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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1329582
審判番号 不服2015-19092  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-10-22 
確定日 2017-06-22 
事件の表示 特願2013-103307「再吸収性フェノール性ポリマー」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日出願公開、特開2013-189449〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年11月3日(パリ条約による優先権主張:2005年11月3日、米国)を国際出願日とする特願2008-539055号の一部を新たな出願としたものであって、平成25年5月16日に手続補正書が提出され、平成26年8月20日付けで拒絶理由が通知され、同年12月18日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年6月19日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年10月22日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲についての手続補正書が提出され、同年11月13日付けで前置報告がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[結論]
平成27年10月22日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成27年10月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、
「【請求項1】
(a)少なくとも1つの下記一般式を有するモノマー単位
【化1】


式中、mは0、1、または2であり、YはOMeまたはOEtであり、Aは、-C(=NH)-、および-CO-X-CO-よりなる群から選ばれ、ここで、XはC_(1)?C_(18)アルキレン、C_(1)?C_(18)アルケニレン、2価C_(6)?C_(10)アリーレン、2価C_(7)?C_(18)アリールアルキル、CH_(2)OCH_(2)、CH_(2)O(CH_(2)CH_(2)O)_(s)CH_(2)、(CH_(2))_(r)CO_(2)(CH_(2)CH_(2)CH_(2)O)_(s)CO(CH_(2))_(r)、および(CH_(2))_(r)CO_(2)(CH_(2)CH_(2)O)_(s)CO(CH_(2))_(r)よりなる群から選ばれ、ここでrは2?4であり、そしてsは1?5000である;および
(b)少なくとも1つの下記一般式を有するモノマー単位
【化2】


式中、mは0、1、または2であり、YはOHであり、Aは、-C(=NH)-、および-CO-X-CO-よりなる群から選ばれ、ここで、XはC_(1)?C_(18)アルキレン、C_(1)?C_(18)アルケニレン、2価C_(6)?C_(10)アリーレン、2価C_(7)?C_(18)アリールアルキル、CH_(2)OCH_(2)、CH_(2)O(CH_(2)CH_(2)O)_(s)CH_(2)、(CH_(2))_(r)CO_(2)(CH_(2)CH_(2)CH_(2)O)_(s)CO(CH_(2))_(r)、および(CH_(2))_(r)CO_(2)(CH_(2)CH_(2)O)_(s)CO(CH_(2))_(r)よりなる群から選ばれ、ここでrは2?4であり、そしてsは1?5000である;
を含むポリマー。」を
「【請求項1】
(a)少なくとも1つの下記一般式を有するモノマー単位
【化1】

式中、mは0、1、または2であり、YはOMeまたはOEtであり、Aは、-CO-X-CO-であり、ここで、XはC_(1)?C_(18)アルキレン、CH_(2)OCH_(2)、CH_(2)O(CH_(2)CH_(2)O)_(s)CH_(2)、よりなる群から選ばれ、ここでsは1?5000である;および
(b)少なくとも1つの下記一般式を有するモノマー単位
【化2】

式中、mは0、1、または2であり、YはOHであり、Aは、-CO-X-CO-であり、ここで、XはC_(1)?C_(18)アルキレン、CH_(2)OCH_(2)、CH_(2)O(CH_(2)CH_(2)O)_(s)CH_(2)、よりなる群から選ばれ、ここでsは1?5000である;
を含むポリマー。」とする補正(以下「補正事項1」という。)を含むものである。

2 補正の目的
上記補正事項1は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「A」の選択肢を削除することにより限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件の検討
上記2のとおりであるから、補正事項1を含む本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成27年10月22日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
(a)少なくとも1つの下記一般式を有するモノマー単位
【化1】

式中、mは0、1、または2であり、YはOMeまたはOEtであり、Aは、-CO-X-CO-であり、ここで、XはC_(1)?C_(18)アルキレン、CH_(2)OCH_(2)、CH_(2)O(CH_(2)CH_(2)O)_(s)CH_(2)、よりなる群から選ばれ、ここでsは1?5000である;および
(b)少なくとも1つの下記一般式を有するモノマー単位
【化2】

式中、mは0、1、または2であり、YはOHであり、Aは、-CO-X-CO-であり、ここで、XはC_(1)?C_(18)アルキレン、CH_(2)OCH_(2)、CH_(2)O(CH_(2)CH_(2)O)_(s)CH_(2)、よりなる群から選ばれ、ここでsは1?5000である;
を含むポリマー。」

(2)引用文献に記載された事項
本願の優先日前に頒布された特表2001-522899号公報(平成26年8月20日付け拒絶理由通知において引用された引用文献2。以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている(注:下線は当審で付したものである。)。
ア「【請求項1】 加水分解により変化しやすいポリマー主鎖を有してなるポリマーであって、前記ポリマーが次式
【化1】


で示される構造を持ち、
ここでR_(9)はカルボン酸基又はそのベンジルエステルを側鎖に持つ炭素数18までのアルキル、アリール又はアルキルアリール基であり、
R_(12)は、炭素数18までの直鎖及び分岐のアルキル及びアルキルアリールエステル並びに前記ポリマーに共有結合してなる生物学的及び薬学的に活性な化合物のエステル誘導体からなる群から選択されたカルボン酸エステル基を側鎖に持つ炭素数18までのアルキル、アリール又はアルキルアリール基であるが、但し前記エステル基はベンジル基又は水素化分解により除去される基ではなく、
各R_(7)はそれぞれ独立に炭素数4までのアルキレン基であり、
Aは次式
【化2】


及び
【化3】


からなる群から選択されてなり、
ここでR_(8)は、炭素数18までの飽和及び不飽和、置換及び未置換のアルキル、アリール及びアルキルアリール基からなる群から選択されてなり、
kは約5乃至約3,000であり、
x及びfはそれぞれ独立に0から1未満の間で変動するポリマー。」
「【請求項13】 請求項1に記載のポリマーを含んでなる移植可能な医療装置。」
「【請求項28】 Aが次式
【化10】


で示される場合のポリカーボネートからなる請求項1に記載のポリマー。
【請求項29】 Aが次式
【化11】


で示され、
ここでR_(8)は炭素数2乃至12の飽和及び不飽和、置換及び未置換のアルキル基からなる群から選択されてなる場合のポリアリーレートからなる請求項1に記載のポリマー。」
「【請求項33】 R_(9)の側鎖基がベンジルカルボキシレート基である請求項1に記載のポリマーからなる反応混合物を、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)及びN-メチルピロリドン(NMP)からなる群から選択された一又は複数の溶媒から本質的になる無水反応溶媒中で調製する工程と、
前記側鎖ベンジルカルボキシレート基のベンジル基が水素化分解によって選択的に除去されるように、前記反応混合物を水素源の存在下でパラジウム触媒と接触させる工程とからなる、エステル側鎖を選択的に除去する方法。」

イ「【0003】
(発明の背景)
本発明は、カルボン酸基を側鎖に持つ生分解性アニオン系ポリカーボネート及びポリアリーレートに関し、並びにそれらとポリアルキレンオキシドとのブロックコポリマーに関する。」

ウ「【0010】
ここに、設計因子として、顕著な主鎖の分解を伴わず、各モノマー単位に側鎖カルボン酸基を好適に形成することを含んでなる分解可能な生体適合型ポリマー系が目的とされる。更には、ポリマー組成をわずかに変更することによりポリマー分解速度を制御することも目的とされる。
【0011】
(発明の要旨)
本発明は上記目的を達成するものである。ポリマーバルク(polymer bulk;ポリマーが占める空間)内にカルボン酸基側鎖を組み入れることにより、生体内(in vivo)においても生体外(in vitro)においてもポリマー主鎖の分解及び吸収速度に関し、これまで認識されていなかった劇的な加速効果が得られる。このように本発明は、ポリマー主鎖沿いに存在しうるカルボン酸側鎖の割合を単に調整することにより、移植後約5時間から3年に至る期間で完全に吸収するロッド状装置を形成しうる脅威的な程度まで分解及び吸収の速度を調節することを可能にするものである。 」

エ「【0015】
したがって、本発明の一面によれば、次の式Iで定義されるモノマー繰り返しサブユニットを有するポリマーが提供される。
【0016】
【化20】

式I
式Iはジフェノール単位を示しており、・・・。とりわけR_(9)は天然アミノ酸チロシン、桂皮酸又は3-4-ヒドロキシフェニルプロピオン酸の誘導体に関連する構造を持つものとすることができる。その場合、R_(9)は式II及びIIIで示される特定の構造を持つ。
【0017】
【化21】

式II
・・・
式II及びIIIにおける示数a及びbは、それぞれ独立に0、1又は2をとりうる。R_(2)は水素又はベンジル基である。
【0019】
ポリマーにおける第二のジフェノール型サブユニットは式IVで定義される。この第二のジフェノール型サブユニットにおいて、R_(12)はカルボン酸エステル基で置換されたアルキル、アリール又はアルキルアリール基であり、・・・。とりわけR_(12)は、天然アミノ酸チロシン、桂皮酸又は3-4-ヒドロキシフェニルプロピオン酸の誘導体に関連する構造を持つものとすることができる。
【0020】
【化23】

式IV
チロシン、3-4-ヒドロキシフェニルプロピオン酸及び桂皮酸の誘導体に関し、R_(12)は式V及びVIに示される特定の構造をとる。
【0021】
【化24】

式V
・・・
示数c及びdはそれぞれ0、1又は2をとりうる。R_(1)は、炭素数18までの直鎖及び分岐状のアルキル及びアルキルアリール基、並びにジフェノールに共有結合してなる生物学的に活性な化合物のエステル誘導体から選択されるが、但しR_(1)はベンジル基ではない。」

オ「【0045】
(好適な態様の詳細な説明)
本発明の方法は、モノマーサブユニットの全部又は一部に側鎖カルボン酸基を有してなるポリカーボネート及びポリアリーレート並びにそれらのポリアルキレンオキシドブロックコポリマーを提供するものである。側鎖カルボン酸基を持つポリマーは、対応する側鎖ベンジルカルボキシレート基を持つ出発原料ポリマーの水素化分解によって調製される。ベンジルカルボキシレートポリマーである出発原料は、ベンジルエステルで保護された側鎖カルボン酸基を有するジフェノール化合物を単独又は他のエステルで保護されたカルボン酸基を持つジフェノール化合物と共に重合して得られる。特に、ベンジルカルボキシレートジフェノールは式Iaの構造を持つ。
【0046】
【化33】


上式中、R_(9)は、・・・。この好適な基において、ジフェノールはN末端アミノ基が除去されたチロシルチロシンジペプチドの誘導体と見なすことができる。
【0047】
他のエステルで保護されたカルボン酸基を持つジフェノール化合物は、式IVaの構造を持つ。
【0048】
【化34】


上式中、R_(12)は式IVに関して既に記載された通りである。・・・
【0049】
ジフェノールモノマーを調製する方法は、同一所有権者による米国特許第5,587,507号及び5,670,602号に開示されており、ここに両者を参考資料として採用する。好適な脱アミノチロシルチロシンエステルは、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチル及びベンジルエステルである。本発明においては、例えば脱アミノチロシルチロシンエチルエステルをDTEと称し、脱アミノチロシルチロシンベンジルエステルをDTBnと称する。また本発明において、脱アミノチロシルチロシン遊離酸はDTと称する。
・・・
【0051】
このように、例えばポリDTカーボネートは、ポリDTBnカーボネートの水素化分解により調製され、ポリDT-DTEカーボネートコポリマーは、ポリDTBn-DTEカーボネートコポリマーの水素化分解により調製される。したがって、ポリマー内において、側鎖アルキル及びアルキルアリールエステル基を持るモノマーサブユニットと側鎖カルボン酸基を持つモノマーサブユニットとのモル比を変化させることが可能である。」
「【0056】
式VIII(審決注:請求項1の【化1】と同じ。)のAが
【0057】
【化35】


であるとき、本発明のポリマーはポリカーボネートとなる。側鎖ベンジルカルボキシレート基を有してなるポリカーボネートホモポリマー及びコポリマーである出発原料は、米国特許第5,099,060号及び1997年6月27日に出願された米国特許出願番号第08/884,108号に記載の方法により調製することができ、両者の開示もやはりここに参考資料として採用する。この開示された方法は、本質的にジフェノールからポリカーボネートを重合する従来の方法である。・・・
【0059】
式VIIIのAが
【0060】
【化36】


であるとき、本発明のポリマーはポリアリーレートとなる。側鎖ベンジルカルボキシレート基を有してなるポリアリーレートホモポリマー及びコポリマーである出発原料は、米国特許第5,216,115号に記載の方法により調製することができ、この方法においてジフェノール化合物は、触媒として4-ジメチルアミノピリジウム-p-トルエンスルホナート(DPTS)を使用してカルボジイミドを媒体とする直接ポリエステル化により脂肪族又は芳香族ジカルボン酸と反応して、脂肪族又は芳香族ポリアリーレートを生成する。この特許の開示もまたここに参考資料として採用する。注目すべき点は、R_(8)をジカルボン酸と交差反応する官能基で置換されないものとする点である。
【0061】
本発明の出発原料ポリアリーレートの重合材料であるジカルボン酸は、式IXで示される構造を持ち、
【0062】
【化37】


上式中、脂肪族ポリアリーレートに関しては、R_(8)は炭素数18までの、好ましくは炭素数4乃至12の飽和及び不飽和、置換及び未置換のアルキル基から選択される。・・・
【0063】
・・・これらジカルボン酸は、α-ケトグルタル酸、琥珀酸、フマル酸、マレイン酸及びオキサロ酢酸を含む。他の好適な生体適合性脂肪族ジカルボン酸は、セバシン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸及びアゼライン酸を含む。」

カ「【0099】
以下の表は、以下の実施例に例示されるジフェノールに関し採用される略語を定義するものである。
脱アミノチロシル遊離酸 DT
脱アミノチロシルチロシンエチルエステル DTE
脱アミノチロシルチロシンベンジルエステル DTBn
(実施例1)
ポリDTBn_(50)-DTE_(50)カーボネートの水素化分解
調製
500mL丸底フラスコ内に、15gのポリDTBn-DTEカーボネート(DTBnとDTEとを1:1の割合で含む)を入れた。次いで、このフラスコに150mLの乾燥DMFを添加し、透明な溶液となるまで該混合物を攪拌した。この溶液に3.5gの5%Pd/BaSO_(4)触媒と、7mLの1,4-シクロヘキサジエン(水素供与体)を添加した。・・・
【0101】
構造解析
DMSO-d_(6)溶媒中の生成物の^(1)H-NMRスペクトルは、・・・。これらのスペクトルデータは、ポリマーがDTとDTEとを1:1の比率で含んでおり、ベンジル保護基が完全に除去されたことを示している。」
「【0103】
実施例2
ポリDTBn_(0.05)-DTE_(0.95)カーボネートの水素化分解
・・・
【0106】
実施例3
ポリDTBn_(0.10)-DTE_(0.90)カーボネートの水素化分解
・・・
【0109】
実施例4
ポリDTBn_(0.25)-DTE_(0.75)カーボネートの水素化分解
・・・
【0112】
実施例5
DT含量が、20%、40%、60%及び100%であるポリDT-DTEカーボネートを同様に調製した。」
「【0114】
実施例6
ポリDTBn-アジピン酸エステルの水素化分解
調製
500mLの圧力容器内に、Mwが76,800ダルトン、Mnが43,700ダルトンであるポリDTBn-アジピン酸エステル21gを入れた。次いで、この容器に200mLのDMFを添加し、透明な溶液となるまで該混合物を攪拌した。この溶液に4gの5%Pd/BaSO4触媒を添加した。該圧力容器をParr水素添加装置に取り付け、水素による加圧と減圧とを繰り返し、容器内の空気を水素で置換した。・・・
【0115】
構造解析
DMSO-d_(6)溶媒中の生成物の^(1)H-NMRスペクトルは、・・・ベンジル保護基が完全に除去されたことを示している。」

キ「【図1】 図1は、体外の(in vitro)生理的条件下におけるポリ0.5DT-0.5DTEカーボネート(●)、ポリDTカーボネート(■)及びポリDTEカーボネート(□)ポリマー組成に関し、百分率で表した質量維持率と時間との関係を示すグラフである。
【図1】




(3)引用発明
引用文献2の摘示(ア)?(キ)、特に、実施例1?5及び図1において、DTとDTEの割合を様々に変化させたポリDT-DTEカーボネートについて記載されていることを考慮すると、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。

「ポリDT-DTEカーボネート。」(以下「引用発明」という。)

(4)対比・判断
ア 対比
(ア)引用発明に係る「ポリDT-DTEカーボネート」は、引用文献2の請求項1の【化1】に含まれるポリマーであるから、「DTとカーボネートを含む繰返し単位」と「DTEとカーボネートを含む繰返し単位」とから構成されるものであり、【化1】においてAが-CO-(カルボニル基)である構造を有する。
「DT」は、脱アミノチロシルチロシン遊離酸(段落【0049】、【0099】)であるから、R_(9)が式IIのa=2,b=1,R_(2)=水素である「式IのR_(9)を含むサブユニット」に対応し(段落【0016】、【0017】)、また、「DTE」は脱アミノチロシルチロシンエチルエステル(段落【0049】、【0099】)であるから、R_(12)が式Vのc=2、d=1、R_(1)=エチルである「式IVのR_(12)を含むサブユニット」に対応する(段落【0020】、【0021】)。
そうすると、引用発明を構成する「DTとカーボネートを含む繰返し単位」は、本願補正発明の(b)のモノマー単位において、m=2,Y=OHであり、A=-CO-X-CO-ではなく、A=-CO-の構造を有するものに相当する。
また、引用発明が有する「DTEとカーボネートを含む繰返し単位」は、本願補正発明の(a)のモノマー単位において、m=2,Y=OEtであり、A=-CO-X-CO-ではなく、A=-CO-の構造を有するものに相当する。

(ウ)したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「(a)少なくとも1つの下記一般式を有するモノマー単位
【化1】

式中、mは2であり、YはOEtである;
および
(b)少なくとも1つの下記一般式を有するモノマー単位
【化2】

式中、mは2であり、YはOHである;
を含むポリマー。」
である点で一致し、次の点において相違する。

<相違点> (a)及び(b)のモノマー単位におけるAが、本願補正発明においては、「-CO-X-CO-であり、ここで、XはC_(1)?C_(18)アルキレン、CH_(2)OCH_(2)、CH_(2)O(CH_(2)CH_(2)O)_(s)CH_(2)、よりなる群から選ばれ、ここでsは1?5000」であるのに対して、引用発明においては、「-CO-」である点。

イ 判断
上記相違点は、要するに、本願補正発明はポリアリーレートであるのに対し、引用発明はポリカーボネートであることを意味するから、引用発明に係る「ポリDT-DTEカーボネート」を、サブユニットとしてDTとDTEを有するポリアリーレートとすることを、当業者が容易に想到することができたかについて、以下検討する。

(ア)引用文献2には、請求項1に記載された【化1】で表されるポリマーのうち、カルボン酸基を側鎖に持つ生分解性アニオン系ポリカーボネート及びポリアリーレート(段落【0003】)について、いずれも、「ポリマー主鎖の分解及び吸収速度に関し、これまで認識されていなかった劇的な加速効果が得られる」こと(段落【0011】)、及び、「ポリマー主鎖沿いに存在しうるカルボン酸側鎖の割合を単に調節することにより、移植後約5時間から3年に至る期間で完全に吸収するロッド状装置を形成し得る脅威的な程度まで分解及び吸収の速度を調節することを可能にするものである」ことが記載されている(段落【0011】)。
したがって、引用文献2の記載に接した当業者であれば、カルボン酸基を側鎖に持つ生分解性アニオン系ポリカーボネートとポリアリーレートは、いずれも分解及び吸収速度に優れる、すなわち、生分解性に優れるものであることを理解することができる。

(イ)引用文献2の段落【0045】?【0063】には、上記ポリアリーレートの製造方法として、原料として、ベンジル保護基で保護されたカルボン基を有する式(Ia)のジフェノール化合物及び式(IVa)のジフェノール化合物(段落【0046】、【0048】)に加えて、アジピン酸(審決注:HOOC-C_(4)アルキレン-COOH)などの式(IX)のジカルボン酸(段落【0062】、【0063】)を用いて、ポリマーを製造し、その後水素化分解によりベンジル保護基を選択的に除去する方法が記載されている。
そして、実施例6(段落【0114】?【0115】)においては、式(IX)のジカルボン酸としてアジピン酸を用いた「ポリDTBn-アジピン酸エステル」を、水素化分解してベンジル保護基(Bn)を完全に除去したポリマー、すなわち、「ポリDT-アジピン酸エステル」であるポリアリーレートを製造したことが記載されている。

(ウ)上記(ア)のとおり、カルボン酸基を側鎖に持つ生分解性アニオン系ポリカーボネートとポリアリーレートは、いずれも生分解性に優れることを理解した当業者であれば、上記(イ)のとおり、引用文献2にはポリアリーレートの製造方法が記載され、特に、実施例6では実際にアジピン酸を用いてポリアリーレートを製造していることを考慮すると、引用発明に係る「ポリDT-DTEカーボネート」を、アジピン酸を用いたポリアリーレートである「ポリDT-DTE-アジピン酸エステル」とし、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項である、Aが「-CO-X-COであり、ここで、XはC_(4)アルキレン」であるポリマーとすることは、当業者が容易に想到することができたものといえる。

(エ)そして、引用発明を、ポリカーボネートではなく、XがC_(4)アルキレンである-CO-X-CO-としてポリアリーレートとした場合においても生分解性に優れることは、上記(ア)のとおり、引用文献2の段落【0011】の記載に基づいて当業者が予測可能な程度のものであるから、本願補正発明の生分解性(分解及び再吸収性)に優れるという効果は、格別顕著なものとはいえない。

(オ)なお、審判請求人は、平成26年12月18日に提出された意見書において、「引用文献2には、ポリDTEカーボネートポリマーは、生理的条件下で検出可能な質量損失を示さないことが開示されています(図1等)。
一方、本願発明のポリマーは、全てDTEを含むモノマーからなるポリマーであっても、生分解性です。例えば、本願明細書中、図8には、本願発明のポリマーであるP(DTEスクシネート)が生分解性であることが示され、段落0080?0081には、本願発明のポリマーであるP(DTEジグリコレート)が、生分解性であることが示されています。
このように、側鎖構造が同一のポリマーであっても、その生分解性は全く異なりますので、たとえ当業者であっても、いずれの引用文献にも具体的に開示のない本願発明のポリマーが生分解性を示すことは全く予測できないと思料致します。よって、本願発明のポリマーは、当業者が予測し得ない格別優れた効果を奏するものです。」旨主張する。
しかし、P(DTEジグリコレート)及びP(DTEスクシネート)は、本願補正発明に係る(b)のモノマー単位(カルボン酸基を側鎖に持つ単位)を有さないから、本願補正発明ではなく、本件補正後の請求項11及び請求項12に係るポリマーに含まれるものである。したがって、P(DTEジグリコレート)及びP(DTEスクシネート)と、引用文献2に記載されたポリDTEカーボネート(図1)との生分解性の差は、本願補正発明の効果の予測性に何ら影響するものではない。
そして、カルボン酸基を側鎖に持つ本願補正発明が生分解性を示すことは、当業者が予測可能な程度のものであり、格別顕著なものとはいえないことは、上記(エ)のとおりである。
よって、審判請求人の上記主張は採用することはできない。

(カ)したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)小括
本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし15に係る発明は、平成26年12月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1において、補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用文献の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特表2001-522899号公報(引用文献2)の記載事項は、上記第2の3(2)に記載したとおりである。
また、引用発明は、上記第2の3(3)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記第2の2のとおり、本願発明を限定したものである。
そして、本願補正発明が、上記第2の3(5)のとおり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである以上、本願発明
も、同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-24 
結審通知日 2017-01-25 
審決日 2017-02-10 
出願番号 特願2013-103307(P2013-103307)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C08G)
P 1 8・ 121- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬下 浩一春日 淳一  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 西山 義之
藤原 浩子
発明の名称 再吸収性フェノール性ポリマー  
代理人 江口 昭彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
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