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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63B |
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管理番号 | 1329497 |
審判番号 | 不服2017-267 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-01-10 |
確定日 | 2017-07-04 |
事件の表示 | 特願2015- 86457「ゴルフ練習・支援装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月 3日出願公開、特開2015-157093、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成23年1月5日に出願した特願2011-631号(優先日:平成22年1月6日、出願番号:特願2010-1325号)(以下「原出願」という。)の一部を、平成27年4月21日に新たな特許出願としたものであって、平成28年6月23日付けで拒絶理由が通知され、同年8月26日付けで手続補正がされ、同年9月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年10月11日)、これに対し、平成29年1月10日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年9月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 この出願の下記の請求項に係る発明は、その原出願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 1-4 ・引用文献等 1-3 ・請求項 5-6 ・引用文献等 1-4 ・請求項 7-8 ・引用文献等 1-5 引用文献等一覧 1.特開2003-190352号公報 2.特開平8-215363号公報(周知技術を示す文献) 3.特開平6-178840号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2004-105350号公報 5.特開2002-286837号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成28年8月26日付けで手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次のとおりのものである(以下、請求項1ないし8に係る発明を、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)。 「【請求項1】 速度計測センサの出力に基づき推定飛距離を求めて表示する機能を備えたゴルフ練習・支援装置であって、 ゴルフ場のコースレイアウトを表示部に表示する機能と、 前記コースレイアウト上の地点を中心に、前記速度計測センサの出力に基づき求めた推定飛距離を半径とする円の円周上と前記コースレイアウトに設定された基準線との交点に基づいて決定した地点を表示する機能と、 を備えたことを特徴とするゴルフ練習・支援装置。 【請求項2】 前記基準線は、前記コースレイアウトのホールの攻略ルートを示すものであることを特徴とする請求項1に記載のゴルフ練習・支援装置。 【請求項3】 前記攻略ルートは、ティーグランドの所定位置から、グリーンの所定位置までを結ぶ線であり、その線は方向が変わる位置を示す1または複数の基準点により特定されることを特徴とする請求項2に記載のゴルフ練習・支援装置。 【請求項4】 前記基準線は、前記コースレイアウトのフェアウェーの境界線及びまたはコースの境界線であることを特徴とする請求項1に記載のゴルフ練習・支援装置。 【請求項5】 前記推定飛距離は、クラブ種に対応づけられた係数を用いて算出する機能を備え、 その距離算出機能で求めた推定飛距離を前記クラブ種と関連づけて記憶部に記憶しておき、 前記表示部に表示した前記コースレイアウト上の目標地点の指定を受け付け、現在位置からその目標地点までの距離を求めるとともに、求めた距離と前記クラブ種ごとの推定飛距離に基づいて前記目標地点に向けて打つ際に使用するのに適したクラブ種を決定し、決定したクラブ種に関する情報を報知する機能を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のゴルフ練習・支援装置。 【請求項6】 前記決定したクラブ種の推定飛距離と、前記求めた距離を報知する機能をさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載のゴルフ練習・支援装置。 【請求項7】 前記表示部を備えた第1ケース本体と、 速度計測センサを備えた第2ケース本体とは分離可能に構成したことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のゴルフ練習・支援装置。 【請求項8】 請求項1?7のいずれかに記載のゴルフ練習・支援装置における機能をコンピュータに実現させるためのプログラム。」 第4 引用例 1.引用例1について 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-190352号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 (1)「【0008】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるゴルフコース最適攻略支援システムの構成を示す構成図である。本システムは、コース情報格納部101と個人情報格納部102と位置取得部103と現在位置判断部104と目標点算出部105と分析処理部106と表示処理部107および表示部108とを備えている。本システムは、例えば、携帯型のコンピュータシステムで実現される。」 (2)「【0014】現在位置判断部104は、位置取得部103が取得した測位情報とコース情報格納部101に格納されているカップの位置や分岐点の位置などから、これらまでの間の障害物を検出し、また、検出した障害物が実際に障害となるかどうかの判断を行う。目標点算出部105は、予め設定されているゴルフボールの飛距離情報をもとに、現在位置(ボールの位置)からの到達可能領域を算出する。なお、例えば、プレーヤが入力した使用するクラブの情報と、個人情報格納部102に格納されているプレーヤーの個人情報とにより、上記飛距離を決定するようにしてもよい。また、プレーヤが入力した使用クラブ情報をもとに、上記飛距離を算出して決定するようにしてもよい。」 (3)「【0016】分析処理部106は、目標点算出部105が算出した到達可能領域の中より、コース情報格納部101に格納されたコース情報および個人情報格納部102に格納された個人情報をもとに、アドバイス可能な領域を抽出し、この中よりアドバイスポイントを決定する。表示処理部107は、分析処理部106が決定したアドバイスポイントを、コース情報格納部101に格納されたコース座標データ中に組み込み、このデータよりコースおよびアドバイスポイントを示す画像データを生成し、生成した画像データを表示部108に表示する。」 (4)「【0024】つぎに、ステップS407で、分析処理部106が、算出または設定された到達可能領域とコースデータとを照合し、コースデータ内のフェアウエイおよびグリーンと目標の領域もしくはカップ近辺の領域との重なり領域を求め、目標点の候補領域とする(図6)。 【0025】次いで、ステップS408で、分析処理部106は、予め用意されているボールの打ち出し方向のぶれ幅を参照し、目標点の候補領域の中よりアドバイス可能な領域を抽出する(図7)。これは、ボールの打ち出し方向のぶれが、現在のボール位置より18°の広がりの中で、また、飛行方向に前後18m程度であると仮定した上で行う。まず、「tanθ(x-x_(1))+y_(1)≦y≦tan(θ+18)(x-x_(1))+y_(1),(p-18)≦r≦p」の集合Pを求める。 【0026】次いで、目標点の候補の集合(目標点の候補領域)と求めた集合Pとの積集合を、コースデータ内より抽出する。これは、「tanθ(x-x_(1))+y_(1)≦y≦tan(θ+18)(x-x_(1))+y_(1),120≦r≦210」と「tanθ=(x’- x_(1))/(y’- y_(1)),r^(2)=(x-x_(1))^(2)+(y-y_(1))^(2)」において、θおよびrの値を変化させることによりできるx,yの集合Pと、目標点の候補領域との積集合を求めることである。 【0027】つぎに、ステップS409で、分析処理部106は、現在位置とカップとの間の、コース基準関数の分岐点の存在を確認する。分岐点が存在しない場合、ステップS410に進み、分析処理部106は、上述のようにして抽出した積集合の中より、現在位置とカップ位置とを結ぶ直線に最も近く、かつ、カップ位置に最も近くなる領域の中心点を目標点として決定する(図8)。なお、図8において、太線の矩形領域が、ほぼ上述した積集合である。なお、打ち出し方向のぶれる角度と前後のぶれ幅より、積集合の中の最も面積が最小となる領域をアドバイスポイントの候補として取り上げ、この中より目標点を検出する用意してもよい。 【0028】一方、ステップS409の確認で、分岐点が存在した場合、ステップS411に進み、分析処理部106は、図8に示すように、現在位置とカップ位置とを結ぶ直線に最も近く、かつ、存在した分岐点Mに最も近くなる領域の中心点を目標点として決定する。以上のことにより目標点が決定されると、ステップS412で、表示処理部107は、コース情報格納部101に格納されているコースデータをもとにし、例えば図8に示したような、上記目標点が示されたコース状態を示す画像を生成し、これを表示部108に表示する。また、ステップS403で、カップまでの間に障害物が検出されなかった場合、ステップS413に進み、カップの位置を目標点として決定して表示する。」 上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「目標点算出部105と分析処理部106と表示処理部107および表示部108とを備えるゴルフコース最適攻略支援システムであって、 目標点算出部105は、予め設定されているゴルフボールの飛距離情報をもとに、現在位置(ボールの位置)からの到達可能領域を算出し、 分析処理部106が、算出された到達可能領域とコースデータとを照合し、コースデータ内のフェアウエイおよびグリーンと目標の領域もしくはカップ近辺の領域との重なり領域を求め、目標点の候補領域とし、 分析処理部106は、予め用意されているボールの打ち出し方向のぶれ幅を参照し、目標点の候補領域の中よりアドバイス可能な領域を抽出し、集合Pを求め、 目標点の候補の集合(目標点の候補領域)と求めた集合Pとの積集合を、コースデータ内より抽出し、 分析処理部106は、抽出した積集合の中より、現在位置とカップ位置とを結ぶ直線に最も近く、かつ、カップ位置に最も近くなる領域の中心点を目標点として決定し、 目標点が決定されると、表示処理部107は、コース情報格納部101に格納されているコースデータをもとにし、目標点が示されたコース状態を示す画像を生成し、これを表示部108に表示する ゴルフコース最適攻略支援システム。」 2.引用例2について 同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平8-215363号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「【0013】マット12を挟んで打席11の前には、表示ボックス13が配設されている。表示ボックス13の打席側正面には、ヘッドスピードを表示するための第1表示器37が設けられるとともに、ゴルフボールGBの飛距離を表示するための第2表示器38が設けられている。打席後方には、操作パネル14が設けられている。」 (2)「【0018】ROM53は前記プログラムを記憶するとともに、図8の(A)(B)に示すようなゴルフボールGBの初速と飛距離との関係を表すデータを記憶した複数のテーブル53a?53jを備えている。第1グループのテーブル53a?53eは練習用ゴルフボールの初速に対する飛距離をティー23の高さ(ゴルフクラブの種類)毎に表すもので、同一初速に対する飛距離は、ティー23の設定高さが低くなるにしたがって(ゴルフクラブの種類がドライバ、ブラッシなどと短いゴルフクラブに変化するにしたがって)小さくなる。第2グループのテーブル53f?53jは競技用ゴルフボールの初速に対する飛距離をティー23の高さ(ゴルフクラブの種類)毎に表すもので、同一初速に対する飛距離は前記練習用ゴルフボールと同様な傾向にある。ただし、第2グループのテーブル53f?53jにおける飛距離は、ティー23の高さ(ゴルフクラブの種類)及びゴルフボールGBの初速が同一であれば、第1グループのテーブル53a?53eにおける飛距離より大きく設定されている。」 (3)「【0036】また、光電センサ33?36がティー23直後のゴルフボールGBの通過を検出し、この検出に応答して、図4のステップ202,206及び図5のステップ226?238の処理によりゴルフボールGBが光電センサ33?36間を通過するのに要した時間がボール時間データBtとして計測される。そして、図7のステップ404の処理により前記計測したボール時間データBtに対応したゴルフボールGBの初速Bsが計算されて、ステップ408の処理により初速と飛距離との関係を表すテーブルを用いて前記計算した初速Bsに対応した飛距離YDが推定されて、図3のステップ114の処理により飛距離YDが第2表示器38にて表示される。これにより、練習者は自分の打ったゴルフボールGBの飛距離YDを確認できる。この場合、予め用意したテーブルを用いて飛距離YDを推定するようにしたので、ゴルフボールGBの飛距離表示装置を簡単に構成することができ、同装置の製造コストを低減することもできる。」 (4)上記(2)によれば、複数のテーブル53a?53jのうち、第1グループのテーブル53a?53eは練習用ゴルフボールの初速に対する飛距離をティー23の高さ(ゴルフクラブの種類)毎に表すもので、第2グループのテーブル53f?53jは競技用ゴルフボールの初速に対する飛距離をティー23の高さ(ゴルフクラブの種類)毎に表すものであるから、複数のテーブル53a?53jはゴルフボールGBの初速に対する飛距離をティー23の高さ(ゴルフクラブの種類)毎に表すものであるといえる。 (5)図1からは、光電センサ33?36と表示ボックス13とが分離されている点を看取することができる。 上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の事項(以下「引用例2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「複数のテーブル53a?53jはゴルフボールGBの初速と飛距離との関係を表すデータを記憶し、 複数のテーブル53a?53jはゴルフボールGBの初速に対する飛距離をティー23の高さ(ゴルフクラブの種類)毎に表すもので、 光電センサ33?36がゴルフボールGBの通過を検出し、この検出に応答して、ゴルフボールGBが光電センサ33?36間を通過するのに要した時間がボール時間データBtとして計測され、前記計測したボール時間データBtに対応したゴルフボールGBの初速Bsが計算されて、初速と飛距離との関係を表すテーブルを用いて前記計算した初速Bsに対応した飛距離YDが推定されて、飛距離YDが第2表示器38にて表示され、 表示ボックス13の打席側正面には、ゴルフボールGBの飛距離を表示するための第2表示器38が設けられ、 光電センサ33?36と表示ボックス13とが分離されている ゴルフボールGBの飛距離表示装置。」 3.引用例3について 同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平6-178840号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「【0010】 【実施例】以下、この発明の実施例を第1図?第3図に基づいて説明する。1は所定周波数のマイクロ波ビームを放射するマイクロ波放射器の機能を兼備したドップラセンサで、例えばボールセット位置に載置されるボールBの打撃方向後方1メートル位のところに設置される。2はドップラセンサ1により受信された反射波のドップラ信号を増幅する増幅器、3は増幅器2からの出力を演算処理することによって、打撃時のクラブヘッドの移動速度を算出する第1処理部で、コンパレータ4、カウンタ5および除算器6を備えたコンピュータにより構成されている。7は除算器6からの出力が入力される表示手段としてのディスプレイで、第1処理部3で算出されたクラブヘッドHの移動速度をディジタル表示するようにされている。8は増幅器2からの出力を演算処理することによって、打撃されたボールの初速度を算出する第2処理部で、クラブヘッドHの反射波の周波数以下の周波数成分をカットするフイルタ9、コンパレータ10、カウンタ11、除算器12および後述する遅延回路16とを備えたコンピュータにより構成されている。13は除算器12からの出力が入力される表示手段としてのディスプレイで、第2処理部8で算出されたボールBの初速度をディジタル表示するようにされている。なお図示しないが、増幅器2から出力された反射波のドップラ信号を第1処理部3または第2処理部8において演算処理する際は、ドップラ信号をA/D変換器でディジタル信号に変換した後、演算処理するようにされている。」 (2)「【0018】上記実施例においては、打撃時のクラブヘッドの移動速度と打撃されたボールの初速度を測定する場合について説明したが、さらに、ボールの初速度を基にしてそのボールの飛距離を算出し、それを表示することにより、ボールの飛距離をも測定できる。すなわち打撃されたボールの飛距離は、一般に、ボールの初速度を4倍した値になることが知られているので、上記実施例において、ボールBの初速度を算出する第2処理部8の処理結果を基にしてそのボールの飛距離を算出する第3処理部を設けるとともに、この第3処理部によって算出された処理結果を表示する表示手段を設けることにより、ボールの飛距離をも測定できることになる。なおボールの初速度を基にしてそのボールの飛距離を算出する装置は既に公知であるので、そのような装置を用いて第3処理部を構成するとよい。また表示手段については、上記ディスプレイ7、13とは別のものを設置するほか、ディスプレイ13と兼用し、ボールの初速度と交互に表示するようにしてもよい。」 上記の記載事項を総合すると、引用例3には、次の事項(以下「引用例3記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「所定周波数のマイクロ波ビームを放射するマイクロ波放射器の機能を兼備したドップラセンサ1、 ドップラセンサ1により受信された反射波のドップラ信号を増幅する増幅器2、 増幅器2からの出力を演算処理することによって、打撃されたボールの初速度を算出する第2処理部8を備え、 ボールBの初速度を算出する第2処理部8の処理結果を基にしてそのボールの飛距離を算出する第3処理部を設けるとともに、この第3処理部によって算出された処理結果を表示する表示手段を設けることにより、ボールの飛距離を測定する点。」 4.引用例4について 同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2004-105350号(以下「引用例4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「【0023】 図1は、本実施例のオフボードナビゲーション装置20の概略構成を示すブロック図である。オフボードナビゲーション装置というのは、一般的によく知られている地図表示や経路案内を実行可能な車両に搭載されるナビゲーション装置を小型軽量化し、車外にも持ち運び可能なように構成されたナビゲーション装置である。実施例のオフボードナビゲーション装置20は、通常のナビゲーション機能の他にゴルファに対して各種の情報を提供するゴルファ支援装置としての機能を有する。まず、図1のブロック図を用いてオフボードナビゲーション装置20の概略構成を説明する。」 (2)「【0036】 続くS130では、適したクラブの種類を算出する。適したクラブの種類の算出方法としては、クラブ毎にボールの到達距離範囲を定め、カップまでの距離がその到達距離範囲の中央値に最も近いクラブを適したクラブとする方法を取る。尚、中央値の代わりに最大値でも良い。」 (3)「【0043】 続くS230では、S200で取得した現在位置とS220で取得した指定位置との間の距離と高低差とを算出する。 続くS240では、S230で算出した距離と高低差とに基づいて適切なクラブの種類を選択する。選択方法については、「カップ方向表示処理」のS130で説明した方法に準ずる。 【0044】 続くS250では、S210で表示させたホールレイアウトに加え、S230で算出した距離と高低差と、S240で算出したクラブとを表示部27に表示させ、本処理を終了する。図6に表示例を示す。表示部27の上部にホールレイアウト71が表示され、カーソル73がオフボードナビゲーション装置20の現在位置を示し、黒点75が指定位置を示す。尚、カーソル73と黒点75とは直線で結ばれている。また、表示部27の下部にはメッセージ77が表示され、ゴルファに対する情報が表示される。本例では、「指定位置まで100ヤード、高低差+1m、8番アイアンが適しています」と表示されている。尚、メッセージ77の内容は、音声出力部28からも音声として出力される。」 上記の記載事項を総合すると、引用例4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。 「適したクラブの種類の算出方法として、クラブ毎にボールの到達距離範囲を定め、カップまでの距離がその到達距離範囲の中央値に最も近いクラブを適したクラブとする方法を取り、 現在位置と指定位置との間の距離と高低差とを算出し、 算出した距離と高低差とに基づいて適切なクラブの種類を選択し、 算出したクラブを表示部27に表示させる ゴルファ支援装置としての機能を有するオフボードナビゲーション装置20。」 5.引用例5について 同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2002-286837号公報(以下「引用例5」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1)「【請求項1】 電波の送信手段と受信手段からなる電波センサと、送信した信号と受信した信号の周波数の差分を検出する差分検出手段と、前記差分検出手段からの信号に基づいてスピードを演算する演算手段と、演算されたスピードのデータを表示する表示手段とを備えたスピード測定装置において、前記測定装置を被測定物へ取り付けるための固定治具を備えたことを特徴とする、スピード測定装置。」 (2)「【請求項6】 前記表示手段とデータの受信手段で構成される表示部と、前記スピード測定装置本体にデータの送信手段を備え、表示部と装置本体が分離独立していることを特徴とする、前記請求項第1項乃至5項項何れか記載のスピード測定装置。」 「【0033】図9は、本発明の第6の実施例を示す図である。図において、センサを含む装置本体41はゴルフクラブ13に取り付けられ、表示部39は腕時計に備えられている。こうすることにより、使用者16は表示を見る時に、クラブの先端を自分の前に引き寄せることなく、手元で確認することが出来、更に手の握り具合を変えることなく、スムーズに続けてスィングを行うことが出来るようになり、使い勝手が向上する。また、ランニングの場合でも、使用者は表示を見る時に腰に付けたセンサを含む装置本体を取り外すことなく、走るペースを乱すことなく、手元で確認することが出来るようになり、使い勝手が向上する。」 上記の記載事項を総合すると、引用例5には、次の事項(以下「引用例5記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「電波の送信手段と受信手段からなる電波センサと、送信した信号と受信した信号の周波数の差分を検出する差分検出手段と、前記差分検出手段からの信号に基づいてスピードを演算する演算手段と、演算されたスピードのデータを表示する表示手段とを備えたスピード測定装置において、 前記表示手段とデータの受信手段で構成される表示部と、前記スピード測定装置本体にデータの送信手段を備え、表示部と装置本体が分離独立し、 センサを含む装置本体41はゴルフクラブ13に取り付けられ、表示部39は腕時計に備えられている スピード測定装置。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 後者は「ゴルフコース最適攻略支援システム」であるから、後者の「コース」は前者の「ゴルフ場のコースレイアウト」に相当し、同様に、「現在位置(ボールの位置)」は「コースレイアウト上の地点」に相当する。 後者の「表示部108」は、その機能、作用等からみて、前者の「表示部」に相当する。 後者の「表示処理部107」は、コース情報格納部101に格納されているコースデータをもとにし、目標点が示されたコース状態を示す画像を生成し、これを表示部108に表示するから、ゴルフ場のコースレイアウトを表示部に表示する機能を有しているといえる。 後者においては、「目標点算出部105」は、予め設定されているゴルフボールの飛距離情報をもとに、現在位置(ボールの位置)からの到達可能領域を算出し、「分析処理部106」が、算出された到達可能領域とコースデータとを照合し、コースデータ内のフェアウエイおよびグリーンと目標の領域もしくはカップ近辺の領域との重なり領域を求め、目標点の候補領域とし、「分析処理部106」は、予め用意されているボールの打ち出し方向のぶれ幅を参照し、目標点の候補領域の中よりアドバイス可能な領域を抽出し、集合Pを求め、目標点の候補の集合(目標点の候補領域)と求めた集合Pとの積集合を、コースデータ内より抽出し、「分析処理部106」は、抽出した積集合の中より、現在位置とカップ位置とを結ぶ直線に最も近く、かつ、カップ位置に最も近くなる領域の中心点を目標点として決定するから、「目標点算出部105」及び「分析処理部106」は、「現在位置(ボールの位置)」及び「ゴルフボールの飛距離情報」を用いて「目標点」を決定しており、そのための機能を有しているといえる。また、後者の「表示処理部107」は、コース情報格納部101に格納されているコースデータをもとにし、目標点が示されたコース状態を示す画像を生成し、これを表示部108に表示するから、「目標点」を表示部108に表示しており、そのための機能を有しているといえる。そうすると、後者は、「現在位置(ボールの位置)」及び「ゴルフボールの飛距離情報」を用いて「目標点」を決定し、「目標点」を「表示部108」に表示する機能を有するといえるから、後者の当該機能と前者の「前記コースレイアウト上の地点を中心に、前記速度計測センサの出力に基づき求めた推定飛距離を半径とする円の円周上と前記コースレイアウトに設定された基準線との交点に基づいて決定した地点を表示する機能」とは「コースレイアウト上の地点及び飛距離を用いて決定した地点を表示する機能」との概念で共通する。 後者の「ゴルフコース最適攻略支援システム」と前者の「ゴルフ練習・支援装置」とは、「ゴルフ支援装置」との概念で共通する。 したがって、両者は、 「ゴルフ場のコースレイアウトを表示部に表示する機能と、 前記コースレイアウト上の地点及び飛距離を用いて決定した地点を表示する機能と、 を備えたゴルフ支援装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 前者が、「速度計測センサの出力に基づき推定飛距離を求めて表示する機能を備えた」ものであるのに対して、後者はそのようなものでない点。 [相違点2] 前者が、表示する地点を「コースレイアウト上の地点を中心に、速度計測センサの出力に基づき求めた推定飛距離を半径とする円の円周上と前記コースレイアウトに設定された基準線との交点に基づいて」決定するものであるのに対して、後者はそのようなものでない点。 [相違点3] 前者が、「ゴルフ練習・支援装置」であるのに対して、後者はそのようなものでない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点2について検討する。 ゴルフボールの速度を計測することで、ゴルフボールの飛距離を推定し、推定飛距離を表示することは、本願の原出願の優先日前に周知の技術事項である(以下「周知技術1」という。例えば、上記引用例2記載事項及び引用例3記載事項参照。)。 しかしながら、上記周知技術1は、推定飛距離を半径とする円を用いるものでも、コースレイアウト上に基準線を設定するものでもなく、これら両者を用いて、推定飛距離を半径とする円の円周上とコースレイアウトに設定された基準線との交点に基づいて地点を決定するものでもない。 そうすると、引用発明1に上記周知技術1を適用しても、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことではない。 また、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。 なお、表示部と速度計測センサを分離した構成とすることは、本願の原出願の優先日前に周知の技術事項である(以下「周知技術2」という。例えば、上記引用例2記載事項及び引用例5記載事項参照。)が、当該周知技術2も、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。また、引用発明4も、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではない。 そして、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えることによって、本願明細書に記載の「自動的にボールの停止位置を決定することができるので、ユーザはショットのたびに停止位置を指定しなくてよく簡便となる。」(段落【0022】)という作用効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、当業者が引用発明1及び周知技術1に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 2.本願発明2ないし8について 本願発明2ないし8は、本願発明1をさらに限定したものである。すると、本願発明2ないし8は、本願発明1と同様に、当業者が引用発明1及び4並びに周知技術1及び2に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1ないし8は、当業者が引用発明1及び4並びに周知技術1及び2に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-06-19 |
出願番号 | 特願2015-86457(P2015-86457) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A63B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 藤井 達也 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 森次 顕 |
発明の名称 | ゴルフ練習・支援装置及びプログラム |