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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 B60K
管理番号 1329454
審判番号 不服2016-11350  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-28 
確定日 2017-07-04 
事件の表示 特願2012-101617「シフト装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日出願公開、特開2013-226976、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成24年4月26日の出願であって、平成27年10月29日付けで拒絶理由が通知され、同年12月8日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年5月10日付け(発送日:同年5月17日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年7月28日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において平成29年2月22日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年4月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、平成29年4月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ない4に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
支持軸が設けられ、傾動されることでシフト位置が変更されるシフト部材と、
前記シフト部材が傾動可能に貫通されて前記シフト部材によって移動されないカバーと、
前記シフト部材が前記カバーより前記支持軸側において傾動可能に貫通され、前記カバーに比し強度を高くされたシフトレバーガイドと、
前記シフトレバーガイドとの間で前記支持軸を挟持することで前記シフト部材が傾動可能に支持され、前記シフト部材から荷重が作用される前記シフトレバーガイドを係止するシフトレバープレートと、
前記シフトレバープレートに設けられると共に、前記シフトレバーガイドとシフトレバープレートとの間での前記支持軸の挟持方向に対し非垂直に配置され、前記支持軸を中心として傾動される前記シフト部材から荷重が作用される前記シフトレバーガイドを受ける受面と、
を備えたシフト装置。
【請求項2】
前記シフトレバーガイド及び前記シフトレバープレートのうちの強度が高い方が前記支持軸を前記シフト部材の傾動方向両側において支持する請求項1記載のシフト装置。
【請求項3】
前記シフトレバーガイド及び前記シフトレバープレートのうちの強度が高い方が支持する前記支持軸の中心角を前記シフトレバーガイド及び前記シフトレバープレートのうちの強度が低い方が支持する前記支持軸の中心角に比し大きくした請求項1又は請求項2記載のシフト装置。
【請求項4】
前記シフトレバーガイド又は前記シフトレバープレートに設けられ、前記シフトレバーガイドと前記シフトレバープレートとが組付けられた際に変形されることで前記シフトレバーガイド又は前記シフトレバープレートを押圧して前記シフトレバーガイドと前記シフトレバープレートとによる前記支持軸の挟持力を増加させる押圧部を備えた請求項1?請求項3の何れか1項記載のシフト装置。」

第3.刊行物、引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された実願平3-88648号(実開平5-37543号)のCD-ROM(以下、「刊行物」という。)には、「自動変速機操作装置の操作レバー支持体」に関し、図面(特に、図1、図2、図3、図6、図22及び図23図を参照。)とともに次の事項が記載されている。下線は当審で付した。
ア.「【0010】
【実施例】
以下この考案の一実施例を図面に基づき説明する。図1から図3はこの考案を実施した自動変速機操作装置を示す。図示のように、操作レバー1を揺動可能に軸支して車体に固定する支持体は、合成樹脂成形体からなるロアーベースブラケット2とアッパーベースブラケット3との2体構造からなる。ロアーベースブラケット2に軸4を介してカラー5を回転可能に軸支し、そのカラー5に直交してカラー6を連結し、そのカラー6にブラケット7を軸8にて回動可能に軸支し、そのブラケット7にチューブからなる軸杆9を連結し、その軸杆9に操作ノブ10を連結してある。したがって、操作レバー1は前後及び左右方向へ揺動可能である。」

イ.「【0016】
ロアーベースブラケット2とアッパーベースブラケット3は、図6に示したように、それぞれ単体として成形され、かつ、両者の辺縁部を重ね、ロアーベースブラケット2に形成されたチェックプレート部14及びチェックプレート係合部2iをアッパーベースブラケット3から突出させるものである。ロアーベースブラケット2は、図7から図12に示したように、中央部に凹部2aと、その周囲から水平方向へそれぞれ延びる平坦な辺縁部2bと、辺縁部2bの端辺部を上方へ一定の高さで曲げたフランジ部2c,2dと、辺縁部2bを補強するため上面に突出形成したリブ2eと、該リブ2eで形成される複数のボルト挿通孔2fと、凹部2aの左右両壁にそれぞれ穿設された軸孔2g,2gと、またその底部に左右両壁と平行に形成された長孔2h(図9)と、凹部2aを挟んで相対向するチェックプレート部14及びチェックプレート係合部2iとがそれぞれ一体形成された合成樹脂材料の型成形体である。チェックプレート14は、図8に示したように、軸孔2gを中心とする所定半径の弧部からなり、その弧部の弧面に波形の摺接面2jが形成されている。チェックプレート係合部2iはチェックプレート37を冠着する係合部である。さらに、凹部2aの内底面には後記のスライドプレート75が摺接するレール2k,2kが一体形成されている。このレール2k,2kは後記の一方側のレール3k,3kの端部と合致する。かくして、ロアーベースブラケット2の辺縁部2bの裏面は勿論平坦であるから、ブーツの辺縁と密着して防水性を向上させることができ、また車体底部との間でブーツを挟持して取り付け固定するのに都合がよい。
【0017】
アッパーベースブラケット3は、ロアーベースブラケット2の上に冠して固定するものであって、図13から図21に示したように、ロアーベースブラケット2のフランジ部2cの外側に配置されるフランジ部3aと、ロアーベースブラケット2のリブ2eに接触する平坦な辺縁部3bと、辺縁部3bに穿設されて前記ボルト挿通孔2fと合致するボルト挿通孔3cと、辺縁部3bの上面に突出し前記凹部2aの上に配置され、操作レバー1が貫通するゲート部16、ポジションピン52が摺接して係脱するポジションプレート部17,17及びインディケーター24のスライドプレート75の移動案内をするスライドガイド部3d,3e及びチェックプレート保持部3f等を一体形成した合成樹脂材料の型成形体である。辺縁部3bは、図3に示したように、前記ロアーベースブラケット2のリブ2eとフランジ2c,2dに接触しそれらにより囲まれて密閉された空間部96(図2参照)を形成する。」

ウ.「【0020】
インディケーター24は、図22に示したように、アッパーベースブラケット3のスライドガイド部3d,3eに設けた係合部3qに係合する係合爪71を有するケーシング72と、操作レバー1の軸杆9を貫通する孔73を穿設したプレート74が幅方向へスライド可能に係合するスライドプレート75と、ランプ76を挿入してその光を反射させる反射板77を収納したケース78と、ケース78の蓋板79と、操作レバー1が貫通してケーシング72の上面を覆う指示板80とからなる。ケーシング72はスライドプレート75の短手側端部が摺接して案内されるガイド板81,81で操作レバー1が前後方向へ移動可能な開口部82を形成してなり、該開口部82はスライドプレート75の両端部をそれぞれ前記スライドガイド部3d,3e内に挿入案内できる。指示板80は操作レバー1の軸杆9が貫通して前後方向へ移動できる案内溝25を有し、この溝25は前記ゲート部16の真上に位置して直線溝18,20に対応する直線部18a,20aと、交叉溝19,21に対応する交叉部19a,21aと、交叉溝22に対応する交叉部22aと、ストッパー23に相当するストッパー23bとを有し、かつ、その案内溝25の側部に各レンジの表示部84が設けられている。
【0021】
なお、操作レバー1の回動中心であるシャフト4の支持につき、ロアーベースブラケット2の凹部2aの軸孔2gを穿設しないで、それに代わり図23に示したように、アッパーベースブラケット3に凹部2aの左右にそれぞれ形成される軸受け部97に挿入する板状突起部90を形成し、その板状突起部90にそれぞれ軸押え部91を形成し、その軸押え部91と軸受け部97とにより、シャフト4の軸端部にそれぞれ嵌合したブッシュ92を固定するようにした当軸受け構造としてもよい。ブッシュ92にはシャフト4の端部が当接する球状突起部93が形成されている。
【0022】
この球状突起部93は、図24に示したように、ブッシュ94を貫通したシャフト4の端部が当接する球状突起部95を板状突起部90に形成したものに代えてもよい。このような当軸受け構造とすることにより、ロアーベースブラケット2にアッパーベースブラケット3を冠する単純作業でシャフト4の装着ができるため、ロアーベースブラケット2とアッパーベースブラケット3の組付けが簡便容易かつ迅速に行える。また、所謂ガタ(不整合)押えと、摩擦抵抗の軽減が図れる。」

エ.「【0024】
そこで、操作ノブ10を握り、ノブボタン60を押し込んでコンプレッションロッド50を圧し下げると、ポジションピン52がポジションプレート部17,17から脱し、ブラケット7のスリット30,30を下降してディテント切欠3gから離れる。一方、チェックレバー12のローラー13はチェックプレート部14の摺接面2jにスプリング15の力で圧接して停止し、操作レバー1を当該位置に保持している。そこで、PレンジからDレンジ迄はシャフト4を中心として操作レバー1を前後方向へ回動させることができる。」

オ.上記ア.の「操作レバー1を揺動可能に軸支して車体に固定する支持体は、合成樹脂成形体からなるロアーベースブラケット2とアッパーベースブラケット3との2体構造からなる。ロアーベースブラケット2に軸4を介してカラー5を回転可能に軸支し、そのカラー5に直交してカラー6を連結し、そのカラー6にブラケット7を軸8にて回動可能に軸支し、そのブラケット7にチューブからなる軸杆9を連結し、その軸杆9に操作ノブ10を連結してある。したがって、操作レバー1は前後及び左右方向へ揺動可能である。」との記載、上記ウ.の「指示板80は操作レバー1の軸杆9が貫通して前後方向へ移動できる案内溝25を有し、」との記載、及び上記エ.の「操作レバー1を当該位置に保持している。そこで、PレンジからDレンジ迄はシャフト4を中心として操作レバー1を前後方向へ回動させることができる。」との記載、並びに図2及び図3から、操作レバー1には、シャフト4(刊行物において、「軸4」と「シャフト4」との記載が混在しているが、以下、当審では「シャフト4」に統一する。)が設けられ、操作レバー1を前後方向へ回動、すなわち、傾動することでPレンジからDレンジ迄までのシフト位置を変更できることが分かり、また、指示板80は操作レバー1が傾動可能に貫通されることが分かり、そして、この指示板80は、操作レバー1によって移動されないことは明らかである。

カ.上記ア.の「アッパーベースブラケット3は、・・・(中略)・・・操作レバー1が貫通するゲート部16、・・・(中略)・・・等を一体形成した合成樹脂材料の型成形体である。」との記載、並びに図2、図3、図6及び図22から、アッパーベースブラケット3は、操作レバー1が指示板80よりシャフト4側において傾動可能に貫通されることが分かる。

キ.上記イ.の【0017】の「アッパーベースブラケット3は、ロアーベースブラケット2の上に冠して固定するものであって、」及び上記ウ.の段落【0022】の「操作レバー1の回動中心であるシャフト4の支持につき、ロアーベースブラケット2の凹部2aの軸孔2gを穿設しないで、それに代わり図23に示したように、アッパーベースブラケット3に凹部2aの左右にそれぞれ形成される軸受け部97に挿入する板状突起部90を形成し、その板状突起部90にそれぞれ軸押え部91を形成し、その軸押え部91と軸受け部97とにより、シャフト4の軸端部にそれぞれ嵌合したブッシュ92を固定するようにした当軸受け構造としてもよい。」との記載、並びに図2,図3,図6及び図23から、シャフト4の支持に関する別の実施態様として、シャフト4がロアーベースブラケット2とアッパーベースブラケット3との間で挟持されることにより、操作レバー1が傾動可能に支持されることが分かり、また、アッパーベースブラケット3は、ロアーベースブラケット2の上に冠して固定するものであるから、ロアーベースブラケット2は操作レバー1から荷重が作用されるアッパーベースブラケット3を係止することは明らかである。

ク.図23から、ロアーベースブラケット2の凹部2aは、アッパーベースブラケット3の板状突起部90と接触する受面を備えることが窺える。

上記記載事項及び認定事項並びに図面の図示事項を総合し、図23の実施態様に関して、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「シャフト4が設けられ、傾動されることでシフト位置が変更される操作レバー1と、
前記操作レバー1が傾動可能に貫通されて前記操作レバー1によって移動されない指示板80と、
前記操作レバー1が前記指示板80より前記シャフト4側において傾動可能に貫通されたアッパーベースブラケット3と、
前記アッパーベースブラケット3との間で前記シャフト4を挟持することで前記操作レバー1が傾動可能に支持され、前記操作レバー1から荷重が作用される前記アッパーベースブラケット3を係止するロアーベースブラケット2と、
前記ロアーベースブラケット2に設けられ、前記シャフト4を中心として傾動される前記操作レバー1から荷重が作用される前記アッパーベースブラケット3を受ける受面と、
を備えた自動変速機操作装置。」

第4.対比・判断
1.本願発明1に対して
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、その技術的意義、機能または構造からみて、引用発明における「シャフト4」は本願発明1における「支持軸」に相当し、以下同様に、「操作レバー1」は「シフト部材」に、「指示板80」は「カバー」に、「アッパーベースブラケット3」は「シフトレバーガイド」に、「ロアーベースブラケット2」は「シフトレバープレート」に、「自動変速機操作装置」は「シフト装置」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、次の点で一致する。
[一致点]
「支持軸が設けられ、傾動されることでシフト位置が変更されるシフト部材と、
前記シフト部材が傾動可能に貫通されて前記シフト部材によって移動されないカバーと、
前記シフト部材が前記カバーより前記支持軸側において傾動可能に貫通されたシフトレバーガイドと、
前記シフトレバーガイドとの間で前記支持軸を挟持することで前記シフト部材が傾動可能に支持され、前記シフト部材から荷重が作用される前記シフトレバーガイドを係止するシフトレバープレートと、
前記シフトレバープレートに設けられ、前記支持軸を中心として傾動される前記シフト部材から荷重が作用される前記シフトレバーガイドを受ける受面と、
を備えたシフト装置。」

そして、両者は次の各点で相違する。
[相違点1]
本願発明1においては、「シフトレバーガイド」が、「カバーに比し強度を高く]されているのに対し、引用発明においては、かかる構成が明らかでない点。

[相違点2]
本願発明1においては、シフトレバープレートに設けられる「受面」が、「シフトレバーガイドとシフトレバープレートとの間での前記支持軸の挟持方向に対し非垂直に配置され」ているのに対し、引用発明においては、かかる構成が明らかでない点。

事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
刊行物1には、ロアーベースブラケット2に設けられる「受面」が、「アッパーベースブラケット3とロアーベースブラケット2との間でのシャフト4の挟持方向に対し非垂直に配置され」ていることの記載や示唆はない。
なお、請求人が先行技術文献として提示した特開2008-155908号公報にも、下側ブラケット部材11に設けられる「受面」が、「上側ブラケット部材10と下側ブラケット部材11との間でのシフト回転軸24の挟持方向に対し非垂直に配置され」ていることの記載や示唆はない。
そうすると、引用発明から、相違点2に係る本願発明1の構成を当業者が容易に想到し得るとはいえない。
したがって、本願発明1は、相違点1を検討するまでもなく、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2ないし4に対して
本願発明2ないし4は、本願発明1の発明特定事項の全てを含むものであるから、本願発明1と同様に、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5.原査定の概要及び原査定の判断
原査定は、請求項1ないし3及び5に係る発明が刊行物に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、平成29年4月28日付けの手続補正により補正された請求項1は、前記相違点2に対応する構成を有するものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし4は、上記引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6.当審拒絶理由について
(1)理由1(委任省令要件: 特許法第36条第4項第1号)について
当審では、「本願明細書には、【背景技術】として、『【0002】下記特許文献1に記載のシフトレバー装置では、シフトレバーがプレート及び上側ブラケット部材に傾動可能に貫通されており、シフトレバーのシフト回転軸が上側ブラケット部材と下側ブラケット部材との間に挟持されることで、シフトレバーが傾動可能に支持されている。【0003】このシフトレバー装置では、シフトレバーが傾動されても、シフトレバーが上側ブラケット部材に当接不能にされているため、シフトレバーから上側ブラケット部材に荷重が入力されないと解される。【0004】ここで、仮に、シフトレバーから上側ブラケット部材に荷重が入力される場合には、シフトレバーから入力される荷重による上側ブラケット部材の変位が係止されないと、上側ブラケット部材と下側ブラケット部材との間にシフト回転軸を適切には挟持できず、シフトレバーを適切には傾動可能に支持できない可能性がある。【先行技術文献】【特許文献】【0005】【特許文献1】特開2008-155908号公報』旨記載されている。(段落【0002】ないし【0005】)。 しかし、この【背景技術】の記載には、『シフトレバーが上側ブラケット部材に当接不能にされているため、シフトレバーから上側ブラケット部材に荷重が入力されない』(段落【0003】)との記載、及び、『シフトレバーから上側ブラケット部材に荷重が入力される場合』(段落【0004】)との記載、すなわち、相反する状態の記載が混在しているため、従来技術にどのような問題点があるか不明瞭であり、本願発明の課題も不明瞭である。また、そのことにより、当該課題と本願発明の構成である解決手段の関係およびその作用効果も不明瞭である。よって、この出願の発明の詳細な説明は、請求項1ないし5に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでない。」 との拒絶の理由を通知した。
平成29年4月28日付けの手続補正で段落【0003】が削除された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2)理由2(明確性要件:特許法第36条第6項第2号)について
ア.当審では、「請求項1ないし5において、発明を特定する事項が、『貫通部材』、『強度部材』及び『係止部材』との抽象的な部材名称で表現されているため、発明の対象である『シフト装置』の前提となる構成が不明確である。」との拒絶の理由を通知した。
平成29年4月28日付けの手続補正で、請求項1ないし5における「貫通部材」、「強度部材」及び「係止部材」は、それぞれ「カバー」、「シフトレバーガイド」及び「シフトレバープレート」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

イ.当審では、「請求項1の『前記シフト部材から入力される荷重』との記載に関し、『入力』及び『荷重』は何れも『負荷』に関する用語であると解されるが、『入力』及び『荷重』との関係が不明である。」との拒絶の理由を通知した。
平成29年4月28日付けの手続補正で、請求項1における「シフト部材から入力される荷重」は、「シフト部材から荷重が作用される」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

ウ.当審では、「請求項1の『強度部材の変位を係止する係止部材』との記載に関し、『変位』は動いた状態を意味し、『係止』は動かない状態を意味すると解されるため、『変位を係止する』とは強度部材がどのような状態にあるか明確でない。」との拒絶の理由を通知した。
平成29年4月28日付けの手続補正で、請求項1における「入力される荷重による前記強度部材の変位を係止する係止部材」は、「荷重が作用される前記シフトレバーガイドを係止するシフトレバープレート」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

エ.当審では、「請求項2及び3における『強度が高い方の前記強度部材又は前記係止部材』及び請求項3における『強度が低い方の前記強度部材又は前記係止部材』との記載は、強度の大小を何と比較したものであるか明確でない。」との拒絶の理由を通知した。
平成29年4月28日付けの手続補正で、請求項2及び3における「強度が高い方の前記強度部材又は前記係止部材」は、「シフトレバーガイド及び前記シフトレバープレートのうちの強度が高い方」と補正され、また、請求項3における「シフトレバーガイド及び前記シフトレバープレートのうちの強度が低い方」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(3)理由3(サポート要件:特許法第36条第6項第1号)について
当審では、「請求項4において、『前記強度部材と前記係止部材とが組付けられた際に変形されることで前記強度部材又は前記係止部材を押圧して前記強度部材の前記係止部材による係止力及び前記強度部材と前記係止部材とによる前記支持軸の挟持力の少なくとも一方を増加させる押圧部』と記載されている。しかしながら、本願明細書には、当該構成に関係する記載として、『【0039】 図1に示す如く、組付孔40の周面には、前側かつ下側の部分において、押圧部としての柱状の第1リブ46(潰しリブ)が一体に突出形成されており、第1リブ46は、組付孔40の軸方向(左右方向)に平行に配置されている。第1リブ46は、ピン42によって潰れ(圧縮)変形されており、シフトレバーガイド26は、第1リブ46の弾性力(形状復元力)によってシフトレバープレート12の後受面18A及びシフトレバーガイド26の後当面36Aに垂直な下側の方向へ付勢(押圧)されている。【0040】 組付孔40の周面には、後側かつ下側の部分において、押圧部としての柱状の第2リブ48(潰しリブ)が一体に突出形成されており、第2リブ48は、組付孔40の軸方向(左右方向)に平行に配置されている。第2リブ48は、ピン42によって潰れ(圧縮)変形されており、シフトレバーガイド26は、第2リブ48の弾性力(形状復元力)によってシフトレバープレート12の前受面18B及びシフトレバーガイド26の前当面36Bに垂直な下側の方向へ付勢(押圧)されている。』、『【0067】 さらに、シフトレバーガイド26の組付孔40周面の第1リブ46がピン42によって潰れ変形されることで、第1リブ46の弾性力によって、シフトレバーガイド26の後当面36Aがシフトレバープレート12の後受面18Aに面当接される圧力が増加されると共に、下支持孔20の円周面と上支持孔38の円周面との間での傾動軸58の挟持力が増加される。しかも、シフトレバーガイド26の組付孔40周面の第2リブ48がピン42によって潰れ変形されることで、第2リブ48の弾性力によって、シフトレバーガイド26の前当面36Bがシフトレバープレート12の前受面18Bに面当接される圧力が増加される。このため、傾動軸58のガタツキを一層抑制でき、下支持孔20の円周面と上支持孔38の円周面との間で傾動軸58を一層適切に挟持できて、シフトレバー52を一層適切に傾動軸58を中心として傾動可能に支持できる。』がある。これらの記載からは、『第1リブ46の弾性力によって、シフトレバーガイド26の後当面36Aがシフトレバープレート12の後受面18Aに面当接される圧力が増加される』こと、及び、『第2リブ48の弾性力によって、シフトレバーガイド26の前当面36Bがシフトレバープレート12の前受面18Bに面当接される圧力が増加される』ことは把握可能である。しかしながら、請求項4に記載された強度部材の係止部材による『係止力』及び、強度部材と係止部材とによる支持軸の「挟持力」が具体的に何を意味するのか不明であり、ましてや、『係止力』及び『挟持力』の少なくとも一方を増加させる『押圧部』とは、何を指しているのか不明であり、請求項4に記載された『押圧部』が、前記明細書の記載によって裏付けられているとは認められない。したがって、請求項1(当審注:請求項4の誤記である。)の『前記強度部材と前記係止部材とが組付けられた際に変形されることで前記強度部材又は前記係止部材を押圧して前記強度部材の前記係止部材による係止力及び前記強度部材と前記係止部材とによる前記支持軸の挟持力の少なくとも一方を増加させる押圧部』は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。」との拒絶の理由を通知した。
平成29年4月28日付けの手続補正で、請求項4における『前記強度部材と前記係止部材とが組付けられた際に変形されることで前記強度部材又は前記係止部材を押圧して前記強度部材の前記係止部材による係止力及び前記強度部材と前記係止部材とによる前記支持軸の挟持力の少なくとも一方を増加させる押圧部」は、「前記シフトレバーガイド又は前記シフトレバープレートに設けられ、前記シフトレバーガイドと前記シフトレバープレートとが組付けられた際に変形されることで前記シフトレバーガイド又は前記シフトレバープレートを押圧して前記シフトレバーガイドと前記シフトレバープレートとによる前記支持軸の挟持力を増加させる押圧部」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-06-19 
出願番号 特願2012-101617(P2012-101617)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (B60K)
P 1 8・ 121- WY (B60K)
P 1 8・ 537- WY (B60K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中村 大輔  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 内田 博之
中川 隆司
発明の名称 シフト装置  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  
代理人 中島 淳  
代理人 中島 淳  

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