装置13aに設けられるのハイドロサイクロン運転本数をバイパス量に見合って増減することにより、各ハイドロサイクロンの運転条件を一定に保つことができ、安定した一次脱水効果が得られるので、さらに効果は高まる。」(段落【0021】)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること
d)上記(1)b)から、排ガスの脱硫装置は、火力発電所等に設けられることが分かる。

e)図1及び図2から、硫黄酸化物とばい塵が除去された吸収液スラリを二次脱水装置13bの出口から吸収塔2に導くための手段は、吸収塔循環タンク7を介して、石膏とばい塵が除去された吸収液スラリを二次脱水装置13bの出口から吸収塔2へ導くように構成されており、硫黄酸化物及びばい塵を含む吸収液スラリを吸収塔2から一次脱水装置13aの入口に導くための手段は、吸収塔循環タンク7を介して、硫黄酸化物及びばい塵を含む吸収液スラリを吸収塔2から一次脱水装置13aの入口へ導くように構成されていることが分かる。

f)上記(1)b)から、吸収液スラリに吸収された硫黄酸化物は、吸収液スラリ中に含まれる石灰石と反応し、さらに吸収塔循環タンク7に供給される空気8によって酸化され石膏となることが分かる。

(3)甲2-1発明及び甲2-1技術
上記(1)、(2)及び図面の記載を総合すると、甲2-1には以下の発明及び技術が記載されている。

「火力発電所等のための排ガスの脱硫装置であって、
排ガスから硫黄酸化物及びばい塵を除去するための吸収塔2を有し、吸収塔2は、硫黄酸化物及びばい塵を含む吸収液スラリを生成し、
吸収塔2に接続され、硫黄酸化物がスラリーに含まれる消石灰と反応することにより生成した石膏及びばい塵を含む吸収液スラリに含まれる石膏及びばい塵を除去するためのハイドロサイクロンで構成される一次脱水装置13aと二次脱水装置13bを有し、
一次脱水装置13a及び二次脱水装置13bは、石膏及びばい塵を含む吸収液スラリを吸収塔2から一次脱水装置13aの入口に導くための手段と、
石膏とばい塵が除去された吸収液スラリを二次脱水装置13bの出口から吸収塔2に導くための手段をさらに有しており、
石膏とばい塵が除去された吸収液スラリを二次脱水装置13bの出口から吸収塔2に導くための手段は、吸収塔循環タンク7を介して、石膏とばい塵が除去された吸収液スラリを二次脱水装置13bの出口から吸収塔2へ導くように構成されており、
石膏及びばい塵を含む吸収液スラリを吸収塔2から一次脱水装置13aの入口に導くための手段は、吸収塔循環タンク7を介して、石膏及びばい塵を含む吸収液スラリを吸収塔2から一次脱水装置13aの入口へ導くように構成されている排ガスの脱硫装置。」(以下、「甲2-1A発明」という。)

「火力発電所等のための排ガス脱硫装置における排ガスに含まれる硫黄酸化物及びばい塵を除去するための方法であって、
吸収塔2から吸収塔循環タンク7へ、汚染された吸収液スラリを取り出し、汚染されたスラリは、硫黄酸化物及びばい塵を含むものであり
硫黄酸化物が吸収液スラリに含まれる消石灰と反応することにより生成した石膏及びばい塵を含む吸収液スラリを吸収塔循環タンク7からハイドロサイクロンで構成される一次脱水装置13a及び二次脱水装置13bに供給して、石膏及びばい塵を含む吸収液スラリから石膏及びばい塵を除去し、それにより石膏とばい塵が除去された吸収液スラリを取り出し、
一次脱水装置13a及び二次脱水装置13bから吸収塔循環タンク7に石膏及びばい塵が除去された吸収液スラリを供給し、
吸収塔循環タンク7から吸収塔2に、石膏及びばい塵が除去された吸収液スラリを供給する、
方法。」(以下、「2-1B発明」という。)

「火力発電所等のための排ガスの脱硫装置であって、
排ガスから硫黄酸化物及びばい塵を除去するための吸収塔2を有し、吸収塔2は、硫黄酸化物及びばい塵を含む吸収液スラリを生成し、
吸収塔2に接続され、硫黄酸化物がスラリーに含まれる消石灰と反応することにより生成した石膏及びばい塵を含む吸収液スラリに含まれる石膏及びばい塵を除去するためのハイドロサイクロンで構成される一次脱水装置13aと二次脱水装置13bを有し、
一次脱水装置13a及び二次脱水装置13bは、石膏及びばい塵を含む吸収液スラリを吸収塔2から一次脱水装置13aの入口に導くための手段と、
石膏とばい塵が除去された吸収液スラリを二次脱水装置13bの出口から吸収塔2に導くための手段をさらに有しており、
石膏とばい塵が除去された吸収液スラリを二次脱水装置13bの出口から吸収塔2に導くための手段は、吸収塔循環タンク7を介して、石膏とばい塵が除去された吸収液スラリを二次脱水装置13bの出口から吸収塔2へ導くように構成されており、
石膏及びばい塵を含む吸収液スラリを吸収塔2から一次脱水装置13aの入口に導くための手段は、吸収塔循環タンク7を介して、石膏及びばい塵を含む吸収液スラリを吸収塔2から一次脱水装置13aの入口へ導くように構成する技術。」(以下、「甲2-1技術」という。)

6.甲2-2の記載等
(1)甲2-2の記載
甲2-2には、「遠心分離機の制御方法」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「本発明は遠心力で固形物含有液を液相と固形物相に比重差で分離する遠心分離機に係わるものであり、特に燃料油や潤滑油等から水分や固形物を分離して上記油を清浄化する遠心分離機において最適な制御方法に関するものである。」(第1ページ右下欄第3ないし7行)

b)「第1図は系統図、第2図は回転体半部の部分縦断面図である。1は回転体9を有する縦型の遠心分離機である。回転体9は軸心部で回転すべく支持され内部に多数の截頭円錐形状の分離板10が一定の間隙をもって積層されている。」(第2ページ右下欄第14ないし18行)

c)「回転体9の分離室13外径部空隙に徐々に蓄積してきた固形物Bは、安全性や分離効率及び回転駆動部への負荷等から設定された許容位置まで蓄積されると、スラッジ排出弁12が開弁されスラッジ排出孔11から回転体9外へ排出される。上記固形物Bの蓄積量は、原液供給流路7に設けられた固形物濃度の検出装置2aにより原液中の固形物濃度を自動的に測定し、信号を制御装置4に出力して、当該制御装置4で積算することにより成されるか、又は分離液排出流路8に設けた検出装置2bを併用して、両者の検出値の差を積算することにより求められる。回転体9内の固形物蓄積量を一定に制御するには、上記固形物の蓄積量又は固形物濃度の測定値に基づいて制御装置4により原液流量調整弁3の開度調節による原液供給量の増減か、又はスラッジ排出弁12の開閉間隔時間を制御することにより成される。本発明の制御方法は、従来用いられている一定間隔時間で定期的にスラッジを排出する制御方法と併用することも勿論可能であり、むしろこの場合の方が多い。又、液体と固形物とに分離する二相式の遠心分離機でも軽液、重液と固形物とに分離する三相式遠心分離機でも可能であり、分離板型遠心分離機以外でも適用できる。分離処理される原液は固形物を含有した鉱油以外にも汚泥、発酵液の菌体分離や飲料等であってもよい。」(第3ページ右上欄第1行ないし左下欄第6行)

(2)上記(1)及び図面から分かること
d)第2図から、遠心分離機には、
分離室13の中に伸びる原液供給流路7と、
分離室13から伸びる分離液排出流路8と、
分離室13から伸びるスラッジ排出孔11が設けられていることが分かる。

(3)甲2-2発明及び甲2-2技術
上記(1)、(2)及び図面の記載を総合すると、甲2-2には以下の発明及び技術が記載されている。

「水分や固形物を含む燃料油や潤滑油等から水分や固形物を分離して上記油を清浄化する遠心分離機であって、
一定の間隔をもって積層された多数の分離板10と分離室13を取り囲む回転体9と、
分離室13の中に伸びる原液供給流路7と、
分離室13から伸びる分離液排出流路8と、
分離室13から伸びるスラッジ排出孔11とを有する、
遠心分離機。」(以下、「甲2-2A発明」という。)

「水分や固形物を含む燃料油や潤滑油等を、密封式の原液供給流路7を備えるとともに、一定の間隔をもって積層された多数の分離板10を備えた遠心分離機に供給し、遠心分離機の中で水分や固形物と油を分離することにより、清浄な油を取り出す方法。」(以下、「甲2-2B発明」という。)

「一定の間隔をもって積層された多数の分離板10と分離室13を取り囲む回転体9と、
分離室13の中に伸びる密封式の原液供給流路7と、
分離室13から伸びる分離液排出流路8と、
分離室13から伸びるスラッジ排出孔11とを有する、
遠心分離機により、
水分や固形物を含む燃料油や潤滑油等から水分や固形物を分離して上記油を清浄化する技術。」(以下、「甲2-2技術」という。)

7.甲2-3の記載等
(1)甲2-3の記載
甲2-3には、「遠心分離機で分離された液体の流出流を調整する方法及びその方法を実施する遠心分離機」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「第1図に示す本発明による遠心分離機の部分は、固定リング3によって軸線方向に結合された下方部分1及び上方部分2を有するローターを有する。一例として示す遠心分離機の内側には軸線方向に可動なスライド弁4を有する。このスライド弁4は、上方部分2と共に分離室5を制限し、このスライド弁4は、作動中にロータで分離されて分離室の周囲に堆積した物質のための周囲出口開口部6に向かって環状の空隙を開閉するように配置されている。スライド弁4は、下方部分1と共に閉鎖室7を制限し、この閉鎖室7は、閉鎖液のために入口8及びスロットルを有する出口9を備えている。
分離室5の内側にはディストリビュータ11と上方部分2との間に多数の円錐形の分離ディスクからなるディスクスタック10が配置されている。上方部分2は上端に示す形状のような出口室12を形成し、出口室12には、この場合、中央溝13を通って分離室5から比較的軽い分離液が流れることができる。ローターの作動中に出口室12に存在する液体は、半径方向内側の自由液体面14を有する回転液本体を形成する。
出口室12を通って中央に、静止入口管15が延びており、ディストリビュータ11の内側に入口室16に開放している。入口管15の次に室内の軽い液体のために静止出口管17が配置されている。出口装置18は、入口管15の周りの室内に配置され、出口管17に接続されている。」(第9ページ第25行ないし第10ページ第15行)

(2)甲2-3技術
上記(1)及び図1の記載を総合すると、甲2-3には以下の技術が記載されている。

「分離室5の内側に多数の分離ディスクからなるディスクスタック10と、分離室5を取り囲むロータと、
分離室5の中に伸びる静止入口管15と、
分離室5から伸びる分離液を排出するための静止出口管17と、
分離室5から伸びる分離室5の周囲に堆積した物質を排出するための周囲出口開口部6と、を備えた遠心分離機により、
液体の成分を分離する技術。」(以下、「甲2-3技術」という。)

8.甲2-4の記載等
(1)甲2-4の記載
甲2-4には、「遠心分離機により固液分離方法」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「【0027】
図1において、符番1は、図示しないケーシング内に、外周部にスラッジ排出孔13を有する回転胴11と回転胴11上部を覆蓋する回転体蓋部12から主になる回転体10を回転軸22に固定し、回転体10内に、截頭円錐形状の薄板からなる分離板14が回転体の軸方向に多数積層して形成された分離板群15およびスラッジ排出孔13を開閉する弁シリンダ16を装着している分離板型遠心分離機である。
【0028】
また、前記分離板型遠心分離機1は、回転体10の軸心位置に原液供給管17が挿入されて装着され、供給される原液を回転体10の分離室内に導入する案内筒20が原液供給管17と同心的に設けられ、分離板群15の間隙を上向流通した軽液を排出する軽液排出流路に具備される軽液排出インペラ18と、回転体10の最大径部に蓄積された重液および固形物の内の重液を排出する重液案内板21と回転体蓋12内壁とで形成された重液流路を経て、重液排出流路に具備される重液インペラ19と、軽液及び重液の排出を調整する調節板25が内設されている。」(段落【0027】及び【0028】)

b)「【0034】
前記流動物の循環を継続しながら、原液槽2より原液を原液供給ポンプで原液供給経路aを経て回転体10の軸心位置に挿入されて装着された原液供給管17の原液入口28から供給し、供給された原液は、案内筒20を下降して回転体10の分離室内に導入され、回転軸を介して回転される回転体10の高速回転による遠心力で、比重の軽い油脂(以下軽液という)と比重の重い固形物および水と固形物の混合物(以下重液という)が比重差で分離される。
【0035】
分離された重液や固形物は、回転体10内の最大径部に蓄積され、軽液は分離板群15の間隙を上向流通して軽液排出流路に具備された軽液排出インペラ18により汲み出されて、軽液出口26から回転体10外に排出され、軽液排出流路cを経て清澄液槽3に貯留される。」(段落【0034】及び【0035】)

(2)甲2-4技術
上記(1)及び図1及び図2の記載を総合すると、甲2-4には以下の技術が記載されている。

「分離室の内側に分離板群15と、分離室を取り囲む回転体10と、
分離室内に伸びる原液供給管17と、
分離室から伸びる軽液排出流路と、
分離室から伸びる重液排出流路と、
分離室の外周に設けられたスラッジ排出孔13と、を備えた分離板型遠心分離機により、油脂(軽液)と水と固形物の混合物(重液)とを比重差により分離する技術。」

9.甲2-5の記載等
(1)甲2-5の記載
甲2-5には、「遠心沈降分離機」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「【請求項1】 中心軸(R)を有し、該中心軸のまわりを第1の速度で回転することができるロータ(1)と、
前記ロータ(1)内に配置されており、前記第1の速度とは異なる第2の速度で前記中心軸(R)の周りを回転することができる螺旋状コンベヤ(2)と、
前記ロータ(1)を前記第1の速度で回転させ、前記螺旋状コンベヤ(2)を前記第2の速度で回転させるように構成されている駆動装置とを含み、
固体の粒子がそれよりも小さい密度を有する液体中に浮遊している液体の混合物から固体を分離する遠心分離機において、
前記ロータ(1)は、前記ロータの中心軸がほぼ垂直に延びるように配置されたロータシャフト(5)を介して一端でのみ、回転可能に支持されており、
前記ロータ(1)は、一端が前記ロータ内に延びている少なくとも1つの入口チャネル(22?24)の形態の前記混合物用の入口と、一端が前記ロータの外に延びている少なくとも1つの出口チャネル(12;66?68)の形態の分離された液体用の液体出口と、前記ロータの反対側の他端に位置している分離された固体用のスラッジ出口(13)とを有しており、
前記ロータは、頂点に前記スラッジ出口(13)が位置している円錐状部分(6)を含んでおり、
前記螺旋状コンベヤ(2)は、分離された固体を前記ロータの前記円錐状部分(6)を通して前記スラッジ出口(13)の方へ移送できるように構成されており、
前記螺旋状コンベヤ(2)は、前記ロータシャフト(5)を通って軸方向に延びかつ前記駆動装置に連結されたコンベヤシャフト(8)を有するか、あるいはこのコンベヤシャフト(8)に接続されていることを特徴とする遠心分離機。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

b)「【0028】
分離円板、たとえば円錐状分離円板は、特に、処理すべき混合物が少量で、分離が困難な小さい粒子を含むときに望ましい。この種の混合物を処理する際、乾燥物質の含有量の多い分離されたスラッジを得るのがさらに困難であることが少なくない。1組の分離円板、たとえば円錐状分離円板のみならず、前述の種類の仕切壁を使用することで、このような分離の場合で所望の分離結果を実現する組合せ効果をもたらすことが可能である。」(段落【0028】)

c)「【0032】
図1?図3は、本発明の第1の実施形態を示している。遠心分離機は、垂直回転軸Rの周りをある速度で回転できるロータ1と、ロータ1内に配置され同じ回転軸Rの周りを回転できるが、ロータ1の回転速度とは異なる速度で回転する螺旋状コンベヤ2と、ロータ1および螺旋状コンベヤをそれぞれの速度で回転させるように構成されている駆動装置とを含んでいる。駆動装置は、1つまたは2つ以上のモータ(不図示)と、モータをロータ1および螺旋状コンベヤ2に連結する歯車装置とを備えている。」(段落【0032】)

(2)甲2-5技術
上記(1)及び図面を総合すると、甲2-5には以下の技術が記載されている。

「固体の粒子が浮遊している固体と液体の混合部から固体を分離するための円錐状分離円盤を有する遠心分離機の下部に、固体のスラッジをスラッジ出口に移送するための螺旋状コンベアを設ける技術。」(以下、「甲2-5技術」という。)

10.甲2-6の記載等
(1)甲2-6の記載
甲2-6には、「湿式排煙脱硫装置」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は吸収塔タンク内に生じた酸化性物質を還元し低減できる湿式排煙脱硫装置に関する。」(段落【0001】)

b)「【0003】すなわち、この装置では吸収塔1内の排煙導入部1aに未処理排煙Aを導き、循環ポンプ7によりスプレパイプ8の複数のノズル8aから上方に向って液柱状に噴射したスラリに接触させて、未処理排煙A中の亜硫酸ガスを吸収除去し、排煙導出部1bから処理済排煙Bとして排出させている。スプレパイプ8から噴射され亜硫酸ガスを吸収しつつ流下するスラリはタンク2内において攪拌棒4により攪拌されつつ上記千切れ現象により発生した多数の気泡と接触して酸化され、さらには中和反応を起こして石膏となる。なお、スプレパイプ8のノズル8aから上方に噴上げられた吸収剤スラリは頂部で分散し次いで下降し、下降するスラリと噴上げたスラリとが相互に衝突して微細な粒子状になり、微細な粒子状になったスラリが次々に生じるようになり、粒子状のスラリは塔内に分散して存在するようになり、やがてゆっくりと落下するようになる。こうして、亜硫酸ガスを含む排煙が粒子状のスラリが存在する塔内を流下するため、体積当たりの気液接触面積が大きくなる。また、ノズル8a近傍では排煙がスラリの噴上げ流れに効果的に巻込まれるので、スラリと排煙とは効果的に混合し、排煙中の亜硫酸ガスが効率よくスラリ中に吸収される。また、これらの処理中に起きている主な反応は以下の反応式(1)及至(3)となる。」(段落【0003】)

c)「【0005】こうして、タンク2内には石膏と吸収剤である少量の石灰石が懸濁または溶存し、これらが抜出しポンプ10により吸出され、固液分離機11に供給され、ろ過されて水分の少ない石膏D(通常、水分含有率10%程度)として採出される。固液分離機11からのろ液はろ液タンク12に送られ、ここで補給水Eが加えられる。ろ液タンク12内の液(主に水)はポンプ13により吸出され、一部が図示省略した排水処理装置へ送られる一方、残りがスラリタンク14に送られ、ここで吸収剤(石灰石、CaCo_(3))Fが加えられ、吸収剤スラリとしてスラリポンプ15により吸出されて再びタンク2に送られる。ここで、排水処理装置は吸着樹脂などを使用して、循環水(脱硫装置内において循環使用されている水)に含まれる不純物や有害物を取り除いて排水するか、または補給水Eとして脱硫装置に戻す処理を行う装置である。一方、抜出しポンプ10の吐出スラリの一部をタンク2内に戻す配管の途上にはpHセンサ16が配設されており、このpHセンサ16によってタンク2内のスラリのpHが検出され、pHコントローラ16aにより吸収剤の投入量などが適宜調節されることで、タンク2内のスラリのpHが吸収効率や酸化効率を考慮した最適値に制御されるようになっている。」(段落【0005】)

d)「【0023】なお、表1は1000MWクラスの発電所などにおける底SOx炭の石炭焚きボイラの排煙(亜硫酸ガス濃度は200ppm)を、本実施例の構成の脱硫装置で処理した場合の試算結果である。負荷が低くなるにつれて、自然酸化能力(塔内酸化能力と滝壺酸化能力との合計)が増加し、ボイラ負荷が50%以下では、タンク必要酸化量がマイナス値を示し、酸化過剰となり過酸化物がタンク内に生成することを示している。そしてこの状況でも、循環液下部SO_(3) 濃度は0.22または0.09m mol/リットルを示しており、スラリ受け20で受止められるスラリ中にはSO_(3)が残留していることが分かる。したがって、このスラリをタンク2から抜出されたスラリ中に混合させれば、過酸化物を還元することができる。」(段落【0023】)

(2)上記(1)及び図面の記載から分かること。
e)上記(1)d)から、排煙脱硫装置は、火力発電所等に用いられるものであることが分かる。

f)図3から、固液分離機11からのろ液を固液分離機11の出口から吸収塔1へ導くための手段は、タンク2を介して、固液分離機11からのろ液を固液分離機11の出口から吸収塔1へ導くものであること、及び、石膏を含むスラリーを吸収塔1から固液分離機11の入口に導くための手段は、タンク2を介して、石膏を含むスラリーを吸収塔1から固液分離機11の入口に導くものであることが分かる。

(3)甲2-6発明及び甲2-6技術
上記(1)、(2)及び図面の記載を総合すると、甲2-6には以下の発明及び技術が記載されている。

「火力発電所等のための排煙脱硫装置であって、
排煙から亜硫酸ガスを除去するための吸収塔1を有し、吸収塔1は、亜硫酸ガスを吸収したスラリーを生成し、
吸収塔2に接続され、スラリーと亜硫酸ガスが反応して生成される石膏を除去するための固液分離機11を有し、
固液分離機11は、
石膏を含むスラリーを吸収塔1から固液分離機11の入口に導くための手段と、
固液分離機11からのろ液を固液分離機11の出口から吸収塔1へ導くための手段とをさらに有しており、
排煙脱硫装置は、タンク2をさらに有し、
固液分離機11からのろ液を固液分離機11の出口から吸収塔1へ導くための手段は、タンク2を介して、固液分離機11からのろ液を固液分離機11の出口から吸収塔1へ導くように構成されており、
石膏を含むスラリーを吸収塔1から固液分離機11の入口に導くための手段は、タンク2を介して、石膏を含むスラリーを吸収塔1から固液分離機11の入口に導くように構成されている排煙脱硫装置。」(以下、「甲2-6A発明」という。)

「火力発電所等のための排煙脱硫装置における排煙に含まれる亜硫酸ガスを除去するための方法であって、
吸収塔1からタンク2に、汚染されたスラリを取り出し、汚染されたスラリは亜硫酸ガスを吸収したものであり、
亜硫酸ガスがスラリに含まれるカルシウム化合物と反応して生成される石膏を含むスラリをタンク2から固液分離機11の入口に供給し、
固液分離機11において石膏を含むスラリから石膏を除去し、それによりろ液を取り出し、
固液分離機11からタンク2にろ液を供給し、
タンク2から吸収塔1にろ液を供給する、
方法。」(以下、「甲2-6B発明」という。)

「排煙から亜硫酸ガスを除去するための吸収塔1を設け、吸収塔1は、亜硫酸ガスを吸収したスラリーを生成し、
さらに、吸収塔2に接続され、スラリーと亜硫酸ガスが反応して生成される石膏を除去するための固液分離機11を設け、
固液分離機11は、
石膏を含むスラリーを吸収塔1から固液分離機11の入口に導くための手段と、
固液分離機11からのろ液を固液分離機11の出口から吸収塔1へ導くための手段とをさらに有しており、
タンク2をさらに有し、
固液分離機11からのろ液を固液分離機11の出口から吸収塔1へ導くための手段は、タンク2を介して、固液分離機11からのろ液を固液分離機11の出口から吸収塔1へ導くように構成し、
石膏を含むスラリーを吸収塔1から固液分離機11の入口に導くための手段は、タンク2を介して、石膏を含むスラリーを吸収塔1から固液分離機11の入口に導くように構成することにより火力発電所等の排煙脱硫を行う技術。」(以下、「甲2-6技術」という。)

11.甲2-7の記載等
(1)甲2-7の記載
甲2-7には、「排ガス処理装置」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「【請求項1】 内燃機関から排出される排ガスにばいじんの吸収液を噴霧するスプレー手段と、スプレーされた液を回収し酸化すると共に貯蔵し前記スプレー手段に循環する吸収液循環手段と、この吸収液循環手段の循環する吸収液のpHを測定し所定の値に維持するよう吸収剤を供給する吸収液供給手段と、前記吸収液循環手段より吸収液の一部を取り出し固体と液体に分離しこの液体を前記吸収液循環手段に戻す固体分離手段とを備えていることを特徴とする排ガス処理装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は内燃機関から排出される排ガスのばいじんを処理する排ガス処理装置に関する。」(段落【0001】)

c)「【0004】本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、内燃機関より排出される排ガスのばいじんを除去することを目的とする。またばいじん中のSOx等を除去することを目的とする。また処理した吸収液を循環使用することを目的とする。」(段落【0004】)

d)「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態を示す。排ガス管1はディーゼル機関等の内燃機関からの排ガスを煙突等に導く。排ガス処理管2は排ガス管1の排ガスを分岐してばいじん処理を行う。ダンパー3は排ガス処理管2に流入する排ガスの流量を制御する。排ガス処理管2はU字形をしており、入口側垂直管2a内には吸収液を噴霧するスプレーノズル4が複数段設けられ各スプレーノズル4には止め弁5が設けられている。U字形の下部は循環タンク6に接続し、ばいじんを吸収した吸収液は回収され、排ガスと分離される。分離した排ガスは出口側垂直管2b内に設けられた液滴を分離するミストセパレータ7を通過しEGRに用いられる。
【0011】循環タンク6には循環ポンプ8が設けられ、回収した吸収液をスプレーノズル4に供給する。また循環タンク6内下部には空気吹き込み管9が設けられ、ブロワ10により空気を供給してスプレーされた吸収液に含まれる亜硫酸塩の酸化を促進する。循環ポンプ8の供給水の一部は脱水機11に送られ吸収液中の固形物を液体から分離し、固形物は回収固形物貯蔵タンク12に蓄積し、液体は循環タンク6に戻す。これにより吸収液はスプレーノズル4および脱水機11を循環する。
【0012】吸収液貯蔵タンク13には吸収液が貯蔵され、スプレーノズル4に供給される吸収液のpHをpHセンサ14で検出し、所定のpH値となるように吸収液調整弁15で吸収液を循環タンク6に供給する。吸収剤調合タンク16は吸収剤を貯蔵する吸収剤タンク17と脱水機11で分離した液体を調合して吸収液を生成し、吸収液貯蔵タンク13に供給する。また、脱水機11の分離した液体の一部を外部に排出する廃液ライン18が弁19を介して設けられている。
【0013】吸収剤としては、Na,Ca,Mg,NH_(3 )のいずれかを含む水酸化物又は炭酸塩が用いられる。これらは吸収剤調合タンク16で脱水機11の分離した液体と調合され、例えば10?20重量パーセント(W%)の濃度とする。CaCO_(3) ,Mg(OH)_(3) ,MgCO_(3)の場合、一部固体となりスラリー状となっている。このような溶液を吸収液としスプレー4より噴霧しばいじんを吸収する。吸収液中のばいじんは脱水機11より分離され固形物として取り出される。
【0014】また、ばいじんに含まれる二硫化硫黄(SO_(2) )は、例えばNaOHによりNa_(2) SO_(3) となり、ブロワ10による空気吹き込みで酸化されてNa_(2)SO_(4)となる。また、SO_(2)ガスは、CaCO_(3) によりCaSO_(3)になり、Mg(OH)_(2) またはMgCO_(3) によりMgSO_(3)になり、ブロワ10による空気吹き込みで酸化されてCaSO_(3)はCaSO_(4)に、MgSO_(3)はMgSO_(4)となる。CaSO_(4)は固形となって脱水機11により除去される。」(段落【0010】ないし【0014】)

(2)甲2-7技術
上記(1)及び図面の記載を総合すると、甲2-7には以下の技術が記載されている。

「内燃機関のための排ガス処理装置において、
排ガス中のばいじんを吸収するために、循環タンク6から供給されたばいじんの吸収液を排ガスにスプレーノズル4により噴霧し、ばいじんを含んだ吸収液を脱水機11によりばいじんを含む固形物と液体とに分離した後に、液体は循環タンク6に戻すように吸収液の循環を行う技術。」(以下、「甲2-7技術」という。)

12.甲2-8の記載等
(1)甲2-8の記載
甲2-8には、「循環水のろ過方法」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「【請求項1】 ダクトおよび/または集塵機および/または吸収塔に取り付けたスプレーノズルで、排ガスに、水および/または吸収液を噴霧することにより、排ガス中の有害物質や煤塵を除去する方法において、排ガス中の有害物質や煤塵を含み、循環使用される水および/または吸収液中の浮遊固形物濃度を一定値以下に保つために、前記水および/または液の一部をろ過し、再利用することを特徴とする循環水のろ過方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)

b)「【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に基づく湿式電気集塵機や洗浄集塵機の場合の循環水とろ過装置の概略系統を図3において説明する。本発明では、循環水を一時的に貯留しておくタンク5(以下、「循環水槽」と称する。)を設置し、そこに、集塵機1において捕集された排ガス2中の煤塵等にスプレーノズルで循環水3を噴霧し、洗い流されてきた循環水を一時的に貯めておき、再び循環水3として使用するが、その際、循環水の配管とは別のろ過装置4を循環する配管を設置し、浮遊固形物をここで除去することが有効である。」(段落【0005】)

c)「【0008】
【実施例1】処理ガス量50000m^(3)/h(20℃)中の流入煤塵濃度1.5mg/m^(3)の煤塵を、湿式電気集塵機で捕集し、循環水259L/minで洗い流した場合において、循環水を噴霧しながら、同時に別配管でろ過装置を、ろ過水量50L/minで運転したときの循環水槽中の浮遊固形物濃度は、200mg/Lを最大に、それ以下に保たれており、スプレーノズルの目詰まりは全く起こらなかつた。これを従来技術で実施しようとすると、循環水259L/min全量をろ過するため、50L/minの処理能力のろ過装置にくらべ大規模なろ過装置を設置しなければならない。また、ろ過装置の万一のトラブルやメンテナンスが発生したときに、集塵機や吸収塔の運転停止を余儀なくされる。」(段落【0008】)

(2)甲2-8技術
上記(1)及び図3の記載を総合すると、甲2-8には以下の技術が記載されている。

「排ガス中の有害物質や煤塵を除去するため、
循環水槽5から供給された循環水を排ガスに噴霧し、煤塵を含んだ水を循環水槽5に戻し、循環水槽5の水をろ過装置4に供給して浮遊固形物を除去し、ろ過装置4のろ液を循環水槽5に戻して再利用する技術。」(以下、「甲2-8技術」という。)

13.甲2-9の記載等
(1)甲2-9の記載
甲2-9には、「高性能排煙脱硫方法」に関して、図面とともに概略以下の記載がある。

a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は石炭焚きボイラ排ガスの如き硫黄酸化物を含む排ガスの脱硫方法に関するもので、特に処理排ガス中の硫黄酸化物濃度を従来技術で達成し得なかった低濃度レベルにまで、経済的に脱硫できる高性能排煙脱硫方法に関する。」(段落【0001】)

b)「【0018】
【実施例】本発明方法の1実施態様を図1に基づいて説明する。図1において、石炭焚きボイラ排ガスの如き硫黄酸化物を含む排ガス1は既存の脱硫装置2に導かれる。脱硫装置2では経路3から送られるCaCO_(3) と反応によって生成したCaSO_(4) ・2H_(2 )Oを含むスラリ状吸収液4がポンプ7により経路8を介して脱硫装置2内に噴出される。スラリ状吸収液はグリッドを充填した吸収部9で高濃度の硫黄酸化物を含む排ガスと気液接触し、CaSO_(4 )・2H_(2)Oを生成し脱硫する。また硫黄酸化物を吸収した吸収液4は経路6から供給された空気がアーム回転式スパージャ5で微細な気泡として吹き込まれることにより、亜硫酸イオン(HSO_(3) ^(-) )の酸化が促進され、SO_(2)の吸収率の向上を計ると共にCaCO_(3) による中和反応によりCaSO_(4)・2H_(2)Oが生成される。生成したCaSO_(4) ・2H_(2)Oを含むスラリ状吸収液4の一部は経路10から抜き出され、遠心分離機11で固液分離され副生石膏12が回収される。固液分離後の液は経路13にて脱硫装置2内に戻される。」(段落【0018】)

(2)甲2-9技術
上記(1)及び図面の記載を総合すると、甲2-9には以下の技術が記載されている。

「石炭焚きボイラ等の硫黄酸化物を含む排ガスの脱硫を行うため、
脱硫装置2においてCaCO_(3)とCaCO_(3)・2H_(2)Oを含むスラリ状吸収液4を噴霧し、遠心分離機11で固液分離することにより生成した石膏を吸収液から回収した後の吸収液を再び脱硫装置2に戻す技術。」(以下、「甲2-9技術」という。)

14.甲2-10の記載等
(1)甲2-10の記載
甲2-10には、「気体浄化装置」に関して、図面とともに以下の記載がある。

a)「【0011】図1は、本発明に係る気体浄化装置の実施の一形態を示し、この装置は、有害物質を溶け込ませる液体Sを貯蔵したケース1と、ケース1内に入った有害物質含有被浄化用気体Gと該ケース1内の液体Sとの気液混合体Mを形成する混合機構2と、該気液混合体Mを有害物質が溶け込んだ有害物質含有液体と有害物質が軽減乃至除去された気体G_(1)とに分離する分離機構3と、を備える。ここで、被浄化用気体Gの有害物質とは、二酸化硫黄SO_(2) ,一酸化炭素CO,炭化水素HC,窒素酸化物NO_(X) 等であり、また、被浄化用気体Gとは、自動車の排気ガス,各種燃焼機の排気ガス等である。」(段落【0011】)

b)「【0017】プロペラ24は、シャフト22の回転に伴って回転し、下筒体8の下方開口部26から液体Sを下筒体8内の上方に送り込んで上方開口部27から上筒体9内に確実に噴出させるためのものである。また、気体用配管20から中間筒体10の中空部19、環状空隙部Aを通り上筒体9内に入った被浄化用気体Gと、上筒体9内に噴出された上記液体Sとが上筒体9内で混合して気液混合体Mが形成されるが、シャフト22の回転に伴って回転する上記ブラシ25…が、気液混合体Mを攪拌してより均一かつ確実に混合する。なお、シャフト22は、図示省略の軸受けにて回転自在に枢支されている。また、軸受けは液体Sや気液混合体Mの流れを邪魔しないものとする。」(段落【0017】)

c)「【0019】しかして、上筒体9内で形成された気液混合体Mは、上筒体9の上方開口部から放出されるが、シャフト22先端部に設けられて回転するブラシ25にて放射状に拡散される。そして、拡散された気液混合体Mは、分離機構3の上記壁体28の凹曲面29に衝突(激突)し、再び気体と液体とに分離する。この際、液体には被浄化用気体Gの有害物質が溶け込んでおり、気体G_(1)には有害物質が含まれていない。そして、浄化済の気体G_(1)はケース1の気体排気口7から外部に排出され、有害物質含有液体はケース1下部の液体S中に混入する。」(段落【0019】)

d)「【0021】なお、ケース1内の液体Sは、水分が蒸発して徐々に減少するため、液体Sの補助タンク30を有する水位維持手段31がケース1下部に連通連結され、ケース1内での液体Sの水位を一定に維持している。また、長期使用により液体Sは有害物質の含有量が多くなり、液体Sの浄化効力が低下するので、定期的に液体Sを交換し沈殿物を抜き取るための排出口32が、ケース1の底壁6近傍に設けられている。また、図示省略するが、液体1を循環機構により循環させて、フィルター等にてろ過するのも、好ましい。」(段落【0021】)

(3)甲2-10技術
上記(1)及び図面の記載を総合すると、甲2-10には以下の技術が記載されている。

「自動車の排気ガス,各種燃焼機の排気ガス等の処理装置において、
処理装置は、排気ガス等の有害物質を吸収するために、有害物質を溶け込ませる液体Sを貯蔵したケース1と、ケース1内に入った有害物質含有被浄化用気体Gと該ケース1内の液体Sとの気液混合体Mを形成する混合機構2と、該気液混合体Mを有害物質が溶け込んだ有害物質含有液体と有害物質が軽減乃至除去された気体G_(1)とに分離する分離機構3と、を備えるものであって、有害物質含有液体はケース1内の液体Sに混入するものである技術。」(以下、「甲2-10技術」という。)

15.甲2-11の記載等
(1)甲2-11の記載
甲2-11には、「排煙脱硫方法及び装置」に関して、図面とともに以下の記載がある。

a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脱硫性能が高く、かつ得られる石膏品質の向上及び装置のコンパクト化を図ることができる湿式排煙脱硫方法及び装置、詳しくは、吸収塔下部液溜槽を小さくしても石膏の品質に影響を与えない上に品質を向上させ、かつ脱硫性能も向上し、また近年問題になっている酸化性物質の生成を抑制することができる湿式排煙脱硫方法及び装置に関するものである。」(段落【0001】)

b)「【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することができるものである。図1は本発明の実施の第1形態による排煙脱硫装置を示している。カルシウム系吸収剤スラリー、例えば炭酸カルシウムスラリー(吸収液スラリー)を吸収塔10aの底部の下部液溜槽12から吸収塔内の上部の気液接触部14に吸収液循環ライン16を介して循環させ、吸収塔内の上部から噴霧させて、噴霧した吸収液スラリーと排ガスとを気液接触部14で接触させる。22は排ガス入口、24は排ガス出口、26はミストエリミネータ、28は吸収塔循環ポンプである。
【0018】この操作により、排ガス中の二酸化硫黄などの硫黄酸化物は吸収剤スラリーに吸収されるとともに、吸収塔10a内の下部液溜槽12に吹き込まれる酸化用空気により亜硫酸カルシウムを含む亜硫酸塩の酸化が行われ、石膏(硫酸カルシウム)が生成するとともに炭酸カルシウムによる中和も行われる。
【0019】吸収塔内部の石膏含有スラリーを、下部液溜槽12に吹き込まれる酸化用空気から分離した部分、すなわち酸化用空気が混入しない部分から抜き出すことができるように、下部液溜槽12内に、上部から落下してくるスラリーの一部を集液できる隔離槽32が設けられる。そして、この隔離槽32にはスラリー抜出しポンプ34を備えたスラリー抜出しライン36が接続され、さらにこのスラリー抜出ライン36に分級器38が接続され、この分級器38の微細粒子スラリー出口40と吸収塔の下部液溜槽12とが微細粒子スラリー戻しライン42を介して接続され、分級器38の粗大粒子スラリー出口44と石膏分離機20とが粗大粒子スラリー抜出しライン46を介して接続されている。分級器38としては、液体サイクロン、ふるい式の粗粒子分級器、シックナーなどが用いられる。また、石膏分離機20としては、ベルトフィルタ、遠心分離機、デカンターなどが用いられる。
【0020】上記のように構成された装置において、吸収塔10a内の上部から落下してくる吸収剤スラリーの一部は、隔離槽32に酸化用空気が混入しない状態で集液され、隔離槽32内に集液された炭酸カルシウム(CaCO_(3))の粒度の小さいスラリー(既に中和反応に供したものであり、粒子径は細かい)(吸収剤スラリー)は、スラリー抜出しポンプ34により抜き出されて分級器38に導入される。分級器38で分級された微細粒子(CaSO_(4)、CaCO_(3)、CaSO_(3))を含むスラリーは微細粒子スラリー戻しライン42により吸収塔の下部液溜槽12に戻され、粗大粒子(主としてCaSO_(4))を含むスラリーは石膏分離機20に送られ、水分が分離されて石膏が回収される。」(段落【0017】ないし【0020】)

(2)甲2-11技術
上記(1)及び図面の記載を総合すると、甲2-11には以下の技術が記載されている。

「排煙の脱硫を行うための排煙脱硫装置において、
吸収塔10aにおいてカルシウム系スラリーである吸収液スラリーを吸収塔下部液溜槽12から吸収液循環ライン16を介して吸収塔内の上部から噴霧させて、噴霧した吸収液スラリーと排ガスとを接触させて硫黄酸化物を吸収させ、その結果生成した石膏のうち粒度の大きい成分を分級器38と石膏分離機20により吸収液スラリーから分離して回収し、石膏を吸収液から回収した後の吸収液スラリーを、吸収塔下部液溜槽に戻して循環する技術。」(以下、「甲2-11技術」という。)

[2]異議理由1(特許法第29条第2項)について
1.理由1-1についての判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1-1A発明とを対比する。
甲1-1A発明における「エンジン1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1の「ディーゼル・エンジン」に相当し、以下同様に、「排ガス洗浄を行う装置」は「排ガス浄化装置」に、「ガス洗浄用スクラバー13」は「ガス・スクラバ」に、「ばいじん及び油分を含む排水」は「汚染されたスクラバ流体」に、「排出し」は「作りだし」に、「ばいじん及び油分が除去された排水」は「浄化されたスクラバ流体」に、「容積部6」は「バッファタンク」に、それぞれ相当する。
そして、甲1-1A発明における「ばいじん及び油分を含む排水から、ばいじんの分離を行う遠心分離部22、油を除去する油除去部23-1、23-2を有し、
処理部7は、ばいじん及び油分を含む排水をガス洗浄用スクラバー13から処理部7へ導入するための手段と、
ばいじん及び油分が除去された排水を処理部7からガス洗浄用スクラバー13へ導くための手段を有して」いる「処理部7」と、
本件特許発明1における「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質相としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体とを分離するための遠心分離機を有し、
この遠心分離機は、分離ディスクの積層体を分離スペースの周りを取り囲むロータと、
前記分離スペースの中に伸びる、汚染されたスクラバ流体のための密封式のセパレータ入口と、
前記分離スペースから伸びる、浄化されたスクラバ流体のための第一のセパレータ出口と、
前記分離スペースから伸びる、汚染物質相のための第二のセパレータ出口と、
を有」する「スクラバ流体浄化装置」とは、
「汚染されたスクラバ流体から汚染物質を分離するための遠心分離機を含む」、「排水浄化手段」という限りにおいて一致する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ディーゼル・エンジンのための排ガス浄化装置であって、
排ガスを浄化するためのガス・スクラバを有し、このガス・スクラバは、汚染物質粒子を有する汚染されたスクラバ流体を作り出し、
このガス・スクラバに接続され、前記汚染されたスクラバ流体を浄化するための排水浄化手段を有し、
前記排水浄化手段は、前記汚染されたスクラバ流体から汚染物質を分離するための遠心分離機を含み、
この排水浄化手段は、
汚染されたスクラバ流体を前記ガス・スクラバから排水浄化手段へ導くための手段と、
浄化されたスクラバ流体を排水浄化手段から前記ガス・スクラバへ導くための手段と、を更に有していること、
前記排ガス浄化装置は、バッファ・タンクを更に有し、
前記汚染されたスクラバ流体を前記ガス・スクラバから前記排水浄化手段へ導くための手段は、前記バッファ・タンクを介して、汚染されたスクラバ流体を前記ガス・スクラバから前記排水浄化手段へ導くように構成されている排ガス浄化装置。」

[相違点1]
「汚染されたスクラバ流体から汚染物質を分離するための遠心分離機を含む」、「排水浄化手段」に関して、
本件特許発明1においては、「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質相としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体とを分離するための遠心分離機を有し、
この遠心分離機は、分離ディスクの積層体を分離スペースの周りを取り囲むロータと、
前記分離スペースの中に伸びる、汚染されたスクラバ流体のための密封式のセパレータ入口と、
前記分離スペースから伸びる、浄化されたスクラバ流体のための第一のセパレータ出口と、
前記分離スペースから伸びる、汚染物質相のための第二のセパレータ出口と、を有」する「スクラバ流体浄化装置」であるのに対して、
甲1-1A発明においては、「ばいじん及び油分を含む排水から、ばいじんの分離を行う遠心分離部22、油を除去する油除去部23-1、23-2を有し、
処理部7は、ばいじん及び油分を含む排水をガス洗浄用スクラバー13から処理部7へ導入するための手段と、
ばいじん及び油分が除去された排水を処理部7からガス洗浄用スクラバー13へ導くための手段を有して」いる「処理部7」である点(以下、「相違点1」という。)。

[相違点2]
本件特許発明1においては、「浄化されたスクラバ流体を第一のセパレータ出口からガス・スクラバへ導くための手段は、このバッファ・タンクを介して、浄化されたスクラバ流体を前記第一のセパレータ出口からガス・スクラバへ導くように構成されている」のに対して、
甲1-1A発明においては、「ばいじん及び油分が除去された排水を、処理部7から容積部6を介さずに直接、ガス洗浄用スクラバー13へ導くように構成されて」いる点(以下、「相違点2」という。)。

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
上記甲1-2技術([1]2.(2)参照)は「送入管、送出管、濃縮したトナー粒子分散液を排出するための接合部、沈降板を円錐状に傾斜させた状態で重ねて形成した積層体及び積層体を囲む部材を有するディスク型遠心沈降装置を用いて、トナー粒子と水とからなるトナー粒子分散液中のトナー粒子表面から不純物を確実に除去して濃縮したトナー粒子分散液を得る技術」であって、甲1-2技術の遠心分離機は、本件特許発明1における「分離ディスクの積層体」に相当する沈降板を円錐状に傾斜させた状態で重ねて形成した積層体を備えるものである。
しかしながら、甲1-2技術の遠心分離機は、トナー粒子と水とからなるトナー粒子分散液を濃縮するものであって、本件特許発明1における「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質相としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体とを分離する」ことを示唆するものではない。
よって、甲1-1A発明に甲1-2技術を適用して、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
また、甲1-3技術において、甲1-3技術における「ろ過器40」が、本件特許発明1における「遠心分離機」と同様の機能を有するとしても、「分離ディスクの積層体」を備えたものであり、「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質相としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体とを分離する」ことについての開示や示唆がなされるものではない。
さらに、甲1-4技術においても、本件特許発明1における「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質相としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体とを分離する」ことについての開示や示唆がなされるものではない。
そうすると、上記相違点2について検討するまでもなく本件特許発明1は、甲1-1A発明、甲1-2技術及び甲1-3技術に基いて、または甲1-1A発明及び甲1-2技術ないし甲1-4技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし9について
本件特許の特許請求の範囲における請求項2ないし9は、請求項1の記載を直接的あるいは間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件特許発明2ないし9は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである、
したがって、本件特許発明2ないし9は、本件特許発明1と同様の理由で、甲1-1A発明、甲1-2技術及び甲1-3技術に基いて、または甲1-1A発明及び甲1-2技術ないし甲1-4技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明10について
本件特許発明10と甲1-1B発明とを対比する。
甲1-1B発明における「エンジン1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本件特許発明1の「ディーゼル・エンジン」に相当し、以下同様に、「排ガス洗浄を行うための装置」は「排ガス浄化装置」に、「排水」は「汚染されたスクラバ流体」に、「ガス洗浄用スクラバー13」は「ガス・スクラバ」に、「容積部6」は「バッファ・タンク」に、「導入し」は「取り出し」に、「ばいじん及び油分」は「油と汚染物質粒子」に、それぞれ相当する。
そして、甲1-1B発明における「-排水を容積部6から、ばいじんの分離を行う遠心分離部22及び油を除去する油除去部23-1、23-2を有する処理部7に供給し、
-処理部7において、ばいじん及び油分が除去された排水から、ばいじん及び油分を除去し、それにより浄化された排水を取り出」すことと、
本件特許発明10における「- 汚染されたスクラバ流体をバッファ・タンクから密封式のセパレータ入口を備えたディスク積層体遠心分離機に供給し、
- 前記ディスク積層体遠心分離機の中で、前記汚染されたスクラバ流体から、
前記油と前記汚染物質粒子を有する汚染物質相を分離し、それにより、浄化されたスクラバ流体を取り出」すこととは、
「- 汚染されたスクラバ流体をバッファ・タンクから排水浄化手段に供給し、
- 排水浄化手段において汚染されたスクラバ流体から油と汚染物質粒子を除去し、それにより浄化されたスクラバ流体を取り出」すという限りにおいて一致する。

よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「ディーゼルエンジンのための排ガス浄化装置における汚染されたスクラバ流体を浄化するための方法であって、
- ガス・スクラバからバッファ・タンクへ、汚染されたスクラバ流体を取り出し、ここで、この汚染されたスクラバ流体は、油と汚染物質粒子を有し、
- 汚染されたスクラバ流体をバッファ・タンクから排水浄化手段に供給し、
- 排水浄化手段において汚染されたスクラバ流体から油と汚染物質粒子を除去し、それにより浄化されたスクラバ流体を取り出す、
方法。」

[相違点1]
「- 汚染されたスクラバ流体をバッファ・タンクから排水浄化手段に供給し、
- 排水浄化手段において汚染されたスクラバ流体から油と汚染物質粒子を除去し、それにより浄化されたスクラバ流体を取り出」すことに関して、
本件特許発明10においては、「- 汚染されたスクラバ流体をバッファ・タンクから密封式のセパレータ入口を備えたディスク積層体遠心分離機に供給し、
- 前記ディスク積層体遠心分離機の中で、前記汚染されたスクラバ流体から、
前記油と前記汚染物質粒子を有する汚染物質相を分離し、それにより、浄化されたスクラバ流体を取り出」すのに対して、
甲1-1B発明においては、「-排水を容積部6から、ばいじんの分離を行う遠心分離部22及び油を除去する油除去部23-1、23-2を有する処理部7に供給し、
-処理部7において、ばいじん及び油分が除去された排水から、ばいじん及び油分を除去し、それにより浄化された排水を取り出」す点(以下、「相違点1」という。)。

[相違点2]
本件特許発明10においては、「- 前記遠心分離機から前記バッファ・タンク(6)に、浄化されたスクラバ流体を供給する」とともに、
- 前記バッファ・タンク(6)から前記ガス・スクラバに、浄化されたスクラバ流体を供給する」のに対して、
甲1-1B発明においては、「-処理部7からガス洗浄用スクラバー13に容積部6を介さずに直接、浄化された排水を供給する」点(以下、「相違点2」という。)。

上記相違点について検討する。

[相違点1について]
上記甲1-2技術([1]2.(2)参照)は「送入管、送出管、濃縮したトナー粒子分散液を排出するための接合部、沈降板を円錐状に傾斜させた状態で重ねて形成した積層体及び積層体を囲む部材を有するディスク型遠心沈降装置を用いて、トナー粒子と水とからなるトナー粒子分散液中のトナー粒子表面から不純物を確実に除去して濃縮したトナー粒子分散液を得る技術」であって、甲1-2技術の遠心分離機は、沈降板を円錐状に傾斜させた状態で重ねて形成した積層体を備えたものであるから、ディスク積層体遠心分離機に相当する。
しかしながら、甲1-2技術のディスク積層体遠心分離機は、トナー粒子と水とからなるトナー粒子分散液を濃縮するものであって、「ディスク積層体遠心分離機の中で、汚染されたスクラバ流体から、油と汚染物質粒子を有する汚染物質相を分離する」ことについての開示や示唆をするものではない。
また、甲1-3技術において、ろ過器40が本件特許発明10における「ディスク積層体遠心分離機」と同様の機能を有するとしても、「ディスク積層体遠心分離機の中で、汚染されたスクラバ流体から、油と汚染物質粒子を有する汚染物質相を分離する」ことについての開示や示唆がなされるものではない。
よって、甲1-1B発明に甲1-2技術及び甲1-3技術を適用して、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易になし得たことではない。
そうすると、上記相違点2について検討するまでもなく本件特許発明10は、甲1-1B発明、甲1-2技術及び甲1-3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明11について
本件特許の特許請求の範囲における請求項11は、請求項10の記載を、請求項10の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件特許発明11は、本件特許発明10の発明特定事項を全て含むものである、
したがって、本件特許発明11は、本件特許発明10と同様の理由で、甲1-1B発明、甲1-2技術及び甲1-3技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.理由1-2についての判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と、甲2-1A発明とを対比すると、本件特許発明1においては、「遠心分離機」が「分離ディスクの積層体」を有しており、「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質層としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体を分離する」ためのものであるのに対して、甲2-1A発明においては、排ガスの脱硫装置が、そのような遠心分離機を有するか不明である点(以下、「相違点」という。)で少なくとも相違する。
そして、上記相違点について検討すると、甲2-2技術ないし甲2-4技術によれば、遠心分離機に分離ディスクの積層体を設けることが周知であることが認められるものの、甲2-3技術は、分離する対象となる液体が具体的に何であるかを示すものではなく、甲2-2技術及び甲2-4技術におけるディスクの積層体を設けた遠心分離機は、油と、水と固形物の混合物を分離して油を清浄化することに関するものであって、本件特許発明1における「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質層としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体を分離する」ことの開示や示唆をするものではない。
また、甲2-5技術においても、本件特許発明1における「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質層としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体を分離する」ことの開示や示唆をするものではない。
そうすると、本件特許発明1は、甲2-1A発明及び甲2-2技術ないし甲2-4技術に基いて、または、甲2-1A発明及び甲2-2技術ないし甲2-5技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし9について
本件特許の特許請求の範囲における請求項2ないし9は、請求項1の記載を直接的あるいは間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件特許発明2ないし9は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである、
したがって、本件特許発明2ないし9は、本件特許発明1と同様の理由で、甲2-1A発明、甲2-2技術、甲2-3技術及び甲2-4技術に基いて、または、甲2-1A発明及び甲2-2技術ないし甲2-5技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明10について
本件特許発明10と、甲2-1B発明とを対比すると、本件特許発明10においては、
「ディスク積層体遠心分離機の中で、汚染されたスクラバ流体から、油と汚染物質粒子とを有する汚染物質相を分離」する段階を備えるのに対して、甲2-1B発明においては、そのような段階を備えるか不明である点(以下、「相違点」という。)で少なくとも相違する。
そして、上記相違点について検討すると、甲2-2技術ないし甲2-4技術によれば、遠心分離機に分離ディスクの積層体を設けることが周知であることが認められるものの、甲2-3技術は、分離する対象となる液体が具体的に何であるかを示すものではなく、甲2-2技術及び甲2-4技術におけるディスクの積層体を設けた遠心分離機は、油と、水と固形物の混合物を分離して油を清浄化することに関するものであって、本件特許発明1における「ディスク積層体遠心分離機の中で、汚染されたスクラバ流体から、油と汚染物質粒子とを有する汚染物質相を分離する」ことの開示や示唆をするものではない。
そうすると、本件特許発明10は、甲2-1B発明及び甲2-2技術ないし甲2-4技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明11について
本件特許の特許請求の範囲における請求項11は、請求項10の記載を、請求項10の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件特許発明11は、本件特許発明10の発明特定事項を全て含むものである、
したがって、本件特許発明11は、本件特許発明10と同様の理由で、甲2-1B発明及び甲2-2技術ないし甲2-4技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3.理由1-3についての判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と、甲2-6A発明とを対比すると、本件特許発明1においては、「遠心分離機」が「分離ディスクの積層体」を有しており、「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質層としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体を分離する」ためのものであるのに対して、甲2-6A発明は、排煙脱硫装置において、そのような遠心分離機を有するか不明である点(以下、「相違点」という。)で少なくとも相違する。
そして、上記相違点について検討すると、甲2-2技術ないし甲2-4技術によれば、遠心分離機に分離ディスクの積層体を設けることが周知であることが認められるものの、甲2-3技術は、分離する対象となる液体が具体的に何であるかを示すものではなく、甲2-2技術及び甲2-4技術におけるディスクの積層体を設けた遠心分離機は、油と、水と固形物の混合物を分離して油を清浄化することに関するものであって、本件特許発明1における「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質層としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体を分離する」ことの開示や示唆をするものではない。
また、甲2-1技術及び甲2-5技術においても、本件特許発明1における「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質層としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体を分離する」ことの開示や示唆をするものではない。
そうすると、本件特許発明1は、甲2-6A発明及び甲2-2技術ないし甲2-4技術に基いて、または、甲2-6A発明及び甲2-1技術ないし甲2-5技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし9について
本件特許の特許請求の範囲における請求項2ないし9は、請求項1の記載を直接的あるいは間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件特許発明2ないし9は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである、
したがって、本件特許発明2ないし9は、本件特許発明1と同様の理由で、甲2-6A発明、甲2-2技術、甲2-3技術及び甲2-4技術に基いて、または、甲2-6A発明及び甲2-1技術ないし甲2-5技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明10について
本件特許発明10と、甲2-6B発明とを対比すると、本件特許発明10においては、
「ディスク積層体遠心分離機の中で、汚染されたスクラバ流体から、油と汚染物質粒子とを有する汚染物質相を分離」する段階を備えるのに対して、甲2-6B発明においては、そのような段階を備えるか不明である点(以下、「相違点」という。)で少なくとも相違する。
そして、上記相違点について検討すると、甲2-2技術ないし甲2-4技術によれば、遠心分離機に分離ディスクの積層体を設けることが周知であることが認められるものの、甲2-3技術は、分離する対象となる液体が具体的に何であるかを示すものではなく、甲2-2技術及び甲2-4技術におけるディスクの積層体を設けた遠心分離機は、油と、水と固形物の混合物を分離して油を清浄化することに関するものであり、本件特許発明1における「ディスク積層体遠心分離機の中で、汚染されたスクラバ流体から、油と汚染物質粒子とを有する汚染物質相を分離」することの開示や示唆をするものではない。
そうすると、本件特許発明10は、甲2-6B発明及び甲2-2技術ないし甲2-4技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明11について
本件特許の特許請求の範囲における請求項11は、請求項10の記載を、請求項10の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件特許発明11は、本件特許発明10の発明特定事項を全て含むものである、
したがって、本件特許発明11は、本件特許発明10と同様の理由で、甲2-6B発明及び甲2-2技術ないし甲2-4技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.理由1-4についての判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と、甲2-2A発明とを対比すると、本件特許発明1においては、「遠心分離機」が「分離ディスクの積層体」を有しており、「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質層としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体を分離する」ためのものであるのに対して、甲2-2A発明においては、「遠心分離機」が、「一定の間隔をもって積層された多数の分離板10」を有しており、「水分や固形物を含む燃料油や潤滑油等から水分や固形物を分離して上記油を清浄化する」ものである点(以下、「相違点」という。)で少なくとも相違する。
そして、上記相違点について検討すると、甲2-1技術及び甲2-6技術ないし甲2-11技術における排ガス処理を行う装置のいずれにも、「遠心分離機」が「分離ディスクの積層体」を有しており、本件特許発明1における「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質層としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体を分離する」ものであることに関しての開示や示唆がされていない。
また、甲2-3技術、甲2-4技術及び甲2-5技術においても、本件特許発明1における「汚染されたスクラバ流体から、汚染物質層としての油と粒子と浄化されたスクラバ流体を分離する」ものであることに関しての開示や示唆がされていない。
そうすると、本件特許発明1は、甲2-2A発明、甲2-1技術及び甲2-6技術ないし甲2-11技術に基いて、または、甲2-2A発明、甲2-1技術及び甲2-3技術ないし甲2-11技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし9について
本件特許の特許請求の範囲における請求項2ないし9は、請求項1の記載を直接的あるいは間接的に、かつ、請求項1の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件特許発明2ないし9は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本件特許発明2ないし9は、本件特許発明1と同様の理由で、甲2-2A発明、甲2-1技術及び甲2-6技術ないし甲2-11技術に基いて、または、甲2-2A発明、甲2-1技術及び甲2-3技術ないし甲2-11技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明10について
本件特許発明1と、甲2-2B発明とを対比すると、本件特許発明10においては、「ディスク積層体遠心分離機の中で、汚染されたスクラバ流体から、油と汚染物質粒子とを有する汚染物質相を分離」する段階を備えるのに対して、甲2-2B発明においては、
「水分や固形物を含む燃料油や潤滑油等を、密封式の原液供給流路7を備えるとともに、一定の間隔をもって積層された多数の分離板10を備えた遠心分離機に供給し、遠心分離機の中で水分や固形物と油を分離することにより、清浄な油を取り出す」段階を備える点(以下、「相違点」という。)で少なくとも相違する。
そして、相違点について検討すると、甲2-1技術及び甲2-6技術ないし甲2-11技術における排ガス処理を行う装置はいずれも、「ディスク積層体遠心分離機の中で、汚染されたスクラバ流体から、油と汚染物質粒子とを有する汚染物質相を分離」する段階に関して開示や示唆をするものではない。
そうすると、本件特許発明10は、甲2-2B発明、甲2-1技術及び甲2-6技術ないし甲2-11技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明11について
本件特許の特許請求の範囲における請求項11は、請求項10の記載を、請求項10の記載を他の記載に置き換えることなく引用して記載されたものであるから、本件特許発明11は、本件特許発明10の発明特定事項を全て含むものである、
したがって、本件特許発明11は、本件特許発明10と同様の理由で、甲2-2B発明、甲2-1技術及び甲2-6技術ないし甲2-11技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[3]異議理由2(特許法第36条6項2号)について
上記第3 3.(1)における「村上申立人による主張」について検討すると、
本件特許明細書の段落【0050】の記載「第三のセパレータ出口に接続された圧力モニタを有していても良く、」及び本件特許請求の範囲の請求項5の記載「遠心分離機は、第三のセパレータ出口を更に有していて、この第三のセパレータ出口は、前記分離スペース(12)の径方向外側の部分から伸び、」によれば、第三のセパレータ出口は、分離スペースの径方向外側の部分から伸びるものであって、圧力を測定するためのものであるから、汚染物質相の間欠的な排出のための第二のセパレータ出口とは、分離スペースの径方向外側の部分において異なる位置に設けられていることは、技術常識からみて明らかである。
よって、第二のセパレータ出口と第三のセパレータ出口との配置関係については明確である。
また、本件特許明細書の段落【0050】の記載「スクラバ流体が、第三のセパレータ出口からセパレータ入口へ再循環される。」から、第三のセパレータ出口から流出したスクラバ流体は、セパレータ入口へ再循環されて再び遠心分離機の分離スペースに供給されるものであるが、第三のセパレータ出口は、上記のとおり圧力モニタを設けて圧力を測定するためのものであるから、第三のセパレータ出口から流出するスクラバ流体の流量に関して、第一のセパレータ出口からスクラバ流体を排出することができる程度の量となるように第三のセパレータ出口の孔径等が設計されることは当業者にとって明らかである。

よって、本件出願における特許請求の範囲の請求項5の記載は明確であるから、本件出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

[4]異議理由3(特許法第36条4項1号)について
上記第3 4.(1)における「齋藤申立人による主張」について検討すると、
排ガス・スクラバ流体からの、汚染物質粒子を有する汚染物質相の分離をディスク積層体をセパレータ内に有する遠心分離機で行うにあたって、スクラバ流体が、セパレータ内に設けられたディスク積層体のディスク間における間隙を通過することにより、流れに抵抗がもたらされて、分離されるスクラバ流体のセパレータ内での流速が低下するとともに、ディスク積層体の平行なディスク同士の間隙が整流作用を行うことにより乱流が抑えられることは、その構造からみて明らかであり、その結果、遠心分離機におけるディスク積層体により、「セパレータ内での分離は、凝集された粒子を維持するために十分に穏やか」になると解することができる。
そして、仮にセパレータ内において乱流が発生するとしても、粒子と油とからなる凝集体が分離されない程度に遠心力や乱流が抑制できるようにロータの回転数を低減すれば足りることは当業者にとって明らかである。

よって、本件出願における発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1ないし本件特許発明11を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており、本件出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし11の特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし11の特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-05-23 
出願番号 特願2014-125689(P2014-125689)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F01N)
P 1 651・ 536- Y (F01N)
P 1 651・ 537- Y (F01N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 永田 和彦山田 由希子  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 松下 聡
金澤 俊郎
登録日 2016-07-15 
登録番号 特許第5968954号(P5968954)
権利者 アルファ・ラバル・コーポレイト・エービー
発明の名称 排ガス及びガス・スクラバ流体浄化装置及び方法  
代理人 峰 隆司  
代理人 河野 直樹  
代理人 福原 淑弘  
代理人 岡田 貴志  
代理人 井関 守三  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 佐藤 立志  
代理人 堀内 美保子  
代理人 砂川 克  
代理人 野河 信久  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ