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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H02H
管理番号 1329774
審判番号 不服2016-13010  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-30 
確定日 2017-07-18 
事件の表示 特願2014-191846「機械の保護動作開始判定機能を有するモータ制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月25日出願公開、特開2016- 63705、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年9月19日の出願であって、平成28年1月5日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年3月1日付けで意見書が提出され、平成28年5月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年8月30日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成28年11月25日に前置報告がされ、平成29年2月3日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年5月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.この出願の請求項1に係る発明は以下の引用文献1、3、4に基づいて、請求項2に係る発明は以下の引用文献1-4に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平9-266695号公報
2.特開2014-96929号公報
3.特開2013-115994号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2005-192353号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
補正前の請求項1の
・「相互電力変換する逆変換器」を、「相互電力変換する複数の逆変換器」とし、
・「前記直流電圧値が第2の閾値以下の場合に、軸停止あるいは、軸退避動作の開始を前記逆変換器に通知する保護動作開始判定部と、を有する」を、「前記直流電圧値が第2の閾値以下の場合に、軸停止あるいは、軸退避動作である機械の保護動作の開始を前記逆変換器に通知し、前記直流電圧値が前記第2の閾値より大きい場合に、前記保護動作の開始を前記逆変換器に通知しない保護動作開始判定部と、を有し、」とし、
・「モータ制御装置」の制御内容として「前記第2の閾値は、モータの正常な運転を継続できなくなる直流リンクの直流電圧値に、停電状態の検出から機械の保護動作開始までに必要なエネルギー分をマージンとして加算した電圧値よりも大きな値であり、前記停電検出部が三相交流電源の停電を検出した場合に、前記直流電圧値が第2の閾値に低下する前に、前記複数の逆変換器のうちの少なくとも1台が主軸用モータを加減速させることにより前記直流電圧値を前記第2の閾値よりも大きい規定の範囲内にする、」という事項を追加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、それらは、当初明細書の【請求項2】、段落【0018】、【0023】に記載されている事項であり、かつ、補正前の請求項1、2に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものである。
そして、以下、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
さらに、補正前の請求項2を削除する補正は、請求項の削除を目的とするものである。

第4 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成28年8月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
三相交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記整流器の直流出力側である直流リンクに備えられる平滑コンデンサと、
前記直流リンクに接続され、前記直流リンクにおける直流電力、及び軸を駆動するモータの駆動電力もしくはモータからの回生電力である交流電力を相互電力変換する複数の逆変換器と、
三相交流電源の交流電圧値を検出する交流電圧検出部と、
前記交流電圧値を電源電圧振幅値に変換する電圧振幅演算部と、
前記電源電圧振幅値が第1の閾値以下の状態が所定の時間継続した場合に、三相交流電源が停電状態であることを検出する停電検出部と、
前記平滑コンデンサの直流電圧値を検出する直流電圧検出部と、
前記停電検出部が、三相交流電源が停電状態であることを検出し、かつ、前記直流電圧値が第2の閾値以下の場合に、軸停止あるいは、軸退避動作である機械の保護動作の開始を前記逆変換器に通知し、前記直流電圧値が前記第2の閾値より大きい場合に、前記保護動作の開始を前記逆変換器に通知しない保護動作開始判定部と、
を有し、
前記第2の閾値は、モータの正常な運転を継続できなくなる直流リンクの直流電圧値に、停電状態の検出から機械の保護動作開始までに必要なエネルギー分をマージンとして加算した電圧値よりも大きな値であり、
前記停電検出部が三相交流電源の停電を検出した場合に、前記直流電圧値が第2の閾値に低下する前に、前記複数の逆変換器のうちの少なくとも1台が主軸用モータを加減速させることにより前記直流電圧値を前記第2の閾値よりも大きい規定の範囲内にする、
ことを特徴とするモータ制御装置。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審付加、参照箇所を示す。)。

a「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電動運転と、回生制動が可能で、入力電源力率をよく電動機を駆動するのに好適な周波数変換装置に関する。」

b「【0010】
【課題を解決するための手段】この発明に係る周波数変換装置においては、交流電圧を直流に変換するパルス幅変調方式の第1の変換器と、電動機に可変電圧、可変周波数の交流を供給するパルス幅変調方式の第2の変換器と、第1の変換器の出力側と第2の変換器の入力側との間に接続されるコンデンサと、第1の変換器の入力側に接続され、抵抗器と短絡手段からなる電流抑制回路と、第1の変換器に入力される電源の有無を検出する検出回路と、コンデンサの電圧を測定する回路と、入力電源の停電が発生したとき、第1の変換器の変換を停止し、コンデンサの両端の電圧が一定値以上であれば、電流抑制回路における短絡手段および第2の変換器の運転状態を継続して、出力を継続する運転制御回路と、を備えたものである。
【0011】また、停電が発生したとき、運転制御回路は第1の変換器の変換を停止し、さらに、コンデンサの電圧が一定値未満であれば、電流抑制回路における短絡手段および第2の変換器の運転状態を電源投入前の状態にするものである。」

c「【0017】
【発明の実施の形態】発明の実施の形態1.
図1は、この発明の一実施の形態である周波数変換装置の構成を示す図である。図において、2は第2の変換器としての、スイッチング(GTO)素子を用いたPWMインバータ、3は誘導電動機、5は第1の変換器としての、スイッチング(GTO)素子を用いた電圧型PWM方式変換器、8はインバータ2の出力周波数および、電圧を指示する周波数指令回路、9は可変周波数の3相正弦波信号を発生する発振器で、出力周波数は、指令回路8からの周波数指令信号に比例する。10は、指令回路8と発振器9の各出力信号を掛算する乗算器、11は3角波の搬送波信号を発生する発振器、12は搬送波信号と、乗算器10の出力信号を、比較し、後述するパルス幅変調(PWM)信号を出力する比較器、13はインバータ2のスイッチング素子を、オンオフ制御するゲート信号を出力するゲート回路である。なお、乗算器10と比較器12については、電動機3の相数に一致して同様のものが3組あるが、2組は記述を省略している。
【0018】14は変換器5の直流出力電圧の指令信号を出力する電圧指令回路、15は変換器5の直流出力端に接続されたコンデンサ、15aはコンデンサ15に接続されたDC-DCコンバータ、16はその電圧を検出する電圧検出器、17は電圧指令信号と検出器16の出力電圧を突合せ増幅する電圧偏差増幅器、18は変換器5に接続される交流電源の電圧を絶縁して、入力電源位相を検出するための変換器、19は変換器5の交流入力電流(瞬時値)を検出する電流検出器、20は変換器18、検出器19および増幅器17の出力信号に基づき変換器5の交流入力電圧の基本成分(瞬時値)の指令信号を出力する演算回路である。21は三角波の搬送波信号を発生する発振器、22は、搬送波信号と演算回路20の出力信号を比較し、パルス幅変調信号を出力する比較器、23は変換器5のスイッチングをオンオフ制御するゲート信号を出力するゲートアンプである。
【0019】30aは変換器18の出力および電圧検出器16の出力に応じ、PWMインバータ2、変換器5の運転停止を決定し、後述するリレーの状態を決定する運転制御回路、31は本装置に電源を投入したときのコンデンサ15の初期充電電流のピーク値を低く押さえ、本装置および、周辺回路の破損を防止する抵抗器、32は抵抗31の両端に接続され、運転制御回路30aの信号に応じ、開閉を決定するリレーである。40は、誘動機から発生する残留電圧を検出する残留電圧検出回路である。
【0020】次にその動作について説明する。まず、電源が本装置に投入されると、抵抗31を介してコンデンサ15を充電する電流が流れ、コンデンサ15の電圧が一定値に到達すると、DC-DCコンバータ15aが制御電源の出力を開始し、運転制御回路30aが、リレー32により抵抗31を短絡する。その後、変換器5は、入力電流の位相が、入力電圧の位相と同位相となるよう変換器5の各素子のスイッチング状態を比較器22により決定し、その信号に応じ変換器5は運転する。一方、PWMインバータ2もリレー32が短絡した後、指令回路8の指令状態に応じ、PWMインバータ2のスイッチング素子を制御し、誘導電動機3の運転状態を制御する。
【0021】この状態において、瞬時停電が発生した場合、入力電圧を検出する検出器19により、入力電源の停電を検出し、変換器5の変換動作を停止する。コンデンサ15の電圧が、一定値以上であれば、PWMインバータ2の運転は継続し、またリレー32も短絡状態を維持する。コンデンサ15の電圧が低下し、一定値を下回ると、リレー32を開放し、PWMインバータ2の出力も停止する。」

上記b、cの記載において
・「第1の変換器」、「第1の変換器としての、スイッチング(GTO)素子を用いた電圧型PWM方式変換器」、「変換器5」は同じものといえ、以下、「第1の変換器5」という。
・「第2の変換器」、「第2の変換器としての、スイッチング(GTO)素子を用いたPWMインバータ」、「PWMインバータ2」は同じものといえ、以下、「第2の変換器2」という。
・「交流電圧を直流に変換する」の記載における「交流」、「第1の変換器に入力される電源」、「入力電源」、「変換器5に接続される交流電源」、「入力電源」、「電源」は同じものといえ、以下「交流入力電源」という。また、図1の記載を参照すれば、当該「交流入力電源」は、3相の電源であるといえる。
・「交流電圧を直流に変換する」の記載における「直流」、「変換器5の直流出力」の記載における「直流出力」は同じものといえ、以下「直流出力」という。
・「コンデンサ」、「コンデンサ15」は同じものといえ、以下「コンデンサ15」という。
・「コンデンサの電圧を測定する回路」、「コンデンサ15に・・(途中省略)・・、16はその電圧を検出する電圧検出器」は同じものといえ、以下「電圧検出器16」という。

上記bの「停電が発生したとき、運転制御回路は第1の変換器の変換を停止し、さらに、コンデンサの電圧が一定値未満であれば、電流抑制回路における短絡手段および第2の変換器の運転状態を電源投入前の状態にする」における「運転状態を電源投入前の状態にする」は、運転を行う前の状態にするものであり、実質的には、第2の変換器の運転状態を停止するものといえる。

上記cの「18は変換器5に接続される交流電源の電圧を絶縁して、入力電源位相を検出するための変換器、19は変換器5の交流入力電流(瞬時値)を検出する電流検出器」、また、「30aは変換器18の出力および電圧検出器16の出力に応じ、PWMインバータ2、変換器5の運転停止を決定し」、そして、「この状態において、瞬時停電が発生した場合、入力電圧(当審注:「入力電流」の誤記と認められる。)を検出する検出器19により、入力電源の停電を検出し」の記載及び図1を参照すると、変換器18及び検出器19は交流入力電源を検出するものであるといえる。

上記aの「電動運転と、回生制動が可能」との記載、また、図1でPの記号に付された双方向の矢印等を参照すると、第1の変換器5、及び、第2の変換器2は、双方向に電力変換が可能なものであって、第1の変換器5は、交流入力電源と、直流出力を相互電力変換し、第2の変換器2は、第1の変換器5の出力側に接続され、前記直流出力、駆動のため電動機3に供給する交流もしくは回生電力である電動機3からの交流を相互電力変換するものであるといえる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「3相の交流入力電源の電圧と直流出力とを相互に変換する第1の変換器5と、
前記第1の変換器5の出力側と第2の変換器2の入力側との間に接続されるコンデンサ15と、
前記第1の変換器5の出力側に接続され、前記直流出力、駆動のため電動機3に供給する交流もしくは回生電力である電動機3からの交流を相互電力変換する前記第2の変換器2と、
前記第1の変換器5の交流入力電源を検出する変換器18及び検出器19と、
前記コンデンサ15の電圧を測定する電圧検出器16と、
交流入力電源の停電が発生したとき、前記コンデンサ15の電圧が一定値以上であれば、前記第2の変換器2の運転状態を継続して出力を継続し、交流入力電源の停電が発生したとき、前記コンデンサ15の電圧が一定値を下回ると、前記第2の変換器の運転状態を停止して出力を停止する運転制御回路30aと、
を備える装置。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審付加、参照箇所を示す。)。

a「【0035】
図1は、本発明の第1の実施例による工作機械の制御装置を示すブロック図である。以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。
【0036】
本発明の第1の実施例によれば、送り軸を駆動する送り軸モータ2と主軸を駆動する主軸モータ3とを有する工作機械の制御装置100は、順変換器11と、送り軸モータ制御用逆変換器12と、主軸モータ用逆変換器13と、停電検出手段14と、電圧検出手段15と、制御手段としての数値制御部(CNC)16と、電源バックアップ手段31と、通信手段としての通信バス32と、を備える。
【0037】
順変換器11と送り軸モータ用逆変換器12と主軸モータ用逆変換器13とは、DCリンクを介して接続される。また、通信手段である通信バス32は、順変換器11内に設けられる順変換器制御部11Cと、送り軸モータ用逆変換器12内に設けられる送り軸モータ用逆変換器制御部12Cと、主軸モータ用逆変換器13内に設けられる主軸モータ用逆変換器制御部13Cと、数値制御部16と、を相互に通信可能に接続する機能を有する。なお、このような通信手段を、通信バス32のような有線方式ではなく、無線方式により実現してもよい。
【0038】
順変換器11は、力行時には商用三相交流電源4より供給された交流電力を整流して直流電力を出力し、回生時にはモータで回生された回生エネルギーをDCリンクを介して交流電源4側に回生することができる整流器である。すなわち、順変換器11は、商用三相交流電源4側の交流電圧と直流側であるDCリンクにおける直流電圧とを相互電力変換するものである。順変換器11の例としては、120度通電型整流回路、あるいはPWM制御方式の整流回路などがある。
【0039】
送り軸モータ用逆変換器12は、例えばPWMインバータなどのような、内部にスイッチング素子を有する変換回路(図示せず)とこれを制御する送り軸モータ用逆変換器制御部12Cとで構成される。送り軸モータ用逆変換器12においては、DCリンク側から供給される直流電力を、数値制御部16から通信バス32を介して受信したモータ駆動指令に基づき、送り軸モータ用逆変換器制御部12Cは、変換回路内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、送り軸モータ2を駆動のための所望の電圧および所望の周波数の三相交流電力に変換する。送り軸モータ2は、供給された電圧可変および周波数可変の三相交流電力に基づいて動作することになる。また、送り軸モータ2の減速時には回生電力が発生するが、数値制御部16から通信バス32を介して受信したモータ駆動指令に基づき、送り軸モータ用逆変換器制御部12Cは、変換回路内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、送り軸モータ2で発生した回生電力である交流電力を直流電力へ変換してDCリンクへ戻す。このように、送り軸モータ用逆変換器12は、DCリンクにおける直流電力と送り軸モータ2の駆動電力もしくは回生電力である交流電力とを相互電力変換するものである。
【0040】
主軸モータ用逆変換器13は、例えばPWMインバータなどのような、内部にスイッチング素子を有する変換回路(図示せず)とこれを制御する主軸モータ用逆変換器制御部13Cとで構成される。主軸モータ用逆変換器13においては、DCリンク側から供給される直流電力を、数値制御部16から通信バス32を介して受信したモータ駆動指令に基づき、主軸モータ用逆変換器制御部13Cが、変換回路内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、主軸モータ3を駆動のための所望の電圧および所望の周波数の三相交流電力に変換する。主軸モータ3は、供給された電圧可変および周波数可変の三相交流電力に基づいて動作することになる。また、主軸モータ3の減速時には回生電力が発生するが、数値制御部16から通信バス32を介して受信したモータ駆動指令に基づき、主軸モータ
用逆変換器制御部13Cは、変換回路内部のスイッチング素子をスイッチング動作させ、主軸モータ3で発生した回生電力である交流電力を直流電力へ変換してDCリンクへ戻す。このように、主軸モータ用逆変換器13は、DCリンクにおける直流電力と主軸モータ3の駆動電力もしくは回生電力である交流電力とを相互電力変換するものである。
【0041】
停電検出手段14は、順変換器制御部11C内に設けられ、順変換器11の交流電源側の停電発生の有無を検出する。停電検出手段14は、順変換器11の交流電源側の停電発生の有無についての検出結果を、順変換器制御部11Cおよび通信バス32を介して数値制御部16に通知する。
【0042】
電圧検出手段15は、送り軸モータ用逆変換器12もしくは主軸モータ用逆変換器13内に設けられ、DCリンクにおける直流電圧を検出し、通信バス32を介して数値制御部16に通知する。
【0043】
数値制御部16は、送り軸モータ2および主軸モータ3を所望の回転速度やトルクで駆動するべく、送り軸モータ用逆変換器12および主軸モータ用逆変換器13の相互電力変換を制御するための指令を作成し出力するものである。」

b「【0055】
図3は、本発明の第1の実施例において停電時に主軸モータ用逆変換器に対して通知される指令を説明する図である。上述のように、交流電源側の停電発生時においては、数値制御部16は、送り軸モータ用逆変換器12に対しては送り軸モータ減速指令を送信するが、主軸モータ用逆変換器13に対しては通信バス32を介して通知されたDCリンクにおける直流電圧の大きさいかんによって、送信される指令が異なることになる。すなわち、通信バス32を介して通知されたDCリンクにおける直流電圧が所定の上限値より大きい場合は主軸モータ加速指令が送信され、DCリンクにおける直流電圧の上昇の原因であるDCリンクにおける直流電力の上昇分を、加速される主軸モータ3で消費させることで、DCリンクにおける直流電力の上昇を抑制し、過電圧アラームレベルに達することを回避する。また、通信バス32を介して通知されたDCリンクにおける直流電圧が所定の下限値より小さい場合は主軸モータ減速指令が送信され、DCリンクにおける直流電圧の低下の原因であるDCリンクにおける直流電力の減少分を、主軸モータ3を減速することで生じる回生電力で補うようにすることで、DCリンクにおける直流電力の低下を抑制し、低電圧アラームレベルに達することを回避する。また、通信バス32を介して通知されたDCリンクにおける直流電圧が所定の下限値以上であって所定の上限値以下であるは主軸モータ動力遮断指令が送信され、通常通り、停電にあわせて主軸モータ3への電力供給を遮断する。」

したがって、上記引用文献2には以下の発明(以下、引用発明2)が記載されていると認められる。
「商用三相交流電源4側の交流電圧と直流側であるDCリンクにおける直流電圧とを相互電力変換する順変換器11と、
DCリンクを介して接続され、DCリンクにおける直流電力と、送り軸モータ2、主軸モータ3の駆動電力もしくは回生電力である交流電力とを相互電力変換する送り軸モータ用逆変換器12および主軸モータ用逆変換器13と、
順変換器11の交流電源側の停電発生を検出する停電検出手段14と、
停電発生の有無、及び、DCリンクにおける直流電圧が通知され、逆変換器12、13を制御する数値制御部16とを有し、
交流電源側の停電発生時において数値制御部16は主軸モータ用逆変換器13に対し、
DCリンクにおける直流電圧が所定の上限値より大きい場合は主軸モータ加速指令が送信され、DCリンクにおける直流電力の上昇を抑制し、DCリンクにおける直流電圧が所定の下限値より小さい場合は主軸モータ減速指令が送信され、DCリンクにおける直流電力の低下を抑制し、DCリンクにおける直流電圧が所定の下限値以上であって所定の上限値以下である場合は主軸モータ動力遮断指令が送信され、停電にあわせて主軸モータ3への電力供給を遮断する工作機械の制御装置100。」

3.引用文献3について
原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献3の段落【0008】には「図11は、三相交流入力電圧の振幅に基づき停電の有無を判定する停電判定部を示す回路図である。商用三相交流電源3からの電圧を交流電圧検出部122で検出し、電圧振幅検出部126により電圧の振幅を計算する。停電判定部125は、電圧振幅検出部126により計算した電圧の振幅がその値が所定の基準電圧値を下回る状態が所定の基準時間継続したことをもって停電と判定する。」と記載されている。

4.引用文献4について
原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献4の段落【0003】には「電源電圧検出値が所定下限基準電圧を一定時間以上下回った時に停電を示す出力を発生し」と記載されている。

5.その他の文献について
前置報告書において、独立特許要件違反(特許法第29条第2項)に関して、副引例として引用された特開昭51-116920号公報には「直流母線に電力を供給する装置と、直流母線に並列接続される複数台の可変電圧、可変周波数のインバータ装置とを備え、複数台のインバータ装置中少なくとも1台は電力回生可能なるインバータ装置であり、各々のインバータ装置には、1台又は複数台の交流電動機が接続されており、直流母線より電力の供給を受ける全交流電動機の少なくとも1台には比較的大きなフライホイル効果を有する負荷が接続されて成る交流電動機群の速度制御装置において、直流母線への電力の供給が停止した時これを検出し、複数台のインバータ装置に各々の運転周波数に比例した周波数低下指令を与え、電力供給が停止している期間中も、直流母線電圧がほゞ一定となるよう直流母線電圧を検出し制御することを特徴とする交流電動機群の速度制御装置。」(第1頁左下欄「2.特許請求の範囲」)と記載されている。
また、周知技術を示す文献として引用された特開平6-113483号公報の段落【0010】には「図3のようにバックアップ時間からシャットダウン処理時間およびマージンα分を差し引いて通常処理時間が決定される。」と記載されている。
さらに、周知技術を示す文献として引用された特開2001-333545号公報の段落【0011】には「不揮発性メモリ13には、プログラムデータや各種データが予め格納されると共に、後述するマイクロコンピュータ12における判定処理に用いる所定の時間T1を示す情報と、シャットダウン処理に必要なバッテリ部2の二次電池の残容量に対応する所定の電圧値V1を示す情報と、復旧時における待機時間を規定する時間T3を示す情報とが格納されている。」、段落【0018】?【0020】には「図2Aに示すタイミングで入力電源電圧が遮断されると、電源部1においてバックアップ動作が開始され、図2Bに示すように検出信号がハイレベルとなる。この検出信号の立ち上がりでバックアップ時間の計数がマイクロコンピュータ12において開始される。そして、二次電池の放電時の端子電圧は、図2Cに示すように時間とともに低下する。二次電池の端子電圧がV1に到達する前にバックアップ時間がT1に到達して入力電源電圧が復電しない場合には、シャットダウン処理がなされる。ここで、シャットダウン処理に必要な時間がT2である。
また、バックアップ時間がT1に到達する前に二次電池の端子電圧がV1に到達して入力電源電圧が復電しない場合にも、シャットダウン処理がなされる。即ち、放電カーブと放電終止電圧は使用する二次電池と放電時の消費電力によって決まるため、シャットダウン処理に必要な時間T2に対応する電圧値V1は、常に一義的に決まる。つまり、シャットダウン処理に必要なバッテリ部2の二次電池の残容量に対応する所定の電圧値がV1であり、この電圧値V1を設定することで二次電池の劣化や充電条件に影響されずにより確実にシャットダウン処理を行うことが可能となる。
さらに、バックアップ時間がT1に到達する前に二次電池の端子電圧がV1に到達してシャットダウン処理がなされ、入力電源電圧が復電した時には、所定時間T3まで被制御部4が待機状態とされる。この状態では、二次電池に残容量がなく、充電が完了するまでの時間は、シャットダウン処理に必要な時間T2とバックアップ動作時の消費電力と充電電流により一義的に決まる。つまり、バッテリ部2の二次電池に対してシャットダウン処理に要する最低電力を蓄積するのに必要な時間がT3である。なお、所定の時間T1は、余計なバックアップ動作を防ぐためのもので、この時間T1を設定することでより効率的に機器を運用することが可能となる。」と記載されている。

第6 対比・判断
1.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

・引用発明の「直流出力」は、本願発明の「直流電力」に相当する。
・引用発明の「3相の交流入力電源の電圧と直流出力とを相互に変換する第1の変換器5」と、本願発明の「三相交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換する整流器」とは、「三相交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換する変換器」である点において共通する。
・引用発明の「前記第1の変換器5の出力側」と、本願発明の、「整流器の直流出力側である直流リンク」とは、「変換器の直流出力側」の点において共通する。
・引用発明の「コンデンサ15」は、平滑作用のために接続されているものといえ、本願発明の「平滑コンデンサ」に相当する。
・引用発明の「駆動のため電動機3に供給する交流もしくは回生電力である電動機3からの交流」と、本願発明の「軸を駆動するモータの駆動電力もしくはモータからの回生電力である交流電力」とは、「モータの駆動電力もしくはモータからの回生電力である交流電力」である点において共通する。
・引用発明の「第2の変換器2」と、本願発明の「複数の逆変換器」とは、「逆変換器」の点において共通する。
・引用発明の「前記第1の変換器5の出力側と第2の変換器2の入力側との間に接続されるコンデンサ15と、前記第1の変換器5の出力側に接続され、前記直流出力、駆動のため電動機3に供給する交流もしくは回生電力である電動機3からの交流を相互電力変換する前記第2の変換器2と」を有する態様と、本願発明の、「前記整流器の直流出力側である直流リンクに備えられる平滑コンデンサと、前記直流リンクに接続され、前記直流リンクにおける直流電力、及び軸を駆動するモータの駆動電力もしくはモータからの回生電力である交流電力を相互電力変換する複数の逆変換器と」を有する態様とは、「変換器の直流出力側に備えられる平滑コンデンサと、変換器の直流出力側に接続され、直流電力、及びモータの駆動電力もしくはモータからの回生電力である交流電力を相互電力変換する逆変換器と」を有する点において共通する。
・引用発明の「第1の変換器5の交流入力電源を検出する変換器18及び検出器19」と、本願発明の「三相交流電源の交流電圧値を検出する交流電圧検出部と、前記交流電圧値を電源電圧振幅値に変換する電圧振幅演算部と、前記電源電圧振幅値が第1の閾値以下の状態が所定の時間継続した場合に、三相交流電源が停電状態であることを検出する停電検出部」とは、「三相交流電源を検出する検出部」の点において共通する。
・引用発明の「コンデンサ15の電圧を測定する電圧検出器16」は、本願発明の「平滑コンデンサの直流電圧値を検出する直流電圧検出部」に相当する。
・引用発明の「交流入力電源の停電が発生したとき、コンデンサ15の電圧が一定値を下回ると、第2の変換器の運転状態を停止して出力を停止する」態様と、本願発明の「停電検出部が、三相交流電源が停電状態であることを検出し、かつ、直流電圧値が第2の閾値以下の場合に、軸停止あるいは、軸退避動作である機械の保護動作の開始を前記逆変換器に通知」する態様とは、「三相交流電源が停電状態であり、かつ、直流電圧値が閾値以下の場合に、特定の動作の開始を逆変換器に通知」する点において共通する。
・引用発明の「コンデンサ15の電圧が一定値以上であれば、第2の変換器2の運転状態を継続して出力を継続」する態様と、本願発明の「前記直流電圧値が前記第2の閾値より大きい場合に、前記保護動作の開始を前記逆変換器に通知しない」態様とは、「直流電圧値が閾値より大きい場合に、特定の動作の開始を逆変換器に通知しない」点において共通する。
・引用発明の「運転制御回路30a」と、本願発明の「保護動作開始判定部」とは、「特定の動作の開始を判定する手段」である点において共通する。

したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
三相交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換する変換器と、
前記変換器の直流出力側に備えられる平滑コンデンサと、
前記変換器の直流出力側に接続され、前記直流電力、及びモータの駆動電力もしくはモータからの回生電力である交流電力を相互電力変換する逆変換器と、
三相交流電源を検出する検出部と、
前記平滑コンデンサの直流電圧値を検出する直流電圧検出部と、
前記三相交流電源が停電状態であり、かつ、前記直流電圧値が閾値以下の場合に、特定の動作の開始を前記逆変換器に通知し、前記直流電圧値が前記閾値より大きい場合に、特定の動作の開始を前記逆変換器に通知しない特定の動作の開始を判定する手段と、
を有する装置。

(相違点)
(相違点1)交流電力を直流電力に変換する変換器に関し、本願発明は「交流電力を直流電力に変換する整流器」であるのに対し、引用発明は、交流入力電源の電圧と直流出力とを相互に変換する第1の変換器5である点。

(相違点2)変換器の直流出力側、及び変換器の直流出力側に接続される逆変換器に関し、本願発明は変換器の出力側が「直流リンク」であって、逆変換器が「前記直流リンクにおける直流電力、及び軸を駆動するモータの駆動電力もしくはモータからの回生電力である交流電力を相互電力変換する複数の逆変換器」であるのに対し、引用発明は、直流リンクという構成や、逆変換器を複数有することを特定するものではない点。

(相違点3)モータの駆動に関し、本願発明のモータは「軸を駆動するモータ」であるのに対し、引用発明の電動機3は駆動対象を特定していない点。

(相違点4)三相交流電源を検出する検出部に関し、本願発明は「三相交流電源の交流電圧値を検出する交流電圧検出部と、前記交流電圧値を電源電圧振幅値に変換する電圧振幅演算部と、前記電源電圧振幅値が第1の閾値以下の状態が所定の時間継続した場合に、三相交流電源が停電状態であることを検出する停電検出部」であるのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。

(相違点5)特定の動作について、本願発明は「軸停止あるいは、軸退避動作である機械の保護動作」であるのに対し、引用発明は、第2の変換器の運転状態を停止して出力を停止するものである点。

(相違点6)直流電圧値が閾値以下の場合に、特定の動作の開始を前記逆変換器に通知し、前記直流電圧値が前記閾値より大きい場合に、特定の動作の開始を前記逆変換器に通知しない閾値に関し、本願発明は「第2の閾値は、モータの正常な運転を継続できなくなる直流リンクの直流電圧値に、停電状態の検出から機械の保護動作開始までに必要なエネルギー分をマージンとして加算した電圧値よりも大きな値」であるのに対し、引用発明は、一定値(本願発明の「第2の閾値」に相当するもの)が、そのように特定されていない点。

(相違点7)本願発明は「前記停電検出部が三相交流電源の停電を検出した場合に、前記直流電圧値が第2の閾値に低下する前に、前記複数の逆変換器のうちの少なくとも1台が主軸用モータを加減速させることにより前記直流電圧値を前記第2の閾値よりも大きい規定の範囲内にする」のに対し、引用発明は、そのような事項を特定するものではない点。

2.相違点についての判断
(1)事案に鑑みて相違点7から検討する。
相違点7に係る本願発明の「停電検出部が三相交流電源の停電を検出した場合に、前記直流電圧値が第2の閾値に低下する前に、前記複数の逆変換器のうちの少なくとも1台が主軸用モータを加減速させることにより前記直流電圧値を前記第2の閾値よりも大きい規定の範囲内にする」に関し、引用発明2と対比する。

引用発明2は「送り軸を駆動する送り軸モータと主軸を駆動する主軸モータとを有する工作機械において、交流電源側の停電発生時に送り軸モータを確実に早期停止することができる工作機械の制御装置を提供する」ことを目的とする発明であって(引用文献2の【0011】を参照。)、その「交流電源側の停電発生時」、「DCリンクにおける直流電圧」は、それぞれ、本願発明の「停電検出部が三相交流電源の停電を検出した場合」、「直流電圧値」に相当する。
また、引用発明2の「数値制御部16は主軸モータ用逆変換器13に対し」、「主軸モータ加速指令が送信され」、「主軸モータ減速指令が送信され」る制御態様は、本願発明の「複数の逆変換器のうちの少なくとも1台が主軸用モータを加減速させる」制御態様に相当する。
そして、引用発明2の「交流電源側の停電発生時において数値制御部16は主軸モータ用逆変換器13に対し、DCリンクにおける直流電圧が所定の上限値より大きい場合は主軸モータ加速指令が送信され、DCリンクにおける直流電力の上昇を抑制し、DCリンクにおける直流電圧が所定の下限値より小さい場合は主軸モータ減速指令が送信され、DCリンクにおける直流電力の低下を抑制し」の制御態様は、直流電圧値を下限値よりも大きい規定の範囲内(下限値と上限値の間)にする制御を行うものであるから、引用発明2の「交流電源側の停電発生時において数値制御部16は主軸モータ用逆変換器13に対し、DCリンクにおける直流電圧が所定の上限値より大きい場合は主軸モータ加速指令が送信され、DCリンクにおける直流電力の上昇を抑制し、DCリンクにおける直流電圧が所定の下限値より小さい場合は主軸モータ減速指令が送信され、DCリンクにおける直流電力の低下を抑制し」と、本願発明の「停電検出部が三相交流電源の停電を検出した場合に、前記直流電圧値が第2の閾値に低下する前に、前記複数の逆変換器のうちの少なくとも1台が主軸用モータを加減速させることにより前記直流電圧値を前記第2の閾値よりも大きい規定の範囲内にする」とは、「停電検出部が三相交流電源の停電を検出した場合に、前記直流電圧値が所定の値に低下する時に、前記複数の逆変換器のうちの少なくとも1台が主軸用モータを加減速させることにより前記直流電圧値を前記所定の値よりも大きい規定の範囲内にする」ことにおいて共通する。
ここで、本願発明の「第2の閾値」に係る値は、上記相違点6に関する事項であるから、引用発明2は、上記相違点6に係る点を除き、上記相違点7に係る構成をすべて有しているといえる。
そこで、引用発明に引用発明2を適用して、本願発明の相違点7に係る構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるか否かについて検討する。
引用発明は、送り軸を駆動する送り軸モータと主軸を駆動する主軸モータとを有するものでなく、複数の逆変換器を有さず、交流電源側の停電発生時に送り軸モータを確実に早期停止するという課題を有さないものであって、そのような引用発明に、引用発明2の、送り軸を駆動する送り軸モータと主軸を駆動する主軸モータとを有するものを前提とする、交流電源側の停電発生時に送り軸モータを確実に早期停止するための、上記相違点7に係る構成を適用する動機付けは存在しない。

(2)次に、相違点6について検討する。
相違点6に係る本願発明の「第2の閾値は、モータの正常な運転を継続できなくなる直流リンクの直流電圧値に、停電状態の検出から機械の保護動作開始までに必要なエネルギー分をマージンとして加算した電圧値よりも大きな値である」という構成は、上記「第5」に示した、いずれの文献にも開示されていない。

(3)したがって、他の相違点1?5について判断するまでもなく、本願発明は、当業者であっても引用発明、引用発明2及び原査定時に示された周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明は、補正前の請求項2に記載された「前記直流リンクには複数の逆変換器が接続されており、前記停電検出部が三相交流電源の停電を検出した場合に、前記複数の逆変換器のうちの少なくとも1台が主軸用モータを加減速させることにより前記直流電圧値を前記第2の閾値よりも大きい規定の範囲内にする」という事項を有するものになり、さらに、「前記第2の閾値は、モータの正常な運転を継続できなくなる直流リンクの直流電圧値に、停電状態の検出から機械の保護動作開始までに必要なエネルギー分をマージンとして加算した電圧値よりも大きな値であり、前記停電検出部が三相交流電源の停電を検出した場合に、前記直流電圧値が第2の閾値に低下する前に、前記複数の逆変換器のうちの少なくとも1台が主軸用モータを加減速させることにより前記直流電圧値を前記第2の閾値よりも大きい規定の範囲内にする」という事項をも有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-4に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-07-03 
出願番号 特願2014-191846(P2014-191846)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H02H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 慎太郎  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 矢島 伸一
遠藤 尊志
発明の名称 機械の保護動作開始判定機能を有するモータ制御装置  
代理人 中村 健一  
代理人 鶴田 準一  
代理人 南山 知広  
代理人 青木 篤  

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