現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。
ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B |
---|---|
管理番号 | 1329639 |
審判番号 | 不服2016-9009 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-16 |
確定日 | 2017-07-11 |
事件の表示 | 特願2012-195134「ヘッド・サスペンション、ベース・プレートの製造方法、ヘッド・サスペンションの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月20日出願公開、特開2014- 53053、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年9月5日の出願であって、平成27年10月26日付けで拒絶理由が通知され、同年12月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年2月18日付けで拒絶理由が通知され、同年3月14日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年4月26日付けで拒絶査定されたところ、同年6月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1-5に係る発明は、平成28年3月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、本願の請求項1-5に係る発明は以下のとおりである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。 「 【請求項1】 アクチュエータを取り付けるための開口状の取付部に切断加工面が残存するベース・プレートと、 このベース・プレートにばね部を介して支持され読み書き用のヘッド部を支持したロード・ビームとを備え、 前記取付部は、前記ベース・プレートの後端部と前端部との間に形成され、 前記前端部は、前記後端部に前記ベース・プレートの幅方向中央部の連結部で一体に結合され、 前記前端部及び後端部から前記ベース・プレートの長さ方向に延出し相互に離間して対向し前記取付部を前記ベース・プレートの幅方向両側で開放し前記前端部の変位を前記後端部に対して許容する側部を備え、 前記切断加工面は、前記連結部と前記各側部とに備えられて前記開口状の取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向し、 前記取付部のアクチュエータ配置位置にアクチュエータを接着剤により固定すると共に前記切断加工面のカット・バリを接着剤により覆い、 前記アクチュエータを前記各切断加工面に前記接着剤により固定した、 ことを特徴とするヘッド・サスペンション。 【請求項2】 請求項1記載のヘッド・サスペンションの製造方法であって、 前記取付部の内包側に予めスクラップ部を一体に橋渡したベース・プレート半製品を形成する第1の工程と、 前記ベース・プレート半製品をバリ取処理、熱処理してから前記スクラップ部を前記取付部側の基端部で切断除去する第2の工程とを備え、 前記第1の工程は、前記スクラップ部の基端部の全部を前記取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向するように形成し、 前記第2の工程の切断除去は、前記取付部に残る切断加工面の全部が前記取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向するように行ない、 前記取付部の内包側に配置したアクチュエータを接着剤により固定すると共に前記取付部の切断加工面のカット・バリを接着剤により覆ってコーティングし、前記アクチュエータを前記各切断加工面に前記接着剤により固定した、 ことを特徴とするヘッド・サスペンションの製造方法。 【請求項3】 請求項2記載のヘッド・サスペンションの製造方法であって、 前記取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向した切断加工面のコーティングは、前記取付部及びアクチュエータ間への接着剤の充填により行なった、 ことを特徴とするヘッド・サスペンションの製造方法。 【請求項4】 切断加工面が残存した開口状の取付部にアクチュエータを接着剤により固定し読み書き用のヘッド部を支持したロード・ビームをばね部を介して支持するためのベース・プレートであって、 前記取付部は、前記ベース・プレートの後端部と前端部との間に形成され、 前記前端部は、前記後端部に前記ベース・プレートの幅方向中央部の連結部で一体に結合され、 前記前端部及び後端部から前記ベース・プレートの長さ方向に延出し相互に離間して対向し前記取付部を前記ベース・プレートの幅方向両側で開放し前記前端部の変位を前記後端部に対して許容する側部を備え、 前記切断加工面は、前記連結部と前記各側部とに備えられて前記開口状の取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向した、 ことを特徴とするベース・プレート 【請求項5】 請求項4記載のベース・プレートの製造方法であって、 前記取付部の内包側に予めスクラップ部を一体に橋渡したベース・プレート半製品を形成する第1の工程と、 前記ベース・プレート半製品をバリ取処理、熱処理してから前記スクラップ部を前記取付部側の基端部で切断除去する第2の工程とを備え、 前記第1の工程は、前記スクラップ部の基端部の一部又は全部を前記取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向するように形成し、 前記第2の工程の切断除去は、前記取付部に残る切断加工面の全部が前記取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向するように行う、 ことを特徴とするベース・プレートの製造方法。」 第3 原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は以下のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.請求項1-3について、引用文献1及び3-10 2.請求項4-5について、引用文献1、3-4及び6-10 (当審注:拒絶査定中、「請求項5」及び「請求項6」とあるのは、それぞれ「請求項4」及び「請求項5」の誤記と認める。) 〈引用文献等一覧〉 1.特開2012-14812号公報 3.特開2000-57723号公報(周知技術を例示) 4.特開2002-133809号公報(周知技術を例示) 5.特開2002-184139号公報(周知技術を例示) 6.特開昭63-213327号公報(周知技術を例示) 7.特開平5-35074号公報(周知技術を例示) 8.特開2005-94422号公報(周知技術を例示) 9.特公昭55-41974号公報(周知技術を例示) 10.米国特許第3066063号明細書(周知技術を例示) 第4 当審の判断 1 引用発明 (1)原査定の拒絶の理由で引用された特開2012-14812号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審において付したものである。)。 ア 「【0029】 [ヘッド・サスペンション] 図1は、ヘッド・サスペンションの概略を示す平面図である。 【0030】 図1のように、ヘッド・サスペンション1は、ベース・プレート3にばね部5を介してロード・ビーム7が支持されたものである。このベース・プレート3は、板厚が例えば100?250μmのステンレス鋼により形成されている。ロード・ビーム7には、図示しないフレキシャが取り付けられ、フレキシャにはヘッド部9を構成するスライダが支持されている。 【0031】 このヘッド・サスペンション1は、デュアル・アクチュエータ方式であり、ベース・プレート3は、一体のボス部11の他にアクチュエーター・ベース13を一体に備えている。アクチュエーター・ベース13には、アクチュエーター取り付け用の開口部13a,13bが形成されている。 【0032】 開口部13a,13bは、ベース・プレート3側の基端部15とロード・ビーム7側の前端部17との間に形成されている。前端部17は、基端部15に幅方向中央部で長さ方向に延びる連結部19で一体に結合されている。 【0033】 ここで、長さ方向は、ヘッド・サスペンションの旋回半径方向とし、幅方向は、長さ方向に直交する方向とする。 【0034】 アクチュエーター・ベース13は、側部21a,21b、23a,23bを有している。側部21a,21b、23a,23bは、基端部15及び前端部17間に幅方向両側で長さ方向に延出し相互に離間して対向している。この離間により、基端部15及び前端部17の幅方向両側間で開口部13a,13bを開放し前端部17の変位を許容する。 【0035】 アクチュエーターとしては、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)よりなる一対の矩形の圧電素子25a,25bが用いられている。圧電素子25a,25bは、開口部13a,13bにおいて非導電性接着剤により基端部15及び前端部17間に取り付けられている。」 イ 「 【0038】 図2のように、本発明実施例1のベース・プレートの製造方法は、第1の工程S1と第2の工程S2とを備えている。 【0039】 第1の工程S1では、厚みt=100?250μmの薄板材であるステンレス鋼のプレス成形によりベース・プレート半製品27を形成する。なお、このベース・プレート半製品27において、ベース・プレート3形成後の各部に対応する部分には、同名称及び同符号を付す。 【0040】 ベース・プレート半製品27には、基端部15及び前端部17の幅方向両側間を橋渡すように閉鎖繋部29a,29bが設けられている。開口部13a,13bは、閉鎖繋部29a,29bを加えることで閉じ形状となっている。 【0041】 図2において、閉鎖繋部29a,29bは、黒塗りの範囲であり、本実施例では、閉鎖繋部29a,29bが側部21a,21b、23a,23bを同一幅で橋渡すように一体に設けられている。 【0042】 なお、図2では閉鎖繋部29a,29bを黒塗りで示すが、この黒塗りは説明の便宜のためであり、実際は、閉鎖繋部29a,29bもベース・プレート半製品27と同材質であり、他の部分と境目なく一体に形成されているものである。 【0043】 第1の工程S1において形成されたベース・プレート半製品27は、例えば、複数まとめてバレル研磨によりバリ取処理が行われ、熱処理してから第2の工程S2に移される。 【0044】 バリ取処理、熱処理時は、閉鎖繋部29a,29bが側部21a,21b、23a,23bを同一幅で橋渡し、開口部13a,13b周囲の剛性を高めた状態で扱うことができる。 【0045】 バレル研磨は、閉鎖繋部29a,29bが側部21a,21b、23a,23bの対向間を閉止した状態で行わせることができる。 【0046】 第2の工程S2では、プレス加工により閉鎖繋部29a,29bが破断線の位置でカット除去される。この閉鎖繋部29a,29bのカット除去により、アクチュエーター取り付け用の開口部13a,13b及び結合用のボス部11が一体に形成されたヘッド・サスペンション1のベース・プレート3を形成することができる。」 ウ 「【0058】 図4は、本発明の実施例3に係り、ベース・プレートの製造工程概略を示す工程図である。なお、基本的な構成は、実施例1と同様であり、同一又は対応する構成部分には同符号又は同符号にBを付し、重複した説明は省略する。 【0059】 本実施例3の第1の工程S1Bでは、閉鎖繋部29aB,29bBを備えたベース・プレート半製品27Bを形成する。閉鎖繋部29aB,29bBは、延長結合部29aBa,29bBaを備えている。各延長結合部29aBa,29bBbは、連結部19に対し幅方向に一体に結合されている。 【0060】 第2の工程S2Bでは、閉鎖繋部29aB,29bBのカットを、側部21a,21b、23a,23bの長さ方向での端縁に相当する位置及び連結部19の幅方向縁部に沿った位置で行い、ベース・プレート3を形成する。」 エ 図4は、以下のとおりである。 ![]() したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「ベース・プレート3にばね部5を介してロード・ビーム7が支持されたヘッド・サスペンション1であって、 ロード・ビーム7には、図示しないフレキシャが取り付けられ、フレキシャにはヘッド部9を構成するスライダが支持され、 このヘッド・サスペンション1は、デュアル・アクチュエータ方式であり、ベース・プレート3は、一体のボス部11の他にアクチュエーター・ベース13を一体に備え、 アクチュエーター・ベース13には、アクチュエーター取り付け用の開口部13a,13bが形成され、 開口部13a,13bは、ベース・プレート3側の基端部15とロード・ビーム7側の前端部17との間に形成され、 前端部17は、基端部15に幅方向中央部で長さ方向に延びる連結部19で一体に結合され、 アクチュエーター・ベース13は、側部21a,21b、23a,23bを有し、 側部21a,21b、23a,23bは、基端部15及び前端部17間に幅方向両側で長さ方向に延出し相互に離間して対向し、この離間により、基端部15及び前端部17の幅方向両側間で開口部13a,13bを開放し前端部17の変位を許容し、 圧電素子25a,25bは、開口部13a,13bにおいて非導電性接着剤により基端部15及び前端部17間に取り付けられ、 ベース・プレートの製造方法は、第1の工程S1と第2の工程S2とを備え、 第1の工程S1において形成されたベース・プレート半製品27は、例えば、複数まとめてバレル研磨によりバリ取処理が行われ、熱処理してから第2の工程S2に移され、 本実施例3の第1の工程S1Bでは、閉鎖繋部29aB,29bBを備えたベース・プレート半製品27Bを形成し、閉鎖繋部29aB,29bBは、延長結合部29aBa,29bBaを備え、各延長結合部29aBa,29bBbは、連結部19に対し幅方向に一体に結合され、 第2の工程S2Bでは、閉鎖繋部29aB,29bBのカットを、側部21a,21b、23a,23bの長さ方向での端縁に相当する位置及び連結部19の幅方向縁部に沿った位置で行い、ベース・プレート3を形成する、ヘッド・サスペンション1。」 2 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「ベース・プレート3」は、「アクチュエーター取り付け用の開口部13a,13b」が形成されたアクチュエーター・ベース13を一体に備えたものである。 ここで、上記「開口部13a,13b」は、第1の工程S1において、閉鎖繋部29aB、29bBを備えたベース・プレート半製品27Bを形成し、バリ取処理を行った後の第2の工程S2Bで、該閉鎖繋部29aB、29bBをカットして形成したものであるから、上記「開口部13a,13b」には、「カット・バリ」を有する「切断加工面が残存」していると解することができる。 そうすると、引用発明の「アクチュエーター取り付け用の開口部13a,13b」は、本願発明の「アクチュエータを取り付けるための開口状の取付部」に相当し、引用発明の「ベース・プレート3」は、本願発明にいう「アクチュエータを取り付けるための開口状の取付部に切断加工面が残存するベース・プレート」といえる。 イ 引用発明の「ロード・ビーム7」は、「ベース・プレート3」に「ばね部5」を介して支持されたものであり、「ヘッド部9」を構成するスライダが支持されたフレキシャが取り付けられるから、本願発明と引用発明とは、「このベース・プレートにばね部を介して支持されヘッド部を支持したロード・ビームとを備え」る点で共通する。 ウ 引用発明の「開口部13a,13b」は、ベース・プレート3側の基端部15とロード・ビーム7側の前端部17との間に形成され、前端部17は、基端部15に幅方向中央部で長さ方向に延びる連結部19で一体に結合されるから、引用発明の「ベース・プレート3側の基端部15」、「ロード・ビーム7側の前端部17」及び「幅方向中央部で長さ方向に延びる連結部19」は、それぞれ本願発明の「前記ベース・プレートの後端部」、「前端部」及び「前記ベース・プレートの幅方向中央部の連結部」に相当し、引用発明の「開口部13a,13b」は、本願発明と同様、「前記ベース・プレートの後端部と前端部との間に形成され」、「前記前端部は、前記後端部に前記ベース・プレートの幅方向中央部の連結部で一体に結合され」ているといえる。 エ 引用発明の「側部21a,21b、23a,23b」は、基端部15及び前端部17間に幅方向両側で長さ方向に延出し相互に離間して対向し、この離間により、基端部15及び前端部17の幅方向両側間で開口部13a、13bを開放し前端部17の変位を許容するを有するとしているから、本願発明の「前記前端部及び後端部から前記ベース・プレートの長さ方向に延出し相互に離間して対向し前記取付部を前記ベース・プレートの幅方向両側で開放し前記前端部の変位を前記後端部に対して許容する側部」に相当する。 オ 引用発明の「閉鎖繋部29aB,29bB」は、延長結合部29aBa、29bBaを備え、各延長結合部29aBa、29bBbは、連結部19に対し幅方向に一体に結合され、第2の工程S2Bでは、側部21a、21b、23a、23bの長さ方向での端縁に相当する位置及び連結部19の幅方向縁部に沿った位置でカットするとしている。 そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記切断加工面は、前記連結部と前記各側部とに備えられ」、「前記連結部に備えられた切断加工面は、前記開口状の取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向」している点で共通する。 カ 引用発明の「圧電素子25a,25b」は、開口部13a、13bにおいて非導電性接着剤により基端部15及び前端部17間に取り付けられるとしているから、引用発明は、「前記取付部のアクチュエータ配置位置にアクチュエータを接着剤により固定」したものといえ、これにより、「圧電素子25a,25b」は「前記連結部に備えられた切断加工面」に非導電性接着剤により固定されると解することができる。 そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記取付部のアクチュエータ配置位置にアクチュエータを接着剤により固定」し、「前記アクチュエータを前記切断加工面に前記接着剤により固定した」点で共通する。 したがって、本願発明と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりである。 [一致点] アクチュエータを取り付けるための開口状の取付部に切断加工面が残存するベース・プレートと、 このベース・プレートにばね部を介して支持され読み書き用のヘッド部を支持したロード・ビームとを備え、 前記取付部は、前記ベース・プレートの後端部と前端部との間に形成され、 前記前端部は、前記後端部に前記ベース・プレートの幅方向中央部の連結部で一体に結合され、 前記前端部及び後端部から前記ベース・プレートの長さ方向に延出し相互に離間して対向し前記取付部を前記ベース・プレートの幅方向両側で開放し前記前端部の変位を前記後端部に対して許容する側部を備え、 前記切断加工面は、前記連結部と前記各側部とに備えられ、前記連結部に備えられた切断加工面は、前記開口状の取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向し、 前記取付部のアクチュエータ配置位置にアクチュエータを接着剤により固定し、 前記アクチュエータを前記切断加工面に前記接着剤により固定した、 ことを特徴とするヘッド・サスペンション。 [相違点1] 「ヘッド部」が、本願発明では、「読み書き用のヘッド部」であるのに対し、引用発明では、「読み書き用」かどうか明示の特定がない点。 [相違点2] 本願発明では、「前記切断加工面のカット・バリを接着剤により覆」うのに対し、引用発明では、「前記切断加工面のカット・バリを接着剤により覆」っているかどうか定かではない点。 [相違点3] 「前記各側部」に備えられた「切断加工面」が、本願発明では、「前記開口状の取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向」しているのに対し、引用発明では、「前記開口状の取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向」していない点。 また、この相違点3に関連して、さらに以下の相違点4を有する。 [相違点4] 「前記アクチュエータ」を、本願発明では、「前記各側部」に備えられた「切断加工面」にも、「前記接着剤により固定」するのに対し、引用発明では、そのような特定がない点。 3.判断 事案にかんがみ、まず上記相違点3について検討する。 本願発明は、「生産工程においてベース・プレート相互の絡み等による変形を、スクラップ部を有するベース・プレート半製品の採用で抑制すると、カット・バリを招き、製品としてハード・ディスク・ドライブに組み付けられた後にバリ脱落の恐れがあった」(段落29)こと(以下、「課題A」という。)にかんがみ、相違点3に係る構成を採用したものである。 一方、引用発明では、「前記各側部」に備えられた「切断加工面」は、アクチュエータ配置位置となる内包側へは指向せず、長さ方向前後へ指向した形態となっている。 そして、引用文献1には、上記課題Aについての記載も示唆もなく、引用発明において、相違点3に係る構成を採用する動機付けがあるとはいえない。 また、仮に、「バリ」の部分を接着剤で覆うことが周知技術であり、引用発明に該周知技術を適用できたとしても、各側部の長さ方向前後へ指向した切断加工面を、接着剤で追加コーティングするに留まり(即ち、本願明細書の段落75-79及び図8に変形例として記載したものと同様。)、相違点3に係る構成には至らないし、相違点3に係る構成を採用することが当業者が適宜なし得ることとまではいえない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、当業者が引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 4.請求項2-3に係る発明について 請求項2に係る発明は、「請求項1記載のヘッド・サスペンションの製造方法」の発明であって、少なくとも「第2の工程の切断除去」を、「前記取付部に残る切断加工面の全部」が「前記取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向」するように行ない、「前記取付部の切断加工面のカット・バリを接着剤により覆ってコーティングし、前記アクチュエータを前記各切断加工面に前記接着剤により固定」するとしているから、上記3で検討したのと同様の理由により、当業者が引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 請求項2を引用する請求項3に係る発明についても同様である。 5.請求項4に係る発明について 請求項4に係る発明は、「ベース・プレート」の発明であって、少なくとも「前記切断加工面は、前記連結部と前記各側部とに備えられて前記開口状の取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向した」ものであるから、上記3で検討したのと同様の理由により、当業者が引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 6.請求項5に係る発明について 請求項5に係る発明は、「請求項4記載のベース・プレートの製造方法」の発明であって、少なくとも「第2の工程の切断除去」を、「前記取付部に残る切断加工面の全部」が「前記取付部のアクチュエータ配置位置となる内包側へ指向」するように行うとしているから、上記3で検討したのと同様の理由により、当業者が引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1-5に係る発明は、いずれも、当業者が引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-06-26 |
出願番号 | 特願2012-195134(P2012-195134) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G11B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 齊藤 健一 |
特許庁審判長 |
近藤 聡 |
特許庁審判官 |
北岡 浩 水野 恵雄 |
発明の名称 | ヘッド・サスペンション、ベース・プレートの製造方法、ヘッド・サスペンションの製造方法 |
代理人 | 須藤 雄一 |