• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1329714
審判番号 不服2016-19059  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-12-20 
確定日 2017-07-18 
事件の表示 特願2014-133419「焼成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年1月21日出願公開、特開2016-12652、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年6月28日の出願であって、平成28年4月14日付けで拒絶理由が通知され、同年6月2日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年9月16日付け(発送日:同年9月29日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年12月20日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本願の請求項1?7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1?5に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2010-21470号公報
2.特開2006-202879号公報
3.特開2003-39417号公報(周知技術を例示)
4.特開平5-269777号公報(周知技術を例示)
5.特開平7-156119号公報(周知技術を例示)

加熱ローラに転写された配線素材が、基板への転写前に未硬化部P2を残す程度に乾燥された状態で、加圧工程にもたらされるようにすることで、導電性ペーストの硬化の効率を高めることが、引用文献2(段落【0034】?【0047】)に記載されている。
そして、引用文献2の乾燥は、ローラによりなされるものであるから、引用文献1のような状態にある導電性ペーストに対しても、引用文献1のいう「乾燥」に代え同様に適用し得ることが明らかであるだけでなく、引用文献2の乾燥が基板への転写前になされているように、引用文献1の「加圧」や引用文献2の「加圧」の状態のような、高い加圧力を要しないことが明らかなものである。
よって、引用文献1の「乾燥」工程につき、引用文献2のようなローラと導電性ペーストによる手法を適用することで、本願のようにすることは、当業者であれば容易になし得ること、といえる。

加圧工程として、低い圧力の予備加圧の後、高い圧力で本加圧をすることは、引用文献3(段落【0052】、【0053】)、引用文献4(段落【0032】、【0033】)、引用文献5(段落【0024】?【0026】、図3)に例示されるよう、積層体たる回路基板の形成における周知技術であり、通常、積層体は圧力が加わることで圧縮することから、予備加圧をなした時点で予備加圧前に比べ積層体の厚が減じていることは技術常識からして明らかなところである。

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって、請求項1に「前記前駆体を、強度が増しているが流動性が残っている半焼成状態とし」という事項を追加する補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第1加圧工程」について限定を付すものであり、かつ、補正後の請求項1に記載される発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当初明細書の段落【0037】には、「加圧工程Aでは、前駆体パターンを変形させない程度の面圧で加圧を行うことにより、前駆体パターンが半焼成層とされる。この半焼成層は、焼結前の導電性微粒子と初期の焼結体が混在し、押圧によるパターン変形に対して強度が増しているが、まだ流動性が残っている半焼成状態の層である。」と記載されているから、「前記前駆体を、強度が増しているが流動性が残っている半焼成状態とし」という事項は、当初明細書に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1?7に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、平成28年12月20日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
分散媒に導電性粒子を分散した前駆体を基材上にて焼成する焼成方法であって、
焼成温度以上に加熱した前記前駆体を加圧する工程として、少なくとも第1加圧工程と第2加圧工程とを有し、
第1加圧工程において、加圧によって、前記前駆体を、強度が増しているが流動性が残っている半焼成状態とし、加圧前よりも前記前駆体の高さを低くした後に、第1加圧工程より加圧力を大きくした第2加圧工程を行うことを特徴とする焼成方法。
【請求項2】
少なくとも第1加圧工程の際に、加圧部材を前記前駆体に接触させて圧力を加え、
第1加圧工程の終了時から第2加圧工程の開始時までに、前記加圧部材を前記前駆体に対して非接触とする期間を設けた請求項1に記載の焼成方法。
【請求項3】
前記加圧部材を焼成温度以上に加熱し、前記前駆体を焼成温度以上に加熱する請求項2に記載の焼成方法。
【請求項4】
第1加圧工程において、加圧後の前記前駆体の高さと加圧前の前記前駆体の高さとの比が0.9以下かつ0.2以上となるようにする請求項1から請求項3の何れかに記載の焼成方法。
【請求項5】
第1加圧工程において第1加圧部材を前記前駆体に接触させて加圧し、第2加圧工程において第2加圧部材を前記前駆体に接触させて加圧し、
第2加圧部材の硬度を第1加圧部材の硬度よりも高くした請求項1から請求項4の何れかに記載の焼成方法。
【請求項6】
第1加圧工程において、前記前駆体が受ける面圧が0.1MPa以下かつ0.1kPa以上となるようにする請求項1から請求項5の何れかに記載の焼成方法。
【請求項7】
第1加圧工程および第2加圧工程において前記前駆体に接触させて加圧する加圧部材の加圧力を経時的に変化させる請求項1から請求項6の何れかに記載の焼成方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2010-21470号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1) 「【0023】
はじめに、配線基板1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、配線基板1の断面図である。図1に示すように、配線基板1は、基材基板2と配線パターン3とから構成されている。また、配線パターン3は、バインダー5と導電性粒子4とからなる導電性ペースト6(後述)を所定のパターンに塗布することにより、基材基板2の表面に形成される。そして、導電性粒子4どうしの接触点を電子が通流することにより、配線パターン3に電流が流れる。」

(2) 「【0031】
はじめに、図2を参照し、配線基板1の作製方法について概説する。配線基板1は、塗布工程(S1)、加圧工程(S2)及び加熱工程(S3)を経て作製される。塗布工程(S1)では、導電性ペースト6が所定の配線パターン状に基材基板2表面に塗布される。塗布方法としては、導電性ペースト6を塗布する方法として従来周知の方法が使用可能である。例えば各種印刷法(凹版印刷法、凸版印刷法、平版印刷法)、ディスペンシング法、インクジェット法が使用可能である。
【0032】
次いで、塗布工程(S1)において導電性ペースト6が塗布された状態の基材基板2は、加圧工程(S2)において加圧される。ここで、導電性ペースト6を構成するバインダー5はポリエステル系樹脂より構成されており、樹脂性材料より構成された基材基板2と良好に密着する。また加圧工程(S2)は、導電性ペースト6中の導電性粒子4どうしを密集させ、粒子どうしを接触させて配線パターン3の導電性を向上させるために実施される。
【0033】
次いで、加圧工程(S2)において加圧された状態の基材基板2及び導電性ペースト6は、加熱工程(S3)において加熱され、配線パターン3が形成される。加熱工程(S3)で、配線パターン3を硬化させることにより、導電性粒子どうしが接触した状態となる。これにより、導電性の良好な配線パターン3を作製することが可能となる。
【0034】
なお、上述の加熱工程(S3)は、加圧工程(S2)後の基材基板2及び導電性ペースト6を加圧する方法に限定されない。例えば、加圧工程(S2)において加圧中に同時に加熱工程(S3)を実行する方法としてもよい。
【0035】
図3を参照して、導電性ペーストの塗布工程(図2中S1に相当)について説明する。図3では、導電性ペースト6を基材基板2上に所定のパターンに塗布する方法として、スクリーン印刷法を採用した場合を示している。図3に示すように、塗布工程では、所定の配線パターンを印刷可能なスクリーン版10が基材基板2上に配置される。そして、スクリーン版10上に導電性ペースト6が配置される。導電性ペースト6は、バインダー5と導電性粒子4とが既述の配合割合となるようにあらかじめ調整され混合されている。
【0036】
次いで、スクリーン版10上に配置された状態の導電性ペースト6を、スキージー11を使用して基材基板2側に押し付けながら伸ばす。これにより、基材基板2上に所定の配線パターン状に導電性ペースト6が塗布された状態となる。
【0037】
次に、図4を参照し、加圧工程(図2中S2に相当)について説明する。図4に示すように、加圧工程では、塗布工程(図3参照)にて塗布した導電性ペースト6上にローラ21を置き、下方に加圧しながら転がすことにより、導電性ペースト6を加圧する。これにより、導電性粒子4どうしを密集させて接触点を多くさせ、配線パターン3の導電性を向上させる。
【0038】
次に、加熱工程(図2中S3に相当)について説明する。加熱工程では、加圧工程により加圧された状態の導電性ペースト6を加熱し、硬化させる。以上の工程を経て、配線パターン3が形成された状態の配線基板1が作製される。」

(3) 「【0053】
次に、配線基板1の作製方法について説明する。基材基板2として、ポリエステル系材料からなる基材基板(「ルミラー(登録商標)(U12)」東レ社製)を使用した。そして、上述のように作製した導電性ペースト6(ペースト1?ペースト14)のそれぞれを、スクリーン印刷法により配線パターン状となるように基材基板2上に塗布した。スクリーン印刷を行う場合には、スクリーン印刷装置「MT-320TVC」(マイクロテック社製)を使用した。
【0054】
図5を参照し、基材基板2上に形成させた配線パターン3の外形を示す。図5は、配線パターン3が形成された状態の配線基板1を示す模式図である。図5に示すように、配線パターン3として、渦巻き状の配線(線幅1mm、線長837mm)を形成させた。
【0055】
次いで、スクリーン印刷法により表面に配線パターン3を形成させた状態の基材基板2を、加圧装置にて加圧した。加圧装置としては、加熱可能な加圧ローラを備え、当該加圧ローラに熱を加えながら転圧することにより、基板を加熱と同時に加圧することが可能な装置を使用した。なお、基材基板2は、加圧前に50℃の雰囲気中で1分間放置することにより初期乾燥させた。そして、上述の加圧装置により、加熱していない状態の加圧ローラにより1000Nの圧力で加圧した。次いで、加圧された後の基材基板2を130℃の温度で10分間加熱した。
【0056】
以上の工程を経て、配線基板1を作製した。なお、ペースト1?ペースト14を使用して作製した配線基板1を、それぞれ「サンプル1」?「サンプル14」という。
【0057】
なお、加圧工程と加熱工程とを同時に行った場合に得られる配線基板1の評価を行う場合には、上述と同様の加圧装置を使用し、基材基板2を加圧前に50℃の雰囲気中で1分間放置することにより初期乾燥させた後、加圧ローラを120℃に加熱した状態で500Nの圧力で加圧することにより、配線基板1を作製した。
4.評価方法」

上記の記載事項及び図面の記載を総合すると、引用文献1には、配線基板及び配線基板作成方法に関して、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「バインダー5と導電性粒子4とからなる導電性ペースト6を基材基板2上にて硬化する硬化方法であって、
工程として、初期乾燥と、加圧中に同時に加熱する工程とを有し
初期乾燥において、50℃の雰囲気で1分間放置することにより初期乾燥させた後に、加圧ローラを120℃に加熱した状態で500Nの圧力で加圧を行う硬化方法。」

2 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2(特開2006-202879号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0034】
(導体パターン形成装置の動作)
ここで、導体パターン形成装置1の動作について説明する。まず、ディスペンサー3により導体パターンを形成する動作について説明する。
【0035】
まず、本動作においては、昇降手段が、パレット8内の導電インクが転写ローラ4に付着しない位置までパレット8を下降させている。そして、転写ローラ4の回転に合わせて、離型剤塗布装置6が転写ローラ4の表面に離型剤を塗布する。図2(a)に示すように、離型剤を塗布された転写ローラ4の表面に、ディスペンサー3が導電インクを吐出して導体パターンPを形成する。転写ローラ4の表面に形成された導体パターンPは、転写ローラ4の回転にともないニップ部Nに送られる。
【0036】
この際、制御部12が、転写ローラ4の回転速度と、転写ローラ4の表面温度(200?300℃程度)を制御する。この制御により、図2(b)に示すように、ディスペンサー3により形成された導体パターンPは、転写ローラ4の表面側のみ高温硬化(焼結)して硬化部P1となり、未硬化部P2を残した状態でニップ部Nへ送られる。
【0037】
一方、導体パターンPがニップ部Nに送られるタイミングに合わせて、搬送ローラ2が基板11をニップ部Nに搬送する。ニップ部Nに搬送された基板11は、転写ローラ4、加圧ローラ5に挟持される。
【0038】
この際、図2(c)に示すように、ニップ部Nにおいて、未硬化部P2が基板11と密着し、離型剤により転写ローラ4から剥れやすくなっている導体パターンPが転写ローラ4から基板11へ転写される。未硬化部P2は、転写の際に加圧、加熱されて硬化するか、転写された後に余熱により硬化する。導体パターンPを転写された基板11は、装置外へ排出されることで、導体パターンが形成される。」

上記の記載事項から、引用文献2には、転写ローラ4の表面に、ディスペンサー3が導電インクを吐出して導体パターンPを形成し、導体パターンPは、転写ローラ4の表面側のみ高温硬化(焼結)して硬化部P1となり、未硬化部P2を残した状態でニップ部Nへ送られ、ニップ部Nに搬送された基板11は、転写ローラ4、加圧ローラ5に挟持され、未硬化部P2が基板11と密着し、導体パターンPが転写ローラ4から基板11へ転写され、未硬化部P2は、転写の際に加圧、加熱されて硬化するか、転写された後に余熱により硬化し、導体パターンが形成されることが記載されている(以下、「引用文献2に記載された事項」という。)。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「導電性粒子4」は、本願発明1の「導電性粒子」に相当する。
以下同様に、「バインダー5と導電性粒子4とからなる導電性ペースト6」は、「分散媒に導電性粒子を分散した前駆体」に、
「基材基板2」は、「基材」に、それぞれ相当する。

引用発明の「硬化」と、本願発明1の「焼成」とは、「硬化」である点で、概念上共通する。
引用発明の「50℃の雰囲気で1分間放置することにより初期乾燥」と、本願発明1の「第1加圧工程」とは、「第1工程」である点で共通する。
引用発明の「加圧ローラを120℃に加熱した状態で500Nの圧力で加圧すること」は、「硬化温度以上に加熱した前記前駆体を加圧する工程として、第2加圧工程」であるとともに、「第1工程より加圧力を大きくした第2加圧工程を行うこと」といえる。

以上のことから、本願発明1と引用発明とは次の点で一致する。
「分散媒に導電性粒子を分散した前駆体を基材上にて硬化する硬化方法であって、
硬化温度以上に加熱した前記前駆体を加圧する工程として、第2加圧工程とを有し、
第1工程より加圧力を大きくした第2加圧工程を行う硬化方法。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点1]
「硬化」に関して、本願発明1では「焼成」であるのに対して、引用発明では「硬化」である点。

[相違点2]
「第1工程」に関して、本願発明1では、「焼成温度以上に加熱した前記前駆体を加圧する工程」で、「加圧によって、前記前駆体を、強度が増しているが流動性が残っている半焼成状態とし、加圧前よりも前記前駆体の高さを低く」しているのに対して、
引用発明では、「初期乾燥」で、「50℃の雰囲気で1分間放置することにより初期乾燥させ」ている点。

(2) 相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。

ア 引用文献2について
引用文献2に記載された事項における、「導体パターンPは、転写ローラ4の表面側のみ高温硬化(焼結)」すること、及び「未硬化部P2は、転写の際に加圧、加熱されて硬化するか、転写された後に余熱により硬化」することは、それぞれ「第1工程」、及び「第2加圧工程」といえる。
しかし、引用文献2に記載された事項において、第1工程である「導体パターンPは、転写ローラ4の表面側のみ高温硬化(焼結)」することでは、加圧をしていない。
そうすると、たとえ、引用発明の第1工程として引用文献2に記載された事項を適用したとしても、相違点2に係る本願発明1の構成に至るものではない。

イ 周知技術について
次に、原査定の拒絶の理由に引用され、加圧工程として、低い圧力の予備加圧の後、高い圧力で本加圧をすることは、積層体たる回路基板の形成における周知技術であることの例として示された引用文献3(特開2003-39417号公報)、引用文献4(特開平5-269777号公報)、及び引用文献5(特開平7-156119号公報)について検討する。
引用文献3(特に、段落【0052】?【0057】を参照。)には、グリーンシートの切断方法および積層部品の製造方法に関して、切断後のグリーンシート22aを、金型50内に入れ、積層のために、10?400MPaで、通常、室温で、予備加圧し、次に、金型52の内部に入れて、100?1000MPa、80?180℃で、プレス装置により加圧し、次に、脱バインダ処理および、保持温度:1000?1400℃で焼成処理を行うことが記載されている(以下、「引用文献3に記載された事項」という。)。
引用文献4(特に、段落【0031】?【0034】を参照。)には、ホットプレスに関して、上熱板11と下熱板9の間に多層基板34の素材34′を挿入し、予備加圧として、面圧約1?5kgf/cm^(2)を付与し、下熱板9および上熱板11により約130℃の予備加熱を与え、この温度、圧力状態を5?10分維持すると接着樹脂は軟化し、流動状態となり、次に、5?30kgf/cm^(2)の接着面圧で加圧操作を行い、接着作業を行うことが記載されている(以下、「引用文献4に記載された事項」という。)。
引用文献5(特に、段落【0002】、【0024】?【0026】、及び図3を参照。)には、セラミックグリーンシート積層体の圧着成型方法に関して、プレス機11内にセラミックグリーンシート積層体を配置し、圧力値P_(1)で時間T_(1)の間予備加圧を行い、次に、圧力値P_(3)まで増圧し、時間T_(3)の間、第1の本加圧工程を行い、次に、圧力値P_(4)まで増圧し、時間T_(7)の間、第2の本加圧工程を実施し、得られた積層体生チップを焼成し、セラミック積層体を得ることが記載されている(以下、「引用文献5に記載された事項」という。)。
しかし、引用発明は、導電性ペーストの硬化方法であるのに対して、周知技術の例として示された引用文献3?5に記載された事項は、いずれも、積層体の製造に関するものであるから、両者は、その属する技術分野が同じであるとはいえない。
そうすると、引用発明に上記周知技術を適用する動機付けがあるとはいえない。

また、相違点2に係る本願発明1の構成では、第1工程は「焼成温度以上に加熱した前記前駆体を加圧する工程」で、「前駆体を、強度が増しているが流動性が残っている半焼成状態」とするものであるのに対して、周知技術の例として示された引用文献3?5に記載された事項では、予備加圧(第1工程)において焼成温度以上に加熱するものではない。
そうすると、たとえ、引用発明の第1工程として上記周知技術を適用したとしても、相違点2に係る本願発明1の構成に至るものではない。

ウ 小括
したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び上記周知技術(引用文献3?5に記載された事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2?7について
本願発明2?7は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献2に記載された事項、及び上記周知技術(引用文献3?5に記載された事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定について
前記「第6 1」及び「第6 2」のとおり、本願発明1?7は、原査定において引用された引用文献1、引用文献2、及び周知技術(引用文献3?5に記載された事項)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2017-07-03 
出願番号 特願2014-133419(P2014-133419)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 小関 峰夫
滝谷 亮一
発明の名称 焼成方法  
代理人 山田 茂樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ