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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1329514
審判番号 不服2015-10033  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-29 
確定日 2017-06-14 
事件の表示 特願2011-548286「半導体デバイス上に共形酸化物層を形成するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月 5日国際公開、WO2010/088348、平成24年 7月19日国内公表、特表2012-516577〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成22年(2010年)1月28日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2009年1月28日及び2010年1月22日,米国)とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成25年 1月25日 審査請求
平成26年 2月27日 拒絶理由通知
平成26年 6月18日 意見書・手続補正
平成27年 1月28日 拒絶査定
平成27年 5月29日 審判請求・手続補正
平成27年10月14日 上申書
平成28年 6月29日 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)
平成28年12月 1日 意見書・手続補正

2 本願発明について
(1)本願発明1について
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は,平成28年12月1日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものと認める。
「半導体基板上の酸化物層を加工処理する方法であって,
イオン発生領域を有するプラズマ反応チャンバ内の基板支持部上に酸化すべき基板を置くこと,
前記プラズマ反応チャンバ中にプロセスガスを導入すること,及び
-50℃?100℃の範囲内の温度で前記基板を積極的に冷却しながら,水平表面厚さ及び側壁厚さを有する酸化物層を前記基板上に形成するために,前記プラズマ反応チャンバの前記イオン発生領域内にプラズマを発生させること
を含み,
前記プラズマが2?20kHzでパルス化されて5%?20%のオンデューティサイクルであって,前記イオン発生領域は,基板の上方,2cmより大きく20cm以下の範囲内にある,方法。」
(2)引用文献1の記載と引用発明1
ア 引用文献1
当審拒絶理由で引用された特表2008-530783号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに次の記載がある。(下線は当審において付加した。以下同じ。)
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にトランジスタデバイスのゲートを製造する方法において,
プラズマリアクタの真空チャンバに前記基板を配置するステップと,
前記チャンバ内へ酸素を含むプロセスガスを導入するステップと,
連続した「オン」タイム中に前記真空チャンバ内のプラズマ生成領域にプラズマを生成し,制御可能なデューティーサイクルを画成する「オン」インターバル及び「オフ」インターバルのうちの,連続した「オン」インターバルを分離する連続した「オフ」インターバル中に,前記プラズマのイオンエネルギーが減衰するのを許容することにより,前記基板の表面に酸化物絶縁層を形成するステップと,
上記酸化物絶縁層を形成するステップ中に,前記絶縁層における欠陥の形成を制限するように前記デューティーサイクルを限定するステップと,
を備えた方法。
・・・
【請求項13】
前記基板を選択された温度より低く維持するステップを更に備えた,請求項1に記載の方法。」
(イ)「【0004】
[04]従って,均一な厚さを有し非常に高い品質(欠陥のない)の薄いゲート酸化物層を形成するための低温プロセスが必要とされている。」
(ウ)「【発明の詳細な説明】
【0006】
[22]図1は,本発明のゲート酸化物形成プロセスを実施するためのプラズマリアクタを例示している。このリアクタは,パルス化高周波電力発生器によって駆動される誘導結合プラズマ源電力アプリケーターを有している。このリアクタは,円筒状側壁部12及びドーム形状(図示されているような)であっても平坦状であってもよい天井部14を有するチャンバ10を含む。プラズマ源電力アプリケーターは,高周波電力発生器20及びこの発生器20の出力側にあって選択されたデューティーサイクルを有するパルス信号によって制御されるゲート22からなる高周波電力源へインピーダンス整合回路網18を介して結合される天井部14上のコイルアンテナ16からなる。このリアクタは,更に,半導体ウエハ27を保持するための静電チャックであってよいウエハ支持ペデスタル26,ガス注入システム28及びチャンバの内部に結合される真空ポンプ30を含む。ガス注入システム28は,酸素コンテナ32の如きプロセスガス源によって供給される。ウエハ支持ペデスタル26は,このウエハ支持ペデスタルの上面の下で半径方向において内側及び外側の加熱素子34a,34bを有する二重ラジアルゾーンヒータ34の如き加熱装置を含む。チャンバ圧力は,真空ポンプ30のスロットル弁38によって制御される。ゲート22でのパルス化高周波電力出力のデューティーサイクルは,出力がゲート22に結合されるパルス発生器36のデューティーサイクルを制御することにより制御される。プラズマは,コイルアンテナ16によって取り囲まれた天井部14の下の体積に相当するイオン発生領域39において生成される。」
(エ)「【0018】
[34]図1のコイルアンテナ16に印加される高周波電力をパルス化する効果について,図9に例示されている。この図9は,プラズマエネルギー(電子温度Te及びボルツマン定数kによって示されるような)の時間変化を示している。パルス化高周波電力の「オン」タイム中には,プラズマエネルギーは増大し,「オフ」タイム中には,プラズマエネルギーは減少する。各「オフ」タイム中には,最も速い電子がチャンバ壁部へ拡散し,プラズマが低温となる。短い「オン」タイム中には,コイルアンテナ16によって包囲される体積に概ね対応するイオン発生領域39にプラズマが生成される。図1に示されるように,このイオン発生領域39は,ウエハ27の上方,相当の距離L_(D)の高さとされている。「オン」タイム中に天井部14の近くのイオン発生領域に生成されたプラズマは,「オフ」タイム中にウエハ27の方へ平均速度V_(D)(図1)で浮動する。「オフ」タイム中には,最もエネルギーを持った電子がプラズマイオン浮動速度V_(D)よりもはるかに速い速度でチャンバ壁部へ拡散していく。従って,「オフ」タイム中には,プラズマイオンエネルギーは,それらイオンがウエハ27に達する前に相当に減少する。次の「オン」タイム中に,イオン発生領域にさらなるプラズマが生成され,このような全サイクルが繰り返される。その結果として,ウエハ27に達するプラズマイオンのエネルギーは,相当に減少させられる。このことは,図10のグラフに示されており,このグラフでは,パルス化高周波源電力の場合(「パルス化高周波」とラベル付けされた曲線)及び連続高周波源電力の場合(「連続高周波」とラベル付けされた曲線)について,ウエハ27の表面でのプラズマエネルギーが,異なるリアクタチャンバ圧力に亘ってプロットされている。チャンバ圧力のより低い範囲(より望ましい),即ち,10mTあたりからそれより下では,パルス化高周波の場合のプラズマエネルギーは,連続高周波の場合のそれより大きく減少されている。図6のパルス化高周波電力波形の「オフ」タイムTF及びイオン発生領域39とウエハ27との間の距離L_(D)は,共に,そのイオン発生領域に生成されたプラズマがウエハに達するときにイオン衝撃損傷又は欠陥をほとんど又は全く生じないようにするに十分な量のエネルギーを失うに十分なものとされていなければならない。詳述するに,この「オフ」タイムTFは,約2kHzと20kHzとのあいだのパルス周波数及び約5%と20%との間の「オン」デューティーサイクルにより定義されている。1つの実施においては,このイオン発生領域とウエハとの距離L_(D)は,約2cm又は3cmの程度である。このイオン発生領域とウエハとの距離L_(D)は,パルス化高周波電力波形の単一「オフ」タイム中にプラズマイオンが進む距離V_(D)×T_(F)とほぼ同じ(又はそれより大きい)であってよい。」
(オ)「【0026】
[42]図15は,半導体基板上にゲート電極を形成するための本発明の方法による酸化プロセスにおける一連のステップのブロック図である。第1のステップは,プラズマリアクタの真空チャンバに基板を配置することである(図15のブロック110)。次のステップは,チャンバの真空圧力を維持しながら酸素を含むプロセスガスをチャンバ内へ導入することである(図15のブロック112)。絶縁ゲート酸化物層40を形成するため,チャンバのイオン発生領域にプラズマが生成される(ブロック114)。このステップは,次のようなサブステップを含む。
【0027】
(a)イオン発生領域と基板との間に距離Lの分離を維持するサブステップ(図15のブロック114-1),
(b)連続した「オン」タイム中にのみプラズマ源電力を印加してプラズマを生成し,
次いで,制御可能なデューティーサイクルを画成する「オン」インターバル及び「オフ」インターバルのうちの,連続した「オン」インターバルを分離する連続した「オフ」インターバル中に,上記プラズマのイオンエネルギーが減衰するのを許容するサブステップ(ブロック114-2),
(c)絶縁層におけるイオン衝撃による欠陥の形成を制限するように上記デューティーサイクルを限定するサブステップ(ブロック114-3),及び
(d)絶縁層における汚染による欠陥の形成を制限するようにチャンバの真空圧力を限定するサブステップ(図15のブロック114-4)。」
(カ)「【0022】
[38]パルス化高周波プラズマ酸化プロセスの驚くべき効果は,ゲート絶縁厚さの均一性が大きく改善されるということである。連続高周波源電力の場合には,ウエハに亘る二酸化シリコン厚さの分散は,約1%又はそれより大きかった(約700℃という高い温度で実施されたとき)。本発明によってパルス化高周波源電力を使用するとき,二酸化シリコン厚さの分散は,同じ温度で僅か0.16%まで減少され,低いウエハ温度(30℃)で0.46%まで減少され,どちらも劇的な改善である。」
イ 前記アより,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「半導体基板上にゲート電極を形成するための酸化プロセスにおいて,
プラズマリアクタのチャンバ内のウエハ支持ペデスタルに基板を配置すること,
チャンバの真空圧力を維持しながら酸素を含むプロセスガスをチャンバ内へ導入すること,
絶縁ゲート酸化物層を形成するため,チャンバのイオン発生領域にプラズマが生成されること,を備え
コイルアンテナに印加される高周波電力はパルス化されており,約2kHzと20kHzとのあいだのパルス周波数及び約5%と20%との間のオンデューティーサイクルであって,イオン発生領域と基板との間に距離Lの分離を維持する方法。」
(3)引用文献2の記載と引用発明2
ア 引用文献2
当審拒絶理由で引用された特開平5-160112号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法,更に詳しくはECR(Electron Cyclotron Resonance:電子サイクロトロン共鳴)により発生させた水素ガスプラズマ及び残存水分子を用いて30℃以下の低温でプラズマ処理する装置,及びこの装置を使用して試料例えば半導体基板などの表面をプラズマ処理する方法に関するものである。」
(イ)「【0006】本発明は前記従来技術の問題点を解決するためのものであり,その目的とするところを例示すると以下の如くである。
1)通常熱酸化処理が行われている温度1000℃程度よりも更に低温で,具体的には30℃以下で半導体基板表面の処理を行うこと。
2)熱酸化法で均一な酸化膜が得られる酸化膜厚以下の厚さの酸化膜,具体的には10nm程度以下の均一な酸化膜を得ること。
3)酸化時間の短縮,具体的には数分の酸化処理で極薄酸化膜を得ること。
4)極薄酸化膜の作製を容易にし,且つ酸化膜厚の制御を可能にすること。
5)酸化膜を形成する際の半導体基板の損傷を防ぐこと。」
(ウ)「【0021】
【実施例】以下の実施例及び比較例により,本発明を更に詳細に説明する。なお,説明の便宜上下記実施例は全てシリコンウエハ基板の酸化処理に関するものであるが,本発明は他の材料からなる基板の酸化処理にも適用し得るものであることは勿論である。
【0022】実施例
図1に,本発明のプラズマ処理装置の一実施例を示す。この装置は,マイクロ波発生器10から供給されたマイクロ波と空芯磁場コイル8により発生した磁場による電子サイクロトロン共鳴を利用してプラズマを発生させるプラズマ発生部1,プラズマ発生部1からプラズマ流が導入されるプラズマ反応部2,プラズマ反応部2に接続されプラズマ反応部2内に水分子を供給する水分子供給部11,プラズマ反応部2内に水素ガスを導入するための水素ガス導入管9,プラズマ反応部2内に設置されたシリコンウエハ基板5を固定するための試料処理部4,試料処理部4の温度を調整する液体窒素を導入するための液体窒素導入管6,試料処理部4に電位を印加するための電源部7及び前記プラズマ発生部1及びプラズマ反応部2を高真空に保つためのポンプを備えた排気部3からなり,更に所望により所定箇所にプラズマガス圧力測定用プローブ,プラズマ電子温度測定用プローブ,プラズマ電子密度測定用プローブ,試料基板温度計等の計測器及びコンピューター等の解析機器,並びに水分子計測用の質量分析器(これらは図示せず)を備えている。
【0023】図2は図1に示す本発明装置のプラズマ反応部2内に水分子供給部11から水分子を導入し,その後圧力を0.13Paまで排気したときの質量分析結果を示す図である。プラズマ反応部2内には主に質量18のピークに見られる如く残存水分子が観察され,その量は10^(10)個/cm^(3) 程度に達する。次に,このプラズマ反応部2内に水素ガス導入管9から水素ガスを圧力が1.3Paになるまで導入した。更に,プラズマ発生部1に875ガウスの磁場と2.45GHzのマイクロ波を付与していわゆる電子サイクロトロン共鳴プラズマを発生させた。試料処理部4には,図1に示す如くプラズマ流が当たる面と反対側の面に予めシリコンウエハ基板5を取り付けた。又,試料処理部4はプラズマ反応部2とは絶縁されており,電源部7によって直流電位が印加できる構造になっている。
【0024】図3に,図1及び図2で示すプラズマ処理条件下でシリコンウエハ基板5を3分間処理する時,シリコンウエハ基板5に電位を印加した場合のシリコンウエハ基板5の損傷についての結果を示す。なお,シリコンウエハ基板5の損傷は電子チャンネリングパターンの強度変化から求めている。この時のプラズマ反応部2のプラズマポテンシャルは20V程度であり,これ以上の電位をシリコンウエハ基板5に印加することにより損傷を抑えることができる。しかし60V以上の電位をシリコンウエハ基板5に印加すると電子衝突などによる影響でシリコンウエハ基板5の温度上昇があり,低温プラズマ酸化という本発明の目的を達成できない。したがって,シリコンウエハ基板5を損傷させることなくプラズマ酸化を行うためにはシリコンウエハ基板5に印加する電位を20Vから50Vの範囲としてプラズマ酸化を行うことが望ましい。
【0025】図4は図3で説明したプラズマ処理条件のうち,シリコンウエハ基板5の電位を50Vにしてプラズマによるシリコンウエハ基板の損傷がない条件で処理が行えるようにして,更に試料処理部4に液体窒素導入管6から液体窒素を導入することによりシリコンウエハ基板5の基板温度を低温具体的には-100℃にした場合のプラズマ酸化膜の作製に関してプラズマ処理時間の効果を見たものである。このような条件で低温プラズマ酸化処理する場合は,10分以下の処理時間で膜厚10nm以下のプラズマ酸化膜を作製できることが確認された。」
イ 前記アより,引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「シリコンウエハ基板上にプラズマ酸化膜を作製する方法であって,液体窒素を導入することによりシリコンウエハ基板の基板温度を-100℃にして極薄酸化膜を作製する方法。」
(4)引用文献3の記載及び引用発明3
ア 引用文献3
当審拒絶理由で引用された国際公開第2007/090856号(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(当審注。訳は,対応する日本出願の公表公報(特表2009-526390号公報)による。)
(ア)「Figures 5A-5M illustrate the exemplary processing steps for forming a CMOS circuit that contains a p-FET and an n-FET with hybrid channel orientations, according to one embodiment of the present invention.
...
A gate dielectric layer 106 is formed over the substrate 102. The gate dielectric layer 106 can be formed by a thermal growing process such as, for example, oxidation, nitridation or oxynitridation . Alternatively, the gate dielectric layer 106 can be formed by a deposition process such as, for example, chemical vapor deposition (CVD) , plasma-assisted CVD, atomic layer deposition (ALD) , evaporation, reactive sputtering, chemical solution deposition and other like deposition processes. The gate dielectric layer 106 may also be formed utilizing any combination of the above processes.
The gate dielectric layer 106 is comprised of an insulating material including, but not limited to: an oxide, nitride, oxymtride and/or silicate including metal silicates and mtrided metal silicates. In one embodiment, it is preferred that the gate dielectric layer 106 is comprised of an oxide such as, for example, SiO_( 2) , HfO_( 2) , ZrO_( 2) , Al _(2) O _(3) , TiO _(2) , La _(2) O _(3) , SrTiO _(3) , LaAlO _(3) , and mixtures thereof.」(14頁4-30行)
(訳:図5A?図5Mは,本発明の一実施形態に従った,ハイブリッド・チャネル配向を伴うp-FETおよびn-FETを含むCOMS回路を形成するために使用される,例示的処理ステップを示す。
・・・
基板102を覆ってゲート誘電体層106が形成される。ゲート誘電体層106は,たとえば酸化,窒化,酸窒化(oxynitridation)などの,熱成長プロセスによって形成することができる。別の方法として,ゲート誘電体層106は,たとえば化学気相堆積(CVD),プラズマ支援CVD,原子層堆積(ALD),蒸着,反応性スパッタリング,化学溶液堆積,および他の堆積プロセスなどの,堆積プロセスによって形成することができる。ゲート誘電体層106は,上記プロセスの任意の組み合わせを使用して形成することもできる。
ゲート誘電体層106は,酸化物,窒化物,酸窒化物,あるいは,金属ケイ酸塩および窒化金属ケイ酸塩を含むケイ酸塩,またはそれらすべてを含む,絶縁材料からなるが,これらに限定されることはない。一実施形態では,ゲート誘電体層106は,たとえばSiO_(2),HfO_(2),ZrO_(2),Al_(2)O_(3),TiO_(2),La_(2)O_(3),SrTiO_(3),LaAlO_(3),およびそれらの混合物などの,酸化物からなることが好ましい。)
(イ)「Additional gate dielectric layers 116 and 118 are then formed over the recesses 110 and 114, as shown in Figure 5J, using a process similar to that described hereinabove for forming the gate dielectric layer 106. 」(17頁4-6行)
(訳:その後,図5Jに示されるように,ゲート誘電体層106を形成するために上記に記載したものと同様のプロセスを使用して,凹部110および114を覆って追加のゲート誘電体層116および118が形成される。)
(ウ)図5Jには,基板102の凹部の底面及び側面にゲート誘電体層116が形成されることが記載されている。
イ 引用発明3
前記アより,引用文献3には次の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「基板の凹部の底面及び側面に酸化物ゲート誘電体層を酸化により形成する方法。」
(5)本願発明1と引用発明1との対比
引用発明1における「半導体基板上にゲート電極を形成するための酸化プロセス」は具体的には「絶縁ゲート酸化物層を形成する」ものであるから,本願発明1の「半導体基板上の酸化物層を加工処理する方法」に相当すると認められる。
引用発明1において「チャンバのイオン発生領域にプラズマが生成される」から,引用発明1の「プラズマリアクタのチャンバ内のウエハ支持ペデスタルに基板を配置すること」は,本願発明1の「イオン発生領域を有するプラズマ反応チャンバ内の基板支持部上に酸化すべき基板を置くこと」に相当すると認められる。
引用発明1の「チャンバの真空圧力を維持しながら酸素を含むプロセスガスをチャンバ内へ導入すること」は,本願発明1の「前記チャンバ中にプロセスガスを導入すること」に相当すると認められる。
引用発明1の「絶縁ゲート酸化物層を形成するため,チャンバのイオン発生領域にプラズマが生成されること」は,本願発明1の「酸化物層を前記基板上に形成するために,前記プラズマ反応チャンバの前記イオン発生領域内にプラズマを発生させること」に相当すると認められる。
引用発明1における「コイルアンテナに印加される高周波電力はパルス化されており,約2kHzと20kHzとのあいだのパルス周波数及び約5%と20%との間のオンデューティーサイクルであって」は,コイルアンテナの電力でプラズマが生成される(前記(2)ア(エ))から,本願発明1の「前記プラズマが2?20kHzでパルス化されて5%?20%のオンデューティサイクルであって」に相当すると認められる。
引用発明1において「イオン発生領域と基板との間に距離Lの分離」の距離Lは具体的には「約2cm又は3cmの程度である」ことが開示されている(前記(2)ア(エ)参照。)から,引用発明1における「距離L」は,本願発明1における「前記イオン発生領域は,基板の上方,2cmより大きく20cm以下の範囲内にある」を満たすものである。
すると,本願発明1と引用発明1とは,下記アの点で一致し,下記イの点で相違すると認められる。
ア 一致点
「半導体基板上の酸化物層を加工処理する方法であって,
イオン発生領域を有するプラズマ反応チャンバ内の基板支持部上に酸化すべき基板を置くこと,
前記チャンバ中にプロセスガスを導入すること,及び
酸化物層を前記基板上に形成するために,前記プラズマ反応チャンバの前記イオン発生領域内にプラズマを発生させること
を含み,
前記プラズマが2?20kHzでパルス化されて5%?20%のオンデューティサイクルであって,前記イオン発生領域は,基板の上方,2cmより大きく20cm以下の範囲内にある,方法。」
イ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1においては「-50℃?100℃の範囲内の温度で前記基板を積極的に冷却しながら」プラズマを発生させるのに対し,引用発明1においては半導体基板を積極的に冷却することは開示されていない点。
(イ)相違点2
本願発明1においては「水平表面厚さ及び側壁厚さを有する酸化物層」を形成するのに対し,引用発明1における酸化物絶縁層は水平表面厚さ及び側壁厚さを有することは開示されていない点。
(6)相違点についての検討
ア 相違点1について
引用発明1は「均一な厚さを有し非常に高い品質の薄いゲート酸化物層を形成するために低温プロセス」を実現するもので(前記(2)ア(イ)),引用文献1には「基板を選択された温度より低く維持する」こと(前記(2)ア(ア)),具体的に「30℃の低いウエハ温度」とすること(前記(2)ア(カ))が開示されているから,引用文献1には半導体基板を30℃に維持することが示唆されているといえる。
そして,引用文献2には「シリコンウエハ基板上にプラズマ酸化膜を作製する方法であって,液体窒素を導入することによりシリコンウエハ基板の基板温度を-100℃にして極薄酸化膜を作製する方法。」が記載されているから,当業者が上記示唆に基づいて引用発明2を参照して,薄い酸化膜を作製するために半導体基板を冷媒により積極的に冷却するようにすることは,当業者が容易に想到することであり,この際に,例えば30℃の温度を実現するために冷媒の種類や冷却効率を適宜設計することは,当業者が容易になし得ることである。
イ 相違点2について
引用発明1は均一な厚さを有し非常に高い品質の薄いゲート酸化物層を形成するもの(前記(2)ア(イ))であるから,一般にゲート酸化物層を形成する酸化方法に求められる課題を解決するものであるところ,ゲート酸化物層の形成では,基板に凹部がある場合,凹部の底面や側面を酸化する必要性があることは,引用発明3に示唆されている。してみると引用発明1を引用発明3のような基板に凹部がある場合の酸化物ゲート誘電体層を酸化により形成する方法に適用して,一般的な課題を解決しようとすることは当業者が容易に想到することである。また,トランジスタの形成では,半導体基板上に凹部を設けてゲートを形成することは広く行われているところ,ゲート酸化物層の形成では,基板に凹部がある場合,凹部の底面や側面を酸化する必要性があることは,引用発明3に示唆されている。
すると,引用発明1において,凹部がある基板に対してもゲート酸化物層を形成すること,その際に凹部の底面や側面にも均一の厚さを有し,非常に高い品質の薄い酸化物層を形成することで,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。
(7)本願発明1の効果について
本願発明1の効果は,引用発明1ないし3の構成から当業者が予測できるものであり,格別のものではない。
(8)まとめ
したがって,本願発明1は,引用発明1ないし3に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 結言
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-13 
結審通知日 2017-01-17 
審決日 2017-01-30 
出願番号 特願2011-548286(P2011-548286)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 雄一  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 深沢 正志
河口 雅英
発明の名称 半導体デバイス上に共形酸化物層を形成するための方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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