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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1329784
審判番号 不服2016-8793  
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-14 
確定日 2017-06-30 
事件の表示 特願2014-175585「電気素子のパッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月11日出願公開、特開2016- 51773〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年8月29日を出願日とする出願であって、平成27年8月31日付け(発送日 同年9月8日)で拒絶理由が通知され、同年11月6日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月8日付け(送達日 同年同月15日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対し、同年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に、手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、同年11月9日に上申書が提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり補正する事項を含むものである。なお、下線は、請求人が付したものであり、補正箇所を示す。

(1)本件補正前
「電気素子を内部空間に収納し、光学的窓を有するパッケージにおいて、
電気素子と、
前記電気素子の前記光学的窓側とは反対側の素子面において、前記電気素子の材料に比べて弾性率が低い樹脂材料からなる接着層を介して一体に固定されたキャリア基板と、
前記キャリア基板の内部または前記キャリア基板面上に構成された、前記電気素子の温度を調整する温度調節手段と、
前記電気素子上に空間を形成しながら、前記電気素子および前記キャリア基板を内部に収納し、気密封止する容器と
を備え、
前記キャリア基板は、前記容器の前記内部空間側の対向面から離間して前記電気素子によって保持され、前記電気素子のみが固定部を介して前記容器の内面上に固定されていることを特徴とするパッケージ。」

(2)本件補正後
「電気素子を内部空間に収納し、光学的窓を有するパッケージにおいて、
電気素子と、
前記電気素子の前記光学的窓側とは反対側の素子面の全面において、樹脂材料からなる接着層を介して一体に固定されたキャリア基板と、
前記キャリア基板の内部または前記キャリア基板面上に構成された、前記電気素子の温度を調整する温度調節手段と、
前記電気素子上に空間を形成しながら、前記電気素子および前記キャリア基板を内部に収納し、気密封止する容器と
を備え、
前記キャリア基板は、前記容器の前記内部空間側の対向面から離間して前記電気素子によって保持され、前記電気素子のみが固定部を介して前記容器の内面上に固定されていることを特徴とするパッケージ。」

よって、本件補正は、補正前の「素子面において」を、「素子面の全面において」と限定する補正(以下、「補正事項1」という。)と、補正前の「前記電気素子の材料に比べて弾性率が低い樹脂材料からなる接着層」を「樹脂材料からなる接着層」とする補正(以下、「補正事項2」という。)を含むものである。

2 補正の適否(補正の目的要件)について
(1)補正事項1について
補正前の「素子面において」を、「素子面の全面において」と限定する補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

(2)補正事項2について
補正前の「前記電気素子の材料に比べて弾性率が低い樹脂材料からなる接着層」を「樹脂材料からなる接着層」とする補正は、「前記電気素子の材料に比べて弾性率が低い」という樹脂材料の弾性率に関する特定事項を削除するものである。
審判請求人は、上申書において、「請求項1において樹脂材料について「前記電気素子の材料に比べて弾性率が低い」という記載を省く補正をしたことは、拒絶査定における新たに生じた拒絶の理由1(1)に対応するもので、不明確と指摘された事項を解消するためのものです。」と主張するが、拒絶査定における新たに生じた拒絶の理由は、「請求項1の「前記電気素子の材料」は、電気素子が複数の材料から構成されるから何れの材料を特定しているのかが不明確である。」というものであり、不明確と指摘された事項は、弾性率の比較の対象である「前記電気素子の材料」であって、明確にすべきは、複数の材料から構成される電気素子のうちの何れの材料であるかである。
よって、樹脂材料の弾性率に関する特定事項を削除する補正事項2は、不明確と指摘された事項を解消するものではなく、明瞭でない記載の釈明には該当せず、むしろ、樹脂材料の弾性率に関する特定事項を含まない発明にまで拡張するものである。
また、補正事項2は、請求項の削除、限定的減縮、及び、誤記の訂正であるということはできない。

(3)補正の適否(補正の目的要件)についてのまとめ
以上のとおり、補正事項2を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 補正の適否(独立特許要件)について
上記2(3)のとおり、本件補正は却下されるべきものであるが、補正事項1が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当することから、念のため、以下、独立特許要件について検討する。
(1)本件補正発明
本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明のうち、その請求項1に係る発明は、上記「1」「(2)本件補正後」に記載のとおりである(以下、「本件補正発明」という。)。

(2)引用例の記載事項、引用発明、技術事項、周知例の記載事項、周知技術
ア 引用例1
(ア)引用例1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-203913号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付したものである。)。
a「【0006】そこで従来は、上記の問題点を解決するために、特開平1-237521号公報に記載されているような平板状発熱体(以下、ヒータと称す)を内蔵した液晶表示装置や、図6に示すような、ヒータを内蔵した液晶表示装置が考えられている。」

b「【0018】
【実施例】図1は本発明の一実施例に係る液晶表示装置の構成図である。同図において、109はグラフィックコントローラ、108は駆動制御回路、105はヒータ制御回路、106は走査制御回路、107は情報制御回路、104はヒータ(平板状発熱体)、102は走査信号印加回路、103は情報信号印加回路、101は液晶表示部、110は温度検知素子、111は温度検知回路である。グラフィックコントローラ109から送られるデータは駆動制御回路108を通してヒータ制御回路105、走査信号回路106、情報信号回路107に入り、それぞれアドレスデータと表示データに変換される。また、液晶表示部の温度が温度検知素子110を介して温度検知回路111に入り温度データとして駆動制御回路108を通して走査信号制御回路106およびヒータ制御回路105に入る。そしてアドレスデータと表示データに従って走査信号印加回路103が走査信号を発生し、液晶表示部101の走査電極に印加する。また、表示データに従って情報信号印加回路103が情報信号を情報電極に印加するようになっている。
【0019】図6はこの装置の断面図である。図中、600は液晶パネル、601および602は液晶パネル600を構成するガラス基板、603は上偏光板、604は上偏光板貼り合わせ用のガラス、605は下偏光板、606は下偏光板貼り合わせ用のガラス、607はバックライト、608は拡散板であり、これらにより前記液晶表示部101が構成される。609はプリント配線用フィルム、610は回路基板、611はパネル固定基板、612は接着剤、613は支持部材、614は弾性部材、615は筺体、616は枠状支持部材、104はヒータ、618は接着剤、619はヒータ制御回路105を有するヒータ制御基板、110は温度検知素子である。」

c「【図6】


図6の記載から、「液晶パネル600及びヒータ(平板状発熱体)104は、筺体615、支持部材613、枠状支持部材616、上偏光板603及び上偏光板貼り合わせ用のガラス604、並びにヒータ制御基板619に囲まれた内部空間に収納されていること」が見て取れる。
図6の記載から、「上偏光板603及び上偏光板貼り合わせ用のガラス604は、枠状支持部材616に支持され、液晶パネル600の上側に配置されていること」が見て取れる。
図6の記載から、「液晶パネル600を構成する上側のガラス基板601は、接着剤612、パネル固定基板611及び弾性部材614を介して支持部材613に支持されていること」が見て取れる。
図6の記載から、「ヒータ(平板状発熱体)104は、液晶パネル600を構成する下側のガラス基板602と部分的に接着剤618により固定され、前記内部空間において、液晶パネル600以外の部材とは離間していること」が見て取れる。

(イ)引用発明
よって、上記(ア)の記載から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ヒータ(平板状発熱体)を内蔵した液晶表示装置において、
液晶パネル600及びヒータ(平板状発熱体)104は、筺体615、支持部材613、枠状支持部材616、上偏光板603及び上偏光板貼り合わせ用のガラス604、並びにヒータ制御基板619に囲まれた内部空間に収納され、
上偏光板603及び上偏光板貼り合わせ用のガラス604は、枠状支持部材616に支持され、液晶パネル600の上側に配置され、
液晶パネル600を構成する上側のガラス基板601は、接着剤612、パネル固定基板611及び弾性部材614を介して支持部材613に支持され、
ヒータ(平板状発熱体)104は、液晶パネル600を構成する下側のガラス基板602と部分的に接着剤618により固定され、前記内部空間において、液晶パネル600以外の部材とは離間している、
液晶表示装置。」

イ 引用例2
(ア)引用例2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-230354号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付したものである。)。
「【0013】
【実施例】本発明の実施例を図に沿って説明する。図1はヒータパネルを備えた液晶装置の断面図であり、液晶パネル1を駆動する駆動素子2が接続され、さらに駆動素子2には配線基板3が接続されている。液晶パネル1は弾力性を有するシリコン接着剤13により固定板4に接着固定されている。固定板4は取り付け板6に固定されている。また、固定板4には上偏光板(不図示)を有した保護板10が取りつけれれている。なお、反射板5は取付板6と一体に構成され、蛍光ランプ8、下偏光板9、拡散板7等により液晶パネル1に光を照射するバックライト装置を構成している。
【0014】さらに、ヒータパネル11は液晶パネル1と所定間隔を保って対面・保持され、且つ、液晶パネル1の下面にシリコン接着剤13等(取り付け部材)により接着されている。」
「【0019】図3は、図1におけるA領域を拡大した図で、ヒータパネル11には図4に示す様にヒータパネル11の左右端縁部分には幅広のヒータパターン12a、その他の部分には幅狭のヒータパターン12bからなる温度補正用の透明ヒータが形成されている。そして、上下の端縁部(図4において上下)には複数のヒータパターン12a,12bに接続された電圧印加用の電極23が形成され、、その片端部には電圧印加用端子24が形成されている。
【0020】このヒータパネル11は以下の様に作成された。まず、32Omm×30Omm×l.lmmのガラス板(例:米コーニング社製#7059)の片面に、スパッタリング法によりシート抵抗値約2OΩ/□のITO膜を10Onm成膜した。その後、フォトリソグラフイー技術により、ヒータパターン12a,12bのパターン幅をそれぞれ1Omm、14Oμmとし、パターン間隔を25Oμmの帯状のヒーターパターンを形成した。そして、電極23の抵抗値がヒーターパターンに比べ十分小さくするために厚さ35μm、幅3mmで、50μm厚の接着剤を有する銅箔テープを電極23の上に貼りつけ固定した。さらに、銅箔テープの上からAgペーストを幅6mm、厚さ0.lmmでヒーターパターンに接して、且つ、銅箔テープが一部露出して電圧印加用端子24を形成する様に印刷して電圧印加用の電極23を形成した。また、ヒータパネルの寸法は液晶パネル1よりも大きい方がヒータパターン12aを大きくできるので望ましく、電圧印加用の端子24には電源供給用のリード線を銅箔テープに半田付けして使用するため液晶パネル1よりも外部にある方が望ましいので端子部は液晶パネルよりも大きく形成している。」
「【図1】 「【図3】

」 」
(イ)引用例2に記載された技術事項
上記(ア)の記載から、引用例2には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「ヒータパネルを備えた液晶装置において、
ヒータパネルの寸法は液晶パネル1よりも大きく、ヒータパネル11はガラス板の片面にヒーターパターンを形成したものであり、液晶パネル1の下面に弾力性を有するシリコン接着剤13等(取り付け部材)により接着されること。」

ウ 周知例1の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-47455号公報(以下、「周知例1」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付したものである。)。
「【0003】
従来の車両用表示装置では、その加熱装置は、透明面状基材を有し、その透明面状基材の一方の片面の略全面に発熱用の透明導電膜が形成され、その透明導電膜の両端に帯状の金属電極が導電性接着材により接着されて主構成されている。この加熱装置は、その透明面状基材の他方の片面(透明導電膜が形成されていない方の片面)が液晶パネルの裏面に透明性樹脂により接着されることにより、液晶パネルに配設されている。そして、この加熱装置は、その両金属電極間に電圧が印加されることによりその透明導電膜が通電発熱し、その熱により液晶パネルを加熱する様になっている。」
「【0024】
この透明面状ヒータ7は、そのITO膜7dの中央部分が液晶パネル3の裏面に透明性樹脂7hにより空隙無く接着されることにより液晶パネル3に配設される。」

エ 周知例2の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-1282414号公報(以下、「周知例2」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付したものである。)。

「【0005】
ITOヒーター6はガラス基板7とITO電極8とで構成され、ITO電極8の両端間に電圧を印加してITOヒーター6を発熱させる。更に液晶パネル1の下基板2側を、回路基板4に固定テープ9にて固定する。更に液晶パネル1は回路基板4とワイヤー10にて電気的に接続をとり、ITOヒーター6も回路基板4と導電性接着剤11で電気的に接続をとり完成となる。14は液晶表示領域である。」
「【0015】
次に液晶パネル1の上基板3側に接着剤5を塗布し、更にITOヒーター6を所定の位置関係で配置して固定する。この時に使用する接着剤5は均一にさらに出来るだけ薄く接着させる事が望ましい為、接着剤5の粘度を常温環境下で200mPa・s?1500mPa・s程度のものが望ましい、又接着剤の材質はエポキシ系でもUV系でもどちらでも良いがUV硬化型接着剤の方が、硬化時間が短く使い勝手は良い。この状態からITOヒーター6面上を加圧する事により接着剤5が接着面全面に広がる。このときに接着面からはみ出るはずの接着剤5が液晶パネル1の上基板3上に形成した溝13の中に浸透し、液晶パネル1の側面部分に接着剤5が流れないような構造となる。この状態から、接着剤を硬化させてITOヒーター6を完全に固定させる。」

オ 周知例3の記載事項
本願の出願前に頒布された刊行物である実願平5-6827号(実開平6-68033号)のCD-ROM(以下、「周知例3」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付したものである。)。
「 【0002】
【従来の技術】
図3は、従来の液晶表示装置の断面図である。図中、1は液晶、2はバックライト3側にヒータ膜2Aが設けられたヒータコーティングガラスで、接着材4を介し液晶1の表示部を避けた部分で液晶1に接着されている。
液晶1は、ヒータ膜2Aが加熱されるとヒータコーティングガラスを介して温められるため、低温動作時は応答特性が改善される。
5は液晶を挟むように設けられた偏光板で、しきい電圧以下ではバックライト3からの光を透過し、しきい値以上ではバックライト3を遮蔽する。
6は偏光板の前後に設けられた無反射コーティングガラスで、周囲光の反射を押さえ、バックライト3の光によって鮮明な画面が得られるようにしている。
尚、無反射コーティングは、液晶1自身にも行われている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
このような従来の液晶表示装置は、液晶とヒータコーティングガラスとの接着が部分的であるために、液晶とヒータコーティングガラスとの間に隙間が生じてしまい次に示すような欠点があった。
(1)液晶とヒータコーティングガラスとの間の接着強度が弱く耐振性が悪い。
(2)液晶とヒータコーティングガラスとの間に空気が介在するために、熱伝導率が悪い。
(3)液晶とヒータコーティングガラスとの間に空気が介在するために、バックライトの光の反射が大ききなりランプ効率が悪くなる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案は、このような点に鑑みて成されたもので、液晶とヒータコーティングガラスとの隙間にシリコーン樹脂を充填し、接着強度の改善と熱伝導の改善を図ると共に、バックライトの反射を押さえ、表示品質の向上を図った液晶表示装置を提供することを目的としている。
【0005】
【作用】
液晶とヒータコーティングガラスとの間に充填されシリコーン樹脂は、接着強度と熱伝導とを改善すると共に、更にはバックライト光の反射を押さえる。
【0006】
【実施例】
以下、図面を用いて本考案の一実施例を詳細に説明する。図1は、本考案の液晶表示装置の一実施例を示した断面図である。図中、図3と同一作用をするものは同一符号を付けて説明する。以下、図面においては同様とする。
7は透明なシリコーン樹脂で、液晶1とヒータコーティングガラス2との間に生じた隙間に充填される。
【0007】
シリコーン樹脂7は、液晶1とヒータコーティングガラス2の外周をシーリングした後、シリンジで注入され、100°Cで1時間硬化される。
ここで用いられるシリコーン樹脂7は、硬化前は10P(ポイズ)程度の粘度で、主剤と効果剤の2液からなり、硬化後はゴム状になり自己接着性を有するようになる。
このため、液晶1とヒータコーティングガラス2との間には、接着剤4を補強する強度をシリコーン樹脂7によって付与できる。」

カ 周知技術
上記周知例1?3に記載されているように、
「ヒータが形成されたガラス基板を液晶パネルに接着させる際、接着面の全面に隙間なく樹脂からなる接着剤を充填すること。」は、本願出願前の周知技術であるといえる。

(3)対比
引用発明の「液晶パネル600」、「上偏光板603及び上偏光板貼り合わせ用のガラス604」は、それぞれ本件補正発明の「電気素子」、「光学的窓」に相当する。

引用発明の「液晶表示装置」は、「液晶パネル600」を「上偏光板603及び上偏光板貼り合わせ用のガラス604」などの部材で「囲まれる内部空間に収納」しているから、本件補正発明の「電気素子を内部空間に収納し、光学的窓を有するパッケージ」に相当する。

引用発明の「ヒータ(平板状発熱体)104」と、本件補正発明の「前記キャリア基板の内部または前記キャリア基板面上に構成された、電気素子の温度を調整する温度調節手段」とは、「電気素子の温度を調整する温度調節手段」の点で共通する。

引用発明の「ヒータ(平板状発熱体)104」は板状部材であるから、引用発明における「ヒータ(平板状発熱体)104は、液晶パネル600の下側のガラス基板602と部分的に接着剤618により固定され」ることと、本件補正発明の「前記電気素子の前記光学的窓側とは反対側の素子面の全面において、樹脂材料からなる接着層を介して一体に固定されたキャリア基板」とは、「前記電気素子の前記光学的窓側とは反対側の素子面において、接着層を介して一体に固定された板状部材」の点で共通する。

引用発明の「液晶パネル600及びヒータ(平板状発熱体)104」を収納する内部空間を形成している「筺体615、支持部材613、枠状支持部材616、上偏光板603及び上偏光板貼り合わせ用のガラス604、並びにヒータ制御基板619」と、本件補正発明の「前記電気素子上に空間を形成しながら、前記電気素子および前記キャリア基板を内部に収納し、気密封止する容器」とは、「前記電気素子上に空間を形成しながら、前記電気素子および前記板状部材を内部に収納する容器」の点で共通する。

引用発明の「ヒータ(平板状発熱体)104は、液晶パネル600の下側のガラス基板602と部分的に接着剤618により固定され、内部空間において、液晶パネル600以外の部材とは離間して」いることと、本件補正発明の「前記キャリア基板は、前記容器の前記内部空間側の対向面から離間して前記電気素子によって保持され」ることとは、「前記板状部材は、前記容器の前記内部空間側の対向面から離間して前記電気素子によって保持され」る点で共通する。

引用発明において、「支持部材613」は、内部空間を形成する部材であり、「パネル固定基板611」は、内部空間に収納されている「液晶パネル600及びヒータ(平板状発熱体)104」のうち、「液晶パネル600」を固定する部材であるから、引用発明の「液晶パネル600の上側のガラス基板601は、接着剤612、パネル固定基板611及び弾性部材614を介して支持部材613に支持され」ることは、本件補正発明の「前記電気素子のみが固定部を介して前記容器の内面上に固定されていること」に相当する。

したがって、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「電気素子を内部空間に収納し、光学的窓を有するパッケージにおいて、
電気素子と、
前記電気素子の前記光学的窓側とは反対側の素子面において、接着層を介して一体に固定された板状部材と、
電気素子の温度を調整する温度調節手段と、
前記電気素子上に空間を形成しながら、前記電気素子および前記板状部材を内部に収納する容器と
を備え、
前記板状部材は、前記容器の前記内部空間側の対向面から離間して前記電気素子によって保持され、前記電気素子のみが固定部を介して前記容器の内面上に固定されているパッケージ。」

(相違点1)
電気素子の素子面において、固定された部材について、本件補正発明では、「素子面の全面」において固定された「キャリア基板」であるのに対し、引用発明では、「ヒータ(平板状発熱体)104」が「素子面の全面」において固定されたものではなく、かつ、「キャリア基板」であるか不明であり、また、本件補正発明では、「温度調節手段」が「前記キャリア基板の内部または前記キャリア基板面上に構成された」ものであるのに対し、引用発明では、ヒータ(平板状発熱体)の部分がどのように構成されたものであるか不明である点。

(相違点2)
接着層の材料が、本件補正発明は、「樹脂材料からなる」のに対し、引用発明は、接着剤の材料が特定されていない点。

(相違点3)
電気素子および板状部材を内部に収納する容器が、本件補正発明は、「気密封止」するものであるのに対し、引用発明は、そのような特定がない点。

(4)判断
ア 相違点1について
引用例2には、「ヒータパネルを備えた液晶装置において、ヒータパネルの寸法は液晶パネル1よりも大きく、ヒータパネル11はガラス板の片面にヒーターパターンを形成したものであり、液晶パネル1の下面に弾力性を有するシリコン接着剤13等(取り付け部材)により接着されること。」との技術事項が記載されている。
ここで、ヒータパネルの寸法は液晶パネル1よりも大きく、ヒータパネル11を構成しているガラス板は、板上の一部に電子素子である液晶パネル1を固定していることから、ガラス板は、キャリア基板といえるものである。
引用例2に記載された「ヒータパネルを備えた液晶装置」と引用発明の「ヒータ(平板状発熱体)を内蔵した液晶表示装置」とは、「平板状の発熱体であるヒータを接着剤で液晶パネルに取付ける液晶装置」である点で共通するものであるから、引用発明の「ヒータ(平板状発熱体)104」として、引用例2に記載された「ガラス板(本件補正発明の「キャリア基板」に相当する部材)の片面にヒーターパターンを形成した」「ヒータパネル11」の構成を採用することに困難性は見いだせない。
また、「ヒータが形成されたガラス基板を液晶パネルに接着させる際、接着面の全面に隙間なく樹脂からなる接着剤を充填すること。」は、本願出願前の周知技術である(上記「2」「カ 周知技術」参照。)ことに鑑みれば、引用発明において、「ヒータ(平板状発熱体)104」として、引用例2に記載された「ガラス板(本件補正発明の「キャリア基板」に相当する部材)の片面にヒーターパターンを形成した」「ヒータパネル11」を採用する際に、ヒータが形成されたガラス板と液晶パネルの接着面の全面に隙間なく樹脂からなる接着剤を充填し固定することは、当業者が適宜なし得ることである。

イ 相違点2について
引用発明は、液晶表示装置に関する発明であり、液晶表示装置の技術分野において、各部材を接着する際に用いる接着剤として、樹脂材料からなる接着剤を用いることが一般的であることに鑑みるに(例えば、引用例2に記載の「シリコン接着剤13」、周知例1の「透明性樹脂7h」、周知例2の「【0015】・・・接着剤の材質はエポキシ系でもUV系でもどちらでも良い」、周知例3の「シリコーン樹脂」)など参照。)、引用発明の接着剤として樹脂材料からなる接着剤を用いることは当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 相違点3について
引用発明は、液晶表示装置に関する発明であり、液晶表示パネルは、温度変化や湿度により電気光学的な特性や表示特性が変化し易いデバイスであることから、気密封止を行うことは周知であり(例えば、特開昭59-60421号公報に記載の「真空容器」、特開2010-181805号公報記載の「密閉収容するケース」等参照。)、引用発明において、「液晶パネル600」を収納する内部空間を形成している「筺体615、支持部材613、枠状支持部材616、上偏光板603及び上偏光板貼り合わせ用のガラス604、並びにヒータ制御基板619」を、「気密封止する容器」として構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。

エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ したがって、本件補正発明は、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

カ なお、審判請求人は、審判請求書において、引用発明は、全面に接着することについての動機付けがなく、阻害要因を有する旨主張している。
しかしながら、周知例3には、「ヒータ膜2Aが設けられたヒータコーティングガラスで、接着材4を介し液晶1の表示部を避けた部分で液晶1に接着されている」「従来の液晶表示装置」は、「液晶とヒータコーティングガラスとの接着が部分的であるために、液晶とヒータコーティングガラスとの間に隙間が生じてしまい」、「接着強度」や「熱伝導率が悪い」などの「欠点があった」という課題に鑑み、「液晶とヒータコーティングガラスとの隙間にシリコーン樹脂を充填し、接着強度の改善と熱伝導の改善を図る」ことが記載されていおり、引用発明も周知例3に記載された「従来の液晶表示装置」と同様に「ヒータ(平板状発熱体)104は、液晶パネル600の下側のガラス基板602と部分的に接着剤618により固定され」(なお、下線は当審で付与した。)ており、上記課題を有しているから、引用発明は、上記課題を解決するための周知技術を採用することに動機があるといえる。
また、周知例で用いられる接着剤が透明であることに鑑みれば、引用発明において部分的に適用される接着剤を全面に適用することに阻害要因があるとはいえない。
したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。

キ また、審判請求人は、上申書において、独立特許要件違反について以下のとおり主張している。
「引用文献4-6(周知例1?3に対応する文献)には」「透明な樹脂材料で全面を固定する技術が開示されていますが、平成28年6月14日提出の手続き補正書における請求項1に関わる発明は、光学窓のみから光の入出力を行うものであって、光が透過しない接着剤も用いることが可能であり透明な樹脂材料に限定されません。したがって、パネル近傍に光源があり、透明な樹脂材料のみを用いることが出来る引用文献4-6とは異なるものです。」
しかしながら、本件補正発明は、樹脂材料が透明であるか否かを限定していないから、透明な樹脂材料を用いたものも本件補正発明である。
そして、樹脂材料が透明であるか否かの限定がないところ、透明な樹脂材料を用いたことを前提にして本件補正発明と引用発明を対比し、判断することが妥当でないとは言えない。
よって、上記上申書の主張を検討しても、上記オの独立特許要件の判断に影響するものではない。

4 本件補正についてのむすび
上記「2 補正の適否(補正の目的要件)について」のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
仮に、本件補正が特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、上記「3 補正の適否(独立特許要件)について」のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成27年11月6日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。再掲すれば、次のとおり。
「電気素子を内部空間に収納し、光学的窓を有するパッケージにおいて、
電気素子と、
前記電気素子の前記光学的窓側とは反対側の素子面において、前記電気素子の材料に比べて弾性率が低い樹脂材料からなる接着層を介して一体に固定されたキャリア基板と、
前記キャリア基板の内部または前記キャリア基板面上に構成された、前記電気素子の温度を調整する温度調節手段と、
前記電気素子上に空間を形成しながら、前記電気素子および前記キャリア基板を内部に収納し、気密封止する容器と
を備え、
前記キャリア基板は、前記容器の前記内部空間側の対向面から離間して前記電気素子によって保持され、前記電気素子のみが固定部を介して前記容器の内面上に固定されていることを特徴とするパッケージ。」

2 引用例の記載事項、引用発明、技術事項
(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及び引用例2の記載事項は、前記第2の[理由]「3(2)」「ア 引用例1」及び「イ 引用例2」に記載したとおりである。

3 対比
本願発明は、前記第2の[理由]3で検討した本件補正発明から、「素子面の全面において」を「素子面において」と限定を削除し、「樹脂材料からなる接着層」を「前記電気素子の材料に比べて弾性率が低い樹脂材料からなる接着層」と限定したものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、上記の本件補正発明と引用発明の一致点で一致し、相違点3及び以下の相違点1’、2’で相違する。
(相違点1’)
電気素子の素子面において、固定された部材について、本願発明では、「キャリア基板」であるのに対し、引用発明では、「ヒータ(平板状発熱体)104」が「キャリア基板」であるか不明であり、また、本願発明では、「温度調節手段」が「前記キャリア基板の内部または前記キャリア基板面上に構成された」ものであるのに対し、引用発明では、ヒータ(平板状発熱体)の部分がどのように構成されたものであるか不明である点。
(相違点2’)
接着層が、本願発明は、「電気素子の材料に比べて弾性率が低い樹脂材料からなる」のに対し、引用発明の接着剤618は、そのような特定がない点。

4 判断
(1)相違点1’及び相違点3について
相違点1’は、相違点1から「素子面の全面において」固定する事項を削除したものであり、相違点1は、相違点1’の事項を全て含むものである。 相違点1についての判断は、上記第2の[理由]3「(4)判断」「ア 相違点1について」に記載したとおりであるから、相違点1’についての判断も同様の理由により当業者が容易に想到し得ることである。
また、相違点3についての判断は、上記第2の[理由]3「(4)判断」「ウ 相違点3について」に記載したとおりである。

(2)相違点2’について
引用例2には、「ヒータパネルを備えた液晶装置において、ヒータパネル11はガラス板の片面にヒーターパターンを形成したものであり、液晶パネル1の下面に弾力性を有するシリコン接着剤13等(取り付け部材)により接着されること。」との技術事項が記載されている。
引用例2に記載された「ヒータパネル11」は、「液晶パネル1の下面に」「接着剤13等(取り付け部材)により接着される」ものであり、引用発明の「ヒータ(平板状発熱体)104は、液晶パネル600の下側のガラス基板602と」「接着剤618により固定され」たものであり、ヒータと液晶パネルとを接着剤で固定する点で共通するものであるから、引用発明の「接着剤618」として、引用例2に記載された「弾力性を有するシリコン接着剤」を採用することに困難性は見いだせない。
ここで、「弾力性を有するシリコン接着剤」は、引用発明の「液晶パネル600の下側のガラス基板602」に比べ弾性率が低いことは明らかであり、原査定の拒絶の理由で周知例として引用された特開2010-204377号公報の「【0035】・・・充填部材44としては基材20より弾性率の低い樹脂が選択され、例えば、シリコーン樹脂等が挙げられる。基材20にガラスが用いられている場合には、基材20の弾性率は数GPaであり、充填部材44にシリコーン樹脂が用いられている場合には、充填部材44の弾性率はおおよそ数MPaとなる。」との記載及び原査定の拒絶の理由で周知例として引用された国際公開第2005/116159号の「[0035]一般に硬化性のシリコーン樹脂は、耐熱性、耐候性、耐湿性、電気特性などが優 れるので、電気、電子、精密機器などの材料として多用され、・・・硬化性のシリコーン樹脂またはその変成樹脂は比較的弾性率が小さく封着するガラス部材に懸かる応力を小さくすることができ、熱膨張係数の違いによる歪を小さくすることができる。」との記載からも裏付けられている。
よって、引用発明の「接着剤618」として、引用例2に記載された「弾力性を有するシリコン接着剤」を採用し、本願発明の相違点2’に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(4)したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-01 
結審通知日 2017-05-08 
審決日 2017-05-19 
出願番号 特願2014-175585(P2014-175585)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H01S)
P 1 8・ 121- Z (H01S)
P 1 8・ 575- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀部 修平  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 森 竜介
星野 浩一
発明の名称 電気素子のパッケージ  
代理人 渡部 比呂志  
代理人 豊田 義元  
代理人 渡部 比呂志  
代理人 豊田 義元  

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