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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61J |
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管理番号 | 1329755 |
審判番号 | 不服2016-6447 |
総通号数 | 212 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-04-28 |
確定日 | 2017-06-19 |
事件の表示 | 特願2015- 32409号「調剤装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月28日出願公開、特開2015- 97822号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成19年4月10日の特許出願である特願2007-103095号の一部を、平成24年11月7日に分割して新たな特許出願とした特願2012-245641号の一部を、平成27年2月23日にさらに分割して新たな特許出願としたものであって、平成28年2月24日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。 これに対し、平成28年4月28日に該査定の取消を求めて本件審判の請求がされ、その後、同年11月14日付けで当審から拒絶の理由が通知され、平成29年1月6日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年2月2日付けで当審から再度拒絶の理由が通知され、同年3月23日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明は、上記平成29年3月23日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認めるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。(以下請求項1に係る発明を「本願発明」という。) 「 【請求項1】 複数の錠剤カセットを搭載可能なカセット棚と、 前記カセット棚に搭載された錠剤カセットから錠剤シートを取り出す取出手段と、 前記取出手段によって前記錠剤カセットから取り出された錠剤シートの姿勢を制御する姿勢制御手段と、 前記姿勢制御手段によって姿勢を制御された錠剤シートをカッティングするカッティング手段とを備え、 前記姿勢制御手段は、前記取出手段とともに、前記カセット棚の各錠剤カセットに対して移動することを特徴とする調剤装置。」 第3 引用文献記載の発明又は事項 これに対して、当審での平成29年2月2日付けの拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された刊行物である特開2007-50893号公報(引用文献1)、及び、特開平4-269964号公報(引用文献2)には、以下の発明又は事項が記載されていると認められる。 1 引用文献1 (1)引用文献1に記載された事項 引用文献1には、「所定物取り揃え装置及び方法」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。 (ア)「【0001】 本発明は、所定数の所定物が連結状態で集合した全数連結集合体から、必要数の所定物を取り揃えるための所定物取り揃え装置及び方法に関する。」 (イ) 「【0018】 図2に示すPTP包装薬剤の全数連結集合体Paは、錠剤が5行2列に包装されてなるものであり、1行毎に切折線Bが設けられている。この全数連結集合体Paは、所定数である10(従って所定数の全数は10)の錠剤包装物(所定物)が連結状態で集合したものである。勿論、全数連結集合体はこれに限定されるものではない。」 (ウ) 「【0021】 収納棚Sは、所定物についての全数連結集合体Pa(又はその他の所定物についての全数連結集合体。以下、それらを含めて所定物、全数連結集合体Paという。)を収納するための全数体収納部Saを、上下方向4段の各段毎に3箇所ずつ有すると共に、所定物についての端数連結集合体Pb又は所定物単体(又はその他の所定物についての端数連結集合体又は所定物単体、以下、その端数連結集合体を含めて端数連結集合体Pbという。)を収納するための端数体収納部Sbを、各全数体収納部Saの上側に有する。・・・(後略)」 (エ) 「【0024】 全数体収納部Saからの全数連結集合体Paの取り出し、端数体収納部Sbからの端数連結集合体Pb又は所定物単体の取出、端数連結集合体Pb又は所定物単体の端数体収納部Sbへの収納は、上下方向及び横方向に自在に移動し得るチャック体H(全数体取出手段、端数体取出手段、及び端数体収納手段)により行われる。なお、全数体取出手段、端数体取出手段、及び端数体収納手段の一部又は全部を個別に設けることも可能である。」 (オ) 「【0025】 納棚Sの側方に、切離用載置盤Caと、前後及び横方向に移動し得る縦切断刃Cb及び横切断刃Ccからなる切離部Cが設けられている。切離部Cは、固定位置とすることもでき、例えば全数連結集合体Paや端数連結集合体Pb又は所定物単体を取り出す位置の近辺等に、移動して切離を実行するものとすることもできる。また、切離部Cを複数設けることもできる。なお、切断手段としては、レーザー溶断、超音波溶断等の手段を適宜採用し得る。」 (カ) 「【0032】 これらに基づき、 i) チャック体Hにより、所要の所定物についての全数体収納部Saから所要の全数連結集合体Paを取り出す ii) チャック体Hにより、所要の所定物についての端数体収納部Sbから所要の端数連結集合体Pb又は所定物単体を取り出す iii) 切離部Cにおいて、取り出した全数連結集合体Paの1つまたは端数連結集合体Pbから所要数の所定物を切離し、収納手段全数連結集合体Pa又は端数連結集合体Pbから所要数の所定物を切離した残りの端数連結集合体Pb又は所定物単体を、チャック体Hにより、その所定物についての端数体収納部Sbに収納する のうちi又はii或いは何れか2つ又は3つ全ての組み合わせを実行する。」 (キ) 「【0033】 チャック体Hにより全数体収納部Saから取り出された全数連結集合体Paの1つ又は端数体収納部Sbから取り出された端数連結集合体Pbは、必要に応じ切離用載置盤Ca上に載置され、縦切断刃Cb及び横切断刃Ccにより患者に処方する所要数の所定物が切離される。好ましくは、全数連結集合体Paの所定端部側から患者に処方する所要数の所定物を切離する。切離は、所要数の所定物同士及び残りの所定物同士が何れも連結を維持して端数連結集合体Pbを構成するように行う。これにより、取り扱いを容易且つ確実におこうことができる。尤も、何れか一方又は両方を、所定物同士の連結を必ずしも維持しないで、或いは全ての所定物同士を分離して行うこともできる。」 (ク) 「【0034】 切離の実行は、切離用載置盤Ca上の所定位置に所定姿勢で全数連結集合体Pa又は端数体収納部Sbを載置し、その全数連結集合体Pa又は端数体収納部Sbについて全数体記憶手段又は所定物数記憶手段等に記憶された切離位置データに基づいて行うことや、各種イメージセンサにより切離部位を特定して行うことや、その他の手段により、又は2以上の手段を併用して切離位置を特定して行うことができる。 (ケ)上記記載事項(オ)の「切離用載置盤Caと」「縦切断刃Cb及び横切断刃Ccからなる切離部C」については、上記記載事項(キ)に「チャック体Hにより全数体収納部Saから取り出された全数連結集合体Pa・・・縦切断刃Cb及び横切断刃Ccにより・・・切離される。」とあり、また、上記記載事項(ク)に「切離の実行は、切離用載置盤Ca上の所定位置に所定姿勢で全数連結集合体Pa・・・を載置し・・・切離位置データに基づいて行う」とあることから、これらをまとめると、該「切離部C」については、「チャック体Hによって前記全数体収納部Saから取り出され、所定姿勢で載置されたPTP包装薬剤の全数連結集合体Paを、切離する切離部C」ということができる。 (2)引用文献1発明 そこで、引用文献1の上記記載事項(ア)ないし(ク)及び上記認定事項(ケ)を図面を参照しつつ技術常識を踏まえて整理すると、引用文献1には以下の発明が記載されていると認められる。(以下「引用文献1発明」という。) 「複数の全数体収納部Saを搭載可能な収納棚Sと、 前記収納棚Sに搭載された全数体収納部SaからPTP包装薬剤の全数連結集合体Paを取り出すチャック体Hと、 前記チャック体Hによって前記全数体収納部Saから取り出され、所定姿勢で載置されたPTP包装薬剤の全数連結集合体Paを切離する切離部Cとを備えた、所定物取り揃え装置。」 2 引用文献2 (1)引用文献2に記載された事項 引用文献2には、「調剤装置」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (ア) 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は調剤装置に係り、特にPTP(パス スルー パッケージ)錠剤シートと呼ばれるブリスター包装された錠剤シートを、予め設定したプログラムに基づいて所定の錠剤の所定個数分を錠剤シートの端数分を含めて自動的に調剤する調剤装置に関する。」 (イ) 「【0009】図1において・・・(中略)・・・ 【0010】この「コ」の字形状のフレーム100の対向する辺において、図示のように夫々設けられるケース棚105上には、錠剤ケース200が合計で140個(ただし、標準仕様の場合)が着脱自在に設けられている。これらの錠剤ケース200内に上述の各PTP錠剤が多数上下方向に積載されて収容されている。・・・(後略)」 (ウ) 「【0013】次に、上述のケース棚105の互いに対向する側面上には、側面に沿うように図中のX、Y矢印方向に駆動されるヘツド400が夫々設けられている。このようにヘツド400を縦横に移動可能にするためにヘツド400はXYキヤリツジ300から下方に設けられるYレール303に沿うように上下方向に移動可能にされる一方、XYキヤリツジ300はフレーム100の天井部に設けられるXレール302により案内される。 【0014】したがつて、ヘツド400を上下方向に駆動するYキヤリツジモータ301はXYキヤリツジ300に搭載される一方、XYキヤリツジ300をX矢印方向に駆動するXキヤリツジモータ305はフレーム100の右側端部に固定されている。このようにケース棚105に沿うように縦横に移動されるヘツド400には、後述するチヤツキング用の爪が設けられており、ヘツド400が所定の錠剤ケース200に対向する位置に移動した後に、ヘツド400内の爪が図中のZ矢印方向に移動して錠剤ケース200から 上述したPTP錠剤を取り出してヘツド400下方に設けた収納部に格納する。」 (エ) 「【0017】図中、フレーム100の右側において中間高さ位置に設けられているカツター500は、PTP錠剤シ-トから上述した必要個数を切り取るために設けられるものであり、構成については後述するが図示のように5段のケース棚105で形成される側面に沿う位置に夫々1基が配設されている。このカツター500の下方には上述の排出箱601が位置しており、カツター500によつて切断された端数分の錠剤が排出箱601内に落下される構成となつている。」 (オ) 「【0025】以上のように・・・(中略)・・・ (上下爪体の構成)図3中の(a)は上下爪体とPTP錠剤シ-トの外観斜視図であつて、上述のヘツド400に設けられているチヤツキング用の下爪体401と右上爪体410並びに左上爪体412は、図中のZ矢印方向に移動されてPTP錠剤シ-トAの耳部2を上下から把持するようにしている。」 (カ) 「【0047】・・・(中略)・・・ (ヘツドの構成)図7はヘツドの一部破断斜視図であつて、本図において、上述のPTP錠剤シート把持用の上下爪体の内の下爪体401は図中の破線図示の位置と実線図示の位置を往復移動される。この下爪体401の両側には、一旦把持されたPTP錠剤シートの落下を防止して端数カツトをするための、第1右落し蓋468と第1左落し蓋469が夫々シヤフト465回りに回動駆動されるように設けられている。」 (キ) 「【0112】ステップS557で掴み直しが必要と判断された場合には、ステップS568で錠剤シートの寸法に応じて上下爪体の位置がX方向に移動される。そして、ステップS569で、上下爪体をX方向に移動させた移動距離のデータが記憶部に記憶され、ステップS570に進む。一方、ステップS566で縦カットが最下列でないと判断された場合には、そのままステップS570に進む。また、ステップS564で縦カットがないと判断された場合にもステップS570に進む。 【0113】ステップS570では、実際に、残数の錠剤シートが上下爪体で把持され(掴まれ)、錠剤ケース(カラム)200の残数収納部203から取り出される。そして、ステップS572に進む。一方、ステップS539で、カットが新しい錠剤シートから行われると判断された場合には、ステップS540で新しい錠剤シートが取り出され、ステップS542で、ヘッド400が移動され、取り出された錠剤シートがカッター500へと運ばれ、カッター原点に位置決めされる。ここでカッター原点に位置決めされるとは、錠剤シートの左右幅の中央線が縦刃501の真下に位置決めされ、錠剤シートのZ方向の先端の縁が、横刃503の真下に位置決めされることを意味する。」 (2)引用文献2事項 引用文献2の上記記載事項(ア)ないし(キ)を技術常識を踏まえて整理すると、引用文献2には以下の事項が記載されていると認められる。(以下「引用文献2事項」という。) 「複数の錠剤ケース200を搭載可能なケース棚105と、 前記ケース棚105に搭載された錠剤ケース200からPTP錠剤シートを取り出すヘツド400とを備える調剤装置において、 前記ヘツド400は、ヘツド400によって前記錠剤ケース200から取り出されたPTP錠剤シートを回転駆動や掴み直しをする手段を備え、 前記ヘツド400は、前記ケース棚105の各錠剤ケース200に対して移動すること。」 第4 対比 本願発明と引用文献1発明とを対比すると、引用文献1発明の「全数体収納部Sa」が本願発明の「錠剤カセット」に相当することは、その「PTP包装薬剤」を収納するという機能に照らして明らかであり、以下同様にそれぞれの機能及び技術常識を踏まえれば、「収納棚S」は「カセット棚」に、「PTP包装薬剤の全数連結集合体Pa」は「錠剤シート」に、「チャック体H」は「取出手段」に、「切離する」は「カッティングする」に、「切離部C」は「カッティング手段」に、「所定物取り揃え装置」は「調剤装置」に相当することも明らかである。 次に、引用文献1発明の「チャック体Hによって前記全数体収納部Saから取り出され、所定姿勢で載置されたPTP包装薬剤の全数連結集合体Paを切離する切離部C」は、上記対応関係を踏まえ、「取出手段によって前記錠剤カセットから取り出され、所定姿勢で載置された錠剤シートをカッティングするカッティング手段」と言い改められるところ、 これは、本願発明の「取出手段によって前記錠剤カセットから取り出された錠剤シートの姿勢を制御する姿勢制御手段と、前記姿勢制御手段によって姿勢を制御された錠剤シートをカッティングするカッティング手段」と、 「取出手段によって前記錠剤カセットから取り出され、さらに所定姿勢とされた錠剤シートをカッティングするカッティング手段」である限りにおいて共通する。 したがって、本願発明と引用文献1発明とは、以下の点で一致しているということができる。 <一致点> 「複数の錠剤カセットを搭載可能なカセット棚と、 前記カセット棚に搭載された錠剤カセットから錠剤シートを取り出す取出手段と、 前記取出手段によって前記錠剤カセットから取り出され、さらに所定姿勢とされた錠剤シートをカッティングするカッティング手段とを備えた、調剤装置。」 そして、本願発明と引用文献1発明とは、以下の2点で相違している。 <相違点1> 「取出手段によって錠剤カセットから取り出され、さらに所定姿勢とされた錠剤シートをカッティングするカッティング手段」に関し、 本願発明は、(別途、姿勢制御手段を備えることを明示的に特定することによって、)取出手段によって錠剤カセットから取り出された錠剤シートの姿勢を制御する姿勢制御手段と、姿勢制御手段によって姿勢を制御された錠剤シートをカッティングするカッティング手段とを備えると特定しているのに対し、 引用文献1発明は、チャック体H(取出手段)によって全数体収納部Sa(錠剤カセット)から取り出され、所定姿勢で載置されたPTP包装薬剤の全数連結集合体Pa(錠剤シート)を切離する切離部C(カッティングするカッティング手段)とを備えるものの、姿勢制御手段を備えているか明らかでない点。 <相違点2> 本願発明においては、姿勢制御手段は、取出手段とともに、カセット棚の各錠剤カセットに対して移動するのに対し、引用文献1発明は、姿勢制御手段を備えているか明らかでない点。 第5 相違点の検討 1 <相違点1>について まず、相違点1に係る本願発明の「取出手段によって錠剤カセットから取り出された錠剤シートの姿勢を制御する姿勢制御手段」、特に「姿勢制御手段」の技術的意義について検討する。 上記「姿勢制御手段」に関連する本願明細書の記載としては、段落【0008】?【0010】に本件請求項1と同様の文言の記載がある外は、「【0041】そして、図8(b)に示すように、支持部材435の後退が停止されることで、レール440a,440bの前後方向の中間位置に、前記チャック430でチャッキングされたPTP錠剤シート900が位置決めされて水平となるような姿勢制御が行われる。このときには、図7(b)に示すように、バネ部材449,449がレール440a,440bの後部4493にそれぞれ2点(4491,4492)で弾性支持しているので、前記PTP錠剤シート900の、より確実な水平姿勢が得られることとなる」(下線は当審で付した。)と記載されているのみで、他に「姿勢制御手段」に関連する記載は見当たらない。 一方、本件出願の分割元である上記特願2012-245641号の補正後の請求項1の記載は「・・・錠剤カセットから取り出された錠剤シートを該取り出し側に移動した前記ガイド部材で案内することにより、該錠剤シートの姿勢を制御する姿勢制御手段」とされていることを踏まえれば、本願発明の「姿勢制御手段」は、ガイド部材で案内することと解釈する余地もあるが、本件において、明細書及び図面の記載に十分裏付けられているとは言い難く、これに限定されるとはいえない。 いずれにせよ、本願発明の「姿勢制御手段」は、その内容が具体的でないから、技術的意義が極めて乏しいものといわざるを得ず、「取出手段」が通常の動作において行う動作を特に「姿勢制御手段」と特定しているに過ぎないものと解するのが適当である。 そうすると、引用文献1発明は、チャック体H(取出手段)によって全数体収納部Sa(錠剤カセット)から取り出されたPTP包装薬剤の全数連結集合体Pa(錠剤シート)を所定姿勢で載置するのであるから、チャック体H(取出手段)が本願発明でいうところの「姿勢制御手段」を備えているということができ、相違点1は実質的な差異ではないというべきである。 仮に、実質的な差異であるとしても、次に述べるように当該事項は引用文献2に記載された事項にに過ぎない。すなわち、上記第3の2(2)にて述べたように、引用文献2事項は、「・・・PTP錠剤シートを取り出すヘツド400・・・調剤装置において、前記ヘツド400は、ヘツド400によって前記錠剤ケース200から取り出されたPTP錠剤シートを回転駆動や掴み直しをする手段を備え・・・」というものであるところ、引用文献2事項は、取出し手段たる「ヘツド400」において、調剤シートに対して「回転駆動や掴み直しをする手段」を備えるのであるから、本願発明における「姿勢制御手段」に相当するものを備えているということができる。そして、かかる引用文献2事項を同じ技術分野の引用文献1発明に適用して、チャック体H(取出手段)に「姿勢制御手段」を備えさせることとし、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって格別困難ではない。 2 <相違点2>について 上記第3の2(2)にて述べたように、引用文献2事項は、「複数の錠剤ケース200を搭載可能なケース棚105と、前記ケース棚105に搭載された錠剤ケース200からPTP錠剤シートを取り出すヘツド400とを備える調剤装置において、前記ヘツド400は、ヘツド400によって前記錠剤ケース200から取り出されたPTP錠剤シートを回転駆動や掴み直しをする手段を備え、前記ヘツド400は、前記ケース棚105の各錠剤ケース200に対して移動すること。」というものであるところ、これを本願発明の用語で表現すれば、引用文献2事項の「錠剤ケース200」は「錠剤カセット」と表現でき、以下同様に、「ケース棚105」は「カセット棚」と、「PTP錠剤シート」は「錠剤シート」と、「ヘツド400」は「取出手段」と、表現できる。 したがって、引用文献2事項は、「複数の錠剤カセットを搭載可能なカセット棚と、前記カセット棚に搭載された錠剤カセットから錠剤シートを取り出す取出手段とを備える調剤装置において、前記取出手段は、取出手段によって前記錠剤カセットから取り出された錠剤シートを回転駆動や掴み直しをする手段を備え、前記取出手段は、前記カセット棚の各錠剤カセットに対して移動すること。」と言い改めることができる。 ここで、引用文献1発明と引用文献2事項は、いずれも、調剤装置である点で技術分野が共通しており、引用文献2に接した当業者がこれを引用文献1発明に適用することを試みることに格別困難性はない。 そうした場合、引用文献2事項を適用した引用文献1発明においては、“錠剤シートを回転駆動や掴み直しをする手段を備える取出手段”がカセット棚の各錠剤カセットに対して移動することとなるが、該“錠剤シートを回転駆動や掴み直しをする手段を備える取出手段”は、本願発明でいうところの「姿勢制御手段」を備えた取出手段と同等なものいえる。 そうしてみると、引用文献1発明に引用文献2事項を適用して、「姿勢制御手段」を備えた取出手段が、カセット棚の各錠剤カセットに対して移動することとし、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に推考し得たものというのが相当である。 3 小括 したがって、本願発明は、引用文献1発明、引用文献2事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1発明、引用文献2事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-04-11 |
結審通知日 | 2017-04-18 |
審決日 | 2017-05-01 |
出願番号 | 特願2015-32409(P2015-32409) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A61J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山口 賢一 |
特許庁審判長 |
山口 直 |
特許庁審判官 |
長屋 陽二郎 熊倉 強 |
発明の名称 | 調剤装置 |
代理人 | 藤本 謙二 |