• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04R
管理番号 1329550
審判番号 不服2016-5130  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-07 
確定日 2017-06-12 
事件の表示 特願2013-521254「薄膜超音波振動子」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 2月 2日国際公開、WO2012/014111、平成25年10月17日国内公表、特表2013-539254〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2011年7月12日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2011年6月14日 2010年7月30日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、平成27年3月23日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年6月15日付けで誤訳訂正がなされたが、同年11月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年4月7日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

2.平成28年4月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年4月7日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
(1)補正後の本願発明
平成28年4月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
第1の主表面及び第2の主表面を持ち、力に応じて形状を変化させる膜と、活性部分を持ち、前記膜の第1の主表面の上に形成される圧電層と、第1の電極と第2の電極との間の電界が前記圧電層の機械的動きを決定し、前記圧電層と接触する当該第1の電極及び第2の電極と、前記圧電層の前記活性部分の隣接側で前記膜の第2の主表面に支持構造体とを有し、前記支持構造体の少なくとも一部は、支持構造体側に、前記支持構造体側とは反対側の出力圧に比較して高い出力圧を持つ超音波振動子が得られるように、前記活性部分の下に半開パイプの形状を有する溝を形成するために、第2の主表面に垂直な壁を形成し、第2の主表面と直角をなす前記溝の寸法が前記膜により生成される超音波の共振条件に合っている、振動子。」

とあったものが、

「【請求項1】
第1の主表面及び第2の主表面を持ち、力に応じて形状を変化させる膜と、活性部分を持ち、前記膜の第1の主表面の上に形成される圧電層と、第1の電極と第2の電極との間の電界が前記圧電層の機械的動きを決定し、前記圧電層と接触する当該第1の電極及び第2の電極と、前記圧電層の前記活性部分の隣接側で前記膜の第2の主表面に支持構造体とを有し、前記支持構造体の少なくとも一部は、支持構造体側に、前記支持構造体側とは反対側の出力圧に比較して高い出力圧を持つ超音波振動子が得られるように、前記活性部分の下に半開パイプの形状を有する溝を形成するために、第2の主表面に垂直な壁を形成し、第2の主表面と直角をなす前記溝の寸法が前記膜により生成される超音波の共振条件に合っている、振動子において、
前記支持構造体は、前記壁の一部が前記壁の他の部分より広い幅を持つ、振動子。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「支持構造体」について、「前記壁の一部が前記壁の他の部分より広い幅を持つ」との限定を付加するものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2010-164331号公報(公開日:平成22年(2010年)7月29日。以下、「引用例」という。)には、「入力装置」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
超音波を発信して反射された前記超音波を受信する超音波センサーユニットを備え、
前記超音波センサーユニットから発信された超音波と、検出対象により反射され前記超音波センサーユニットにより受信された超音波と、に基づいて前記検出対象の位置、形状及び速度を算出する制御演算部を備え、
前記超音波センサーユニットは、複数の開口部が形成された基部と、前記基部に設けられ前記開口部を閉塞する振動板と、前記開口部の各々に対応して前記振動板に設けられた圧電体と、を有することを特徴とする入力装置。」

イ.「【0008】
このように構成することで、制御演算部により所定の周波数の超音波を発生するための電圧波形を圧電体に印加して、圧電体により基部の開口部を閉塞する振動板を振動させることができる。そして、超音波センサーユニットの基部の開口部から所定の周波数の超音波を発信することができる。
超音波センサーユニットから発信された超音波は、超音波が到達する領域内に検出対象が存在する場合には、その検出対象により反射される。検出対象によって反射され超音波センサーユニットの振動板に到達した超音波は、振動板を振動させる。振動板の振動は、圧電体により電気信号に変換され、制御演算部に伝達される。
【0009】
これにより、制御演算部は、発信された超音波の波形、複数の開口部の各々に対応する圧電体によって受信された超音波の波形、超音波が発信されてから受信されるまでの時間等に基づいて、検出対象の位置、形状及び速度を算出することができる。
また、開口部の寸法及び振動板の厚さを調整することで、開口部における振動板の固有振動数を調整することができる。これにより、超音波センサーユニットによって波長の短い高周波数の超音波を発信及び受信し、比較的近距離に存在する検出対象の分解能を向上させることができる。
したがって、本発明の入力装置によれば、超音波センサーユニットにより比較的近距離に存在する比較的小さな検出対象の3次元的な位置、形状、速度を正確に検出することができ、電子機器等に超音波センサーユニットの検出結果に対応した入力を行うことができる。」

ウ.「【0025】
図2に示すように、超音波センサーユニット1Aは複数の開口部11aがアレイ状に形成された基部11を備えている。基部11は例えば単結晶シリコン基板等により形成されている。開口部11aの各々には、超音波センサー1が設けられている。すなわち、超音波センサーユニット1Aは基部11の一面に複数の超音波センサー1がアレイ状に配置された構成となっている。」

エ.「【0032】
図4に示す本実施形態の超音波センサー1は、超音波を発信又受信する超音波センサーである。超音波センサー1は、開口部11aが形成された基部11と、基部11の開口部11aを閉塞するように設けられた振動板2と、振動板2の基部11と反対側に設けられた圧電体3と、圧電体3に接続された下部電極4及び上部電極5とを備えている。
基部11に形成された開口部11aの深さdは、例えば約100μm程度である。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0034】
振動板2が開口部11aと平面的に重なって開口部11aに露出された領域は、振動板2の振動領域Vとなっている。開口部11aの径Dは振動領域Vの振動板2の固有振動数に応じて例えば約100μm?数百μm程度の範囲で適宜設定されている。振動板2の振動領域Vで基部11と反対側の面には下部電極4が設けられている。」

オ.「【0040】
図4に示すように振動板2の振動領域Vに形成された圧電体3は、上部電極5と下部電極4との間にサイン波電圧が印加されると、振動板2の面方向に伸長されたり圧縮されたりする。圧電体3が振動板2の面方向に伸長されると、振動板2の圧電体3側が面方向に伸長され、振動板2の振動領域Vが基部11側に凹(図の上方向に凸)となるように撓む。
【0041】
また、圧電体3が振動板2の面方向に圧縮されると、振動板2の圧電体3側が面方向に圧縮され、振動板2の振動領域Vが基部11側に凸(図の上方向に凹)となるように撓む。これにより、振動領域Vの振動板2が法線方向に振動し、各々の超音波センサー1の振動領域Vからサイン波電圧の周期に応じた振動数の超音波が発信される。本実施形態において発信される超音波の周波数は100kHz以上であり、解像度を向上させるためは200kHz以上であることが好ましい。また、検出領域を実用的な範囲とするためには、周波数は1MHz以下であることが好ましい。」

・上記引用例に記載の「入力装置」は、上記「ア.」の記載事項、及び図1、図2によれば、超音波を発信して反射された前記超音波を受信する超音波センサーユニット1Aを備えてなるものである。
そして、上記「ウ.」の記載事項、及び図2から明らかなように、超音波センサーユニット1Aは、複数の超音波センサー1が配置されて構成されたものである。
・上記「ア.」、「エ.」の段落【0032】の記載事項、及び図4によれば、超音波センサーユニット1Aを構成する各超音波センサー1は、開口部11aが形成された基部11と、基部11に設けられて開口部11aの一端側を閉塞する振動板2と、開口部11aに対応して振動板2の基部11と反対側に設けられた圧電体3と、圧電体3に接続された下部電極4及び上部電極5とを備えてなるものである。
さらに図4によれば、基部11に設けられた開口部11aは、基部11の主表面に対して垂直な壁を有している。
・上記「イ.」、「エ.」の段落【0034】、「オ.」の記載事項によれば、振動板2が開口部11aと平面的に重なって開口部11aに露出された領域は、振動板2の振動領域Vとなっており、下部電極4と上部電極5との間に所定周波数の超音波を発生するための電圧波形を印加すると、振動板2の振動領域Vに形成された圧電体3は振動板2の面方向に伸長されたり圧縮されたりすることによって、振動板2の振動領域Vが振動し、基部11の開口部11aの他端側から所定周波数の超音波を発信することができるものである。

したがって、特に図4に示される、入力装置が備える超音波センサーユニットを構成する複数の超音波センサーのうちの1つに着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「基部であって、その主表面に対して垂直な壁を有する開口部が形成された基部と、
前記基部に設けられ、前記開口部の一端側を閉塞する振動板と、
前記開口部に対応して前記振動板の前記基部と反対側に設けられた圧電体と、
前記圧電体に接続された下部電極及び上部電極とを備え、
前記振動板が前記開口部と平面的に重なって前記開口部に露出された領域は、前記振動板の振動領域となっており、前記下部電極と前記上部電極との間に所定周波数の超音波を発生するための電圧波形を印加すると、前記振動板の振動領域に形成された前記圧電体は前記振動板の面方向に伸長されたり圧縮されたりすることによって、前記振動板の振動領域が振動し、前記基部の前記開口部の他端側から所定周波数の超音波を発信することができる、超音波センサー。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明における「前記基部に設けられ、前記開口部の一端側を閉塞する振動板と」によれば、
引用発明における「振動板」は、両表面すなわち本願補正発明でいう「第1の主表面及び第2の主表面」を持ち、力に応じて形状を変化させるものであることは自明なことであるから、本願補正発明でいう「膜」に相当し、
本願補正発明と引用発明とは、「第1の主表面及び第2の主表面を持ち、力に応じて形状を変化させる膜と」を有するものである点で一致する。

イ.引用発明における「前記開口部に対応して前記振動板の前記基部と反対側に設けられた圧電体と」によれば、
引用発明における「圧電体」は、本願補正発明における「圧電層」に相当し、
引用発明の「圧電体」にあっても、開口部に対応して設けられていることから、その全体が本願補正発明でいう「活性部分」であるといえ、また、振動板の基部と反対側すなわち本願補正発明でいう「第1の主表面」側の上に設けられてなるものであることから、
本願補正発明と引用発明とは、「活性部分を持ち、前記膜の第1の主表面の上に形成される圧電層と」を有するものである点で一致するといえる。

ウ.引用発明における「前記圧電体に接続された下部電極及び上部電極とを備え、・・・・前記下部電極と前記上部電極との間に所定周波数の超音波を発生するための電圧波形を印加すると、前記振動板の振動領域に形成された前記圧電体は前記振動板の面方向に伸長されたり圧縮されたりする・・」によれば、
引用発明における「下部電極及び上部電極」は、本願補正発明でいう「第1の電極及び第2の電極」に相当し、
引用発明にあっても、下部電極と上部電極との間に所定周波数の超音波を発生するための電圧波形を印加すると、振動板の振動領域に形成された圧電体は振動板の面方向に伸長されたり圧縮されたりするものであることから、下部電極と上部電極との間の電界が圧電体の機械的動きを決定しているといえ、
本願補正発明と引用発明とは、「第1の電極と第2の電極との間の電界が前記圧電層の機械的動きを決定し、前記圧電層と接触する当該第1の電極及び第2の電極と」を有するものである点で一致する。

エ.引用発明における「基部であって、その主表面に対して垂直な壁を有する開口部が形成された基部と、前記基部に設けられ、前記開口部の一端側を閉塞する振動板と、前記開口部に対応して前記振動板の前記基部と反対側に設けられた圧電体と、・・・・前記振動板が前記開口部と平面的に重なって前記開口部に露出された領域は、前記振動板の振動領域となっており、・・・・前記振動板の振動領域が振動し、前記基部の前記開口部の他端側から所定周波数の超音波を発信することができる・・」によれば、
(a)引用発明における「基部」、「開口部」は、それぞれ本願補正発明でいう「支持構造体」、「溝」に相当し、
(b)引用発明の「基部」にあっても、開口部が形成され、当該開口部に露出された振動板の領域が振動領域となるものであることから、圧電体部分(圧電体の活性部分)の隣接側で振動板の本願補正発明でいう「第2の主表面」側に設けられてなるものであるといえ(引用例の図4も参照)、
(c)また、引用発明の「開口部」にあっても、基部の主表面に対して垂直な壁、すなわち振動板の本願補正発明でいう「第2の主表面」に垂直な壁を有し、一端側が振動板により閉塞され、他端側は所定周波数の超音波を発信することができるように開放されている(引用例の図4も参照)ことから、本願補正発明と同様に「半開パイプの形状」を有するものであるとみることができる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記圧電層の前記活性部分の隣接側で前記膜の第2の主表面に支持構造体とを有し、前記支持構造体の少なくとも一部は、前記活性部分の下に半開パイプの形状を有する溝を形成するために、第2の主表面に垂直な壁を形成」してなるものである点で共通する。
ただし、本願補正発明では、「支持構造体側に、前記支持構造体側とは反対側の出力圧に比較して高い出力圧を持つ超音波振動子が得られる」ように、「第2の主表面と直角をなす溝の寸法が前記膜により生成される超音波の共振条件に合っている」旨特定するとともに、支持構造体について、「前記壁の一部が前記壁の他の部分より広い幅を持つ」旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点で相違している。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
「第1の主表面及び第2の主表面を持ち、力に応じて形状を変化させる膜と、活性部分を持ち、前記膜の第1の主表面の上に形成される圧電層と、第1の電極と第2の電極との間の電界が前記圧電層の機械的動きを決定し、前記圧電層と接触する当該第1の電極及び第2の電極と、前記圧電層の前記活性部分の隣接側で前記膜の第2の主表面に支持構造体とを有し、前記支持構造体の少なくとも一部は、前記活性部分の下に半開パイプの形状を有する溝を形成するために、第2の主表面に垂直な壁を形成した、振動子。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明では、「支持構造体側に、前記支持構造体側とは反対側の出力圧に比較して高い出力圧を持つ超音波振動子が得られる」ように、「第2の主表面と直角をなす溝の寸法が前記膜により生成される超音波の共振条件に合っている」旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

[相違点2]
支持構造体について、本願補正発明では、「前記壁の一部が前記壁の他の部分より広い幅を持つ」旨特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。

(4)判断
上記[相違点1]及び[相違点2]について検討する。
例えば原査定において提示した実願平2-33651号(実開平3-125597号)のマイクロフィルム(2頁2行?3頁3行、第5図を参照)や特開2009-118093号公報(特に段落【0045】?【0048】、図5、図6を参照)、さらには特開2004-312395号公報(特に【請求項1】?【請求項3】、段落【0021】、【0026】、【0030】?【0035】を参照)、特開2004-328189号公報(段落【0002】、図5を参照)に記載のように、振動板における、より強い音波を出力しようとする主表面側に、当該主表面に対して垂直方向の寸法(長さ)が音波の共鳴(共振)条件を満たす共鳴器(共鳴管)を設けることは周知の技術事項であり、引用発明においても、基部の開口部についてかかる周知の技術事項を適用し、相違点1に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得ることである。
そしてその際、共鳴器として、より優れた共鳴状態を得ることができるように上記特開2004-312395号公報や上記特開2004-328189号公報に記載のいわゆる周知のホルムヘルツ共鳴器を採用し、相違点2に係る構成とすることも当業者が適宜なし得ることである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

(5)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成28年4月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年6月15日付け誤訳訂正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
第1の主表面及び第2の主表面を持ち、力に応じて形状を変化させる膜と、活性部分を持ち、前記膜の第1の主表面の上に形成される圧電層と、第1の電極と第2の電極との間の電界が前記圧電層の機械的動きを決定し、前記圧電層と接触する当該第1の電極及び第2の電極と、前記圧電層の前記活性部分の隣接側で前記膜の第2の主表面に支持構造体とを有し、前記支持構造体の少なくとも一部は、支持構造体側に、前記支持構造体側とは反対側の出力圧に比較して高い出力圧を持つ超音波振動子が得られるように、前記活性部分の下に半開パイプの形状を有する溝を形成するために、第2の主表面に垂直な壁を形成し、第2の主表面と直角をなす前記溝の寸法が前記膜により生成される超音波の共振条件に合っている、振動子。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「支持構造体」について、「前記壁の一部が前記壁の他の部分より広い幅を持つ」との限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定事項(上
記相違点2に係る構成)を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明から他の限定事項(上記相違点2に係る構成)を省いたものである本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-19 
結審通知日 2017-01-20 
審決日 2017-01-31 
出願番号 特願2013-521254(P2013-521254)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04R)
P 1 8・ 121- Z (H04R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大野 弘  
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 安藤 一道
井上 信一
発明の名称 薄膜超音波振動子  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ