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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1329532
審判番号 不服2016-4188  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-18 
確定日 2017-06-14 
事件の表示 特願2014-171371「携帯端末装置及びその測位結果取得間隔設定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月 5日出願公開、特開2015- 25810〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成20年2月6日を出願日(優先権主張 平成19年2月7日(以下、「優先日」という。) 日本)とする特願2008-558062号の一部を、平成26年8月26日に特許法第44条第1項の規定により新たな特許出願(特願2014-171371号)としたものであって、平成27年4月24日付けで拒絶理由が通知され、同年7月22日付けで明細書及び特許請求の範囲についての補正(以下、「補正1」という。)がなされ、同年12月16日付け(送達日:同年同月22日)で拒絶査定がなされた。
これに対し、平成28年3月18日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、明細書、特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。

第2 補正却下の決定
[結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を次のとおり補正することを含むものである。

(本件補正前)
「【請求項1】
使用者に携帯される携帯端末装置において、
当該携帯端末装置の現在位置を測位する測位手段と、
前記測位手段から測位結果を間欠的に取得するマイクロプロセッサと、
当該携帯端末装置の電源としての電池と、
前記電池の電力残量を検出する電池残量検出手段と、
前記電池の電力残量と、前記マイクロプロセッサが前記測位手段から測位結果を取得する時間間隔と、を対応付けて記憶した記憶手段と、
を備え、
前記マイクロプロセッサは、前記電池残量検出手段による検出結果が小さい残量を示すときの方が、該検出結果が大きい残量を示すときよりも、前記測位手段から測位結果を取得する時間間隔が長くなるように、前記電力残量に応じた前記時間間隔の切り替えを行い、
前記マイクロプロセッサは、前記記憶手段を参照することにより、前記電力残量に応じた前記時間間隔に設定することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記マイクロプロセッサは、前記測位手段から新たに取得した測位結果が示す現在位置が、前回取得した測位結果が示す現在位置から離れていた場合に、新たに取得した測位結果が示す現在位置と対応する地図情報を通信網を介して取得することを特徴とする請求項1記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記測位手段は、常に一定の時間間隔で当該携帯端末装置の現在位置を測位し、前記マイクロプロセッサから測位結果の取得要求を受けた場合には最新の測位結果を前記マイクロプロセッサに出力することを特徴とする請求項1又は2記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記測位手段は、前記マイクロプロセッサから測位結果の取得要求を受けた場合に、当該携帯端末装置の現在位置を測位し、その測位結果を前記マイクロプロセッサに出力することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の携帯端末装置。
【請求項5】
前記測位手段はGPS方式で当該携帯端末装置の現在位置を測位することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の携帯端末装置。
【請求項6】
当該携帯端末装置は携帯電話機であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の携帯端末装置。
【請求項7】
現在位置を測位する測位手段と、前記測位手段から測位結果を間欠的に取得するマイクロプロセッサと、を備え、使用者に携帯される携帯端末装置において、前記マイクロプロセッサが前記測位手段から測位結果を取得する時間間隔を設定する方法であって、
前記携帯端末装置が電源として備える電池の電力残量を検出する第1の過程と、
前記第1の過程による検出結果が小さい残量を示すときの方が、該検出結果が大きい残量を示すときよりも、前記マイクロプロセッサが前記測位手段から測位結果を取得する時間間隔が長くなるように、前記電力残量に応じて前記時間間隔を設定する第2の過程と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置における測位結果取得間隔設定方法。」

(本件補正後)
「【請求項1】
使用者に携帯される携帯端末装置において、
当該携帯端末装置の現在位置を測位する測位手段と、
前記測位手段から測位結果を間欠的に取得するマイクロプロセッサと、
当該携帯端末装置の電源としての電池と、
前記電池の電力残量を検出する電池残量検出手段と、
前記電池の電力残量と、前記マイクロプロセッサが前記測位手段から測位結果を取得する時間間隔と、を対応付けて記憶した記憶手段と、
を備え、
前記マイクロプロセッサは、前記電池残量検出手段による検出結果が小さい残量を示すときの方が、該検出結果が大きい残量を示すときよりも、前記測位手段から測位結果を取得する時間間隔が長くなるように、前記電力残量に応じた前記時間間隔の切り替えを行い、
前記マイクロプロセッサは、前記記憶手段を参照することにより、前記電力残量に応じた前記時間間隔に設定し、
前記測位手段は、前記携帯端末装置の現在位置をGPS方式で測位するGPSモジュール、前記携帯情報端末装置の現在位置を前記携帯端末装置の移動速度に基づいて演算する加速度センサであって、
前記加速度センサは、前記携帯端末装置の現在位置を継続的に演算することを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
現在位置をGPS方式で測位するGPSモジュールと、現在位置を携帯端末装置の移動速度に基づいて演算する加速度センサと、前記GPSモジュールから測位結果を間欠的に取得するとともに、前記加速度センサにより演算された演算結果を取得するマイクロプロセッサと、を備え、使用者に携帯される携帯端末装置において、前記マイクロプロセッサが前記測位手段から測位結果を取得する時間間隔を設定する方法であって、
前記携帯端末装置が電源として備える電池の電力残量を検出する第1の過程と、
前記第1の過程による検出結果が小さい残量を示すときの方が、該検出結果が大きい残量を示すときよりも、前記マイクロプロセッサが前記測位手段から測位結果を取得する時間間隔が長くなるように、前記電力残量に応じて前記時間間隔を設定する第2の過程と、
前記加速度センサに前記携帯端末装置の現在位置を継続的に演算させる第3の過程と
を備えることを特徴とする携帯端末装置における測位結果取得間隔設定方法。」
(下線は補正箇所。)

2 新規事項
本件補正後の請求項2に記載された「現在位置をGPS方式で測位するGPSモジュールと、現在位置を携帯端末装置の移動速度に基づいて演算する加速度センサと、前記GPSモジュールから測位結果を間欠的に取得するとともに、前記加速度センサにより演算された演算結果を取得するマイクロプロセッサと、を備え」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下。「当初明細書等」という。)に記載されていない。
審判請求書の【請求の理由】「(3)本願発明が特許されるべき理由」「(b)補正の根拠の明示」において、請求人が補正の根拠として挙げる当初明細書等の明細書段落【0101】には「また、上記の各実施形態では、GPS方式で携帯端末装置(携帯電話機)の現在位置を測位する例を説明したが、その他の方式で測位を行うようにしても良い。具体的には、例えば、携帯端末装置の周辺に存在する複数の基地局の位置情報に基づいて携帯端末装置の現在位置を演算により求めたり、或いは、加速度センサによる検出結果に基づいて携帯端末装置の現在位置を継続的に演算しても良い」と記載されているのみであり、「前記GPSモジュールから測位結果を間欠的に取得するとともに、前記加速度センサにより演算された演算結果を取得する」こと、すなわち、「加速度センサによる位置情報の測位とGPS方式による位置情報の測位とを併用すること」(審判請求書の【請求の理由】「(3)本願発明が特許されるべき理由」「(d)本願発明と引用発明との対比」:下線は、当審が引いた。)は記載されていない。
そうすると、本件補正のうち、請求項2(本件補正前の請求項7に対応する)についてした補正は、当初明細書等の記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において、新たな技術事項を導入するものであるから、本件補正は、当初明細書等の記載の範囲内においてしたものとはいえない。

3 まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、補正1によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項7に係る発明は次のとおりである。

「現在位置を測位する測位手段と、前記測位手段から測位結果を間欠的に取得するマイクロプロセッサと、を備え、使用者に携帯される携帯端末装置において、前記マイクロプロセッサが前記測位手段から測位結果を取得する時間間隔を設定する方法であって、
前記携帯端末装置が電源として備える電池の電力残量を検出する第1の過程と、
前記第1の過程による検出結果が小さい残量を示すときの方が、該検出結果が大きい残量を示すときよりも、前記マイクロプロセッサが前記測位手段から測位結果を取得する時間間隔が長くなるように、前記電力残量に応じて前記時間間隔を設定する第2の過程と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置における測位結果取得間隔設定方法。」(以下、「本願発明」という。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、この出願の請求項7に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である特開2004-233150号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。

3 引用例記載の事項・引用発明
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例(特開2004-233150号公報)には、図面とともに、次の事項(a)ないし(c)が記載されている。なお、下線は当審が付与した。

(a)
「[第2の実施形態]
図5は、本実施形態の携帯電話の構成を示す。図5に示す携帯電話1aは、前述した第1の実施形態と同様の構成、すなわちバス10に接続されたCPU11、ROM12、RAM13、ユーザ入力部14、携帯電話無線部15、GPSブロック18(GPSデコーダ16、GPS無線部17)、及び電源ブロック21(電源制御部19、バッテリ20)に加え、タイマ23を追加したものである。また、ROM12には、GPSブロック18により実行される所定の時間間隔毎の連続測位、すなわちインターバル測位を制御するための制御プログラム12bが格納されている。」

(b)
「【0049】
図6は、本実施形態におけるバッテリ電圧と上記連続測位の間隔との関係を説明するものである。
【0050】
図6において、本実施形態は、バッテリ電圧に基づいて電圧レベルを3つに分け、所定の時間間隔毎の測位、すなわちインターバル測位を行う場合に、それぞれの電圧レベルに応じて測位間隔を変更するものである。具体的には、バッテリ電圧Vがx以上(V≧x)のときは、あらかじめ設定する測位間隔を維持し、バッテリ電圧Vがxより小さく且つy以上(x>V≧y)のときは、測位間隔がC時間より短く設定されていればその測位間隔をC時間に変更し、C時間より長く設定されていればその測位間隔を維持し、バッテリ電圧Vがyより小さい(y>V)場合は、測位間隔がD時間より短く設定されていればその測位間隔をD時間に変更し、D時間より長く設定されていればその測位間隔を維持する(y>Vの場合、あらかじめ設定した測位間隔に係わらずD時間に変更してもよい)。ここでは、C時間、D時間を具体的には定めないが、D>Cとする。」

(c)
「【0051】
図7は、本実施形態の動作を説明するフローチャートである。図7に示す処理は、CPU11がROM12に格納された制御プログラム12bを実行することにより行われる。
【0052】
まず、ユーザ入力部14によりインターバル測位の開始要求が出され(ステップS21)、インターバル測位終了条件および測位間隔の設定(ステップS22)が行われる。その設定後、GPS無線部17によりGPS電波信号が受信され測位が行われる(ステップS23)。これで受信された電波信号から、GPSデコーダ16によるデコード処理により現在地の緯度、経度データが得られる。CPU11は、得られた現在地の緯度、経度データを確認し、RAM13に保持し(ステップS24)、測位結果として表示部22等に出力する(ステップS25)。
【0053】
測位結果を出力後、CPU11は、電源制御部19を通してバッテリ20のバッテリ電圧Vを確認し(ステップS26)、バッテリ電圧Vがx以上(V≧x)か否かを判定する(ステップS27)。その結果、YES(V≧xである)の場合は、バッテリ電圧レベルは十分に残っていると判断し、現在の測位間隔の設定を変更することなく、インターバル測位の終了条件の満了判定を行う(ステップS28)。その結果、YES(終了条件を満たしている)の場合はインターベル測位を終了し、NO(終了条件を満たしていない)の場合はタイマ23の計時をスタートさせ(ステップS29)、タイムアウトか否かを判定する(ステップS30)。その結果、YES(タイムアウトである)と判定されると、ステップS23に戻り再び測位を開始し、以後、上記と同様の処理を繰り返し実行する。
【0054】
一方、上記ステップS27の判定にてNO、すなわちバッテリ電圧Vがxより小さい(V<x)場合は、CPU11は、バッテリ電圧Vがxより小さくy以上(x>V≧y)かを判定する(ステップS31)。その結果、YES(x>V≧yである)であれば、さらにインターバル測位の測位間隔がC時間より短く設定されいるか否かを判定する(ステップS32)。その結果、YES(C時間より短い)であれば、測位間隔をC時間に変更し(ステップS33)、上記ステップS28以降の処理に移行すると共に、NO(C時間より短くない)であれば、そのまま上記ステップS28以降の処理に移行する。
【0055】
また、上記ステップS31の判定にてNO、すなわちバッテリ電圧Vがxより小さくy以上(x>V≧y)の範囲に入っていない場合は、さらに測位間隔がD時間より短く設定されているか否かを判定する(ステップS35)。その結果、YES(D時間より短い)であれば、測位間隔をD時間に変更し(ステップS35)、上記ステップS28以降の処理に移行すると共に、NO(D時間より短くない)であれば、そのまま上記ステップS28以降の処理に移行する。
【0056】
従って、本実施形態によれば、GPS機能を用いてインターバル測位を行う場合であっても、バッテリ残量に応じてインターバル測位の測位間隔を変更するため、長時間にわたる測位間隔の短いインターバル測位を実行することも可能となり、測位によってバッテリ寿命が極端に短くなるといった不都合も回避できる。」

・上記記載(a)より、
ア 「バス10に接続されたCPU11と、GPSブロック18(GPSデコーダ16、GPS無線部17)と、を備える、携帯電話」との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(b)より、測位間隔のC時間とD時間の関係について
イ 「D>Cとする」との技術的事項が読み取れる。

・上記記載(c)より、
ウ 「CPU11がROM12に格納された制御プログラム12bを実行することにより、
ユーザ入力部14によりインターバル測位の開始要求が出され(ステップS21)、インターバル測位終了条件および測位間隔の設定(ステップS22)が行われ、その設定後、GPS無線部17によりGPS電波信号が受信され測位が行われ(ステップS23)、受信された電波信号から、GPSデコーダ16によるデコード処理により現在地の緯度、経度データが得られ、CPU11は、得られた現在地の緯度、経度データを確認し、RAM13に保持し(ステップS24)、測位結果を出力後、CPU11は、電源制御部19を通してバッテリ20のバッテリ電圧Vを確認し(ステップS26)、バッテリ電圧Vがx以上(V≧x)か否かを判定し(ステップS27)、YES(V≧xである)の場合は、バッテリ電圧レベルは十分に残っていると判断し、現在の測位間隔の設定を変更することなく、インターバル測位の終了条件の満了判定を行い(ステップS28)、NO(終了条件を満たしていない)の場合はタイマ23の計時をスタートさせ(ステップS29)、タイムアウトか否かを判定し(ステップS30)、YES(タイムアウトである)と判定されると、ステップS23に戻り再び測位を開始し、以後、上記と同様の処理を繰り返し実行し、上記ステップS27の判定にてNO、すなわちバッテリ電圧Vがxより小さい(V<x)場合は、CPU11は、バッテリ電圧Vがxより小さくy以上(x>V≧y)かを判定し(ステップS31)、YES(x>V≧yである)であれば、さらにインターバル測位の測位間隔がC時間より短く設定されいるか否かを判定し(ステップS32)、YES(C時間より短い)であれば、測位間隔をC時間に変更し(ステップS33)、上記ステップS28以降の処理に移行し、また、上記ステップS31の判定にてNO、すなわちバッテリ電圧Vがxより小さくy以上(x>V≧y)の範囲に入っていない場合は、さらに測位間隔がD時間より短く設定されているか否かを判定し(ステップS35)、YES(D時間より短い)であれば、測位間隔をD時間に変更し(ステップS35)、上記ステップS28以降の処理に移行する、
という処理が行われ、バッテリ残量に応じてインターバル測位の測位間隔を変更する、処理方法」との技術的事項が読み取れる。

(2)引用発明
以上の技術的事項アないしウを総合勘案すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。

「バス10に接続されたCPU11と、GPSブロック18(GPSデコーダ16、GPS無線部17)と、を備える、携帯電話において、
CPU11がROM12に格納された制御プログラム12bを実行することにより、
ユーザ入力部14によりインターバル測位の開始要求が出され(ステップS21)、インターバル測位終了条件および測位間隔の設定(ステップS22)が行われ、その設定後、GPS無線部17によりGPS電波信号が受信され測位が行われ(ステップS23)、受信された電波信号から、GPSデコーダ16によるデコード処理により現在地の緯度、経度データが得られ、CPU11は、得られた現在地の緯度、経度データを確認し、RAM13に保持し(ステップS24)、測位結果を出力後、CPU11は、電源制御部19を通してバッテリ20のバッテリ電圧Vを確認し(ステップS26)、バッテリ電圧Vがx以上(V≧x)か否かを判定し(ステップS27)、YES(V≧xである)の場合は、バッテリ電圧レベルは十分に残っていると判断し、現在の測位間隔の設定を変更することなく、インターバル測位の終了条件の満了判定を行い(ステップS28)、NO(終了条件を満たしていない)の場合はタイマ23の計時をスタートさせ(ステップS29)、タイムアウトか否かを判定し(ステップS30)、YES(タイムアウトである)と判定されると、ステップS23に戻り再び測位を開始し、以後、上記と同様の処理を繰り返し実行し、上記ステップS27の判定にてNO、すなわちバッテリ電圧Vがxより小さい(V<x)場合は、CPU11は、バッテリ電圧Vがxより小さくy以上(x>V≧y)かを判定し(ステップS31)、YES(x>V≧yである)であれば、さらにインターバル測位の測位間隔がC時間より短く設定されいるか否かを判定し(ステップS32)、YES(C時間より短い)であれば、測位間隔をC時間に変更し(ステップS33)、上記ステップS28以降の処理に移行し、また、上記ステップS31の判定にてNO、すなわちバッテリ電圧Vがxより小さくy以上(x>V≧y)の範囲に入っていない場合は、さらに測位間隔がD時間より短く設定されているか否かを判定し(ステップS35)、YES(D時間より短い)であれば、測位間隔をD時間に変更し(ステップS35)、上記ステップS28以降の処理に移行する(D>Cとする)、
という処理が行われ、バッテリ残量に応じてインターバル測位の測位間隔を変更する、CPU11での処理の方法」(以下、「引用発明」という。)

4 対比・判断
(1)本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明においては、「受信された電波信号から、GPSデコーダ16によるデコード処理により現在地の緯度、経度データが得られ」るから、GPSデコーダ16を含むGPSブロック18は、現在位置を測位するといえる。そうすると、引用発明における「GPSブロック18(GPSデコーダ16、GPS無線部17)」は、本願発明における「現在位置を測位する測位手段」に相当する。

イ 引用発明においては、所定の時間間隔毎の測位である「インターバル測位」が行われ、「受信された電波信号から、GPSデコーダ16によるデコード処理により現在地の緯度、経度データが得られ、CPU11は、得られた現在地の緯度、経度データを確認し、RAM13に保持」するから、CPU11は、GPSデコーダ16を含むGPSブロック18から得られた現在地の緯度、経度データを所定の時間間隔毎に取得するといえる。そうすると、引用発明における「インターバル測位」で「得られた現在地の緯度、経度データを確認し、RAM13に保持」する「CPU11」は、本願発明における「前記測位手段から測位結果を間欠的に取得するマイクロプロセッサ」に相当する。

ウ 携帯電話は使用者が携帯する端末装置であるから、上記ア、イを踏まえると、引用発明における「バス10に接続されたCPU11と、GPSブロック18(GPSデコーダ16、GPS無線部17)と、を備える、携帯電話」は、本願発明における「現在位置を測位する測位手段と、前記測位手段から測位結果を間欠的に取得するマイクロプロセッサと、を備え、使用者に携帯される携帯端末装置」に相当する。

エ(ア)バッテリ電圧はバッテリ残量(上記3(1)(c)の段落【0056】)を示すから、上記ウを踏まえると、引用発明における「CPU11は、電源制御部19を通してバッテリ20のバッテリ電圧Vを確認」することは、本願発明における「前記携帯端末装置が電源として備える電池の電力残量を検出する第1の過程」に相当する。

(イ)引用発明においては、「上記ステップS27の判定にてNO、すなわちバッテリ電圧Vがxより小さい(V<x)場合は、CPU11は、バッテリ電圧Vがxより小さくy以上(x>V≧y)かを判定し(ステップS31)、YES(x>V≧yである)であれば、さらにインターバル測位の測位間隔がC時間より短く設定されいるか否かを判定し(ステップS32)、YES(C時間より短い)であれば、測位間隔をC時間に変更し(ステップS33)、上記ステップS28以降の処理に移行し、また、上記ステップS31の判定にてNO、すなわちバッテリ電圧Vがxより小さくy以上(x>V≧y)の範囲に入っていない場合は、さらに測位間隔がD時間より短く設定されているか否かを判定し(ステップS35)、YES(D時間より短い)であれば、測位間隔をD時間に変更し(ステップS35)、上記ステップS28以降の処理に移行する(D>Cとする)」から、CPU11は、当初に設定された測位間隔がC時間よりも短い場合に、バッテリ残量を示すバッテリ電圧が小さい(y>V)ときのインターバル測位の測位間隔(D時間)の方が、バッテリ電圧が大きい(x>V≧y)ときのインターバル測位の測位間隔(C時間)よりも長くなるように、インターバル測位の測位間隔を設定するといえる。

(ウ)引用発明においては、「その設定後、GPS無線部17によりGPS電波信号が受信され測位が行われ(ステップS23)、受信された電波信号から、GPSデコーダ16によるデコード処理により現在地の緯度、経度データが得られ、CPU11は、得られた現在地の緯度、経度データを確認し、RAM13に保持し(ステップS24)、測位結果を出力後、CPU11は、電源制御部19を通してバッテリ20のバッテリ電圧Vを確認し(ステップS26)、バッテリ電圧Vがx以上(V≧x)か否かを判定し(ステップS27)、YES(V≧xである)の場合は、バッテリ電圧レベルは十分に残っていると判断し、現在の測位間隔の設定を変更することなく、インターバル測位の終了条件の満了判定を行い(ステップS28)、NO(終了条件を満たしていない)の場合はタイマ23の計時をスタートさせ(ステップS29)、タイムアウトか否かを判定し(ステップS30)、YES(タイムアウトである)と判定されると、ステップS23に戻り再び測位を開始し、以後、上記と同様の処理を繰り返し実行」するから、インターバル測位の測位間隔は、CPU11が、得られた現在地の緯度、経度データを確認し、RAM13に保持する時間間隔になるといえる。

(エ)そして、上記イを踏まえると、CPU11が、得られた現在地の緯度、経度データを確認し、RAM13に保持する時間間隔は、CPU11が、(測位手段である)GPSブロック18(GPSデコーダ16、GPS無線部17)から(測位結果である)得られた現在地の緯度、経度データを取得する時間間隔であるといえるところ、CPU11は、「ROM12に格納された制御プログラム12bを実行する」から、CPU11が、インターバル測位の測位間隔を設定することは、そのまま(測位手段である)GPSブロック18(GPSデコーダ16、GPS無線部17)から(測位結果である)得られた現在地の緯度、経度データを取得する時間間隔を設定することになっているといえる。

(オ)そうすると、引用発明における「CPU11がROM12に格納された制御プログラム12bを実行することにより、ユーザ入力部14によりインターバル測位の開始要求が出され(ステップS21)、インターバル測位終了条件および測位間隔の設定(ステップS22)が行われ、その設定後、GPS無線部17によりGPS電波信号が受信され測位が行われ(ステップS23)、受信された電波信号から、GPSデコーダ16によるデコード処理により現在地の緯度、経度データが得られ、CPU11は、得られた現在地の緯度、経度データを確認し、RAM13に保持し(ステップS24)、測位結果を出力後、CPU11は、電源制御部19を通してバッテリ20のバッテリ電圧Vを確認し(ステップS26)、バッテリ電圧Vがx以上(V≧x)か否かを判定し(ステップS27)、YES(V≧xである)の場合は、バッテリ電圧レベルは十分に残っていると判断し、現在の測位間隔の設定を変更することなく、インターバル測位の終了条件の満了判定を行い(ステップS28)、NO(終了条件を満たしていない)の場合はタイマ23の計時をスタートさせ(ステップS29)、タイムアウトか否かを判定し(ステップS30)、YES(タイムアウトである)と判定されると、ステップS23に戻り再び測位を開始し、以後、上記と同様の処理を繰り返し実行し、上記ステップS27の判定にてNO、すなわちバッテリ電圧Vがxより小さい(V<x)場合は、CPU11は、バッテリ電圧Vがxより小さくy以上(x>V≧y)かを判定し(ステップS31)、YES(x>V≧yである)であれば、さらにインターバル測位の測位間隔がC時間より短く設定されいるか否かを判定し(ステップS32)、YES(C時間より短い)であれば、測位間隔をC時間に変更し(ステップS33)、上記ステップS28以降の処理に移行し、また、上記ステップS31の判定にてNO、すなわちバッテリ電圧Vがxより小さくy以上(x>V≧y)の範囲に入っていない場合は、さらに測位間隔がD時間より短く設定されているか否かを判定し(ステップS35)、YES(D時間より短い)であれば、測位間隔をD時間に変更し(ステップS35)、上記ステップS28以降の処理に移行する(D>Cとする)、という処理が行われ、バッテリ残量に応じてインターバル測位の測位間隔を変更する、CPU11での処理の方法」は、
本願発明における「前記マイクロプロセッサが前記測位手段から測位結果を取得する時間間隔を設定する方法であって、前記携帯端末装置が電源として備える電池の電力残量を検出する第1の過程と、前記第1の過程による検出結果が小さい残量を示すときの方が、該検出結果が大きい残量を示すときよりも、前記マイクロプロセッサが前記測位手段から測位結果を取得する時間間隔が長くなるように、前記電力残量に応じて前記時間間隔を設定する第2の過程と、を備えることを特徴とする携帯端末装置における測位結果取得間隔設定方法。」に相当する。

(2)上記(1)アないしエで対比したとおり、本願発明と引用発明との間に相違点は見出せない。

5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第4 むすび
上記「第3」のとおり、本願発明は、引用例に記載された引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-22 
結審通知日 2016-12-27 
審決日 2017-02-02 
出願番号 特願2014-171371(P2014-171371)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G01S)
P 1 8・ 113- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 関根 洋之
大和田 有軌
発明の名称 携帯端末装置及びその測位結果取得間隔設定方法  
代理人 丸山 隆夫  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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