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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02J |
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管理番号 | 1329397 |
審判番号 | 不服2016-10859 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-07-19 |
確定日 | 2017-07-04 |
事件の表示 | 特願2012- 13395「保護機能付き充電制御装置および電池パック」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 8日出願公開、特開2013-153614、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年1月25日の出願であって、平成24年4月3日付けで手続補正がされ、平成27年10月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成27年12月18日付けで手続補正がされ、平成28年5月13日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成28年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年5月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2005-192383号公報 2.特開2000-092735号公報 3.特開2007-097242号公報 4.特開2008-017542号公報 5.特開2004-296165号公報 第3 本願発明 本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成28年7月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-2はそれぞれ以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 二次電池へ充電電流を流すための充電用トランジスタと、 充電用電源が接続されている場合に前記充電用トランジスタが充電電流を流すように制御する充電制御回路と、 前記二次電池の一方の端子と外部端子との間に直列形態に接続された第1制御用スイッチ素子および第2制御用スイッチ素子と、 前記二次電池が過放電状態となった場合に前記第1制御用スイッチ素子をオフさせて放電電流が流れないようにし、前記二次電池が過充電状態となった場合に前記第2制御用スイッチ素子をオフさせて充電電流が流れ込まないようにする保護回路と、 を備えた充電制御装置であって、 前記充電制御回路は、前記二次電池側の電圧が所定値になるまでは前記充電用トランジスタにより一定の充電電流を流すように制御し、前記二次電池側の電圧が所定値に達した後は定電圧で充電電流を流すように制御を切り替える機能を有し、前記二次電池の正極側の端子電圧および負極側の端子電圧と同一の電位がそれぞれ前記充電制御回路に供給され、 前記充電制御回路には基準電圧生成回路が設けられ、前記充電制御回路と前記保護回路との間には前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧を、前記保護回路へ伝達する配線が設けられ、 前記保護回路は、前記配線を介して伝達された基準電圧と前記二次電池の端子電圧とに基づいて過充電状態の検出を行い、 前記充電制御回路は、前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧と前記二次電池の端子電圧とに基づいて定電流充電制御から定電圧充電制御への切替えタイミングの検出を行うように構成されていることを特徴とする保護機能付き充電制御装置。」 「【請求項2】 二次電池へ充電電流を流すための充電用トランジスタと、 充電用電源が接続されている場合に前記充電用トランジスタが充電電流を流すように制御する充電制御回路と、 前記二次電池の一方の端子と外部端子との間に直列形態に接続された第1制御用スイッチ素子および第2制御用スイッチ素子と、 前記二次電池が過放電状態となった場合に前記第1制御用スイッチ素子をオフさせて放電電流が流れないようにし、前記二次電池が過充電状態となった場合に前記第2制御用スイッチ素子をオフさせて充電電流が流れ込まないようにする保護回路と、 を備えた充電制御装置であって、 前記充電制御回路は、前記二次電池側の電圧が所定値になるまでは前記充電用トランジスタにより一定の充電電流を流すように制御し、前記二次電池側の電圧が所定値に達した後は定電圧で充電電流を流すように制御を切り替える機能を有し、前記二次電池の正極側の端子電圧および負極側の端子電圧と同一の電位がそれぞれ前記充電制御回路に供給され、 前記保護回路には基準電圧生成回路が設けられ、前記保護回路と前記充電制御回路との間には前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧を、前記充電制御回路へ伝達する配線が設けられ、 前記保護回路は、前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧と前記二次電池の端子電圧とに基づいて過充電状態の検出を行い、 前記充電制御回路は、前記配線を介して伝達された基準電圧と前記二次電池の端子電圧とに基づいて定電流充電制御から定電圧充電制御への切替えタイミングの検出を行うように構成されていることを特徴とする保護機能付き充電制御装置。」 本願発明3-5は、本願発明1または本願発明2を減縮した発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下同様。) 「【請求項1】 二次電池に充電電流を供給する充電回路と、 前記二次電池の電圧を検出する電圧検出回路と、 前記二次電池への充電電流を検出する電流検出回路と、 前記二次電池への充電回数を記録するメモリと、 前記充電回路を制御して前記二次電池に定電流充電した後に定電圧充電に切り換え、 前記定電圧充電時の電圧を前記メモリに記録された充電回数に応じて低減する制御手段とを備えた充電制御装置。」 「【0001】本発明は、電子機器に用いられる二次電池を充電するための充電制御装置に関する。」 「【0023】図1は大別すると、充電制御装置の本体1と電池パック2とに分かれている。両者は本体1側の端子1a?1f、電池パック2側の対応する端子2a?2fで相互に着脱可能に接続されている。 【0024】充電制御装置の本体1には交流商用電源3から電源装置4を経て本体1に所定の電圧が供給される。電源装置4はトランスで電圧降下させるものでも、またはスイッチング電源を用いたものでもよく、その構成,構造は特に限定されない。」 【0025】本体1において、マイクロコントローラ5は制御手段の機能を有する。その内部に図示しない制御プログラムをもち、後述の各部からのデータを受け取り、かつ各部の動作を制御する。 【0026】充電回路6は、入力電流の流入経路に直列に介在されていて、その入力電流を制御する電界効果型トランジスタ(以下FET)7,FET7がオフしたときの電流経路を生成するダイオード8,端子1aに平滑化した入力電流を与えるコイル9とコンデンサ10,マイクロコントローラ5の充電制御信号5a(CHGCTRL)の制御を受けてFET7を制御する充電IC11とを備える。 【0027】電圧検出回路12はオペアンプ13を備え、端子1bから二次電池の端子電圧を検出してマイクロコントローラ5の端子5b(A/D)に電圧検出信号12aを与える。」 「【0030】FET7の入力側と、コイル9の出力側から、ダイオード19,20を介して負荷21に接続する。すなわち、ダイオード19とダイオード20を互いに逆向きに接続し、ダイオード19,20の共通カソード接続点を負荷21に結合する。これによって電池パック2を充電しながら、負荷21を作動させることができる。交流商用電源3に接続されているときはダイオード19を介して負荷21に電源を与える。交流商用電源3が切断されたときはダイオード20を介して二次電池24,25及び二次電池26から電源を供給する。もちろん電池パック2の充電が完了後、電池パック2を本体1から分離して、負荷21に接続してもよい。 【0031】電池パック2において、端子2aからの入力電流の流入経路にFET22,23を直列に配して二次電池24のプラス(+)極に接続する。FET22は充電時の電流を制御し、FET23は放電時の電流を制御する。 【0032】二次電池24,25及び二次電池26は直列に接続されている。そしてそれぞれの二次電池24,25及び二次電池26の両端27,28,29及び両端30の電圧を検出して、二次電池24,25及び二次電池26のいずれかのセルが規定の電圧より高くなったこと(過充電)を検出してFET22を制御する。FET22は、端子2aから流入する入力電流を遮断する目的を有する。また、二次電池24,25及び二次電池26の両端の電圧が規定の電圧より低くなったこと(過放電)を検出してFET23を制御して通電を遮断するための保護IC31を備えている。 【0033】充電IC11に加えて、保護IC31を設けたのは、FET7の故障や充電IC11の誤動作、または電池パック2が不正規な本体に接続されることで電池が過充電状態になったときにFET22を制御して通電を停止して二次電池を保護するためである。 【0034】また、電池パック2を本体1または負荷21に接続して長期間放置するような場合、本体1または負荷21から供給される微少な放電電流によって、二次電池24,25及び二次電池26が過放電になるのを避けるためにFET23により放電経路を遮断して二次電池を保護する。」 「【0037】次にその動作を説明する。電圧検出回路12は端子1bから二次電池両端の電圧を検出し、アナログ値の電圧検出信号12aを出力し、端子5bから入力されてデジタル値に変換される。温度検出回路14は温度により抵抗値が変化するサーミスタ32と抵抗器15との分圧比によりアナログ値の温度検出信号14aを出力し、端子5dから入力されてデジタル値に変換される。」 「【0039】充電回路6の一部を構成する充電IC11は、電圧検出信号12a,温度検出信号14a及び電流検出信号16aを演算したマイクロコントローラ5の充電制御信号5a(CHGCTRL)に基づいてFET7を制御して二次電池への充電電流を一定に制御する。」 「【0041】マイクロコントローラ5は、充電の初期には充電制御信号5aを設定して充電IC11に入力することにより、充電回路6からの出力電流、すなわち充電電流値を所定の一定値、たとえば図2に示した各曲線の平坦部分にあたるように制御してCC充電を行う。この場合の所定充電電流値は、充電される電池の充電条件や、充電状態等の特性によって、マイクロコントローラ5の制御プログラム内にあらかじめ設定しておく。 【0042】マイクロコントローラ5は充電IC11を介してFET7を制御して、CC充電中に電圧検出信号12aと電流検出信号16aをモニタし、電池電圧がある一定値(たとえば1セル当たり4.2V)に達したとき、その一定電圧値を維持しながら、充電制御信号5aを多段階または連続的に切り換え制御してFET7の出力である充電電流を図2の曲線aに示すように段階的に減少させていく(CV充電)。 【0043】そして充電電流が所定の電流値以下になったとき、満充電状態と判断して、充電制御信号5aにより充電IC11を介してFET7をオフにして充電電流をゼロにして充電を終了する。 【0044】以上が、実施の形態1におけるCC充電からCV充電に移行する時点を判断する1セル当たりの特定の電圧(この場合4.2V)を固定した充電方法である。ところが前述のように、CV充電時の充電電圧が高いほど、充電における充足率が高くなり、1回の充電によって長時間の機器使用が可能になる代わりに、電池寿命が短くなる。他方充電電圧が低いと電池寿命が長くなるが、充足率が低く1回の充電による機器使用可能時間が短くなる。」 【図1】には、充電制御装置本体1の外部にある交流商用電源3に接続された電源装置4とFET7の入力側とが接続され、FET7の出力側と端子1aとの間に平滑化した入力電流を与えるコイル9とが接続され、充電制御装置1の端子1aと電池パック2の端子2aとが接続され、端子2aと二次電池24のプラス極との間に直列形態でFET22,23が接続されることが示されている。 そして、FET22,23は、二次電池24のプラス極と電源装置4との間に直列形態に接続されたものともいえる。 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「二次電池を充電するための充電制御装置であって、 充電制御装置は、 充電制御装置の本体1と電池パック2とが、本体1側の端子1a?1f、電池パック側の対応する端子2a?2fで相互に着脱可能に接続され、 充電制御装置の本体1には交流用電源3から電源装置4を経て本体1に所定の電圧が供給されるものであり、 制御手段の機能を有するマイクロコントローラ5と、 入力電流の流入径路に直列に介在されていて、その入力電流を制御する電界効果型トランジスタ(FET)7と、マイクロコントローラ5の充電制御信号5aの制御を受けてFET7を制御する充電IC11とを備えた充電回路6と、 端子1bから二次電池両端の電圧を検出し、アナログ値の電圧検出信号12aを出力して、マイクロコントローラの端子5bへ入力する電圧検出回路12と を備え、 マイクロコントローラ5は、端子5bから入力されたアナログ値の電圧検出信号12aをデジタル値に変換し、充電の初期には、充電制御信号5aを設定して充電IC11に入力することにより、充電回路6からの出力電流、すなわち充電電流値を所定の一定値に制御してCC充電を行い、充電IC11を介してFET7を制御して、CC充電中に電圧検出信号12aをモニタし、電池電圧がある一定値に達したとき、その一定電圧を維持しながら充電電流を段階的に減少させていく(CV充電)ことで、CC充電からCV充電に移行する時点を判断する1セル当たりの特定の電圧を固定した充電方法を実行するものであり、 充電制御装置に接続される電池パック2は、 端子2aからの入力電流径路に直列に配され、二次電池24のプラス極に接続されたFET22,FET23と、 二次電池の両端の電圧を検出して、規定の電圧より高くなったこと(過充電)を検出してFET22を制御して端子2aから流入する入力電流を遮断し、二次電池両端の電圧が規定の電圧より低くなったこと(過放電)を検出してFET23を制御して通電を遮断するための保護IC31と を備え、 充電制御装置本体1の外部にある交流商用電源3に接続された電源装置4とFET7の入力側とが接続され、FET7の出力側と端子1aとの間に平滑化した入力電流を与えるコイル9とが接続され、充電制御装置1の端子1aと電池パック2の端子2aとが接続され、端子2aと二次電池24のプラス極との間に直列形態でFET22,23が接続されて、FET22,23は、二次電池24のプラス極と電源装置4との間に直列形態に接続されている 充電制御装置。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0002】【従来の技術】図5は従来の充電制御回路の一例のブロック構成図を示す。充電制御回路1は、ACアダプタ2と電池3との間に接続され、ACアダプタ2で生成された電源電圧により電池3を充電する。充電制御回路1は、主に充電制御トランジスタQ1、充電制御IC4、保護IC5、放電制御FETQ2、充電制御FETQ3、トランジスタQ5、抵抗R1?R3から構成される。 【0003】充電制御トランジスタQ1は、エミッタ-コレクタがACアダプタ2と電池3との間に接続され、充電制御IC4から供給される制御信号に応じてACアダプタ2から電池3に供給する充電電流を制御する。充電制御IC4は、ACアダプタ2で生成される電源電圧V_(CC)により駆動され、電池3の充電電圧を検出して、電池3の充電電圧に応じて充電制御トランジスタQ1を制御する。」 「【0013】【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施例のブロック構成図を示す。同図中、図5と同一構成部分には同一符号を付し、その説明は省略する。本実施例の充電制御回路100は、充電制御IC101及び保護IC102の構成が図5とは相違する。 【0014】本実施例の保護IC102は、電池3の充電電圧を検出して、電池3の充電電圧に応じて放電制御FETQ2及び充電制御FETQ3を制御するとともに、充電制御IC101の定電流、定電圧充電を切り換える。図2は本発明の一実施例の保護ICの回路構成図を示す。保護IC102は、過充電電圧検出回路部110及び出力不感応時間設定回路部120から構成される。」 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【背景技術】 【0002】リチウムイオン2次電池の充電器や電池パックには、過充電を防止し充電管理を行うための保護回路が設けられている。リチウムイオン2次電池の充電器1と、リチウムイオン2次電池が内蔵される電池パック2からなる充電システムの一例を図4に示している。同図において、充電器1には、電圧供給回路11のDC電圧の供給を制御する2つのP型のMOSFET121,122、及び、電池パック2の端子間電圧に応じてMOSFET121,122のオンオフを制御する保護回路用IC13が設けられている。・・・ 【0005】比較器132の出力電圧は制御回路131に入力される。制御回路131はこの入力電圧に応じてゲート電圧出力端子1313,1314への出力電圧を制御する。例えば、電池電圧V_(BATT)>比較電圧V_(HC)である場合には、制御回路131はMOSFET121をオフ、MOSFET122をオンとする。これによりリチウムイオン2次電池21への充電電圧の供給が停止する。なお、この場合でもMOSFET121の寄生ダイオード1211を通じてリチウムイオン2次電池21は放電可能である。 【0006】図4において、電池パック2には、リチウムイオン2次電池21の充電電圧の供給を制御する2つのN型のMOSFET221,222、及びリチウムイオン2次電池21の電池電圧に応じてMOSFET221,222のオンオフを制御する保護回路用IC23が設けられている。・・・ 【0008】比較器232の出力電圧は制御回路231に入力され、制御回路231はこの入力電圧に応じてゲート電圧出力端子2313,2314の出力電圧を制御する。例えば、電池電圧V_(BATT)>比較電圧V_(HB)である場合には、制御回路231はMOSFET221をオフ、MOSFET222をオンとする。これにより充電電圧のリチウムイオン2次電池21への供給が停止する。なお、この場合でもMOSFET221の寄生ダイオード2211を通る経路でリチウムイオン2次電池21は放電可能である。」 「【0016】 図1に本発明の一実施形態として説明するリチウムイオン2次電池の充電器1、及びリチウムイオン2次電池21を内蔵する電池パック2を含んで構成される充電システムの構成を示している。 【0017】 充電器1には、充電時に電池パック2のプラス端子5が接続されるプラス接続端子3及び電池パック2のマイナス端子6が接続されるマイナス接続端子4が設けられている。また充電器1には、充電時に電池パック2に設けられている電圧入力端子8に接続される電圧出力端子7が、また電池パック2には、充電時に充電器1に設けられている電圧出力端子7に接続される電圧入力端子8が、夫々設けられている。なお、電圧出力端子7には、後述する基準電圧V_(OC)(第1の基準電圧)が出力され、電圧入力端子8を介して電池パック2に基準電圧V_(OC)が取り込まれる。 【0018】 充電器1は、充電電圧の供給経路に直列に接続されるP型の2つのMOSFET121,122、及びリチウムイオン2次電池21の電池電圧を検出し、検出した電池電圧に応じてMOSFET121,122のオンオフを制御する保護回路用IC13を有している。保護回路用IC13は、基準電圧生成回路134(第1の基準電圧生成回路)、比較電圧生成回路133(第1の比較電圧生成回路)、比較器132(第1の比較器)、制御回路131(第1の制御回路)を含み、プラス側入力端子1311、マイナス側入力端子1312、制御回路131に接続する2つのゲート電圧出力端子1313,1314、及び基準電圧生成回路134によって生成された基準電圧V_(OC)が出力される基準電圧出力端子1315を有している。 【0019】保護回路用IC13に含まれる回路のうち、比較電圧生成回路133(第1の比較電圧生成回路)は、基準電圧生成回路134から供給される基準電圧V_(OC)に基づいて、比較電圧V_(HC)(第1の比較電圧)を生成する。比較器132の非反転入力には、比較電圧生成回路133から出力される比較電圧V_(HC)が、また反転入力には、プラス側入力端子1311から入力されるリチウムイオン2次電池21の電池電圧V_(BATT)が夫々入力される。比較器132は、入力される比較電圧V_(HC)と電池電圧V_(BATT)との大小に応じた比較出力電圧(第1の比較出力電圧)を出力し、この比較出力電圧は制御回路131に入力される。 【0020】制御回路131は、比較器132から入力される比較出力電圧に応じてゲート電圧出力端子1313,1314の出力電圧を制御し、MOSFET121,122をオンオフする。例えば、制御回路131は、電池電圧V_(BATT)>比較電圧V_(HC)となっている場合はMOSFET121をオフとし、MOSFET122をオンとし、この場合は充電電圧のリチウムイオン2次電池21への供給が停止する。 【0021】一方、図1において、電池パック2は、充電電圧の供給経路に直列に接続されるN型の2つのMOSFET221,222、リチウムイオン2次電池21の電池電圧を検出し、検出した電池電圧に応じてMOSFET221,222のオンオフを制御する保護回路用IC23を有している。 【0022】保護回路用IC23は、基準電圧生成回路234(第2の基準電圧生成回路)、比較電圧生成回路233(第2の比較電圧生成回路)、比較器232(第2の比較器)、制御回路231(第2の制御回路)、及びセレクタ回路235を含み、プラス側入力端子2311、マイナス側入力端子2312、制御回路231に接続する2つのゲート電圧出力端子2313,2314、及び基準電圧入力端子8に接続され、充電器1の基準電圧生成回路134によって生成された基準電圧V_(OC)が入力される基準電圧入力端子2315を有している。 【0023】保護回路用IC23に含まれる回路のうちセレクタ回路235は、電池パック2に充電器1が接続され、基準電圧入力端子2315に基準電圧V_(OC)が入力されている場合には、比較電圧生成回路233に基準電圧V_(OC)を出力する。またセレクタ回路235は、電池パック2に充電器1が接続されていない場合には、セレクタ回路235は比較電圧生成回路233に基準電圧生成回路234から供給される基準電圧V_(OB)(第2の基準電圧)を出力する。 【0024】このような動作を行うセレクタ回路235の一例を図2に示している。同図において、トランジスタTR1のゲートには、基準電圧入力端子2315が接続され、充電器1からの基準電圧V_(OC)(第1の基準電圧)が印加される。トランジスタTR1のドレインには、トランジスタTR3のドレインが接続している。なお、トランジスタTR2及びトランジスタTR3は、定電流源Is及び電源VDDが接続されるカレントミラー回路を構成している。トランジスタTR1のソースは接地されている。トランジスタTR1のゲートとソースとの間には、抵抗R1が接続されている。トランスミッションゲートTG1には、基準電生成回路234から出力される基準電圧V_(OB)が入力され、トランスミッションゲートTG2には、基準電圧V_(OC)が入力される。 【0025】トランスミッションゲートTG1の一方の制御端子には、トランジスタTR1のドレインの電圧をインバータINV1によって反転した電圧が印加されている。またトランスミッションゲートTG1の他方の制御端子には、トランジスタTR1のドレインの電圧が印加されている。トランスミッションゲートTG2の一方の制御端子には、トランジスタTR1のドレインの電圧が印加されている。またトランスミッションゲートTG2の他方の制御端子には、トランジスタTR1のドレインの電位をインバータINV1によって反転した電圧が印加されている。トランスミッションゲートTR1及びトランスミッションゲートTR2の出力は、比較電圧生成回路233に入力される。なお、トランジスタTR3及びトランジスタTR1としては、これらのサイズの関係がトランジスタTR3>トランジスタTR1となるものが選択されている。 【0026】今、電池パック2に充電器1が接続されており、基準電圧入力端子2315に基準電圧V_(OC)が印加されているものとする。この場合、トランジスタTR1がオンとなってトランジスタTR1のドレインの電位が接地電位に近づくので、トランスミッションゲートTG1はオフ、トランスミッションゲートTG2はオンとなり、その結果、比較電圧生成回路233には充電器1からの基準電圧V_(OC)が入力される。 【0027】一方、電池パック2に充電器1が接続されていない場合には、トランジスタTR1はオフとなってトランジスタTR1のドレインの電位がVDDに近づくのでトランスミッションゲートTG1はオン、トランスミッションゲートTG2はオフとなり、その結果、比較電圧生成回路233には電池パック2の基準電圧生成回路234によって生成された基準電圧V_(OB)が入力される。 【0028】比較電圧生成回路233は、セレクタ回路235から入力される、基準電圧V_(OC)(第1の基準電圧)又は基準電圧V_(OB)に基づいて、比較電圧V_(HB)を生成する。すなわち、比較電圧生成回路233は、電池パック2に充電器1が接続されている場合には、基準電圧V_(OC)に基づいて、また、電池パック2に充電器1が接続されていない場合には、基準電圧V_(OB)に基づいて、比較電圧V_(HB)を生成する。 【0029】比較器232(第2の比較器)の非反転入力には、比較電圧V_(HB)が、また反転入力には、プラス側入力端子2311に入力されるリチウムイオン2次電池21の電池電圧V_(BATT)が、それぞれ印加される。比較器232は、比較電圧V_(HB)と電池電圧V_(BATT)との大小に応じた電圧を出力する。比較器232から出力される比較出力電圧は、制御回路231に入力される。 【0030】制御回路231は、比較器232から入力される電圧に応じてゲート電圧出力端子2313,2314の出力電圧を制御して、MOSFET221,222をオンオフする。例えば、制御回路231は、電池電圧V_(BATT)>比較電圧V_(HB)となっている場合には、MOSFET221をオフとし、MOSFET222をオンとし、これにより充電電圧のリチウムイオン2次電池21への供給が停止する。 【0031】以上に説明したように、本実施形態の充電システムにおいては、充電時に共通の基準電圧V_(OC)に基づいて、充電器1側の比較電圧V_(HC)及び電池パック2側の比較電圧V_(HB)を生成している。このため、本実施形態の充電システムにおいては、1つの基準電圧V_(OC)のばらつき(±50mV)のみを考慮して比較電圧V_(HB)及び比較電圧V_(HC)を設定することが可能である。」 4.引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には図面とともに次の事項が記載されている。 「【0010】電池装置51は、電池セル52以外にも、電池セル52を保護する電池保護回路53と、電池装置51の温度を検出するためのサーミスタ素子54とを備えている。電池セル52、電池保護回路53及びサーミスタ素子54は、樹脂等で形成されたケース60内に収納されている。また電池装置51には、プラス電源端子72と、マイナス電源端子73と、外部接続端子74とがケース60から部分的に露出して設けられている。 【0011】電池セル52のプラス電極はプラス電源端子72に接続されている。サーミスタ素子54は、電池装置51の温度によってその抵抗値が変化する。サーミスタ素子54の一端は外部接続端子74に接続されており、その他端はマイナス電源端子73に接続されている。 【0012】電池保護回路53は、異常検出回路53aと、充電制限制御判定回路53bと、OR回路53cと、nMOSトランジスタ53d,53eとを備えている。」 「【0014】充電制限制御判定回路53bはnMOSトランジスタ53eを制御することが可能である。充電制限制御判定回路53bは、外部接続端子74に接続されているサーミスタ素子54の一端の電位に基づいて制御信号CS3を生成し、それをOR回路53cに出力する。OR回路53cは制御信号CS2,CS3の論理和を演算して制御信号CS4としてnMOSトランジスタ53eのゲートに出力する。 【0015】機器本体1は、電池セル52を充電する充電回路2と、当該充電回路2を制御する充電制御回路3と、CPU4aなどを含む内部回路4と、電池装置51の温度を測定する際に使用される基準電位Ref11を生成する基準電圧回路5と、抵抗素子6とを備えており、これらの回路及び素子は樹脂等で形成されたケース10内に収納されている。さらに、機器本体1には、充電器側プラス電源端子20と、充電器側マイナス電源端子21と、電池側プラス電源端子22と、電池側マイナス電源端子23と、外部接続端子24とがケース10から部分的に露出するように設けられている。」 「【0025】機器本体1の充電器側プラス電源端子20及び充電器側マイナス電源端子21に、外部電源装置101から電源電位及びグランド電位がそれぞれ入力されると、充電制御回路3は、抵抗素子6の外部接続端子24側の一端の電位Vt、つまり、抵抗素子6とサーミスタ素子54との接続点の電位に基づいて、電池装置51の温度が、充電する際の適正範囲内にあるか否かを判定する。このとき、充電制限制御回路3bからは切替信号SSは出力されておらず、スイッチ回路5aは基準電位Ref11を抵抗素子6を介して外部接続端子24に出力している。したがって、温度判定回路3aには、基準電位Ref11を抵抗素子6とサーミスタ素子54とで分圧した電位が電位Vtとして入力されている。上述のように、サーミスタ素子54は電池装置51の温度に依存してその抵抗値が変化する。したがって、温度判定回路3aに入力される電位Vtも電池装置51の温度に応じて変化することになる。温度判定回路3aは、電位Vtの値がどの範囲内であれば電池装置51の温度が適正範囲内であるかについての情報を予め記憶しており、現在入力されている電位Vtの値から、電池装置51の現在の温度が適正範囲内にあるかどうかを判定する。」 5.引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0011】図3に示されるように、電池パック100’は、正極端子101と負極端子102とを持つ。正極端子101及び負極端子102は外部接続端子とも呼ばれる。正極端子101と負極端子102との間には、負荷400または充電器500’(後述する)が接続される。 【0012】図示の電池パック100’は、少なくとも1個のリチウムイオン電池(単位電池)301を含む二次電池300を有する。二次電池300はバッテリ電圧Vcc(ba)を発生している。この二次電池300には保護回路(充電保護IC)200が並列に接続されている。保護回路(充電保護IC)200の主な機能は、過放電保護機能と過充電保護機能である。保護回路(充電保護IC)200は、過放電保護機能を司る過放電制御回路210と、過充電保護機能を司る過充電制御回路220とを有する。」 「【0020】次に、図4を参照して、充電器500’について説明する。充電器500’は、正極端子501と負極端子502とを持つ。充電器500’の正極端子501及び負極端子502は、それぞれ、電池パック100’の正極端子101及び負極端子102に接続される。 【0021】図示の充電器500’は、アダプタ700を含む。このアダプタ700は、アダプタ電圧Vcc(ad)を発生している。このアダプタ700には充電制御回路(充電制御IC)600が、パワートランジスタTr、ダイオードD、および電流検出抵抗Rを介して、並列に接続されている。この充電制御回路(充電制御IC)600の主な機能は、定電流充電機能、定電圧充電機能、および一次側過電圧検出機能である。充電制御回路(充電制御IC)600は、定電流充電機能を司る定電流制御回路610と、定電圧充電機能を司る定電圧制御回路620と、一次側過電圧検出機能を司る一次側過電圧検出回路630とを有する。」 【図3】には、電池パック100’に含まれる二次電池300の負極の端子が電池パック100’のグランド電位に接続されることが示されている。 【図4】には、充電制御回路600が充電器500’のグランド電位に接続されることが示されている。 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (a)引用発明の「二次電池24,25及び二次電池26」は本願発明1の「二次電池」に相当し、以下同様に、「電界効果型トランジスタ(FET)7」は「FET7の出力側と端子1aとの間に平滑化した入力電流を与えるコイル9とが接続され、充電制御装置1の端子1aと電池パック2の端子2aとが接続され、端子2aと二次電池24のプラス極」とが接続され「入力電流の流入経路に直列に介在されていて、その入力電流を制御する」ものであるので「二次電池へ充電電流を流すための充電用トランジスタ」に、「電源装置4」は「充電用電源」に、「二次電池24のプラス(+)極」は「二次電池の一方の端子」に、「FET23」は「第1制御用スイッチ」に、「FET22」は「第2制御用スイッチ」にそれぞれ相当する。 (b)引用発明の電源装置4は、充電装置本体1の外部にあって、交流商用電源3から充電装置本体1へ所定の電圧を供給するものであり、電源装置4と充電装置本体1との接続点が充電装置本体1と外部との界面(以下「外部界面」という)にあたると認められるから、引用発明の「電源装置4」と「充電装置本体1」との接続点と、本願発明1の「外部端子」とは、「外部界面」であるという点で共通する。 そして、引用発明の「二次電池24のプラス極と電源装置4との間に直列形態に接続されている」「FET22,23」と、本願発明1の「前記二次電池の一方の端子と外部端子との間に直列形態に接続された第1制御用スイッチ素子および第2制御用スイッチ素子」とは、「二次電池の一方の端子と外部界面との間に直列形態に接続された第1制御用スイッチ素子および第2制御用スイッチ素子」である点で共通する。 (c)引用発明の「マイクロコントローラ」は、「マイクロコントローラ5の充電制御信号5aの制御を受けてFET7を制御する充電IC11とを備えた充電回路6」で利用されるものであって、充電IC11を介してではあるが、FET7を制御するといえるものであるので、引用発明の「マイクロコントローラ」と、本願発明の「充電用電源が接続されている場合に前記充電用トランジスタが充電電流を流すように制御する充電制御回路」とは、「充電用トランジスタを制御する充電制御回路」である点で共通する。 また、さらに、引用発明の「電圧検出信号12a」は「二次電池両端の電圧を検出し」て出力され「マイクロコントローラ5」へ入力されるものであるので、引用発明の「マイクロコントローラ5は・・・充電の初期には、・・・充電電流値を所定の一定値に制御してCC充電を行い、・・・CC充電中に電圧検出信号12aをモニタし、電池電圧がある一定値に達したとき、その一定電圧を維持」することと、本願発明の「充電制御回路は、前記二次電池側の電圧が所定値になるまでは前記充電用トランジスタにより一定の充電電流を流すように制御し、前記二次電池側の電圧が所定値に達した後は定電圧で充電電流を流すように制御を切り替える機能を有し、前記二次電池の正極側の端子電圧および負極側の端子電圧と同一の電位がそれぞれ前記充電制御回路に供給され」ることとは、「充電制御回路は、二次電池側の電圧が所定値になるまでは充電用トランジスタにより一定の充電電流を流すように制御し、前記二次電池側の電圧が所定値に達した後は定電圧で充電電流を流すように制御を切り替える機能を有し、前記二次電池の両端の電圧が充電制御回路に供給され」る点で共通する。 さらに、引用発明の「CC充電」は「充電電流値を所定の一定値に制御」するものであり、「CV充電」は「一定電圧を維持しながら」充電電流を制御するものであるので、引用発明の「マイクロコントローラ5は、・・・CC充電中に電圧検出信号12aをモニタし、電池電圧がある一定値に達したとき、その一定電圧を維持しながら充電電流を段階的に減少させていく(CV充電)ことで、CC充電からCV充電に移行する時点を判断する1セル当たりの特定の電圧を固定した充電方法を実行する」ことと、本願発明の「充電制御回路は、前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧と前記二次電池の端子電圧とに基づいて定電流充電制御から定電圧充電制御への切替えタイミングの検出を行うように構成されている」ることとは、「充電制御回路は、二次電池の端子電圧に基づいて定電流充電制御から定電圧充電制御への切替えタイミングの検出を行うように構成されている」点で共通する。 (d)引用発明の「保護IC31」は「二次電池の両端の電圧を検出して、規定の電圧より高くなったこと(過充電)を検出してFET22を制御して端子2aから流入する入力電流を遮断し、二次電池両端の電圧が規定の電圧より低くなったこと(過放電)を検出してFET23を制御して通電を遮断する」ものであるから、本願発明1の「前記二次電池が過放電状態となった場合に前記第1制御用スイッチ素子をオフさせて放電電流が流れないようにし、前記二次電池が過充電状態となった場合に前記第2制御用スイッチ素子をオフさせて充電電流が流れ込まないようにする保護回路」に相当する。 また、引用発明の「保護IC31」が「二次電池両端の電圧が規定の電圧より低くなったこと(過放電)を検出」することと、本願発明の「保護回路は、前記配線を介して伝達された基準電圧と前記二次電池の端子電圧とに基づいて過充電状態の検出を行」うこととは、「保護回路は、二次電池の端子電圧に基づいて過充電状態の検出を行」う点で共通する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「二次電池へ充電電流を流すための充電用トランジスタと、 充電用トランジスタを制御する充電制御回路と、 前記二次電池の一方の端子と外部界面との間に直列形態に接続された第1制御用スイッチ素子および第2制御用スイッチ素子と、 前記二次電池が過放電状態となった場合に前記第1制御用スイッチ素子をオフさせて放電電流が流れないようにし、前記二次電池が過充電状態となった場合に前記第2制御用スイッチ素子をオフさせて充電電流が流れ込まないようにする保護回路と、 を備えた充電制御装置であって、 前記充電制御回路は、前記二次電池側の電圧が所定値になるまでは前記充電用トランジスタにより一定の充電電流を流すように制御し、前記二次電池側の電圧が所定値に達した後は定電圧で充電電流を流すように制御を切り替える機能を有し、前記二次電池の両端の電圧が充電制御回路に供給され、 前記保護回路は、二次電池の端子電圧に基づいて過充電状態の検出を行い、 前記充電制御回路は、二次電池の端子電圧に基づいて定電流充電制御から定電圧充電制御への切替えタイミングの検出を行うように構成されていることを特徴とする保護機能付き充電制御装置。」 (相違点) (相違点1)充電用トランジスタを制御する充電制御回路が、本願発明1は「充電用電源が接続されている場合に前記充電用トランジスタが充電電流を流すように制御する」ものであるのに対し、引用発明はそのような制御を行うものでない点。 (相違点2)本願発明1は「外部端子」を備えるのに対し、引用発明は充電装置の本体1の交流用電源3から所定の電圧が供給される部分に端子が備えられているか不明である点。 (相違点3)充電制御回路が、本願発明1は「前記二次電池の正極側の端子電圧および負極側の端子電圧と同一の電位がそれぞれ前記充電制御回路に供給され」る構成を備えるのに対し、引用発明は「端子1bから二次電池両端の電圧を検出し、アナログ値の電圧検出信号12aを出力して、マイクロコントローラの端子5bへ入力する」という構成を備えているものの、「二次電池両端の電圧」が、「前記二次電池の正極側の端子電圧および負極側の端子電圧と同一の電位」であるか否か不明である点。 (相違点4)本願発明1は「前記充電制御回路には基準電圧生成回路が設けられ、前記充電制御回路と前記保護回路との間には前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧を、前記保護回路へ伝達する配線が設けられ」ているのに対し、引用発明はそうでない点。 (相違点5)過充電状態の検出が、本願発明1は「前記保護回路は、前記配線を介して伝達された基準電圧と前記二次電池の端子電圧とに基づいて」行うものであるのに対し、引用発明は「前記配線を介して伝達された基準電圧」を過充電状態の検出に使用するものでない点。 (相違点6)充電制御回路の定電流充電制御から定電圧充電制御への切替えタイミングの検出が、本願発明1は「前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧と前記二次電池の端子電圧とに基づいて」なされるものであるのに対し、引用発明は「前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧」を定電流充電制御から定電圧充電制御への切替えタイミングの検出に使用するものでない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点4から検討する。 引用文献3には、 「【0018】・・・保護回路用IC13は、基準電圧生成回路134(第1の基準電圧生成回路)・・・を含み・・・基準電圧生成回路134によって生成された基準電圧V_(OC)が出力される基準電圧出力端子1315を有している。」 「【0019】・・・基準電圧生成回路134から供給される基準電圧V_(OC)に基づいて、比較電圧V_(HC)(第1の比較電圧)を生成・・・ 【0020】・・・電池電圧V_(BATT)>比較電圧V_(HC)となっている場合はMOSFET121をオフとし、MOSFET122をオンとし、この場合は充電電圧のリチウムイオン2次電池21への供給が停止する。」 「【0022】保護回路用IC23は、基準電圧生成回路234(第2の基準電圧生成回路)、比較電圧生成回路233(第2の比較電圧生成回路)、比較器232(第2の比較器)、制御回路231(第2の制御回路)、及びセレクタ回路235を含み、・・・充電器1の基準電圧生成回路134によって生成された基準電圧V_(OC)が入力される基準電圧入力端子2315を有している。」 「【0028】比較電圧生成回路233は、セレクタ回路235から入力される、基準電圧V_(OC)(第1の基準電圧)又は基準電圧V_(OB)に基づいて、比較電圧V_(HB)を生成する。・・・ 【0030】・・・制御回路231は、電池電圧V_(BATT)>比較電圧V_(HB)となっている場合には、MOSFET221をオフとし、MOSFET222をオンとし、これにより充電電圧のリチウムイオン2次電池21への供給が停止する。」こと、すなわち、充電器の保護回路用IC13から電池パックの保護回路用ICに基準電圧を入力し、基準電圧に基づく比較電圧と電池電圧とを比較することで電池電圧が所定値以上であるかの検出を行うことが記載されているものの、当該保護回路用IC13によってなされる「MOSFET121をオフ」は、【0002】の「過充電を防止」する為のものであって、本願発明1の「二次電池側の電圧が所定値になるまでは前記充電用トランジスタにより一定の充電電流を流すように制御し、前記二次電池側の電圧が所定値に達した後は定電圧で充電電流を流すように制御を切り替える機能を有し」た「充電制御回路」や、引用発明の「マイクロコントローラ5は、・・・充電の初期には・・・充電電流値を所定の一定値に制御してCC充電を行い、・・・電池電圧がある一定値に達したとき、その一定電圧を維持しながら充電電流を段階的に減少させていく(CV充電)・・・充電方法を実行する」「充電制御装置の本体1」のものではない。 そうすると、本願発明1の「前記充電制御回路と前記保護回路との間には前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧を、前記保護回路へ伝達する配線が設けられ」る構成は引用文献3に記載されていないし、引用文献2,4-5にも、相違点4に係る本願発明1の構成は記載されていない。 また、引用発明は「マイクロコントローラ5は、・・・充電の初期には・・・充電電流値を所定の一定値に制御してCC充電を行い、・・・電池電圧がある一定値に達したとき、その一定電圧を維持しながら充電電流を段階的に減少させていく(CV充電)・・・充電方法を実行する」ものであって、その「ある一定値」の電圧を設定するために、引用文献3に記載の過充電を防止する為の基準電圧を発生する「基準電圧生成回路134」を用いる動機も存在しない。 そして、相違点4に係る本願発明1の構成により、本願発明1は、「充電制御回路で生成した基準電圧がばらつくと、該基準電圧により決定した定電圧充電への切替え電圧と、保護回路で決定した過充電検出電圧が、目標値に対して同じ方向へずれることとなり、定電圧充電への切替え電圧の変動範囲と過充電検出電圧の変動範囲が重なるように、マージンをなくすように、検出電圧を設定したとしても、定電圧充電への切替え電圧よりも電池電圧が高くなったことを充電制御回路が検出する前に、過充電検出電圧よりも電池電圧が高くなったことを保護回路が検出することはなく、先に保護回路が、過充電検出電圧よりも電池電圧が高くなったことを検出して充電制御FETをオフしてしまい、充電制御回路からの充電電流を二次電池へ流すことができなくなって充電が完了しない事態が発生するのを回避しつつ、定電圧充電制御時の電圧を高くすることができ、それによって見かけ上の電池容量を増加させることができる。」という格別の効果を奏する。 したがって、上記相違点4に係る本願発明1の構成は、当業者であっても引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとは言えないから、上記相違点1-3,5-6について判断するまでもなく、本願発明1は引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとは言えない。 2.本願発明2について (1)対比 本願発明2と引用発明とを対比すると、次のことが言える。 上記1において本願発明1について述べた一致点で一致する。 上記1において本願発明1について述べた相違点1-3と同様の点(以下、「相違点1’-3’」という。)で相違し、さらに、下記の点で相違する。 (相違点7)本願発明2は「前記保護回路には基準電圧生成回路が設けられ、前記保護回路と前記充電制御回路との間には前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧を、前記充電制御回路へ伝達する配線が設けられ」ているのに対し、引用発明はそうではない点。 (相違点8)過充電状態の検出が、本願発明2は「前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧と前記二次電池の端子電圧とに基づいて」行うものであるのに対し、引用発明は「前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧」を過充電状態の検出に使用するものでない点。 (相違点9)充電制御回路の定電流充電制御から定電圧充電制御への切替えタイミングの検出が、本願発明2は「前記配線を介して伝達された基準電圧と前記二次電池の端子電圧とに基づいて」なされるものであるのに対し、引用発明は「前記配線を介して伝達された基準電圧」を定電流充電制御から定電圧充電制御への切替えタイミングの検出に使用するものでない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑みて、上記相違点7について先に検討する。 引用文献3には、 「【0018】・・・保護回路用IC13は、基準電圧生成回路134(第1の基準電圧生成回路)・・・を含み・・・基準電圧生成回路134によって生成された基準電圧V_(OC)が出力される基準電圧出力端子1315を有している。」 「【0019】・・・基準電圧生成回路134から供給される基準電圧V_(OC)に基づいて、比較電圧V_(HC)(第1の比較電圧)を生成・・・ 【0020】・・・電池電圧V_(BATT)>比較電圧V_(HC)となっている場合はMOSFET121をオフとし、MOSFET122をオンとし、この場合は充電電圧のリチウムイオン2次電池21への供給が停止する。」 「【0022】保護回路用IC23は、基準電圧生成回路234(第2の基準電圧生成回路)、比較電圧生成回路233(第2の比較電圧生成回路)、比較器232(第2の比較器)、制御回路231(第2の制御回路)、及びセレクタ回路235を含み、・・・充電器1の基準電圧生成回路134によって生成された基準電圧V_(OC)が入力される基準電圧入力端子2315を有している。」 「【0028】比較電圧生成回路233は、セレクタ回路235から入力される、基準電圧V_(OC)(第1の基準電圧)又は基準電圧V_(OB)に基づいて、比較電圧V_(HB)を生成する。・・・ 【0030】・・・制御回路231は、電池電圧V_(BATT)>比較電圧V_(HB)となっている場合には、MOSFET221をオフとし、MOSFET222をオンとし、これにより充電電圧のリチウムイオン2次電池21への供給が停止する。」こと、すなわち、充電器の保護回路用IC13から電池パックの保護回路用IC23に基準電圧を入力し、基準電圧に基づく比較電圧と電池電圧とを比較することで電池電圧が所定値以上であるかの検出を行うことが記載されているものの、当該保護回路用IC23によってなされる「MOSFET221をオフ」は、【0002】の「過充電を防止」する為のものであって、本願発明1の「二次電池側の電圧が所定値になるまでは前記充電用トランジスタにより一定の充電電流を流すように制御し、前記二次電池側の電圧が所定値に達した後は定電圧で充電電流を流すように制御を切り替える機能を有し」た「充電制御回路」や、引用発明の「マイクロコントローラ5は、・・・充電の初期には・・・充電電流値を所定の一定値に制御してCC充電を行い、・・・電池電圧がある一定値に達したとき、その一定電圧を維持しながら充電電流を段階的に減少させていく(CV充電)・・・充電方法を実行する」「充電制御装置の本体1」のものでもない。 そうすると、本願発明2の「前記保護回路と前記充電制御回路との間には前記基準電圧生成回路により生成された基準電圧を、前記充電制御回路へ伝達する配線が設けられ」る構成は引用文献3に記載されていないし、引用文献2,4-5にも、相違点7に係る構成は記載されていない。 また、引用発明は「マイクロコントローラ5は、・・・充電の初期には・・・充電電流値を所定の一定値に制御してCC充電を行い、・・・電池電圧がある一定値に達したとき、その一定電圧を維持しながら充電電流を段階的に減少させていく(CV充電)・・・充電方法を実行する」ものであって、その「ある一定値」の電圧を設定するために、引用文献3に記載の過充電を防止する為の基準電圧を発生する「基準電圧生成回路134」を用いる動機も存在しない。 そして、相違点7に係る本願発明2の構成により、本願発明2は、「保護回路で生成した基準電圧がばらつくと、該基準電圧により決定した過充電検出電圧と、充電制御回路で決定した定電圧充電への切替え電圧が、目標値に対して同じ方向へずれることとなり、過充電検出電圧の変動範囲と定電圧充電への切替え電圧の変動範囲が重なるように、マージンをなくすように、検出電圧を設定したとしても、定電圧充電への切替え電圧よりも電池電圧が高くなったことを充電制御回路が検出する前に、過充電検出電圧よりも電池電圧が高くなったことを保護回路が検出することはなく、先に保護回路が、過充電検出電圧よりも電池電圧が高くなったことを検出して充電制御FETをオフしてしまい、充電制御回路からの充電電流を二次電池へ流すことができなくなって充電が完了しない事態が発生するのを回避しつつ、定電圧充電制御時の電圧を高くすることができ、それによって見かけ上の電池容量を増加させることができる。」という格別の効果を奏する。 したがって、上記相違点7に係る本願発明2の構成は、当業者であっても引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとは言えないから、上記相違点1’-3’,8-9について判断するまでもなく、本願発明2は引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものとは言えない。 3.本願発明3-5について 本願発明3-5も、本願発明1の相違点4に係る構成または本願発明2の相違点7に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由または本願発明2と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1-5は、当業者が引用発明及び引用文献2-5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明することができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-06-21 |
出願番号 | 特願2012-13395(P2012-13395) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H02J)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩田 淳、小池 堂夫、稲葉 崇 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
遠藤 尊志 藤井 昇 |
発明の名称 | 保護機能付き充電制御装置および電池パック |
代理人 | 荒船 良男 |
代理人 | 荒船 博司 |