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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F28F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F28F
管理番号 1329590
審判番号 不服2016-8754  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-13 
確定日 2017-06-22 
事件の表示 特願2011-224988号「冷却装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 9日出願公開、特開2013- 83414号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年10月12日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成23年10月12日 :特許出願
平成27年 6月23日付け:拒絶理由の通知
平成27年 7月23日 :意見書、手続補正書の提出
平成27年 8月28日付け:拒絶理由の通知
平成27年10月28日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 3月 7日付け:拒絶査定
平成28年 6月13日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成28年6月13日にされた手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年6月13日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である)。
「壁によって囲まれて形成された内部空間を有し、該内部空間は熱源が配される空間と成し、前記内部空間を形成して上下方向に立設された側壁の一部は開口されてその開口部には前記内部空間とその外側の外部空間とを仕切り前記開口全体を閉鎖して前記開口部分の側壁を兼ねる隔壁の態様で、山部と谷部を複数連続的に折り返して板面が波形形状を呈したコルゲート状のフィンが上下方向に伸長されて設けられて前記内部空間は気密状の空間と成し、前記フィンの板面に沿った上下方向であるY方向と前記折り返しの伸長方向であって水平方向であるX方向とは直交する方向と成し、前記内部空間内の気体を前記フィンの前記山部と前記谷部とによって囲まれた空間通路を風の流通通路として前記フィンの板面に沿った上下方向に上側から下側に向けて通風させて前記内部空間内で該内部空間内の気体を循環通風させる内部気体流通用ファンと、前記外部空間の気体を前記フィンの前記内部気体通風側の板面とは反対側の板面に沿って前記フィンの前記山部と前記谷部とによって囲まれた空間通路を風の流通通路として上下方向に下側から上側に向けて通風させる外部気体流通用ファンとを有しており、前記フィンは前記谷部に対して両側の山部を形成する板面が開角する態様で板面が斜めに形成されており、前記内部空間内の気体と前記外部空間内の気体の少なくとも一方が前記X方向と前記Y方向とに直交するZ方向から対応する前記空気通路に導入されて前記Y方向である上下方向に流通するように、前記対応する前記空気通路への気体の導入部が形成されていることを特徴とする冷却装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成27年10月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「壁によって囲まれて形成された内部空間を有し、該内部空間は熱源が配される空間と成し、前記内部空間を形成して上下方向に立設された側壁の一部は開口されてその開口部には前記内部空間とその外側の外部空間とを仕切る隔壁の態様で、山部と谷部を複数連続的に折り返して板面が波形形状を呈したコルゲート状のフィンが上下方向に伸長されて設けられて前記内部空間は気密状の空間と成し、前記フィンの板面に沿った上下方向であるY方向と前記折り返しの伸長方向であって水平方向であるX方向とは直交する方向と成し、前記内部空間内の気体を前記フィンの前記山部と前記谷部とによって囲まれた空間通路を風の流通通路として前記フィンの板面に沿った上下方向に上側から下側に向けて通風させて前記内部空間内で該内部空間内の気体を循環通風させる内部気体流通用ファンと、前記外部空間の気体を前記フィンの前記内部気体通風側の板面とは反対側の板面に沿って前記フィンの前記山部と前記谷部とによって囲まれた空間通路を風の流通通路として上下方向に下側から上側に向けて通風させる外部気体流通用ファンとを有しており、前記フィンは前記谷部に対して両側の山部を形成する板面が開角する態様で板面が斜めに形成されており、前記内部空間内の気体と前記外部空間内の気体の少なくとも一方が前記X方向と前記Y方向とに直交するZ方向から対応する前記空気通路に導入されて前記Y方向である上下方向に流通するように、前記対応する前記空気通路への気体の導入部が形成されていることを特徴とする冷却装置。」

2.補正の適否
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である、コルゲート状のフィンの「隔壁の態様」について「前記開口全体を閉鎖して前記開口部分の側壁を兼ねる」との限定を付すものであり、当該補正により発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題に変更が生じるものではないから、当該補正は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて以下に検討する。

(1)本件補正発明
請求項1の「前記空気通路」の記載はそれ以前に対応する空気通路の記載がなく、文脈上「前記空間通路」の誤記と認められる。
よって、本件補正発明は、以下のとおりのものと認める。

「壁によって囲まれて形成された内部空間を有し、該内部空間は熱源が配される空間と成し、前記内部空間を形成して上下方向に立設された側壁の一部は開口されてその開口部には前記内部空間とその外側の外部空間とを仕切り前記開口全体を閉鎖して前記開口部分の側壁を兼ねる隔壁の態様で、山部と谷部を複数連続的に折り返して板面が波形形状を呈したコルゲート状のフィンが上下方向に伸長されて設けられて前記内部空間は気密状の空間と成し、前記フィンの板面に沿った上下方向であるY方向と前記折り返しの伸長方向であって水平方向であるX方向とは直交する方向と成し、前記内部空間内の気体を前記フィンの前記山部と前記谷部とによって囲まれた空間通路を風の流通通路として前記フィンの板面に沿った上下方向に上側から下側に向けて通風させて前記内部空間内で該内部空間内の気体を循環通風させる内部気体流通用ファンと、前記外部空間の気体を前記フィンの前記内部気体通風側の板面とは反対側の板面に沿って前記フィンの前記山部と前記谷部とによって囲まれた空間通路を風の流通通路として上下方向に下側から上側に向けて通風させる外部気体流通用ファンとを有しており、前記フィンは前記谷部に対して両側の山部を形成する板面が開角する態様で板面が斜めに形成されており、前記内部空間内の気体と前記外部空間内の気体の少なくとも一方が前記X方向と前記Y方向とに直交するZ方向から対応する前記空間通路に導入されて前記Y方向である上下方向に流通するように、前記対応する前記空間通路への気体の導入部が形成されていることを特徴とする冷却装置。」

(2)引用例の記載事項
ア 引用例1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平2-75896号公報(平成2年3月15日出願公開。以下、「引用例1」という。)には、図面(第1-3図)とともに、次の記載がある。

(ア-1)「本発明は、工作機等の制御盤に設置され、制御盤内の空気を冷却する熱交換装置に関するものである。」(1頁左欄11-13行)

(ア-2)「従来例を第4図、第5図、第6図を参考に説明する。1は工作機械の制御盤である。この制御盤1の天面には内気用の吸込口2と吐出口3が設けられている。そして吸込口2には送風機4が取付けられている。5は前記制御盤1の天面に取付けられた熱交換装置である。この熱交換装置5は、内部に中空の柱状形フィン6を複数枚平行して配設している。この柱状形フィン6は、1枚のフィンを長辺6aと短辺6bとから成りその端部6cをカシメている。また、柱状形フィン6は多数平行に配設するとき長辺6aが隣り合うように配している。また、柱状形フィン6の隣接する長辺6a間で形成される空間は、両端に端板8が設けられ、柱状形フィン6と端板8のすき間をシール剤9で密着され閉塞されている。
そして、この空間を前記吸込口2と吐出口3を連通させて第1通路7としている。熱交換装置5に取付けられた送風機10は外気を吸込、前記柱状形フィン6で形成された空間に流入させ、他端側から排気されるものでこの空間を第2通路11としている。
そして、このような構成において、第1通路7を流れる空気と、第2通路11を流れる空気は、柱状形フィン6の長辺6aを介して熱交換して第1通路7を流れる空気を冷却する。」(1頁左欄最終行-2頁左上欄4行)

(ア-3)「第1図、第2図、第3図において従来と同一構成については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。12は仕切板で一枚の板を波板状に折曲している。13は封止材で仕切板12の両端に接着され熱交換装置5′の内部に嵌入されている。波状形の仕切板12の下側空間を第1通路7′としている。また波板状の仕切板12の上側空間を第2通路11′としている。熱交換装置5′の天面には、外気用の吸込口14と吐出口15が設けられている。そして吸込口14には外気用の送風機10が取付られている。いわゆる送風機10は、仕切板12の片端の上部に位置する。前記のような構成において、第1通路7′を流れる空気と、第2通路11′を流れる空気は、仕切板12を介して熱交換して第1通路7′を流れる空気を冷却する。
発明の効果
以上のように本発明は、波板状の仕切板にすることにより、柱状形フィンを成形するためのカシメを必要とせず密閉性もよくなる。また柱状形フィンの両端に設けられていた端板が不要になり、これに併いシール剤も不要となる。外気用送風機は仕切板の上部に位置しているため、小型にでき、熱交換装置の取付面積も小さくできる。従ってコスト面でも低コストが可能となる。」(2頁右上欄16行-同左下欄下から2行)

(ア-4)第2及び3図の記載を参照すれば、波状形の仕切板12は、一枚の板を山部と谷部を複数連続的に折り返したものであって、谷部に対して両側の山部を形成する板面が開角する態様で板面が斜めに形成されている。

(ア-5)第1図の記載を参照すれば、第1通路7′を流れる空気と第2通路11′を流れる空気は、それぞれ送風機4と送風機10により内気と外気が上記各流れる空気の流れ方向に直交するように吸込口2と吸込口14から導入され、それぞれが互いに対向するように水平方向に流れている。

(イ)上記記載から、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「制御盤1内の空気を冷却する熱交換装置5’であって、当該制御盤1の天面には内気用の吸込口2と吐出口3が設けられ、そして吸込口2には送風機4が取り付けられ、当該熱交換装置5’は、天面に取り付けられ、波状形の仕切板12は、その両端に封止材13が接着され熱交換装置5’の内部に嵌入され、波状形の仕切板12は、一枚の板を山部と谷部を複数連続的に折り返したものであって、谷部に対して両側の山部を形成する板面が開角する態様で板面が斜めに形成されており、波状形の仕切板12の下側空間を第1通路7’とし、また波板状の仕切板12の上側空間を第2通路11’とし、熱交換装置5’の天面には、外気用の吸込口14と吐出口15が設けられ、そして、吸込口14には外気用の送風機10が取付られ、当該送風機10は、仕切板12の片端の上部に位置し、第1通路7’を流れる空気と第2通路11’を流れる空気は、それぞれ送風機4と送風機10により内気と外気が上記各流れる空気の流れ方向に直交するように吸込口2と吸込口14から導入され、それぞれが互いに対向するように水平方向に流れ、仕切板12を介して熱交換して第1通路7’を流れる空気を冷却する熱交換装置」

イ 引用例2
(ア)同じく引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2001-099531号公報(平成13年4月13日出願公開。以下、「引用例2」という。)には、図面(図1,3)とともに、次の記載がある。

(ア-1)【0011】熱交換器5は、図3に示すように、複数の空気通路(内気通路16と外気通路17)が隣接して設けられ、全体が直方体形状に構成されている。複数の空気通路は、それぞれ一定の間隔を保って対向する長方形の2枚の平面板18と、その2枚の平面板18によって形成される空間の側方をL字形に閉じる背面板19とで形成され、この背面板19を隣合う空気通路毎に対角状に配置することで、それぞれ内気通路16及び外気通路17として形成され、且つ左右両側の通路がそれぞれ内気通路16として構成されている。

(ア-2)【0015】次に、本実施例の作用及び効果について説明する。内気ファン6の回転により、キャビネット3の内部空気が熱交換器5の各内気通路16を上方から下方へ向かって流れ、外気ファン7の回転により、キャビネット3の外部空気が熱交換器5の各外気通路17を下方から上方へ向かって流れる。キャビネット3の内部空気は、電子機器2から発生する熱によって温度上昇し、外部空気より高温となっているため、熱交換器5を流れる内部空気と外部空気との間で熱交換が行われ、内部空気が外部空気によって冷却される。」

(イ)上記記載から、引用例2には、次の事項が記載されている。
「内気ファン6の回転により、キャビネット3の内部空気が熱交換器5の各内気通路16を上方から下方へ向かって流れ、外気ファン7の回転により、キャビネット3の外部空気が熱交換器5の各外気通路17を下方から上方へ向かって流れ、キャビネット3の内部空気は、電子機器2から発生する熱によって温度上昇し、外部空気より高温となっているため、熱交換器5を流れる内部空気と外部空気との間で熱交換が行われ、内部空気が外部空気によって冷却される冷却装置1」

ウ 引用例3
(ア)同じく引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2005-310924号公報(平成17年11月4日出願公開。以下、「引用例」という。)には、図面(図1,2)とともに、次の記載がある。

(ア-1)【0009】
以下に本発明の実施形態を示す。
図1は本発明の実施形態の外観を示す斜視図、図2はその縦断面図である。これらの図において10は盤用熱交換器のケース、11はその全体を覆うカバーである。図2に示すように、この盤用熱交換器は配電盤、分電盤、通信盤などの盤12の外側に取り付けて盤内冷却を行うものであり、ケース10、カバー11とも金属板材よりなる。

(ア-2)【0010】
ケース10の内部には上部隔壁13と下部隔壁14とが設けられており、それらの間に多数の熱交換チューブを備えた熱交換ユニット15が垂直に取り付けられている。上部隔壁13の上部には盤内空気吸引用のファン16があり、内部機器の発熱により温まった盤内空気を吸引して熱交換ユニット15のチューブ内に導き、下部隔壁14の下方から盤内に戻す。このときケース10の上部が仕切り板22となり、盤内空気はこの仕切り板22に当りガイドされながら熱交換ユニット15に流れる。

(ア-3)【0011】
ケース10の下部には盤外空気吸引用のファン17が設けられており、カバー11の下部の盤外空気吸引孔23から吸引した盤外空気を熱交換ユニット15のチューブの外側空間18に流し、チューブの壁面を介して熱交換を行わせる。ケース10の熱交換ユニット15の上部に対応する位置には通気孔19が形成されており、熱交換ユニット15を通過した盤外空気はこの通気孔19から外側に流れ、ケース10とカバー11との間に形成された流路20を流れたうえで、カバー11の上部の盤外空気排出孔21から排気される。」

(イ)上記記載から、引用例3には、次の事項が記載されている。
「上部隔壁13の上部には盤内空気吸引用のファン16があり、内部機器の発熱により温まった盤内空気を吸引して熱交換ユニット15のチューブ内に導き、下部隔壁14の下方から盤内に戻し、ケース10の下部には盤外空気吸引用のファン17が設けられており、カバー11の下部の盤外空気吸引孔23から吸引した盤外空気を熱交換ユニット15のチューブの外側空間18に流し、チューブの壁面を介して熱交換を行わせる熱交換ユニット15」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「天面」は、本件補正発明の「壁」の一部を構成するものである。

(イ)引用発明の熱交換装置5’は、工作機械の制御盤1内の空気を冷却するものであり、制御盤1は通常内部に電子部品等の発熱要素を含む筐体として構成されるものであるから、制御盤1は「壁によって囲まれて形成された内部空間を有し、該内部空間は熱源が配される空間と成し」ているものと認められる。

(ウ)引用発明の「吸込口2」と「吐出口3」は、本件補正発明の「開口部」に相当する。

(エ)引用発明の「波状形の仕切板12」は、本件補正発明の「波形形状を呈したコルゲート状のフィン」に相当する。

(オ)引用発明の仕切板12は、その両端に封止材13が接着されて、熱交換装置5’の内部に嵌入されていることから、当該仕切板12は、本件補正発明の「前記内部空間とその外側の外部空間とを仕切り前記開口全体を閉鎖して前記開口部分の側壁を兼ねる隔壁の態様」といえ、制御盤1の「前記内部空間は気密状の空間と成し」ている。

(カ)引用発明の仕切板12の波状の折り返しの伸張方向をX方向とすれば、これと直交する板面に沿った方向はY方向となる。
また、送風機4と送風機10による内気と外気の導入は、これらと直交するZ方向からとなる。

(キ)引用発明の「第1通路7’」及び「第2通路11’」は、それぞれ本件補正発明の内部空間内の気体の流通通路となる「空間通路」及び外部空間の気体の流通通路となる「空間通路」に相当する。

(ク)引用発明の「送風機4」及び「送風機10」は、それぞれ本件補正発明の「内部気体流通用ファン」及び「外部気体流通用ファン」に相当する。

(ケ)引用発明の「熱交換装置5’」は、熱交換を行うことにより制御盤1の内部を冷却するものであるから、本件補正発明の「冷却装置」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「壁によって囲まれて形成された内部空間を有し、該内部空間は熱源が配される空間と成し、前記内部空間を形成する壁の一部は開口されてその開口部には前記内部空間とその外側の外部空間とを仕切り前記開口全体を閉鎖して前記開口部分の壁を兼ねる隔壁の態様で、山部と谷部を複数連続的に折り返して板面が波形形状を呈したコルゲート状のフィンが伸長されて設けられて前記内部空間は気密状の空間と成し、前記フィンの板面に沿った方向であるY方向と前記折り返しの伸長方向であるX方向とは直交する方向と成し、前記内部空間内の気体を前記フィンの前記山部と前記谷部とによって囲まれた空間通路を風の流通通路として前記フィンの板面に沿った方向に通風させて前記内部空間内で該内部空間内の気体を循環通風させる内部気体流通用ファンと、前記外部空間の気体を前記フィンの前記内部気体通風側の板面とは反対側の板面に沿って前記フィンの前記山部と前記谷部とによって囲まれた空間通路を風の流通通路として板面に沿って通風させる外部気体流通用ファンとを有しており、前記フィンは前記谷部に対して両側の山部を形成する板面が開角する態様で板面が斜めに形成されており、前記内部空間内の気体と前記外部空間内の気体の少なくとも一方が前記X方向と前記Y方向とに直交するZ方向から対応する前記空間通路に導入されて前記Y方向に流通するように、前記対応する前記空間通路への気体の導入部が形成されている冷却装置。」

【相違点】
本件補正発明は、開口部が開口された壁が、上下方向に立設した側壁であり、コルゲート状のフィンが上下方向に伸長されて設けられ、当該フィンの板面に沿ったY方向が上下方向であり、内部空間側の気体の空間通路での通風が上側から下側であり、外部空間側の気体の空間通路での通風が下側から上側であるのに対し、引用発明は、吸込口2と吐出口3が天面に設けられており、仕切板12は水平方向に伸長されて設けられ、当該仕切板12の板面に沿ったY方向が水平方向であり、内部空間側の気体の第1通路7’での通風と、外部空間側の気体の第2通路11’での通風がそれぞれ互いに対向するものの水平方向に流れるものである点で相違する。

なお、出願人は審判請求書第8頁において、本件補正発明が、「引用文献1に記載された発明は、・・・本願発明における開口部に相当するような、熱交換装置5’全体を嵌合できるような貫通の穴(本願の図3に示される嵌合穴19に相当する開口部)は形成されていない」点(以下、「構成A」という)についても相違する旨主張している。
しかし、開口部が「熱交換装置5’全体を嵌合できるような貫通の穴」であることは、請求項1に限定がないことにより、上記構成Aは相違点に当たらず、出願人の主張は採用できない。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。
引用例2及び3に記載された冷却装置(盤用熱交換器)は、いずれも上記相違点の、本件補正発明における冷却対象に対する熱交換装置の配置及び熱交換装置における内気と外気の流通態様を備えるものであり、熱交換装置において、こうした配置及び流通態様を採用することは周知技術といえる。
そして、冷却対象に対する熱交換装置の配置は、例えば、本願明細書の段落[0025]にも、「なお、筐体の壁とは、筐体の上面や底面も含むものであり、筐体の上面や底面に本実施例のような冷却装置1を設けて筐体内冷却装置を形成することもできる。」とあるように、当業者が設計上適宜に決め得る事項と認められるから、引用発明において、熱交換装置を、上記周知技術に基づいて制御盤1の側面に配置することは当業者が容易になし得たことである。
また、その際、熱交換装置における内気と外気の流通態様に、上記周知技術を適用し、上記相違点の本件補正発明のようになすこともまた当業者が容易になし得ることである。
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、出願人は、審判請求書において、本件補正発明と引用発明との相違に基づく効果として、(1)引用文献1に記載された発明の熱交換装置5’においては、仕切り板12が水平方向に設けられているので、制御盤1内の熱い内気が熱交換装置5’内に導入されて熱交換装置5’の風路7’内を通る時に風路11’内を通る外気と熱交換されて冷やされ、比重が重くなると下側に下がろうとして仕切り板12の板面から離れる方向に拡散するものであり、一方、制御盤1の外の外気は、熱交換装置5’の風路11’内を通る時に風路7’内を通る内気と熱交換されて暖められ、比重が軽くなると上側に上がろうとして仕切り板12の板面から離れる方向に拡散するものである。このように、外気も内気も共に仕切り板12の板面から離れようとすることから、外気と内気とが仕切り板12の板面から離れない状態で仕切り板12を介して熱交換する区間が短いため、引用文献1に記載された発明においては、仕切り板12を介しての外気と内気との熱交換が効率良く行えない点、(2)仕切り板12が水平方向に設けられていることから、仕切り板12を介しての外気と内気との熱交換によって仕切り板12の内気側表面(風路7’側)に結露が生じた場合、その結露は風路7’の下側にしずくとなって落ち、熱交換装置5’の吐出口3から制御盤1の内部に風を吹き出し拡散させる構成によって風と共に結露水が制御盤1内に飛散して制御盤1内の熱源に降りかかってしまうことになり、不具合を生じさせることになる点、(3)本願発明においては、コルゲート状のフィンは、内部空間を形成して上下方向に立設された側壁の開口全体を閉鎖して該開口部分の側壁を兼ねる隔壁の態様で上下方向に伸長されて設け、内部空間の気体をフィンの板面に沿って上側から下側に向けて風を流すので、熱交換によって冷やされた気体は内部空間内の底側に出されることになり、内部空間内の気体の冷却を効果的に行うことができるのに対し、引用文献1に記載された発明においては、熱交換された内気は熱交換装置5’の吐出口3から下側に(制御盤1の上部側に)吹き出されるので、冷却された気体が制御盤1の底面側まで届かないおそれがあり、制御盤1内全体の冷却が効果的に行われない可能性がある点を指摘している。
しかし、上記(1)-(3)の効果は、コルゲート状のフィンに対して内部空間内の気体と外部空間内の気体を上下方向に対向して流通するようにしたことに基づく付随的な効果にすぎず、引用発明に周知技術を適用することにより付随的に生じる効果であって、当該効果はいずれも当業者が予測しうる範囲内のものである。

また、仮に上記構成Aが相違点であるとしても、冷却装置の取付部に貫通穴を設けるか否かは、設計上適宜に選択しうる事項と認められることにより、上記当業者が容易に発明をすることができたものとの判断を変更するものではない。

以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

(5)本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年6月13日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成27年10月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記本件補正発明同様、請求項1の「前記空気通路」の記載はそれ以前に対応する空気通路の記載がなく、文脈上「前記空間通路」の誤記と認められるから、以下のとおりのものと認める。

「壁によって囲まれて形成された内部空間を有し、該内部空間は熱源が配される空間と成し、前記内部空間を形成して上下方向に立設された側壁の一部は開口されてその開口部には前記内部空間とその外側の外部空間とを仕切る隔壁の態様で、山部と谷部を複数連続的に折り返して板面が波形形状を呈したコルゲート状のフィンが上下方向に伸長されて設けられて前記内部空間は気密状の空間と成し、前記フィンの板面に沿った上下方向であるY方向と前記折り返しの伸長方向であって水平方向であるX方向とは直交する方向と成し、前記内部空間内の気体を前記フィンの前記山部と前記谷部とによって囲まれた空間通路を風の流通通路として前記フィンの板面に沿った上下方向に上側から下側に向けて通風させて前記内部空間内で該内部空間内の気体を循環通風させる内部気体流通用ファンと、前記外部空間の気体を前記フィンの前記内部気体通風側の板面とは反対側の板面に沿って前記フィンの前記山部と前記谷部とによって囲まれた空間通路を風の流通通路として上下方向に下側から上側に向けて通風させる外部気体流通用ファンとを有しており、前記フィンは前記谷部に対して両側の山部を形成する板面が開角する態様で板面が斜めに形成されており、前記内部空間内の気体と前記外部空間内の気体の少なくとも一方が前記X方向と前記Y方向とに直交するZ方向から対応する前記空間通路に導入されて前記Y方向である上下方向に流通するように、前記対応する前記空間通路への気体の導入部が形成されていることを特徴とする冷却装置。」

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1ないし3及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、コルゲート状のフィンの「隔壁の態様」について、「前記開口全体を閉鎖して前記開口部分の側壁を兼ねる」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3),(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-19 
結審通知日 2017-04-25 
審決日 2017-05-10 
出願番号 特願2011-224988(P2011-224988)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F28F)
P 1 8・ 121- Z (F28F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安島 智也  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 井上 哲男
窪田 治彦
発明の名称 冷却装置  
代理人 五十嵐 清  

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