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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1329118
異議申立番号 異議2017-700198  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-27 
確定日 2017-06-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第5997877号発明「積層装置および積層方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5997877号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5997877号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成23年4月7日の出願であって、平成28年9月2日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人平賀博により特許異議の申立てがなされたものである。

2 本件発明
特許第5997877号の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
電極および前記電極と極性の異なる電極を2枚のセパレータによって挟み込んで形成された袋詰電極を含むシート部材を積層するための積層装置であって、
前記シート部材を積層するためのテーブルと、
前記テーブルの上方から下降して前記シート部材を前記テーブル上に積層するハンドと、
前記テーブル上に積層された前記シート部材の積層体を上部から押圧するクランパと、
前記クランパを垂直移動および水平回転させるクランパ駆動部と、
前記シート部材の積層の進行に応じて、前記テーブルを前記クランパに対して相対的に下降させる調整部と、を備え、
前記クランパ駆動部は、前記クランパによって下方に押圧されている前記積層体上に新たなシート部材が積層された場合、前記クランパを回転させながら前記新たなシート部材の上方まで前記積層体の最終的な厚さよりも小さい移動量だけ上昇させてから下降させて前記新たなシート部材を上方から押圧し、
前記調整部は、前記積層体の最上面の高さが一定に維持されるように前記新たなシート部材の厚さの分、前記テーブルを下降させる、
ことを特徴とする積層装置。
【請求項2】
前記クランパの移動量は、略一定であることを特徴とする請求項1に記載の積層装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記テーブルを下降させることを特徴とする請求項1または2に記載の積層装置。
【請求項4】
前記クランパの上面の横断面形状は、円弧形状であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の積層装置。
【請求項5】
電極および前記電極と極性の異なる電極を2枚のセパレータによって挟み込んで形成された袋詰電極を含むシート部材を積層するための積層方法であって、
テーブル上に積層され、クランパにより上部から押圧されている前記シート部材の積層体上に、前記テーブルの上方から下降して前記シート部材を前記テーブル上に積層するハンドによって新たなシート部材を積層し、
前記クランパを回転させながら前記新たなシート部材の上方まで前記積層体の最終的な厚さよりも小さい移動量だけ上昇させてから下降させて前記新たなシート部材を上方から押圧し、
前記積層体の最上面の高さが一定に維持されるように前記新たなシート部材の厚さの分、前記テーブルを前記クランパに対して相対的に下降させることを特徴とする積層方法。
【請求項6】
前記クランパの移動量は、略一定であることを特徴とする請求項5に記載の積層方法。
【請求項7】
前記テーブルは、下降されることを特徴とする請求項5または6に記載の積層方法。
【請求項8】
前記クランパの上面の横断面形状は、円弧形状であることを特徴とする請求項5?7のいずれか1項に記載の積層方法。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人平賀博は、主たる証拠として特開2010-212018号公報(以下、「刊行物1」という。)、及び、従たる証拠として特開平4-101366号公報(以下、「刊行物2」という。)、特公平5-46669号公報(以下、「刊行物3」という。)、特開2010-102871号公報(以下、「刊行物4」という。)、特開2010-18404号公報(以下、「刊行物5」という。)を提出し、請求項1?8に係る発明は、刊行物1に記載された発明と刊行物2?5に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。

4 刊行物の記載
(1)刊行物1の記載
本件特許に係る出願前に日本国内において頒布された刊行物1には、次の事項が記載されている。下線は当審で付した。(以下、同じ。)
ア 発明の詳細な説明の記載
「【0012】
図1はシート部材積層装置の全体構成を説明するための斜視図、図2はこのシート部材積層装置で用いられているクランプ装置の構成を説明するための説明図である。なお、図2はこのクランプ装置の動作説明の一部としても使用する図面である。
【0013】
まず、シート部材積層装置の構成は、シート部材100を載置するためのパレット1と、パレット1方向に、載置されたシート部材100を押さえ付ける加圧部21を持つクランプ装置2を有する。クランプ装置2は、パレット1の周囲に4個設けられている。
【0014】
クランプ装置2は、加圧部21、軸22、および駆動部23からなる。加圧部21は一つの軸22に3つ取り付けられている。各加圧部21は、後述するように、シート部材100の材質ごとにそれぞれ割り当てられている(図2において3つの加圧部は、それぞれ加圧部211?213とする)。
【0015】
軸22は、図2に示すように、固定された支持部3により上下動自在および回転自在に支持されている。なお、支持部3は床面や台座(不図示)に固定されていて移動しない。
【0016】
駆動部23は、近接離間手段および移動手段となる。駆動部23は、軸22下方に円筒カム31、軸22上方に回転規制カム41を備えている。円筒カム31は円筒の円弧角90度分の大きさとなる周囲部分に上から下へ向けたスロープ状のカム面32が180度間隔で切ってある。この円筒カム31はたとえばオイルシリンダやエアシリンダーなどのアクチュエーター(不図示)によって上下する。また、円筒カム31自体も90度だけ往復回転可能となっている。つまり90度一方向に回転すると、今度はその逆方向に90度戻ることができるようになっている。一方、回転規制カム41は溝42が設けられている。この回転規制カム41は支持部3に固定されていて動かない。
【0017】
軸22はその下方に円筒カム31のカム面32と当接する下部ピン33が取り付けられている。この下部ピン33は滑らかに動くように回転機構付き(たとえばベアリングにより回転自在に取り付けられたピン)であることが好ましい。また、軸22の上方には回転規制カム41の溝42に入る大きさの上部ピン43が取り付けられている。この上部ピン43は回転するものであってもよいし回転しないものであってもよい。ただし、回転しないものの場合には、溝42内および回転規制カム41の上面で滑らかに滑るように加工されていることが好ましい。また、軸22には下部ピン33と支持部3の間にバネ押さえ板51が固定されている。そしてこのバネ押さえ板51と支持部3の間にバネ52が備えられていて、軸22全体が常に下方向に行くように力がかかっている。加圧部21はこのバネ52の力によってシート部材100をパレット1方向に押さえ付ける力を与えられている。
【0018】
駆動部23の動作を説明する。図2乃至5は、駆動部23の動作とそれによる加圧部21の動きを説明するための説明図である。各図において(a)は加圧部21の平面図、(b)は駆動部23の側面図である。
【0019】
まず、図2に示された状態で円筒カム31は基準面S位置にある。この状態で加圧部21は最下方位置にあり、パレット1上に載置、積層されているシート部材100を押さえ付けている。
【0020】
そして図3に示されたように、円筒カム31を上方に上げる。このとき上部ピン43は溝42内にあるため軸22は回転しない。このため軸22に取り付けられている下部ピン33が円筒カム31により押し上げられる。これにより加圧部21はシート部材100から離間される。
【0021】
円筒カム31が上がることで、図4に示すように、上部ピン43は溝42から脱出する。そうすると円筒カム31が上がるにつれて、下部ピン33は円筒カム31のカム面32に沿って相対的に移動する。このため加圧部21は上下位置が変わらずに、シート部材から離間された状態のまま回転することになる。つまり加圧部21はシート部材100から離れた状態でパレット1のシート部材載置面と平行に移動するのである。
【0022】
その後、図5に示すように、円筒カム31が下がれば、バネ52の力によって、加圧部21は再びシート部材100を押さえ付けるようになる。このとき軸22の回転によってシート部材100を押さえ付けている加圧部は、先の加圧部21(212)とは異なる加圧部21(211)となっている。円筒カム31は基準面Sに戻ったのち(または同時に)、90度回転して下部ピン33の位置関係がカム面32の上端で当接する位置となる(図2の下部ピン33とカム面32の位置関係と同じ)。なお、この90度の回転は、往復回転可能なモータなどで回転させてもよいし、シリンダの動きに連動して円筒カム31を90度回転させるカム機構を設けてもよい。なお、往復回転ではなく、一方向の回転だけでカム面32が90度移動するようにしてもよい。
【0023】
このように円筒カム31と下部ピン33、および規制カム41と上部ピン43の組み合わせたので、円筒カムの上下動だけで、加圧部21の上下動および回転移動動作を行うことができる。
【0024】
なお、駆動部は、このようなカム構造に限定されるものではなく、そのほかに、たとえば、軸を上下させるためのエアシリンダーと、軸を回転させるモータとを組み合わせて加圧部21の上下動および回転移動動作を行うようにしてもよい。
【0025】
次に、シート部材積層装置を用いたシート部材の積層方法を説明する。ここでは積層型電池の製造を例に説明する。
【0026】
ここで、簡単に積層型電池の構造について説明する。図6は、積層型電池の構造を説明するための展開斜視図である。
【0027】
積層型電池は、たとえばリチウムイオン二次電池などである。積層型電池は、負極シート501、セパレータシート502、正極シート503を基本単位とし、負極シート501、セパレータシート502、正極シート503、セパレータシート502、…と複数のシート部材が積層された構造となっている。なお、その他の積層型電池を構成する部材についての説明は省略する。」
「【0033】
動作を説明する。まず、図7(a)は、パレット上に積層された既に積層されているシート部材(既積層シート部材)として負極シート501が一番上にある状態を示している。この状態では第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212が負極シート501を押さえ付けている。一方、第2グループのクランプ装置2bおよび2dは全ての加圧部が退避位置(すなわちパレット面と重ならない位置)にある。
【0034】
この状態で、図7(b)に示すように、第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212の上から、セパレータシート502を次に積層する新シート部材として載せる。このときセパレータシート502が規定の位置となるように位置決めして載せる。
【0035】
続いて、図7(c)に示すように、第2グループのクランプ装置2bおよび2dの軸を回転(移動)させて加圧部211を、セパレータシート502面上に来るようにする。このとき、加圧部211はセパレータシート502面に接触しない離間した位置で回転する。なお、第2グループのクランプ装置2bおよび2dの回転方向は図示時計回りである。そして、第2グループのクランプ装置2bおよび2dにおける加圧部211をパレット方向へ近接させることでセパレータシート502を押さえ付ける。
【0036】
続いて、図8(a)に示すように、第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212を上に上げて負極シート501面から上に離間させる。このとき加圧部212を上に上げる上昇量は、セパレータシート502がめくれ上がらない程度である。そして、加圧部212を回転(移動)させて負極シート501とセパレータシート502の間から引き抜く。この回転により、加圧部211がセパレータシート502面上に重なる位置に来ることになる。なお、第1グループのクランプ装置2aおよび2cの回転方向は図示反時計回りである。そして、加圧部211をパレット方向へ近接させることでセパレータシート502を押さえ付ける。
【0037】
続いて、図8(b)に示すように、第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部211、および第2グループのクランプ装置2bおよび2dにおける加圧部211の上から、セパレータシート502面上に正極シート503を載せる。
【0038】
続いて、図8(c)に示すように、第2グループのクランプ装置2bおよび2dの加圧部211を、正極シート503がめくれない程度上に上げて回転させ、加圧部211を退避させるとともに、加圧部214を正極シート503と重なる位置に持ってくる。そして、加圧部214をパレットの方向へ近接させることで、正極シート503を押さえ付ける。
【0039】
以降、同様の動作を繰り返す。図8(c)の後、正極シート503上にセパレータシート502を載せたときには、第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部213、および第2グループのクランプ装置2bおよび2dにおける加圧部213がこのセパレータシートを押さえることになる。そして、さらに負極シート501、セパレータシート503…と順次、所望の積層枚数となるまで繰り返し動作を行ってゆくことになる。」

イ 図面の記載
「【図1】


【図2】


【図3】


【図4】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】




ウ 上記イの図2(b)から、上部ピン43が係合する溝42は、上方にまっすぐ形成されていることが看取できる。

エ 上記アの【0014】には、「加圧部21は一つの軸22に3つ取り付けられている」と記載され、上記アの【0020】には、「円筒カム31を上方に上げる。このとき上部ピン43は溝42内にあるため軸22は回転しない」と記載されており、これら記載に加えて、上記ウの、上部ピン43が係合する溝42は、上方にまっすぐ形成されていることも考慮すると、刊行物1に記載された「シート部材積層装置」は、加圧部21が取り付けられた軸22の上昇動作が、まず、軸22が回転せずに上方にまっすぐ上昇するといえる。

オ そして、上記アの【0021】には、「上部ピン43は溝42から脱出する。そうすると円筒カム31が上がるにつれて、下部ピン33は円筒カム31のカム面32に沿って相対的に移動する。このため加圧部21は上下位置が変わらずに、シート部材から離間された状態のまま回転することになる」と記載されており、この記載によると、刊行物1に記載された「シート部材積層装置」は、加圧部21が取り付けられた軸22の上昇動作が、上記エで検討した、軸22が回転せずに上方にまっすぐ上昇した後、軸22は上下位置が変わらず回転するといえる。

カ 上記ア及びイの記載、並びに、上記オより、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「負極シート501、セパレータシート502、正極シート503を含む複数のシート部材100が積層された積層型電池を積層するシート部材積層装置であって、
シート部材100を載置するためのパレット1と、
パレット1方向に、載置されたシート部材100を押さえ付ける加圧部211?213を持つクランプ装置2と、
加圧部211?213の上下動および回転移動動作を行う駆動部23と、を備え、
第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212が負極シート501を押さえ付けており、第2グループのクランプ装置2bおよび2dは全ての加圧部211?213が退避位置、すなわちパレット面と重ならない位置にある状態で、第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212の上から、セパレータシート502を次に積層する新シート部材として載せてから、続いて、第2グループのクランプ装置2bおよび2dの軸を回転させて、加圧部211をセパレータシート502面上に来るようにし、第2グループのクランプ装置2bおよび2dにおける加圧部211をパレット1方向へ近接させることでセパレータシート502を押さえ付け、続いて、第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212を、セパレータシート502がめくれ上がらない程度上に上げて、負極シート501面から上に離間させ、そして、加圧部212を回転させて負極シート501とセパレータシート502の間から引き抜き、この回転により、加圧部211がセパレータシート502面上に重なる位置に来ることになり、そして、加圧部211をパレット1方向へ近接させることでセパレータシート502を押さえ付け、
駆動部23による加圧部211?213の上下動および回転移動動作は、まず回転せずに上昇した後、上下位置が変わらずに、回転する、
シート部材積層装置。」

キ また、上記ア及びイの記載、並びに、上記オより、刊行物1には、次の発明(以下、「引用方法発明」という。)が記載されていると認められる。
「負極シート501、セパレータシート502、正極シート503を含む複数のシート部材100が積層された積層型電池を積層するシート部材積層方法であって、
第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212が負極シート501を押さえ付けており、第2グループのクランプ装置2bおよび2dは全ての加圧部211?213が退避位置、すなわちパレット面と重ならない位置にある状態で、第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212の上から、セパレータシート502を次に積層する新シート部材として載せてから、続いて、第2グループのクランプ装置2bおよび2dの軸を回転させて、加圧部211をセパレータシート502面上に来るようにし、第2グループのクランプ装置2bおよび2dにおける加圧部211をパレット1方向へ近接させることでセパレータシート502を押さえ付け、続いて、第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212を、セパレータシート502がめくれ上がらない程度上に上げて、負極シート501面から上に離間させ、そして、加圧部212を回転させて負極シート501とセパレータシート502の間から引き抜き、この回転により、加圧部211がセパレータシート502面上に重なる位置に来ることになり、そして、加圧部211をパレット1方向へ近接させることでセパレータシート502を押さえ付け、
駆動部23による加圧部211?213の上下動および回転移動動作は、まず回転せずに上昇した後、上下位置が変わらずに、回転する、
シート部材積層方法。」

(2)刊行物2の記載
本件特許に係る出願前に日本国内において頒布された刊行物2には、次の事項が記載されている。
ア 発明の詳細な説明の記載
「発明が解決しようとする課題
従来の技術で述べた装置では、陽極板と陰極板を積み重ねた極板群が不揃いとなるため、人手による整列作業が必要となり、極板群を電槽へ挿入する次工程との連結が自動化できないという問題点を有していた。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、陽極板と陰極板を自動的に整列して積み重ねる極板群製造装置を提供することにある。
課題を解決するための手段
上記目的を達成するために、本発明の蓄電池極板群の製造装置は、
第1のコンベア7と、第2のコンベア7’と、第3のコンベア12と、揺動装置10とを有し、前記第1及び第2のコンベア7,7’は、皿状の治具6,6’が一定間隔で配置され、タクト駆動するものであり、
前記第3のコンベア12は、箱形のホルダー11多数個有し、タクト駆動するものであり、
前記揺動装置10は、一対の極板吸着装置9,9’が同時に揺動するものであり、
前記治具6,6’は、セパレータで包装された陽極板2または陰極板3を一枚ずつ収容するものであり、
前記極板吸着装置9,9’は、前記治具6,6’の陽極板2と陰極板3とを交互に吸着し、前記ホルダー11上へ移動するものであり、
前記ホルダー11は、上面が開口し、前記極板吸着装置9,9’により吸着されてきた陽極2と陰極板3とを交互に積み重ねた極板群4を収容することを特徴とするものである。
作用
ホルダー内で陽極板と陰極板を交互に積み重ねて極板群を形成するため、極板群が整列したものとなる。
実施例
実施例について図面を参照して説明する。
第1図(a)、(b)は、それぞれセパレータ1で包装された陽極板2と陰極板3で、第1図(c)は、それらを交互に積み重ねた極板群4である。第2図は、チェーン5に一定ピッチで取り付けられた複数個の皿状の治具6を一定タクトで駆動させる第1のコンベア7と、同様にチェーン5’に一定のピッチで取り付けられた複数個の皿状の治具6’を一定タクトで駆動させる第2のコンベア7’と、90°の揺動軸8に固定された一対の極板吸着装置9,9’を揺動させる揺動装置10と、極板群4を収納する複数個の箱形のホルダー11を一定タクトで駆動させる第3のコンベア12とを示す平面図である。」(第2頁左上欄第2行?左下欄第12行)

イ 図面の記載




(3)刊行物3の記載
本件特許に係る出願前に日本国内において頒布された刊行物3には、次の事項が記載されている。なお、「・・・・」は、記載の省略を表す。
ア 特許請求の範囲の記載
「・・・・前記押え板20は、前記テーブル13上の極板2または3を上面から押さえるものであることを特徴とする、
蓄電池用極板の積み重ね装置。」(第2項)

イ 発明の詳細な説明の記載
「次に前記プリーツ部9の機能について第6-1図?第6-4図に基づき更に詳細に説明する。
(第6-1図から第6-2図の工程)
折り板6と補助折り板7を用いてセパレータ8に折りぐせをつけた後、折り板6が水平に倒れて陰極板2の上にセパレータ8が積み重ねられる。その後スライドユニツト1の上に載置されている陽極板3がピツクアンドプレース15を用いて前記セパレータ8の上に積み重ねられる。なお、ピツクアンドプレース15は先端に空気吸引部を備えており、陽極板3を吸着して運ぶことができる。
(第6-2図から第6-3図の工程)
ピツクアンドプレース15で陽極板3を押えながら折り板6を引き抜いて後退させた後、押え板20を下降させて陽極板3を押えると共に補助折り板7が水平になる。また、テーブル13が積み重ねられたセパレータ8と陽極板3の厚さ分だけ下降することにより積み重ね高さを一定に保つている。
(第6-3図から第6-4図の工程)
ピツクアンドプレース15が所定位置に移動すると共に押え板20で陽極板3を押えながら折り板6が前進して垂直に立ち上がる。
(第6-4図から第6-1図の工程)
押え板20が上昇すると共に補助折り板7が下がり、セパレータ8に折りぐせをつける。
以上の工程を繰り返すことにより所定枚数の陰、陽極板2,3とセパレータ8とを積み重ねて極板群18を完成する。なお、極板枚数は任意に設定可能である。」(第2頁右欄第36行?第5頁右欄第1行)

ウ 図面の記載




(4)刊行物4の記載
本件特許に係る出願前に日本国内において頒布された刊行物4には、次の事項が記載されている。
ア 発明の詳細な説明の記載
「【技術分野】
【0001】
本発明は、つづら折り状に折り返された連続セパレータの間にシート状電極が介装された積層体を製造する積層装置の改良に関する。」
「【0043】
本実施の形態に係る積層ステージ10は、その表面部分に、不図示のエアー源からの吸引によりセパレータSの先端部の吸着固定を可能とする複数の細孔が形成されていると共に、セパレータSを折り返す際の折り曲げ位置が常に所定の位置(高さ)となるように、不図示のモータによりシート状電極P,NやセパレータSの積層状態(積層枚数)に応じて昇降(上下移動)可能なように構成されている。」
「【0061】
図3に模式的に示すように、本実施の形態に係る電極保持搬送手段50は、積層ステージ10に向かって水平方向に突出した幅広の支持アーム55の先端部に設けられており、不図示のエアー源により駆動されるエアーシリンダSdを介して、支持アーム55と直交するように取り付けられた略長方形の支持プレート56と、この支持プレート56に取り付けられ、積層ステージ10上のシート状電極P(N)と対向するように配設された吸着プレート57とを備えている。そして、吸着プレート57には、複数の電極吸着部58a,58b,58c・・・が配設されていると共に、支持プレート56の左右方向(セパレータSが往復移動する方向)両端部には、折り曲げガイド部材20と対向するように(折り曲げガイド部材20と同方向に平行に延在するように)、略直方体形状の樹脂製(例えば、テフロン(登録商標)の押さえ部材59が上下方向に伸縮自在となるようにエアーシリンダSdを介して配設されている。」
「【0076】
次に、このように構成した本実施の形態に係る積層装置の動作について、図9?図15を参照して説明する。
【0077】
ST0:まず、初期状態としては、複数のローラに懸架されたセパレータSの先端部を積層ステージ10上に手作業にて誘導し、当該先端部を積層ステージ10の下方からエアーにて吸着して固定する。なおこの際、積層ステージ10は、セパレータSの折り返しを可能とする所定の高さよりも下降していると共に、折り曲げガイド部材20(本例では、一対のコ字状ガイド部材20A,20B)は、積層ステージ10から後退している。そして、図9に示すように、一方の電極保持搬送手段(例えば、負電極保持搬送手段50N)にシート状負電極Nを1枚吸着させた状態で、当該シート状負電極Nの積層が可能となる積層ステージ10上方の所定の位置(図中、水平方向の所定位置であり、以下、積層ポジションともいう)に当該負電極保持搬送手段50Nが位置するようにスライド往復ユニット500をスライドさせる。この際、下部ローラ対60Dと、各電極保持搬送手段50P,50Nとの間隔は、積層ステージ10と各電極収容部30,40との離隔距離dの半分(d/2)に設定されているので、セパレータSが挿通された下部ローラ対60Dは積層ステージ10の右側に移動すると共に、他方の電極保持搬送手段(例えば、正電極保持搬送手段50P)は、対応するシート状正電極Pの吸着を可能とする正電極収容部30上方の所定の位置(図中、水平方向の所定位置であり、以下、吸着ポジションともいう)に必然的に移動することとなる。 また、スライド往復ユニット500の水平移動(本例では、図中、左から右)に伴って、連続セパレータSのバッファ部65内の屈曲個所Sdは下方に移動する。
【0078】
なお、シート状電極P(N)を吸着する際には、前述した電極吸着部58P(N)を採用したことにより、シート状電極P(N)に吸着痕等の塑性変形を生じさせることなく、かつ、1枚ずつの安定した吸着搬送が可能となる。
【0079】
ST1:続いて、図10に示すように、シート状負電極Nを保持した負電極保持搬送手段50N(負電極吸着部58N)を積層ステージ10上に伸長させて、シート状負電極Nを介してセパレータSを積層ステージ10上に押し付けると共に、吸着ポジションにあった正電極保持搬送手段50P(正電極吸着部58P)を伸縮させて、正電極収容部30内のシート状正電極Pを1枚吸着保持する。同時に、折り曲げガイド部材20を、セパレータSの折り曲げを可能とする積層ステージ10上方の所定の位置(図中、前後方向の所定位置であり、以下、折り曲げポジションともいう)へ前進させると共に、積層ステージ10を上昇させ、セパレータS及びシート状負電極Nを積層ステージ10と、折り曲げガイド部材20とで挟み込むと共に、スライド動作の際のガイド部材20との干渉を回避するために負電極保持搬送手段50N(負電極吸着部58N)を短縮させる。なお積層ステージ10を上昇させる際には、負電極保持搬送手段50Nは、その先端に弾性支持された負電極吸着部58Nが弾性的に縮んで、セパレータS及びシート状負電極Nを積層ステージ10との間で挟み込んだ状態で積層ステージ10の上昇動作に追従するようになっている。
【0080】
ST2:次に、図11に示すように、下部ローラ対60Dが積層ステージ10の反対側(本例では、積層ステージ10の左側)まで移動するようにスライド往復ユニット500を水平距離dだけスライドさせる。これにより、セパレータSが折り曲げガイド部材20により所定の折り曲げポジションにて折り曲げられると共に、負電極保持搬送手段50N(負電極吸着部58N)が吸着ポジションに移動し、正電極保持搬送手段50P(正電極吸着部58P)が積層ポジションに移動することとなる。すなわち、正電極保持搬送手段50Pの吸着ポジションから積層ポジションへの移動動作、負電極保持搬送手段50Nの積層ポジションから吸着ポジションへの移動動作、及びセパレータSの所定の折り曲げポジションでの一定の張力での折り曲げ動作の同時実施が可能となり、生産性の大幅な向上を実現することができる。
【0081】
ST3:次に、図12に示すように、正電極保持搬送手段50P(正電極吸着部58P)を積層ステージ10上へ伸長させ、シート状正電極Pを折り返されたセパレータS上に積層すると共に、折り曲げガイド部材20を積層ステージ10から後退させた後、正電極保持搬送手段50Pの両端の押え部材59を積層ステージ10上に伸長させて、セパレータSの折り曲げ部分を押さえつける。このように、所定の折り曲げポジションにて折り曲げられたセパレータSを、再度押え部材59により押さえ付けることにより、かかるセパレータSの戻り(スプリングバック)を防止して、均質な積層体の形成に寄与することができる。また、折り曲げガイド部材20が折り曲げポジションに移動する際に、セパレータSと干渉することを未然に防止することができる。
【0082】
なおこの際、吸着ポジションにあった負電極保持搬送手段50N(負電極吸着部58N)を伸縮させて、負電極収容部40内のシート状負電極Nを1枚吸着保持しておく。また、折り曲げガイド部材20を後退させる際には、各シート状電極P,N及びセパレータSは、ガイド部材20と干渉しないようにガイド辺21R,21Lの間に配置された正電極吸着部58Pと、積層ステージ10とで挟み込まれているので、これらのシート状電極P,N及びセパレータSの位置ずれが生じることはない。
【0083】
ST4:続いて、図13に示すように、各シート状電極P,N及びセパレータSを、正電極保持搬送手段50P(正電極吸着部58P)と積層ステージ10とで挟み込んだ状態で正電極保持搬送手段50P(正電極吸着部58P)及び積層ステージ10を若干下降させると共に、折り曲げガイド部材20を折り曲げポジションまで前進させ、各シート状電極P,N及びセパレータSと折り曲げガイド部材20との干渉を確実に回避する。その後、積層ステージ10を再び上昇させることにより、折り曲げられたセパレータSを介して積層されたシート状負電極N及びシート状正電極Pを、積層ステージ10と折り曲げガイド部材20とで挟み込むと共に、スライド動作の際のガイド部材20との干渉を回避するために正電極保持搬送手段50P(正電極吸着部58P)を短縮させる。
【0084】
ST5:次に、図14に示すように、下部ローラ対60Dが積層ステージ10の反対側(本例では、積層ステージ10の右側)まで移動するようにスライド往復ユニット500を水平距離dだけスライドさせる。これにより、セパレータSが折り曲げガイド部材20により所定の折り曲げポジションにて折り曲げられると共に、正電極保持搬送手段50Pが吸着ポジションに移動し、負電極保持搬送手段50Nが積層ポジションに移動することとなる。
【0085】
ST6:以上のステップST1?ST5を繰り返すことにより、図15に示すような、一定の折り曲げポジションでジグザグ状に折り返された連続セパレータSの間に、所望の枚数(段数)のシート状電極P,Nが介装された積層体70が積層ステージ10上に形成される。
【0086】
ST7:そして、最終段のシート状電極の積層及びセパレータSの折り曲げが完了した後、下部ローラ対60Dの近傍にてセパレータSを切断した後、端末処理を行って積層体70を完成させる。
【0087】
その後、この積層体70を所定の電解液と共に、所望の外装体(例えば、缶状の外装体や、可撓性のあるシート状外装体等)内に封止することにより、リチウムイオン二次電池が完成される。
【0088】
以上のように、本発明に係る積層装置によれば、内部吸引板581と周辺吸着部583とを備える電極吸着部58により、シート状電極P(N)を吸着搬送する際に、かかるシート状電極P(N)に吸着痕等の塑性変形を生じさせることなく、かつ、1枚ずつの安定した吸着搬送が可能となり、積層体70を形成する際の積層品質の向上に寄与することができる。さらに、上記電極吸着部58を所定の配置で複数設けることにより、シート状電極P(N)の重ね取りをより効果的に防止することができる。
【0089】
また、従来のセパレータの切断工程を省略して生産性の向上を図ると共に、セパレータ往復移動手段を構成する下部ローラ対60D(スライド往復ユニット500)の移動によりセパレータSを折り曲げる際には、所定の折り曲げポジションに配置された折り曲げガイド部材20によりシート状電極P(N)の端部(端辺)に無理な力が加わることを防止することができる。併せて、常に積層ステージ10上のセパレータS及びシート状電極P(N)は、積層ステージ10と、折り曲げガイド部材20、電極吸着部58P(58N)、押え部材59の少なくともいずれかとで挟み込まれているため、セパレータSを折り曲げる際のシート状電極P(N)の位置ずれを確実に防止することができる。」

イ 図面の記載
「【図9】


「【図10】


「【図11】


「【図12】


「【図13】


「【図14】


「【図15】



(5)刊行物5の記載
本件特許に係る出願前に日本国内において頒布された刊行物5には、次の事項が記載されている。
ア 発明の詳細な説明の記載
「【技術分野】
【0001】
本発明は例えば紙幣を入金する機能を備えた各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備される紙幣処理装置の改良に関し、特に紙幣返却時に利用者が実際に投入した紙幣を確実に把握して必要枚数だけを現物返却することができるようにした紙幣収納庫、紙幣処理装置、及び紙幣取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投入された紙幣を受け入れる入金機能や、釣り銭や払出し金として紙幣を払い出す出金機能を備えた紙幣処理装置は各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備されており、この紙幣処理装置には投入された紙幣を保管するための紙幣収納庫が装備されている。
図3は従来の紙幣収納庫の概略構成、及び動作を示す図であり、この紙幣収納庫100は、正逆転可能な搬送部材(ローラや搬送ベルト)を備えた図示しない紙幣導入・返却搬送路(紙面の奥方に位置する)から導入されてきた紙幣Pを積載する昇降自在な積載台101と、積載台101の上方において昇降自在に支持され且つ導入されてきた紙幣の幅方向両端縁下面を保持するガイド片対(フォーク)102と、ガイド片対102により幅方向両端縁を保持された紙幣Pの中間部を相対的に押し下げてガイド片対を越えて積載台101上に移載する高さ固定の紙幣ガイド103と、紙幣ガイド103により回転自在に支持されて回転駆動される繰出しローラ104と、これらを駆動する駆動源と、該駆動源を制御する制御手段と、を備えている。ガイド片対102は、一枚ずつ投入された紙幣のみならず、複数枚一括して投入された紙幣も支持する。
図3(a)は紙幣導入時(入金時)の状態を示しており、図示しない紙幣導入・返却搬送路から長手方向一端部を先頭にして導入されてきた紙幣Pは紙幣受け入れ位置にあるガイド片対102の上面に載置される。この時、ガイド片対102は積載台101上に積載された紙幣P1上に接触して積載台(バネ101aにより上方に付勢されている)を最下降位置まで押し下げた状態で待機しており、紙幣ガイド103との間に紙幣の導入を妨げることがない程度の空間が形成されている。ここで利用者との取引がすべて終了すると、ガイド片対102は、(a)の最下降位置から(c)の最上昇位置まで停止することなく移動する。このときガイド片対102は(a)→(b)→(c)に示すように連続的に移動するので相対的に紙幣ガイド103がガイド片対102の中央空間内を通過することとなり、ガイド片対102上に載置された全ての紙幣Pを積載台101上(既推積紙幣P1の上面)に一括して移載することができる。」

イ 図面の記載
「【図3】



5 対比・判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「負極シート501」、「正極シート503」、「シート部材積層装置」、「パレット1」、「加圧部21」、「駆動部23」は、本件特許発明1の「電極」、「前記電極と極性の異なる電極」、「シート部材を積層するための積層装置」、「テーブル」、「クランパ」、「クランパ駆動部」にそれぞれ相当する。

イ 引用発明の「負極シート501、セパレータシート502、正極シート503を含む複数のシート部材100が積層された積層型電池を積層する」事項と、本件特許発明1の「電極および前記電極と極性の異なる電極を2枚のセパレータによって挟み込んで形成された袋詰電極を含むシート部材を積層する」事項とは、「電極および前記電極と極性の異なる電極を含むシート部材を積層する」事項で共通する。

ウ 引用発明の「シート部材100を載置するためのパレット1」は、本件特許発明1の「シート部材を積層するためのテーブル」に相当する。

エ 引用発明は、「パレット1」上に「新シート部材」を「載せる」手段を有することは明らかであるから、本件特許発明1の「テーブルの上方から下降して前記シート部材を前記テーブル上に積層するハンド」に相当する手段を有することは明らかである。

オ 引用発明の「パレット1方向に、載置されたシート部材100を押さえ付ける加圧部211?213」は、本件特許発明1の「テーブル上に積層された前記シート部材の積層体を上部から押圧するクランパ」に相当する。

カ 引用発明の「加圧部211?213の上下動および回転移動動作を行う駆動部23」は、本件特許発明1の「クランパを垂直移動および水平回転させるクランパ駆動部」に相当する。

キ 引用発明の「第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212が負極シート501を押さえ付けており、第2グループのクランプ装置2bおよび2dは全ての加圧部211?213が退避位置、すなわちパレット面と重ならない位置にある状態で、第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212の上から、セパレータシート502を次に積層する新シート部材として載せてから、続いて、第2グループのクランプ装置2bおよび2dの軸を回転させて、加圧部211をセパレータシート502面上に来るようにし、第2グループのクランプ装置2bおよび2dにおける加圧部211をパレット1方向へ近接させることでセパレータシート502を押さえ付け、続いて、第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212を、セパレータシート502がめくれ上がらない程度上に上げて、負極シート501面から上に離間させ、そして、加圧部212を回転させて負極シート501とセパレータシート502の間から引き抜き、この回転により、加圧部211がセパレータシート502面上に重なる位置に来ることになり、そして、加圧部211をパレット1方向へ近接させることでセパレータシート502を押さえ付け、駆動部23による加圧部211?213の上下動および回転移動動作は、まず回転せずに上昇した後、上下位置が変わらずに、回転する」事項と、本件特許発明1の「クランパ駆動部は、前記クランパによって下方に押圧されている前記積層体上に新たなシート部材が積層された場合、前記クランパを回転させながら前記新たなシート部材の上方まで前記積層体の最終的な厚さよりも小さい移動量だけ上昇させてから下降させて前記新たなシート部材を上方から押圧」する事項とは、「クランパ駆動部は、前記クランパによって下方に押圧されている前記積層体上に新たなシート部材が積層された場合、前記クランパを前記新たなシート部材の上方まで上昇及び回転させてから下降させて前記新たなシート部材を上方から押圧」する事項で共通する。

上記ア?キによれば、本件特許発明1と引用発明とは、
「電極および前記電極と極性の異なる電極を含むシート部材を積層するための積層装置であって、
前記シート部材を積層するためのテーブルと、
前記テーブルの上方から下降して前記シート部材を前記テーブル上に積層するハンドと、
前記テーブル上に積層された前記シート部材の積層体を上部から押圧するクランパと、
前記クランパを垂直移動および水平回転させるクランパ駆動部と、を備え、
前記クランパ駆動部は、前記クランパによって下方に押圧されている前記積層体上に新たなシート部材が積層された場合、前記クランパを前記新たなシート部材の上方まで上昇及び回転させてから下降させて前記新たなシート部材を上方から押圧する、
積層装置。」で一致し、以下ア?エの点で相違する。

(相違点)
ア 「電極および前記電極と極性の異なる電極を含むシート部材」が、本件特許発明1は、「電極および前記電極と極性の異なる電極を2枚のセパレータによって挟み込んで形成された袋詰電極を含むシート部材」であるのに対し、引用発明は、「負極シート501、セパレータシート502、正極シート503を含む複数のシート部材100」である点。
イ 本件特許発明1は、「シート部材の積層の進行に応じて、前記テーブルを前記クランパに対して相対的に下降させる調整部」「を備え、」「前記調整部は、前記積層体の最上面の高さが一定に維持されるように前記新たなシート部材の厚さの分、前記テーブルを下降させる」のに対し、引用発明は、そのような調整部を備えていない点。
ウ 「クランパ駆動部は、前記クランパによって下方に押圧されている前記積層体上に新たなシート部材が積層された場合」の前記クランパの上昇が、本件特許発明1では、「前記クランパを回転させながら前記新たなシート部材の上方まで」「上昇させ」るのに対し、引用発明は、「第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212を、」「上に上げて、負極シート501面から上に離間させ、そして、加圧部212を回転させて負極シート501とセパレータシート502の間から引き抜き、」「駆動部23による加圧部211?213の上下動および回転移動動作は、まず回転せずに上昇した後、上下位置が変わらずに、回転する」ものである点。
エ 「クランパによって下方に押圧されている前記積層体上に新たなシート部材が積層された場合」の前記クランパの上昇量が、本件特許発明1は、「前記積層体の最終的な厚さよりも小さい移動量」であるのに対し、引用発明は、「セパレータシート502がめくれ上がらない程度」である点。

まず、上記ウの相違点について検討する。
刊行物2には、蓄電池極板群の製造装置が記載されているものの、該装置は、本件特許発明1の「クランパ」に相当する部材を有さない。
また、刊行物3には、蓄電池用極板の積み重ね装置において、テーブル13上の陰極板2または陽極板3を上面から押さえる押さえ板20(本件特許発明1の「クランパ」に相当。)を設けることが記載されているものの、該押さえ板20は回転するものではない。
さらに、刊行物4には、連続セパレータの間にシート状電極が介装された積層体を製造する積層装置において、電極保持搬送手段50の支持プレート56に押え部材59(本件特許発明1の「クランパ」に相当。)を設けることが記載されているものの、該押え部材59は回転するものではない。
また、刊行物5には、紙幣取扱装置において、紙幣Pを押し下げる紙幣ガイド103が記載されているものの、回転するものではないし、該紙幣ガイド103は紙幣取扱装置に設けられたものであって、技術分野も相違する。
そうすると、シート部材を積層するための積層装置において、クランパによって下方に押圧されている積層体上に新たなシート部材が積層された場合、前記シート部材の前記積層体を上部から押圧するクランパを、回転させながら新たなシート部材の上方まで上昇させることは、刊行物2?5には、記載も示唆もされていないといえる。
したがって、引用発明の「シート部材積層装置」において、加圧部211?213を回転させながら上昇させることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

以上から、上記ウの相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を得ることは、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものということはできない。

次に、上記エの相違点について検討する。
刊行物1には、引用発明の「パレット1」が上下動することが記載されていないし、引用発明の「加圧部211?213」の上下動の移動量が変化することも記載されていないことから、引用発明の「加圧部211?213」は、「積層された」「シート部材100」の枚数の多少に関わらず、上記移動量が変わらないと考えられる。
また、積層体の最後のシート部材を「パレット1」上に載せた後、「加圧部211?213」を「パレット1方向」へ近接させて押さえつけるためには、「加圧部211?213」の上昇位置が「積層された」「シート部材100」の最終的な厚さを超える位置となる必要があることは明らかである。
そうすると、引用発明の「加圧部211?213」は、シート部材100の積層開始時から積層終了時まで同一の上昇量であるといえるから、引用発明の「加圧部211?213」の上下動の移動量である「セパレータシート502がめくれ上がらない程度」とは、本件特許発明1とは異なり、積層体の最終的な厚さよりも大きい移動量であるといえる。
したがって、上記エの相違点は、本件特許発明1と引用発明との実質的な相違点である。
そして、仮に、引用発明において、「加圧部211?213」の上下動の移動量を「積層体の最終的な厚さよりも小さい移動量」とすると、「加圧部211?213」は少なくとも最後のシート部材を押さえつけることができなくなるから、そのようにすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。

以上から、上記エの相違点に係る本件特許発明1の発明特定事項を得ることは、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものということはできない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。

(2)本件特許発明2?4について
本件特許発明2?4は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、上記(1)で述べた理由と同様の理由により、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。

(3)本件特許発明5について
上記(1)での対比を踏まえて、本件特許発明5と引用方法発明とを対比すると、本件特許発明5と引用方法発明とは、
「電極および前記電極と極性の異なる電極を含むシート部材を積層するための積層方法であって、
テーブル上に積層され、クランパにより上部から押圧されている前記シート部材の積層体上に、前記テーブルの上方から下降して前記シート部材を前記テーブル上に積層するハンドによって新たなシート部材を積層し、
前記クランパを前記新たなシート部材の上方まで上昇及び回転させてから下降させて前記新たなシート部材を上方から押圧する、
積層方法。」で一致し、以下ア’?エ’の点で相違する。

(相違点)
ア’ 「電極および前記電極と極性の異なる電極を含むシート部材」が、本件特許発明5は、「電極および前記電極と極性の異なる電極を2枚のセパレータによって挟み込んで形成された袋詰電極を含むシート部材」であるのに対し、引用方法発明は、「負極シート501、セパレータシート502、正極シート503を含む複数のシート部材100」である点。
イ’ 本件特許発明5は、「積層体の最上面の高さが一定に維持されるように前記新たなシート部材の厚さの分、前記テーブルを前記クランパに対して相対的に下降させる」のに対し、引用方法発明は、そのような構成を備えていない点。
ウ’ クランパの上昇動作について、本件特許発明5は、「前記クランパを回転させながら前記新たなシート部材の上方まで」「上昇させ」るのに対し、引用方法発明は、「第1グループのクランプ装置2aおよび2cにおける加圧部212を、」「上に上げて、負極シート501面から上に離間させ、そして、加圧部212を回転させて負極シート501とセパレータシート502の間から引き抜き、」「駆動部23による加圧部211?213の上下動および回転移動動作は、まず回転せずに上昇した後、上下位置が変わらずに、回転する」ものである点。
エ’ クランパの上昇量について、本件特許発明5は、「前記積層体の最終的な厚さよりも小さい移動量」であるのに対し、引用方法発明は、「セパレータシート502がめくれ上がらない程度」である点。

まず、上記ウ’の相違点について検討する。
刊行物2には、蓄電池極板群の製造方法が記載されているものの、該方法は、本件特許発明5の「クランパ」に相当する部材を有さない。
また、刊行物3には、蓄電池用極板の積み重ね方法において、テーブル13上の陰極板2または陽極板3を上面から押さえる押さえ板20(本件特許発明5の「クランパ」に相当。)を設けることが記載されているものの、該押さえ板20は回転するものではない。
さらに、刊行物4には、連続セパレータの間にシート状電極が介装された積層体を製造する積層方法において、電極保持搬送手段50の支持プレート56に押え部材59(本件特許発明1の「クランパ」に相当。)を設けることが記載されているものの、該押え部材59は回転するものではない。
また、刊行物5には、紙幣取扱方法において、紙幣Pを押し下げる紙幣ガイド103が記載されているものの、回転するものではないし、該紙幣ガイド103は紙幣取扱装置に設けられたものであって、技術分野も相違する。
そうすると、シート部材を積層するための積層方法において、クランパの上昇動作について、クランパを回転させながら新たなシート部材の上方まで上昇させることは、刊行物2?5には、記載も示唆もされていないといえる。
したがって、引用方法発明の「シート部材積層方法」において、加圧部211?213を回転させながら上昇させることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

以上から、上記ウ’の相違点に係る本件特許発明5の発明特定事項を得ることは、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものということはできない。

次に、上記エ’の相違点について検討する。
刊行物1には、引用方法発明の「パレット1」が上下動することが記載されていないし、引用方法発明の「加圧部211?213」の上下動の移動量が変化することも記載されていないことから、引用方法発明の「加圧部211?213」は、「積層された」「シート部材100」の枚数の多少に関わらず、上記移動量が変わらないと考えられる。
また、積層体の最後のシート部材を「パレット1」上に載せた後、「加圧部211?213」を「パレット1方向」へ近接させて押さえつけるためには、「加圧部211?213」の上昇位置が「積層された」「シート部材100」の最終的な厚さを超える位置となる必要があることは明らかである。
そうすると、引用方法発明の「加圧部211?213」は、シート部材100の積層開始時から積層終了時まで同一の上昇量であるといえるから、引用方法発明の「加圧部211?213」の上下動の移動量である「セパレータシート502がめくれ上がらない程度」とは、本件特許発明5とは異なり、積層体の最終的な厚さよりも大きい移動量であるといえる。
したがって、上記エ’の相違点は、本件特許発明5と引用方法発明との実質的な相違点である。
そして、仮に、引用方法発明において、「加圧部211?213」の上下動の移動量を「積層体の最終的な厚さよりも小さい移動量」とすると、「加圧部211?213」は少なくとも最後のシート部材を押さえつけることができなくなるから、そのようにすることは当業者が容易になし得たこととはいえない。

以上から、上記エ’の相違点に係る本件特許発明5の発明特定事項を得ることは、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものということはできない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明5は、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。

(4)本件特許発明6?8について
本件特許発明6?8は、本件特許発明5を更に減縮したものであるから、上記(3)で述べた理由と同様の理由により、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものとはいえない。

(5)小結
以上のとおり、本件特許発明1?4は、引用発明及び刊行物2?5に記載された事項から、本件特許発明5?8は、引用方法発明及び刊行物2?5に記載された事項から、当業者が容易になし得たものではない。

6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-06-09 
出願番号 特願2011-85790(P2011-85790)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 青木 千歌子  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 土屋 知久
▲辻▼ 弘輔
登録日 2016-09-02 
登録番号 特許第5997877号(P5997877)
権利者 日産自動車株式会社 株式会社京都製作所
発明の名称 積層装置および積層方法  
代理人 八田国際特許業務法人  
代理人 八田国際特許業務法人  

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