• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B
管理番号 1329656
審判番号 不服2016-10337  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-07-08 
確定日 2017-06-21 
事件の表示 特願2013-194443「バーチャル比較機能を備えた装置、バーチャル比較を行う方法、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月30日出願公開、特開2015- 58218〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月19日に出願され、平成27年8月28日付けで拒絶理由が通知され、同年10月26日付けで意見書並びに手続補正書が提出され、平成28年3月15日付けで拒絶査定(謄本送達日 同年4月12日)がなされ、同年7月8日付けで審判請求書が提出され、同時に手続補正書が提出され、同年11月4日付けで上申書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年7月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであって、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「表示部の画面上で走行比較を行うバーチャル比較機能を備えた装置であって、
比較の対象になる第3者の過去の区間毎のペースを含む走行データが記憶された記憶部と、
利用者自身の区間毎のペースを含む走行データを測定する測定部と、
前記第3者が設定されると、前記記憶部から該当の第3者の走行データを読み出し、前記読み出した第3者の走行データと前記測定部で測定された利用者自身の走行データとに基づいて生成されるバーチャル比較データを前記表示部に表示する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記読み出した第3者の区間毎のペースを含む走行データから、前記利用者自身の区間毎の目標ペースを設定することを特徴とするバーチャル比較機能を備えた装置。」

第3 刊行物
1 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2011-210119号公報(以下「引用文献」という。)には以下の記載がある。

ア 「【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1aの概要を示す模式図である。図1を参照すると、情報処理システム1aを利用するユーザUaが、ランニングをしている。情報処理システム1aは、情報処理装置100a、センサ群102a及び表示装置104aを含む。」

イ 「【0025】
表示装置104aは、ユーザUaにより装着されている。表示装置104aは、情報処理装置100aにより生成される出力画像を受信し、受信した出力画像をユーザUaに向けて表示する。図1の例では、表示装置104aは、ヘッドマウントディスプレイである。」

ウ 「【0035】
<2.一実施形態に係る情報処理装置の構成>
次に、図4?図14を用いて、本発明の一実施形態に係る情報処理装置100の具体的な構成を説明する。まず、図4は、一実施形態に係る情報処理装置100の構成の一例を示すブロック図である。図4を参照すると、情報処理装置100は、ユーザインタフェース110、ユーザデータ管理部120、計測部130、運動認識部140、位置取得部150、記憶部160、モデル生成部170、選択部180及び出力部190を備える。
【0036】
[2-1.ユーザデータの登録]
ユーザインタフェース110は、情報処理装置100がユーザからの指示又は情報入力を受け付けるためのインタフェースを提供する。ユーザインタフェース110は、例えば、表示装置104により表示される画面を用いたGUI(グラフィカルユーザインタフェース)であってもよく、又は音声入力インタフェースなどであってもよい。ユーザインタフェース110は、本項で説明するユーザデータの登録のみならず、後に説明する運動モデルの表示の際の条件の入力のためにも用いられる。」

エ 「【0044】
位置取得部150は、ユーザが運動している間、ユーザの現在位置を周期的に取得する。そして、位置取得部150は、取得した位置を表す位置データを記憶部160へ出力する。位置取得部150は、例えば、GPS(Global Positioning System)機能によりユーザの現在位置を取得してもよい。その代わりに、位置取得部150は、例えば、計測部130により計測されるユーザの加速度を積分することにより得られる速度ベクトルを積算することにより、ユーザの現在位置を取得してもよい。」

オ 「【0049】
図7は、本実施形態に係る運動モデルの生成について説明するための説明図である。図7の上部には、記憶部160により時系列で記憶されている計測データ132、運動記述データ142、及び位置データ152が示されている。図7の例では、位置データ152は、GPS機能により取得されるユーザの現在位置を表す緯度、経度及び高度を含む。モデル生成部170は、例えば、これらデータのうち、ユーザの1回の(1まとまりの)運動に対応する一連のデータを特定し、運動モデルを識別するための1つのモデルID(Model ID)を付与する。また、モデル生成部170は、特定した一連のデータについて、タイムスタンプごとにシーケンス番号(Seq. Num.)を付与する。そして、モデル生成部170は、出力画像の生成のために使用されるデータを、各タイムスタンプに関連付ける。図7の例では、各シーケンス番号に、タイムスタンプ(Time)、位置(Position)、速度ベクトル(Speed Vector)、心拍数(Heart Beat)及び呼吸数(Breathing Rate)の値が関連付けられている。また、モデル生成部170は、これらデータを運動記述データ(図7の例ではコンテキストID)と関連付ける。図7の例では、1つのモデルID(“M1”)に1つの代表的なコンテキストID(“E2”)が関連付けられているが、コンテキストIDは、シーケンス番号ごとに1つずつ関連付けられてもよい。モデル生成部170は、このように生成される運動モデル172を、記憶部160へ出力する。」

カ 「【0052】
選択部180は、ユーザ又はシステムにより指定された条件に従って、記憶部160により記憶されている複数の運動モデルから、運動するユーザに向けて表示すべき1つ以上の運動モデルを選択する。運動モデルの選択のための条件は、運動の開始前に指定される初期条件と、運動の開始後に特定される事後条件とに分類される。例えば、初期条件として、人物のタイプ、人物の属性、運動の種類、計測値の範囲、及び運動モデルの生成時期などが指定可能であってよい。
【0053】
図8は、本実施形態に係る運動モデルについての人物のタイプについて説明するための説明図である。図8を参照すると。記憶部160により蓄積されている3つの運動モデルが示されている。このうち、モデルIDが“M1”である運動モデルを運動モデルM1、モデルIDが“M2”である運動モデルを運動モデルM2、モデルIDが“M3”である運動モデルを運動モデルM3とする。また、運動モデルの選択に際して、ユーザU01が情報処理システム1を利用しようとしているものとする。
【0054】
図8の例において、運動モデルM1は、ユーザU01による運動をモデル化した運動モデルである。即ち、情報処理システム1を利用しようとしているユーザU01にとって、運動モデルM1は、自分の過去の運動についての運動モデルである。一方、運動モデルM2は、ユーザU02による運動をモデル化した運動モデルである。ユーザU01にとって、運動モデルM2は、他ユーザの運動についての運動モデルである。また、運動モデルM3のユーザIDは“X11”である。当該ユーザIDは、例えば、マラソンランナーなどの著名なスポーツ選手を指す。このような著名なスポーツ選手についての運動モデルM3は、例えば、多くのユーザが目標とする運動のモデルを提供する。このように、情報処理システム1を利用しようとするユーザの観点に基づいて、個々の運動モデルは、自分の運動モデル、他ユーザの運動モデル及び著名人の運動モデルという3種類のタイプに分類され得る。本実施形態では、選択部180は、例えば、このような複数のタイプのうちユーザにより指定される特定のタイプの運動モデルを、表示すべき運動モデルとして選択する。」

キ 「【0062】
(2-4-2.選択されたモデルの表示)
出力部190は、選択部180により選択された運動モデルについて、当該運動モデルに含まれる計測値と運動記述データにより特定される運動とを時系列で表現する一連の出力画像を生成する。そして、出力部190は、生成した出力画像を表示装置104へ出力する。
【0063】
本実施形態において、出力部190により生成される出力画像は、運動記述データにより特定される運動をする人物を模したキャラクターを表示する画像である。即ち、例えば図7に示した運動モデルM1のように、運動記述データにより特定される運動がランニングであれば(コンテキストID=E2(“Running”))、出力部190は、ランニングをしているキャラクターを表示する出力画像を生成する。」

ク 「【0065】
図10を参照すると、図中左の運動モデルM2のシーケンス番号#1に対応するタイムスタンプT1と位置P1とに応じて、時刻tにおけるキャラクター画像C01が生成されている。また、運動モデルM2のシーケンス番号#2に対応するタイムスタンプT2と位置P2とに応じて、時刻t+(T2-T1)におけるキャラクター画像C04が生成されている。さらに、時刻tと時刻t+(T2-T1)との間の時点におけるキャラクター画像として、2つのキャラクター画像C02及びC03が生成されている。このように、出力部190は、運動モデルに含まれる時系列のデータに対応するキャラクター画像だけでなく、連続する2つのデータの間の時点におけるキャラクター画像を補間することにより、時間軸に沿って移動していく人物を模した一連のキャラクター画像(即ち、映像)を生成することができる。」

ケ 「【0069】
図11の左には、時刻t1において生成されるキャラクター画像C11が示されている(11a参照)。キャラクター画像C11の表示位置は、例えば、図1に例示した情報システム1aにおいては、選択された運動モデルの時刻t1における人物の位置、ユーザの現在位置、及び表示装置104aに設けられる方位センサにより検出されるユーザの視線の向き(方位)に基づいて決定され得る。この場合、ユーザが前方を向いている場合には、ユーザは、ユーザよりも先行している人物を見ることができる。また、ユーザが後方を振り返った場合には、ユーザは、ユーザよりも遅れている人物を見ることができる。また、図2に例示した情報システム1bにおいては、キャラクター画像C11の表示位置は、例えば、仮想空間内での時刻t1における人物の位置及びユーザの現在位置に基づいて決定され得る。また、図3に例示した情報システム1cにおいては、キャラクター画像C11の表示位置は、例えば、選択された運動モデルの時刻t1における人物の位置のみに基づいて決定され得る(この場合、走っているキャラクターの代わりに泳いでいるキャラクターが表示される)。
【0070】
さらに、キャラクター画像C11の大きさは、選択された運動モデルの位置データにより表される人物の位置とユーザの現在位置との間の距離に応じて決定される。例えば、時刻t1において表示されている人物とユーザとの間の距離はD1、時刻t2において表示されている人物とユーザとの間の距離はD2であったものとする。ここで、D2>D1であることから、時刻t1において表示されるキャラクター画像C11(11a参照)は、時刻t2において表示されるキャラクター画像C12(11b参照)よりも大きい。」

コ 「【0077】
図13を参照すると、一例としての出力画像192aが示されている。出力画像192aには、キャラクター画像C3、ユーザ情報194及びモデル情報196が含まれる。キャラクター画像C3は、選択部180により選択された運動モデルに対応する人物を模したキャラクターの画像である。ユーザ情報194は、日付、現在時刻及び運動開始からの経過時間などの一般的な情報に加えて、運動開始からのユーザの走行距離、並びにユーザの現在の速度、心拍数及び体温などの計測値を示している。一方、モデル情報196は、モデルとなる人物の運動開始からの走行距離、並びに当該人物の現在の速度、心拍数及び体温などの計測値を示している。
【0078】
図14を参照すると、他の一例としての出力画像192bが示されている。出力画像192bには、キャラクター画像C3、ユーザ情報194、補足情報197、地図情報198及び方角情報199が含まれる。補足情報197は、モデルとなる人物とユーザとの間の現在の距離など、補足的な情報を示す。地図情報198は、モデルとなる人物の位置とユーザの現在位置とを地図上に示す。方角情報199は、例えば、速度ベクトルから認識されるユーザの進行方向と、表示装置104aに設けられる方位センサにより取得されるユーザの視線方向とを示す。これら補足情報197、地図情報198及び方角情報199を確認することにより、ユーザは、運動をしながら、自分の現在の状況とモデルとなる人物の状況との差をより容易に把握することができる。」

上記アないしコを総合すると、引用文献には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「ランニングをしているユーザが利用する情報処理システムは、情報処理装置、センサ群及び表示装置を含み、
表示装置は、ユーザにより装着され、情報処理装置により生成される出力画像を受信し、受信した出力画像をユーザに向けて表示し、
情報処理装置は、ユーザインタフェース、ユーザデータ管理部、計測部、運動認識部、位置取得部、記憶部、モデル生成部、選択部及び出力部を備え、
表示装置は表示される画面を有し、
位置取得部は、ユーザが運動している間、速度ベクトルを積算することにより、ユーザの現在位置を周期的に取得し、
運動モデルは、運動モデルを識別するための1つのモデルID、タイムスタンプごとのシーケンス番号、各シーケンス番号に関連づけられている、タイムスタンプ、位置、速度ベクトルの値を有し、
運動モデルについての人物のタイプについて、記憶部により3つの運動モデルが蓄積されており、
3つの運動モデルは、自分の過去の運動についての運動モデル、他ユーザの運動についての運動モデル、著名なスポーツ選手についての運動モデルであり、
著名なスポーツ選手についての運動モデルは多くのユーザが目標とする運動のモデルであり、
このような複数のタイプのうちユーザにより指定される特定のタイプの運動モデルを、表示すべき運動モデルとして選択し、
出力部は、選択された運動モデルについて、当該運動モデルに含まれる計測値と運動記述データにより特定される運動とを時系列で表現する一連の出力画像を生成し、生成した出力画像を表示装置へ出力し、
出力部により生成される出力画像は、運動記述データにより特定される運動をする人物を模したランニングをしているキャラクターを表示する出力画像であり、
運動モデルのシーケンス番号#1に対応するタイムスタンプT1と位置P1とに応じて、時刻tにおけるキャラクター画像C01が生成され、運動モデルのシーケンス番号#2に対応するタイムスタンプT2と位置P2とに応じて、時刻t+(T2-T1)におけるキャラクター画像C04が生成され、
キャラクター画像C11の表示位置は、選択された運動モデルの時刻t1における人物の位置、ユーザの現在位置、及び表示装置に設けられる方位センサにより検出されるユーザの視線の向き(方位)に基づいて決定され、ユーザが前方を向いている場合には、ユーザは、ユーザよりも先行している人物を見ることができ、ユーザが後方を振り返った場合には、ユーザは、ユーザよりも遅れている人物を見ることができ、
キャラクター画像C11の大きさは、選択された運動モデルの位置データにより表される人物の位置とユーザの現在位置との間の距離に応じて決定され、
出力画像には、ユーザ情報、モデル情報、補足情報、地図情報が含まれ、ユーザ情報は、運動開始からの経過時間、ユーザの走行距離、並びにユーザの現在の速度を示し、モデル情報は、モデルとなる人物の運動開始からの走行距離、並びに当該人物の現在の速度を示し、補足情報は、モデルとなる人物とユーザとの間の現在の距離の情報であり、地図情報は、モデルとなる人物の位置とユーザの現在位置とを地図上に示す、
情報処理システム。」

2 周知事項
一般に、ランニングの時間を計測する装置の技術分野において、「区間毎の目標ペースを設定し、利用者自身の区間毎のペースを測定すること」は、当業者に周知の事項である。以下のとおり、特開平9-61558号公報、特開2004-16444号公報、特開平6-154381号公報には、当該周知の事項が開示されている。

(1)特開平9-61558号公報
特開平9-61558号公報には、以下の記載がある。
ア 「【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施例の電子腕時計の回路ブロック図であり、この電子腕時計は、ラップタイム等の計測機能を有している。」

イ 「【0035】最初の区間P0のラップの計測が終了すると、同図(C)に示すように、表示装置7の上段に、2番目の区間P1を示す数値「2」と、2番目の区間P1の目標ラップタイムとして「20分16秒」が表示される。この場合、区間P1のラップの計測を開始してから1秒しか経過していないので、同図(C)に示すように、表示装置7の中段に計測中のラップタイムとして「1秒」が、下段にトータルの計測時間として「20分17秒」が表示されている。」

ウ 「【0037】この第1実施例によれば、目標とするトータル時間を入力すると、前回のレースのラップタイムから、目標とするトータル時間で走るための区間毎の目標タイムが計算されて表示されるので、ユーザは自分の走行ペースに合った目標タイムを参考にして走ることができる。」

上記アないしウより、特開平9-61558号公報には、「区間毎の目標タイムが計算されて表示され、ユーザは自分の走行ペースに合った目標タイムを参考にして走ることができ、ラップの計測を行う、電子腕時計。」の事項が記載されており、「区間毎の目標ペースを設定し、利用者自身の区間毎のペースを測定すること」が示されている。

(2)特開2004-16444号公報
特開2004-16444号公報には、以下の記載がある。

ア 「【0006】
【発明の実施の形態】
上記構成を適用することにより、つぎのような自動ラップタイム計測が可能なランニング支援装置を実現することが可能となる。例えば、利用者の走行距離を直接的あるいは間接的に計測するとともに計時手段で得られた走行時間と、条件設定手段であらかじめ設定したラップタイム計測区間のデータに基づき演算手段で演算を行うことにより、ラップタイム計測区間を通過するごとに最新のラップタイムを報知手段で報知する自動ラップタイム計測が可能なランニング支援装置を得ることができる。・・・」

イ 「【0007】
また、利用者のペース配分を支援するために、設定手段に目標ラップタイムゾーンを設定し、実測ラップタイムと目標ラップタイムゾーンを比較して、実測ラップタイムが目標ラップタイム下限を下回る場合(ペースが速い)、目標ラップタイムゾーン内にある場合(目標ペース)、目標ラップタイム上限を上回る場合(ペースが遅い)、それぞれの比較結果に応じて報知手段により報知し利用者に知らせることができるので、利用者はペースが適切であるか確認しながらランニングを行うことが可能となる。」

上記ア、イより、特開2004-16444号公報には、「利用者のペース配分を支援するために、設定手段に目標ラップタイムゾーンを設定し、実測ラップタイムと目標ラップタイムゾーンを比較して、実測ラップタイムが目標ラップタイム下限を下回る場合(ペースが速い)、目標ラップタイムゾーン内にある場合(目標ペース)、目標ラップタイム上限を上回る場合(ペースが遅い)、それぞれの比較結果に応じて報知手段により報知し利用者に知らせる、自動ラップタイム計測が可能なランニング支援装置。」の事項が記載されており、「区間毎の目標ペースを設定し、利用者自身の区間毎のペースを測定すること」が示されている。

(3)特開平6-154381号公報
特開平6-154381号公報には、以下の記載がある。
ア 「【0002】
【従来の技術】陸上競技の長距離走等では、競技中の走者が自分のペース等を判断するため、時計を携帯し、例えば、チェックポイント通過時にボタンを押してラップタイムを読み取る等している。これは、競技中だけでなく、練習中にも多く行われている。しかし、この方法は、ボタンを押してラップタイムを読み取るという動作が必要で、走りながらこれらを行わなければならないという煩わしさがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の問題に鑑み、所要の携帯用端末機を携帯して走行すれば、チェックポイントを通過するとき、ボタン操作等を行わなくとも自動的にラップタイムの計時が行われて表示され、同時に、その時間を音声に合成して出力するものを提供することにある。」

イ 「【0009】また、予め携帯用端末機2にラップタイムの目標値を書き込んでおき、チェックポイント通過時、目標ラップタイムとの差を音声で出力するようにもできる。この場合、目標ラップタイムのデータは外部装置より入出力部9を介して入力し、データ記憶部6に記録しておくようにする。そして、チェックポイント通過時の受信部3よりの信号に応じ、制御部5により、時計部4よりの時間とデータ記憶部6より読み出した目標時間との差を演算し、音声信号に合成し、音声出力部7より「○○秒遅れです」等と音声出力するようにする。この場合、目標ラップタイムのデータ入力は、携帯用端末機2に置数入力機能を設けておき、キー操作等で入力するようにしてもよい。」

上記ア、イより、特開平6-154381号公報には、「競技中の走者が自分のペース等を判断するため、自動的にラップタイムの計時が行われ、予めラップタイムの目標値を書き込んでおき、チェックポイント通過時、目標ラップタイムとの差を音声で出力する携帯用端末機。」の事項が記載されており、「区間毎の目標ペースを設定し、利用者自身の区間毎のペースを測定すること」が示されている。

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「表示装置」の「表示される画面」は、本願発明の「表示部の画面」に相当する。
引用発明の「運動モデルのシーケンス番号#1に対応するタイムスタンプT1と位置P1とに応じて、時刻tにおけるキャラクター画像C01が生成され、運動モデルのシーケンス番号#2に対応するタイムスタンプT2と位置P2とに応じて、時刻t+(T2-T1)におけるキャラクター画像C04が生成され、
キャラクター画像C11の表示位置は、選択された運動モデルの時刻t1における人物の位置、ユーザの現在位置、及び表示装置に設けられる方位センサにより検出されるユーザの視線の向き(方位)に基づいて決定され、ユーザが前方を向いている場合には、ユーザは、ユーザよりも先行している人物を見ることができ、ユーザが後方を振り返った場合には、ユーザは、ユーザよりも遅れている人物を見ることができ、
キャラクター画像C11の大きさは、選択された運動モデルの位置データにより表される人物の位置とユーザの現在位置との間の距離に応じて決定され、
出力画像には、ユーザ情報、モデル情報、補足情報、地図情報が含まれ、ユーザ情報は、運動開始からの経過時間、ユーザの走行距離、並びにユーザの現在の速度を示し、モデル情報は、モデルとなる人物の運動開始からの走行距離、並びに当該人物の現在の速度を示し、補足情報は、モデルとなる人物とユーザとの間の現在の距離の情報であり、地図情報は、モデルとなる人物の位置とユーザの現在位置とを地図上に示す」という機能は、本願発明の「表示部の画面上で走行比較を行うバーチャル比較機能」に相当する。
引用発明の「情報処理装置、センサ群及び表示装置を含む情報処理システム」は、本願発明の「バーチャル比較機能を備えた装置」に相当する。
引用発明の「タイムスタンプごとのシーケンス番号、各シーケンス番号に関連づけられている、タイムスタンプ、位置、速度ベクトルの値」は、本願発明の「走行データ」に相当する。
引用発明の「他ユーザの運動についての運動モデル、著名なスポーツ選手についての運動モデル」から、「表示すべき運動モデルとして選択」された「ユーザにより指定される特定のタイプの運動モデル」の「運動モデルを識別するための1つのモデルID、タイムスタンプごとのシーケンス番号、各シーケンス番号に関連づけられている、タイムスタンプ、位置、速度ベクトルの値」は、本願発明の「比較の対象になる第3者の過去の走行データ」に相当する。
引用発明の「運動モデルについての人物のタイプについて」、「3つの運動モデルが蓄積されて」いる「記憶部」は、本願発明の「比較の対象になる第3者の過去の走行データが記憶された記憶部」に相当する。
引用発明の「表示すべき運動モデル」が「選択」されることは、本願発明の「第3者が設定」されることに相当する。
引用発明の「ユーザが運動している間、ユーザの現在位置を周期的に取得」する「位置取得部」は、本願発明の「利用者自身の走行データを測定する測定部」に相当する。
引用発明の「出力部」は、選択された運動モデルのシーケンス番号に対応するタイムスタンプと位置とに応じて、その時刻における「キャラクター画像」を生成するものであることからすれば、記憶部から選択された運動モデルのシーケンス番号に対応するタイムスタンプと位置を読み出していることは自明である。したがって、引用発明の「出力部」は、本願発明の「第3者が設定されると、記憶部から該当の第3者の走行データを読み出」す機能を備えているといえる。
引用発明の「ユーザが前方を向いている場合には、ユーザは、ユーザよりも先行している人物を見ることができ、ユーザが後方を振り返った場合には、ユーザは、ユーザよりも遅れている人物を見ることができ、キャラクター画像C11の大きさは、選択された運動モデルの位置データにより表される人物の位置とユーザの現在位置との間の距離に応じて決定され、出力画像には、ユーザ情報、モデル情報、補足情報、地図情報が含まれ、ユーザ情報は、運動開始からの経過時間、ユーザの走行距離、並びにユーザの現在の速度を示し、モデル情報は、モデルとなる人物の運動開始からの走行距離、並びに当該人物の現在の速度を示し、補足情報は、モデルとなる人物とユーザとの間の現在の距離の情報であり、地図情報は、モデルとなる人物の位置とユーザの現在位置とを地図上に示す」ことは、本願発明の「読み出した第3者の走行データと前記測定部で測定された利用者自身の走行データとに基づいて生成されるバーチャル比較データを前記表示部に表示する」ことに相当する。したがって、引用発明の「出力部」は、本願発明の「前記読み出した第3者の走行データと前記測定部で測定された利用者自身の走行データとに基づいて生成されるバーチャル比較データを前記表示部に表示する制御部」に相当する。
引用発明において、著名なスポーツ選手の運動モデルはユーザが目標とする運動のモデルであるから、著名なスポーツ選手を運動モデルとして選択したときの「モデルとなる人物の現在の速度、モデルとなる人物とユーザとの間の現在の距離、モデルとなる人物の地図上での位置」は、ユーザの「目標」といえる。そして、「出力部」は、「選択された運動モデルのタイムスタンプや位置、速度ベクトル」から、「モデルとなる人物の現在の速度、モデルとなる人物とユーザとの間の現在の距離、モデルとなる人物の地図上での位置」を生成しているから、引用発明の「出力部」は、本願発明の「制御部」と、「読み出した第3者の走行データから、利用者自身の目標を設定する制御部」との概念で共通する。

以上より、本願発明と引用発明とは、
「表示部の画面上で走行比較を行うバーチャル比較機能を備えた装置であって、
比較の対象になる第3者の過去の走行データが記憶された記憶部と、
利用者自身の走行データを測定する測定部と、
前記第3者が設定されると、前記記憶部から該当の第3者の走行データを読み出し、前記読み出した第3者の走行データと前記測定部で測定された利用者自身の走行データとに基づいて生成されるバーチャル比較データを前記表示部に表示する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記読み出した第3者の走行データから、前記利用者自身の目標を設定する、バーチャル比較機能を備えた装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、第3者の過去の走行データ及び利用者自身の走行データが「区間毎のペース」を含み、第3者の「区間毎のペース」を含む走行データから、利用者自身の「区間毎の目標ペース」を設定するのに対し、引用発明では、第3者の過去の走行データ及び利用者自身の走行データが「区間毎のペース」を含むことは明らかでなく、第3者の「区間毎のペース」を含む走行データから、利用者自身の「区間毎の目標ペース」を設定することについても明らかでない点。

第5 判断
上記相違点について検討する。上記第3の2のとおり、一般に、ランニングの時間を計測する装置の技術分野において、「区間毎の目標ペースを設定し、利用者自身の区間毎のペースを測定すること」は、当業者に周知の事項である。そして、引用発明と当該周知の事項とは、ランニングにおいて目標を設定し、利用者自身の走行データを測定する点で共通しているから、引用発明に対し、当該周知の事項を適用して、第3者の過去の走行データに区間毎のペースを含めて、第3者の区間毎のペースを含む走行データから利用者自身の区間毎の目標ペースを設定するとともに、利用者自身の区間毎のペースを測定して利用者自身の走行データが区間毎のペースを含むようにして、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
本願発明が奏する効果について検討しても、引用発明及び上記周知の事項の範囲内のものである。

第6 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び前記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-03-01 
結審通知日 2017-03-28 
審決日 2017-04-10 
出願番号 特願2013-194443(P2013-194443)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 植田 高盛
森次 顕
発明の名称 バーチャル比較機能を備えた装置、バーチャル比較を行う方法、プログラム  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ