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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01R
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01R
管理番号 1329126
異議申立番号 異議2017-700356  
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-11 
確定日 2017-06-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第6006793号発明「電気テスト用コンタクトおよびそれを用いた電気テスト用ソケット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6006793号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6006793号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成25年6月25日に国際出願され、平成28年9月16日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人高橋陽子により特許異議の申立てがされたものである。


2 本件発明
特許第6006793号の請求項1?8の特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものである。


3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として以下の甲第1号証?甲第7号証(以下「甲1」?「甲7」という。)を提出して、請求項1?5,8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するか、若しくは同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号により取り消すべきものである旨主張している。また、請求項6,7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号により取り消すべきものである旨主張している。

(1)甲第1号証:国際公開第2007/034921号
(2)甲第2号証:岡村康弘著、「設計現場で役立つめっきの基礎とノウハウ」、初版、日刊工業新聞社、2009年2月20日、p.102?129
(3)甲第3号証:日本工業規格 電気めっき及び関連処理用語 H0400:1998
(4)甲第4号証:プレーティング研究会編、「絵とき機能めっき基礎のきそ」、初版、日刊工業新聞社、2007年12月28日、p24?25
(5)甲第5号証:特開2010-223852号公報
(6)甲第6号証:特開2004-79486号公報
(7)甲第7号証:特開平6-215841号公報


4 刊行物の記載
(1)
ア 甲1には、[発明の実施の形態1]として、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「甲1-1発明」という。)
「バーンイン試験用のICソケット(電気部品用ソケット)に配設されるコンタクトピン11であって([0042])、導電性を有する材料から成形された基材12と、下地層13と、最表層14とから構成され([0045])、下地層13としてNiメツキ2?3μmを施し、その上に密着層としてストライクAuメツキをした上で、最表層14として、Pd及びAgを熱拡散させたPd-Agメツキ層([0047]、[0048])を成形した、コンタクトピン。」

イ また、甲1には、「発明の実施の形態1の異なる変形例」として、「下地層13の上に、Pdメツキ層14bとAgメツキ層14cとが順に積層され」([0084] 、図15)た「コンタクトピン11」([0084])が記載されているが、[発明の実施の形態1]とは異なり、「密着層としてストライクAuメツキ」については言及がなされていないから、甲1には、「発明の実施の形態1の異なる変形例」として、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「甲1-2発明」という。)
「バーンイン試験用のICソケット (電気部品用ソケット)に配設されるコンタクトピン11であって([0042])、導電性を有する材料から成形された基材12と、下地層13と、最表層14とから構成され([0045])、下地層13としてNiメツキ2?3μmを施し、最表層14として、下地層13の上に、Pdメツキ層14bとAgメツキ層14cとが順に積層された([0084] 、図15)、コンタクトピン。」

(2)甲2の第122?123ページには、「(2)Auメッキの使い方」として、下地めっきに関し「表7-20 Auストライクめっき浴」の表、及び装飾めっきの膜厚として「フラッシュめっき:0.01?0.1μm程度」との記載がされている。

(3)甲3の第72ページの表、番号4034の欄には、用語「フラッシュめっき,フラッシュ」の定義として、
「極めて短時間に行う薄いめっき方法。
参考 この用語は,最終被覆だけに使用するとよい。同じ性質の中間皮膜には,ストライクを使用する。」
と記載されている。

(4)甲4の第25ページには、「めっき皮膜の硬さ比較」の表が記載されている。

(5)甲5には、「電気検査用プローブ及びその製造方法並びに半導体装置の製造方法」の発明が記載されている。

(6)甲6には、「コネクタ端子およびコネクタ」の発明が記載されており、また段落【0013】には、
「【0013】
<下地層>
本発明の下地層は、導電性基体の種類により上記ルテニウム層が剥離し易くなる場合に必要に応じ形成されるものである。・・・該下地層を複数層として形成する場合は、ルテニウム層の厚さや導電性基体の種類を考慮してそれぞれの層を構成する金属の種類や厚さを決定することが好ましい。たとえば、導電性基体が銅合金系素材の場合には、導電性基体上に厚さ0.05?5μmのNiからなる第1の下地層を形成し、その上に厚さ0.05?1μmのAuまたはAgからなる第2の下地層を形成することが好ましい。・・・該下地層の厚さが0.05μm未満の場合は、ルテニウム層の剥離を防止することができなくなる場合がある一方、7μmを超えるとコストアップにつながり経済的に不利となるばかりか、経時的に厚みが変化し寸法安定性に欠けるとともに導電性基体自体のバネ性が喪失するため好ましくない。」
と記載されている。

(7)甲7には、「ICソケット」の発明が記載されている。


5 判断
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と、甲1-1発明もしくは甲1-2発明とを対比すると、甲1には「第1めっき層に接して金あるいは金基合金から成る第2めっき層が形成され」、「前記第2めっき層は」、「0.05μm以上0.30μm以下の厚さに形成されている」点が記載されておらず、この点は周知な技術事項でも、いわゆる設計事項にあたるものでもない。したがって、請求項1に係る発明は、甲1-1発明もしくは甲1-2発明と同一ではない。
また、甲2?甲7に基づいて、そのような構成を甲1-1発明もしくは甲1-2発明に採用することは、当業者が容易に想到し得たものでもない。したがって、請求項1に係る発明は、甲1?甲7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

特許異議申立人は、特許異議申立書(「3 申立ての理由」「(4)具体的理由」の「ウ.本件特許発明と証拠に記載された発明との対比」「a.本件特許発明1」)において、
「甲第1号証における・・・「ストライクAuめっき」は・・・「第2めっき層」に・・・相当する。」(第11ページ第5行?第9行)
と主張し、その理由として、
「また、甲第2号証123頁の表には「金フラッシュメッキの一般的な膜厚は0.01?0.1μm程度である」旨が示されている。このことから、金めっき層の膜厚を「0.05μm以上0.30μm以下」とすることは、技術的常識である。更には、甲第6号証の段落[0013]には、剥離防止の説明として、「たとえば、導電性基体が銅合金系素材の場合には、導電性基体上に厚さ0.05?5μmのNiからなる第1の下地層を形成し、その上に厚さ0.05?1μmのAuまたはAgからなる第2の下地層を形成することが好ましい。」と記載されていることからも、金めっき層の膜厚を「0.05μm以上0.30μm以下」とすることが技術的常識事項であることが解る。
ここで、甲第1号証の「ストライクAuメッキ」と甲第2号証の「金フラッシュメッキ」とが同じものであること、すなわち、「ストライク」と「フラッシュ」とが技術的にみて同じ意味であることは、JIS規格の用語を説明している甲第3号証72頁の番号4034に、フラッシュの意味について、「この用語は、最終被覆だけに使用するとよい。同じ性質の中間皮膜には、ストライクを使用する。」と示されていることから、明らかである。
従って、甲第1号証に示された「ストライクAuメッキ」が、「ニッケルやパラジウムよりも軟質で、且つその厚さが0.05μm?0.1μm程度のもの」であることは明らかである。」(第13ページ第23行?第14ページ第11行)
と述べている。
しかしながら、まず、上記「4 刊行物の記載」「(6)」で示したように、甲6の段落【0013】に記載された下地層は、「導電性基体の種類により上記ルテニウム層が剥離し易くなる場合に必要に応じ形成される」というものであって、ルテニウム層の利用を想定していない甲1-1発明もしくは甲1-2発明が、特許異議申立人の主張するように、甲6のような下地層を有しているとも、甲6のような下地層を設けることを当業者が容易に想到し得たとも認められない。
次に、甲3の上記「この用語は、最終被覆だけに使用するとよい。同じ性質の中間皮膜には、ストライクを使用する。」なる記載は、「ストライク」と「フラッシュ」の利用形態(表面層か中間層か)が異なる旨の記載であって、両者が技術的にみて同じ意味であることを示すものではない。また、「ストライクAuメッキ」と「フラッシュめっき」とが同じ厚さであることを示す記載であるとも認められない。
したがって、上記主張は採用できない。

(2)請求項2?8に係る発明について
請求項2?8に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、甲1に記載された発明と同一ではなく、また甲1?甲7に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

以上のとおり、本件の請求項1?8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、また同法第29条第2項の規定に違反してなされたものでもないから、同法第113条第2号により取り消すことはできない。


6 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-06-08 
出願番号 特願2014-522640(P2014-522640)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01R)
P 1 651・ 113- Y (G01R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 越川 康弘  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 関根 洋之
中塚 直樹
登録日 2016-09-16 
登録番号 特許第6006793号(P6006793)
権利者 山一電機株式会社
発明の名称 電気テスト用コンタクトおよびそれを用いた電気テスト用ソケット  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  

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