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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1329538
審判番号 不服2016-9573  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-28 
確定日 2017-06-14 
事件の表示 特願2012- 93176「帯状物誘導装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月28日出願公開、特開2013-220886〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本件出願は、平成24年4月16日の出願であって、平成28年1月7日付けで拒絶理由が通知され、同年3月11日付けで手続補正がなされ、同年同月25日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年同月31日)、これに対し、同年6月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正がされたものである。

第2.平成28年6月28日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容

本件補正により、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正後の請求項1へ補正された。補正前の特許請求の範囲の請求項1、及び、補正後の特許請求の範囲の請求項1は、それぞれ以下のとおりである(下線は補正箇所を示すために審決で付した。以下の下線も同様に審決で付した。)。

(1)本件補正前の本願の発明
「【請求項1】
帯状物を巻回する巻回装置であり、
端部を有する帯状物の原反から前記帯状物を繰り出し、前記原反から前記帯状物を巻き取る巻軸まで前記帯状物の走行する行程で、前記帯状物の走行する向きに軸方向を直交した複数のローラーにより前記帯状物を案内する帯状物誘導装置を備え、
前記帯状物誘導装置は、
前記複数のローラーに対してそれぞれの軸方向の外方に設けられる複数の回転輪と、
前記複数の回転輪に巻掛された無端状の巻回部材と、
前記巻回部材に前記帯状物の端部を着脱自在に係合させる係合部材と、
前記巻回部材を前記帯状物の走行する向きに走行させることにより、前記係合部材に係合する帯状物の端部を前記巻軸に誘導して停止させる走行手段とを備え、
前記複数の回転輪が前記複数のローラーの軸方向の両側に配置され、これら両側の回転輪に一対の前記巻回部材がそれぞれ巻掛され、前記係合部材が前記一対の巻回部材の間に架け渡され、
前記一対の巻回部材の間に架け渡された前記係合部材に、前記帯状物の端部を着脱自在に係合できることを特徴とする巻回装置。」

(2)本件補正後の本願の発明
「【請求項1】
帯状物を巻回する巻回装置であり、
端部を有する帯状物の原反から前記帯状物を繰り出し、前記原反から前記帯状物を巻き取る巻軸まで前記帯状物の走行する行程で、前記帯状物の走行する向きに軸方向を直交した複数のローラーにより前記帯状物を案内する帯状物誘導装置を備え、
前記帯状物誘導装置は、
前記複数のローラーに対してそれぞれの軸方向の外方に設けられる複数の回転輪と、
前記複数の回転輪に巻掛された無端状の巻回部材と、
前記巻回部材に前記帯状物の端部を着脱自在に係合させる係合部材と、
前記巻回部材を前記帯状物の走行する向きに走行させることにより、前記係合部材に係合する帯状物の端部を前記巻軸に誘導して停止させる走行手段とを備え、
前記複数の回転輪が前記複数のローラーの軸方向の両側に配置され、これら両側の回転輪に一対の前記巻回部材がそれぞれ巻掛され、前記係合部材が前記一対の巻回部材の間に架け渡され、
前記一対の巻回部材の間に架け渡された前記係合部材に、前記帯状物の端部を、貼り付け、挟み込ませ、掛止し又は嵌着して、着脱自在に係合できることを特徴とする巻回装置。」

上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「係合部材」及び「帯状物」の係合について、本件補正前の「前記一対の巻回部材の間に架け渡された前記係合部材に、前記帯状物の端部を着脱自在に係合できる」を本件補正後の「前記一対の巻回部材の間に架け渡された前記係合部材に、前記帯状物の端部を、貼り付け、挟み込ませ、掛止し又は嵌着して、着脱自在に係合できる」と限定することを含むものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

したがって、本件補正は、第17条の2第5項第2号の規定に適合する。

さらに、本件補正は、新規事項を追加するものではない。

そこで、前記した事項により特定される、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例

(1)原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である実願平1-134917号(実開平3-744548号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「第4図?第6図は従来のフィルム巻取機への通紙装置を示し、図中1は横延伸機、2は引取処理機であり、同処理機2にはスレッディングロープ3が溝付き案内ローラ4?14に張られている。15?20は引取処理機2に設けられた引取りローラ(上部ローラは省略されている)で、端部には前記溝付き案内ローラ4?9が第6図の如く回転可能に軸支されている。
また溝付き案内ローラ10?14は図示しないフレーム等に回転可能に軸支され、溝付き案内ローラ13を図示しないモータにより駆動することにより、前記スレッディングロープ3を矢印方向に回転させるようになっている。21,22は引取処理機スレッディング操作スイッチ、23はガイドロープ、24はターレット式巻取機、25はガイドロール、26,27はスピンドルで、それぞれ別のモータ(図示せず)で駆動される。28,29は巻芯で、スピンドル26,27に装着されて回転し、フィルムを巻取るようになっている。」(第1ページ第18行?第2ページ第17行)

イ.「以下本考案を図面の実施例について説明すると、第1図?第3図は本考案の実施例を示す。なお、図において1は横延伸機、2は引取処理機、15?20は引取りローラ、24はターレット式巻取機、25はガイドローラ、26,27はスピンドル、28,29は巻芯、31はフィルムであり、これらは前記第4図?第6図の従来と同一であるので、これらについての詳細な説明は省略する。
次に第1図?第3図において従来との相違点について説明すると、33,34は2枚のエンドレスの磁性体ベルトで、同ベルト34(なお、本摘記箇所には、「磁性体ベルト33」について、「同ベルト33は溝付き案内ローラ35,36,44,45,46,47,48,49,41,42,43に巻回されており」及び「また磁性体ベルト33は溝付き案内ローラ37,44?49,40,39,38に巻回されて移動する。」との記載があって両者は整合していない。そこで、第1図を参照すると、溝付き案内ローラ35,36,44,45,46,47,48,49,41,42,43に巻回されるのは「磁性体ベルト34」であって、前者の記載における「同ベルト33」は「同ベルト34」の誤記と認められるので、訂正して摘記した。)は溝付き案内ローラ35,36,44,45,46,47,48,49,41,42,43に巻回されており、同溝付き案内ローラ44,45,46,47,48,49は、前記引取りローラ15,16,17,18,19,20の端部に回転可能に軸支されている。また磁性体ベルト33は溝付き案内ローラ37,44?49,40,39,38に巻回されて移動する。
次に作用を説明すると、エンドレスの磁性体ベルト33,34は、溝付き案内ローラ35?49間に巻回されて矢印方向に移動されており、フィルム31は磁性体ベルト33,34が近づいて重合される案内ローラ36,37の所で同ベルト33,34に一端面を把持され、引取処理機2内を通過した後、巻取機24の案内ローラ40,41まで搬送される。案内ローラ40,41を出たフィルム31は、作業者によって巻取機24の巻芯29に巻付けられる。」(第5ページ第18行?第7ページ第3行)

ウ.上記イ.では「図において1は横延伸機、2は引取処理機、15?20は引取りローラ、24はターレット式巻取機、25はガイドローラ、26,27はスピンドル、28,29は巻芯、31はフィルムであり、これらは前記第4図?第6図の従来と同一であるので、これらについての詳細な説明は省略する。」とされているので、上記イ.に記載された「巻芯28,29」及び「フィルム31」は、上記ア.及び第4図?第6図に記載されたものと同様であるといえる。

エ.上記イ.によれば、「案内ローラ」及び「引取りローラ」がそれぞれ複数あることは明らかである。

オ.第1?2図からは、磁性体ベルト33,34の走行方向と溝付き案内ローラ44,45,46,47,48,49の軸方向とが直交する点を看取できる。

上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「横延伸機、引取処理機及びターレット式巻取機であって、
フィルムは磁性体ベルトに一端面を把持され、引取処理機内を通過した後、巻取機の案内ローラまで搬送され、
案内ローラを出たフィルムは、作業者によって巻取機の巻芯に巻付けられ、
巻芯はフィルムを巻取り、
エンドレスの磁性体ベルトは複数の溝付き案内ローラに巻回されており、同複数の溝付き案内ローラは、複数の引取りローラの端部に回転可能に軸支され、
磁性体ベルトの走行方向と溝付き案内ローラの軸方向とが直交する
横延伸機、引取処理機及びターレット式巻取機。」

(2)同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開昭60-99655号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

カ.「オフセツト輪転機を複数のブロツクに分割し、各ブロツクに、紙の通路の両側を該通路に沿つて走行する一対の無端状紙通し部材を設け、該一対の紙通し部材の間に紙通しバーを着脱可能に架は渡したことを特徴とするオフセツト輪転機の紙通し装置。」(【特許請求の範囲】)

キ.「第1図、第2図はオフセツト輪転機を概略的に示す側面図であり、該オフセツト輪転機は給紙ロール1を含む給紙部2、インフイード部3、印刷部4、乾燥部5、冷却部6、折部7から成つており、給紙ロール1から引き出された紙8は第1図に実線Aで示す通路を通つて折部7に向つて走行する。この輪転機は第2図に示すように三つのブロツク9、10、11に分割され、これらのブロツクにそれぞれ無端状の紙通し部材12、13、14が設けられている。これらの紙通し部材はチエーン、ベルト、ワイヤ等の可撓性のもので形成されることができるが、本実施例ではチエーンを用いているので以下紙通しチエーンと称する。
紙通しチエーン12、13、14はそれぞれの一部が第1図に実線Aで示す紙の通路に重なるよう配置され、かつ第3図に概略的に示すよう、紙の通路の両側に一対設けられている。一対の紙通しチエーンは同速で駆動されるようになつており、かつ各紙通しチエーン12、13、14はそれぞれ単独で駆動されるよう、別個のモータ(図示せず)に連結されている。
各対の紙通しチエーン(以下チエーン12について説明する)の間にはバーホルダ15、15によつて1本の紙通しバー16が架け渡されている。紙通しバー16は紙通しされるべき紙17の先端を固定するためのものである。バーホルダ15は紙通しバー16を着脱可能に保持するものでありその一例が第4図?第7図に示されている。」(第2ページ左上欄第12行?右上欄第19行)

ク.「次に、上記装置による紙通し動作を説明する。第1図、第2図において、給紙ロール1から引き出した紙の先端を最初のブロツク9の紙通しチエーン12に取付られた紙通しバー16に連結し、紙通しチエーン12を駆動する。このチエーン12により、紙通しバー16はブロツク9内の紙の通路Aに沿つて移動し、ブロツク9内に紙を通す。ブロツク9内の紙通しが終了するとチエーン12を止め、バーホルダ15から紙通しバー16を手動で外し、隣接するブロツク10の紙通しチエーン13のバーホルダ15に保持させる。次いで、紙通しチエーン13を駆動してブロツク10内に紙を通す。その後、紙通しチエーン13を止め、紙通しバー16を最後のブロツク11の紙通しチエーン14に手動で渡し、紙通しチエーン14によりブロツク11内に紙を通す。その後、紙の先端を紙通しバー16から外し、折部7に紙を通して紙通し作業が完了する。このように、上記装置では、紙の先端を結びつけた紙通しバー16を各紙通しチエーン12、13、14に渡すことにより、容易に紙通しすることができる。」(第2ページ右下欄第9行?第3ページ左上欄第9行)

ケ.第3図からは、ローラの軸方向の両側に位置する一対の回転輪に紙通しチエーン12がそれぞれ巻掛された点、及び、紙17の先端の環状の部分に紙通しバー16を挿通した点を看取できる。

上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「給紙ロールから引き出された紙は折部に向つて走行し、
紙通しチエーンは紙の通路の両側に一対設けられ、
ローラの軸方向の両側に位置する一対の回転輪に紙通しチエーンがそれぞれ巻掛され、
各紙通しチエーンはそれぞれ単独で駆動されるよう、別個のモータに連結され、
各対の紙通しチエーンの間には1本の紙通しバーが架け渡され、
紙通しバーは紙通しされるべき紙の先端を固定するためのものであり、
紙の先端の環状の部分に紙通しバーを挿通して、
給紙ロールから引き出した紙の先端を紙通しバーに連結し、
紙の先端を紙通しバーから外し、折部7に紙を通して紙通し作業が完了する
オフセツト輪転機の紙通し装置。」

3.対比

本願補正発明と引用発明1とを対比する。

後者の「横延伸機、引取処理機及びターレット式巻取機」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「巻回装置」に相当し、同様に、「フィルム」は「帯状物」に、「巻芯」は「巻軸」に、「引取りローラ」は「ローラー」に、「案内ローラ」は「回転輪」に、「磁性体ベルト」は「巻回部材」にそれぞれ相当する。

後者においては、「巻芯はフィルムを巻取り」、「フィルムは磁性体ベルトに一端面を把持され、引取処理機内を通過した後、巻取機の案内ローラまで搬送され」、「案内ローラを出たフィルムは、作業者によって巻取機の巻芯に巻付けられ」るから、フィルムを巻き取る巻芯までフィルムが搬送されるといえる。そして、後者においては「磁性体ベルトの走行方向と溝付き案内ローラの軸方向とが直交する」から、後者の「引取処理機」と前者とは、「帯状物を巻き取る巻軸まで帯状物の走行する行程で、前記帯状物の走行する向きに軸方向を直交した複数のローラーにより前記帯状物を案内する帯状物誘導装置」との概念で共通する。
後者においては、「複数の溝付き案内ローラは、複数の引取りローラの端部に回転可能に軸支され」るから、後者のこのような「案内ローラ」は、前者の「複数のローラーに対してそれぞれの軸方向の外方に設けられる複数の回転輪」に相当する。
後者においては、「エンドレスの磁性体ベルトは溝付き案内ローラに巻回されて」いるから、後者のこのような「磁性体ベルト」は、前者の「複数の回転輪に巻掛された無端状の巻回部材」に相当する。
後者においては「フィルム」は「磁性体ベルトに一端面を把持され、引取処理機内を通過した後、巻取機の案内ローラまで搬送され」るところ、「案内ローラを出たフィルムは、作業者によって巻取機の巻芯に巻付けられ」るのだから、「フィルム」の端面は「巻芯」に誘導されているといえる。また、「フィルム」が搬送された箇所で停止することは明らかである。そうすると、後者は、「巻回部材を帯状物の走行する向きに走行させることにより、帯状物の端部を巻軸に誘導して停止させる」ものであり、そのための走行手段を有しているといえる。

したがって、両者は、

「帯状物を巻回する巻回装置であり、
前記帯状物を巻き取る巻軸まで前記帯状物の走行する行程で、前記帯状物の走行する向きに軸方向を直交した複数のローラーにより前記帯状物を案内する帯状物誘導装置を備え、
前記帯状物誘導装置は、
前記複数のローラーに対してそれぞれの軸方向の外方に設けられる複数の回転輪と、
前記複数の回転輪に巻掛された無端状の巻回部材と、
前記巻回部材に前記帯状物の端部を着脱自在に係合させる係合部材と
前記巻回部材を前記帯状物の走行する向きに走行させることにより、前記係合部材に係合する帯状物の端部を前記巻軸に誘導して停止させる走行手段とを備える
巻回装置。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
前者が「端部を有する帯状物の原反から前記帯状物を繰り出し、前記原反から」帯状物を巻き取るのに対して、後者はそのようなものでない点。

[相違点2]
前者が「巻回部材に帯状物の端部を着脱自在に係合させる係合部材」を有し、「係合部材に、帯状物の端部を、貼り付け、挟み込ませ、掛止し又は嵌着して、着脱自在に係合できる」のに対して、後者はそのようなものでない点。

[相違点3]
前者が「回転輪がローラーの軸方向の両側に配置され、これら両側の回転輪に一対の巻回部材がそれぞれ巻掛され、係合部材が前記一対の巻回部材の間に架け渡される」のに対して、後者はそのようなものでない点。

4.判断

上記相違点について検討する。

(1)相違点1について

引用発明2の「紙」は本願補正発明の「帯状物」に相当し、同様に、「給紙ロール」は「端部を有する帯状物の原反」に相当する。
引用発明2の「給紙ロールから引き出した紙の先端を紙通しバーに連結し」、「給紙ロールから引き出された紙は折部に向つて走行」する点は、本願補正発明の「端部を有する帯状物の原反から前記帯状物を繰り出す」点に相当する。

また、引用例1には、通紙作業の「各作業は繁雑な作業」(第4ページ第5?17行)であることが、引用例2には「簡単な操作で輪転機全体に紙通しをすること」(第1ページ右下欄第19行?第2ページ左上欄第2行)がそれぞれ記載されているから、引用発明1及び2はともに帯状物を案内する作業を容易にすることを課題とするものである。

そうすると、引用発明1及び2はともに装置内に帯状物を案内する装置である点で技術分野が共通し、帯状物を案内する作業を容易にすることを共通の課題としているから、引用発明1に引用発明2を適用することは当業者が容易になし得ることである。
また、引用発明1に引用発明2を適用すれば、必然的に、原反から帯状物を巻き取ることになる。

よって、引用発明1に引用発明2を適用して、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について

上記(1)での検討に加えて、引用発明2の「紙通しチエーン」は本願補正発明の「巻回部材」に相当し、同様に「紙通しバー」は「係合部材」に相当する。
また、引用発明2は、「紙の先端」を「紙通しレバーに連結し」、「紙通しバーから外」すところ、「各対の紙通しチエーンの間には1本の紙通しバーが架け渡され」ているから、「紙の先端」は「紙通しチエーン」に対しても連結し、外されることは明らかであって、引用発明2は本願補正発明の「巻回部材に帯状物の端部を着脱自在に係合させる係合部材」、及び、「係合部材に、帯状物の端部を、着脱自在に係合できる」との技術事項を備えているといえる。
また、引用発明2のように「紙の先端の環状の部分に紙通しバーを挿通」すれば、紙通しバーに紙の先端が掛かった状態になるから、引用発明2は、紙通しバーに紙の先端を掛止しているといえ、この点は本願補正発明の「係合部材に、帯状物の端部を、掛止する」ことに相当する。
従って、引用発明2は、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項を備えている。

仮に、引用発明2における紙の先端の環状の部分に紙通しバーを挿通することが「掛止」とはいえないとしても、一般に、着脱自在な係合を、貼り付け、挟み込み、掛止又は嵌着等の種々の方法で行うことは、本願の出願前に広く行われていることであって(例えば、特開2002-172753号公報の段落【0016】には、「紙通し補助部材4の後端、つまり、給紙装置1側の端部にはウェブ3の先端を粘着テープ、マグネット、グリップ等公知種々の方法により取付出来るようになっている。」と記載されている。)、引用発明1に引用発明2を適用する際に、着脱自在な係合として、貼り付け、挟み込み、掛止又は嵌着を選択することは当業者が適宜選択できる設計的事項である。また、本願補正発明が、着脱自在な係合を、貼り付け、挟み込ませ、掛止し又は嵌着して行うことにより格別の効果を奏するものでもない。

そして、上記(1)のとおり、引用発明1及び2はともに装置内に帯状物を案内する装置である点で技術分野が共通し、帯状物を案内する作業を容易にすることを共通の課題としているから、引用発明1に引用発明2を適用することは当業者が容易になし得ることである。

よって、引用発明1に引用発明2を適用して、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(3)相違点3について

引用発明2の「ローラの軸方向の両側に位置する一対の回転輪に紙通しチエーンがそれぞれ巻掛され」、「各対の紙通しチエーンの間には1本の紙通しバーが架け渡され」る点は、本願補正発明の「回転輪がローラーの軸方向の両側に配置され、これら両側の回転輪に一対の巻回部材がそれぞれ巻掛され、係合部材が前記一対の巻回部材の間に架け渡される」点に相当する。
従って、引用発明2は、上記相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項を備えている。

そして、上記(1)のとおり、引用発明1及び2はともに装置内に帯状物を案内する装置である点で技術分野が共通し、帯状物を案内する作業を容易にすることを共通の課題としているから、引用発明1に引用発明2を適用することは当業者が容易になし得ることである。

よって、引用発明1に引用発明2を適用して、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1及び2から当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願補正発明は、引用発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび

以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

したがって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3.本願の発明について

1.本願の発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年3月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、「第1」の「[理由]1.(1)」に記載したとおりのものである。

2.引用例

原査定の拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1及び2の記載内容及び引用発明は、上記「第2」の「2.引用例」に記載したとおりである。

3.対比及び判断

本願発明は、本願補正発明に係る「係合部材」及び「帯状物」の係合について、本願補正発明の「前記一対の巻回部材の間に架け渡された前記係合部材に、前記帯状物の端部を、貼り付け、挟み込ませ、掛止し又は嵌着して、着脱自在に係合できる」を「前記一対の巻回部材の間に架け渡された前記係合部材に、前記帯状物の端部を着脱自在に係合できる」とし、「貼り付け、挟み込ませ、掛止し又は嵌着して」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した本願補正発明が、上記「第2」の「4.判断」で検討したとおり、引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項に該当し特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-18 
結審通知日 2017-04-21 
審決日 2017-05-02 
出願番号 特願2012-93176(P2012-93176)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼辻 将人  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
発明の名称 帯状物誘導装置  
代理人 楠本 高義  

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